説明

炎症反応の抑制システム及び方法

患者の内部組織部位における炎症反応を抑制する方法とシステムであって、減圧治療デバイスを利用している。炎症反応の抑制は、炎症環境の治療を含めて様々な方法で行うことができる。炎症環境の治療は、例えば、流体、内部組織部位におけるあるいは近傍での組織のかん流の強化、あるいは減圧治療を提供するといった、炎症を促進する刺激を取り除くあるいは緩和することを含む。減圧治療デバイスは、内部組織部位にあるいはその近傍に配置され、外部減圧源に流体連結される。減圧治療デバイスは、組織部位近傍に減圧を提供し、炎症環境を治療する。炎症反応抑制用の減圧治療デバイスは、最小侵襲性治療デバイスであってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本発明は、2008年9月18日に出願された米国暫定特許出願第61/098,030号「流体除去システム及び方法」の、35USC§119(e)に規定の利益を請求する。この出願は、すべての目的で、ここに引用されている。
【背景技術】
【0002】
本発明は、一般的に、医療システムに関し、特に、患者の炎症反応の抑制システム及び方法に関する。
【0003】
炎症反応の一つのタイプは、全身性炎症反応症候群(SIRS)である。SIRSは、疾病(外傷、感染症、火傷など)に対する深刻な全身性反応として定義されており、異常に上下する体温、分当たり90拍より多い心拍数、分当たり20呼吸より多い呼吸数または動脈血中の二酸化炭素濃度の低減、及び大きく上下する、又は10%を超える未発達好中球を含む白血球数、といった2またはそれ以上の症状群の存在によって示される急性炎症反応を引き起こす。Merriam−Webster’s Medical Dictionary(Springfield,Mo.:Merriam−Webster,Inc.,2006),q.v.,“Systemic inflammatory response syndrome.”SIRSは特別なものではなく、虚血、炎症、外傷、感染、あるいはいくつかの傷害の組み合わせによって生じることがある。敗血症は、SIRSの下位範疇であり、実証あるいは推定される感染症に加えた、SIRSの存在として規定することができる。
【0004】
病因に関係なく、SIRSは通常同じ病態生理学的特性を有しており、これは、炎症あるいは炎症カスケードを誘発するときに若干異なっている。炎症カスケードは、体液性及び細胞性反応、相補体、及びサイトカインカスケードを含む複雑なプロセスである。炎症誘発性刺激は、組織と直接的に作用して、SIRSを助長すると考えられている。検査を受けていないSIRSは、腹部筋区画症候群(ACS)、臓器機能不全、多臓器機能不全(MODS)、多臓器不全症(MOF)、及び死を引き起こすことがある。
【0005】
多くの場合、SIRSが深刻であれば、治療介入が必要になる。例えば、SIRSがACSを引き起こす、あるいは引き起こし始めると、外科的減圧術を用いることがある。外科的減圧術は、開腹術を伴い、外科医は患者の胸骨から恥骨近傍へ胸側に正中切開を行う。その時、腹腔内容物が開放されて、腹腔を超えて広がる。このタイプの治療介入は、このような手術に関連して、費用のかかる長期の病院生活が必要であり、罹患率と死亡率が高く、その結果、介入が厳しいため、開腹を伴う介入の決定をできるだけ長く遅らせることがしばしばである。
【0006】
SIRSおよびその他の炎症反応を抑制することが望まれている。更に、一般的には、できる限り早く、できる限り費用対効果が良くなるように炎症反応を抑制することが望まれている。
【発明の概要】
【0007】
ここに述べた実施例のシステムと方法によって医学的治療システム及び方法に関する問題に取り組んでいる。一の実施例によれば、患者の腹腔内における全身性炎症反応を抑制する方法は、患者の腹腔内へ治療デバイスを展開させるステップと;外部減圧源を治療デバイスに流体連結させて、腹腔内に減圧を提供するステップと;外部減圧源からの減圧を治療デバイスに提供するステップと;炎症反応を促進する刺激を腹腔内から取り除いて全身性炎症反応を抑制するステップと;を具える。
【0008】
別の実施例によれば、患者の腹腔内において全身性炎症反応を抑制するシステムが、患者の腹腔内に展開させる治療デバイスを具える。この治療デバイスは、最小限の侵襲性治療デバイスであっても良い。患者の腹腔内において全身性炎症反応を抑制するシステムは、更に、患者の上皮の一部に配置して、腹腔の上に空気式シールを形成するように作動するシーリング部材と;減圧を供給する外部減圧源と;減圧源と連結インターフェースを流体連結する減圧送達管と;を具える。減圧源、減圧送達管、及び治療デバイスは、外部減圧源から治療デバイスへ減圧を提供して、炎症反応を促進する刺激流体を腹腔から取り除くよう作動する。
【0009】
別の実施例によれば、患者の腹腔内において全身性炎症反応を抑制する方法が:患者の腹腔内に減圧治療デバイスを展開させ、外部減圧源を減圧治療デバイスに流体連結して、腹腔内に減圧を提供するステップを具える。全身性炎症反応を抑制する方法は更に、外減圧源からの減圧を減圧治療デバイスに提供するステップと;炎症を促進する刺激流体を腹腔から除去し、腹腔に減圧治療を提供して全身性炎症反応を抑制するステップと;を具える。
【0010】
この実施例のその他の目的、特徴、及び利点は、図面と詳細な説明を参照して明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1Aは、患者の腹腔内において全身性炎症反応を抑制するシステムの実施例を、一部ブロック図で示す断面図である。図1Bは、図1Aの患者の腹腔内の全身性炎症反応を抑制するシステムのカプセル化脚部材の詳細を示す図である。図1Cは、図1Aにおける1C−1C線に沿ったカプセル化脚部材の横方向断面図である。図1Dは、図1Aの患者の腹腔内における全身性炎症反応を抑制するシステムの一部を示す断面図である。
【図2】図2は、図1Aの患者の腹腔内において全身性炎症反応を抑制するシステムの一部を示す斜視図である。
【図3】図3Aは、全身性炎症反応を抑制するシステムで使用する減圧治療デバイスの実施例を示す平面図である。図3Bは、図3Aに示す減圧治療デバイスの実施例の3B−3B線に沿った断面図である。
【図4】図4は、減圧治療デバイスの実施例を示す平面図である。
【図5】図5Aは、減圧治療デバイスの実施例を示す斜視図である。図5Bは、図5Aに示す減圧治療デバイスの実施例の5B−5B線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の実施例の詳細な説明においては、その一部を成す添付図面を参照している。これらの実施例は、当業者が本発明を実施できるように十分に詳細に記載されており、その他の実施例を用いることができ、本発明の精神または範囲から外れることなく、論理構成、機械的、電気的、及び化学的変更を行い得ると理解される。ここに述べた実施例を当業者が実施するのに必要でない詳細を省くために、この記載は、当業者に公知の所定の情報は削除することができる。以下の詳細な説明は、従って、限定を意味するものでなく、実施例の範囲は特許請求の範囲によってのみ規定される。
