説明

炊飯器

【課題】鍋内のごはん全体に過熱蒸気を行き渡らせて、温度が安定しごはんの乾燥がなくおいしいご飯を炊くことができる炊飯器を提供すること。
【解決手段】鍋内を米の糊化温度以下の温度(60℃)から沸騰するまで加熱する炊上工程において独立に制御でき、鍋2を局所的に加熱できる鍋底内側加熱コイル5a−1で強力な沸騰を起こすことによって、沸騰気泡が上昇してごはんにカニ穴41が生成される。鍋内を自由に動くことの出来る炊飯液が蒸発してなくなった状態でごはん全体を98℃に保つむらし工程において、過熱蒸気投入口4cより投入した蒸気はカニ穴41を通ってごはん全体をムラなく加熱することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鍋に投入した過熱蒸気によって効率よくごはんを加熱する炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、一般的な家庭用の炊飯器においては、鍋底部に配置した、鍋内の米と水を加熱するための鍋加熱手段が主な加熱手段である。ご飯をおいしく炊くためには、米の澱粉を十分に糊化させることが重要である。特に、追い炊き時に高温で米を加熱することで澱粉の糊化が進み、ご飯の甘み及び香りが増す。しかし、追い炊き時には水がほぼ無くなった状態であるため、鍋加熱手段による追い炊き加熱を継続すると、鍋底付近のご飯が焦げてしまうため、加熱を弱めざるを得なかった。
【0003】
例えば、図5に示すように、鍋加熱手段による加熱に加えて、鍋上方から高温の蒸気を鍋内に噴射し米飯及び水の加熱を行う炊飯器がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図5において、1は炊飯器本体、2は炊飯器本体1に着脱自在に内装される鍋、3は鍋2の上面を開閉自在に覆う蓋である。5aは鍋を加熱する鍋底面加熱コイルである。20は炊飯器本体1に内装される蒸気発生手段であり、水タンク21と水タンク加熱手段22とを有する。水タンク21内の水は水タンク加熱手段22によって加熱され、沸騰する。水タンク21で発生した水蒸気は、蒸気管24を通って蒸気投入口4dから鍋2に供給される。
【0005】
以上のように、上層のご飯を乾燥させることなく、鍋2内に温度の高い蒸気を炊きあげ終了後すぐに供給して鍋の水が蒸発した後温度が下がりやすいごはん上層の糊化を促進させるので、鍋内全体にわたってご飯の食味を向上することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−144308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記従来の炊飯器の構成では、鍋内に供給された蒸気は図の黒塗り矢印で示すようにごはん40の上面には即座に作用するものの、ごはんが折り重なっているため中心部へは浸透できず、上面のごはんからの熱伝達によって中心部へとゆっくりと熱が伝わっていく。
【0008】
これは、白抜き矢印で示す鍋加熱による伝熱も同様であり、鍋肌のごはんは鍋からの伝熱で温度が上がるものの、ごはん40中心部に熱が伝わるには時間を要する。
【0009】
つまり、ごはん中心部と、ごはん上面、鍋肌で温度差が出来てそれぞれの糊化状態にムラができて、すなわち食味にムラができてしまうという問題があった。
【0010】
本発明は、100℃以上の蒸気を鍋内に投入し、鍋内のごはん全体に過熱蒸気を行き渡らせることができ、ご飯の乾燥がなくおいしいご飯を炊くことができるとともに、炊き上り時点でごはんの天地を返すように混ぜて中の余分な蒸気を追い出す「ほぐし」をせずとも、おいしいごはんが得られる炊飯器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の発明者らは、前記従来の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、以下のことを見出した。
