説明

炭化水素の合成

【課題】メタン及び他の炭化水素をより高級な炭化水素に転化するための効率的な方法を提供する。
【解決手段】小さい炭化水素から炭化水素を合成する方法であって、炭素−炭素のカップリングを容易にさせるために使用される金属−酸素触媒反応体を使用する炭化水素のハロゲン化、同時的なオリゴマー化及びハロゲン化水素の中和、そして生成物の回収の工程を包含する。空気又は酸素による処理でハロゲンが遊離され、触媒反応体が再生される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には、炭化水素のオリゴマー化に関し、詳しくは、触媒反応体を使用する炭化水素の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
科学者は、長い間、メタンや他のアルカンをより高度の炭化水素(軽量オレフィン及びガソリン範囲の物質も含めて)に転化するための効率的な方法を求めてきた。効率的な方法は、遙か遠方に位置した天然ガスをより容易に輸送可能な液体燃料や供給原料に転化することによる該天然ガスの利用の容易化や、高級アルカンからしばしば作られる最終生成物(エチレンやプロピレンを含めて)のために高価でない供給原料(メタンや他の低級アルカン)を使用することの可能化を含めて、多くの方法において価値を創り出すことができた。
【0003】
米国特許第6,486,368号、同6,472,572号、同6,465,699号、同6,465,696号及び同6,462,243号には、アルカンをオレフィン、エーテル及びアルコールに転化する方法が開示されている。開示された方法の多くは、アルカンをハロゲン化し、ハロゲン化生成物を金属酸化物上に通して生成物と金属ハロゲン化物を創生させ、生成物を転化させ、金属ハロゲン化物を酸素又は空気により再生して金属酸化物及びハロゲンを生じさせてプロセスに再循環させることを包含する。しかし、アルカンのオリゴマー化、即ち、出発物質炭化水素の実質的なカップリングにより高い炭素数の生成物を得ることは記載されていない。
【0004】
何人かの研究者が、メタンから高級炭化水素を製造するためにハロゲン化を使用することを検査した。代表的な特許には、米国特許第4,513,092号(チュー)、同4,769,504号(ノセチ及びテイラー)、同5,087,786号(ヌベル)及び同6,452,058号(シュバイター)がある。テイラーの特許に記載のように、“芳香族に富んだガソリン沸点範囲の炭化水素が低級アルカンから、特にメタンから作られる。この方法は二段階で実施される。第一段階では、アルカンが、少割合の塩化カリウム及び希土類元素塩化物と共に塩化銅のようなオキシ塩化水素化触媒上で酸素及び塩化水素と反応せしめられる。これは、水と塩素化アルカンを含有する中間体ガス状混合物を生じさせる。塩素化アルカンが水素形又は金属促進形の結晶質アルミノ珪酸塩触媒と接触されて高い割合の芳香族と少割合の軽量の炭化水素(C2〜C4)と共にガソリン沸点範囲の炭化水素を生じさせ、HClをリホームさせる。軽量炭化水素はオキシ塩化水素化触媒上で更に処理させるために再循環することができる”。C1供給原料から高級アルカンを製造するためのこれらの技術の全ては、炭化水素流れが水性ハロゲン化水素酸流れから分離され且つこのハロゲン化水素酸流れが再循環されなければならないという欠点を被る。
【0005】
米国特許第4,795,843号(トモツ他)には、シリカ多形体又はシリカライト触媒を使用して、ハロメタンをエチルベンゼン、トルエン及びキシレンを含めていくつかの生成物にオリゴマー化する方法が記載されている。この方法は、ハロゲン化水素の反応的中和を具体化していないし、また遅い反応速度を被るように思われる。
【0006】
炭化水素をハロゲン化するための方法において、チャン及びパーキンスは、米国特許第4,654,449号においてゼオライトの存在下に痕跡量のオリゴマー化生成物を認めた。
【0007】