【0013】
ここに記載したシステム及び装置によれば、全身性炎症反応及び内部組織部位における局所炎症反応を含む炎症反応の抑制を行うことができる。ここで用いられている「炎症反応の抑制」とは、炎症反応を防ぐまたは和らげることを含む。炎症反応の抑制は、炎症環境の治療を含めて様々な方法で行うことができる。炎症環境の治療は、例えば、流体、内部組織部位あるいはその近傍における組織のかん流の強化、あるいは減圧治療の提供、といった炎症を促進する刺激を除去するあるいは和らげることを含む。特に記載していない限り、ここで使用するとおり、「又は」は、相互に排他的である必要はない。より特定の実施例として、炎症反応の抑制は、サイトカイン、ケモカイン、及びその他の刺激物の内部組織部位近傍からの除去によって行うことができる。このアプローチは、除去速度を上げることを含む。より特定した例としては、炎症反応の抑制は、かん流の強化などの局部組織の健康状態を改善して、炎症を促進するシグナリングを減らし、これによってカスケード源を切断し、物理的反応を防止することによって行われる。このアプローチは、出現速度の低減を含む。より特定した例としては、炎症反応の抑制は、抗炎症シグナルと、作用薬あるいは拮抗薬として作用する、あるいは一般的に炎症を促進するサイトカインのレセプタ部位をブロックするサイトカインの生成を増やすことによって行われる。この例は、恒常性を修復し、炎症の生理学的反応を鈍くするのを助け、反応の中和を含む。
【0014】
図に示すシステムと装置を用いて、ヒト、動物、またはその他の生命体の身体組織である内部組織部位を治療することができる。内部組織部位は、例えば、腹腔などの体腔といった、組織空間である。内部組織部位は、患者の腕、脚、頭蓋、またはその他の部位などその他の組織空間に位置していても良い。組織空間に対しては、図に示すシステム及びデバイスを配置して除去する数々のアプローチを用いることができる。例えば、図に示すシステム及びデバイスは、(1)開放創傷を介して配置及び除去する(例えば、図1参照);(2)開放創傷を介して配置し、一又はそれ以上のデバイスによる切開部を介して除去する(例えば、図3A−5B参照);(3)一又はそれ以上のデバイスによる切開部を介して配置及び除去する(例えば、図3A−5B参照);ことができる。
【0015】
図1A−1Dを参照すると、患者の腹腔103内といった内部組織部位104における、例えば全身性炎症反応などの炎症反応を抑制するシステム100の一実施例が示されている。システム100は、治療デバイス102を具える。患者の腹腔103内の炎症反応を抑制するシステム100は、全身性炎症反応症候群を含む炎症反応を抑制する治療を送達し、腹筋区画症候群を回避する助けとなる。腹腔内圧が上昇することなく炎症反応が生じ、ある特別な場合は、非限定的な例で、炎症反応制御の抑制は、腹腔103全体の圧力上昇を抑えること、あるいは少なくとも腹腔内圧力を15mmHgより低く、好ましくは13mmHgより低く、より好ましくは10mmHgより低く抑えることを含む。正常な腹腔内圧力は、約0−5mmHgの範囲であると言われている。腹腔内圧力は、腹部区画にカテーテルを直接挿入することによって、あるいは間接的には、膀胱、胃あるいはその他の体腔内の圧力をモニタリングすることによってモニタすることができる。
【0016】
システム100は、患者の内部組織部位104に関連する炎症環境を治療することによって炎症を制御する。炎症環境の治療には、上述のアプローチが含まれ、これには、炎症を促進する刺激の除去、内部組織部位104におけるあるいはこの近傍での組織のかん流の強化、あるいは、減圧治療の提供が含まれる。一の実施例では、システム100は、ほぼすべての炎症刺激を取り除くように動作し、これには、腹腔103内の大半の流体を除去して、炎症環境を中断するあるいは局所的な組織の健康状態を改善することを含む。別の実施例では、システム100は、炎症刺激を和らげるように動作して、炎症環境を中断するあるいは局所的な組織の健康状態を改善することができる。腹腔103に展開させた治療デバイス102を用いて治療を提供することで、腹膜カテーテル流体中で測定した、炎症刺激のレベルまたはインターロイキン−6(IL−6)やTNF−αなどの媒介物のレベルを低減することができる。治療デバイス102は、時間分(T)を通して炎症を促進する刺激である流体を内部組織部位104近傍から除去するシステム及び方法と共に使用することができる。この治療を行う時間は、30分乃至50時間またはそれ以上の範囲であっても良い。例えば炎症を促進する刺激を和らげるといった炎症環境を治療することによって、炎症反応の開始を、例えば防止するまたは遅らせるなど、抑制し、重症度を低減することができる。
【0017】
治療デバイス102は、高い信頼性を持って、腹部流体または炎症を促進する刺激を除去する。システム100は、通常はクロッグが生じず、さもなければ使用と共に効果が減少する。治療デバイス102によって提供される減圧治療は、腹腔103内により良好な組織かん流を提供し、これは炎症反応を抑制する追加手段として考えることができる。治療デバイス102は、とりわけ、流体を管理し、浮腫を減らし、炎症反応に続いて生じる多臓器不全(MODS)が進むリスクを低減する助けとなる。治療デバイス102は、腹腔103内でのアプリケーションに使用して、腸浮腫を治療することができる。治療デバイス102はまた、部分的開腹を行う場合にも使用することができる。
【0018】
治療を受ける内部組織部位104は、人、動物あるいはその他の有機体の身体組織である。本実施例では、内部組織部位104が、体腔、特に腹腔103内の組織を含み、腹腔内容物または腹腔近傍にある組織を含む。別のアプリケーションでは、内部組織部位は患者の腕、脚、頭蓋またはその他の部位の組織空間又は区画に位置している。
【0019】
図に示すように、治療装置102は患者の腹腔103内に配置されて、局部的あるいは全身性の炎症反応の抑制を助けている。この実施例では、治療装置102は開腹部を介して展開させるあるいは除去するためのものである。治療装置102は、複数のカプセル化した脚部材106を具え、この部材は複数のカプセル化した脚部材106が配置される表面を形成している腹腔内容物に支持されている。一又はそれ以上の複数のカプセル化した脚部材106は、第1の結腸傍溝108内あるいはその近傍に配置されており、複数のカプセル化した脚部材106のうちの一またはそれ以上が、第2の結腸傍溝110内またはその近傍に配置されている。複数のカプセル化した脚部材106は、中央連結部材112に連結されており、複数のカプセル化した脚部材106と中央連結部材112との間は流体連通している。複数のカプセル化した脚部材106と中央連結部材112は双方共に、穿孔114、116、118、120が形成されており、腹腔103に流体を通過させる。穿孔114、116、118、120は、例えば、円形開口、矩形開口、多角形、その他など、どのような形状でも良いが、この実施例では、スリットあるいは直線状カット部分として表わされている。一又はそれ以上の穿孔114、116、118、120は、代替の実施例では除いても良い。
【0020】