【0012】
即ち、蒸気を投入して上層のごはんを仕上げるむらし工程以前の工程において、ごはん上層からごはんの略中央部へと連通する穴(俗に言う「カニ穴」)を生成することによって、蒸気による加熱効果をごはん中心部へと素早く行き渡らせることができるということを見出した。そしてこの知見により本発明に想到した。
【0013】
前記従来の課題を解決するために、本発明の炊飯器は、ごはんの上層からごはんの略中央部へと連通するカニ穴を生成するカニ穴生成手段を設け、カニ穴は蒸気で効率よくごはんを加熱できるように過熱蒸気投入口の略直下に多く生成できる構成とした。
【0014】
これによって、ごはん同士の熱伝達によってのみ加熱されていたごはん中心部を直接蒸気によって加熱することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の炊飯器は、むらし工程など水が蒸発した状態でも、ごはん中心部に蒸気が行き渡るように、ごはんにカニ穴を生成することによって、ごはん中心部を蒸気によって加熱することができ、鍋加熱によって加熱される鍋肌や、蒸気によって加熱される上層部との温度差を小さくすることによってごはん全体を均一に糊化させてムラなく炊き上げることができる。
【0016】
また、蒸気による加熱でごはん中心部の余分な水分を蒸発させて追い出すことによって、炊き上り時点で、ごはんの天地を返すように混ぜて中の余分な蒸気を追い出す「ほぐし」をせずともおいしいごはんが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態1における炊飯器の側断面図
【図2】本発明の実施の形態2における炊飯器の側断面図
【図3】本発明の実施の形態2における炊飯器の側断面図
【図4】本発明の実施の形態2における炊飯器の側断面図
【図5】従来の炊飯器の側断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
第1の発明は炊飯器本体と、炊飯器本体に装備する鍋と、前記鍋を加熱する加熱手段と、炊飯器本体を覆う蓋と、前記鍋の温度を検出する鍋温度検出手段と、前記温度検出手段の出力に応じた所定の炊飯シーケンスに従って前記加熱手段を制御する加熱制御手段と、水を加熱して蒸気を発生する蒸気発生手段と、蒸気を100℃以上に過熱して過熱蒸気とする過熱手段と、過熱蒸気投入前にごはんの表面からごはんの略中央部へと連通する少なくとも1つのカニ穴を生成するためのカニ穴生成手段を備える構成としたことで、むらし工程など水が蒸発した状態でもごはん中心部に蒸気が行き渡るようにごはんにカニ穴を生成することによってごはん中心部を蒸気によって加熱することができ、鍋加熱によって加熱される鍋肌や、蒸気によって加熱される上層部との温度差を小さくすることによってごはん全体を均一に糊化させてムラなく炊き上げることができる。
【0019】
また、蒸気による加熱でごはん中心部の余分な水分を蒸発させて追い出すことによって、炊き上り時点で、ごはんの天地を返すように混ぜて中の余分な蒸気を追い出す「ほぐし」をせずとも、おいしいごはんが得られる炊飯器を提供することが可能である。
【0020】
第2の発明は、特に、第1の発明の前記カニ穴生成手段は、前記鍋内を100℃に加熱する炊上工程において、前記加熱手段によって前記鍋を加熱して前記鍋表面に発生する気泡である構成としたことで、ごはんにカニ穴を生成するための特別な手段を設けることなく鍋の加熱手段によって、ごはんに簡単にカニ穴を生成することができ、むらし工程など水が蒸発した状態でも、ごはん中心部に蒸気が行き渡るようにごはんにカニ穴を生成することによって、ごはん中心部を蒸気によって加熱することができ、鍋加熱によって加熱される鍋肌や、蒸気によって加熱される上層部との温度差を小さくすることにより、ごはん全体を均一に糊化させてムラなく炊き上げることができる。
【0021】
