説明

炊飯米混合用粉末食品

【課題】うるち米の炊飯米に混ぜるだけで、もち米の食感を有する米飯食品を簡単に製造することができる炊飯米混合用粉末食品を提供すること。
【解決手段】本発明の炊飯米混合用粉末食品は、例えば、うるち米の炊飯米に混合して米飯食品を製造する際に用いられる。この食品は、アルファ化もち米粉を含有しており、好ましくはアルファ化もち米粉と、味、色、香りを付与するための粉末原料とを含有している。好適な粉末原料の例としては、小豆エキス粉末がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炊飯米に混合するだけで調味されたご飯を製造することができる炊飯米混合用粉末食品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
赤飯は古来よりお祝い事の場などで食されてきたものであり、長いあいだ日本人に好まれてきた。通常、赤飯は米(もち米)と小豆(又はささげ)とを原材料として製造される。あらかじめ小豆を煮ておき、煮た小豆と小豆の煮汁とを米と一緒に蒸すあるいは炊くことにより、米が赤色に着色されて、小豆と米がほどよく炊き上がり赤飯となる。
【0003】
また、山菜、肉、魚介などと一緒にもち米を蒸して作るおこわと呼ばれる食品もあり、赤飯同様に好まれてきた。
【0004】
こうした赤飯やおこわの調理方法は伝統的なものであるが、わざわざもち米を用意し、もち米以外に上述のようなあらかじめ煮た小豆、ささげ、煮汁、山菜、肉、魚介などの材料を別々に準備して調理することは、面倒で手間がかかる。
【0005】
そこで、このような手間を解消するために、赤飯などを簡単に作る方法が従来提案されている。その一例として、小豆と小豆の煮汁とをセットにしてもち米と一緒に炊くだけで赤飯になる赤飯用具剤セットや、小豆と小豆の煮汁顆粒と無洗米とからなる赤飯の素などが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−165号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような特許文献1に記載の従来方法によれば、伝統的な方法に比べて簡単に赤飯を作ることができる。しかしながら、もち米を加熱して炊飯するという行為自体は依然として必要であるため、簡便性という点ではまだまだ改善の余地が多い。また、何らかの手法により(例えば単純に炊飯米に混ぜるだけで)簡便性を向上させることが仮にできたとしても、赤飯やおこわはもち米の食感が大事であるため、その食感を実現できないような手法ではあまり意味がない。
【0007】
そこで本願発明者らは、簡便性の向上という上記の課題に鑑みて、炊飯米に混ぜるだけで、もち米の食感を有する米飯食品を簡単に製造することができる食品素材の提供を目的として開発を行った。
【課題を解決するための手段】
【0008】
簡便性の向上を図るために本願発明者らは、当初、もち米の炊飯米に混ぜるだけで赤飯やおこわになる食品素材の開発を目指した。ここで、炊飯前に混ぜる食品素材であれば小豆や小豆の煮汁をセットとするだけで十分であるが、炊飯後に液状やペースト状の食品素材を混ぜることは食感を悪化させるため好ましくない。それゆえ、もち米の炊飯米と混合される粉末形態の食品素材を検討した。
【0009】
ところが、もち米の炊飯米は粘り気が強く、具材の粉末を均一に混合することが困難であり、簡便性の向上を図るうえで必ずしも有利でない。そこで、これまでとは発想を転換し、うるち米の炊飯米を出発材料として使用することを考えた。そうかと言って、通常のうるち米の炊飯米に乾燥小豆や小豆粉末を混ぜたとしても、見た目は赤飯のようになるが、もち米で作ったものとは全く異質の食感になってしまう。
【0010】
このような状況の下、本願発明者らは、もち米の食感を実現しうる粉末形態の食品素材を模索すべく鋭意研究を行った結果、うるち米の炊飯米にアルファ化もち米粉を混合すると、驚くほどもち米の食感に近いご飯ができることを新規に知見した。
【0011】
