災害救助ジャッキ付き脚立
【課題】ジャッキ及び脚立として使用することができ、ジャッキ使用時に安定性が高く、倒壊した構造物の奥に挿入することができる災害救助ジャッキ付き脚立を提供する。
【解決手段】災害ジャッキ付き脚立は、2本の縦材21とこれら2本の縦材21の間にその両端を固定して設けられた複数の横桟22とからなる一対の梯子部の頭部同士を回転自在且つ着脱自在に連結できる脚立において、前記2本の縦材21の間に設けられている横桟22のうち最上部の横桟が2本の縦材21の上端を接近離反方向へ移動可能なジャッキ部4からなり、下端側の横桟22の少なくとも一端側が2本の縦材21のいずれかに回転自在に連結されてなり、これら最上部と下端側の横桟22の中間に設けられた横桟22は2本の縦材21の双方又は一方に着脱自在である。
【解決手段】災害ジャッキ付き脚立は、2本の縦材21とこれら2本の縦材21の間にその両端を固定して設けられた複数の横桟22とからなる一対の梯子部の頭部同士を回転自在且つ着脱自在に連結できる脚立において、前記2本の縦材21の間に設けられている横桟22のうち最上部の横桟が2本の縦材21の上端を接近離反方向へ移動可能なジャッキ部4からなり、下端側の横桟22の少なくとも一端側が2本の縦材21のいずれかに回転自在に連結されてなり、これら最上部と下端側の横桟22の中間に設けられた横桟22は2本の縦材21の双方又は一方に着脱自在である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脚立に関し、特に、災害時の救助活動に用いることができるジャッキが備えられた脚立に関する。
【背景技術】
【0002】
地震などの災害時には、周辺住民などによる初期救助活動がきわめて大きな効果を発揮する。このような初期救助活動においては、救助用具として、従来から、脚立、車載のジャッキ、バール、のこぎり、ハンマ等の日常使用する工具が用いられている。上述のような工具は、日常生活で用いられるものであるので、広く普及しており、早急に入手しやすい。また、日常生活で操作されるものであるので、マニュアルなどを必要とせずに、直感的に使用方法が理解できる。更に、普段から使用されているので、メンテナンスが行き届いており、いつでも利用することができる。更にまた、人力で駆動でき、動力源を必要としないものであり、使用場所を限定されることがない。そして、小型且つ軽量であるので、救助現場への運搬や倒壊家屋内での取り扱いが容易である。
【0003】
例えば、脚立は日常生活において、庭木の剪定や内装工事、装置の点検等の高所で作業する場合に用いられ、2本の縦材とそれらの間に架設された複数の横桟とを有する一対の梯子部の上端同士を開閉自在に連結したものが一般的に知られている。このような脚立は、災害時において、高所から人を救助する場合などに用いることができる(例えば特許文献1参照)。
【0004】
また、ジャッキは、通常、自動車に搭載されており、自動車のタイヤ交換などに用いられるが、地震などの災害時には、倒壊した構造物を地面から持ち上げることにより、下敷きになった人を救出する用途に用いられている。特に近年では、災害時の救助の際に、倒壊した構造物をより簡単に持ち上げることができるジャッキが、種々提案されている(例えば特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2006−312867号公報
【特許文献2】特開平10−101297号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、災害時において上述のジャッキが使用される場所は水平な場所ばかりではなく、凹凸のある地面や傾斜地などの不安定な場所に載置して使用しなければならない場合も多い。そして、このような不安定な場所での使用では、構造物をジャッキアップしたジャッキが倒れて、ジャッキの操作者が構造物と地面との間に挟まれてしまう二次災害のおそれがある。特に、従来のジャッキは、ジャッキアップする際に構造物の1点のみを支えており、ジャッキアップした構造物がジャッキで支えた点を軸に上下に揺動するので、より不安定となる。
【0006】
また、地面と倒壊した構造物との間に上述のジャッキを挿入する際に、操作者がジャッキ本体を持って挿入することとなるので、操作者は倒壊した構造物に近接して救助作業をしなければならないので、構造物が予期せずに更に倒壊した場合に非常に危険である。また、ジャッキを設置する場所は操作者に近接した位置に限られるため、倒壊した構造物の奥の方にジャッキを設置することは困難であり、ジャッキが有効に使用できない場合も多い。
【0007】
そこで、本発明は、ジャッキ及び脚立として使用することができ、ジャッキ使用時に安定性が高く、操作者から離れた位置にジャッキを設置することができ、倒壊した構造物などのジャッキアップする対象物の奥のほうにジャッキを挿入することができる災害救助ジャッキ付き脚立を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために請求項1の災害救助ジャッキ付き脚立は、2本の縦材とこれら2本の縦材の間にその両端を固定して設けられた複数の横桟とからなる一対の梯子部の頭部同士を回転自在且つ着脱自在に連結できる脚立において、前記2本の縦材の間に設けられている横桟のうち最上部の横桟が2本の縦材の上端を接近離反方向へ移動可能なジャッキからなり、下端側の横桟の少なくとも一端側が2本の縦材のいずれかに回転自在に連結されてなり、これら最上部と下端側の横桟の中間に設けられた横桟は2本の縦材の双方又は一方に着脱自在であることを特徴とするものである。
【0009】
請求項2に記載の災害救助ジャッキ付き脚立は、請求項1に記載の災害救助ジャッキ付き脚立であって、前記縦材のうち少なくとも1本の縦材の下端は、側方に突出していることを特徴とするものである。
【0010】
