説明

炭化水素の直接アミノ化法

本発明は、炭化水素をアンモニアでアミノ化する方法であって、水素と反応する添加剤の存在下でアミノ化を行う工程を含み、且つ添加剤として、少なくとも1種の有機化合物、N2O、ヒドロキシルアミン、ヒドラジン及び/又は一酸化炭素を使用することを特徴とするアミノ化方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、好ましくはアミノ化に触媒作用を及ぼす触媒の存在下、炭化水素、更に好ましくは芳香族炭化水素、特にベンゼンをアンモニアと反応させることによって、炭化水素を好ましくは連続的にアミノ化し、好ましくは直接的にアミノ化する方法であって、且つアミノ化は、水素と反応する添加剤の存在下で行われ、且つ添加剤として、少なくとも1種の有機化合物、N2O、ヒドロキシルアミン、ヒドラジン及び/又は一酸化炭素を使用することを特徴とする方法に関する。本願の明細書において、“添加剤”なる表現は、水素と反応する1種以上の添加剤を意味すると理解すべきである。“水素と反応する添加剤”なる表現は、以下、有機化合物及び一酸化炭素の両方を意味すると理解すべきである。添加剤は、ニトロベンゼンであるのが好ましい。
【0002】
特に、本発明は、触媒作用が及ぼされるのが好ましい、特に以下の反応:
【0003】
【化1】

により、好ましくは、芳香族炭化水素、更に好ましくはベンゼンをアンモニアと反応させることによって炭化水素をアミノ化する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
アミン、特に芳香族アミン、例えばアニリンの商業的な調製法は、多段階反応で行われるのが一般的である。アニリンは、例えば、ベンゼンをベンゼン誘導体、例えばニトロベンゼン、クロロベンゼン又はフェノールに転化し、次に、かかる誘導体をアニリンに転化することによって調製されるのが一般的である。
【0005】
特に芳香族アミンを調製するかかる間接的な方法よりも更に有利なのは、対応の炭化水素からアミンを直接調製することが可能な方法である。極めて精密で簡潔な経路は、Wibautによって1917年に最初に記載された、ベンゼンの、不均一な触媒作用が及ぼされる直接アミノ化法である(Berichte, 50, 541-546頁)。直接アミノ化は平衡制限されるので、水素を反応から選択的に除去することによって平衡制限をシフトし、ベンゼンの転化率を上昇することが可能である幾つかの系が記載されている。殆どの方法は、水素によって還元される金属酸化物を使用することを基礎とし、これにより、反応系から水素が除去されるので、平衡をシフトする。
【0006】
CN1555921Aは、液相中におけるベンゼンのオキシドアミノ化について開示し、過酸化水素が、“O”供与体としての役割を果たす。しかしながら、H22の使用は、コストに起因する汎用化学製品及び次の反応に起因する低い選択性の場合に、限られた程度だけ好適である。
【0007】
CA553988は、ベンゼンからアニリンを製造する方法であって、ベンゼン、アンモニア及び気体の酸素を、約1000℃の温度条件下で白金触媒にて反応させる製造方法を開示している。好適な白金含有触媒は、白金のみ、白金と所定の特定金属の組み合わせ、及び白金と所定の特定金属酸化物の組み合わせである。更に、CA553988は、アニリンの製造方法であって、気相のベンゼンを、100〜1000℃の温度条件下、還元性金属酸化物の存在下に、気体の酸素を加えることなくアンモニアと反応させる製造方法を開示している。好適な還元性金属酸化物は、鉄、ニッケル、コバルト、スズ、アンチモン、ビスマス及び銅の酸化物である。
【0008】
US3919155は、芳香族炭化水素とアンモニアの直接アミノ化に関し、使用される触媒は、ニッケル/酸化ニッケルであり、更に触媒は、ジルコニウム、ストロンチウム、バリウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、鉄、チタン、アルミニウム、ケイ素、セリウム、トリウム、ウラン及びアルカリ金属の酸化物及び炭酸塩を含んでいても良い。
【0009】
US3929889も同様に、ニッケル/酸化ニッケル触媒における芳香族炭化水素とアンモニアの直接アミノ化に関し、使用される触媒は、単体のニッケルに部分的に還元され、次に、再酸化されて、0.001:1〜10:1のニッケル:酸化ニッケル比を有する触媒を得る。
