説明

炎症治療用化合物

【課題】
【解決手段】本発明は、炎症や痛みの治療のためのベンジリデンアミノグアニジンの使用に関する。好ましい一実施形態において、本発明は、慢性関節リウマチの治療のためのN−(2−クロロ−3,4−ジメトキシベンジリデンアミノ)グアニジンの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炎症や痛みの治療のためのある特定のベンジリデンアミノグアニジンの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
慢性関節リウマチ(RA)は、免疫系に関節を攻撃させる慢性炎症性自己免疫疾患である。これは、関節破壊とそれに伴う痛みによる運動機能の実質的喪失をもたらし得る障害と痛みのある状態を引き起こす。RAの背後にある病因の大部分は不明である。RAは、成人の約1%に発症し、男性に比べて2〜3倍多く女性に見られる。RAは、早ければ幼児期に始まることもあるが、通常40代または50代で発症する。
【0003】
様々な治療が試みられてきた。非薬物療法としては、理学療法および作業療法が挙げられる。症状を抑制するために鎮痛剤(鎮痛薬)や抗炎症薬並びにステロイド薬が使用されている一方で、原因となる免疫過程を抑制または食い止め、長期的障害を防ぐため、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs)が多くの場合必要とされる。
【0004】
しかしながら、依然として炎症や痛みの代替薬剤治療の需要がある。
【0005】
RAのような炎症性疾患においては、セロトニン(5−ヒドロキシトリプタミン、5−HT)とその受容体が重要な役割を果たす。
【0006】
セロトニン系は、その多くの受容体と共に、体内での多くの情報伝達事象に関与する。(Bergerら、Annu. Rev. Med. (2009), 60:355-66(非特許文献1)参照)。例えば、セロトニンは、心血管機能、腸管運動および膀胱のコントロールといった生体内作用を制御する。少なくとも15セロトニン受容体のクローニングにより、この20年間でセロトニンの機能に関する理解がより深まってきており、情報伝達機構に基づき7つのファミリーに分類されている。
【0007】
その他の重要な進展としては、その後の受容体特異的ノックアウトマウスの開発や受容体サブタイプ選択的薬剤の開発が挙げられる。これらの進展により、セロトニンが、炎症過程や痛みを含め、人間の多くの臓器系において非常に重要な働きをすることが分かった。
【0008】
慢性関節リウマチなどの炎症性疾患において、血小板がセロトニン輸送体を介して血漿からセロトニンを取り込んだ後、セロトニンは、炎症部位において活性化している間に血小板により分泌される。この放出されたセロトニンは、炎症細胞(例えば、マクロファージ、T細胞および線維芽細胞)に結合することにより炎症促進性サイトカインの産生を引き起こす。例えば、いくつかの研究により、関節炎患者における5−HT含有量レベル、血漿中濃度および疾患活動性の間の相関性が示されている。
【0009】
5−HT1B、5−HT2A、5−HT2C、5−HT4、5−HT7などのいくつかの受容体は、炎症における5−HTの作用に関連付けられている。しかしながら、5−HT2B受容体が、いまだかつて炎症に直接関連づけられたことがないことは注目に値する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Bergerら、Annu. Rev. Med. (2009), 60:355-66.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
5−HT2B受容体は、肺動脈高血圧症(PAH)に関連付けられており、PAHの治療には拮抗剤が役立つ可能性がある。5−HT2B受容体に対する作動薬についての記述がある(例えば、フェンフェン事件−心臓弁膜症および肥満症)。心肥大における5−HT2B受容体の関与並びにインターロイキン6、インターロイキン1βおよびTNFαサイトカイン産生の制御との関連が公表されている。5−HT2B受容体はまた、便秘や片頭痛などの兆候においても議論されてきた。
【課題を解決するための手段】
【0012】
驚いたことに、今回、5−HT2B受容体が、末梢的に直接且つ密接に炎症過程に関係していることを見出した。具体的には、この受容体サブタイプが、パンヌス並びにマクロファージにおいて発現することを見出した。パンヌス組織(すなわち滑膜線維芽細胞およびマクロファージ)における浸潤性滑膜細胞および侵襲性滑膜細胞上に5−HT2B受容体が存在することから、5−HT2B受容体は、RAにおいて炎症反応を調節するためのターゲットとして重要なものとなる。これらの受容体を拮抗することにより、IL−6およびTNFαの発現が減少する。この作用は、関節炎の治療に際して最も重要なものである。
【0013】
従って、5−HT2B受容体に結合可能であって、5−HT2B受容体に関連する炎症、痛みおよび他の疾患の治療に使用可能である、化合物およびとりわけある特定のベンジリデンアミノグアニジンまたはその医薬上許容される塩を提供することを目的とする。
【0014】
様々なベンジリデンアミノグアニジンおよびヒドロキシグアニジンが、これまでメラノコルチン受容体リガンドとされてきた。具体的には、WO02/11715に、164のベンジリデンアミノグアニジンおよびヒドロキシグアニジンがメラノコルチン受容体リガンドとして開示されている。当該文献に開示されている化合物は、精神疾患、内分泌系およびホルモン系の機能障害、性機能障害、炎症、血液およびリンパ系の薬剤性疾患、ファーストアレルギー疾患、心臓血管疾患、痛み、色素形成刺激、セカンドメッセンジャーエレメント刺激を含む、メラノコルチン受容体に関連する広範な疾患の治療、ならびに毒物での標識に有用であるとされている。WO02/11715の実施例は、当該文献に開示されている化合物の精神疾患治療に対する効力を説明するものとされている。より具体的には、N−(3−ブロモ−4−メトキシベンジリデンアミノ)−N’−ヒドロキシグアニジンおよびN−(5−クロロ−2−ニトロベンジリデンアミノ)−N’−ヒドロキシグアニジンのMC1、MC3、MC4およびMC5受容体への結合に関するデータが開示されている。しかしながら、この文献は、本明細書で言及している、炎症または痛みの治療に対するベンジリデンアミノグアニジンの使用を具体的に開示していない。
【0015】
一態様では、本発明は、炎症または痛みの治療のための、式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩を含む医薬組成物を提供する。
【0016】
【化1】

【0017】
前記式(I)中、
1は、Cl、MeOまたはHであり、
2は、Cl、MeOまたはHであり、
3は、ClまたはMeOであり、
4は、Cl、HまたはNO2である。
但し、R1〜R3の少なくとも1つはClでなければならず、
またR1〜R3の少なくとも1つはMeOでなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、N−(2−クロロ−3,4−ジメトキシベンジリデンアミノ)グアニジンが、受容体リガンドのヒト5−HT2B、5−HT2Cおよび5−HT4受容体への結合を阻害したことを示す。
【図2】図2は、5−HT2Bおよび5−HT2C受容体に対するN−(2−クロロ−3,4−ジメトキシベンジリデンアミノ)グアニジンの拮抗作用を示す。