マニフォールド122またはマニフォールドパッドは、治療装置102に減圧を送達する。代替的に、連結インターフェース(例えば、図3Aの連結インターフェース220)を、治療装置102に連結して、減圧を供給する(及び流体を除去する)こともできる。シーリング部材124は、腹腔103又は体腔開口126の上に空気式シールを提供する。一又はそれ以上の皮膚閉合デバイスを患者の上皮134又は腹腔壁(図示せず)の上においても良い。減圧送達管130に連結された減圧インターフェース128を介して、減圧がマニフォールド122へ送達される。外部減圧源132は、減圧送達管130へ減圧を送達する。ここで用いられているように、「連結された」の用語は、別のものを介して連結することと、直接連結することを含む。また、「連結された」の用語は、同じ素材でできている部品の各々によって、別の部品と連続している二またはそれ以上の部品に及ぶ。また、「連結された」の用語は、化学接着剤を介するといった化学的連結、機械的連結、熱的連結、あるいは電気的連結を含む。流体連結とは、流体が指定された部分あるいは位置間で連通することを意味する。
【0021】
減圧を内部組織部位104に適用して、腹水、サイトカイン、滲出液、血液(外傷の場合)、あるいは内部組織部位104からのその他の流体を含む、炎症を促進する刺激を除去することができる。ここで用いているように、「減圧」は、一般的に、治療を施している組織部位における周囲圧力より低い圧力を意味する。ほとんどの場合、この減圧は、患者が位置しているところの大気圧より低くなるであろう。代替的に、減圧は組織部位における静水圧より低くても良い。特に表示がない限り、ここに述べた圧力の値はゲージ圧である。
【0022】
マニフォールド122は、中央連結部材112の近傍に位置している。マニフォールド122は、様々な形をとることができる。ここで用いている「マニフォールド」の用語は、内部組織部位へ減圧を適用する、流体を送達する、あるいは内部組織部位104から流体を除去することを補助するために設けた物質または構造を意味する。マニフォールド122は、通常、マニフォールド122の周囲の内部組織部位104から及び中央連結部材112を通って提供したあるいは除去した流体の分布を改善するべく内部接続された複数のフローチャネルまたは通路を具える。マニフォールド122は、内部組織部位104と接触させて配置することができ、内部組織部位104へ減圧を送達できる生体適合性材料であっても良い。マニフォールド122の例には、限定することなく、フローチャネルを形成するように構成した構造要素、開放気泡フォームなどの気泡フォーム、多孔性組織の集合、液体、ゲル、及びフローチャネルを含むまたはフローチャネルを含むように硬化させたフォームを有する装置が含まれる。マニフォールド122は多孔性でも良く、フォーム、ガーゼ、フェルトマット、または特定の生物学的アプリケーションに適したその他の材料でできていても良い。一の実施例では、マニフォールド122は多孔性フォームであり、複数の連続気泡またはフローチャネルとして作用するポアを含む。多孔性フォームは、ポリウレタン、開放気泡、テキサス州サンアントニオ所在のKinetic Concepts,Incorporated 社製のGranuFoam(登録商標)などの網状フォームであってもよい。別の実施例では、「独立気泡」を含んでも良い。いくつかの場合、マニフォールド122を用いて、薬剤、抗菌材、成長ファクタ、及び様々な溶液といった流体を内部組織部位104に配分するのに使用することもできる。吸水性材料、ウイッキング材、疎水性材料及び親水性材料など、その他の層をマニフォールド122の中にあるいは上に含めるようにしても良い。
【0023】
シーリング部材124は、例えば腹腔103などの体腔開口126の上に配置されており、開キャビティ減圧システム100に適した空気式シールを提供して、内部組織部位104で減圧を保持する。シーリング部材124は、中央連結部材112上のマニフォールド122を固定するのに用いられるカバーであっても良い。シーリング部材124は、不浸透性又は半浸透性であっても良い。シーリング部材124は、体腔開口126の上にシーリング部材124を装着した後、内部組織部位104で減圧を維持することができる。シーリング部材124はフレキシブルな上掛け、またはシリコーンベースの化合物、アクリル、ヒドロゲルあるいはヒドロゲル形成材、又は、内部組織部位104に減圧を適用するのに望ましい不浸透性又は浸透性特性を具えるその他の生体適合性材料でできたフィルムであっても良い。
【0024】
シーリング部材124はさらに、患者の上皮134にシーリング部材124を固定する取り付け装置131を具えていても良い。取り付け装置131はさまざまな形をとる。例えば、接着剤層136をシーリング部材124の周辺に沿って、あるいはシーリング部材124のいずれかの部分に沿って配置し、直接的あるいは間接的に、患者の上皮134と共に空気式シールを提供することができる。接着剤層136は、シーリング部材124に予め貼っておいて、解放可能な裏打ちで覆っておいても良く、あるいは貼付時に取り外す部材(図示せず)であってもよい。
【0025】
減圧インターフェース128は、一例として、マニフォールド122からの流体を減圧送達管130に通過させ、またその逆を行うポートまたはコネクタ138であっても良い。例えば、マニフォールド122と治療デバイス102を用いて内部組織部位104から回収した流体は、コネクタ138を介して減圧送達管130に入ることができる。別の実施例では、開キャビティ減圧システム100は、コネクタ138を除いて、減圧送達管130がシーリング部材124とマニフォールド122に直接入るようにしても良い。減圧送達管130は、医療用管またはチューブあるいは、減圧および流体を移送するその他の手段であっても良い。減圧送達管130は、減圧の送達と流体の除去を容易にするマルチルーメン部材であってもよい。一の実施例では、減圧送達管130は、二つのルーメン管であり、一のルーメンは減圧と液体を移送するためのものであり、一のルーメンは圧力センサに圧力を連通させるためのものである。
【0026】
減圧は、外部減圧源132によって減圧送達管130に供給される。外部減圧源132によって広範囲の減圧が生成され、供給される。一の実施例では、この範囲は、−50乃至−300mmHgの範囲を含み、別の実施例では、この範囲が−100乃至−200mmHgの範囲を含む。一の実施例では、外部減圧源132は、−100mmHg用、−125mmHg用、及び−150mmHg用のプリセットセレクタを具える。外部減圧源132は、また、閉塞アラーム、リーケージアラーム、あるいは低電池アラームなど、様々なアラームを具えていても良い。外部減圧源132は、持ち運び可能な源、壁源、あるいは腹腔用のその他のユニットであっても良い。外部減圧源132は、一定圧、間欠圧力、あるいは、動的パターンまたは設定したパターンの圧力を選択的に送達することができる。減圧送達管130を介してキャビティから除去した流体は、一日当たり5Lまたはそれ以上となる。
【0027】
