説明

火災報知器

【課題】 利用者に対し、より適切且つ迅速に火災等の異常発生を認知させることができる家庭用の火災報知器を提供する。
【解決手段】 火災に関する異常発生を検知する異常検知部と、音を出力して異常発生を報知する報知部とを備えた家庭用の火災報知器1であって、前記異常検知部が火災情報を検知したときに、前記報知部が擬音及び音声を含む少なくとも3つの警告音を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家庭用の火災報知器に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭用の火災報知器は、火災等の異常が発生したときに、利用者が確実に避難等できるよう、利用者に対して適切に異常発生を警告する必要があり、様々な技術が提案されている。
この種の技術には、異常内容を利用者に警告するために、複数の音声セグメントを予め記憶しておき、異常発生時に、各種センサからの出力に応じて複数の音声セグメントを組み合わせて出力する火災報知器がある(例えば、特許文献1参照)。これは、例えば、「火災です」「確認して下さい」「避難してください」等といった音声をセグメント化して記憶することで音声の記憶容量を節約するものであり、異常発生時、その緊急の度合いに応じて、「火災です」「避難してください」のように音声を出力する。
【0003】
【特許文献1】特開2000−149169
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の火災報知器は、異常内容をより詳細に利用者に知らせることができるものであるが、音声出力開始時には、利用者が音声に注意していないため、適切に聞き取れないことがあった。利用者は、出力される音声の内容を確認するために相当の注意を払わねばならず、異常内容を判断して対応することに遅れが生じるといった問題があった。また、火災報知器は定期的に点検して動作確認を行う必要がある。更に、利用者にとっても、実際の必要時に警告音を確実に認識するために、定期的に警告音を確認する必要がある。しかし、従来の火災報知器は、簡単に点検確認ができる機能を有していなかった。
【0005】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、利用者に対し、より適切且つ迅速に火災等の異常発生を認知させることができる家庭用の火災報知器を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するための本発明に係る火災報知器の特徴構成は、火災に関する異常発生を検知する異常検知部と、音を出力して異常発生を報知する報知部とを備えた家庭用の火災報知器であって、前記異常検知部が火災情報を検知したときに、前記報知部が擬音及び音声を含む少なくとも3つの警告音を出力する点にある。
即ち、擬音及び音声を含む少なくとも3つの警告音を出力することで、より幅広い利用者に対し火災等の異常をより確実に報知することができ、利用者が適切に避難等の対応を取ることができる。特に、異常内容を連想させる擬音を出力するため、一般の利用者は勿論のこと、音声による警告のみでは異常内容を認知し辛いと考えられる子供や高齢者であっても、異常内容を認知し易くなる。更に、異常内容を知らせる音声を出力するので、異常内容を適切に認知させることができる。
【0007】
この目的を達成するための本発明に係る火災報知器の他の特徴構成は、前記報知部が、前記警告音を、利用者の注意を喚起する注意喚起音、前記擬音、前記音声の順に出力する点にある。
即ち、上記特徴構成によれば、利用者の注意を喚起する注意喚起音によって、利用者の注意を警報に惹きつけておき、利用者が異常発生を認知した状態で、異常内容を連想させる擬音及び異常内容を知らせる音声を順に出力するので、利用者が異常内容をより適切に認知することができ、異常発生に迅速に対応することが可能になる。
【0008】
更に、他の特徴構成は、前記報知部が、前記警告音を、音圧の値が高い音から順に出力する点にある。
一般に、音圧の高い音ほど遠方にまで届く。よって、最初に音圧の高い音を出力して利用者の注意を喚起することで、その後の警告音については、音圧を下げて出力しても利用者は聞き取ることができる。このように、本構成であれば、利用者への警報の通達を確実に行うことができるうえ、警報後半の音圧を下げることができるため、装置の省電力化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に係る火災報知器1の実施形態を図面に基づいて説明する。ここで、図1(a)乃至(d)は、火災報知器1の正面図、側面図、背面図及び下面図である。
【0010】