【図3】図3は、異なる組織または細胞から精製された全RNAが、各種5−HT2受容体サブタイプのmRNA発現を分析するために逆転写され増幅され、5−HT2Bおよび5−HT2Cに対する転写物は、ラット滑膜細胞およびパンヌスにおいて検出できたが、5−HT2Aに対する転写物は、同一のRNA製剤において検出できなかったことを示す。
【図4】図4は、N−(2−クロロ−3,4−ジメトキシベンジリデンアミノ)グアニジン(図中CPDと示されている)が、BW723C86およびCP809101(それぞれ、選択的5−HT2Bおよび5−HT2C受容体作動薬)により誘発された作用を逆転させたことを示す。
【図5】図5は、AIAにおける膝腫脹の発生に対する、経口投与されたN−(2−クロロ−3,4−ジメトキシベンジリデンアミノ)グアニジン(図中CPDと示されている)の作用を示す(平均値±標準誤差)。メトトレキサート(MTX)を用いた治療結果を比較対象として示している。
【図6】図6は、ラットにおけるN−(2−クロロ−3,4−ジメトキシベンジリデンアミノ)グアニジン(図中CPDと示されている)(1、10または30mg/kg)の炎症痛に対する作用を示す。
【図7】図7は、ラット滑膜細胞を、LPS(50ng/ml)の存在下、異なる濃度(0.1、1または10μM)のRS127445(5−HT2B拮抗剤)またはSB242084(5−HT2C拮抗剤)を同時に添加し、1μMの5−HTを用いて刺激し、72時間後、培地中のIL−6レベルを測定し、異なる濃度での選択的5−HT2Bおよび5−HT2C受容体拮抗剤の添加により、IL−6の産生が減少したことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
いくつかの好ましい化合物においては、R1はClである。他の好ましい化合物においては、R2はMeOである。他の好ましい化合物においては、R3はMeOである。さらに他の好ましい化合物においては、R4はHである。
【0020】
本発明のいくつかの実施形態においては、炎症または痛みの治療のための、式II:
【0021】
【化2】

【0022】
の化合物またはその医薬上許容される塩を含む医薬組成物が提供される。
【0023】
前記式(II)中、
1は、ClまたはMeO、好ましくはClであり、
2は、ClまたはMeO、好ましくはMeOであり、
4は、ClまたはH、好ましくはHである。
但し、R1およびR2の少なくとも1つはClでなければならない。
【0024】
最も好ましくは、式IまたはIIの化合物が、N−(2−クロロ−3,4−ジメトキシベンジリデンアミノ)グアニジンである。
【0025】
式(I)もしくは(II)の化合物および/またはそれらの医薬上許容される塩は、5−HT系により制御される炎症、一酸化窒素の産生に関連した炎症、誘導型一酸化窒素合成酵素量の増加(上方制御)に関連した炎症、転写活性化因子の活性化に関連した炎症、核内因子κBに関連した炎症、マクロファージ、好中球、単球、角化細胞、線維芽細胞、メラニン形成細胞、色素細胞および内皮細胞に関連した炎症、例えば、インターロイキン、特に、インターロイキン1(IL−1)、インターロイキン6(IL−6)および腫瘍壊死因子アルファ(TNF−α)などの炎症性サイトカインの産生および/または放出の増加に関連した炎症などの炎症の治療に役立つものとする有益な薬理学的特性を有する。
【0026】
本明細書において、「産生の増加」とは、健常人における内因性化合物の量と比較し、患者における当該内因性化合物の生成、放出または量の局在的、局所的または全身的な増加のことである。本明細書において、「上方制御」とは、健常人と比較し、前記化合物の活性または量の増加のことである。
【0027】
本明細書において、「産生の減少」とは、健常人における内因性化合物の量と比較し、患者における当該内因性化合物の生成、放出または量の減少のことである。本明細書において、「下方制御」とは、健常人と比較し、前記化合物の活性または量の減少のことである。
【0028】
具体的には、炎症または炎症様疾患が下記の1つ以上により引き起こされるまたは1つ以上に関連している疾患において、有益な治療効果または予防効果が見られ得る:アレルギー症、過敏症、細菌感染症、ウイルス感染症、毒物による炎症、発熱、自己免疫疾患、また、紫外線、X線照射、γ線、αまたはβ粒子、日焼け、高温または機械的損傷を含む任意の原因による放射線障害。さらに、低酸素症による炎症は、その後任意に低酸素領域の再酸素化が起こるが、典型的には、その後重度炎症が生じる。本発明の化合物を用いた治療はこの症状に良い影響を与え得る。
【0029】
本発明の極めて特有の実施形態において、本発明の化合物は、炎症性要素を有する皮膚疾患を含む任意の原因による皮膚(真皮および表皮を含む)の炎症性疾患の予防またはセラピー治療を目的として投与してもよい。本発明のこの実施形態の具体例としては、皮膚の接触性皮膚炎、皮膚の日焼け、任意の原因によるやけど、並びに化学物質、乾癬、血管炎、壊疽性膿皮症、円板状エリテマトーデス、湿疹、掌蹠膿疱症および尋常性天疱瘡による皮膚の炎症の治療が挙げられる。
【0030】
また、本発明は、炎症性要素を有する腹部疾患を含む腹部における炎症性疾患の治療のための、式(I)若しくは(II)の化合物またはその医薬上許容される塩も含む。本発明の化合物を用いたそのような疾患の治療の具体例としては、胃炎が挙げられ、胃炎には、原因不明のもの、悪性胃炎(gastritis perniciosa)(萎縮性胃炎)、潰瘍性大腸炎(ulcerous colitis/colitis ulcerosa)、クローン病、全身性硬化症、十二指腸潰瘍、セリアック病、食道炎および胃潰瘍が含まれる。
【0031】
本発明はまた、自己免疫性のものや他の一般的な炎症性疾患を含む全身性もしくは全体的および/または局所性免疫疾患の治療のための、式(I)若しくは(II)の化合物またはその医薬上許容される塩も含む。具体例としては、慢性関節リウマチ、乾癬性関節炎、全身性硬化症、リウマチ性多発筋痛症、ウェゲナー肉芽腫症、サルコイドーシス、好酸球性筋膜炎、反応性関節炎、ベヒテレフ病、全身性エリテマトーデス、側頭動脈炎、ベーチェット病、ビュルガー病(morbus Burger)、グッドパスチャー症候群、好酸球性肉芽腫、線維筋痛症、筋炎および混合性結合組織病の治療が挙げられる。本発明にはまた、原因不明の関節炎も含め、関節炎の治療も含まれる。
【0032】
さらに本発明は、炎症に関連した末梢および/または中枢神経系の疾患の治療のための、式(I)若しくは(II)の化合物またはその医薬上許容される塩も含む。本発明のこの態様は、脳血管炎、多発性硬化症、自己免疫性眼球炎および多発性神経炎の治療を含む。本発明はまた、アポトーシス細胞死を防ぐための中枢神経系の炎症の治療を目的とした本発明の化合物の投与も含む。さらに、本発明の化合物の中には、神経再生を誘発する際立った能力を示すものもあるため、中枢神経系における細胞損傷を伴う中枢神経系疾患において、有益な治療効果が見られることが多い。本発明のこの態様はまた、中枢神経系への外傷性疾患、脳水腫、多発性硬化症、アルツハイマー病、中枢神経系における細菌およびウイルス感染症、脳卒中並びに中枢神経系における出血の治療も含む。
【0033】