請求項3に記載の災害救助ジャッキ付き脚立は、請求項1又は請求項2に記載の災害救助ジャッキ付き脚立であって、前記一対の梯子部の頭部同士を相互に略180度の角度に開いた状態で保持可能な保持手段を具備することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、災害救助ジャッキ付き脚立は、2本の縦材とこれら2本の縦材の間にその両端を固定して設けられた複数の横桟とからなる一対の梯子部の頭部同士を回転自在且つ着脱自在に連結できる脚立である。そして、前記2本の縦材の間に設けられている横桟のうち最上部の横桟が2本の縦材の上端を接近離反方向へ移動可能なジャッキで構成されている。したがって、梯子部を所定の角度に開いて固定することで、脚立として好適に使用することができるとともに、縦材の上端を接近させてジャッキアップ対象物と地面の間に差し込んで、縦材の上端を離反させることで、ジャッキとして使用することができる。
【0012】
また、ジャッキ部は一対の梯子部の2本の縦材の間にそれぞれ架設されているので、2本の縦材の下端付近を把持してジャッキ部を移動させ操作することができる。すなわち、災害救助ジャッキ付き脚立を使用するときに、操作者から離れた位置にジャッキ部を設置することができる。したがって、例えば、ジャッキアップする対象物と地面との間が狭い場合に、狭い間隙の奥のほうをジャッキアップするときに、縦材の下端付近を持ってジャッキ部を間隙に挿入することができるので、従来ジャッキを設置することが困難であった狭い間隙の奥のほうにジャッキ部を安全に設置することができる。また、倒壊のおそれがあるジャッキアップ対象物をジャッキアップする際に、操作者がジャッキアップ対象物から離れたより安全な位置からジャッキアップ操作をすることができる。
【0013】
また、一対ある梯子部の上端はそれぞれジャッキ部が架設されているので、2つのジャッキ部を用いてジャッキアップすることができ、ジャッキアップする対象物を2点で支えてジャッキアップできる。したがって、1つのジャッキでジャッキアップする場合に比べて、より安定してジャッキアップ作業をすることができる。
【0014】
請求項2の発明によれば、災害救助ジャッキ付き脚立は少なくとも1本の縦材の下端が
側方に突出しているので、例えば地面との間にジャッキを挿入する隙間がない構造物を持ち上げる場合に、地面と構造物との間に、縦材の下端の突出部分を差し込んで、挿入した突出部分と反対側に縦材を倒すことで、上部の構造物を押し上げることができる。
【0015】
請求項3の発明によれば、災害救助ジャッキ付き脚立は、一対の梯子部の頭部同士を相互に略180度の角度に開いた状態で保持可能な保持手段を具備するので、一対の梯子部を開いて一直線とした状態を保持することができ、脚立の2倍の長さの梯子として使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ、本発明の災害救助ジャッキ付き脚立の実施形態について説明する。
【0017】
本実施形態の災害救助ジャッキ付き脚立1は、図1に示すように、1対の梯子部2、開閉連結部3、及び、1対のジャッキ部4を具備し、脚立、梯子、ジャッキ、及び、バールとして用いることができるものである。一対の梯子部2の上端には、それぞれパンタグラフ型のジャッキ部4が設けられており、最上部の横桟を形成している。そして、ジャッキ部4が設けられた梯子部2の上端は更に開閉連結部3が着脱自在に固定されている。災害救助ジャッキ付き脚立1を脚立又は梯子として用いる場合には、一対の梯子部2の上端を開閉連結部3によって、相互に連結した状態で使用する。一方、災害救助ジャッキ付き脚立1をジャッキとして使用する場合には、一対の梯子部2の上端から開閉連結部3を取り外して、一対の梯子部2を分離した状態で使用する。以下、各構成の詳細について説明する。
【0018】
まず、災害救助ジャッキ付き脚立1の一対の梯子部2について、図1及び図2を参照しつつ説明する。一対の梯子部2を構成する各梯子は、図1に示すように、断面コの字形状の2本の細長い縦材21と、縦材21の開口する側面に挿入できる太さの3本の横桟22と、縦材21の下端に固定され縦材21の長手方向と略垂直となる方向に楔形に突出した形状のバール部23と、脚立使用時に所定の角度に開いた脚立の開閉角度を保持するための長板状の開閉保持具24と、開閉保持具24の先端に形成された切欠き29が嵌着される嵌合突起25と、を備える。
【0019】
2本の縦材21は開口する側面を対面させ、相互に横桟22を架け渡すための所定の間隔を開けて平行に配設されている。そして、この2本の縦材21の間に縦材21に対して略垂直に3本の横桟22がほぼ等しい間隔を開けて架設されている。また、この2本の縦材の上端には、最上部の横桟を構成するジャッキ部4が架設されている。
【0020】
最も下側に配置された横桟とジャッキ部4との間には、2本の横桟22が設置されており、この2本の横桟22の一端は、図2(A)に示すように、2本の縦材21のうち一方の縦材21に取付けられた回転軸26により回動自在に軸着されている。そして、横桟22の他端は他方の縦材21のコの字状の溝に設けられた板材27に載置されている。載置された横桟22の上面付近には、縦材21を貫通するボルト状のストッパ28が設けられており、横桟22は他方の縦材21に着脱自在となっている。このストッパ27はボルト及びナットから構成されており、縦材21に挿通した状態でボルトにナットを螺嵌させることで固定し、ボルトからナットを外して縦材21からボルトを引き抜くことで離脱させることができる。ストッパ28を縦材21から離脱させると、板材26に載置された横桟22は、縦材21aに設けられた軸を中心に上方へ揺動可能となる。また、最下部の横桟22は、図2(B)に示すように、その両端が2本の縦材21に取付けられた回転軸26に揺動自在に軸着されている。
【0021】
2本の縦材21の下端には、図1に示すように、それぞれバール部23が例えば溶接により固着されている。バール部23の上面は縦材21とほぼ同一の断面形状であり、下面は縦材21の長手方向に略垂直に突出した楔型の突起231が形成されている。そして、一対の梯子部2の一方の梯子部2の一方の縦材21の開口面と反対側の外側面の所定位置には開閉保持具24の一端が回動自在に軸着されており、他方の梯子部2の一方の縦材21の開口面と反対側の外側面の所定位置には開閉保持具24の他端に設けられた切欠き29が嵌合される嵌合突起25が固定されている。
【0022】