米国特許第4,373,109号(オラー)は、ハロゲン化メチルも含めてヘテロ置換メタンを転化するにあたり、このようなメタンを二官能性酸−塩基触媒と200〜450℃、好ましくは250〜375℃の高められた温度で接触させて主に低級オレフィン、好ましくはエチレン及びプロピレンを生成させることによるヘテロ置換メタンの転化方法を開示している。好ましい触媒は、周期律表の第IV、V、VI及びVIIIの遷移金属、例えばタンタル、ニオブ、ジルコニウム、タングステン、チタン及びクロムのハロゲン化物、オキシハロゲン化物、酸化物、硫化物又はオキシ硫化物から誘導され、酸性の酸化物及び硫化物、例えばアルミナ、シリカ、ジルコニア又はシリカ−アルミナに担持されてなるものである。しかし、固体酸化物をベースとしたハロゲン回収の使用もアルコール又はエーテルの形成も開示されていない。これと関連する参考文献は、ジョージ A.オラーによる“イリドの化学 1。ヘテロ置換メタンのエチレン及び誘導炭化水素への二官能性酸−塩基接触転化。C1→C2転化のオニウム−イリド機構”である(J.Am.Chem.Soc.106、2143(1984))。
【0008】
米国特許第3,894,107号(バッター他)には、ゼオライト触媒を使用してハロゲン化炭化水素を縮合させる方法の改良が開示されている。しかし、固体酸化物をベースとしたハロゲン化水素の中和の検討は特になされていない。
【0009】
コウイチは、遷移金属臭化物が低分子量グリニヤール試薬とTHF又はジエチルエーテル中で反応するときにハロゲン化アルキルの還元的カップリングを観察した(日本化学会誌、第44巻、第3063−73頁(1971))。しかし、液相の化学は、溶媒に対する要件、腐食及び気相の化学よりも低い反応速度のような欠点を典型的に被る。更に、このような方法は、活性で還元性のグリニヤール試薬に必要なマグネシウム金属を生成させるのに要するエネルギーを消費する。これは、本明細書において説明する脱ハロゲン化水素的なカップリング及びハロゲン化水素の中和と同じタイプの方法ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第6,486,368号
【特許文献2】米国特許第6,472,572号
【特許文献3】米国特許第6,465,699号
【特許文献4】米国特許第6,465,696号
【特許文献5】米国特許第6,462,243号
【特許文献6】米国特許第4,513,092号
【特許文献7】米国特許第4,769,504号
【特許文献8】米国特許第5,087,786号
【特許文献9】米国特許第6,452,058号
【特許文献10】米国特許第4,795,843号
【特許文献11】米国特許第4,654,449号
【特許文献12】米国特許第4,373,109号
【特許文献13】米国特許第3,894,107号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】ジョージ A.オラーによる“イリドの化学 1。ヘテロ置換メタンのエチレン及び誘導炭化水素への二官能性酸−塩基接触転化。C1→C2転化のオニウム−イリド機構(J.Am.Chem.Soc.106、2143(1984))
【非特許文献2】日本化学会誌、第44巻、第3063−73頁(1971)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、メタン及び他の炭化水素をより高級な炭化水素に転化するための効率的な方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一具体例では、炭素数Cn(ここで、n≧2である。)を有する炭化水素が、炭素数Cm(ここで、m<nである。)を有する反応体炭化水素をハロゲン化剤と反応させることによってハロゲン化炭化水素を形成させ、このハロゲン化炭化水素を金属−酸素触媒反応体と接触させることによって炭素数Cn(ここで、n≧2である。)を有する生成物炭化水素を形成させ、この生成物炭化水素を回収し、該触媒反応体を再生させることによって製造される。しばしばであるが、炭化水素の混合物が得られるが、反応体炭化水素、ハロゲン化剤、金属−酸素触媒反応体及び反応条件を注意深く選定すれば、炭化水素生成物の形成に対して注文通りのアプローチが可能となる。メタン(例えば、天然ガス)並びに他の液状炭化水素、例えばC2〜C6炭化水素が好ましい供給原料として想定される。
【0014】