本発明はまた、炎症に関連した眼および涙腺の疾患の治療のための、式(I)若しくは(II)の化合物またはその医薬上許容される塩も含む。前記疾患の具体例としては、前部および後部ブドウ膜炎、網膜血管炎、視神経炎、視神経脊髄炎、ウェゲナー肉芽腫症、シェーグレン症候群、上強膜炎、強膜炎、目に影響を及ぼすサルコイドーシスおよび目に影響を及ぼす多発性軟骨炎が挙げられる。
【0034】
本発明はまた、炎症に関連した耳疾患の治療のための、式(I)若しくは(II)の化合物またはその医薬上許容される塩も含む。前記炎症の具体例としては、耳に影響を及ぼす多発性軟骨炎や外耳炎が挙げられる。
【0035】
本発明はまた、炎症に関連した鼻疾患の治療のための、式(I)若しくは(II)の化合物またはその医薬上許容される塩も含む。前記炎症の具体例としては、鼻に関するサルコイドーシス、多発性軟骨炎および正中線肉芽腫が挙げられる。
【0036】
本発明はまた、口腔、咽頭および唾液腺の炎症に関連した疾患の治療のための、式(I)若しくは(II)の化合物またはその医薬上許容される塩も含む。具体例としては、これらの部位におけるウェゲナー肉芽腫症、正中線肉芽腫、シェーグレン症候群および多発性軟骨炎が挙げられる。
【0037】
本発明はまた、肺における炎症に関連した疾患の治療のための、式(I)若しくは(II)の化合物またはその医薬上許容される塩も含む。具体例としては、特発性肺胞炎、原発性肺高血圧症、気管支炎、慢性気管支炎、サルコイドーシス、全身性炎症性疾患における肺胞炎、全身性炎症性疾患における肺高血圧症、ウェゲナー肉芽腫症およびグッドパスチャー症候群の治療が挙げられる。
【0038】
本発明はまた、心臓の炎症に関連した疾患の治療のための、式(I)若しくは(II)の化合物またはその医薬上許容される塩も含む。具体例としては、心膜炎、特発性心膜炎、心筋炎、高安動脈炎、川崎病、冠動脈血管炎、全身性炎症性疾患における心膜炎、全身性炎症性疾患における心筋炎、心内膜炎および全身性炎症性疾患における心内膜炎の治療が挙げられる。
【0039】
本発明はまた、肝臓の炎症に関連した疾患の治療のための、式(I)若しくは(II)の化合物またはその医薬上許容される塩も含む。具体例としては、肝炎、慢性活動性肝炎、胆汁性肝硬変、毒物による肝障害、インターフェロン誘発肝炎、ウイルス感染症により誘発された肝炎、無酸素症により誘発された肝臓障害および物理的損傷による肝臓障害の治療が挙げられる。
【0040】
本発明はまた、膵臓の炎症に関連した疾患の治療のための、式(I)若しくは(II)の化合物またはその医薬上許容される塩も含む。具体例としては、糖尿病、急性膵炎および慢性膵炎の治療(および予防)が挙げられる。
【0041】
本発明はまた、甲状腺の炎症に関連した疾患の治療のための、式(I)若しくは(II)の化合物またはその医薬上許容される塩も含む。本発明のこれら実施形態の具体例としては、甲状腺炎、自己免疫性甲状腺炎および橋本甲状腺炎の治療が挙げられる。
【0042】
本発明はまた、腎臓の炎症に関連した疾患の治療のための、式(I)若しくは(II)の化合物またはその医薬上許容される塩も含む。具体例としては、糸球体腎炎、全身性エリテマトーデスにおける糸球体腎炎、結節性動脈周囲炎、ウェゲナー肉芽腫症、グッドパスチャー症候群、疾病に関連したHLAb27、IgA腎炎(IgA=免疫グロブリンA)、腎盂腎炎、慢性腎盂腎炎および間質性腎炎の治療が挙げられる。
【0043】
本発明はまた、関節の炎症に関連した疾患の治療のための、式(I)若しくは(II)の化合物またはその医薬上許容される塩も含む。具体例としては、ベヒテレフ病、乾癬性関節炎、慢性関節リウマチ、潰瘍性大腸炎における関節炎、クローン病における関節炎、全身性エリテマトーデスにおける関節疾患、全身性硬化症、混合性結合組織病、反応性関節炎、ライター症候群の治療が挙げられる。さらに、本発明のこの実施形態には、任意の関節の関節症(変形性関節症)、特に、指関節、膝関節および股関節の関節症の治療が含まれる。
【0044】
本発明はまた、血管の炎症に関連した疾患の治療のための、式(I)若しくは(II)の化合物またはその医薬上許容される塩も含む。具体例としては、側頭動脈炎、結節性動脈周囲炎、動脈硬化症、高安動脈炎および川崎病の治療が挙げられる。本発明のいくつかの化合物の、動脈硬化症からの防御およびその予防をする能力は特に有益である。これは一部、式(I)のいくつかの化合物またはその医薬上許容される塩の、酸化低密度リポタンパク質が内皮細胞や血管壁に及ぼす作用により引き起こされる誘導型一酸化窒素合成(iNOS)の誘発を防ぐ能力によるものである。
【0045】
本発明はまた、任意の原因による感染症に関連した炎症の治療のための、式(I)若しくは(II)の化合物またはその医薬上許容される塩も含む。具体例としては、ウイルス、細菌、蠕虫および原虫に起因する感染症に伴う炎症の治療が挙げられる。
【0046】
本発明はまた、任意の原因による外傷および/または組織傷害に関連した炎症の治療のための、式(I)若しくは(II)の化合物またはその医薬上許容される塩も含む。
【0047】
好ましくは、式(I)または(II)の化合物は、慢性関節リウマチの治療に使用される。
【0048】
本発明は、特に、慢性関節リウマチの治療のためのN−(2−クロロ−3,4−ジメトキシベンジリデンアミノ)グアニジンに関する。
【0049】
式(I)若しくは(II)の化合物またはその医薬上許容される塩は、有用な薬理学的特性を有するため、中枢性の痛み、中枢神経系への損傷、脳卒中、梗塞の後に見られる痛み、末梢起源の痛み、慢性痛、神経症および中脳水道周囲灰白質部位における受容体の刺激により治療効果が得られる疾患の痛みなどの痛みの治療に有用である。
【0050】
好ましくは、前記痛みは、炎症性疾患に関連した痛みである。
【0051】
他の実施形態において、前記痛みは、好ましくは、関節における炎症に関連したものまたはリウマチ性関節炎(RA)に関連した痛みである。
【0052】
本発明の化合物の医薬上許容される塩の例としては、無機酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸など)、有機酸(例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸など)を有する酸付加塩が挙げられる。置換基によって、本発明の化合物は、塩基を有する塩を形成する場合もある。例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウムなどの金属を含有する無機塩基または有機塩基(例えば、メチルアミン、エチルアミン、エタノールアミン、リジン、オルニチンなど)を有する塩や、アンモニウム塩が挙げられる。
【0053】
さらに、本発明はまた、化合物(I)および(II)並びにその塩の多様な水和物、溶媒和化合物および多形物質も含む。
【0054】
本発明の一化合物若しくは複数の化合物またはその塩を有効成分として含む医薬組成物は、一般的に製剤に使用される1つ以上の担体、フィラーおよび他の添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0055】
投与は、錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、液剤などによる経口投与、または注射剤(例えば、静脈内、筋肉内など)、坐薬、経皮製剤、経鼻製剤、吸入剤などによる非経口投与であってもよい。好ましくは、前記医薬組成物は、経口用に処方される。いくつかの実施形態においては、約5mg、約25mg、約50mg、約75mg、約100mgまたは約150mgの経口量を、好ましくは被験者に、好ましくは1日1回または2回投与する。
