説明

灯具の光源固定構造

【課題】 セットスプリングを一方向に操作するだけでリフレクタに係止させ、また異なる方向に操作するだけでセットスプリングの係止を解除し、リフレクタへの光源の着脱操作を簡略化した光源固定構造を提供する。
【解決手段】 リフレクタ1には係止突起17bが形成され、セットスプリング3はリフレクタ1に支持される支持部31と、手操作されて係止突起17bに係止される操作係止部32と、これら支持部31と操作係止部32との間の領域でランプ光源2の円盤フランジ部24の背面に弾接する弾接部33とを備える。弾接部33は円盤フランジ部24の背面に弾接したときに操作係止部32での操作方向とは異なる方向の弾性反力が生じ、その弾性反力で操作係止部32が係止突起17bに向けて付勢されて係止突起17bに係止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は灯具の灯体に光源を固定するための構造に関し、特に自動車等の車両用灯具の灯体に光源を着脱可能な状態で固定するための光源固定構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車用灯具を初めとする各種灯具は、リフレクタ等の灯体と、この灯体に対して固定されるバルブ(電球)や半導体発光素子からなる光源とで構成されているが、この光源については同種あるいは異種の光源について交換することができるように、光源を灯具本体に対して着脱可能に固定する構造がとられている。このような光源の固定構造として、セットスプリングと称する線状のスプリングを用いた固定構造が提案されている。例えば、特許文献1ではリフレクタにバルブソケットを固定するために、基端部をリフレクタに支持し、ここを支点にして先端部をバルブソケットの背後に回し込むように回動した上で先端部をリフレクタに係止するセットスプリングを設け、このセットスプリングの弾接力によってバルブソケットをリフレクタに固定する構成がとられている。また、特許文献2では、イグナイターを一体化した放電バルブをリフレクタに固定するためにセットスプリングを用いているが、イグナイターの存在によって特許文献1のようにセットスプリングを背後に回し込むことができないため、セットスプリングの基端部をリフレクタに係合させ、径方向に拡縮する拡縮片部を放電バルブに設けた環状溝に外径方向から嵌入させ、嵌入された拡縮片部が放電バルブの背面に弾接したときの弾接力により放電バルブをリフレクタに固定する構成がとられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−7401号公報
【特許文献2】特開2002−208302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1,2のいずれの固定構造においても、バルブをリフレクタに固定するためのセットスプリングの弾接力を維持するために、セットスプリングの先端部や拡縮片部(以下、これらを自由端部と称する)をリフレクタに設けた係止部に係止させている。この係止部の構成としては、当該セットスプリングの係止が簡単に外れることがないように、リフレクタにフック状に曲げ形成した係止溝を形成し、セットスプリングの自由端部を係止溝に嵌入させてセットスプリングの弾性変形した形状を保持する構成を採用している。そのため、セットスプリングをリフレクタに係止させる際には、セットスプリングの自由端部を当該セットスプリングの弾性力に抗して撓めた状態で係止溝に案内し、かつ係止溝のフック形状に沿って移動させるための操作が必要になる。
【0005】
すなわち、特許文献1の場合には自由端部をバルブ側に押圧変形してバルブをリフレクタに対して押圧した状態を保ちながら自由端部を係止溝の入り口まで移動させ、さらにこの状態を保持しながら自由端部をバルブ径方向内側に変形させて係止溝の奥に進入させて係止を行う操作が必要になる。また、特許文献2の場合には自由端部をバルブ側に押圧しながらバルブ径方向内側に変形して係止溝の入り口まで移動させ、さらにバルブ側への押圧状態を保ちながら内側方向への押圧力を緩めることでセットスプリングの弾性復帰により自由端部を係止溝の奥に進入させて係止させる操作が必要になる。また、バルブをリフレクタから取り外すためにセットスプリングの自由端部の係止を解除する場合には、係止時とは反対の操作を行う必要がある。特許文献1の場合には、自由端部をバルブ側に押圧しながらバルブ径方向外側に変形させて係止溝から外す操作が必要になる。特許文献2では、セットスプリングの自由端部をバルブ径方向内側に変形させながら当該自由端部をバルブと反対方向に移動させ、その後自由端部のバルブ径方向への変形を解除し、自由端部の弾性復帰を利用して係止溝から外す操作が必要になる。