例えば代表的装置140など、様々な装置を減圧送達管130の中間部分142に加えることができる。例えば、代表的装置140は、流体リザーバ、あるいはキャニスタ回収部材、圧力フィードバックデバイス、体積検出システム、血液検出システム、感染症検出システム、フィルタ、フィルタ付ポート、流量モニタシステム、温度モニタシステム、等である。多数の代表的装置140を具えていても良い。例えば、流体回収部材などのこれらの装置のいくつかは、外部減圧源132と一体的に形成することができる。例えば、外部減圧源132上の減圧ポート144は、一又はそれ以上のフィルタを具えるフィルタ部材(図示せず)を具えていても良く、外部減圧源132の内部スペースに液体が入らないようにする疎水性フィルタを具えていても良い。
【0028】
ここで図1D及び図2を参照すると、治療装置102は、非粘着性ドレープ148を具えている。非粘着性ドレープ148は、組織が非粘着性ドレープにくっつかないようにする非粘着性フィルム材でできていても良い。一の実施例では、非粘着性ドレープ148は、通気性ポリウレタンフィルムでできている。非粘着性ドレープ148は、複数の穿孔150を伴って形成されている。複数の穿孔150は、円形開口、矩形開口、多角形開口、その他といった、どのような形状であっても良いが、図2にはスリットまたは直線状切断部として示されている。
【0029】
治療装置102は、中央連結部材112を具えており、これに複数のカプセル化した脚部材106が連結されている。中央連結部材112は、第1の連結カプセル化部材186と、第2の連結カプセル化部材192で、脚部連結領域152以外がカプセル化されており、中央連結部材112と複数のカプセル化脚部材106との間を流体連通させている。中央連結部材112は穿孔118を有しており、連結マニフォールド部材154とマニフォールド122との間を流体連通させている。複数のカプセル化した脚部材106は各々、脚モジュール156など、複数の規定された脚モジュールと共に、あるいは脚モジュールなしで形成することができる。隣接する脚モジュール156は、互いに流体連結されており、それらの間にマニピュレーションゾーン158を有する。
【0030】
図1A−1Dを再び参照すると、複数のカプセル化した脚部材106の各々が、脚マニフォールド部材160を具えており、これは、脚モジュール156間を通る単一マニフォールド部材であっても、脚マニフォールド部材160を作るマニフォールド材料でできた個別部品であってもよい。脚マニフォールド部材160は、カプセル化脚部材106の各々の内側部分162内に配置されている。各脚マニフォールド部材160は、第1の側部164と組織に面した第2の側部166を具える。第1の脚カプセル化部材168には、脚マニフォールド部材160の第1の側部164上に位置する穿孔114が形成されている。同様に、第2の脚カプセル化部材170には、脚マニフォールド部材160の組織に面した第2の側部166上に位置する穿孔116が形成されている。第2の脚カプセル化部材170は、非粘着ドレープ148の一部であっても良い。図1Bの縦断面に矢印172で示すように、流体は、隣接する脚モジュール156の間を中央連結部材112に向けて流れる。矢印174で示すように、流体は穿孔114と116に入ることができ、脚マニフォールド部材160に流れて、次いで、矢印172で示すように中央連結部材112に向けて流れる。
【0031】
図1Cを参照すると、カプセル化脚部材106の一部の横断面が示されている。上述した通り、脚マニフォールド部材160の第1の側部164が第1の脚カプセル化部材168で覆われており、脚マニフォールド部材160の組織に面した第2の側部166は、この場合、非粘着ドレープ148の一部である第2の脚カプセル化部材170によって覆われているのを見ることができる。このように、本実施例では、穿孔116が非粘着ドレープ148の複数の穿孔150のいくつかであっても良い。この実施例では、脚マニフォールド部材160の周辺エッジ176も、第1の脚カプセル化部材168の一部で覆われている。周辺エッジ176は、第1の縦エッジ177と第2の縦エッジ179を具える。第1の脚カプセル化部材168は、第1の側部164と、周辺エッジ176を覆っており、非粘着ドレープ148の第1の面178の上に延在して、エクステンション180を形成している。エクステンション180は、溶接182によって第2の脚カプセル化部材170に連結されている。しかしながら、第1の脚カプセル化部材168は、溶接(例えば、超音波溶接又はRF溶接)、ボンディング、接着剤、セメント、その他の公知の技術を用いて第2の脚カプセル化部材170に連結できる。
【0032】
図1Dと図2を再度参照すると、中央連結部材112は、穿孔118を有する第1の連結カプセル化部材186内にカプセル化された連結マニフォールド部材154を具える。第1の連結カプセル化部材186は、連結マニフォールド部材154の第1の側部188上に配置されている。第2の連結カプセル化部材192は、連結マニフォールド部材154の組織に面した第2の側部190上に配置されている。第2の連結カプセル化部材192には、穿孔120が形成されている。第1の連結カプセル化部材186は、図2に示すように、周辺ゾーン又はエッジ194を有する。同様に、第2の連結カプセル化部材192は、周辺エッジ194に並んだ周辺ゾーン又はエッジ(明確には示されていない)を有する。第1の連結カプセル化部材186の周辺エッジ194は、複数のカプセル化脚部材106内の流体を図1Dに矢印196で示すように、連結マニフォールド部材154に流すために、脚連結領域152を除いて、第2の連結カプセル化部材192の周辺エッジに連結されている。流体は、また、矢印198で示すように、穿孔120を通って流れることによって連結マニフォールド部材154内に直接入る。マニフォールド122は、第1の連結カプセル化部材186の近傍に配置されており、減圧がマニフォールド122に適用されると、矢印199で示すように、減圧が流体を連結マニフォールド部材154から穿孔118を通ってマニフォールド122へ流れる。流体は、減圧インターフェース128の方向へ流れ続け、このインターフェースを通って、減圧送達管130へと除去される。
【0033】
図1A−1D、及び図2を参照すると、動作中は、図に示すシステム100は、定寸に切ることによって、治療デバイス102の第1のサイジングによって使用することができる。複数のカプセル化脚部材106を有する非粘着ドレープ148は、体腔開口126を通って腹腔内に配置されており、腹部内容物に対して配分されている。これは、第1の結腸傍溝108又は第2の結腸傍溝110内または近傍に少なくとも一のカプセル化脚部材106を配置することを含む。治療デバイス102が一旦配置されると、マニフォールド122が第1の連結カプセル化部材186の第1の側部184に隣接して配置される。シーリング部材124は、体腔開口126の上に当てられて、例えば、腹腔103など、体腔開口126の上に空気式シールを提供する。
【0034】