また、蒸気による加熱で、ごはん中心部の余分な水分を蒸発させて追い出すことによって、炊き上り時点でごはんの天地を返すように混ぜて、中の余分な蒸気を追い出す「ほぐし」をせずともおいしいごはんが得られる炊飯器を提供することが可能である。
【0022】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明の前記加熱手段のうち前記鍋の底部の加熱手段は鍋底内側加熱手段と、鍋底外側加熱手段とで構成され、前記鍋底内側加熱手段のみで前記鍋を加熱する工程を設けた構成とすることで、鍋底全体を加熱することに比べて大きなパワーで鍋底の一部分を加熱する局所加熱が可能となり、狙った位置にカニ穴を生成することが可能となるので、蒸気投入口の略直下にカニ穴を生成することができて、より効率よくごはん中心部を加熱することができる。
【0023】
そして、むらし工程など水が蒸発した状態でもごはん中心部に蒸気が行き渡るように、ごはんにカニ穴を生成することによって、ごはん中心部を蒸気によって加熱することができ、鍋加熱によって加熱される鍋肌や、蒸気によって加熱される上層部との温度差を小さくすることによって、ごはん全体を均一に糊化させてムラなく炊き上げることができる。
【0024】
また、蒸気による加熱でごはん中心部の余分な水分を蒸発させて追い出すことによって、炊き上り時点でごはんの天地を返すように混ぜて中の余分な蒸気を追い出す「ほぐし」をせずともおいしいごはんが得られる炊飯器を提供することが可能である。
【0025】
第4の発明は、特に、第1〜第3の発明のいずれか1つの発明の前記鍋内を米の糊化温度(たとえば60℃)以下に保つ前炊き工程を設け、前記炊上工程において、前記鍋底内側加熱手段のみで前記鍋を加熱する構成とすることで、米の表面が糊化して米同士が接合して沸騰気泡による、カニ穴の生成ができなくなる前に、前記鍋底内側加熱手段によって集中加熱による突沸を起こすことで沸騰気泡により、簡単にカニ穴を生成することが可能である。
【0026】
そして、むらし工程など水が蒸発した状態でもごはん中心部に蒸気が行き渡るようにごはんにカニ穴を生成することによって、ごはん中心部を蒸気によって加熱することができ、鍋加熱によって加熱される鍋肌や、蒸気によって加熱される上層部との温度差を小さくすることによって、ごはん全体を均一に糊化させてムラなく炊き上げることができる。
【0027】
また、蒸気による加熱でごはん中心部の余分な水分を蒸発させて追い出すことによって、炊き上り時点でごはんの天地を返すように混ぜて、中の余分な蒸気を追い出す「ほぐし」をせずとも、おいしいごはんが得られる炊飯器を提供することが可能である。
【0028】
第5の発明は、特に、第1〜第4の発明のいずれか1つの発明の前記鍋内を前記炊上工程と、加熱を抑えて沸騰状態を維持する沸騰工程の前半において、前記鍋底内側加熱手段のみで前記鍋を加熱する構成とすることで、米の表面が糊化して米同士が接合して沸騰気泡によるカニ穴の生成ができなくなる前に、前記鍋底内側加熱手段によって集中加熱によ
る突沸を起こすことで沸騰気泡により、簡単にカニ穴を生成することが可能である。
【0029】
また、沸騰状態を維持する沸騰工程の前半においても、前記鍋底内側加熱手段で加熱を継続することによって、生成されたカニ穴を沸騰気泡が通り、カニ穴の生成を確実なものにできる。
【0030】
そして、むらし工程など水が蒸発した状態でも、ごはん中心部に蒸気が行き渡るようにごはんにカニ穴を生成することによって、ごはん中心部を蒸気によって加熱することができ、鍋加熱によって加熱される鍋肌や、蒸気によって加熱される上層部との温度差を小さくすることによって、ごはん全体を均一に糊化させてムラなく炊き上げることができる。
【0031】
また、蒸気による加熱で、ごはん中心部の余分な水分を蒸発させて追い出すことによって、炊き上り時点でごはんの天地を返すように混ぜて中の余分な蒸気を追い出す「ほぐし」をせずとも、おいしいごはんが得られる炊飯器を提供することが可能である。