【0006】
このように特許文献1,2の技術は、いずれもセットスプリングの自由端部を係止し、あるいは係止を解除するためにセットスプリングの自由端部を撓めながら、これとは異なる方向に向けて自由端部を移動あるいは変形させる操作が必要であり、操作が複雑である。特に、車両用灯具では灯具の小型化、薄型化を図るためにバルブの背後のスペースを狭小に設計していることが多いため、このような狭小なスペースにおいてセットスプリングを係止するための操作を行うことは困難であり、バルブの着脱操作が難しいものになる。
【0007】
本発明の目的はセットスプリングを一方向に操作するだけでセットスプリングの係止を行い、またこれと異なる方向に操作するだけでセットスプリングの係止解除を可能にし、これにより灯体に対するバルブ等の光源の着脱操作を簡略化することが可能な光源固定構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、背面に光源を支持するための取付座部を備えた灯体と、当該取付座部に当接される盤状フランジ部を備えた光源と、灯体に支持されて盤状フランジ部を取付座部に弾接させて固定するためのセットスプリングとを備える灯具の光源固定構造であって、灯体にはセットスプリングを係止するための所定方向に突出した係止突起が設けられ、セットスプリングは灯体に支持される支持部と、手操作されて灯体に設けられた係止突起に係止される操作係止部と、これら支持部と操作係止部との間の領域で盤状フランジ部の背面に弾接する弾接部とを備えており、操作係止部を一方向に操作したときに当該弾接部が盤状フランジ部の背面に弾接してこれと異なる方向の弾性反力が生じ、この弾性反力で操作係止部が係止突起に向けて付勢されて係止突起に係止される構成であることを特徴とする。
【0009】
例えば、セットスプリングは略コ字状に曲げ加工された線状スプリング材で形成され、中央部分が支持部として灯体に支持され、一対の両端部分が互いに近接する方向に弾性変形可能な操作係止部として構成される。また、灯体は取付座部に灯体の背面方向に立設した壁部に一対の操作係止部が互いに接近方向に変形されたときに進入可能なガイド溝を有しており、係止突起は当該ガイド溝の上底面に下底面方向に向けて突出した突起として形成される。さらに、操作係止部は弾接部が盤状フランジ部の背面に当接していないときには係止突起には係止せず、弾接部が盤状フランジ部の背面に弾接しているときに係止突起に係止される構成とする。
【0010】
本発明において、光源は盤状フランジ部の背面側に点灯回路部を一体に有する放電バルブとして構成されてもよく、灯体には点灯回路部のケーシングに弾接する複数の弾接片を備えた導電板からなるホルダが固定支持され、ホルダはセットスプリングの支持部を灯体との間に挟持するとともに、弾接片はケーシングの前面に弾接して当該ケーシングを灯体に電気接続する導電片と、ケーシングの上面に弾接してケーシングを下方に付勢する付勢片とで構成される構成としてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、セットスプリングの操作係止部を係止突起に係止させるべく一方向に操作して変形させれば、取付座部に光源がセットされているときには弾接部が盤状フランジ部に弾接したときに生じる操作方向とは異なる方向の弾性反力によって操作係止部が係止突起に係止される。そのため、操作係止部を一方向に操作するのみでセットスプリングを灯体に係止して光源の固定が実現できる。また、係止突起との係止を解除する方向にのみ操作係止部を操作するだけでセットスプリングの係止を解除して弾接部による盤状フランジ部の弾接が解除され、光源を灯体から取り外すことができる。これにより、光源の着脱操作を簡略化することが可能になる。
【0012】