しかして、実験室での観察はメタンのオリゴマー化とエチレン、プロピレン、ブテン類及び芳香族の検出とに焦点を置いたけれども、本発明は、C10ほどに高い炭素数を有する供給原料の使用も意図するものである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、金属−酸素化合物、例えば混成金属酸化物、特に金属酸化物含浸ゼオライトが炭化水素のオリゴマー化を容易にさせるという発見を利用するものである。本発明の一観点によれば、炭素数Cn(ここで、n≧2である。)を有する炭化水素が、(i)炭素数Cm(ここで、m<nである。)を有する反応体炭化水素をハロゲン化剤と反応させることによってハロゲン化炭化水素を形成させ、(ii)ハロゲン化炭化水素を金属−酸素触媒反応体と接触させることによって炭素数Cn(ここで、n≧2である。)を有する生成物炭化水素を形成させ、(iii)生成物炭化水素を回収し、(iv)触媒反応体を再生させることによって形成される。
【0016】
更に一般的には、本法は、ハロゲン化、オリゴマー化、生成物の回収及び触媒反応体の再生の工程を伴う。ハロゲン化生成物は、金属−酸素触媒反応体との反応前か又は反応後のいずれかにおいて未反応の(ハロゲン化されなかった)炭化水素から分離することができる。合成中に形成されるどんなハロゲン化水素酸の中和も、炭素−炭素のカップリング及び(又は)触媒反応体の再生に付随して有利に達成される。好ましくは、本法は、一つに統合された方法であり、例えば、米国特許第6,525,230号(グロッソ)(その全ての内容を引用によってここに含める。)に記載のように、帯域反応器において実施される。従って、メタン又は他の炭化水素のハロゲン化が反応器の一つの帯域において起こり、遊離のハロゲン化水素酸が、ハロゲン化炭化水素の縮合を触媒する同じ二官能性材料内で吸着される縮合工程がこれに続く。炭化水素のオリゴマー化(炭素−炭素のカップリングと定義する。)が反応器のこの帯域において起こり、生成物炭化水素を生じる。これは、一般に、C2〜C20の範囲の炭素数を有し、アルカン、アルケン、アルキン及び(又は)芳香族を包含し得る。空気又は酸素による処理で次のハロゲン化工程に使用するためにハロゲンが遊離され、触媒反応体物質が次の縮合又はメタセシスのために再生される。再生及び回収が現場で行なわれるために、腐食性の水性ハロゲン化水素酸の再循環/回収の必要性は有利に回避される。
【0017】
高級炭化水素の合成が、炭化水素供給原料、即ち、1種以上の反応体炭化水素であってそれぞれが炭素数Cm(ここで、m<nである。Cnは目標とする炭化水素の炭素数である。)を有するものにより開始する。反応体炭化水素の例にはメタン、エタン、プロパンなどが包含されるが、これらに限定されない。天然ガス(主にメタンであるが、しばしば少量のC2及びこれよりも高級の化学種も含有する。)が好ましい。一般的には、出発物質の炭化水素は1〜10の炭素数を有する。炭化水素の混合物も使用することができる。
【0018】
反応体炭化水素がハロゲン化剤と反応せしめられる。その例としては、分子状ハロゲン(例えば、臭素、塩素など)、ハロゲン化アルキル(ジブロムメタン、ブロモホルム、四臭化物)、縮合ハロゲン化物、例えば金属臭化物が包含されるが、これらに限定されない。また、これらは、固体、液体として、担持され又は担持されていない物質として存在できる。
【0019】
分子状ハロゲンが好ましく、臭素(Br2)が最も好ましい。臭素は室温で液状であり、塩素や弗素よりも反応性ではなく、取扱いが容易である。また、臭素は有利な活性を有する。
【0020】
臭素から臭化物への還元電位はNHEに対して1.07Vであるが、酸素から水へのそれは1.23Vである。広範な金属臭化物が酸素で処理されると臭素を遊離することができる。同時に、アルカンの臭素化、これに続く臭化アルキルのカップリング及びHBrの中和は、温和な発熱に過ぎないが、完了させるのに十分に自然発生的である。水とカップリングされた炭化水素が唯一の液状生成物である。媒介物質としての塩素ではこれと同じではなく、HClが生成物流れの主要成分である。塩化水素の生成は分離、乾燥及び再循環を要求し、これは経費がかかる。要するに、金属臭化物が媒介するアルカン部分酸化熱化学が効率的で安価なプラント操作に全く適している。
【0021】
反応体炭化水素のハロゲン化は、一部は所望する生成物に並びに一部は供給物に依存して多くの方法で進めることができる。一具体例では、アルカンが、熱、光又は反応を駆動させる他の電磁放射線を使用して分子状ハロゲンによりハロゲン化される。熱が好ましい。全ての工程:ハロゲン化、オリゴマー化及び再生(以下に説明する。)をほぼ同じ温度で起こさせる場合にいくつかの利点がある。メタノールからオレフィン(MTO)及びメタノールからガソリン(MTG)へのプロセスに典型的な温度としては、375〜450℃の温度が使用される。臨界的でないとしても、この範囲が重要である。本明細書において説明する炭素−炭素のカップリングのためには、工程の全てがほぼ同じ温度で起こる理想的な温度範囲は450〜550℃である。別法として、個々の反応工程は、上記の範囲よりも高く又は低い温度で実施することができる。