【0032】
第6の発明は、特に、第1〜第5の発明のいずれか1つの発明の炊飯合数に応じて、生成するカニ穴の位置を変える構成とすることで、炊飯合数の違いによって蒸気投入時にごはん上面の蒸気が直接当たる範囲が変化しても、その範囲を狙ってカニ穴を生成することで、後のむらし工程で効率よくカニ穴の中に蒸気を導入することができる。
【0033】
そして、むらし工程など水が蒸発した状態でも、ごはん中心部に蒸気が行き渡るようにごはんにカニ穴を生成することによって、ごはん中心部を蒸気によって加熱することができ、鍋加熱によって加熱される鍋肌や、蒸気によって加熱される上層部との温度差を小さくすることによって、ごはん全体を均一に糊化させてムラなく炊き上げることができる。
【0034】
また、蒸気による加熱でごはん中心部の余分な水分を、蒸発させて追い出すことによって、炊き上り時点でごはんの天地を返すように混ぜて、中の余分な蒸気を追い出す「ほぐし」をせずとも、おいしいごはんが得られる炊飯器を提供することが可能である。
【0035】
第7の発明は、特に、第1〜第6の発明のいずれか1つの発明の炊飯合数が増えるに従い、カニ穴の生成範囲を狭める構成とすることで、炊飯合数が増えると蒸気投入口とごはん上面が近づくために、蒸気が直接当たる範囲が狭まることに対応してカニ穴を生成して、後のむらし工程で効率よくカニ穴の中に蒸気を導入することができる。
【0036】
そして、むらし工程など水が蒸発した状態でも、ごはん中心部に蒸気が行き渡るようにごはんにカニ穴を生成することによって、ごはん中心部を蒸気によって加熱することができ、鍋加熱によって加熱される鍋肌や、蒸気によって加熱される上層部との温度差を小さくすることによって、ごはん全体を均一に糊化させてムラなく炊き上げることができる。
【0037】
また、蒸気による加熱でごはん中心部の余分な水分を蒸発させて追い出すことによって、炊き上り時点でごはんの天地を返すように混ぜて、中の余分な蒸気を追い出す「ほぐし」をせずとも、おいしいごはんが得られる炊飯器を提供することが可能である。
【0038】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0039】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における炊飯器の側断面図を示すものである。
【0040】
さらに、図1はむらし工程における熱の移動イメージを示した略図である。
【0041】
図1において、炊飯器本体1は、上面が開口する略円筒状に形成しており、この炊飯器本体1の内部に鍋収納部である保護枠9を配設し、この保護枠9内には内周面に描かれた水位線を有する鍋2を着脱自在に配設している。保護枠9の外側には鍋2を加熱する鍋底面加熱コイル5aを配設しており、鍋底内側を加熱する鍋底内側加熱コイル5a−1と、鍋底外側を加熱する鍋底外側加熱コイル5a−2を独立に制御することができる。鍋2の側面外側には鍋側面加熱コイル5bを配設している。なお、鍋底面加熱コイル5aおよび鍋側面加熱コイル5bは加熱コイルに代えてヒータであってもよい。
【0042】
炊飯器本体1の上部に蓋3を開閉自在に取り付けている。蓋3は、保護枠9の後部にヒンジ軸3aを介して回動自在に支持し、回動バネ3bにより付勢されている。蓋3のもう一端には、保護枠9の前方に回動自在に軸支されたフックボタン1aを配設し蓋3の開放を抑止する。フックボタン1aが蓋3へ嵌合しているときには、蓋3は開放することなくフックボタン1aに保持され、閉塞状態となっている。
【0043】
炊飯器本体1には水を貯留するための水タンク21と、水タンク21を加熱するための水タンク加熱手段22と、水タンク21の温度を検知するための水タンク温度検知手段23とで構成される蒸気発生手段20が配置されている。
【0044】
水タンク上面は蓋3を閉じた状態では、発生した蒸気が漏れ出さないようにパッキン(図示しない)によって密閉される。