また、本発明によれば、セットスプリングの操作係止部が進入されるガイド溝の上底面に係止突起を設けているので、セットスプリングの操作係止部を係止突起に係止する方向に操作して変形させたときに、取付座部に光源がセットされていなければ弾接部における反力が生じないため操作係止部が係止突起に係止されることはなく、取付座部に光源がセットされているときにのみ操作係止部が係止突起に係止される。そのため、セットスプリングの係止状態から光源が固定できたか否かを確実に確認することができる。また、係止突起との係止を解除するときには操作係止部をガイド溝の下底面方向に変形する操作のみでよい。
【0013】
また、光源に点灯回路部を一体に有する放電バルブを用いたときに灯体にホルダを付加するだけで点灯回路部のケーシングを灯体に対して電気導通させて接地をとることができるとともに、光源を取付座部に対して所定の位置に安定した状態に保持させることが可能になる。同時に、ホルダによりセットスプリングの支持部を灯体に支持させることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態1の固定構造の部分分解斜視図。
【図2】係止片部の拡大斜視図。
【図3】光源を固定する操作を説明するための背面図。
【図4】光源を固定した状態の斜視図。
【図5】セットスプリングの動作を説明するための図4のA矢視図。
【図6】セットスプリングの動作を説明するための図4のB矢視図。
【図7】実施形態2の固定構造の部分分解斜視図。
【図8】ホルダを取着した状態の斜視図。
【図9】光源を固定した状態の縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施形態1)
次に、本発明の光源固定構造の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明を自動車のヘッドランプHLに適用した実施形態1の概略構成を示す部分分解斜視図であり、前面側を拡径して開口した回転放物面形状のリフレクタ1と、このリフレクタ1に装着されたランプ光源2とを備えている。ランプ光源2は白熱バルブやLED発光素子を用いた光源として構成することが可能であるが、実施形態1では通電により発光する白熱バルブ(白熱電球)21を用いて構成した例を示している。この白熱バルブ21を用いたランプ光源2は、白熱バルブ21を支持するバルブソケット22を有しており、このバルブソケット22は白熱バルブ21を嵌合支持するソケット部23と、このソケット部23を一体に有する円盤フランジ部24と、この円盤フランジ部24の背面に一体に形成されて白熱バルブ21に電力を供給するコネクタ部25とで構成されている。前記コネクタ部25はコンタクト片25aを有しており、図には表れない車載電源に接続されている電気コネクタが嵌合可能とされている。前記円盤フランジ部24には、円周2箇所、特にバルブソケット22をリフレクタ1に装着したときに上側に位置される円周箇所と、これとは異なる円周箇所のそれぞれに位置決め切欠き24a,24bが形成されている。上側の位置決め切欠き24aは矩形であり、他の位置決め切欠き24bは円弧状であり、両者の形状を相違させている。
【0016】
前記リフレクタ1の背面には前記白熱バルブ21が挿通可能な径寸法で円形をしたバルブ挿通穴11が開口されるとともに、このバルブ挿通穴11に臨んでバルブ取付座部12が形成されている。バルブ取付座部12は前記リフレクタ1の背面のうち前記バルブ挿通穴11を包囲する円環状の領域が座面12aとして構成されている。また、このバルブ取付座部12は、座面12aを囲む略円形をした内壁14と、この内壁14の外周に沿って内形状が略八角形に形成された内壁14よりも高さの高い外壁15からなる壁部13を備えている。そして、内壁13で囲まれる円形領域、すなわちバルブ取付座部12に前記バルブソケット22の円盤フランジ部24が内挿される。また、後述するセットスプリング3によって円盤フランジ部24の前面がバルブ取付座部12の座面12aに当接された状態で当該バルブ取付座部12に固定されるようになっている。
【0017】
