説明

灰溶融炉の排ガス処理システム

【課題】灰溶融炉の排ガスを並設されるごみ焼却炉に供給し、焼却炉排ガスとして排ガス処理設備に導いて処理するようにして合理化を図る灰溶融炉の排ガス処理システムを提供する。
【解決手段】ごみ焼却炉1と並設される灰溶融炉8からの排ガスを冷却・除塵する排ガス処理設備3を経て浄化処理された後、煙突7から大気中に放出する排ガス処理システムであって、灰溶融炉8からの排ガスを高温通風手段20によりごみ焼却炉1に供給して再燃焼させ、ごみ焼却炉1から排ガス処理設備3に送って冷却・除塵、および乾式または湿式での有害ガス処理して後、誘引通風機5で煙突7に送入し大気中に放出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、灰溶融炉で発生する排ガスを、並設されるごみ焼却炉の排ガスとともに処理する灰溶融炉の排ガス処理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ごみ焼却炉での廃棄物焼却によって発生する焼却灰や排ガス中から分離した飛灰は、灰溶融炉において溶融固化処理されて、有害物質の固化処理と減容化がなされている。一方、従来、ごみ焼却炉と前記灰溶融炉が並設される場合、図3で示されるように、ごみ焼却炉100で発生する排ガス(以下、単に「焼却炉排ガス」という。)は、煙道101によりごみ焼却炉用排ガス処理設備102に送られて、そのごみ焼却炉用排ガス処理設備102において冷却されて除塵され、さらに乾式または湿式での有害ガス除去をして無害化処理された後、煙道103を通じて誘引通風機104によって煙突105に送られ大気中に放出されている。そして、灰溶融炉106で発生した排ガス(以下、単に「溶融炉排ガス」という。)は、前記焼却炉排ガスと同様に煙道107により灰溶融炉用排ガス処理設備108に送られて、その灰溶融炉用排ガス処理設備108で冷却され、除塵された後乾式または湿式で有害ガス除去されて無害化された後に誘引通風機109により煙道110を通じて処理済み焼却炉排ガスの煙道103aに合流させ、処理済み焼却炉排ガスとともに煙突105から放散させている。なお、前記処理済みの排ガスは、それぞれ単独で煙突から放出している場合もある。
【0003】
このように、焼却炉排ガスと溶融炉排ガスが、それぞれ別個の排ガス処理設備102,108によって処理されているのは、焼却炉排ガスに比べて、溶融炉排ガスが高温でダストの同伴量が多いことから、誘引通風機109に流入する前に行われる減温および除塵処理が焼却炉排ガスの条件より厳しくなることにある。このようなことから、設備機器の削減によるコストダウンなど設備の合理化とともに、設備機器の削減によるメンテナンスの合理化を図るために、両方の排ガス処理を一系統にまとめる技術について、例えば特許文献1,2などによって提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開2002−162009号公報
【特許文献2】特開平11−190508号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、焼却炉排ガスに比べて高温の溶融炉排ガスを前記焼却炉排ガスに合流させる方式によれば、焼却炉排ガスの容量に比べて溶融炉排ガスの容量が少ないといえども排ガス処理設備の処理容量が大きくなる。したがって、焼却炉用排ガス処理設備をそのままで利用することができないという問題点がある。そのために、焼却炉用排ガス処理設備の能力を高める必要が生じ、新たに処理容量の大きい排ガス処理設備を設けることになり、コストアップが避けられないという問題点がある。
【0006】
また、溶融炉排ガスを処理する処理工程では、灰溶融炉から灰溶融炉用排ガス処理設備に送入される排ガスが高温であるために、その溶融炉排ガスを移送するには高温ガスを取扱う機器が必要となり、通常の手段(誘引通風機)では耐久性に問題がある。
【0007】
本発明は、前述のような問題点を解決するためになされたもので、灰溶融炉の排ガスを並設されるごみ焼却炉に供給し、焼却炉排ガスとして排ガス処理設備に導いて処理するようにして合理化を図る灰溶融炉の排ガス処理システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明の灰溶融炉の排ガス処理システムは、
ごみ焼却炉と並設される灰溶融炉からの排ガスを冷却・除塵する排ガス処理設備を経て浄化処理した後、煙突から大気中に放出する排ガス処理システムにおいて、
灰溶融炉からの排ガスを高温通風手段によりごみ焼却炉に供給して再燃焼させ、ごみ焼却炉から排ガス処理設備に送って冷却・除塵、および乾式または湿式で有害ガス除去処理して後、誘引通風機で煙突に送入し大気中に放出させることを特徴とするものである。
【0009】
前記発明において、前記高温通風手段は、排ガスを導通させる導通管と、この導通管の外側に配されるケーシングと、このケーシングと前記導通管とによって形成される円筒状の空間部とを備え、前記ケーシング内の先端部に形成されるスロートと先端に向かって拡開される吹き出し口とが一軸上に配設され、前記導通管の先端と前記スロートの入口側との間に駆動ガス噴出口が形成されて、かつ前記空間部の後端部に駆動ガス入口が設けられた構成であるのが好ましい(第2発明)。