【0045】
蓋3内部には蒸気を過熱するためのヒータ32と、ヒータ32の一部または全部を内包する筒形状の蒸気過熱容器31で構成する蒸気過熱手段30を配し、蒸気過熱容器31には蒸気を導入するための蒸気入口31aと、過熱蒸気を排出するための過熱蒸気出口31bとを配している。
【0046】
そして、蒸気過熱容器31の蒸気入口31aと蒸気発生手段20とは、蒸気管24を介して連通されている。
【0047】
また、過熱蒸気出口31bと鍋2とは過熱蒸気管34と、過熱蒸気管34の過熱蒸気出口31bとは反対の端と内蓋4の過熱蒸気投入口4cを覆って蒸気もれを防ぐ過熱蒸気投入口パッキン35とによって連通されている
蓋3の下部に、炊飯および保温中に鍋2内に発生する蒸気を排出する蒸気口4bを有する内蓋4を配設し、その上部には内蓋4を加熱する内蓋加熱コイル(ヒータ)5cと本体外部と連通している筒形状の蒸気筒10を配設している。
【0048】
蒸気筒10と内蓋4の間に蒸気口パッキン7を配設し、蒸気が蓋3の内部に流入するのを防止している。また、内蓋4の外周部に、鍋2のフランジ部(図示しない)の上面と当接する内蓋パッキン4aを配設しており、炊飯および保温中に鍋2内に発生する蒸気が蒸気口4b以外から外部に流出するのを防止している。
【0049】
鍋温度検知手段8は、鍋2の底略中心部に当接して熱伝導によって鍋2の温度を検知することができる。
【0050】
以上のように構成された炊飯器について、以下その動作、作用を説明する。
【0051】
ユーザが、炊飯を行う米とその米量に対応した水を鍋2に入れて炊飯器本体1にセットし、蓋3を閉めた後に、操作入力表示部12の炊飯開始ボタン(図示しない)を操作することで炊飯工程が実施される。
【0052】
炊飯工程は、時間順に前炊き、炊き上げ、沸騰維持、蒸らしに大分される。前炊き工程において、鍋2の温度が米の吸水に適した温度(例えば60℃)になるように加熱手段5を制御し、鍋内の米と水とを加熱する。
【0053】
次に、炊き上げ工程において、内蓋4の温度が所定値(例えば80℃)になるまで鍋加熱コイル5aによって鍋2を所定の熱量で加熱する。この時の温度上昇速度によって、炊飯量を判定する。
【0054】
このとき、鍋底からの沸騰気泡が多く上昇すると、米の下層から上層にかけて気泡の通り道(カニ穴)ができ、このカニ穴が多いほどごはん中心部を良く加熱することができる。このカニ穴を生成するには、炊上工程の中でも米の表面が糊化する前の早い段階で強い沸騰を起こして米同士が接合してしまう前に沸騰気泡を上昇させる必要がある。
【0055】
そこで、本発明の第1の実施の形態においては鍋底加熱コイル5aを、鍋底内側加熱コイル5a−1と鍋底外側加熱コイル5a−2に分けて独立に制御できるようにして、鍋底内側加熱コイル5a−1のみに通電すると、鍋底加熱コイル5a全体を通電するよりも大きなパワーを入れることができるので、強力な沸騰を局所的に起こすことができる。
【0056】
そして、沸騰維持工程で、鍋2の水が無くなり、鍋2の温度が100℃を超えた所定値になるまで、鍋底面加熱コイル5aに通電し、米と水を加熱する。
【0057】
水が米よりも上部に存在する沸騰維持工程の前半に、鍋底内側加熱コイル5a−1によって加熱することで、沸騰気泡が先ほどの炊上工程で生成したカニ穴を通ることによってカニ穴が確実なものとなる。
【0058】
次に、蒸らし工程では、ごはんの温度を所定温度(例えば98℃)に保つ程度に加熱手段5を制御してごはんを蒸らす。このとき、熱を伝えるための水は蒸発してしまっているので、鍋底面加熱コイル5aや鍋側面加熱コイル5bのみ通電していると鍋肌のごはんが加熱されても上部中心のごはん温度は下がってしまい、上部中心のごはんを所定温度に加熱した場合には鍋肌のごはんは過加熱となり乾燥してしまう。
【0059】
そこで、鍋上部から過熱蒸気を投入することで、鍋2の上部中心のごはん温度を所定温度に加熱してやることで、ごはん全面を乾燥なく加熱することは可能である。