しかも、アルファ化もち米粉と、おこわや赤飯を作るための味付け用、色付け用、香付け用の粉末原料とを一緒に混合する場合でも、それらをうるち米の炊飯米に混合すればよいので、混合時のべたつきも少なく均一に混合しやすいという有利な点があることも併せて知見した。
【0012】
さらに、アルファ化もち米粉と小豆エキス粉末とを一緒に混合すると、粉末の混合がさらに行いやすくなり、さらなる均一化を達成できることも知見した。そして、上記の手法を用いれば、もち米と小豆とから手間をかけて作った従来の赤飯と変わらない食感、見た目、風味の赤飯ができることも知見した。
【0013】
そして、本願発明者らはこれらの知見に基づいて下記の課題解決手段1〜7を完成させるに至ったのである。ここにそれらを列挙する。
【0014】
[1]うるち米の食感をもち米様の食感とするためにうるち米の炊飯米に混合することを用途とする粉末食品であって、アルファ化もち米粉を含有した炊飯米混合用粉末食品。
【0015】
[2]うるち米の食感をもち米様の食感とするためにうるち米の炊飯米に混合することを用途とする粉末食品であって、アルファ化もち米粉と、味、色及び香りのうちの少なくともいずれかを付与するための粉末原料とを含有した炊飯米混合用粉末食品。
【0016】
[3]うるち米の食感をもち米様の食感とするためにうるち米の炊飯米に混合することを用途とする粉末食品であって、アルファ化もち米粉と小豆エキス粉末及び/又はささげエキス粉末とを含有し、うるち米の炊飯米に混合して赤飯を製造する際に用いられる炊飯米混合用粉末食品。
【0017】
[4]うるち米の炊飯米に対し、炊飯米当り0.6質量%以上1.3質量%以下の割合で混合される上記手段1乃至3のいずれか1項に記載の炊飯米混合用粉末食品。
【0018】
[5]アルファ化もち米粉が、2mmメッシュパスの大きさである上記手段1乃至4のいずれか1項に記載の炊飯米混合用粉末食品。
【0019】
[6]アルファ化もち米粉が、90質量%以上が2mmメッシュパスであり、かつ60質量%以上が1mmメッシュパスの大きさである上記手段1乃至4のいずれか1項に記載の炊飯米混合用粉末食品。
【0020】
[7]アルファ化もち米粉と小豆エキス粉末及び/又はささげエキス粉末とを混合して流動層造粒することにより得られた上記手段3乃至6のいずれか1項に記載の炊飯米混合用粉末食品。
【発明の効果】
【0021】
従って、請求項1〜7に記載の発明によれば、うるち米の炊飯米に混ぜるだけで、もち米の食感を有する米飯食品を簡単に製造することができる炊飯米混合用粉末食品を提供することができる。そして上記の発明によれば、例えば、通常のうるち米の炊飯米を好きな量だけとり、手軽に赤飯やおこわ等の米飯食品を作ることができる。さらに具体例を挙げると、うるち米の炊飯米を使用して、一部のものは白ご飯のふりかけのおむすびとし、残りのものは本発明によって赤飯やおこわのおむすびとして、お弁当にするということも可能になる。
【0022】
なお、本発明に用いるうるち米の炊飯米は、必ずしもうるち米100%である必要はない。即ち、例えばうるち米に1割程度のもち米を混合した混合米の炊飯米にもち米の食感を付与したい場合にも本発明を適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の炊飯米混合用粉末食品を具体化した実施の形態を詳細に説明する。
【0024】
本発明の炊飯米混合用粉末食品はアルファ化もち米粉を含有している。アルファ化もち米粉とは、和菓子によく用いられるものである。もち米を水分存在下で80℃〜110℃程度に加熱する工程を経たことによりもち米がアルファ化(糊化)した状態のもち米粉を言う。
【0025】
もち米の食感を期待する場合には、ほぼ完全にアルファ化されたもち米粉(例えばアルファ化度が90%以上のもの、好ましくは95%以上のもの)を使用することが好ましいが、求める食感に合わせて一部がアルファ化されたもち米粉を使用してもよい。
【0026】