次に、開閉連結部3について、図3を参照しつつ説明する。開閉連結部3は、図3に示すように、2つの同一形状の開閉部材3a、3bを連結部31で回動可能に連結して構成されている。開閉部材3a、3bはそれぞれ、下面が開口した中空の直方体形状の嵌着部32と、嵌着部32の直上に配置される天板33と、嵌着部32及び天板33の両側面に固定され、上部が連結部31に軸支される斜め上方に突出した形状の一対の横枠34と、を具備する。そして、横枠34と嵌着部32とには連通するビス穴35が設けられており、また、横枠34の斜め方向に突出した部分には軸孔36が設けられている。両開閉部材3a、3bのそれぞれの軸孔36には連結部31が挿通されており、両開閉部材3a、3bはか移動可能に連結されている。なお本発明における「梯子部の頭部」は開閉部材3a及び開閉部材3bがこれに相当する。
【0023】
次に、災害救助ジャッキ付き脚立1のジャッキ部4の構成について、図4を参照しつつ説明する。ジャッキ部4は、一対の梯子部2を構成する各梯子部2の2本の縦材21のうち一方の縦材21の上端に形成され、ジャッキ使用時に地面に当接してジャッキの土台となる台座部43と、一対の縦材21のうち他方の縦材21の上端に形成され、ジャッキ使用時にジャッキアップする対象物に当接してジャッキの上向きの力を対象物に伝える荷受部44と、台座部43と荷受部44との間に架け渡され中間の屈曲部42で屈曲可能な2本のアーム部41と、上側のアーム部411の屈曲部42に回転自在且つ長手方向移動不能であって、下側のアーム部412の中間部42に螺挿されるネジ軸45と、ネジ軸45を回転させる操作ハンドル46と、を有する。
【0024】
台座部43は、梯子部2の一方の縦材21から連なる断面コの字形状の部材であって、アーム部の一端を回動可能に軸支する台座側回動軸431、432を挿通させている。台座部43のコの字の開口には2本のアーム部41の一端が挿入されており、台座側回動軸431、432のうち脚立使用時に上側となる台座側回動軸431は、上側のアーム部411の一端に挿通しており、アーム部411を回動可能に支持している。また、脚立使用時に下側となる台座側回動軸432は、下側のアーム部412の一端に挿通しており、下側アーム部412を回動可能に支持している。
【0025】
また、荷受部44は、梯子部2の他方の縦材21から連なり、ジャッキアップする対象物と接する面がやや窪んでいる断面略コの字形状の部材であって、アーム部の他端を回動可能に軸支する荷受側回動軸441、442を挿通させている。荷受部44のコの字の開口には2本のアーム部41の他端が挿入されており、脚立使用時に上側となる荷受側回動軸441は、上側のアーム部411の他端に挿通しており、アーム部411を回動可能に支持している。また、脚立使用時に下側となる荷受側回動軸442は、下側のアーム部412の他端に挿通しており、アーム部412を回動可能に支持している。このように2本のアーム部41は、両端が回動可能に軸支されるとともに、それぞれの屈曲部42が屈曲可能であるので、中間部42を屈曲させると側面視略菱形となる。
【0026】
ネジ軸45は、図4及び図5に示すように、上側のアーム部411の屈曲部42及び下側のアーム部412の屈曲部42のそれぞれの貫通孔に挿通されている。ネジ軸45の一方の端部には、直径が貫通孔の直径よりも大きく形成され、ネジ軸45が屈曲部42から脱落することを防ぐ第1ストッパ451が形成されている。そして、第1ストッパ451に隣接して、上側のアーム部411の屈曲部42の貫通孔に挿通される円柱部452が設けられ、更に円柱部452と隣接する第1ストッパ451と反対側には貫通孔よりも大きな直径の第2ストッパ453が形成されている。このように形成されることで、ネジ軸45は上側のアーム部411の屈曲部42に対して回動自在且つ長手方向移動不能となる。更にネジ軸45は、第2ストッパ453から連なるアーム部41の長さよりも長い螺旋状のネジ部454を有しており、このネジ部454と下側のアーム部412の中間部42の貫通孔とが螺合している。したがって、ネジ軸45が回転するとネジ軸が下側のアーム部412の中間部42に対して、ネジ軸45の長手方向に移動することとなる。ネジ軸45の他端には、両側面に穴を有するU字状の係着金具455が固着されている。
【0027】
操作ハンドル46は、図6に示すように、一端にネジ軸45の係着金具455の穴に引掛けられる形状の引掛け部461を形成した細長い棒状であって、他端は操作ハンドル46の長手方向を軸として、操作ハンドル46を回転させるハンドル部462が形成されている。なお、ジャッキを使用しないときには、図10に示すように操作ハンドル46は、梯子部2の縦材21及び横桟22に収納されている。
【0028】
次に、災害救助ジャッキ付き脚立1を使用する際の作用について説明する。災害救助ジャッキ付き脚立1は梯子又は脚立として使用されるときには、まず、図1及び図7に示すように、ジャッキ部4のアーム部41を直線状に伸ばした状態で、一対の梯子部2を相互に略平行に配置する。そして、開閉連結部3の両開閉部材3a、3bの開口にそれぞれ一対の梯子部2を構成する各梯子部2の上部をジャッキ部4ごと挿入する。そして、開閉部材3a、3bのそれぞれのビス穴35にビス37を挿通して、縦材21の固定穴211に螺着させて、一対の梯子部2と開閉連結部3の開閉部材3a、3bとをそれぞれ固定する。両開閉部材3a、3bは連結部31を中心に相互に揺動自在であるので、それぞれの開閉部材3a、3bに固定された一対の梯子部2も連結部31を軸として相互に開閉揺動自在となる。
【0029】
災害救助ジャッキ付き脚立1を脚立として使用する場合には、図8に示すように、上端に開閉連結部3が取付けられた一対の梯子部2を連結部31を軸として所定の角度まで開く。そして、一対の梯子部2のうち一方の梯子部2の一方の縦材21に回動自在に固定されている開閉保持具24を回転させて、他方の梯子部2の他方の縦材21に固着されている嵌合突起25に開閉保持具24の先端に形成された切欠き29を嵌着させる。これにより、災害救助ジャッキ付き脚立1の側面から見た形状は逆V字状となり、略水平な地面に安定して載置することができる。
【0030】