【0060】
しかしながら、ごはん全体を加熱するにはごはんの中心部を加熱する手段がなく、下からの鍋加熱、上からの蒸気加熱ではごはん同士の熱伝達による効率の悪い加熱となり、ごはん表面と中心部では加熱ムラが出来てしまう。
【0061】
そこで、炊上工程〜沸騰維持工程で生成したカニ穴に蒸気を通すことで、ごはん内部から加熱することができて、ごはん全体をより均一に糊化させてムラのないおいしいごはんを炊き上げることができるものである。
【0062】
そして効率よく蒸気がカニ穴を通るためには過熱蒸気投入口4cの略直下にカニ穴を生成する必要がある。そこで過熱蒸気投入口4cの略直下にカニ穴生成手段43(鍋底内側加熱コイル5a−1)を設ける。
【0063】
以上のように、炊上工程〜沸騰維持工程にかけて局所的に強力な沸騰を起こして、カニ穴を生成するためのカニ穴生成手段として鍋底内側加熱コイルを設けることによって、むらし工程においてカニ穴に蒸気を通して効率よくごはんの外部(鍋加熱+蒸気加熱)と内
部(蒸気加熱)の全体から加熱することによって、ごはん全体を均一に糊化させてムラなく炊き上げることができる。
【0064】
また、蒸気による加熱でごはん中心部の余分な水分を蒸発させて追い出すことによって、炊き上り時点でごはんの天地を返すように混ぜて中の余分な蒸気を追い出す「ほぐし」をせずともおいしいごはんを得ることができる炊飯器を提供することが可能である。
【0065】
(実施の形態2)
図2、図3、図4は、それぞれ本発明の実施の形態2における炊飯器の側断面図である。
【0066】
鍋底加熱コイル5aをさらに分割して鍋底内側加熱コイル5a−1と、鍋底外側加熱コイル5a−2と、これらの中間に配置した鍋底中間部加熱コイル5a−3で構成している。
【0067】
炊飯器の他の構成としては、本発明の第1の実施の形態と同じものである。
【0068】
図2は、以上の構成の炊飯器の炊上工程〜沸騰維持工程にかけての、米44と水45が鍋に存在する状態で、鍋底内側加熱コイル5a−1のみを通電して沸騰を起こしたときの沸騰気泡46が上昇している様子を示した略図である。
【0069】
また、図3は鍋底中間部加熱コイル5a−3のみを通電して沸騰を起こしたときの沸騰気泡46が上昇している様子を示した略図である。
【0070】
また、図4は図1に対して合数が多い場合のむらし工程における熱の移動イメージを示した略図である。
【0071】
鍋底の局所加熱手段を複数持つことによって、図2、図3に示すように沸騰気泡を複数位置から上昇させることができ、米44のそれぞれの位置に沸騰気泡の通り道(点線で図示)を形成することができる。
【0072】
これによって、図4のように炊飯合数が多い場合に、ごはん上面と過熱蒸気投入口4cが近づくために蒸気投入範囲42が狭まるときには、炊上工程〜沸騰維持工程において鍋底内側加熱コイル5a−1のみを通電することで過熱蒸気投入口4cの略直下の狭い範囲にカニ穴を集中して生成することが可能である。
【0073】
そして、むらし工程において蒸気投入範囲42に収まる領域に多くのカニ穴が存在することで効率よく蒸気を通してごはんの中から加熱することができる。
【0074】
なお、ここでは鍋底加熱コイル5aを内側と外側で同心円形状で分割した構成を示したが、局所沸騰を起こすための構成であれば、この構成に制限するものではない。
【0075】
以上のように、鍋底内側加熱コイル5a−1と鍋底中間部加熱コイル5a−3とを分割して独立に制御できるようにすることで、カニ穴の生成位置を制御することができ、合数の変化などによる蒸気投入範囲42の変化に対応した位置にカニ穴を生成することができ、むらし工程においてカニ穴に蒸気を通して効率よくごはんの外部(鍋加熱+蒸気加熱)と内部(蒸気加熱)の全体から加熱することによって、ごはん全体を均一に糊化させてムラなく炊き上げることができる。
【0076】