シーリング部材124に加えて、体腔開口126を例えばステープルなどの機械的閉合手段によって、あるいは、減圧閉合システムを用いて、閉合または強化しても良い。シーリング部材124は、様々な方法で適用することができるが、一実施例によれば、シーリング部材124の接着層136上にある取り外し可能な裏打ち部材を取り外して、シーリング部材124を体腔開口126の周囲の患者の上皮134に配置する。次いで、コネクタ138などの減圧インターフェース128をシーリング部材124に取り付けて、減圧インターフェース128によって、シーリング部材124を介してマニフォールド122へ減圧が送達されるようにする。減圧送達管130は、減圧インターフェース128と外部減圧源132上の減圧ポート144に流体連結されている。
【0035】
外部減圧源132が始動して、これによって減圧送達管130へ減圧が提供され、減圧インターフェース128へ、また、マニフォールド122内へ減圧を送達する。マニフォールド122は、減圧を分配して連結マニフォールド部材154から穿孔118を介して流体を引き込む。連結マニフォールド部材154は、炎症を促進する刺激を含めて、穿孔120を介して腹腔103から流体を引き込んで、矢印196で示すように、複数のカプセル化した脚部材106から流体を引き込む。腹腔103からの流体は、第1の脚カプセル化部材168上の穿孔114と第2の脚カプセル化部材170上の穿孔116を介して複数のカプセル化脚部材106へ流れ、次いで、矢印172に示すように、複数のカプセル化部材106を介して連結マニフォールド部材154へ流れる。この流体は、次いで、マニフォールド122、減圧インターフェース128を通って、減圧送達管130へと流れる。
【0036】
図3A及び3Bを参照すると、治療デバイス200の別の実施例が示されている。治療デバイス200は、最小侵襲性治療デバイスであり、ここでは、治療デバイス200が定寸に切られて、例えば、0.3cm乃至4.0cmの長さ範囲で、デバイス切開部を通って導入されるように構成されている。いくつかの場合、デバイス切開部は、4.0cm乃至8.0cmの長さあるいはそれ以上であっても良い。治療デバイス200は、ワンピース設計で形成して、治療デバイス200の配置と腹腔からの取り外しを容易にするようにしても良い。
【0037】
治療デバイス200は、カプセル化脚部材205として形成されており、第1の端部202と第2の端部204とを有する。カプセル化脚部材205の第1の端部202と第2の端部204とは、例えば結腸傍溝などの腹腔の引き締まった部分に配置するのに特に適している。治療デバイス200は、カプセル化エンベロープ208に封入されている脚マニフォールド部材206と共に形成されている。脚マニフォールド部材206は、マニフォールド122や脚マニフォールド160用のものなど、どのようなマニフォールド材であっても良い。脚マニフォールド部材206は適当な硬さがあり、カプセル化脚部材205の配置を容易にしている。
【0038】
カプセル化エンベロープ208は、第1の脚カプセル化部材210と第2の脚カプセル化部材212で形成されている。各脚カプセル化部材210、212は周辺エッジ214を有している。第1の脚カプセル化210と第2の脚カプセル化部材212の周辺エッジ214は、限定することなく、溶接(例えば超音波溶接又はRF溶接)、ボンディング、接着剤、セメント、その他を含む何らかの技術を用いて連結される。本実施例の周辺エッジ214は、溶接216によって連結されている。脚カプセル化部材210及び212は、穿孔したフィルムあるいはカバー、または上記のシーリング部材124用の材料で形成することができる。
【0039】
第1の脚カプセル化部材210と第2の脚カプセル化部材212の上に複数の穿孔218が形成されており、従って、カプセル化エンベロープ208の上に穿孔218が形成されている。連結インターフェース220又は減圧インターフェースは、カプセル化エンベロープ208に連結されており、脚マニフォールド部材206と流体連通されている。減圧送達管222は、連結インターフェース220に連結しても良い。減圧送達管222は、第1の端部224と第2の端部226を有する。第2の端部226にフィッティング228を配置して、外部減圧源(例えば、図1Aに示す外部減圧源132)に迅速に接続できるようにしても良い。減圧送達管222の第1の端部224は、連結インターフェース220に流体連結されている。管クランプ230を減圧送達管222に配置しても良い。
【0040】
カプセル化脚部材205は、長さ(L)232と幅(W)234を有する。図3Aに示す治療デバイス200用には、アスペクト比(L/W)は、一実施例において、1.5乃至6.0の範囲である。一形状のアスペクト比は、その形状のより長い寸法に対するより短い寸法の比である。このことは、最も長い軸対最も短い軸、あるいは、二つの測定値によって特定される対称物体については、ロッドの長さと径といった、三次元形状の二つの特徴的な寸法に適用することができる。円環面のアスペクト比は、長軸R対短軸rの比である。図3Aに示す治療デバイス200などのほぼ平坦な脚部材については、アスペクト比が、L/W比である。
【0041】
圧力トランスデューサ238を、治療デバイス200内に設ける、あるいは代替的にデバイスに取り付けるようにしても良い。トランスデューサのリード240は、圧力トランスデューサ238に接続されており、脚マニフォールド部材206に沿って連結インターフェース220へ伸びていても良く、また、減圧送達管222内をまたはこれに沿って、トランスデューサのリード240が装置に接続されて圧力トランスデューサ238によって得た腹腔内の圧力表示を提供する、患者の外部ポイントへ伸びていても良い。
【0042】
治療デバイス200の使用について述べる。治療デバイス200は、開腹した腹部を通って(図1A参照)または、患者の上皮を通って経皮的に(図1Aの上皮134参照)、展開させることができる。治療デバイス200の使用は、ここに述べるその他のデバイスと同様である。トロカールを用いたデバイス切開部を介するにしても、あるいは開腹した腹部アプリケーションを介するにしても、ヘルスケア提供者は、腹腔内に治療デバイス200を配置して、好ましくは、第1の端部202を腹腔内容物上に配置し、結腸傍溝近傍に配置し、同様に第2の端部204を腹腔内容物、好ましくは結腸傍溝上の位置に置く。減圧送達管222は、腹腔内から腹腔外のポイントへ伸びており、例えば、図1Aの外部減圧源132などの外部減圧源に連結されている。デバイス切開部は、(図1Aのシーリング部材124などの、シーリング部材によって)シールすることができる。減圧は、減圧送達管222を介して連結インターフェース220へ送達される。
【0043】
連結インターフェース220は、脚マニフォールド部材206に流体連結されており、そこへ減圧を送達する。しかして、流体が脚マニフォールド部材206へ引き込まれ、連結インターフェース220へ送達され、減圧送達管222へ送達される。減圧送達管222は、保存、廃棄、あるいは治療用に腹腔外の位置に流体を送達する。除去した流体は、腹水、サイトカイン、及び炎症を促進する刺激を含む腹腔からのその他の流体を含んでいる。この流体が腹腔から移動するので、炎症反応が抑制される。
【0044】
治療デバイス200に接続されている圧力トランスデューサ238は、トランスデューサリード240を用いて、腹腔内の圧力を測定するデバイスに接続されている。腹腔内の圧力をモニタして、追加の治療デバイス200を展開させるべきか否か、あるいはその他の介入が必要か否かを決定する。治療デバイス200を用いた炎症を促進する刺激の除去と腹腔内の減圧治療は、0.5時間乃至40時間以上にわたる間(T)続けても良い。