また、災害救助ジャッキ付き脚立1を梯子として使用する場合には、図9及び図10に示すように上端に開閉連結部3が取付けられた一対の梯子部2を連結部31を軸として一直線となるように、すなわち梯子部2aと梯子部2bとの間の角度が略180度となるように展開させる。そして、開閉連結部3の開閉部材3aに一端が回動自在に取付けられている係止具38を回動させて、開閉部材3bの所定位置に取付けられている凸部39に嵌着させる。また、開閉連結部3の開閉部材3bに一端が回動可能に取付けられている係止具37も同様に、開閉部材3aの所定位置に取付けられている凸部39に嵌着させる。このように両係止具38をそれぞれ対応する凸部39に嵌着することで、一対の梯子部2が相互に直線の状態で固定される。そして、構造物の壁などに斜め向けに立てかけて、梯子として使用することができる。なお、本発明における「保持手段」は本実施形態においては係止具38及び凸部39がこれに相当する。
【0031】
ジャッキを使用する際には、まず一対の梯子部2から開閉連結部3を取り外して、一対の梯子部2を分離する。そして、図11に示すように、梯子部2の一方の縦材21に挿入されているストッパ28を取り外す。このようにすると、梯子部2の横桟22は他方の縦材21の回転軸26を中心にして上方に揺動自在となる。次に、梯子部2の縦材21及び横桟22に収納されている操作ハンドル46を取り出し、操作ハンドル46の引掛け部461をネジ軸45の係着金具455に装着する。そして、操作ハンドル46のハンドル部462を回転操作してネジ軸45を回転させ、図12に示すようにジャッキ部4の台座部43及び荷受部44が当接するように、アーム部41の中間部42を屈曲させる。なお図示しないが、このとき横桟22は、上方に回動して縦材21に当接する状態となる。そして、ジャッキアップする対象物と地面との間に台座部43が地面に接地するようにジャッキ部4を挿入させる。次に、ハンドル部462を回動させてネジ軸45を逆方向に回転させる。これにより、図13に示すように、台座部43が接地した状態で、荷受部44が台座部43から離れて上方に押し上げられる。したがって、ジャッキアップする対象物も上方に押し上げられることとなる。
【0032】
災害救助ジャッキ付き脚立1は、ジャッキ部4を2つ備える。すなわち、一対の梯子部2の上端にそれぞれに固定されている。このようにジャッキ部が2つあるので、図14に示すように、ジャッキアップする対象物の形状や地形などにより、1つのジャッキ部4では安定してジャッキアップできないような場合に2つのジャッキ部4でそれぞれジャッキアップすることができるので、ジャッキアップの対象物の2点を押し上げることができ、より安定して安全にジャッキアップ作業をすることができる。また、ジャッキ部が2つあることで、1つのジャッキ部にかかる負荷を半分にすることができる。
【0033】
なお、災害救助ジャッキ付き脚立1は、梯子部2の上端にジャッキ部4を備える構造である。したがって、梯子部2の縦材21の下端付近を把持することで、小さな隙間からジャッキ部4を挿入して、対象物のジャッキアップするのに最適な点を選んでジャッキアップすることができる。また、ジャッキアップする対象物が崩れそうな場合にも縦材21の長さ分はなれた位置からジャッキ部4を設置し操作することができるので、より安全にジャッキアップ作業を行うことができる。
【0034】
また、図15に示すように、一対の梯子部2にはその縦材21の下端にそれぞれL字形状のバール部23が取付けられているので、図15に示すように、ジャッキ部4が挿入できないようなものを持ち上げるような場合にもバール部の先端に形成された突起231を差し込んで持ち上げることができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
以上のように、本発明に係る災害救助ジャッキ付き脚立1は、脚立、梯子、ジャッキ、及びバールとして、日常使用することができるとともに、災害時の救助用具として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】災害救助ジャッキ付き脚立1の全体構成を示す斜視図である。
【図2】(A)は図1のA部分を拡大し、梯子部2の縦材21に上側の2本の横桟22を架設した状態を説明する図であり、(B)は図1のB部分を拡大し、最下部の横桟22を架設した状態を説明する図である。
【図3】開閉連結部3の構成を示す斜視図である。
【図4】ジャッキ部4の構成を示す斜視図である。
【図5】図4のC−C断面を示す図である。
【図6】操作ハンドル46が収納された梯子部2の状態を示す斜視図である。
【図7】梯子部2に開閉連結部3を取付けた状態の災害救助ジャッキ付き脚立1を示す図である。
【図8】災害救助ジャッキ付き脚立1を脚立として用いたときの使用状態説明図である。
【図9】災害救助ジャッキ付き脚立1を梯子として用いたときの使用状態説明図である。
【図10】図9の開閉連結部3のB部分の拡大図である。
【図11】操作ハンドル46をジャッキ部4に取付けた状態を示す斜視図である。
【図12】台座部43と荷受部44とを当接させた状態のジャッキ部4を示す斜視図である。
【図13】図12の状態からジャッキ部4をジャッキアップした状態を示す斜視図。
【図14】一対のジャッキ部4を両方用いてジャッキアップした状態を示す図。
【図15】災害救助ジャッキ付き脚立1のバール機能の使用状態説明図である。
【符号の説明】
【0037】
1 災害救助ジャッキ付き脚立
2 梯子部
3 開閉連結部
4 ジャッキ部
21 縦材
22 横桟
23 バール部
31 連結部
41 アーム部
42 中間部
43 台座部
44 荷受部
45 ネジ軸
46 操作ハンドル
【技術分野】
【0001】
本発明は、脚立に関し、特に、災害時の救助活動に用いることができるジャッキが備えられた脚立に関する。
【背景技術】
【0002】
地震などの災害時には、周辺住民などによる初期救助活動がきわめて大きな効果を発揮する。このような初期救助活動においては、救助用具として、従来から、脚立、車載のジャッキ、バール、のこぎり、ハンマ等の日常使用する工具が用いられている。上述のような工具は、日常生活で用いられるものであるので、広く普及しており、早急に入手しやすい。また、日常生活で操作されるものであるので、マニュアルなどを必要とせずに、直感的に使用方法が理解できる。更に、普段から使用されているので、メンテナンスが行き届いており、いつでも利用することができる。更にまた、人力で駆動でき、動力源を必要としないものであり、使用場所を限定されることがない。そして、小型且つ軽量であるので、救助現場への運搬や倒壊家屋内での取り扱いが容易である。