また、蒸気による加熱でごはん中心部の余分な水分を蒸発させて追い出すことによって
、炊き上り時点でごはんの天地を返すように混ぜて中の余分な蒸気を追い出す「ほぐし」をせずともおいしいごはんを得ることができる炊飯器を提供することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0077】
以上のように、本発明にかかる炊飯器は鍋内の沸騰箇所を制御できることから、沸騰箇所を動かすことによって具材を沸騰気泡の浮力によって撹拌する自動調理の用途に適用できる。
【符号の説明】
【0078】
1 炊飯器本体
2 鍋
3 蓋
4 内蓋
4a 内蓋パッキン
4b 蒸気口
4c 過熱蒸気投入口
5 加熱手段
5a−1 鍋底内側加熱コイル
5a−2 鍋底外側加熱コイル
5a−3 鍋底中間部加熱コイル
5b 鍋側面加熱コイル
5c 内蓋加熱コイル
6 制御手段
6a 加熱制御手段
7 蒸気口パッキン
8 鍋温度検知手段
9 保護枠
10 蒸気筒
12 操作入力表示部
20 蒸気発生手段
21 水タンク
22 水タンク加熱手段
23 水タンク温度検知手段
24 蒸気管
30 蒸気過熱手段
31 蒸気過熱容器
31a 蒸気入口
31b 過熱蒸気出口
32 ヒータ
33 過熱蒸気温度検知手段
34 過熱蒸気管
35 過熱蒸気投入口パッキン
36 ヒータ配線
40 ごはん
41 カニ穴
42 蒸気投入範囲
43 カニ穴生成手段
44 米
45 水
46 沸騰気泡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炊飯器本体と、炊飯器本体に装備する鍋と、前記鍋を加熱する加熱手段と、炊飯器本体を覆う蓋と、前記鍋の温度を検出する鍋温度検出手段と、前記温度検出手段の出力に応じた所定の炊飯シーケンスに従って前記加熱手段を制御する加熱制御手段と、水を加熱して蒸気を発生する蒸気発生手段と、蒸気を100℃以上に過熱して過熱蒸気とする過熱手段と、過熱蒸気投入前にごはんの表面からごはんの内部へと連通する少なくとも1つのカニ穴を生成するためのカニ穴生成手段を備える炊飯器。
【請求項2】
前記カニ穴生成手段は、前記鍋内を100℃に加熱する炊上工程において前記加熱手段によって前記鍋を加熱して前記鍋表面に発生する気泡であることを特徴とする請求項1に記載の炊飯器。
【請求項3】
前記加熱手段のうち前記鍋の底部の加熱手段は鍋底内側加熱手段と、鍋底外側加熱手段とで構成され、前記鍋底内側加熱手段のみで前記鍋を加熱する工程を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の炊飯器。
【請求項4】
前記鍋内を米の糊化温度以下に保つ前炊き工程を設け、前記炊上工程において、前記鍋底内側加熱手段のみで前記鍋を加熱することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の炊飯器。
【請求項5】
前記鍋内を前記炊上工程と、加熱を抑えて沸騰状態を維持する沸騰工程の前半において、前記鍋底内側加熱手段のみで前記鍋を加熱することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の炊飯器。
【請求項6】
炊飯合数に応じて生成するカニ穴の位置を変えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の炊飯器。
【請求項7】
炊飯合数が増えるに従いカニ穴の生成範囲を狭めることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−239673(P2012−239673A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−113143(P2011−113143)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】