このセットスプリング3は、所要の長さの線状スプリング材を略コ字状に曲げ加工しており、中央部分は支持部31として後述するように前記バルブ取付座部12に支持される。セットスプリング3の左右一対の両側部分の先端部はバルブ取付座部12の壁部13よりも外径方向に突出する位置にまで延長されるとともに略U字状に折り曲げ加工された操作係止部32として構成されている。この操作係止部32は、後述するように作業者が操作係止部32を摘んで互いに近接する方向に弾性変形させたときに、当該操作係止部32を前記バルブ取付座部12の壁部13に係止することが可能とされている。また、前記支持部31と左右一対の各操作係止部32の間の部分はバルブ取付座部12の外壁15の八角形状に沿うように左右外側に台形に近い形状で膨らむように曲げ加工された弾接部33として構成されている。この弾接部33には前記バルブソケット22の円盤フランジ部24の背面に当接したときに、当該背面に弾接して円盤フランジ部24をバルブ取付座部12の座面12aに押圧させる弾接力を発揮するように長さ方向の2箇所にそれぞれ前方に向けて弧状に屈曲した屈曲部34,35を形成している。
【0018】
前記バルブ取付座部12には、前記内壁14の円周方向の2箇所にそれぞれ中心に向けて突出した位置決め突起14a,14bが設けられている。ここでは内壁14の円周上側位置には矩形の位置決め突起14aが設けられ、これとほぼ直角な円周位置には円弧状の位置決め突起14bが設けられており、それぞれ前記円盤フランジ部24の上側と左側の位置決め切欠き24a,24bに嵌合可能とされている。これにより、円盤フランジ部24を内壁14内に挿入したときには、これらの位置決め突起14a,14bと位置決め切欠き24a,24bとによりバルブソケット22の円周方向の位置決めが行われるとともに、バルブソケット22及び白熱バルブ21がバルブ軸回りに回動されることが防止される。また、前記壁部13の円周上側位置には円周一部を外径方向に突出したフック状の掛合部16が設けられており、この掛合部16には前記セットスプリング3の支持部31が外側から掛合され、当該セットスプリング3が掛合部16に支持されるようになっている。
【0019】
一方、前記壁部13の円周下側の部分には前記外壁15よりも外径方向に突出した係止片部17が形成されている。図2に拡大して示すように、係止片部17は壁部13の接線方向両側に突出した一対の両袖17aを備えており、この両袖17aと前記外壁15の背面との間に前記セットスプリング3の左右一対の各操作係止部32をそれぞれ外側方向から内側方向に向けて挿通かつ案内することができるようにガイド溝18がそれぞれ形成されている。ここでは左右の各ガイド溝18はそれぞれ前記外壁15の背面の円周一部を削除し、この削除した部分と前記係止片部17の両袖17aとの間に外側から内側に向けて壁部13の底部側に向けて傾斜されたスリット状の溝として構成されている。また、これら左右のガイド溝18の上底面、ここでは前記係止片部17の両袖17aの下面には、下方に向けて突出され、しかも円周方向に沿って山形をした係止突起17bが形成されている。この係止突起17bは山型の斜面の傾斜角度が比較的に小さな角度に形成されており、後述するように、セットスプリング3の操作係止部32を係止突起17bの斜面に沿って移動させることは可能であるが、当該操作係止部32がガイド溝18内において上底面方向に付勢された状態のときには係止突起17aによって斜面に沿って移動することが係止されるような形状、寸法に形成されている。
【0020】
以上の構成において、ランプ光源2をリフレクタ1に固定する際には、図3(a)を参照すると、先ずリフレクタ1のバルブ取付座部12の掛合部16にセットスプリング3の支持部31を掛合する。このとき当該セットスプリング3の形状により、左右の各弾接部33は外壁15の内縁に沿った位置に配置され、同じく左右の各操作係止部32は係止片部17の左右のガイド溝18に臨む位置に配置される。次いで、リフレクタ1の背面側からランプ光源2の白熱バルブ21をバルブ挿通穴11に挿入し、バルブソケット22の円盤フランジ部24を内壁14で囲まれたバルブ取付座部12に内挿し、当該円盤フランジ部24の前面をバルブ取付座部12の座面12aに当接させる。このときセットスプンリグ3の弾接部33は内壁14の背面上に位置されているので円盤フランジ部24の内挿、当接の邪魔になることはない。
【0021】