【0003】
例えば、脚立は日常生活において、庭木の剪定や内装工事、装置の点検等の高所で作業する場合に用いられ、2本の縦材とそれらの間に架設された複数の横桟とを有する一対の梯子部の上端同士を開閉自在に連結したものが一般的に知られている。このような脚立は、災害時において、高所から人を救助する場合などに用いることができる(例えば特許文献1参照)。
【0004】
また、ジャッキは、通常、自動車に搭載されており、自動車のタイヤ交換などに用いられるが、地震などの災害時には、倒壊した構造物を地面から持ち上げることにより、下敷きになった人を救出する用途に用いられている。特に近年では、災害時の救助の際に、倒壊した構造物をより簡単に持ち上げることができるジャッキが、種々提案されている(例えば特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2006−312867号公報
【特許文献2】特開平10−101297号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、災害時において上述のジャッキが使用される場所は水平な場所ばかりではなく、凹凸のある地面や傾斜地などの不安定な場所に載置して使用しなければならない場合も多い。そして、このような不安定な場所での使用では、構造物をジャッキアップしたジャッキが倒れて、ジャッキの操作者が構造物と地面との間に挟まれてしまう二次災害のおそれがある。特に、従来のジャッキは、ジャッキアップする際に構造物の1点のみを支えており、ジャッキアップした構造物がジャッキで支えた点を軸に上下に揺動するので、より不安定となる。
【0006】
また、地面と倒壊した構造物との間に上述のジャッキを挿入する際に、操作者がジャッキ本体を持って挿入することとなるので、操作者は倒壊した構造物に近接して救助作業をしなければならないので、構造物が予期せずに更に倒壊した場合に非常に危険である。また、ジャッキを設置する場所は操作者に近接した位置に限られるため、倒壊した構造物の奥の方にジャッキを設置することは困難であり、ジャッキが有効に使用できない場合も多い。
【0007】
そこで、本発明は、ジャッキ及び脚立として使用することができ、ジャッキ使用時に安定性が高く、操作者から離れた位置にジャッキを設置することができ、倒壊した構造物などのジャッキアップする対象物の奥のほうにジャッキを挿入することができる災害救助ジャッキ付き脚立を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために請求項1の災害救助ジャッキ付き脚立は、2本の縦材とこれら2本の縦材の間にその両端を固定して設けられた複数の横桟とからなる一対の梯子部の頭部同士を回転自在且つ着脱自在に連結できる脚立において、前記2本の縦材の間に設けられている横桟のうち最上部の横桟が2本の縦材の上端を接近離反方向へ移動可能なジャッキからなり、下端側の横桟の少なくとも一端側が2本の縦材のいずれかに回転自在に連結されてなり、これら最上部と下端側の横桟の中間に設けられた横桟は2本の縦材の双方又は一方に着脱自在であることを特徴とするものである。
【0009】
請求項2に記載の災害救助ジャッキ付き脚立は、請求項1に記載の災害救助ジャッキ付き脚立であって、前記縦材のうち少なくとも1本の縦材の下端は、側方に突出していることを特徴とするものである。
【0010】
請求項3に記載の災害救助ジャッキ付き脚立は、請求項1又は請求項2に記載の災害救助ジャッキ付き脚立であって、前記一対の梯子部の頭部同士を相互に略180度の角度に開いた状態で保持可能な保持手段を具備することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、災害救助ジャッキ付き脚立は、2本の縦材とこれら2本の縦材の間にその両端を固定して設けられた複数の横桟とからなる一対の梯子部の頭部同士を回転自在且つ着脱自在に連結できる脚立である。そして、前記2本の縦材の間に設けられている横桟のうち最上部の横桟が2本の縦材の上端を接近離反方向へ移動可能なジャッキで構成されている。したがって、梯子部を所定の角度に開いて固定することで、脚立として好適に使用することができるとともに、縦材の上端を接近させてジャッキアップ対象物と地面の間に差し込んで、縦材の上端を離反させることで、ジャッキとして使用することができる。
【0012】
また、ジャッキ部は一対の梯子部の2本の縦材の間にそれぞれ架設されているので、2本の縦材の下端付近を把持してジャッキ部を移動させ操作することができる。すなわち、災害救助ジャッキ付き脚立を使用するときに、操作者から離れた位置にジャッキ部を設置することができる。したがって、例えば、ジャッキアップする対象物と地面との間が狭い場合に、狭い間隙の奥のほうをジャッキアップするときに、縦材の下端付近を持ってジャッキ部を間隙に挿入することができるので、従来ジャッキを設置することが困難であった狭い間隙の奥のほうにジャッキ部を安全に設置することができる。また、倒壊のおそれがあるジャッキアップ対象物をジャッキアップする際に、操作者がジャッキアップ対象物から離れたより安全な位置からジャッキアップ操作をすることができる。
【0013】
また、一対ある梯子部の上端はそれぞれジャッキ部が架設されているので、2つのジャッキ部を用いてジャッキアップすることができ、ジャッキアップする対象物を2点で支えてジャッキアップできる。したがって、1つのジャッキでジャッキアップする場合に比べて、より安定してジャッキアップ作業をすることができる。
【0014】
請求項2の発明によれば、災害救助ジャッキ付き脚立は少なくとも1本の縦材の下端が
側方に突出しているので、例えば地面との間にジャッキを挿入する隙間がない構造物を持ち上げる場合に、地面と構造物との間に、縦材の下端の突出部分を差し込んで、挿入した突出部分と反対側に縦材を倒すことで、上部の構造物を押し上げることができる。
【0015】