【0056】
投与量は、投与する被験者の症状、年齢、性別などを考慮し個々のケースに応じて任意に決定されるが、経口投与の場合、通常、大人1日約0.001mg/kg〜100mg/kgであり、これは1度にまたは2〜4回に分けて投与する。いくつかの実施形態においては、経口投与量は大人0.05mg/kg〜5.0mg/kgであってもよい。
【0057】
静脈内に投与する場合、通常、大人1日0.0001mg/kg〜10mg/kgの範囲内で1日1回〜2回以上投与する。経鼻投与の場合、通常、大人1日0.0001mg/kg〜10mg/kgの範囲内で1日1回〜2回以上投与する。さらに、吸入の場合、通常、大人1日0.0001mg/kg〜1mg/kgの範囲内で1日1回から2回以上投与する。
【0058】
経口投与用の固体組成物においては、本明細書に記載されている1以上の化合物を、ラクトース、マンニトール、グルコース、ヒドロキシプロピルセルロース、微結晶性セルロース、デンプン、ポリビニルピロリドン、ケイ酸マグネシウムアルミニウムなどの少なくとも1つの不活性フィラーと混合してもよい。この組成物はまた、潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム)、崩壊薬(例えば、カルボキシメチルデンプンナトリウム)および可溶化剤などの不活性添加剤も含有していてもよい。錠剤や丸剤は、糖衣または胃若しくは腸溶コーティングで被覆されていてもよい。
【0059】
経口投与用の液体組成物に関しては、医薬上許容される乳濁液、溶液、懸濁液、シロップ、エリキシル剤などが挙げられるが、これらは、精製水またはエタノールなどの不活性溶媒を含有していてもよい。不活性溶媒に加えて、この組成物は、助剤(例えば、可溶化剤、湿潤剤、懸濁剤など)、甘味剤、矯正剤、芳香剤および/または防腐剤を含有していてもよい。
【0060】
非経口投与用の注射剤に関しては、滅菌水溶液または滅菌非水溶液、懸濁液および乳濁液が挙げられる。水性溶媒としては、例えば、注射用蒸留水や生理食塩水が挙げられる。非水溶媒の例としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油(例えば、オリーブ油など)、アルコール(例えば、エタノールなど)、ポリソルベート80などが挙げられる。このような組成物は、さらに、等張化剤、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定化剤および/または可溶化剤を含有していてもよい。これらは通常、例えば、細菌保持フィルターによる濾過、殺菌薬の製剤または照射により滅菌する。さらに、それらはまた、滅菌固体組成物を調製し、使用に先立って注射用滅菌溶媒または滅菌水にそれらを溶解または懸濁させ使用することも可能である。
【0061】
吸入剤、経粘膜製剤、経鼻製剤などは、固体、液体または半固体の形態で使用してもよく、従来公知の方法に従って製造できる。例えば、ラクトース、デンプンなどの賦形剤、並びにpH調整剤、防腐剤、界面活性剤、潤滑剤、安定剤および/または増粘剤などを、任意に添加してもよい。投与には、吸入または吹込み用の適切な器具を使用してもよい。例えば、測定投与吸入装置などの従来公知の器具または噴霧器を使用し、化合物は、単独でまたは処方された混合物中の散剤として、あるいは医学的に許容される担体との組み合わせによる懸濁液もしくは溶液として投与することができる。ドライパウダー吸入器などは、単回または複数回投与用であってもよく、ドライパウダーまたはパウダー含有カプセルを使用してもよい。あるいは、クロロフルオロアルカン、ヒドロフルオロアルカン、二酸化炭素などのような適切なガスを使用する加圧エアゾールスプレーなどのような形態であってもよい。
【0062】
本願は、5−HT2B受容体と炎症や痛みとの関連性を初めて開示する。この関係を理解することにより、炎症および/または痛みの治療に用いる他の化合物を得る方法が得られる。
【0063】
従って、本発明はまた、抗炎症作用を有する被験化合物の同定方法も提供し、この本法は:
(i)被験化合物を5−HT2B受容体と試験管内で接触させる工程と、
(ii)前記5−HT2B受容体に対する前記被験化合物の結合能を判定する工程とを含み、
i(阻害定数)が1μM未満または好ましくは0.5μM以下の被験化合物を、抗炎症作用を有する化合物として同定する。
【0064】
本発明はまた、抗炎症作用を有する被験化合物の同定方法も提供し、この方法は:
(i)被験化合物を5−HT2B受容体と試験管内で接触させる工程と、
(ii)前記被験化合物が前記5−HT2B受容体の拮抗剤であるかどうかを判定する工程とを含み、
前記5−HT2B受容体の拮抗剤は、抗炎症作用を有する化合物である。
【0065】
本発明はさらに、鎮痛作用を有する被験化合物の同定方法を提供し、この方法は:
(i)被験化合物を5−HT2B受容体と試験管内で接触させる工程と、
(ii)前記5−HT2B受容体に対する前記被験化合物の結合能を判定する工程とを含み、
i(阻害定数)が1μM未満または好ましくは0.5μM以下の被験化合物を、鎮痛作用を有する化合物として同定する。
【0066】
本発明はまた、鎮痛作用を有する被験化合物の同定方法を提供し、この方法は:
(i)被験化合物を5−HT2B受容体と試験管内で接触させる工程と、
(ii)前記被験化合物が前記5−HT2B受容体の拮抗剤であるかどうかを判定する工程とを含み、
前記5−HT2B受容体の拮抗剤は、鎮痛作用を有する化合物である。
【0067】
本明細書において、「5−HT2B受容体の拮抗剤」という用語は、組織機能性薬理学的アッセイにおいてIC50が100μM未満の被験化合物と定義する。前記アッセイにおいては、0.1μMのα−メチルセロトニンにより、ウィスターラットの胃底を収縮させる。(Cohen ML, Fludzinski LA. Contractile serotonergic receptor in rat stomach fundus. J. Pharmacol. Exp. Ther. (1987 Oct); 243(1):264-269)。
【0068】
別の実施形態において、本発明は、炎症治療用の5−HT2B受容体リガンドを含む医薬組成物を提供する。好ましくは、前記医薬組成物は、5−HT2B受容体リガンドを含み、前記リガンドは5−HT2B受容体拮抗剤である。適切な5−HT2B受容体拮抗剤を表1に挙げる。
【0069】
【表1】










【0070】
いくつかの実施形態において、前記リガンドは、好ましくは、RS127445またはSB242084である。
【0071】
さらに別の実施形態において、本発明は、薬剤を提供するものであって、前記薬剤は、炎症の治療における同時、連続または単独投与を目的として、個別にまたは共に:
(A)式I若しくはIIの化合物、またはその医薬上許容される塩、および
(B)抗炎症薬
を含む。
【0072】
さらに別の実施形態において、本発明は、薬剤を提供するものであって、前記薬剤は、痛みの治療における同時、連続または単独投与を目的として、個別にまたは共に:
(A)式I若しくはIIの化合物、またはその医薬上許容される塩、および
(B)鎮痛薬
を含む。
【0073】
本発明のいくつかの実施形態において、(B)に記載の前記抗炎症薬は、メトトレキサートである。
【0074】