【0010】
US4001260は、芳香族炭化水素をアンモニアと直接アミノ化する方法を開示し、ニッケル/酸化ニッケル触媒をここでも使用し、これは、二酸化ジルコニウムに施されて、アミノ化反応で使用する前にアンモニアで還元された。
【0011】
US4031106は、この場合でも、ランタノイド系及び希土類金属から選択される酸化物を更に含む二酸化ジルコニウム担体におけるニッケル/酸化ニッケル触媒での芳香族炭化水素とアンモニアの直接アミノ化に関する。
【0012】
DE19634110は、10〜500バール及び50〜900℃の条件下での非酸化的アミノ化を記載し、反応は、軽白金族の金属及び重白金族の金属で変性された酸性の不均一系触媒の存在下で行われる。
【0013】
WO00/09473は、少なくとも1種の酸化バナジウムを含む触媒での芳香族炭化水素の直接アミノ化によるアミンの製造方法を記載している。
【0014】
WO99/10311は、<500℃の温度及び<10バールの圧力の条件下で芳香族炭化水素を直接的にアミノ化する方法に関する。使用される触媒は、遷移金属、ランタニド系及びアクチニド系、好ましくはCu、Pt、V、Rh及びPdから選択される少なくとも1種の金属を含む触媒である。選択率及び/又は転化率を上昇させるために、酸化剤の存在下で直接アミノ化を行うのが好ましい。
【0015】
WO00/69804は、触媒として、貴金属及び還元性金属酸化物を含む錯体を使用する芳香族炭化水素の直接アミノ化方法に関する。パラジウム及びニッケルの酸化物又はパラジウム及びコバルトの酸化物を含む触媒が特に好ましい。
【0016】
また、間接合成法についても、CN1424304、CN1458140及びWO2004/052833に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】CN1555921A
【特許文献2】CA553988
【特許文献3】US3919155
【特許文献4】US3929889
【特許文献5】US4001260
【特許文献6】US4031106
【特許文献7】DE19634110
【特許文献8】WO00/09473
【特許文献9】WO99/10311
【特許文献10】WO00/69804
【特許文献11】CN1424304
【特許文献12】CN1458140
【特許文献13】WO2004/052833
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】Berichte, 50, 541-546頁
【発明の概要】
【0019】
上述した方法の殆どは、WO00/69804の要約において詳述されているような直接アミノ化に関する機構から出発する。これによると、最初に、芳香族炭化水素及びアンモニアから所望のアミン化合物を(貴)金属−触媒作用下で調製し、次の工程で、最初の工程で形成される水素を還元性金属酸化物にて“除去”する。同じ機構の研究が、酸化バナジウムから得られる酸素で水素を除去するWO00/09473(1頁、30〜33行目)における方法の基礎を形成している。また、同じ機構が、第2欄、16〜44行目における備考及びダイアグラムから明らかなように、US4001260の基礎である。
【0020】
従って、本発明の目的は、炭化水素をアミノ化する特に経済的に実現性がある方法、特に、ベンゼンをアンモニアと反応させる方法であって、極めて高い選択率及び/又は極めて高い転化率にて好ましい連続法が可能である方法を開発することにある。
【0021】
上記の目的は、冒頭に詳述された方法によって達成される。
【0022】
驚くべきことに、水素と反応する有機化学物質、及び/又は一酸化炭素の、好ましくは給送材料への添加により、同一の選択率にて価値ある生成物への転化率を増大させることが見出された。
【0023】
例えば、ベンゼンとアンモニアとの直接アミノ化(1頁の反応式1による)により、アンモニアを形成するものの、1モルの水素が、同時に形成される。更に、水素は、アンモニアの分解の結果、反応容器中に存在していても良い。従来技術の技術的な教示によると、アンモニアは、例えばニッケル−酸化ニッケル系によって水素と窒素を得るために、相当に分解される。