請求項3の発明によれば、災害救助ジャッキ付き脚立は、一対の梯子部の頭部同士を相互に略180度の角度に開いた状態で保持可能な保持手段を具備するので、一対の梯子部を開いて一直線とした状態を保持することができ、脚立の2倍の長さの梯子として使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ、本発明の災害救助ジャッキ付き脚立の実施形態について説明する。
【0017】
本実施形態の災害救助ジャッキ付き脚立1は、図1に示すように、1対の梯子部2、開閉連結部3、及び、1対のジャッキ部4を具備し、脚立、梯子、ジャッキ、及び、バールとして用いることができるものである。一対の梯子部2の上端には、それぞれパンタグラフ型のジャッキ部4が設けられており、最上部の横桟を形成している。そして、ジャッキ部4が設けられた梯子部2の上端は更に開閉連結部3が着脱自在に固定されている。災害救助ジャッキ付き脚立1を脚立又は梯子として用いる場合には、一対の梯子部2の上端を開閉連結部3によって、相互に連結した状態で使用する。一方、災害救助ジャッキ付き脚立1をジャッキとして使用する場合には、一対の梯子部2の上端から開閉連結部3を取り外して、一対の梯子部2を分離した状態で使用する。以下、各構成の詳細について説明する。
【0018】
まず、災害救助ジャッキ付き脚立1の一対の梯子部2について、図1及び図2を参照しつつ説明する。一対の梯子部2を構成する各梯子は、図1に示すように、断面コの字形状の2本の細長い縦材21と、縦材21の開口する側面に挿入できる太さの3本の横桟22と、縦材21の下端に固定され縦材21の長手方向と略垂直となる方向に楔形に突出した形状のバール部23と、脚立使用時に所定の角度に開いた脚立の開閉角度を保持するための長板状の開閉保持具24と、開閉保持具24の先端に形成された切欠き29が嵌着される嵌合突起25と、を備える。
【0019】
2本の縦材21は開口する側面を対面させ、相互に横桟22を架け渡すための所定の間隔を開けて平行に配設されている。そして、この2本の縦材21の間に縦材21に対して略垂直に3本の横桟22がほぼ等しい間隔を開けて架設されている。また、この2本の縦材の上端には、最上部の横桟を構成するジャッキ部4が架設されている。
【0020】
最も下側に配置された横桟とジャッキ部4との間には、2本の横桟22が設置されており、この2本の横桟22の一端は、図2(A)に示すように、2本の縦材21のうち一方の縦材21に取付けられた回転軸26により回動自在に軸着されている。そして、横桟22の他端は他方の縦材21のコの字状の溝に設けられた板材27に載置されている。載置された横桟22の上面付近には、縦材21を貫通するボルト状のストッパ28が設けられており、横桟22は他方の縦材21に着脱自在となっている。このストッパ27はボルト及びナットから構成されており、縦材21に挿通した状態でボルトにナットを螺嵌させることで固定し、ボルトからナットを外して縦材21からボルトを引き抜くことで離脱させることができる。ストッパ28を縦材21から離脱させると、板材26に載置された横桟22は、縦材21aに設けられた軸を中心に上方へ揺動可能となる。また、最下部の横桟22は、図2(B)に示すように、その両端が2本の縦材21に取付けられた回転軸26に揺動自在に軸着されている。
【0021】
2本の縦材21の下端には、図1に示すように、それぞれバール部23が例えば溶接により固着されている。バール部23の上面は縦材21とほぼ同一の断面形状であり、下面は縦材21の長手方向に略垂直に突出した楔型の突起231が形成されている。そして、一対の梯子部2の一方の梯子部2の一方の縦材21の開口面と反対側の外側面の所定位置には開閉保持具24の一端が回動自在に軸着されており、他方の梯子部2の一方の縦材21の開口面と反対側の外側面の所定位置には開閉保持具24の他端に設けられた切欠き29が嵌合される嵌合突起25が固定されている。
【0022】
次に、開閉連結部3について、図3を参照しつつ説明する。開閉連結部3は、図3に示すように、2つの同一形状の開閉部材3a、3bを連結部31で回動可能に連結して構成されている。開閉部材3a、3bはそれぞれ、下面が開口した中空の直方体形状の嵌着部32と、嵌着部32の直上に配置される天板33と、嵌着部32及び天板33の両側面に固定され、上部が連結部31に軸支される斜め上方に突出した形状の一対の横枠34と、を具備する。そして、横枠34と嵌着部32とには連通するビス穴35が設けられており、また、横枠34の斜め方向に突出した部分には軸孔36が設けられている。両開閉部材3a、3bのそれぞれの軸孔36には連結部31が挿通されており、両開閉部材3a、3bはか移動可能に連結されている。なお本発明における「梯子部の頭部」は開閉部材3a及び開閉部材3bがこれに相当する。
【0023】
次に、災害救助ジャッキ付き脚立1のジャッキ部4の構成について、図4を参照しつつ説明する。ジャッキ部4は、一対の梯子部2を構成する各梯子部2の2本の縦材21のうち一方の縦材21の上端に形成され、ジャッキ使用時に地面に当接してジャッキの土台となる台座部43と、一対の縦材21のうち他方の縦材21の上端に形成され、ジャッキ使用時にジャッキアップする対象物に当接してジャッキの上向きの力を対象物に伝える荷受部44と、台座部43と荷受部44との間に架け渡され中間の屈曲部42で屈曲可能な2本のアーム部41と、上側のアーム部411の屈曲部42に回転自在且つ長手方向移動不能であって、下側のアーム部412の中間部42に螺挿されるネジ軸45と、ネジ軸45を回転させる操作ハンドル46と、を有する。
【0024】
台座部43は、梯子部2の一方の縦材21から連なる断面コの字形状の部材であって、アーム部の一端を回動可能に軸支する台座側回動軸431、432を挿通させている。台座部43のコの字の開口には2本のアーム部41の一端が挿入されており、台座側回動軸431、432のうち脚立使用時に上側となる台座側回動軸431は、上側のアーム部411の一端に挿通しており、アーム部411を回動可能に支持している。また、脚立使用時に下側となる台座側回動軸432は、下側のアーム部412の一端に挿通しており、下側アーム部412を回動可能に支持している。
【0025】