本発明のいくつかの実施形態において、(B)は式I若しくはIIの化合物、またはその医薬上許容される塩ではない。
【0075】
本発明の他の実施形態において、(A)または(B)は、上記表1に明示した5HT2B受容体拮抗剤の1つである。
【0076】
上記に基づき、本発明はまた、上述の(A)および(B)を個別の単位剤形で含む医薬キットも提供するものであって、前記剤形は、有効量の(A)および(B)の投与に適したものである。
【0077】
別の態様において、本発明は、有効量の上述の(A)および上述の(B)の混合物を、随意、少なくとも1つの医薬上許容される担体と共に含む医薬組成物を提供する。
【0078】
[図面の簡単な説明]
図1は、N−(2−クロロ−3,4−ジメトキシベンジリデンアミノ)グアニジンが、受容体リガンドのヒト5−HT2B、5−HT2Cおよび5−HT4受容体への結合を阻害したことを示す。
図2は、5−HT2Bおよび5−HT2C受容体に対するN−(2−クロロ−3,4−ジメトキシベンジリデンアミノ)グアニジンの拮抗作用を示す。化合物の官能性は、5−HT2B組織分析法および5−HT2CGTPγS結合分析法によって評価した。
図3は、異なる組織または細胞から精製された全RNAが、各種5−HT2受容体サブタイプのmRNA発現を分析するために逆転写され増幅され、5−HT2Bおよび5−HT2Cに対する転写物は、ラット滑膜細胞およびパンヌスにおいて検出できたが、5−HT2Aに対する転写物は、同一のRNA製剤において検出できなかったことを示す。
図4は、N−(2−クロロ−3,4−ジメトキシベンジリデンアミノ)グアニジン(図中CPDと示されている)が、BW723C86およびCP809101(それぞれ、選択的5−HT2Bおよび5−HT2C受容体作動薬)により誘発された作用を逆転させたことを示す。
図5は、AIAにおける膝腫脹の発生に対する、経口投与されたN−(2−クロロ−3,4−ジメトキシベンジリデンアミノ)グアニジン(図中CPDと示されている)の作用を示す(平均値±標準誤差)。メトトレキサート(MTX)を用いた治療結果を比較対象として示している。各グループにおいて6匹の動物を使用した。3日目のマンホイットニーのU検定では以下の結果が得られた:10mg/kgの場合P<0.05および3mg/kgの場合P<0.01。
図6は、ラットにおけるN−(2−クロロ−3,4−ジメトキシベンジリデンアミノ)グアニジン(図中CPDと示されている)(1、10または30mg/kg)の炎症痛に対する作用を示す。この化合物は、ホルマリン(媒体)注射の60分前に経口投与した。侵害刺激反応の合計時間は、第2段階に関して示した(15〜60分)。N−(2−クロロ−3,4−ジメトキシベンジリデンアミノ)グアニジンは、30mg/kgのホルマリンの場合に比べ、第2段階で侵害刺激反応の著しい抑制を示した。データは、平均値±標準誤差で示されている。著しい差異は、一元配置分散分析の後ボンフェローニのポストテスト(**P<0.01対ホルマリン)、(n=10動物/グループ)を用いて算出した。
図7は、ラット滑膜細胞を、LPS(50ng/ml)の存在下、異なる濃度(0.1、1または10μM)のRS127445(5−HT2B拮抗剤)またはSB242084(5−HT2C拮抗剤)を同時に添加し、1μMの5−HTを用いて刺激し、72時間後、培地中のIL−6レベルを測定し、異なる濃度での選択的5−HT2Bおよび5−HT2C受容体拮抗剤の添加により、IL−6の産生が減少したことを示す。N−(2−クロロ−3,4−ジメトキシベンジリデンアミノ)グアニジン(COMP)を添加した場合、同様の用量依存的なIL−6レベルの低下を示す(A)。ラット滑膜細胞を、LPS(50ng/ml)の存在下、3つの異なる濃度の5−HT2Bおよび5−HT2C受容体拮抗剤を同時に添加し、1μMのBW723C86(5−HT2B作動薬)または1μMのCP809101(5−HT2C作動薬)を用いて刺激した。72時間後、培地中のIL−6レベルを測定した。異なる濃度での選択的5−HT2Bおよび5−HT2C受容体拮抗剤の添加により、IL−6の産生が減少した。N−(2−クロロ−3,4−ジメトキシベンジリデンアミノ)グアニジンを添加した場合、同様の用量依存的なIL−6レベルの低下を示している。一元配置分散分析の後ボンフェローニのポストテスト(***P<0.001、**P<0.01および*P<0.05対適切な作動薬)を用いて統計的計算を行った。
【0079】
本発明を、以下の実施例においてさらに説明する。実施例においては、特に指定のない限り、部およびパーセントは重量部および重量パーセントであり、温度は摂氏である。当然のことながら、これらの実施例は、本発明の好ましい実施形態を示すものではあるが、単なる例として挙げているものである。上記の説明とこれらの実施例から、当業者は、本発明の本質的特徴を確定することができ、本発明の精神と範囲から逸脱することなく、本発明を様々に変更および改良することにより、多様な用法および条件に適応させることができる。従って、本明細書に示し且つ説明したものに加え、本発明の様々な改良は、上述の説明から当業者にとっては明白なものである。そのような改良はまた、添付のクレームの範囲内であるものとする。本明細書に記載されている各参考文献の全開示事項は、参照により本明細書に援用される。
【実施例1】
【0080】
実施例1:N−(2−クロロ−3,4−ジメトキシベンジリデンアミノ)グアニジン酢酸塩の調製
15mlのメタノールに、2−クロロ−3,4−ジメトキシベンズアルデヒド(1.0g、5mmol)、重炭酸アミノグアニジン(0.68g、5mmol)および酢酸(1ml)を含む溶液を、還流させながら10分間加熱する。その反応混合液を0℃まで冷却し、残留物を濾去する。濾液を真空下蒸発させ、生成物をエタノールから結晶化させる。表題化合物の収量は1.1g(70%)、融点(M.p.)は198〜200℃である。
【実施例2】
【0081】
実施例2:受容体−リガンド結合の阻害
各種5−HT受容体に対する結合親和性の判定を、ラジオリガンド結合アッセイにより行った。簡潔に説明すると、対象の受容体を発現している組織または細胞をインキュベーション緩衝液中に懸濁させ、ラジオリガンドと10μMのN−(2−クロロ−3,4−ジメトキシベンジリデンアミノ)グアニジンとを添加した。インキュベーション後、緩衝液を用いて複数回洗浄することにより、結合ラジオリガンドと遊離ラジオリガンドとを分離した。各アッセイに関する詳細は、表2に示す。
【0082】
その結果は、特定の結合の阻害率(percent inhibition)として示した。各アッセイの平均値を表3に示す。MathIQ(登録商標)(アイディービジネスソリューション社(ID Business Solution Ltd.)、 英国)を用いて非線形最小二乗回帰分析によりIC50値を求めた。阻害定数(Ki)は、検査した化合物の観測されたIC50、アッセイにおいて採用されたラジオリガンドの濃度およびリガンドのKDの履歴値を用いてチェン−プルソフ式(Cheng Y, Prusoff WH, Biochem. Pharmacol. 22:3099-3108, 1973)により算出した。

【0083】
【表2】

【0084】
(参考文献:Bonhaus DW, ら、 (1995). Br J Pharmacol. 115:622-628; Wolf WA and Schutz JS. (1997). J. Neurochem. 69:1449-1458.)