【0024】
水素ステム(hydrogen stem)がどの供給源から得られるかに関係なく、直接アミノ化反応の転化率を制限する。反応式1で示される反応が平衡反応であることから、生成物の濃度又は生成物の分圧の積と反応材料の濃度又は分圧との商は、一定である;physial chemistry textbooks: Peter Atkins; Julio de Paula, Atkin's Physical Chemistry, 第8版, Oxford: Oxford University Press, 2006, ISBN 0-19-870072-5又はGerd Wedler, Lehrbuch der physikalischen Chemie [Textbook of physical chemistry], 第5版, fully revised and updated edition, Weinheim: Wiley-VCH, 2004, ISBN 3-527-31066-5を参照されたい。従って、高濃度の水素により、ベンゼンのアニリンへの低い転化率をもたらす。結果として、特に、例えばアンモニアの分解から更に反応系に入る水素により、反応の平衡に影響を及ぼし、そしてこれを反応材料側に強制的に戻す、すなわち、アニリンをベンゼン及びアンモニア反応材料に分離することが可能である。
【0025】
従って、反応系における水素濃度を最小限にするのが有効である。
【0026】
先願の従来技術に引用される酸素(WO99/10311)又は過酸化水素(CN1555921)の計量添加に代えて、1種以上の有機化学物質及び/又は一酸化炭素を添加剤として選択することによって、水素濃度が最小限に抑制される場合に特に有効である。特に、系に含まれる水素との反応時に、更に直接アミノ化反応で形成される同一反応生成物を同時に形成する有機化学物質を特に選択することが有利である。
【0027】
本発明の方法により、直接アミノ化反応とアンモニア分解の両方から水素を反応系から除去し、そして反応材料側への平衡の強制的な戻りを低減又は抑制する、すなわち、平衡における水素含有量の低減により、直接アミノ化反応の転化率をいっそう増大させる。反応混合物中における水素濃度の低減は、価値ある生成物への転化に対して直接的な影響を有する。なぜなら、直接アミノ化は、平衡反応だからである。
【0028】
本発明の特に好ましい実施形態において、水素は、供給材料での添加剤の水素化による追加の価値ある生成物の生成によって生産的に利用される。水素と有機化学添加剤との反応であり、且つ直接アミノ化における炭化水素と同一の生成物を形成するために水素と反応する添加剤である反応により、共製造において無関係の生成物を導入しない、すなわち、これは、水素の化学的除去物質を直接アミノ化生成物から除去するのが省略されるので、反応生成物の後処理に関する複雑さを大幅に少なくすることを意味する。かかる極めてあざやかな解決法は、平衡をシフトさせず、更には、価値ある所望の生成物を調製する場合に望ましくない副生成物を利用する。
【0029】
本発明の方法における他の好ましい実施形態において、有機化学添加剤は、水素と反応して、1種の反応材料を得る。
【0030】
有機化学添加剤を計量添加するのは、従来技術に対して有効である。上述した殆どの文献において、金属酸化物を触媒又はカタロリアクタント(cataloreactant)として使用する。かかる触媒又はカタロリアクタントによる酸素のみにより、系から水素を除去する場合、これにより、触媒又はカタロリアクタントが迅速に失活するという課題を暗に内含する。なぜなら、これにより存在する酸素は、直接アミノ化反応で形成される水素と、アンモニアの分離で放出される水素の両方による還元で消耗されるからである。その場合、(0)の酸化状態の更なる金属含有量が、還元された触媒又はカタロリアクタントに更に存在し、これにより、今までの経験から、アンモニアの分解を更にもっと高め、触媒又はカタロリアクタントの失活を更にもっと促進し、そして触媒又はカタロリアクタントの早期の再生を必然的に伴い、対応して、本発明の方法の経済的な実現性に影響を与える。また、酸素の添加は、有機化学物質の使用より劣っている。なぜなら、これにより、触媒活性金属表面において、反応系における有機成分のCO2への相当な程度の完全な燃焼をもたらすことが可能であり、この場合でも、本発明の方法の経済的な実現性に対して相当な影響を与えるからである。比較的低い選択率に起因して、過酸化水素の添加は、本発明の方法と比較して不利な立場にある。