また、荷受部44は、梯子部2の他方の縦材21から連なり、ジャッキアップする対象物と接する面がやや窪んでいる断面略コの字形状の部材であって、アーム部の他端を回動可能に軸支する荷受側回動軸441、442を挿通させている。荷受部44のコの字の開口には2本のアーム部41の他端が挿入されており、脚立使用時に上側となる荷受側回動軸441は、上側のアーム部411の他端に挿通しており、アーム部411を回動可能に支持している。また、脚立使用時に下側となる荷受側回動軸442は、下側のアーム部412の他端に挿通しており、アーム部412を回動可能に支持している。このように2本のアーム部41は、両端が回動可能に軸支されるとともに、それぞれの屈曲部42が屈曲可能であるので、中間部42を屈曲させると側面視略菱形となる。
【0026】
ネジ軸45は、図4及び図5に示すように、上側のアーム部411の屈曲部42及び下側のアーム部412の屈曲部42のそれぞれの貫通孔に挿通されている。ネジ軸45の一方の端部には、直径が貫通孔の直径よりも大きく形成され、ネジ軸45が屈曲部42から脱落することを防ぐ第1ストッパ451が形成されている。そして、第1ストッパ451に隣接して、上側のアーム部411の屈曲部42の貫通孔に挿通される円柱部452が設けられ、更に円柱部452と隣接する第1ストッパ451と反対側には貫通孔よりも大きな直径の第2ストッパ453が形成されている。このように形成されることで、ネジ軸45は上側のアーム部411の屈曲部42に対して回動自在且つ長手方向移動不能となる。更にネジ軸45は、第2ストッパ453から連なるアーム部41の長さよりも長い螺旋状のネジ部454を有しており、このネジ部454と下側のアーム部412の中間部42の貫通孔とが螺合している。したがって、ネジ軸45が回転するとネジ軸が下側のアーム部412の中間部42に対して、ネジ軸45の長手方向に移動することとなる。ネジ軸45の他端には、両側面に穴を有するU字状の係着金具455が固着されている。
【0027】
操作ハンドル46は、図6に示すように、一端にネジ軸45の係着金具455の穴に引掛けられる形状の引掛け部461を形成した細長い棒状であって、他端は操作ハンドル46の長手方向を軸として、操作ハンドル46を回転させるハンドル部462が形成されている。なお、ジャッキを使用しないときには、図10に示すように操作ハンドル46は、梯子部2の縦材21及び横桟22に収納されている。
【0028】
次に、災害救助ジャッキ付き脚立1を使用する際の作用について説明する。災害救助ジャッキ付き脚立1は梯子又は脚立として使用されるときには、まず、図1及び図7に示すように、ジャッキ部4のアーム部41を直線状に伸ばした状態で、一対の梯子部2を相互に略平行に配置する。そして、開閉連結部3の両開閉部材3a、3bの開口にそれぞれ一対の梯子部2を構成する各梯子部2の上部をジャッキ部4ごと挿入する。そして、開閉部材3a、3bのそれぞれのビス穴35にビス37を挿通して、縦材21の固定穴211に螺着させて、一対の梯子部2と開閉連結部3の開閉部材3a、3bとをそれぞれ固定する。両開閉部材3a、3bは連結部31を中心に相互に揺動自在であるので、それぞれの開閉部材3a、3bに固定された一対の梯子部2も連結部31を軸として相互に開閉揺動自在となる。
【0029】
災害救助ジャッキ付き脚立1を脚立として使用する場合には、図8に示すように、上端に開閉連結部3が取付けられた一対の梯子部2を連結部31を軸として所定の角度まで開く。そして、一対の梯子部2のうち一方の梯子部2の一方の縦材21に回動自在に固定されている開閉保持具24を回転させて、他方の梯子部2の他方の縦材21に固着されている嵌合突起25に開閉保持具24の先端に形成された切欠き29を嵌着させる。これにより、災害救助ジャッキ付き脚立1の側面から見た形状は逆V字状となり、略水平な地面に安定して載置することができる。
【0030】
また、災害救助ジャッキ付き脚立1を梯子として使用する場合には、図9及び図10に示すように上端に開閉連結部3が取付けられた一対の梯子部2を連結部31を軸として一直線となるように、すなわち梯子部2aと梯子部2bとの間の角度が略180度となるように展開させる。そして、開閉連結部3の開閉部材3aに一端が回動自在に取付けられている係止具38を回動させて、開閉部材3bの所定位置に取付けられている凸部39に嵌着させる。また、開閉連結部3の開閉部材3bに一端が回動可能に取付けられている係止具37も同様に、開閉部材3aの所定位置に取付けられている凸部39に嵌着させる。このように両係止具38をそれぞれ対応する凸部39に嵌着することで、一対の梯子部2が相互に直線の状態で固定される。そして、構造物の壁などに斜め向けに立てかけて、梯子として使用することができる。なお、本発明における「保持手段」は本実施形態においては係止具38及び凸部39がこれに相当する。
【0031】
ジャッキを使用する際には、まず一対の梯子部2から開閉連結部3を取り外して、一対の梯子部2を分離する。そして、図11に示すように、梯子部2の一方の縦材21に挿入されているストッパ28を取り外す。このようにすると、梯子部2の横桟22は他方の縦材21の回転軸26を中心にして上方に揺動自在となる。次に、梯子部2の縦材21及び横桟22に収納されている操作ハンドル46を取り出し、操作ハンドル46の引掛け部461をネジ軸45の係着金具455に装着する。そして、操作ハンドル46のハンドル部462を回転操作してネジ軸45を回転させ、図12に示すようにジャッキ部4の台座部43及び荷受部44が当接するように、アーム部41の中間部42を屈曲させる。なお図示しないが、このとき横桟22は、上方に回動して縦材21に当接する状態となる。そして、ジャッキアップする対象物と地面との間に台座部43が地面に接地するようにジャッキ部4を挿入させる。次に、ハンドル部462を回動させてネジ軸45を逆方向に回転させる。これにより、図13に示すように、台座部43が接地した状態で、荷受部44が台座部43から離れて上方に押し上げられる。したがって、ジャッキアップする対象物も上方に押し上げられることとなる。
【0032】
災害救助ジャッキ付き脚立1は、ジャッキ部4を2つ備える。すなわち、一対の梯子部2の上端にそれぞれに固定されている。このようにジャッキ部が2つあるので、図14に示すように、ジャッキアップする対象物の形状や地形などにより、1つのジャッキ部4では安定してジャッキアップできないような場合に2つのジャッキ部4でそれぞれジャッキアップすることができるので、ジャッキアップの対象物の2点を押し上げることができ、より安定して安全にジャッキアップ作業をすることができる。また、ジャッキ部が2つあることで、1つのジャッキ部にかかる負荷を半分にすることができる。