アルファ化もち米粉の製造方法の一例を挙げる。まず、もち米を石臼などの装置により約0.5mm以下程度に微細化してもち米粉を製造する。製造したもち米粉を2倍量程度の水で溶いてもち米液を製造する。次いで、ドラムドライ装置にもち米液を通すことにより一気にもち米がアルファ化され、アルファ化された板状のもち米板が出来上がる(厚さ約0.1mm〜1mm程度)。このもち米板をミル(高速回転粉砕機)などによって粒最大径で0.1mm〜2mm程度(多くは粒最大径0.5mm以下)に微細化すると、アルファ化もち米粉が出来上がる。なお、ドラムドライ装置とは、例えば表面温度が160℃程度となっている円柱状の回転ドラム2本がクリアランス約0.5mmで隣り合わせに配置されており、前記クリアランスに乾燥させたい原料を通すことで一気に原料を加熱及び乾燥させる装置のことをいう。
【0027】
アルファ化もち米粉の大きさは任意であり特に限定されないが、一般的なうるち米(ジャポニカ種)の粒径の大きさよりも小さいことがよく、例えば、2mmメッシュパスの大きさであること、より具体的には2mmメッシュパスの大きさのものが粉末の大部分を占めている(例えば90質量%以上である)ことが好ましい。その理由は、粉末が微細化されているほど炊飯米と粉末との均一な混合が可能になるため、食感や香りにムラが生じにくくなるからである。なお、アルファ化もち米粉の大きさは、1mmメッシュパスの大きさであることがより好ましく、0.5mmメッシュパスの大きさであることが特に好ましい。粒度分布で見れば、アルファ化もち米粉の90質量%以上が2mmメッシュパスであり、かつ60質量%以上が1mmメッシュパスであることが好ましく、さらにはアルファ化もち米粉の90質量%以上が2mmメッシュパスであり、かつ60質量%以上が0.5mmメッシュパスであることが好ましい。
【0028】
もっとも、もち米本来の食感等をある程度損なったとしても、意図的に食感や香りにムラを生じさせた食品を製造するために、例えば2mm超の大きな粉末が含まれているアルファ化もち米粉を用いることも一応許容される。なお、2mmメッシュパスとは粒最大径が2mmという意味ではなく、2mmメッシュをパスするという意味である。即ち、例えば粒最大径が2.5mmであっても、粒最小径が0.5mm以下の棒状のような形状であれば2mmメッシュパスとなり得る。勿論、他のサイズのメッシュパスについても同様である。
【0029】
また、アルファ化もち米粉の粒形状は任意であり特に限定されないが、強いて言えば、粒最大径/粒最小径の比で定義されるアスペクト比が比較的小さい(1〜1.5程度)のものよりも、当該アスペクト比が比較的大きい(2.0以上、好ましくは3.0以上)のもののほうが好適である。即ち、キューブ状のような形状よりも、フレーク状(鱗片状)や棒状のような形状のほうが好適であるということになる。その理由は、当該アスペクト比が大きいもち米粉は比表面積が大きいことから、吸水性が高くて水戻り性がよいため、うるち米の炊飯米との混合時に確実にかつ均一に水戻りしてもち米の食感を出すことができるからである。勿論、当該アスペクト比が大きく、かつ、粒最小径が小さいもの(例えば、0.5mm以下)が好ましい。
【0030】
アルファ化もち米粉を含有する本発明の炊飯米混合用粉末食品は、うるち米の炊飯米に混合することにより、その後特に加熱調理を行うことなく非加熱で米飯食品を製造するための食品として用いられる。この場合、製造したい米飯食品の種類に応じ、アルファ化もち米粉とともにアルファ化もち米粉以外の粉末原料を含有させてもよい。かかる粉末原料は、うるち米の炊飯米に味、色及び香りのうちの少なくともいずれかを付与する目的で使用される。上記の粉末原料としては特に限定されず、例えば、各種の穀類粉末(麦類、豆類、雑穀類(トウモロコシ、ソバ、アワ、ヒエ等)の粉末)を選択することができる。
【0031】
ここで、米飯食品の代表例としては赤飯があり、本発明の炊飯米混合用粉末食品は赤飯製造用の粉末食品として具体化されることが好適である。この場合、アルファ化もち米粉と小豆エキス粉末とを含有させた粉末食品とすることが好適である。かかる赤飯製造用の粉末食品には、アルファ化もち米粉及び小豆エキス粉末の他に、さらに乾燥小豆を含有させることが、消費者の嗜好性、簡便性の点から好ましい。
【0032】
アルファ化もち米粉をうるち米の炊飯米に混ぜる際に、小豆エキス粉末を一緒に混ぜておくと、もち米粉同士のくっ付きを防ぐことができ、均一混合がしやすくなるからである。勿論、アルファ化もち米粉、小豆エキス粉末、乾燥小豆は混合して同一の包装材料に充填してもよいし、別々に包装されていても構わない。