【0022】
ハロゲン化は、好ましくは、その次の炭素−炭素の工程のために0.1〜200気圧で起こる。低い圧力は炭素−炭素のカップリング(即ち、小さい平均分子量の生成物)をそれほど好まないが、高い圧力は高いカップリングを好む。軽量オレフィンのためのプロセスは、メタノールからオレフィン(MTO)へのプロセスが行なわれる同じ60〜200psiaで行えそうであるが、別法としてこれよりも高い圧力を使用することができる。ガソリン範囲の分子の製造のためには、メタノールからガソリン(MTG)へのプロセスにおいて使用されるような350psiaほどの圧力を想定できる。実際問題として、大気圧よりも下の(例えば、2psia以下)又は100気圧よりも上の圧力での実施は魅力的でない。
【0023】
分子状ハロゲンがハロゲン化剤として使用されるときは、ハロゲン化は理想的には、容量/容量基準で1:10〜約100:1のアルカン:ハロゲンの比で実施される。1:10よりも小さいアルカン:ハロゲンの比(即ち、多いハロゲン)では、多ハロゲン化炭化水素が形成され、典型的には次の金属−酸素触媒反応体との接触で完全な酸化(即ち、CO2)に至るであろう。100:1よりも高いアルカン:ハロゲンの比では、ハロゲン化炭化水素への転化率は低く、多分1%以下であろう。このような転化率レベルで経済的なプロセスを想定することはほぼ不可能である(30〜60%の転化率が恐らく下限である。)。
【0024】
アルカン又は他の炭化水素供給原料に対するハロゲンの比率を変えることは、生成物の分布に著しい影響を及ぼす可能性がある。例えば、低級オレフィン又は燃料の製造で芳香族の形成を削減させるためにハロゲン化度を制御することを選択できよう。第二の例は、アルキンの形成を削減するために高度ハロゲン化メタンの形成を最小限にすることである。
【0025】
本発明の重要な特色は、炭素−炭素のカップリング、即ち炭化水素のオリゴマー化を容易にさせる金属−酸素触媒反応体を使用することである。用語“金属−酸素触媒反応体”とは、本明細書において使用するときは、金属と酸素の両方を含有する触媒反応体物質をいう。理論と結び付けるわけではないが、この物質がハロゲン化水素(例えば、HBr)の脱離と陽イオン的に活性化されたC−H及び多分C−C結合へのアルキリデンの装入とによって炭素−炭素のカップリングを接触させるものと思われる。また、触媒反応体は、ハロゲン遊離兼封鎖剤として作用し、所望ならば酸素化物を生成させる能力も含めて同調可能なカップリング生成物分布を得る可能性と同時に、ハロゲンを捕捉し回収し、水のみを副生物として発生させる可能性をも提供する。空気又は酸素により処理で触媒反応体は再生される。
【0026】
金属−酸素触媒反応体の例としては、ゼオライト、ドープされたゼオライト、金属酸化物、混成金属酸化物、金属酸化物含浸ゼオライト及び類似する物質並びにこれらの物質の2種以上の混合物が包含されるが、これらに限定されない。ドープ剤の例としては、カルシウムやマグネシウム、これらの酸化物及び(又は)水酸化物があるが、これらに限定されない。
【0027】
ゼオライトは、ゼオリスト・インターナショナル社(バレーフォージ、PA)を含めて種々の供給源から入手できる。特定の例は、ドープされたZSM−5及びドープされたモルデナイト(例えば、この場合に、カルシウム及び(又は)マグネシウムがドープ剤である。)である。
【0028】
また、生成物分布を変えるようにゼオライト又はゼオライト/金属酸化物複合体のゼオライト成分の性質を代えることが予期される。細孔寸法及び酸性が特に重要であると予期される。酸性は鎖長及び官能性を制御するために使用でき、また細孔寸法は鎖長及び官能性を制御することができる。特定の細孔寸法のゼオライトは、ベンゼン、トルエン、p−キシレン、o−キシレン、m−キシレン、混合キシレン、エチルベンゼン、スチレン、線状アルキルベンゼン、又は他の芳香族生成物を選択的に生成させることができる。細孔寸法の使用は芳香族生成物に限られない。
【0029】
本発明の一具体例では、金属酸化物/ゼオライト複合体は、ゼオライトを金属硝酸塩(例えば、硝酸カルシウム)又はその水和化学種と混合することによって製造される。