【0033】
なお、災害救助ジャッキ付き脚立1は、梯子部2の上端にジャッキ部4を備える構造である。したがって、梯子部2の縦材21の下端付近を把持することで、小さな隙間からジャッキ部4を挿入して、対象物のジャッキアップするのに最適な点を選んでジャッキアップすることができる。また、ジャッキアップする対象物が崩れそうな場合にも縦材21の長さ分はなれた位置からジャッキ部4を設置し操作することができるので、より安全にジャッキアップ作業を行うことができる。
【0034】
また、図15に示すように、一対の梯子部2にはその縦材21の下端にそれぞれL字形状のバール部23が取付けられているので、図15に示すように、ジャッキ部4が挿入できないようなものを持ち上げるような場合にもバール部の先端に形成された突起231を差し込んで持ち上げることができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
以上のように、本発明に係る災害救助ジャッキ付き脚立1は、脚立、梯子、ジャッキ、及びバールとして、日常使用することができるとともに、災害時の救助用具として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】災害救助ジャッキ付き脚立1の全体構成を示す斜視図である。
【図2】(A)は図1のA部分を拡大し、梯子部2の縦材21に上側の2本の横桟22を架設した状態を説明する図であり、(B)は図1のB部分を拡大し、最下部の横桟22を架設した状態を説明する図である。
【図3】開閉連結部3の構成を示す斜視図である。
【図4】ジャッキ部4の構成を示す斜視図である。
【図5】図4のC−C断面を示す図である。
【図6】操作ハンドル46が収納された梯子部2の状態を示す斜視図である。
【図7】梯子部2に開閉連結部3を取付けた状態の災害救助ジャッキ付き脚立1を示す図である。
【図8】災害救助ジャッキ付き脚立1を脚立として用いたときの使用状態説明図である。
【図9】災害救助ジャッキ付き脚立1を梯子として用いたときの使用状態説明図である。
【図10】図9の開閉連結部3のB部分の拡大図である。
【図11】操作ハンドル46をジャッキ部4に取付けた状態を示す斜視図である。
【図12】台座部43と荷受部44とを当接させた状態のジャッキ部4を示す斜視図である。
【図13】図12の状態からジャッキ部4をジャッキアップした状態を示す斜視図。
【図14】一対のジャッキ部4を両方用いてジャッキアップした状態を示す図。
【図15】災害救助ジャッキ付き脚立1のバール機能の使用状態説明図である。
【符号の説明】
【0037】
1 災害救助ジャッキ付き脚立
2 梯子部
3 開閉連結部
4 ジャッキ部
21 縦材
22 横桟
23 バール部
31 連結部
41 アーム部
42 中間部
43 台座部
44 荷受部
45 ネジ軸
46 操作ハンドル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2本の縦材とこれら2本の縦材の間にその両端を固定して設けられた複数の横桟とからなる一対の梯子部の頭部同士を回転自在且つ着脱自在に連結できる脚立において、
前記2本の縦材の間に設けられている横桟のうち最上部の横桟が2本の縦材の上端を接近離反方向へ移動可能なジャッキ部からなり、下端側の横桟の少なくとも一端側が2本の縦材のいずれかに回転自在に連結されてなり、これら最上部と下端側の横桟の中間に設けられた横桟は2本の縦材の双方又は一方に着脱自在であることを特徴とする災害救助ジャッキ付き脚立。
【請求項2】
前記縦材のうち少なくとも1本の縦材の下端は、側方に突出していることを特徴とする請求項1に記載の災害救助ジャッキ付き脚立。
【請求項3】
前記一対の梯子部の頭部同士を相互に略180度の角度に開いた状態で保持可能な保持手段を具備することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の災害救助ジャッキ付き脚立。
【請求項1】
2本の縦材とこれら2本の縦材の間にその両端を固定して設けられた複数の横桟とからなる一対の梯子部の頭部同士を回転自在且つ着脱自在に連結できる脚立において、
前記2本の縦材の間に設けられている横桟のうち最上部の横桟が2本の縦材の上端を接近離反方向へ移動可能なジャッキ部からなり、下端側の横桟の少なくとも一端側が2本の縦材のいずれかに回転自在に連結されてなり、これら最上部と下端側の横桟の中間に設けられた横桟は2本の縦材の双方又は一方に着脱自在であることを特徴とする災害救助ジャッキ付き脚立。
【請求項2】
前記縦材のうち少なくとも1本の縦材の下端は、側方に突出していることを特徴とする請求項1に記載の災害救助ジャッキ付き脚立。
【請求項3】
前記一対の梯子部の頭部同士を相互に略180度の角度に開いた状態で保持可能な保持手段を具備することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の災害救助ジャッキ付き脚立。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2008−266941(P2008−266941A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−109324(P2007−109324)
【出願日】平成19年4月18日(2007.4.18)
【特許番号】特許第4078659号(P4078659)
【特許公報発行日】平成20年4月23日(2008.4.23)
【出願人】(505312464)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月18日(2007.4.18)
【特許番号】特許第4078659号(P4078659)
【特許公報発行日】平成20年4月23日(2008.4.23)
【出願人】(505312464)
【Fターム(参考)】
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