【0031】
全ての上記の課題は、本発明の方法によって、圧力又は温度の重大な変更を必要とすることなく解決され得る。
【0032】
本発明により使用される添加剤は、水素と反応可能である。かかる添加剤は、水素と反応可能な有機化学物質であるのが好ましい。添加剤は、水素との反応において、炭化水素の直接アミノ化でも形成される同一反応生成物を形成する有機化学物質であるのが更に好ましい。
【0033】
ベンゼンをアンモニアで直接アミノ化して、アニリンを形成するのが特に好ましい;特に好ましい有機化学添加剤も同様に、水素との反応においてアニリンを形成する;有機化学添加剤は、ニトロベンゼンであるのが更に好ましい。
【0034】
本発明の他の好ましい実施形態において、炭化水素の直接アミノ化、好ましくは、アニリンを形成するためのベンゼンとアンモニアの直接アミノ化で使用される有機化学添加剤は、N2O、ヒドロキシルアミン及び/又はヒドラジンである。
【0035】
ニトロベンゼンが用いられ、そして水素と反応するる場合に価値ある生成物を形成する利点は、ヒドロキシルアミン又はヒドラジンを水素スカベンジャーとして使用する場合に生じない。しかしながら、他方で、ヒドロキシルアミン又はヒドラジンを水素スカベンジャーとして使用する場合、水素との反応により、アンモニア、及びこれによる反応材料の1種を放出し、これについても同様に好ましい。なぜなら、アニリンの形成は、アンモニア過剰を増大させた場合に平衡において熱力学的に促進されるからである;更に、平衡は、水素含有量が低下する場合にアニリンに対してシフトされる。
【0036】
水素と反応する有機化学添加剤は、限定される必要はないものの、それ自体公知の酸化剤であっても良い。その代わりに、有用な有機化学添加剤は、還元性官能基(reducible functionalities)を有する全ての分子、特に、多重結合を含む分子を挙げられる。かかる分子、又はその、水素との反応による生成物は、炭化水素との直接反応に入らないのが好ましい。なぜなら、これにより、直接アミノ化の選択性を減ずるからである。
【0037】
ニトロベンゼンに加えて、本発明の方法での使用に有用な化合物は、例えば、一酸化炭素、カルボニル化合物、ニトリル、イミン、アミド、ニトロ化合物、ニトロソ化合物、オレフィン、アルキン、有機過酸化物、有機酸、有機酸誘導体、ヒドラジン誘導体、ヒドロキシルアミン、キノン、芳香族化合物及び/又はsp2混成炭素原子を有する分子であり、更には、還元性官能基を有する全ての他の分子、特に、多重結合を含む分子、又はその組み合わせである。
【0038】
上述した物質群から選択される本発明の有機化学添加剤の特定例(例えば、本発明の範囲をかかる分子に限定しない)としては、ニトロベンゼン、一酸化炭素、シアン化水素酸、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、ベンゾニトリル、ベンズアルデヒドとアンモニア又は第1級アミンとの反応により得られるイミン、脂肪族アルデヒドとアンモニア又は第1級アミンとの反応により得られるイミン、ホルムアルデヒド、アセトアミド、ベンズアミド、ニトロソベンゼン、エテン、プロペン、1−ブテン、2−ブテン、イソブテン、n−ペンテン及びペンテン異性体、シクロペンテン、n−ヘキセン、ヘキセン異性体、シクロヘキセン、n−ヘプテン、ヘプテン異性体、シクロヘプテン、n−オクテン、オクタジエン、シクロオクテン、シクロオクタジエン、アセチレン、プロピン、ブチン、フェニルアセチレン、m−クロロ過安息香酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、上述したカルボン酸のエステル又は無水物、ヒドラジン、フェニルヒドラジン、脂肪族又は芳香族ケトンのヒドラジン、ヒドロキシルアミン、アルキルヒドロキシルアミン及び/又はアリールヒドロキシルアミン(又はこれらの物質の組み合わせ)を挙げられる。
【0039】