次いで、図3(b)を参照すると、作業者がセットスプリング3の左右の操作係止部32を指で摘んで互いに近接するように内側に向けて変形させると、各操作係止部32はそれぞれガイド溝18内に進入されて行き、これと同時に弾接部33は内径方向に移動されてバルブソケット22の円盤フランジ部24の背面上にまで移動される。弾接部33は屈曲部34,35において円盤フランジ部24の背面に当接され、この当接によって弾接部33は弾性変形され、その反力で円盤フランジ部24をバルブ取付座部12の座面12aに向けて弾接させる。また、セットスプリング3のかかる弾性変形により左右の操作係止部32はガイド溝18内において上底面に向けて付勢される状態となり、その付勢力によって操作係止部32はガイド溝18の上底面に弾接された状態となる。この状態で作業者がさらに操作係止部32を内側に変形させると、操作係止部32は付勢力に抗して係止突起17bを乗り越えてガイド溝18の最内側端にまで移動される。そのため、作業者が操作係止部32から手を離してそれまでの変形力を解除しても、操作係止部32はガイド溝18の最内側端において上底面に当接した状態で拘束され、係止突起17bを乗り越えてガイド溝18から離脱されることが係止される。したがって、弾接部33は円盤フランジ部24の背面を弾接してバルブ取付座部12の座面12aに弾接した状態が保持されることになり、図4に示すように、ランプ光源2をバルブ取付座部12、すなわちリフレクタ1に固定させることが可能になる。このように、左右の操作係止部32をそれぞれ内側に変形させるという単一操作を行うだけでセットスプリング3をバルブ取付座部12に係止させてランプ光源2をリフレクタ1に固定することが可能になり、ランプ光源2の固定作業を単純化することが可能になる。特に、ランプ光源2をバルブ取付座部12にセットしないときにはセットスプリング3は操作係止部32が係止突起17bに係止されることがないため、弾接部33は常に外側方向に弾性退避した状態にあるので、この状態においてランプ光源2をバルブ取付座部12にセットすることが可能であり、ランプ光源2の固定作業が行い易いものとなる。
【0022】
ここで、図3(a)に示したように、ランプ光源2をバルブ取付座部12に配設しない状態でセットスプリング3のみをバルブ取付座部12に取り付けた状態では、図5(a),(b)にそれぞれ図3(a)のA矢視図、B矢視図を示すように、セットスプリング3は弾接部33が内壁14の背面に沿った位置にあり、この状態から操作係止部32を操作して内側に変形してガイド溝18内に進入させても、バルブ取付座部12にはランプ光源2の円盤フランジ部24が内挿されていないため、弾接部33の屈曲部34,35が当該円盤フランジ部24の背面に当接して弾接力が発生することはない。そのため、セットスプリング3は操作係止部がガイド溝18の上底面に向けて付勢されることはなく、セットスプリング3は図5(a)に実線で示す状態と鎖線で示す状態とに自由に移動可能な状態である。したがって、操作係止部32はガイド溝18内において係止突起17bを乗り越えて内外方向と上下方向のいずれの方向にも容易に移動でき、操作係止部32が係止突起によって係止されることもない。
【0023】
一方、図3(b)に示したように、バルブ取付座部12にランプ光源2がセットされているときには、円盤フランジ部24がバルブ取付座部12に内挿されているので、セットスプリング3の操作係止部32を操作すれば、図6(a),(b)にそれぞれ図3(b)のA矢視図、B矢視図を示すように、弾接部33の屈曲部34,35が当該円盤フランジ部24の背面に当接して弾接力が発生し、セットスプリング3は操作係止部32がガイド溝18の上底面に向けて付勢される状態となる。これにより、操作係止部32はガイド溝18内において上下方向に容易に移動することができなくなり係止突起17bを乗り越えることもできなくなる。そのため、操作係止部32は係止突起17bによって内外方向への移動が係止されることになり、セットスプリング3によるランプ光源2の固定が可能になる。
【0024】
ランプ光源2をリフレクタ1から離脱するためにバルブソケット22の固定を解除するには、セットスプリング3の左右の操作係止部32をガイド溝18の下底面に向けて下方に押下して変形すればよい。この押下変形により操作係止部32は係止突起17bによる係止が解除され、さらにセットスプリング3の弾性復帰力によってそれぞれ外側方向に移動されガイド溝18から離脱される。これと同時に左右の弾接部33もそれぞれ外側に弾性復帰されて円盤フランジ部24の背面から退避され、円盤フランジ部24をバルブ取付座部12に弾接する力が解放され、ランプ光源2をリフレクタ1から取り外すことが可能になる。なお、この操作は左右の操作係止部32に対してそれぞれ個別に行っても、あるいは同時に行ってもよい。このように、左右の操作係止部32をガイド溝18の下底面に向けて一方向に押下変形させるという単一操作を行うだけでセットスプリング3による弾接状態を解除し、ランプ光源2をリフレクタ1から離脱させることが可能になり、ランプ光源2の取り外し作業を単純化することが可能になる。