【0045】
ヘルスケア提供者が、治療デバイス200を用いた治療の必要がなくなったと決定すると、最小侵襲製治療デバイスである治療デバイス200は、デバイス切開部を通って取り除かれる。治療デバイス200は、減圧送達管222の上に力を加えることによって取り除かれる。治療デバイス200がデバイス切開部から取り除かれると、縫合、ボンディング、バンデージ、ステープルなどの公知の技術でデバイス切開部を閉合するか、あるいは自然治癒させる。図4に示す治療デバイス300の使用は、治療デバイス200の使用に類似しているが、単一デバイスでより大きな治療領域を提供している。
【0046】
ここで図4を参照すると、治療デバイス300の別の実施例が示されている。治療デバイス300もまた、最小侵襲性治療デバイスであり、治療デバイス300を展開させて、例えば0.3cm乃至4.0cmの範囲の長さの、デバイス切開部を介して取り除かれる。治療デバイス300には、第1の脚マニフォールド部材302と第2の脚マニフォールド部材304が形成されている。第1の脚マニフォールド部材302と第2の脚マニフォールド部材304が交差して、中央連結部位305を形成している。第1の脚マニフォールド部材302と第2の脚マニフォールド部材304は、一体的なマニフォールド部材材料で(例えば、上述したマニフォールド122と連結して記載されているマニフォールド材料)形成しても良く、あるいは二つのマニフォールド材料をのり付などの技術によって、連結するようにしても良い。また、治療デバイス300は、ワンピース設計として、展開と取り外しを容易にしても良い。
【0047】
第1及び第2の脚マニフォールド部材302と304は、カプセル化エンベロープ306の中にカプセル化されており、穿孔308が設けられている。カプセル化エンベロープ306は、図1Aにおけるシーリング部材124に関連して述べた材料などの、フィルム又はカバーでできている。第1の脚マニフォールド部材302と第2の脚マニフォールド部材304は交差して、様々なサイズの角度を形成している。治療デバイス300は、換言すれば、「X」形状をしている。図に示す実施例では、この角度は二つの鈍角310と二つの鋭角312を含む。カプセル化エンベロープ306内の第1の脚マニフォールド部材302と第2の脚マニフォールド部材304の端部は、腹腔内の複数の位置における流体の回収を容易にしている。
【0048】
連結インターフェース314が、中央連結部位305に連結しており、第1の脚マニフォールド部材302及び第2の脚マニフォールド部材304に流体連結している。連結インターフェース314が中央連結部位305へ連結しており、減圧送達管320が連結インターフェース314へ連結しているため、初期に減圧送達管320に力を加えることによって、例えば、長さ0.3cm乃至4.0cmの範囲のデバイス切開部を介して治療デバイス300を取り除くことができる。
【0049】
カプセル化エンベロープ306は、第1のカプセル化部材316と第2の脚カプセル化部材(第1及び第2の脚マニフォールド部材302、304の反対側の)で形成することができる。第1のカプセル化部材316と第2の脚カプセル化部材は、第1の脚マニフォールド部材302と第2の脚マニフォールド部材304を取り囲んで覆っている外側層を形成している。第1のカプセル化部材316と第2の脚カプセル化部材は、上述したような公知の技術を用いて、周辺部分318、または周辺エッジにおいて連結されている。図に示す実施例では、RF溶接322を用いて、第1のカプセル化部材316の周辺部分318と第2のカプセル化部材とを連結している。減圧送達管320は、連結インターフェース314及び外部減圧源(例えば、図1Aに示す外部減圧源132)に流体連結されている。
【0050】
図5A及び5Bを参照すると、治療デバイス400の別の実施例が示されている。治療デバイス400は、複数のカプセル化脚部材402を具える。各カプセル化脚部材402は、第1の端部404と第2の端部406を具える。各カプセル化脚部材402は、結腸傍溝内あるいは近傍、肝臓の後ろなど、腹腔内の異なる位置に配置することができる。各カプセル化脚部材402は、穿孔410が形成された外部層408を有する。この外側層408は、脚マニフォールド部材416を具える内部スペース414を規定するカプセル化エンベロープ412を形成している。この外側層408は、シーリング部材124に関連して述べられたような、フィルム又はカバーで形成されても良い。
【0051】
各カプセル化脚部材402の第1の端部404は、連結インターフェース418である。複数の連結管420は、連結インターフェース418に並んで連結されている。各連結管420は、第1の端部422と第2の端部424を有する。連結管420の第2の端部424は、関連するカプセル402の連結インターフェース418に連結されている。第1の連結管420の第1の端部422はインターフェース管426に連結されている。インターフェース管426は、第1の端部428と第2の端部430を有する。各インターフェース管426の第2の端部430は、連結管420の一方の第1の端部422に連結している。コネクタ438を用いて、各連結管420の第1の端部422をインターフェース管426の第2の端部430に連結している。インターフェース管426の第1の端部428は、減圧送達管(図示せず)に、又は、外部減圧源に直接連結されていても良い。図5Aに示す実施例では、複数のカプセル化脚部材402が、第1のカプセル化脚部材432と第2のカプセル化脚部材434を具える。任意の数の追加のカプセル化脚部材を特定の必要に応じて加えることは自明である。
【0052】
治療デバイス400の使用について述べる。治療デバイス400は、開腹部を介してあるいはトロカールを用いて経皮的に導入することができる。外科医は、デバイス切開部を作り、連結管420に沿った第1のカプセル化脚部材432などの単一のカプセル化脚部材402を患者の腹腔内に挿入する。外科医は、その他のデバイス切開部を作って、適当と考えられる関連する連結管420と共にその他のカプセル化脚部材402を挿入することができる。
【0053】
所望の数のカプセル化脚部材402をデバイス切開部を介して延在している連結管420と共に腹腔内に配置したら、連結部材420の第1の端部422をコネクタ438に連結することができる。コネクタ438は、インターフェース管426に連結されている。インターフェース管426は、図1Aに示す外部減圧源132などの外部減圧源に連結することができる。次いで、一またはそれ以上の治療デバイス400を用いた治療を開始する。
【0054】
治療デバイス400を用いた治療は、所望の期間(T)の間行われる。治療が終了して治療デバイス400の取り外しを行う際に、コネクタ438を取り外して、複数の連結管420は患者から初期に伸びているままにしておく。次いで各連結管420を引っ張って、関連するカプセル化脚部材402を対応するデバイス切開部から取り外す。治療デバイス400では、装着又は取り外し用の開腹部を必要とすることなく、任意の数のカプセル化脚部材402を使用することができることを認識すべきである。