【0085】
【表3】

【0086】
前記受容体のうちの3つに対するリガンド結合は、10μMの化合物で75%を上回って阻害された。これらの受容体5−HT2B、5−HT2Cおよび5−HT4をさらに、10の異なる濃度の前記化合物で分析した結果、Ki値はそれぞれ263、880および276nMであった(図1)。
【0087】
5−HT2B(Cohen ら(1987), J. Pharmacol. Exp. Ther. 243:264-269)、5−HT2C(Adlersber M, ら(2000), J. Neurosci. Res. 61(6):674-685; Cussac D. ら (2002), Mol. Pharmacol. 62(3):578-589)および5−HT4(Reeves ら(1991), Br. J. Pharmacol. 103:1067-1072)に対するN−(2−クロロ−3,4−ジメトキシベンジリデンアミノ)グアニジンの官能性をさらにテストした。
【0088】
前記化合物は、それぞれIC50値が61.7および16.5μMである5−HT2Bおよび5−HT2Cに対し拮抗作用を有する(図2)。100μMでは5−HT4への有意な作用はもたらされなかった。
【実施例3】
【0089】
実施例3:5HT2受容体の拮抗作用
パンヌスおよび滑膜細胞での5−HT2受容体発現パターンをRT−PCRにより調べた。N−(2−クロロ−3,4−ジメトキシベンジリデンアミノ)グアニジンを試験管内で市販の5−HT2受容体作動薬と共にラット滑膜細胞に添加し、IL−6放出へのそれらの作用を調べた。
【0090】
[RNAの準備]
全てのRNAは、QiashredderとRNeasy Mini Kit(キアゲン(Qiagen)、バレンシア、カリフォルニア州、米国)を使用し、細胞培地または組織から抽出した。精製RNAを、波長260nmでの可視化により定量化した(Jenway, 6405)。
【0091】
[5−HT2受容体発現の逆転写PCR(RT−PCR)解析]
プライマー配列とそれらの使用条件を表4にまとめている。
【0092】
各サンプルの全RNA400ngを、Illustra(登録商標)Ready−to−Go RT−PCR Beads(GEヘルスケア(GE-Healthcare)、英国)を用いて50μlの反応液中でcDNAに逆転写した。1マイクロリットルのアリコートを、記載している反応混合液により増幅した。以下の反応プロフィールを全実験手順(実験)に用いた:42℃で15分間の第1鎖cDNA合成反応、94℃で2分間の初期変性、94℃で15秒;50℃で15秒;および72℃で30秒を2サイクル、94℃で15秒;52℃で15秒;および72℃で30秒を2サイクル、94℃で15秒;54℃で15秒;および72℃で30秒を2サイクル、94℃で15秒;56℃で15秒;および72℃で30秒を2サイクル、94℃で15秒;58℃で15秒;および72℃で30秒を2サイクル、その後、94℃で15秒;55℃で15秒;および72℃で30秒を35サイクル、そして最後のサイクルの後、72℃でさらなる1分間の延長工程。増幅反応は、Eppendorf Mastercycler ep(エッペンドルフ社(Eppendorf AG)、ハンブルグ、ドイツ)で行った。逆転写酵素を反応液から取り除いた負の対照を同時に反応させたがPCR産物は得られなかった。正の対照として、ラットの脳から単離した全RNAを使用した。内部の正の対照はGAPDHから成る。
【0093】
【表4】

【0094】
[ラット滑膜細胞の単離、培養および刺激]
抗原誘発関節炎(AIA)(このモデルの以下の説明を参照;Andersson, S.E ら(1998), J. Rheumatology 25: 1772-1777)を持つラットの炎症を起こした膝から、誘発の3〜5日後パンヌスを単離し、数時間以内にさらに処理するまで、100U/mlのペニシリン−ストレプトマイシン(PEST、インビトロゲン社(Invitrogen Corporation))および2.5μg/mlのファンギゾン(アムホテリシンB、インビトロゲン)を補ったPBS中に保存した。PBSを捨て、組織を小片に切った後、コラゲナーゼ溶液(400U/ml;タイプ1CLS−1、ワージントン(Worthington))中で37℃、5%CO2で3時間消化させた。その懸濁液を、ナイロンメッシュを通して濾過し(70μm)、組織培地(L−グルタミン、インビトロゲンを含み、10%ウシ胎仔血清(FBS)、100U/mlPESTおよび2.5μg/mlファンギゾンを補ったRPMI−1640)で洗浄し、遠心分離した(257g)。その細胞を組織培地中に再懸濁させ、細胞培養フラスコ(T25、TPP)内に播種した。一晩培養した後、培地を交換することにより浮遊細胞を除去し、37℃、5%CO2で細胞をインキュベートし、培養密度に達するまで(7〜10日)3日目毎に培地を交換した。培地は、主成分を線維芽細胞およびマクロファージとする混合細胞集団から成るものであった(Andersson, S.E.ら、(2000), Eur. J. Pharm. Sci 9: 333-343)。
【0095】
前記細胞を数え、96ウェルの細胞培養プレート(ヌンク(Nunc))において10000細胞/0.2mlの密度で再播種した。一晩培養した後、0.1、1および10μMのN−(2−クロロ−3,4−ジメトキシベンジリデンアミノ)グアニジンと1μMの5−HT2受容体作動薬とを同時に添加する(三通り)と共に50ng/mlのリポ多糖(LPS, E. coli 055:B5、シグマ(Sigma))で細胞を刺激した。細胞を72時間インキュベートした後、上清を収集し、IL−6(OptEIA(登録商標)Set Rat IL-6)を分析した。処理が細胞生存率に及ぼす作用を、細胞増殖試薬WST−1(ロシュ・ダイアグノスティックス(Roche Diagnostics))を用いて判定した。
【0096】
[結果]
試験管内での標的検証実験により、5−HT2受容体が標的細胞上で発現し(図3)且つN−(2−クロロ−3,4−ジメトキシベンジリデンアミノ)グアニジンが、選択的5−HT2受容体作動薬により誘発された作用を逆転させる(図4)ことから5−HT2受容体を介して作用することが分かった。
【実施例4】
【0097】
実施例4:ラットの抗原誘発関節炎における炎症への作用
抗原誘発関節炎(AIA)は、ヒトの関節炎疾患の、十分に立証された動物実験モデルである(Dumonde, D.C. and Glynn, L.E. (1962), Br. J. Exp. Pathol. 43:373-383)。このモデルにおいて、炎症は、免疫化した後、抗原を関節内(膝関節)に投与することにより誘発する。これにより、パンヌス、すなわち、過剰増殖滑膜組織が形成され膝直径が増大し、パンヌスは、関節軟骨から骨にまで広がり関節組織のびらんおよび破壊につながる(Carpenter, T.A. ら、 (1994), Skeletal Radiol. 23:429-437)。
【0098】
AIAを、4日間治療しながら、我々の被験化合物の短期生体内評価に適用した。被験化合物を、慢性関節リウマチの治療用の、十分に立証された「最高基準(ゴールドスタンダード)」薬(Bannwarth, B.ら、 (1994), Drugs 47:25-50)であるメトトレキサートと比較した。メトトレキサートは、このモデルにおいて抗関節炎作用を有することが証明されている(Andersson, S.E. ら、 (2000), Eur. J. Pharm. Sci. 9: 333-343)。