【0025】
実施形態1ではセットスプリング3の支持部31をフック状の掛合部16においてバルブ取付座部12に支持させているが、別部材として構成した舌片状の支持片をネジ等を利用してバルブ取付座部12に固定し、この支持片でセットスプリング3の支持部31を壁部13の一部に固定的に保持させるようにしてもよい。このようにすれば、セットスプリング3を操作する際にセットスプリング3が掛合部16から脱落することを確実に防止でき、操作性を高めることができる。
【0026】
実施形態1ではランプ光源2として白熱バルブの例を示したが、LED発光素子をランプ光源として構成してもよい。この場合には実施形態1のバルブソケット22はLED発光素子を保持するベース部材に置き換え、当該ベース部材に円盤フランジ部24を構成し、この円盤フランジ部24を利用してリフレクタ1のバルブ取付座部12に固定するように構成すればよい。
【0027】
(実施形態2)
図7は本発明の実施形態2の部分分解斜視図であり、実施形態1と等価な部分には同一符号を付してある。この実施形態2ではランプ光源2Aとしてイグナイターと称する点灯回路部が一体に設けられた放電バルブで構成されている例を示している。すなわち、ランプ光源2Aは放電により発光する放電バルブ21Aと、この放電バルブ21Aを支持するとともにリフレクタ1への固定を行う円盤フランジ部24と、この円盤フランジ部24の背面側に一体に設けられて内部に点灯回路を内蔵した点灯回路部26とで構成されている。この点灯回路部26は金属製のケーシング26a内に組み立てられており、このケーシングの一部に設けられたコネクタにより外部電源に電気接続されるようになっている。円盤フランジ部の構成は実施形態1のバルブソケットの円盤フランジ部とほぼ同じ構成であるが、ここでは円盤フランジ部24と点灯回路部26のケーシング26aの前面との間にはセットスプリング3を進入させて円盤フランジ部24の背面に当接するための環状の間隙を設けておくことが肝要である。
【0028】
前記リフレクタ1の背面のバルブ取付座部12の構成は実施形態1と殆ど同じであるが、実施形態2では外壁15の上面に略密接するようにホルダ4を取着した点が特徴とされている。このホルダ4はバルブ取付座部12の壁部13に対応するように外形が略八角形で内形が円形をした導電性板材、ここでは金属板で形成されており、その周方向の上側部と下側部にそれぞれネジ穴43が開口され、これらネジ穴43とバルブ取付座部12の外壁15の背面に設けた2つのネジ穴19を利用してネジ19A(図8参照)によりバルブ取付座部12の壁部13の背面に密接するように固定される。ここで、ネジ穴19は内面がリフレクタ1の背面に設けた導電膜に電気的に導通するように導電処理されており、ネジ19Aには導電性のネジを用いている。前記ホルダ4は内径が前記円盤フランジ部24よりも大径で、前記外壁15の内径に略等しくされており、その内周に沿って複数個の導通用舌片41を板厚方向に切り起こしている。これらの導通用舌片41はホルダ4の背面から突出し、後述するようにランプ光源2Aの点灯回路部26の金属製のケーシング26aの前面に弾接して電気的な導通をとるように構成されている。さらに、ホルダ4の円周方向の上側部には周方向に所要の間隙をおいて2つの押圧用舌片42を内径方向に切り起こしている。これらの押圧用舌片42は前記内壁14の円周方向上側部に設けた矩形の位置決め突起14aを周方向に挟む位置に配置されて内径方向に突出し、後述するようにランプ光源2Aの円盤フランジ部24の円周方向の上側縁に弾接して円盤フランジ部24を円周方向の下方に向けて付勢するように構成されている。
【0029】
