説明

灯油ポリ容器用のポンプ装置

【課題】 灯油ポリ容器の一方のキャップに取り替えて装着して使用することで、給油ポンプの後片付けを不要とし、作業に伴う灯油の垂れや手が灯油で汚れることがなく、快適な作業を可能とするポンプ装置を提案する。
【解決手段】 灯油ポリ容器1内の灯油に浸漬する吸上管10と、暖房器具等のタンクへ灯油を吐出する吐出ホース20から成り、灯油ポリ容器1のキャップと代替可能なキャップ30を吸上管10が貫通してキャップ30と一体とし、灯油ポリ容器1にキャップ30を装着して吸上管10の先端が灯油ポリ容器1内の底部に到達し、キャップ30に、給油作業後の吐出ホース20を挿通する開口31を設け、吐出ホース20を保持して開口31が密閉されるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、灯油ポリ容器から暖房器具等のタンクへ給油するための手押し又は電動のポンプ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
灯油を燃料とする石油ファンヒーターや石油ストーブ等の暖房器具への給油は、灯油を貯留したポリ容器から暖房器具のカートリッジ式タンクへ、手押しポンプ又は電動ポンプ等の給油ポンプを用いて行われている。灯油ポリ容器は灯油の変質を防ぐために赤や青に着色され、可搬性から容量18リットルのものが標準的である。また、給油ポンプは、灯油ポリ容器内の灯油に浸漬する吸上管と、暖房器具等のタンクへ灯油を吐出する吐出ホースから成り、サイホン原理で給油する安価な手押しポンプが広く用いられ、乾電池を電源とするポンプを備えた電動のものも用いられている。
【0003】
一方、こうした給油ポンプによる給油作業において、灯油の垂れ、灯油の揮発による灯油臭、手が灯油で汚れること、灯油で濡れた給油ポンプの保管等の課題がある。これらの課題を解決する手段として、実開平6−6300号公報(特許文献1)に記載の給油装置が提案されている。しかし、この給油装置は部品点数が多く、取り扱いも不便で商品化の価値が低いものである。
【特許文献1】実開平6−6300号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明は、灯油ポリ容器の一方のキャップに取り替えて装着して使用することで、給油ポンプの後片付けを不要とし、作業に伴う灯油の垂れや手が灯油で汚れることがなく、快適な作業を可能とするポンプ装置を提案するものである。また、灯油ポリ容器のキャップに代替する一つの部品から成る製品として製作され、取り扱いに優れるととともに、極めて商品価値の高い灯油ポリ容器用のポンプ装置を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
こうした目的を達成するため、この発明の灯油ポリ容器用のポンプ装置は、灯油ポリ容器1内の灯油に浸漬する吸上管10と、暖房器具等のタンクへ灯油を吐出する吐出ホース20から成り、灯油ポリ容器1のキャップと代替可能なキャップ30を吸上管10が貫通してキャップ30と一体とし、灯油ポリ容器1にキャップ30を装着して吸上管10の先端が灯油ポリ容器1内の底部に到達し、キャップ30に、給油作業後の吐出ホース20を挿通する開口31を設け、吐出ホース20を保持して開口31が密閉されるように構成するものである。
【発明の効果】
【0006】
この発明の灯油ポリ容器用のポンプ装置は、灯油ポリ容器のキャップに取り替えてキャップ30を装着して使用し、給油作業後の吐出ホース20を開口31に挿通して保持するもので、ポンプ装置の後片付けが不要であり、キャップ30を装着したままの使用であるから、作業に伴う灯油の垂れや手が灯油で汚れることがなく、快適な給油作業が可能である。
【0007】
また、給油時には開口31により灯油ポリ容器1内は大気と連通して大気圧となり、サイホン原理で容易に給油することができ、給油作業後に吐出ホース20を開口31に挿通して保持し、吐出ホース20内の残余の灯油は灯油ポリ容器1内へ戻されるとともに、開口31が密閉されるので灯油の揮発を防ぐことができ、安全であるとともに周囲に灯油臭が漏れることもない。
【0008】
また、この発明の灯油ポリ容器用のポンプ装置は、吸上管10がキャップ30を貫通して一体とし、灯油ポリ容器のキャップに代替する一つの部品から成る製品として製作され、キャップを取り替えるだけであるから取り扱いに優れる等、極めて実用的で商品価値の高いものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下にこの発明を実施するための最良の形態について、図面を用いて説明する。
図1〜4は、この発明の最初の実施例で、ポンプ装置の全体は図1に示すように構成される。図に示すように、このポンプ装置の基本的構成は、灯油ポリ容器1内の灯油に浸漬する吸上管10と、暖房器具等のタンクへ灯油を吐出する吐出ホース20から成り、手押部40を手押ししてサイホン原理で給油する樹脂製の手押しポンプである。このポンプ装置には、灯油ポリ容器1の一方の開口にそのまま装着可能なキャップ30が設けられ、本例は、標準的な容量18リットルの灯油ポリ容器1の開口φ50mmに適合するものである。
【0010】
吸上管10はキャップ30を貫通し、キャップ30と接合して一体とされている。吸上管10の下端開口に延長管12が挿通されて延長され、延長管12には蛇腹部13が設けられている。延長管12は昇降スライド自在とされ、灯油ポリ容器1にキャップ30を装着した時に、延長管12がその延長量を調整し、蛇腹部13が自在に撓むことで、延長管12の先端すなわち吸上管10の先端が灯油ポリ容器1内の底部に到達し、底部に貯留する灯油を給油可能としている。