【0030】
オリゴマー化の後に、金属−酸素触媒反応体は、空気又は酸素により、典型的には200〜900℃の温度で処理することによって再生される。これにより金属ハロゲン化物種が金属−酸素種に転化される。
【0031】
供給物の組成、反応器内の供給物の位置、温度、圧力、金属酸化物の組成及び反応器での滞留時間を含めて多くの可変因子が生成物の分布を変更させる可能性がある。メタンからのアルカン、オレフィン及び芳香族の生成が検出され、確認された。また、予期されるのは、特定の分岐(モノメチル分岐アルコール)のアルカン及びオレフィン、アルコール、ジオール、エーテル、ハロゲン化炭化水素、芳香族(ベンゼン、スチレン、エチルベンゼン、トルエン、キシレン、線状アルキルベンゼンを含む。)、ガソリン、ジーゼル燃料及びジェット燃料のような燃料に好適な炭化水素を生成させる能力である。
【0032】
供給物の組成の制御は、生成物の分布を制御させることができる。第一に、ハロゲン化で生じたハロゲン化水素は、炭化水素生成物を生じさせる同じ金属−酸素化合物で又は別個の反応器における別の金属−酸素化合物で中和する(水又はアルコールを形成する)ことができる。ハロゲン化水素の中和の位置を変えることは、官能性、鎖長及び分岐も含めて生成物の分布を変える可能性がある。例えば、同時的な中和及び生成物の形成は、アルコールの生成を進めることが予期され、これは更なる反応、例えばカップリング又は脱水を受け又は受けないかも知れない。第二に、供給物への水の添加は生成物の分布を変えることができる。特に、水の添加はアルコール生成物を助成しよう。また、水の添加は、分岐及び鎖長の度合及びタイプを制御することができる。第三に、水素の添加は生成物の分布を変える可能性がある。水素は、他の官能性を犠牲にしてアルカンを増加させ、あるものは燃料の製造には特に有用である。また、水素は、コーキングを削減させ、鎖長及び分岐を制御するのを助成する。
【0033】
また、炭素−炭素のオリゴマー化が多くの経路によって進行させ得ることが認められる。単一の炭化水素供給原料でも1種よりも多い生成物を生じさせることができる。他方、本発明の一具体例では、一つの異性体を他の異性体よりも主に生成させために、制御されたハロゲン化が使用される(例えば、1−ブテン又は2−ブテンの選択的形成)。混合供給原料、例えば粗製天然ガスも、多ハロゲン化炭化水素(例えば、ハロゲン化エチル、ジハロエタン、ハロゲン化メチル、ジハロゲン化メチル、ハロゲン化プロピル、ジハロゲン化プロピルなど)のオリゴマー化を生じさせることができる。事実、本発明の一具体例においては、ハロゲン化アルキルが所望の分岐状生成物を創生するように意図的に導入される。一例は、ハロゲン化メチル(メタンから)とハロゲン化エチル又はこれよりも高級のハロゲン化アルキルとのオリゴマー化により選択的にメチル、エチル、プロピル、イソプロピル又はt−ブチル(又は他の)分岐を生成させることであろう。他の例は、ハロゲン化エチル、ハロゲン化メチル及びジハロメタンからのスチレンの合成である。
【0034】
本発明の一具体例においては、ハロゲン化炭化水素と金属−酸素触媒反応体との反応は流動床で実施される。別法として、固定床が使用される。異なったハロゲン化アルキルを反応器の異なった位置で導入することができる。一例は、ハロゲン化メチルを反応器の一つの位置に導入してベンゼンを生成させ、これにハロゲン化エチルを添加してスチレン又はエチルベンゼンを生成させることである。他の例は、ハロゲン化メチルを反応器の一つの位置に導入してベンゼンを生成させ、これにハロゲン化アルキルを添加して線状アルキルベンゼンを生成させることである。
【0035】
生成物の分離は、任意の好適な方法によって達成される。その例としては、蒸留、吸着及び抽出があるが、これらに限らない。生成物は、水蒸気、二酸化炭素又は他の手段によるストリッピングによって固体から回収することができる。
【実施例】
【0036】
以下は本発明の実施例である。
【0037】
例1
金属酸化物/ゼオライト複合体MZ1を下記のようにして製造した。ZSM−5−型ゼオライト(ゼオリストCBV8014、Si/Al比=80、10g、170ミリモルのSiO2)とCaNO39水塩(9g、=34ミリモルのCa)の混合物を調製し、初期湿潤物に水を添加した。CaNO3を溶解させ、撹拌した後に、スラリーを乾燥し、空気中で115℃(一晩中)及び500℃(一晩中)の順序でそれぞれ仮焼した。