この実施形態2でもランプ光源2Aをセットスプリング3を用いてリフレクタ1に固定する点は実施形態1と同じである。セットスプリング3は実施形態1の構成と全く同じであるが、図8に示すように、バルブ取付座部12にセットスプリング3を配設し、その上からホルダ4を被せて支持部31をバルブ取付座部12に支持させている。この支持を行うために、バルブ取付座部12の外壁15の円周方向上側部に細幅の凹溝16aを形成しており、この凹溝16a内にセットスプリング3の支持部31を内挿することで、バルブ取付座部12に取着したホルダ4でセットスプリング3の支持部31を凹溝16a内に封じ込み、セットスプリング3を支持している。また、セットスプリング3の弾接部33と操作係止部32はバルブ取付座部12においては壁部13の外壁15と内壁14との高さの差により生じる間隙内に延長配置され、操作係止部32はホルダ4及び壁部13から径方向に突出配置されることになる。
【0030】
以上の構成において、ランプ光源2Aをリフレクタ1に固定する手順は実施形態1と同じである。すなわち、リフレクタ1の背面側からランプ光源2Aの放電バルブ21aをバルブ挿通穴11に挿入し、円盤フランジ部24を内壁14で囲まれたバルブ取付座部12に内挿し、当該円盤フランジ部24の前面をバルブ取付座部12の座面12aに当接させる。このとき、図9に示すように、点灯回路部26のケーシング26aの前面はホルダ4の背面から突出している導通用舌片41に弾接され、ケーシング26aを導通用舌片41を介してリフレクタ1に電気的に導通させ、ケーシング26aを接地状態とする。また、これと同時に円盤フランジ部24の円周方向上側部の外縁はホルダ4の押圧用舌片42に弾接され、円周方向の下方に向けて付勢される。この付勢力により円盤フランジ部24は内壁14の円周方向下側部の内縁に押圧されることになり、バルブ取付座部12における円盤フランジ部24の固定位置、すなわちランプ光源2Aの固定位置を安定なものとする。
【0031】
しかる上で、実施形態1と同様に、作業者がセットスプリング3の左右の操作係止部32を摘んで内側に向けて変形させると、各操作係止部32はそれぞれガイド溝18内に進入され、これと同時に弾接部33は内径方向に移動されて点灯回路部26と円盤フランジ部24との間に進入され、円盤フランジ部24の背面にまで移動される。弾接部33は屈曲部34,35において円盤フランジ部24の背面に当接され、この当接によって弾接部33は弾性変形され、その反力で円盤フランジ部24をバルブ取付座部12の座面12aに向けて弾接させる。また、セットスプリング3のこの弾性変形により左右の操作係止部32はガイド溝18内において上底面に向けて付勢される。これにより、操作係止部32が係止突起17aを乗り越えてガイド溝18の最内側端にまで移動されたときには、作業者が操作係止部32から手を離しても操作係止部32が係止突起を乗り越えてガイド溝18から離脱すことが係止され、左右の係止操作部32は係止突起17bにより係止される。したがって、弾接部33は円盤フランジ部24の背面を弾接してバルブ取付座部12の座面12aに弾接した状態が保持されることになり、ランプ光源2Aをバルブ取付座部12に固定させることが可能になる。すなわち、左右の操作係止部32をそれぞれ内側に変形させるという単一操作を行うだけでセットスプリング3をバルブ取付座部12に係止させてランプ光源2Aをリフレクタ1に固定することが可能になり、ランプ光源2Aの固定作業を単純化することが可能になる。
【0032】
ランプ光源2Aをリフレクタから離脱する場合も実施形態1と同じである。すなわち、左右の操作係止部32をガイド溝18の下底面方向に押下して変形すればよい。この押下変形により操作係止部32は係止突起17bによる係止が解除され、さらにセットスプリング3の弾性復帰力によって左右の操作係止部32はそれぞれ係止突起17bを乗り越えて外側方向に移動されガイド溝18から離脱される。これと同時に左右の弾接部33もそれぞれ外側に弾性復帰されて円盤フランジ部24の背面から退避されるため、円盤フランジ部24をバルブ取付座部12の座面12aに弾接する力が解放され、ランプ光源2Aをリフレクタ1から取り外すことが可能になる。したがって、左右の操作係止部32をガイド溝の下底面に向けて一方向に押下変形させるという単一操作を行うだけでセットスプリング3による弾接状態を解除し、ランプ光源2Aをリフレクタから離脱させることが可能になり、ランプ光源2Aの取り外し作業を単純化することが可能になる。
【0033】