【0011】
キャップ30には、給油作業後の吐出ホース20を挿通する開口31が設けられ、この開口31の周縁に円筒32が形成されている。吐出ホース20は全体又は部分的に蛇腹状に形成され、吐出ホース20の下半の適宜の位置に、ゴム等の軟質材で開口31を塞ぐための栓部材22が、吐出ホース20を被覆して設けられている。この栓部材22は、着脱を容易とするとともに、開口31を塞いだ場合に密閉性を確保するために、下方に従って経を細めたテーパー状とされている。
【0012】
図3に、このポンプ装置による給油の状態を示す。図に示すように、灯油ポリ容器1の一方の開口のキャプを取り外し、このポンプ装置のキャップ30を装着し、暖房器具等のタンク3の口金4へ吐出ホース20を挿通して給油する。開口31により灯油ポリ容器1内は大気と連通して大気圧となり、サイホン原理で容易に給油することができる。
【0013】
図4に、このポンプ装置の給油作業後の状態を示す。図に示すように、ポンプ装置のキャップ30は灯油ポリ容器1の開口に装着したままの状態で、吐出ホース20を開口31に挿通し、栓部材22を円筒32に嵌合して開口31を閉塞する。このように、吐出ホース20を保持して開口31が密閉され、吐出ホース20内の残余の灯油は灯油ポリ容器1内へ戻される。以上のように、栓部材22を持って吐出ホース20を開口31から着脱して給油作業を行うことができ、灯油で手が汚れることがない。
【0014】
図5〜9は、この発明の他の実施例で、ポンプ装置の全体は図5に示すように構成される。図に示すように、このポンプ装置の基本的構成も吸上管10と吐出ホース20から成る手押しポンプであり、灯油ポリ容器1の一方の開口にそのまま装着可能なキャップ30が設けられ、吸上管10がキャップ30を貫通し、キャップ30と接合して一体とされている。
【0015】
キャップ30には、同じく吐出ホース20を挿通する開口31が設けられ、この開口31には上方斜めに延びる筒部34が形成されている。筒部34は、キャップ30と一体成形する他、開口31に所定形状の筒体(管体)を接合して形成する。吐出ホース20の下半の適宜の位置に、筒部34の開口端を覆って塞ぐための蓋部材25が、吐出ホース20の外周面に接合して設けられている。この蓋部材25は図7に示すように硬質材で形成され、蓋内頂部にシール材27が設けられ、内周面に凸条26が形成されていて、この凸条26に係合する凹溝35が筒部34の外周面に形成されている。
【0016】
図8に、このポンプ装置による給油の状態を示す。図に示すように、灯油ポリ容器1の一方の開口のキャプを取り外し、このポンプ装置のキャップ30を装着し、暖房器具等のタンク3の口金へ吐出ホース20を挿通して給油する。図示のごとく、蓋部材25が口金4を覆う状態である。前例と同じく、開口31によりタンク内は大気と連通して大気圧となり、サイホン原理で容易に給油することができる。
【0017】
図9に、このポンプ装置の給油作業後の状態を示す。図に示すように、ポンプ装置のキャップ30は灯油ポリ容器1の開口に装着したままの状態で、吐出ホース20を開口31に挿通し、凸条26を凹溝35に係止して蓋部材25で筒部34開口端を覆い、開口31を閉塞する。ここで、シール材27に筒部34開口端が当接して開口31が密閉され、吐出ホース20内の残余の灯油は灯油ポリ容器1内へ戻される。なお、蓋部材25の着脱を容易とするため、凹溝35は筒部34の外周に亘って形成するが、これに係合する凸条26は、蓋部材25の内周面に亘らずに、例えば周に沿って3〜4カ所の位置等の部分的に設けてもよい。以上のように、蓋部材25を持って吐出ホース20を開口31から着脱して給油作業を行うことができ、灯油で手が汚れることがない。
【0018】
以上、実施例について説明したが、この発明はこれらに限定されるものではない。ポンプ装置として乾電池を電源とする電動ポンプを用いることもでき、給油作業後の吐出ホース20を保持して開口31を密閉する手段、構造として様々なものが適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の最初の実施例で、その全体構成図。
【図2】キャップの断面図。
【図3】給油の状態を示す説明図。
【図4】給油作業後の状態を示す説明図。
【図5】この発明の他の実施例で、その全体構成図。
【図6】キャップの断面図。
【図7】蓋部材の断面図。
【図8】給油の状態を示す説明図。
【図9】給油作業後の状態を示す説明図。
【符号の説明】
【0020】
1 灯油ポリ容器
10 吸上管
20 吐出ホース
30 キャップ
31 開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
灯油ポリ容器1内の灯油に浸漬する吸上管10と、暖房器具等のタンクへ灯油を吐出する吐出ホース20から成り、
灯油ポリ容器1のキャップと代替可能なキャップ30を吸上管10が貫通してキャップ30と一体とし、灯油ポリ容器1にキャップ30を装着して吸上管10の先端が灯油ポリ容器1内の底部に到達し、
キャップ30に、給油作業後の吐出ホース20を挿通する開口31を設け、吐出ホース20を保持して開口31が密閉されるように構成した灯油ポリ容器用のポンプ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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