【0038】
例2
メタンを15psiaで1℃の臭素中に5cc/分の速度で吹き込んだ。生じた臭素とメタンの流れ(モル数で1:10)を小さい直径の臭素化反応器に450℃で通し(1000h-1)、CH4-xBrx(ここに、x=0、1、2又は3)の混合物を5gの金属酸化物/ゼオライト複合体MZ1を入れた反応器(400℃)に通した。第二反応器から出る流れは臭素化物質を含有しなかった。臭素化反応器において消費されたメタンを基準にして、10%のエチレン、31%のプロピレン、3%のプロパン及び21%のブタン/ブテンが検出された。全部で65%。また、微量のC6化学種も検出された。5時間(その間に出る流れは上記の分布から変化しなかった。)反応させた後、メタンの流れを止め、反応器をヘリウムにより5cc/分で10分間パージした。Heでパージした後、第二反応器へのO2(2cc/分)の流入を525℃で開始させて、部分的に使用尽くされた複合体の金属臭化物から金属酸化物を再生させた。最初は、水とCO2のみが生成物として観察されたが、突然に流れの含有物はBr2と未反応のO2に変化した。1時間後に、O2パージを止め、反応器を再度ヘリウムでパージした。再生中に使用した苛性アルカリトラップをCO3-2について試験し、1.0ミリモルが見出されたが、これは転化された炭素の24%を表わしている。炭素の残部は高沸点の揮発性芳香族(大部分がトルエン、キシレン及びメシチレン)であることが分かった。上記したようなブロムメタン縮合の第二サイクルを400℃で開始したが、生成物の分布は第一の実験と同じであることが分かった。更に3回の縮合/中和/再生のサイクルは、高級炭化水素の同じ流出をもたらした。
【0039】
例3
ドープされたモルデナイト(ゼオリストCBV21A、CaとMgの両者をドープした。)(5g)を例1に従って製造し、例2において記載したのと実質的に類似する炭化水素合成において触媒反応体として使用した。出てきた生成物は、30%のエチレン、5%のエタン、10%のプロピレン、3%のプロパン、5%のブタン/ブテンであった。多数回の実験及び触媒反応体の再生は再現性を達成した。
【0040】
本発明を種々の実施例及び好ましい具体例を参照して説明したが、これらに限定されない。他の変形及び置換が本発明の範囲から離れることなく可能である。例えば、ここに記載したオリゴマー化は、ハロゲン化水素(例えば、HBr)又は分子状ハロゲンを使用するオレフィン供給原料のハロゲン化、ハロゲン化水素又は分子状ハロゲンを使用するアセチレン(アルキン)のハロゲン化、ハロゲン化水素又は分子状ハロゲンを使用するアルコール又はエーテルのハロゲン化、分子状ハロゲンとハロゲン化を制御する触媒とを使用するアルカンのハロゲン化を包含することが意図される。特に、該触媒は、ハロゲン化度(分子当たりのハロゲンの数)及びハロゲン化の位置(例えば、長鎖アルカンにつての末端対内部のハロゲン化)を制御することができる。他の変形も同様に可能である。本発明は、請求の範囲及びその均等な範囲によってのみ制限される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数Cn(ここで、n≧2である。)を有する炭化水素を製造するにあたり、
炭素数Cm(ここで、m<nである。)を有する反応体炭化水素をハロゲン化剤と反応させることによってハロゲン化炭化水素を形成させ、
ハロゲン化炭化水素を金属−酸素触媒反応体と接触させることによって炭素数Cn(ここで、n≧2である。)を有する生成物炭化水素を形成させ、
生成物炭化水素を回収し、
触媒反応体を再生させる
ことを含む、該炭化水素の製造方法。
【請求項2】
反応体炭化水素がメタンからなる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
金属−酸素触媒反応体がゼオライト、ドープされたゼオライト、金属酸化物、混成金属酸化物、金属酸化物含浸ゼオライト及びこれらの2種以上の混合物よりなる群から選ばれる請求項1に記載の方法。
【請求項4】
触媒反応体が空気又は酸素により再生される請求項1に記載の方法。
【請求項5】
生成物炭化水素の合成が帯域反応器において実施される請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ハロゲン化剤が分子状ハロゲンからなる請求項1に記載の方法。
【請求項7】