【0033】
小豆エキス粉末の製造方法の一例を挙げる。あんこの製造工程廃液として出るような小豆煮汁(例えば、小豆を1〜10倍量の水で30分間〜3時間程度煮ることによってできた煮汁)に、5%〜50%程度デキストリンを混合し、一般的なスプレードライにより小豆エキス粉末を得る。
【0034】
乾燥小豆の製造方法の一例を挙げる。前記のように小豆を煮て、煮た小豆を真空凍結乾燥(フリーズドライ)などを用いて乾燥することで乾燥小豆を得る。
【0035】
なお、アルファ化もち米粉と小豆エキス粉末とを含有する赤飯製造用の粉末食品を得る場合、とりわけ小豆エキス粉末が微粉末(例えば0.1mm未満の粉末)であるような場合には、アルファ化もち米粉と小豆エキス粉末とを混合して流動層造粒することが好ましい。流動層造粒とは、次のような造粒プロセスである。まず、上記粉末の単体あるいは混合物を約70℃の熱風で舞わせて、そこに水あるいはデキストリン溶解水を霧状に噴霧することにより、粉体同士を霧状の水分で付着させる。その際、熱風は目の細かい布のフィルターなどから排出され、新しい乾燥した熱風が入るので、再度乾燥し、粉体中の原料(でん粉類)、あるいはデキストリン溶解水中のデキストリンの効果により、粉末同士の付着が進む。この作業を通常は1時間程度行うことで、粒子サイズを全体的に大きく(例えば0.1mm〜1mm程度に)することができる。
【0036】
アルファ化もち米粉と小豆エキス粉末とを混合して行う流動層造粒によれば、1)微粒子がなくなるので工場でのハンドリング時に粉立ちが少なくなり、計量や充填がしやすくなる、2)粉体が均一になるので計量時の重量精度が向上する、等といったメリットが得られる。なお、かかる流動層造粒は、アルファ化もち米粉と小豆エキス粉末とからなる2種類の粉末の混合物について行ってもよいが、他の粉末を添加して行っても勿論よい。例えば、赤飯製造用の粉末食品を得るにあたり、アルファ化餅米粉:小豆煮汁エキス粉末:食塩=1:0.5〜2.0:0.1〜0.5という質量比で流動層造粒を行うようにしてもよい。この他、アミノ酸、魚介類エキスパウダー、動植物エキスパウダー、色素などを添加して、同様に流動層造粒を行ってもよい。
【0037】
本発明に用いる炊飯米のための味付け用粉末原料、色付け用粉末原料、香付け用粉末原料の一例としては、上記の小豆エキス粉末があるが、それ以外にも例えば、鰹節粉末、青菜の粉末、わかめの粉末、焼き塩、粉末海苔、鮭フレークなどを用いることができる。なお、小豆エキス粉末を使用すると、味、色及び香りの三つを付与することが可能である。
ここで、上述したように本発明を赤飯製造用の粉末食品として具体化する場合には小豆エキス粉末や乾燥小豆を用いることが好ましいが、小豆エキス粉末や乾燥小豆の代わりに(又は併せて)、ささげエキス粉末や乾燥ささげを用いることもできる。この場合、小豆エキス粉末や乾燥小豆を用いた場合と同様の効果を期待することができる。また、ささげエキス粉末や乾燥ささげは、小豆エキス粉末や乾燥小豆の小豆をささげに置き換えれば、同様の製造方法で製造することができる。
【0038】
アルファ化もち米粉は、うるち米の炊飯米に比較的少量混合されるだけでも所定の効果を発揮することができ、具体的には、うるち米の炊飯米当り0.3質量%以上1.6質量%以下の割合で混合されることが好ましい。この量よりも少ないと、もち米の食感が不十分になるおそれがある。逆にこの量よりも多いと、団子状に近い状態となってもち米の食感ではなくなるおそれがあり、しかも混合し難くなるからである。なお、上記アルファ化もち米粉のうるち米の炊飯米に対する混合割合は、0.6質量%以上1.3質量%以下の割合であることがより好ましく、0.9質量%以上1.3質量%以下の割合であることがより好ましい。
【0039】
以下、本実施形態をより具体化した実施例を紹介するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0040】
(実施例1−1:アルファ化もち米粉の使用効果に関する試験)
【0041】