火災報知器1は、火災発生を検知する異常検知部としての火災検知部2と、音を出力して火災発生や火災報知器1の機能異常等の異常発生を報知する報知部としての警報スピーカ3とを備えている。火災報知器1の正面には、火災検知部2、警報スピーカ3、警報ランプ4、及び、操作部としての警報音停止ボタン5が設けられており、背面には、電池収納部7、火災報知器1を壁材等に固定する取付部8、及び、連動機能のための外部信号出力部(図示せず)から引き出された配線(図示せず)を固定する溝9が設けられている。本実施形態の火災報知器1は、光電式2種の住宅用火災報知器である。
【0011】
火災検知部2は、円形状部材で構成され、火災報知器1の正面中央に突出して設けられている。この火災検知部2は、煙センサ、感熱センサ、COセンサ及びガスセンサ等、火災情報を検知できるセンサを備えている。警報スピーカ3は、75乃至85dB/m(A)の警告音を出力可能に構成され、火災報知器1の正面左上に設けられている。警報ランプ4は、赤、緑の2色のLEDを備え、火災報知器1の正面右下、警報音停止ボタン5の隣に設けられており、火災報知器1の動作開始時には消灯している。
【0012】
警報音停止ボタン5は、火災報知器1の正面下部(正面下側角部)に設けられている。この警報音停止ボタン5は、火災発生時等に警報スピーカ3から発生する警告音を停止させる機能、及び、点検作業時に警報スピーカ3から火災発生時と同様の警告音を発生させる機能を有する。ここでの警報音停止ボタン5は、利用者にとって分かり易い大きさ・位置に設定されており、点検作業の促進を図ることができる。更に、火災報知器1が手の届き難い高い位置に設置される場合であっても、棒部材等で簡単に押すことができる。即ち、例えば、棒部材などを用いて押し操作しようとした場合に、角部に設けた操作部であれば棒状部材を当接させ易く、手の届き難い高い位置に設置される火災報知器1の操作を容易なものとすることができる。これによって、火災報知器1の点検操作が容易になり、また、点検作業を気軽に行うことができるため、利用者が警告音に接する機会が増加する。この結果、利用者は火災報知器1の警告音を認識し易くなり、火災発生による警告音出力時に適切に対応することができる。また、警報音停止ボタン5の底部には、警報音停止ボタン5の操作支援部材としての引き紐を取付ける引き紐取付部6が設けられている。高い位置に設置される火災報知器1について、引き紐取付部6に引き紐を取付ることにより、背の低い利用者であっても警報音停止ボタン5の操作を容易に行えるようになる。電池収納部7は、火災報知器1が点検1回/年、警報6回/年の条件下で5年以上使用可能となるように、CR系リチウム一次電池を2本直列して収納可能である。外部信号出力部(図示せず)は、トランジスタのオープンコレクタとして構成されている。
【0013】
次に、火災報知器1の動作について説明する。
尚、本実施形態の火災報知器1は、火災発生を監視する火災発生監視機能と、火災報知器1の機能を点検する点検機能とを備えている。
【0014】
火災発生監視機能は、火災検知部2の各種センサからの出力を監視し、これらのセンサからの出力が、所定の火災判定条件を満たした場合に火災発生を判定する。ここでの火災判定条件は、例えば、センサの出力に対するしきい値であり、何れかのセンサの出力が各センサ毎に設定されたしきい値の値を超えた場合に、火災発生を判定する。
【0015】
例えば、火災検知部2が火災を検知すると、報知部は、擬音及び音声を含む少なくとも3つの警告音を、火災報知器1の正面左上に設けられた警報スピーカ3から繰返し出力する。更に、警報ランプ4を赤色に点灯させる。
【0016】
ここで、本実施形態の警告音は、著作権フリーの音を用い、利用者の注意を喚起する注意喚起音、異常内容を連想させる擬音、及び、異常内容を知らせる音声をこの順に出力する。例えば、火災を検知した場合、利用者の注意を喚起する注意喚起音、火災を連想させる擬音及び火災の発生を知らせる音声を「ウーウー」「カンカン」「火事です 火事です」のように出力する。
【0017】
更に、本実施形態の警告音は、75乃至85dB/m(A)の音圧に設定してあり、注意喚起音、擬音及び音声について、この順に音圧を高く設定する。例えば、注意喚起音の音圧を85dB、擬音の音圧を80dB、音声の音圧を75dBに設定してある。利用者は、最初に出力される注意喚起音によって警告音に注意するようになり、その後に出力される擬音によって火災を想起することができるので、更にその後に出力される音声の内容を把握し易く、火災を認知し易くなる。このため、利用者は、避難や火災通報等の対応をより適切且つ迅速に行うことができる。
尚、一般に、若年者と高齢者とでは聞き取り易い音の周波数領域が異なるため、若年者にとって聞き取り易い周波数領域の警告音と、高齢者にとって聞き取り易い周波数領域の警告音とを組み合せて出力するのも好ましい実施態様である。
【0018】
火災報知器1は、警報音停止ボタン5が操作され、リセットされると、警報スピーカ3による警告音の出力を停止し、警報ランプ4を消灯する。火災報知器1は、警報音停止ボタン5の操作後、一定時間経過すると通常動作を開始し、火災発生監視機能及び点検機能を復帰させる。