分子状ハロゲンが臭素からなる請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ハロゲン化剤がハロゲン化アルキルからなる請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ハロゲン化剤が固体ハロゲン化物からなる請求項1に記載の方法。
【請求項10】
ハロゲン化剤がハロゲン化水素からなる請求項1に記載の方法。
【請求項11】
炭素数Cn(ここで、n≧2である。)を有する炭化水素を製造するにあたり、
炭素数Cm(ここで、m<nである。)を有する反応体炭化水素を臭素化剤と反応させることによって臭素化炭化水素を形成させ、
臭素化炭化水素を金属−酸素触媒反応体と接触させることによって炭素数Cn(ここで、n≧2である。)を有する生成物炭化水素を形成させ、
生成物炭化水素を回収し、
触媒反応体を再生させる
ことを含む、該炭化水素の製造方法。
【請求項12】
反応体炭化水素がメタンからなる請求項11に記載の方法。
【請求項13】
金属−酸素触媒反応体がゼオライト、ドープされたゼオライト、金属酸化物、混成金属酸化物、金属酸化物含浸ゼオライト及びこれらの2種以上の混合物よりなる群から選ばれる請求項11に記載の方法。
【請求項14】
触媒反応体が空気又は酸素により再生される請求項11に記載の方法。
【請求項15】
生成物炭化水素の合成が帯域反応器において実施される請求項11に記載の方法。
【請求項16】
ハロゲン化剤が臭素、臭化アルキル、固体臭化物及び臭化水素よりなる群から選ばれる請求項11に記載の方法。
【請求項17】
炭素数Cn(ここで、n≧2である。)を有する炭化水素を製造するにあたり、
(i)炭素数Cm(ここで、m<nである。)を有する反応体アルカンを分子状ハロゲンと反応させることによってハロゲン化アルキルを形成させ、
(ii)ハロゲン化アルキルを金属−酸素触媒反応体と接触させることによって炭素数Cn(ここで、n≧2である。)を有する生成物炭化水素を形成させ、
(iii)生成物炭化水素を回収し、
(iv)触媒反応体を再生させる
ことを含む、該炭化水素の製造方法。
【請求項18】
反応体炭化水素がメタンからなる請求項17に記載の方法。
【請求項19】
分子状ハロゲンが臭素からなる請求項17に記載の方法。
【請求項20】
工程(i)が容量で1:10〜1:100のアルカン対ハロゲンの比で実施される請求項17に記載の方法。
【請求項21】
工程(i)が20〜900℃の温度及び0.1〜200気圧の圧力下に実施される請求項19に記載の方法。
【請求項22】
金属−酸素触媒反応体がゼオライト、ドープされたゼオライト、金属酸化物、混成金属酸化物、金属酸化物含浸ゼオライト及びこれらの2種以上の混合物よりなる群から選ばれる請求項17に記載の方法。
【請求項23】
触媒反応体が空気又は酸素により再生される請求項17に記載の方法。
【請求項24】
工程(i)〜(iv)が帯域反応器において実施される請求項17に記載の方法。
【請求項25】
炭素数Cn(ここで、n≧2である。)を有する炭化水素を製造するにあたり、
(i)反応体メタンを分子状臭素と20〜900℃の温度で、0.1〜200気圧の圧力下に、容量で1:10〜1:100のメタン対臭素の比で反応させることによって臭化アルキルを形成させ、
(ii)臭化アルキルをドープされたゼオライトと接触させることによって炭素数Cn(ここで、n≧2である。)を有する生成物炭化水素を形成させ、
(iii)生成物炭化水素を回収し、
(iv)ドープされたゼオライトを空気又は酸素により再生させる
ことを含み、工程(i)〜(iv)が帯域反応器において実施される、該炭化水素の製造方法。

【公開番号】特開2012−92134(P2012−92134A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−284062(P2011−284062)
【出願日】平成23年12月26日(2011.12.26)
【分割の表示】特願2006−520386(P2006−520386)の分割
【原出願日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(506015362)ジーアールティー インコーポレイテッド (6)
【出願人】(592130699)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【Fターム(参考)】