まず、食味等の改変に効果があると思われる様々な種類の食品素材を用い、それら食品素材をそれぞれ炊飯米に混ぜ合わせ、もち米に似た食感になるか否かを調査した。具体的にいうと、うるち米の炊飯米に対して各種食品素材を1.25質量%含有させ、これを均一に混合することにより、試験用の米飯食品を製造した。この後、得られた各米飯食品を官能検査員により試食をしてもらい、もち米に似た食感となっているか否かを評価した。その結果を表1に示す。なお、表1では、○(良)、△(やや良)、×(不良)の三段階で良否の評価を行った。
【0042】
表中の備考1に示すアルファ化もち米粉は、90質量%以上が2mmメッシュをパスするが、1mmメッシュをパスするものが10質量%以下である粒度分布の粉末である。これに対し、備考2に示すアルファ化もち米粉は、90質量%以上が2mmメッシュをパスし、かつ60質量%以上が1mmメッシュをもパスする粒度分布の粉末である。つまり、備考2のアルファ化もち米粉のほうが備考1のアルファ化もち米粉に比べて、平均粒径が小さくかつフレーク状のものの含有比率が多くなっている。
【表1】

【0043】
表1の結果から明らかなように、アルファ化もち米粉を混合させることで、もち米粉の食感を付与できることがわかった。なお、評価試験の結果、備考2のアルファ化もち米粉のほうが、備考1のアルファ化もち米粉に比較して好結果が得られることもわかった。ただし、備考2のアルファ化もち米粉を用いた場合であっても、意図的に食感や香りにムラを生じさせた米飯食品の製造には有効であると考えられた。
(実施例1−2:アルファ化もち米粉の適正混合量に関する試験)
【0044】
この試験は、アルファ化もち米粉をうるち米の炊飯米に混合する量の最適値を調査するために行った。ここでは、表2のように混合量を変化させて、アルファ化もち米粉を混合した炊飯米を製造し、官能検査員により試食評価をした。また混ぜ具合の評価も同時に行った。その結果を表2に示す。
【表2】

【0045】
表2の結果から明らかなように、アルファ化もち米粉をうるち米の炊飯米当り0.3質量%以上混合すると、もち米と似た食感になることがわかった(評価○:良)。また、0.6質量%以上混合すると、よりもち米の食感に近づくこともわかった(評価:◎極めて良)。0.9質量%、1.3質量%、1.6質量%混合したときも同様の極めて良い、もしくは良い結果が得られた。しかし、1.9質量%以上混合すると、混ぜ難くなり、また団子状になってしまうので、もち米の食感ではなくなってしまうこともわかった(評価×:不良)。
(実施例1−3:小豆エキス粉末の添加効果に関する試験)
【0046】
次に、アルファ化もち米粉に小豆エキス粉末を混合して赤飯(小豆なし)の食品を製造する試験を行った。ここでは、アルファ化もち米粉2gと小豆エキスパウダー1gとを混合したもの(サンプルA)を用意するとともに、小豆エキスパウダーを混合していないアルファ化もち米粉2g(サンプルB)を用意した。そして、うるち米の炊飯米160gを2つ用意し、それぞれにサンプルA及びBを混合して2種類の試食品を製造し、それらを4人の主婦(甲、乙、丙、丁)に試食してもらい、比較評価をしてもらった。その結果を表3に示す。
【表3】

【0047】
表3の結果から明らかなように、サンプルAの方が混ぜやすく、また、もち米の食感も均一であると評価する傾向にあった。以上のことから、小豆エキスパウダーを併用した方がアルファ化もち米粉の均一化がしやすいことがわかった。
(実施例2)
【0048】
アルファ化もち米粉2g、小豆エキスパウダー1g、乾燥小豆0.5gをボールに入れ均一に混合した。
【0049】
うるち米の炊飯米に、前記混合物を均一に混合し、おむすびを30個製造した。
30人の主婦に試食してもたったところ、食感、見た目、味の全てにおいて、古来から伝わる伝統的な製法で製造した赤飯おむすびと遜色がないとの評価を得た。
(他の技術的思想)
【0050】
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施の形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
【0051】
・アルファ化もち米粉と、味、色及び香りを付与するための粉末原料とを含有した炊飯米混合用粉末食品。