【0055】
腹腔のコンテキストにおいて最小侵襲技術を用いて展開できる図に示すシステム及びデバイスに関しては、回復術に比較してより早く介入が生じる。このことは、最小侵襲治療デバイスが開腹の場合のような30cmあるいはこれより長い切開を行わないので、外科医が開腹するよりも非常に早い段階でのマネージメントにおいて最小侵襲治療デバイスの使用を行うことができるため、現実に起こりうる。外科医に受傷後早期の段階で、一又それ以上の最小侵襲治療デバイスでの介入の機会を提供することによって、炎症性刺激を除圧まで持続させる徐々に有害な効果に腹部内臓を露出させる時間を実質的に低減させ、従って、実際に、重症度と疾病の程度を低減する。
【0056】
図に示す実施例と方法の利点は、非限定的な実施例のコンテキストにおいて開示されているが、様々な変更、交換、置換、及び変形を、特許請求の範囲によって規定された発明の範囲から外れることなく行うことができると解すべきである。いずれかの実施例に関連して述べた特徴は、その他の実施例にも適用することができる。

【図1A】

【図1B】

【図1C】

【図1D】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の内部組織部位における炎症反応を抑制する方法において:
前記組織部位近傍に減圧治療デバイスを展開するステップと;
外部減圧源を前記減圧治療デバイスに流体連結して、前記内部組織部位近傍に減圧を提供するステップと;
前記外部減圧源から前記減圧治療デバイスに減圧を提供するステップと;
前記内部組織部位における炎症を促進する環境を治療して、炎症反応を抑制するステップと;
を具えることを特徴とする炎症反応を抑制する方法。
【請求項2】
請求項1に記載の炎症反応を抑制する方法において、前記炎症を促進する環境を治療するステップが、前記内部組織部位近傍の炎症を促進する刺激を取り除くステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1に記載の炎症反応を抑制する方法において、
前記減圧治療デバイスが、最小侵襲治療デバイスを具え;
前記外部減圧源を減圧治療デバイスに流体連結するステップが、減圧送達管を前記最小侵襲治療デバイスと、前記外部減圧源とに流体連結するステップを具え;
更に、前記最小侵襲治療デバイスを、デバイス切開部を介して前記腹腔から取り除くステップと;
を具えることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1に記載の炎症反応を抑制する方法が更に、前記減圧治療デバイスに関連する圧力トランスデューサを用いて内部腹部圧を測定するステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1に記載の炎症反応を抑制する方法において、前記内部組織部位が腹腔内にあり、減圧治療デバイスを展開させるステップが、患者の結腸傍溝内に少なくとも部分的に前記減圧治療装置を展開させるステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1に記載の炎症反応を抑制する方法において、前記外部減圧源から前記減圧治療デバイスへ減圧を提供するステップが、少なくとも>0.5時間(t)減圧を提供するステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1に記載の炎症反応を抑制する方法において、前記外部減圧源から前記減圧治療デバイスへ減圧を提供するステップが、少なくとも>2.0時間(t)減圧を提供するステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1に記載の炎症反応を抑制する方法において、前記外部減圧源から前記減圧治療デバイスへ減圧を提供するステップが、少なくとも>20.0時間(t)減圧を提供するステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1に記載の炎症反応を抑制する方法において、前記減圧治療デバイスが:
複数のカプセル化脚部材であって、各カプセル化脚部材が脚マニフォールド部材を伴う内側部分を有しており、当該内側部分に流体が流れるように操作可能な穿孔が形成されている複数のカプセル化部材と;
中央連結部材であって、当該中央連結部材が連結マニフォールド部材を有しており、各脚マニフォールド部材が前記連結マニフォールド部材と流体連通しており、前記中央連結部材が第1の側部と組織に面した第2の側部とを具える、中央連結部材と;
を具えることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項9に記載の炎症反応を抑制する方法が更に、前記中央連結部材に連結された連結インターフェースを具えることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項9に記載の炎症反応を抑制する方法において、前記複数のカプセル化脚部材の各カプセル化脚部材が:
第1の脚カプセル化部材と;
穿孔が形成された第2の脚カプセル化部材と;
を具え、
前記脚マニフォールド部材が第1の側部と、組織に面した第2の側部と、第1の横方向エッジと、第2の横方向エッジとを具え;
前記第1の脚カプセル化部材が、前記脚マニフォールド部材の第1の側部近傍に配置されており、前記第2の脚カプセル化部材が、前記脚マニフォールド部材の前記組織に面した第2の側部近傍に配置されており、前記第1の脚カプセル化部材と前記第2の脚カプセル化部材が、前記脚マニフォールド部材の第1の横方向エッジと前記第2の横方向エッジ近傍で連結されている;
ことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1に記載の炎症反応を抑制する方法において、前記減圧治療デバイスが:
カプセル化脚部材であって、当該カプセル化脚部材が脚マニフォールド部材と、穿孔を形成して前記脚マニフォールド部材を封入するカプセル化エンベロープを具え、前記カプセル化脚部材が3.0より大きいアスペクト比を有する、カプセル化脚部材と;
前記カプセル化脚部材に連結され、前記脚マニフォールド部材に流体連結された連結インターフェースと;
を具えることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1に記載の炎症反応を抑制する方法において、前記減圧治療デバイスが:
カプセル化脚部材であって、当該カプセル化脚部材が脚マニフォールド部材と、穿孔を形成して前記脚マニフォールド部材を封入するカプセル化エンベロープを具え、前記カプセル化脚部材が4.0より大きいアスペクト比を有する、カプセル化脚部材と;
前記カプセル化脚部材に連結され、前記脚マニフォールド部材に流体連結された連結インターフェースと;
を具えることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1に記載の炎症反応を抑制する方法において、前記減圧治療デバイスが:
カプセル化脚部材であって、当該カプセル化脚部材が脚マニフォールド部材と、穿孔を形成して前記脚マニフォールド部材を封入するカプセル化エンベロープを具え、前記カプセル化脚部材が5.0より大きいアスペクト比を有する、カプセル化脚部材と;
前記カプセル化脚部材に連結され、前記脚マニフォールド部材に流体連結された連結インターフェースと;
を具えることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項1に記載の炎症反応を抑制する方法において、前記減圧治療デバイスが:
第1の脚マニフォールド部材と第2の脚マニフォールド部材であって、前記第1の脚マニフォールド部材と前記第2の脚マニフォールド部材が交差して中央連結部位を形成している、第1の脚マニフォールド部材と第2の脚マニフォールド部材と;
前記第1の脚マニフォールド部材と、前記第2の脚マニフォールド部材と、前記中央連結部位の上に外部層を形成するカプセル化エンベロープであって、前記カプセル化エンベロープに穿孔が形成されて内側部分に流体が流れるようにしたカプセル化エンベロープと;
を具えることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項15に記載の炎症反応を抑制する方法において、前記第1の脚マニフォールド部材と前記第2の脚マニフォールド部材が二つの鈍角と二つの鋭角を形成していることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項1に記載の炎症反応を抑制する方法において、前記減圧治療デバイスが:
複数のカプセル化脚部材であって、各々が脚マニフォールド部材を伴う内側部分を有し、当該内側部分に流体が流れるように操作可能な穿孔が形成されており、各々が第1及び第2の端部を有し、当該複数のカプセル化脚部材の各々が前記第1の端部に連結インターフェースを具える、複数のカプセル化脚部材と;
複数の連結管であって、各々が第1の端部と第2の端部を有する複数の連結管と;
第1及び第2の端部を有するインターフェース管と;
を具え、
前記複数の連結管の各々の第1の端部が前記インターフェース管の第2の端部に連結されており;
前記複数の連結管の各々の第2の端部が前記連結インターフェースにおいて前記複数のカプセル化脚部材に連結されている;
ことを特徴とする方法。
【請求項18】
患者の内部組織部位における炎症反応を抑制するシステムにおいて:
内部組織部位近傍に展開する減圧治療デバイスであって、最小侵襲治療デバイスを具える減圧治療デバイスと;
患者の上皮の一部に配置して前記内部組織部位の上に空気式シールを形成するように動作可能なシーリング部材と;
減圧を供給する外部減圧源と;
前記外部減圧源と連結インターフェースを流体連結する減圧送達管と;
を具え、
前記減圧源、減圧送達管、及び減圧治療デバイスが、前記外部減圧源から前記減圧治療デバイスへ減圧を提供し、炎症を促進する刺激を緩和するように動作可能であること、を特徴とするシステム。
【請求項19】
請求項18に記載の炎症反応を抑制するシステムにおいて、前記減圧治療デバイスが:
カプセル化脚部材であって、当該カプセル化脚部材が脚マニフォールド部材と、穿孔を形成して前記脚マニフォールド部材を封入するカプセル化エンベロープを具え、前記カプセル化脚部材が3.0より大きいアスペクト比を有する、カプセル化脚部材と;
前記カプセル化脚部材に連結され、前記脚マニフォールド部材に流体連結されている連結インターフェースと;
を具えることを特徴とするシステム。
【請求項20】
請求項18に記載の炎症反応を抑制するシステムにおいて、前記減圧治療デバイスが:
カプセル化脚部材であって、当該カプセル化脚部材が脚マニフォールド部材と、穿孔を形成して前記脚マニフォールド部材を封入するカプセル化エンベロープを具え、前記カプセル化脚部材が4.0より大きいアスペクト比を有する、カプセル化脚部材と;
前記カプセル化脚部材に連結され、前記脚マニフォールド部材に流体連結されている連結インターフェースと;
を具えることを特徴とするシステム。
【請求項21】
請求項18に記載の炎症反応を抑制するシステムにおいて、前記減圧治療デバイスが:
カプセル化脚部材であって、当該カプセル化脚部材が脚マニフォールド部材と、穿孔を形成して前記脚マニフォールド部材を封入するカプセル化エンベロープを具え、前記カプセル化脚部材が5.0より大きいアスペクト比を有する、カプセル化脚部材と;
前記カプセル化脚部材に連結され、前記脚マニフォールド部材に流体連結されている連結インターフェースと;
を具えることを特徴とするシステム。
【請求項22】
請求項18に記載の炎症反応を抑制するシステムにおいて、前記減圧治療デバイスが:
第1の脚マニフォールド部材と第2の脚マニフォールド部材であって、前記第1の脚マニフォールド部材と第2の脚マニフォールド部材が交差して中央連結部位を形成する、第1の脚マニフォールド部材と第2の脚マニフォールド部材と;
前記第1の脚マニフォールド部材と、前記第2の脚マニフォールド部材と、前記中央連結部位との上に外部層を形成するカプセル化エンベロープであって、前記カプセル化エンベロープに穿孔が形成されて内側部分に流体が流れるようにしたカプセル化エンベロープと;
を具えることを特徴とするシステム。
【請求項23】
請求項22に記載の炎症反応を抑制するシステムにおいて、前記第1の脚マニフォールド部材と前記第2の脚マニフォールド部材が二つの鈍角と二つの鋭角を形成することを特徴とするシステム。
【請求項24】
請求項18に記載の炎症反応を抑制するシステムにおいて、前記減圧治療デバイスが:
複数のカプセル化脚部材であって、各々が脚マニフォールド部材を有する内側部分を有し、当該内側部分に流体が流れるように動作可能な穿孔が形成されており、各々が第1の端部と第2の端部を有し、当該複数のカプセル化脚部材の各々が前記第1の端部に連結インターフェースを具える、複数のカプセル化脚部材と;
複数の連結管であって、各々が第1の端部と第2の端部を有する連結管と;
第1の端部と第2の端部を有するインターフェース管と;
を具え、
前記複数の連結管の各々の第1の端部が前記インターフェース管の第2の端部に連結されており;
前記複数の連結管の各々の第2の端部が前記連結インターフェースにおいて前記複数のカプセル化脚部材に連結されている;
ことを特徴とするシステム。


【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【公表番号】特表2012−502731(P2012−502731A)
【公表日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−527843(P2011−527843)
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【国際出願番号】PCT/US2009/044235
【国際公開番号】WO2010/033271
【国際公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(508268713)ケーシーアイ ライセンシング インコーポレイテッド (125)
【Fターム(参考)】