【0099】
[実験]
Dark Agouti雌ラットを、50μlの生理食塩水に溶解し50μlのフロイント完全アジュバント(シグマF5881)で乳化した1mgのmBSA(シグマA1009)で尾根部皮下に感作した。11日後、これらのラットに、50μlの生理食塩水に溶解した75μgのmBSAを関節内(動脈内)注射により投与した(片側)。これらの処置は、短時間イソフルラン麻酔下で行った。1日1回または2回、生理食塩水中のN−(2−クロロ−3,4−ジメトキシベンジリデンアミノ)グアニジンを動物に経口投与した。この投与は、mBSAを関節内注射により投与した日に開始し、4日間継続した。膝関節腫脹を移動距離計(odimeter)/キャリパー(calliper)により毎日測定した;関節炎誘発前と実験の終わりに体重を記録した。被験化合物は、体重1キロにつき1〜10mgを経口投与した。メトトレキサートは、2.5mg/kgを1度投与した。
【0100】
[結果]
この化合物は、1〜10mg/kgの用量範囲において、再現性よく膝腫脹を軽減させることが分かった(図5)。1日2回10mg/kgを経口投与したこの化合物の有益な作用は、同一用量の1日1回の投与によって再現された。さらに、疾病誘発後1日目の投与で、この化合物の治療効果が見られた。
【実施例5】
【0101】
実施例5:炎症痛モデル
炎症痛は、組織損傷に伴うものであり、その結果として生じる炎症過程は、関節炎や多くの自己免疫疾患の状態などの病状に関連している。ラットにおけるホルマリンテストは、動物における炎症痛を研究する際に広く用いられている手段である(Dubuisson, D., and Dennis, S.G. (1977), Pain 4:161-174; Wheeler-Aceto, H., ら(1990), Pain 40:229-238)。このモデルにより、2つの別個の相において現れる2つの異なるタイプの痛みに関する研究が可能となる。第1相は、ホルマリンにより神経を直接刺激することから急性痛に似ており、その後に続く第2相は、例えば、関節炎における痛みに似た、炎症反応により誘発された痛みである。
【0102】
[実験]
動物(チャールズ・リバー(Charles River, Calco, Lecco, イタリア)より提供されたSprague Dawley雄ラット)を、評価に先立ち単一のプレキシガラス製のケージ内でテスト環境に60分間気候順化させた。50μlの5%のホルマリンを、29ゲージ針のマイクロシリンジを用いて、右後足の背側に皮下注射により投与した。ホルマリン注射の後、ラットは直ちにテストケージ内に放たれ、それらの行動を観察した。食物と水は、それぞれテスト開始前10時間および2時間並びに実験期間中は供給しなかった。
【0103】
文献(Sufka KJ, ら, Eur J Pain(1998), 2(4):351-8; Maione S, ら, Br. J. Pharmacol. 2007;150:766-781)に従って、ホルマリン注射後60分の間、連続5分間ずつ侵害刺激反応をモニターした。特に、単位時間(5分)ごとに、注射した足を引き上げる、なめる、振る、およびたじろぐ累積時間を測定することにより、侵害刺激反応を記録した。侵害刺激反応は、5分ごとと、第1相(0〜15分)および第2相(15〜60分)の合計時間とのいずれも測定した。侵害刺激反応は、分単位で示した(平均±標準誤差)。N−(2−クロロ−3,4−ジメトキシベンジリデンアミノ)グアニジン(1、10および30mg/kg)を、ホルマリン注射の60分前にラットに経口投与し、ホルマリンに誘発された痛みの用量反応による予防を判定した。
【0104】
[結果]
N−(2−クロロ−3,4−ジメトキシベンジリデンアミノ)グアニジンは、侵害刺激反応の最初の段階に著しく影響を及ぼすことなく、30mg/kgで炎症痛反応を著しく低下させた(図6)。
【実施例6】
【0105】
実施例6:5−HT2B受容体および5−HT2C受容体を介した炎症の調節
ラット滑膜細胞における炎症反応に対する5−HTによる刺激作用を評価するため、IL−6発現における変化を測定した。また、市販の5−HT2受容体拮抗剤を含有することによる影響を調べた。
【0106】
抗原誘発関節炎(AIA)のラットの炎症を起こしている膝関節を、抗原の関節内投与の4日後解剖した。単離したてのパンヌス組織を、100U/mlのペニシリン、ストレプトマイシン(PEST、インビトロゲン)および2.5μg/mlのファンギゾン(アムホテリシンB、インビトロゲン)を補ったリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に回収し、はさみで細かく切り、PESTおよびファンギゾン(2.5μg/ml)を補ったRPMI1640(ギブコ(Gibco))中の400U/mlのコラゲナーゼ(タイプ1、CLS−1;ワージントン)により3時間分解した。その細胞懸濁液を70μmのナイロンメッシュを通して濾過し、その細胞を257xgで10分間遠心分離することにより回収した。その細胞を10%FBS(ギブコ)、PESTおよびファンギゾン(培地)を補ったRPMI1640に再懸濁させ、T25フラスコ(TPP Cat#90026)内に播種した。一晩インキュベーションした後、浮遊細胞を除去し、細胞が培養密度(通常7〜10日以内に達する)に近づくまで3日目毎に培地を交換した。ほぼ培養密度に達したところで、細胞をPBSで洗浄し、トリプシン処理により回収した。PBS中で洗浄した後、その細胞を培地に再懸濁させ、96ウェルのプレート(ヌンク、cat#167008)に、1ウェルに0.2mlで10000細胞を播種した。一晩培養した後、その培地を、異なる濃度の5−HT、5−HT2受容体作動薬および/または拮抗剤とN−(2−クロロ−3,4−ジメトキシベンジリデンアミノ)グアニジンと共に50ng/mlのLPS(シグマ、L6529)および新鮮培地と交換した。細胞を72時間インキュベートした後、上清を回収し、IL−6(BD OptEIA(登録商標)Set)を分析した。細胞生存率に対する治療の効果を、細胞増殖試薬であるWST−1(ロシュ・ダイアグノスティックス)を用いて判定した。別の実験において、5−HTレベルを、セロトニンELISAキット(アイビーエルインターナショナル(IBL International)、RE59121)を使用して細胞培養培地で分析した後、ラット滑膜細胞を50ng/mlのLPSを用いて2時間または22時間インキュベートした。同様に、5−HT(10μM)と共にラット滑膜細胞をインキュベートし、5−HT2Bおよび5−HT2Cの遺伝子発現を測定した。
【0107】
図7Aは、5−HTの上述した炎症促進性の働きと一致して、5−HTを添加した場合のIL−6の放出の明らかな増加を示す。その後、部分的に選択的な5−HT2受容体拮抗剤を添加することによりIL−6の放出を低減させることができた。異なる濃度の5−HT2B(RS127445)および5−HT2C(SB242084)受容体拮抗剤をそれぞれ添加することにより、IL−6の放出は明らかに低減した。N−(2−クロロ−3,4−ジメトキシベンジリデンアミノ)グアニジンが含まれていた場合も、IL−6レベルの低下が観察された。これは、抗炎症作用が5−HT2Bおよび5−HT2C受容体への拮抗的結合により媒介されたことを示す。結論として、これらの結果は、5−HTがラット滑膜細胞において炎症反応を誘発することができること、および各受容体サブタイプ5−HT2Bおよび5−HT2Cに対し上述の拮抗作用を有する化合物が、IL−6の放出における変化として測定される炎症反応を軽減することを示している。図7Aは、同様に、10μMのN−(2−クロロ−3,4−ジメトキシベンジリデンアミノ)グアニジンの添加により、1μMの5−HTおよびLPSにより誘発されたIL−6反応が低減することを示している。これらの結果は、5−HTがN−(2−クロロ−3,4−ジメトキシベンジリデンアミノ)グアニジンにより相殺され得る炎症反応を誘発するという仮定を支持するものである。