【0052】
・アルファ化もち米粉を主成分として含有し、味、色及び香りのうちの少なくともいずれかを付与するための粉末原料を、前記アルファ化もち米粉よりも量的に少ない副成分として含有した炊飯米混合用粉末食品。
【0053】
・アルファ化もち米粉と穀類粉末とを含有し、うるち米の炊飯米に混合して米飯食品を製造する際に用いられる炊飯米混合用粉末食品。
【0054】
・アルファ化もち米粉と豆粉末とを含有し、うるち米の炊飯米に混合して米飯食品を製造する際に用いられる炊飯米混合用粉末食品。
【0055】
・アルファ化もち米粉を含有するとともに、うるち米の炊飯米に対し、炊飯米当り0.6質量%以上1.3質量%以下の割合で混合される炊飯米混合用粉末食品。
【0056】
・2mmメッシュパスの大きさのアルファ化もち米粉と、2mmメッシュパスの大きさであり、かつ、味、色及び香りのうちの少なくともいずれかを付与するための粉末原料とを含有した炊飯米混合用粉末食品。
【0057】
・1mmメッシュパスの大きさのアルファ化もち米粉と、1mmメッシュパスの大きさであり、かつ、味、色及び香りのうちの少なくともいずれかを付与するための粉末原料とを含有した炊飯米混合用粉末食品。
【0058】
・2mmメッシュパスの大きさであってフレーク状または棒状のアルファ化もち米粉を含有した炊飯米混合用粉末食品。
【0059】
・1mmメッシュパスの大きさであってフレーク状または棒状のアルファ化もち米粉を含有した炊飯米混合用粉末食品。
【0060】
・0.5mmメッシュパスの大きさであってフレーク状または棒状のアルファ化もち米粉を含有した炊飯米混合用粉末食品。
【0061】
アルファ化もち米粉と、小豆エキス粉末及び/又はささげエキス粉末とを含有した炊飯米混合用粉末食品。
【0062】
90質量%以上が粒最小径0.8mm以下であるアルファ化もち米粉を含有した炊飯米混合用粉末食品。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
うるち米の食感をもち米様の食感とするためにうるち米の炊飯米に混合することを用途とする粉末食品であって、アルファ化もち米粉を含有した炊飯米混合用粉末食品。
【請求項2】
うるち米の食感をもち米様の食感とするためにうるち米の炊飯米に混合することを用途とする粉末食品であって、アルファ化もち米粉と、味、色及び香りのうちの少なくともいずれかを付与するための粉末原料とを含有した炊飯米混合用粉末食品。
【請求項3】
うるち米の食感をもち米様の食感とするためにうるち米の炊飯米に混合することを用途とする粉末食品であって、アルファ化もち米粉と小豆エキス粉末及び/又はささげエキス粉末とを含有し、うるち米の炊飯米に混合して赤飯を製造する際に用いられる炊飯米混合用粉末食品。
【請求項4】
うるち米の炊飯米に対し、炊飯米当り0.3質量%以上1.6質量%以下の割合で混合される請求項1乃至3のいずれか1項に記載の炊飯米混合用粉末食品。
【請求項5】
アルファ化もち米粉が、2mmメッシュパスの大きさである請求項1乃至4のいずれか1項に記載の炊飯米混合用粉末食品。
【請求項6】
アルファ化もち米粉が、90質量%以上が2mmメッシュパスであり、かつ60質量%以上が1mmメッシュパスの大きさである請求項1乃至4のいずれか1項に記載の炊飯米混合用粉末食品。
【請求項7】
アルファ化もち米粉と小豆エキス粉末及び/又はささげエキス粉末とを混合して流動層造粒することにより得られた請求項3乃至6のいずれか1項に記載の炊飯米混合用粉末食品。

【公開番号】特開2010−17172(P2010−17172A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−270279(P2008−270279)
【出願日】平成20年10月20日(2008.10.20)
【分割の表示】特願2008−178402(P2008−178402)の分割
【原出願日】平成20年7月8日(2008.7.8)
【出願人】(301058355)株式会社ミツカン (32)
【出願人】(398065531)株式会社ミツカングループ本社 (157)
【Fターム(参考)】