【0010】
また、前記高温通風手段における前記スロートと駆動ガス吹き出し口の周壁面は、耐火物で形成されているのが好ましい(第3発明)。また、前記駆動ガス入口は、前記ケーシングの空間部に対して接線方向に設けられて流入する駆動ガスが空間部内で旋回しながら駆動ガス噴出口から噴出するように形成されているのがよい(第4発明)。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、灰溶融炉からの排ガスはごみ焼却炉に送って再燃焼させ、このごみ焼却炉からの排ガスとして排ガス処理設備で冷却・除塵および乾式または湿式で有害ガス除去処理を行わせ、無害化した後煙突から大気中に放出するようにされるので、従来、ごみ焼却炉と灰溶融炉との二系統でそれぞれ排ガス処理を行っていたのを、ごみ焼却炉の排ガス処理工程として処理でき、排ガス処理設備の能力を増大させることなく排ガス処理が可能になる。しかも、設備機器を少なくすることが可能になり、設備費削減効果が得られる。また、灰溶融炉からの排ガスをごみ焼却炉に送入することにより、熱エネルギーの有効利用ができるという効果が得られる。さらに、設備機器を少なくすることにより、設備機器のメンテナンスに要する費用の削減も可能になり、合理化を図ることができるという効果を奏する。
【0012】
前記第2発明によれば、高温の排ガスを誘引してごみ焼却炉に送入するのに、簡単な構成で駆動機構を必要とせず無理なく運転ができ、特に、高温の排ガスを誘引する駆動ガスを用いて導通管を冷却する働きを兼用させることにより、高温の排ガスを取扱うにも拘らず耐久性を確保できるという利点を有する。
【0013】
また、第3発明の構成を採用することにより、高温の排ガスの流動に対してその機構を損なうことなく誘引効果を維持できる。また、第4発明の構成を採用することにより、駆動ガスをその噴出口からむらなく噴出させて誘引効果を高めることができ、併せて導通管の冷却効果も確保できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に本発明による灰溶融炉の排ガス処理システムの具体的な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0015】
図1には本発明に係る灰溶融炉の排ガス処理システムの概要図が、図2には高温通風装置の一実施形態の断面図が、それぞれ示されている。
【0016】
この実施形態の灰溶融炉の排ガス処理システムは、ごみ焼却炉1に並設される灰溶融炉で発生する排ガスを処理するものであり、ごみ焼却炉1で発生する焼却炉排ガスは煙道2により排ガス処理設備3に送られ、この排ガス処理設備3において冷却・除塵および排ガス中の有害ガスなどを除去して清浄化し、浄化された排ガスを煙道4に設けられる誘引通風機5により煙道6を通じて煙突7から大気中に放出する。前記排ガス処理設備3には、ごみ焼却炉1からの高温排ガスを除塵に適する温度まで冷却する排ガス冷却装置31,冷却された排ガス中に含まれる飛灰など固形物を除去する除塵装置32および除塵された排ガス中に含まれる有害ガスを除去する乾式または湿式の有害ガス除去装置33などを備えている。
【0017】
一方、灰溶融炉8で発生する溶融炉排ガスは、排ガス出口から煙道9中に設けられた高温通風手段20に誘引されて煙道10を通じて前記ごみ焼却炉1の燃焼室に供給され、二次燃焼ガスに混入されて再燃焼される。
【0018】
前記高温通風手段20は、図2に示されるように、円筒状のケーシング21の軸心に、ケーシング21の後端部に設けられた排ガス入口22と直結されて軸線に沿い所要口径の導通管23が設けられ、この導通管23の外周とケーシング21との間に所要間隔で空間部24が形成されている。前記空間部24の後端部には接線方向に駆動ガス入口25が設けられ、この駆動ガス入口25から流入する駆動ガスが前記導通管23の外周に沿い旋回しながら駆動ガス噴出口26から噴出されるようにされている。
【0019】
前記ケーシング21内の先端部には、前記導通管23の口径に合わせた口径でスロート部27と下流方向に拡開するテーパ孔に形成された吹き出し口28が同軸心上に設けられている。そして、前記導通管23の先端23aと前記スロート27の内端縁27aとの間に細幅で環状の駆動ガス噴出口26が形成され、前記空間部24の前端部をその駆動ガス噴出口26に向かって絞縮する形状にテーパ形の金属壁板29によって形成されている。なお、前記ケーシング21の後端部に設けられた排ガス入口22および前端部に設けられたスロート27と連接する吹き出し口28の周壁面は、耐火物22a,28aで形成されている。
【0020】