【0108】
異なる複数の5−HT2受容体をさらに識別するため、選択した市販の5−HT2受容体作動薬を用いてラット滑膜細胞を刺激した。作動薬は、滑膜細胞に別個に与え、IL−6の放出を増強した。どの作動薬が、我々の化合物により相殺され得る反応を生じさせるかを調べるため、N−(2−クロロ−3,4−ジメトキシベンジリデンアミノ)グアニジンを細胞に同時に添加した。図7Bは、5−HT2B受容体作動薬BW723C86が、用量依存的にN−(2−クロロ−3,4−ジメトキシベンジリデンアミノ)グアニジンにより相殺されるIL−6の産生における反応を誘発することを明示している。同様に、5−HT2C受容体作動薬であるCP809101は、N−(2−クロロ−3,4−ジメトキシベンジリデンアミノ)グアニジンにより相殺される。受容体発現分析の結果との関連において、N−(2−クロロ−3,4−ジメトキシベンジリデンアミノ)グアニジンにより達成されるIL−6の放出の低減は、5−HT系により媒介され、また5−HT2Bおよび5−HT2C受容体が共に関与している可能性が高いと結論づけることができた。
【配列フリーテキスト】
【0109】

【特許請求の範囲】
【請求項1】
慢性関節リウマチの治療のための、N−(2−クロロ−3,4−ジメトキシベンジリデンアミノ)グアニジンまたはその医薬上許容される塩を含む医薬組成物。
【請求項2】
炎症の治療のための、5−HT2B受容体リガンドを含む医薬組成物であって、好ましくは、前記リガンドが5−HT2B受容体拮抗剤である、医薬組成物。
【請求項3】
前記炎症が関節の炎症、好ましくは、慢性関節リウマチである、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記リガンドがN−(2−クロロ−3,4−ジメトキシベンジリデンアミノ)グアニジンまたはその医薬上許容される塩である、請求項2または請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩を含む、請求項2または請求項3に記載の医薬組成物。
【化3】

前記式中、
1は、Cl、MeOまたはHであり、
2は、Cl、MeOまたはHであり、
3は、ClまたはMeOであり、
4は、Cl、HまたはNO2である。
但し、R1〜R3の少なくとも1つはClでなければならず、
またR1〜R3の少なくとも1つはMeOでなければならない。
【請求項6】
1がClである、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
2がMeOである、請求項5または請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
3がMeOである、請求項5〜7のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
4がHである、請求項5〜8のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
式II:
【化4】

の化合物またはその医薬上許容される塩を含む、請求項2または請求項3に記載の医薬組成物。
前記式II中、
1は、ClまたはMeO、好ましくはClであり、
2は、ClまたはMeO、好ましくはMeOであり、
4は、ClまたはH、好ましくはHである。
但し、R1およびR2の少なくとも1つはClでなければならない。
【請求項11】
前記5HT2B受容体リガンドが表1に明示した化合物またはその医薬上許容される塩である、請求項2または請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記炎症が、前記5−HT系により制御される炎症、一酸化窒素の産生に関連した炎症、皮膚、腹部、末梢若しくは中枢神経系、目若しくは涙腺、耳、鼻、口、肺、心臓、肝臓、膵臓、甲状腺、腎臓、関節若しくは血管の炎症、または感染症若しくは外傷に関連した炎症である、請求項2または4〜11のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
慢性関節リウマチの治療のためのN−(2−クロロ−3,4−ジメトキシベンジリデンアミノ)グアニジンまたはその医薬上許容される塩。
【請求項14】
痛みの治療のためのN−(2−クロロ−3,4−ジメトキシベンジリデンアミノ)グアニジンまたはその医薬上許容される塩。
【請求項15】
痛みの治療のための、N−(2−クロロ−3,4−ジメトキシベンジリデンアミノ)グアニジンまたはその医薬上許容される塩を含む医薬組成物。
【請求項16】
炎症治療用の薬剤の製造における、請求項2若しくは請求項3に記載のリガンドまたは請求項3〜10のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項17】
慢性関節リウマチまたは痛みの治療用の薬剤の製造における、N−(2−クロロ−3,4−ジメトキシベンジリデンアミノ)グアニジンまたはその医薬上許容される塩の使用。
【請求項18】
有効量の請求項2〜11のいずれか1項に記載の医薬組成物を患者に投与することを含む、炎症または痛みの治療法。
【請求項19】
有効量のN−(2−クロロ−3,4−ジメトキシベンジリデンアミノ)グアニジンまたはその医薬上許容される塩を患者に投与することを含む、慢性関節リウマチまたは痛みの治療法。
【請求項20】
抗炎症作用を有する被験化合物の同定方法であって、
(i)被験化合物を5−HT2B受容体と試験管内で接触させる工程と、
(ii)前記5−HT2B受容体に対する前記被験化合物の結合能を判定する工程とを含み、
iが1μM未満または好ましくは0.5μM以下の被験化合物を、抗炎症作用を有する化合物として同定する、同定方法。
【請求項21】
抗炎症作用を有する被験化合物の同定方法であって、
(i)被験化合物を5−HT2B受容体と試験管内で接触させる工程と、
(ii)前記被験化合物が前記5−HT2B受容体の拮抗剤であるかどうかを判定する工程とを含み、
前記5−HT2B受容体の拮抗剤が、抗炎症作用を有する化合物である、同定方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2013−500957(P2013−500957A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−522246(P2012−522246)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【国際出願番号】PCT/GB2010/001457
【国際公開番号】WO2011/012868
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(506360848)アナマル エービー (3)
【Fターム(参考)】