また、実施形態2ではバルブ取付座部12にホルダ4を取着しておけば、ランプ光源2Aを固定したときにはホルダ4の導通用舌片41によって点灯回路部26のケーシング26aをリフレクタ1に自動的に電気的に導通させ、ケーシング26aを接地状態とすることができる。これと同時にホルダ4の押圧用舌片42によってランプ光源2Aはリフレクタ1のバルブ挿通穴11の下側に付勢した状態で押圧保持される。したがって、ランプ光源2Aを接地するための電気的接続手段を独立して設ける必要はなく、またランプ光源2Aを位置拘束するための独立した手段も不要となり、固定構造の簡略化を図る上で有利になる。
【0034】
実施形態2では点灯回路部としてイグナイターを一体化した放電バルブの例を示したが、放電用の高電圧を発生する回路を含めた放電点灯回路部を一体化した放電バルブについても適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
実施形態1,2ではリフレクタにランプ光源を固定する例を示したが、本発明はリフレクタにランプ光源を固定する灯具に限られるものではなく、灯具ボディ、あるいは灯具ハウジング等と称する灯体に各種の光源をセットスプリングで固定する灯具に適用可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 リフレクタ
2,2A ランプ光源
3 セットスプリング
4 ホルダ
11 バルブ挿通穴
12 バルブ取付座部
13 壁部
14 内壁
15 外壁
16 掛合部
17 係止片部
17b 係止突起
18 ガイド溝
21 白熱バルブ
21A 放電バルブ
24 円盤フランジ部
31 支持部
32 操作係止部
33 弾接部
34,35 屈曲部
41 導通用舌片
42 押圧用舌片




【特許請求の範囲】
【請求項1】
背面に光源を支持するための取付座部を備えた灯体と、前記取付座部に当接される盤状フランジ部を備えた光源と、前記灯体に支持されて前記盤状フランジ部を前記取付座部に弾接させて固定するためのセットスプリングとを備える灯具の光源固定構造であって、前記灯体には前記セットスプリングを係止するために所定方向に向けて突出した係止突起が設けられ、前記セットスプリングは前記灯体に支持される支持部と、手操作されて前記灯体に設けられた前記係止突起に係止される操作係止部と、これら支持部と操作係止部との間の領域で前記盤状フランジ部の背面に弾接する弾接部とを備えており、前記操作係止部を一方向に操作したときに当該弾接部が前記盤状フランジ部の背面に弾接してこれと異なる方向の弾性反力が生じ、この弾性反力で前記操作係止部が前記係止突起に向けて付勢されて前記係止突起に係止される構成であることを特徴とする灯具の光源固定構造。
【請求項2】
前記セットスプリングは略コ字状に曲げ加工された線状スプリング材で形成され、中央部分が支持部として前記灯体に支持され、一対の両端部分が互いに近接する方向に弾性変形可能な操作係止部として構成され、前記灯体は前記取付座部に灯体の背面方向に立設した壁部に前記一対の操作係止部が互いに近接方向に変形されたときに進入可能なガイド溝を有しており、前記係止突起は当該ガイド溝の上底面に下底面方向に向けて突出した突起として形成され、前記操作係止部は前記弾接部が前記盤状フランジ部の背面に当接していないときには前記係止突起には係止せず、前記弾接部が盤状フランジ部の背面に弾接しているときに前記係止突起に係止されることを特徴とする請求項1に記載の灯具の光源固定構造。
【請求項3】
前記光源は盤状フランジ部の背面側に点灯回路部を一体に有する放電バルブとして構成されており、前記灯体には前記点灯回路部のケーシングに弾接する複数の弾接片を備えた導電板からなるホルダが固定支持され、前記ホルダは前記セットスプリングの支持部を灯体との間に挟持するとともに、前記弾接片は前記ケーシングの前面に弾接して当該ケーシングを前記灯体に電気接続する導電片と、前記ケーシングの上面に弾接してケーシングを下方に付勢する付勢片とで構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の灯具の光源固定構造。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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