このように構成される高温通風手段20は、駆動ガスとして送風機11により空気を駆動ガス入口25からケーシング21内の空間部24に送り込むと、その空間部24に対して接線方向に圧送空気(駆動ガス)が送入されるので、この圧送空気は、円筒状に形成される空間部24内で導通管23の外周に沿って旋回しながら後端から先端側に流動する。空間部24を旋回流動した空気は、空間部24の先端の絞縮部分で絞られて、導通管23の先端23aとスロート27の端縁27aとの間に形成される駆動ガス噴出口26を通じてスロート27内に高速で噴出される。
【0021】
前記駆動ガス噴出口26から高速で噴出される空気(駆動ガス)は、スロート27を経て拡開テーパ孔にされた吹き出し口28に流動することにより、導通管23内が負圧になり、排ガス入口22から導通管23を通じて灰溶融炉からの排ガスを誘引し導入し、スロート27から吹き出し口28を経て煙道10に送られる間で誘引される排ガスに駆動ガスが混合され、流動が加速される。したがって、誘引される溶融炉排ガスは煙道10を通じて継続的にごみ焼却炉1に供給される。
【0022】
このように、高温通風手段20は、回転機構を備えることなく排ガスの圧送を行えるので、灰溶融炉8で発生する排ガスを高温状態のまま直接誘引してごみ焼却炉1に供給することができる。なお、導通管は高温排ガスに直接曝されることになるが、常温の空気を駆動ガスとして使用するとともに、その空気によって外周部を冷却することになり、耐久性を確保することができるのである。
【0023】
灰溶融炉8で発生した排ガスは、前述の高温通風手段20によってそのままの状態でごみ焼却炉1に供給することができるので、この排ガスが所有する顕熱をごみ焼却炉での燃焼に有効利用することができる。そして、灰溶融炉8で発生する排ガスは、ごみ焼却炉1にて再燃焼されてごみ焼却炉の排ガスとして前記排ガス処理設備3により処理されることになるので、排ガスの処理設備が一系統になり、処理容量も大きく増加することなく処理できるから、設備規模を拡大せずに処理することができるのである。
【0024】
したがって、建設時の設備費も従来の方式に比べて大きく削減できることになる。また、排ガス処理設備の機器も少なくなり、これに伴って、メンテナンスに要する費用も削減できることになるのである。
【0025】
以上の実施形態の説明では、灰溶融炉で発生する排ガス中に未燃ガスを含む場合について記載したが、溶融炉排ガスに未燃ガスを含まない場合には、高温通風手段20によって誘引した排ガスを、煙道10から煙道10′によって焼却炉排ガスの排ガス処理設備3への煙道2に供給し、焼却炉排ガスとともにその排ガス処理設備3で処理するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る灰溶融炉の排ガス処理システムの概要図
【図2】高温通風装置の一実施形態の断面図
【図3】従来のごみ焼却炉および灰溶融炉の排ガス処理システムの概要図
【符号の説明】
【0027】
1 ごみ焼却炉
2,4,6,9,10 煙道
3 排ガス処理設備
5 誘引通風機
7 煙突
8 灰溶融炉
11 駆動ガスの送風機
20 高温通風手段
21 ケーシング
23 導通管
24 空間部
25 駆動ガス入口
26 駆動ガス噴出口
27 スロート
28 吹き出し口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ごみ焼却炉と並設される灰溶融炉からの排ガスを冷却・除塵する排ガス処理設備を経て浄化処理した後、煙突から大気中に放出する排ガス処理システムにおいて、
灰溶融炉からの排ガスを高温通風手段によりごみ焼却炉に供給して再燃焼させ、ごみ焼却炉から排ガス処理設備に送って冷却・除塵、および乾式または湿式での有害ガス処理して後、誘引通風機で煙突に送入し大気中に放出させることを特徴とする灰溶融炉の排ガス処理システム。
【請求項2】
前記高温通風手段は、排ガスを導通させる導通管と、この導通管の外側に配されるケーシングと、このケーシングと前記導通管とによって形成される円筒状の空間部とを備え、前記ケーシング内の先端部に形成されるスロートと先端に向かって拡開される吹き出し口とが一軸上に配設され、前記導通管の先端と前記スロートの入口側との間に駆動ガス噴出口が形成されて、かつ前記空間部の後端部に駆動ガス入口が設けられた構成である請求項1に記載の灰溶融炉の排ガス処理システム。
【請求項3】
前記高温通風手段における前記スロートと駆動ガス噴出口の周壁面は、耐火物で形成されている請求項2に記載の灰溶融炉の排ガス処理システム。
【請求項4】
前記駆動ガス入口は、前記ケーシングの空間部に対して接線方向に設けられて流入する駆動ガスが空間部内で旋回しながら駆動ガス噴出口から噴出するように形成されている請求項2に記載の灰溶融炉の排ガス処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−14561(P2008−14561A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−185428(P2006−185428)
【出願日】平成18年7月5日(2006.7.5)
【出願人】(000133032)株式会社タクマ (308)
【Fターム(参考)】