【0019】
更に、ここでの火災発生監視機能は、住宅内に複数の火災報知器1が設置されている場合に、これらの火災報知器1を連動動作させる連動機能を備えており、住宅内に設置された火災報知器1は背面に引き出された外部信号出力部(図示せず)からの配線(図示せず)を介して互いに接続されている。この連動機能は、火災において高齢者の逃げ遅れが多いことから、住宅内の火災発生場所だけでなく、火災発生場所以外にいる居住者に対しても迅速に認知させるために、火災発生場所以外に設置されている火災報知器1についても連動作動させるものである。
【0020】
連動機能は、例えば、警報音停止ボタン5を3秒以上長押しすることでON・OFFが切り替わるように設定されている。これは、利用者の操作により不必要な場合にON・OFFが切替わるのを防止するためであり、火災報知器1の設置業者等によって設定されることを想定している。
【0021】
連動機能がONの状態で、住宅内に設置された何れかの火災報知器1が火災発生を検知すると、火災発生を検知した火災報知器1から他の火災報知器1に火災発生を出力する。火災発生を通知された火災報知器1は、火災発生を検知した火災報知器1と同様の警告音を警報スピーカ3から出力する。尚、警報ランプ4については、赤色に点滅させる。警報ランプ4が点灯しているか点滅しているかによって、利用者は、火災発生を検知した火災報知器1であるか連動動作している火災報知器1であるかを識別することができる。
【0022】
点検機能は、火災発生等が検出されていないときに、利用者による警報音停止ボタン5の操作に基づいて、火災報知器1の各機能の診断を自動的に行う。ここでは、火災報知器1の電池電圧の低下、センサ異常、回路異常、及び、有効期限異常を検出する。
【0023】
火災報知器1の機能異常の判定としては、電源電圧が所定値以下になったときに電池電圧の低下を判定する。また、各センサからの出力が所定の範囲内にない場合にはセンサ異常を判定する。定電圧回路に異常が発生したときは回路異常を判定し、火災報知器1に設定されている使用期限、例えば、5年以上を経過した場合に有効期限異常を判定する。
【0024】
火災報知器1の機能異常が検出されない場合には、警報スピーカ3から、火災等の警報時よりも小さい音圧、例えば、60dBの音圧で警告音を出力する。ここでは、「ウーウー カンカン 火事です 火事です」と出力する。
【0025】
火災報知器1の機能異常が検出された場合には、警報スピーカ3から、火災等の警報時の半分の音圧で異常内容を知らせる音声を出力する。詳細には、電池電圧の低下が検出された場合には、警報スピーカ3から「電池切れが発生しています。」の音声を出力する。更に、警報ランプ4を緑色に点滅させる。この状態において、警報音停止ボタン5が操作され、火災報知器1がリセットされると、警報スピーカ3による警告音の出力を停止し、警報ランプ4を消灯する。火災報知器1は、警報音停止ボタン5の操作後、一定時間経過すると通常動作を開始し、火災発生監視機能及び点検機能を復帰させる。
【0026】
火災発生監視機能に加えて点検機能を備えることで、利用者は、火災報知器1が正常動作しない虞がある場合に的確に認知することができ、火災報知器1の信頼性を担保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る火災報知器の模式図
【符号の説明】
【0028】
1 火災報知器
2 火災検知部
3 警報スピーカ
4 警報ランプ
5 警報音停止ボタン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
火災に関する異常発生を検知する異常検知部と、音を出力して異常発生を報知する報知部とを備えた家庭用の火災報知器であって、
前記異常検知部が火災情報を検知したときに、前記報知部が擬音及び音声を含む少なくとも3つの警告音を出力する火災報知器。
【請求項2】
前記報知部が、前記警告音を、利用者の注意を喚起する注意喚起音、前記擬音、前記音声の順に出力する請求項1に記載の火災報知器。
【請求項3】
前記報知部が、前記警告音を、音圧の値が高い音から順に出力する請求項1に記載の火災報知器。


【図1】
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【公開番号】特開2006−53790(P2006−53790A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−235449(P2004−235449)
【出願日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【出願人】(000190301)新コスモス電機株式会社 (112)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【Fターム(参考)】