本発明の場合、特に、還元性の窒素化合物、例えばニトリル、ニトロ化合物、ニトロソ化合物及びアミド、更には、アセチレン及び短鎖アルキン、好ましくは、3〜6個の炭素原子を有する短鎖アルキン、更には、短鎖オレフィン、好ましくは2〜6個の炭素原子を有する短鎖オレフィン、又はこれらの組み合わせを使用するのが特に好ましい。
【0040】
極めて好ましくは、ニトロベンゼン、ニトロソベンゼン、一酸化炭素、アセチレン、エテン、プロペン、ヒドラジン、フェニルヒドラジン、ヒドロキシルアミン、フェニルヒドロキシルアミン、アセトニトリル、ベンゾニトリル又はこれらの組み合わせが、本発明の方法で用いられる有機化学添加剤として選択されても良い。
【0041】
・水素と反応する添加剤は、方法において任意の箇所で計量導入されても良い。例えば、炭化水素、好ましくはベンゼン、アミン、好ましくはアンモニア、そして有機化学添加剤、好ましくはニトロベンゼンを反応器に別個に給送することが可能である。
【0042】
・炭化水素、好ましくはベンゼン、そして有機化学添加剤、好ましくはニトロベンゼンを共通の給送配管において、アミン、好ましくはアンモニアと別個に、反応器に組み合わせ給送し、
・アミン、好ましくはアンモニア、そして有機化学添加剤、好ましくはニトロベンゼンを、共通の給送配管において、炭化水素、好ましくはベンゼンと別個に、反応器に組み合わせ給送し、
・個々の成分を、反応器の異なる箇所から給送する(例えば、3つの成分の内、1つ以上を反応器の入口、入口の真上又は触媒床に給送する)。
【0043】
水素と反応する添加剤を、炭化水素、好ましくはベンゼンと一緒に、反応器の入口から計量添加するのが好ましい。ニトロベンゼン/ベンゼンの混合物を共通の給送配管において反応器の入口から、そしてアンモニアを別の給送配管において反応器の入口から、それぞれ計量添加するのが極めて好ましい。同様に、当初は混合器又は蒸発器において、ニトロベンゼン/ベンゼンの混合物の共通の給送配管における計量添加と、アンモニアの別の給送配管からの計量導入と、を組み合わせて、均一な混合物を触媒床に給送するのが極めて好ましい。
【0044】
炭化水素/有機化学添加剤のモル比は、極めて広範囲内にて選択されても良い。なぜなら、僅かな添加であっても、効果を有し、比較的高い添加であっても、有害ではないからである。従って、有機化学添加剤に対する炭化水素のモル比は、10000:1〜1:1000の範囲内にて変更され得る。
【0045】
しかしながら、比較的少量の水素スカベンジャー、例えば、使用される炭化水素及び水素と反応する添加剤の合計質量に対して、0.001〜50質量%の量で添加するのが有効である。
【0046】
従って、水素と反応する添加剤の質量換算による割合は、使用される炭化水素、好ましくはベンゼン、そして添加剤、好ましくはニトロベンゼンの合計質量に対して、0.001〜50質量%の範囲であるのが好ましく、特に0.1〜15質量%の範囲であり、最も好ましくは0.5〜3質量%の範囲であり、且つベンゼンとニトロベンゼンの混合物は、ベンゼンの直接アミノ化方法で給送される芳香族化合物として使用されるのが好ましい。
【0047】
ヒドロキシルアミン又はヒドラジンを水素スカベンジャーとして使用する場合、ニトロベンゼンの場合の方法と同様に進行することも可能である。また、給送されるベンゼンに対する、質量換算による上述した好ましい割合は、かかる物質に対しても優先的に適用される。
【0048】
全ての残りの反応条件は、従来技術に従って選択されても良い。300〜500℃の範囲の温度条件下で稼働するのが好ましく、更に好ましくは350〜400℃の範囲である。反応圧力は、通常、1〜1000バールの範囲であり、好ましくは2〜300バールの範囲であり、更に好ましくは2〜150バールの範囲である。
【0049】
従って、本発明の方法に関する他の利点は、有機化学添加剤(ヒドロキシルアミン、N2O、ヒドラジン及び一酸化炭素を含む)を使用しないで稼働する場合より、直接アミノ化における反応条件に関する変更を必要としない点にある。
【0050】
使用される触媒は、炭化水素の直接アミノ化で公知の触媒、特に、アニリンを形成するためのベンゼンとアンモニアの直接アミノ化で公知の触媒であっても良い。かかる触媒は、特許文献において多種多様に記載され、そして一般的に知られている。有用な触媒としては、例えば、通常の金属触媒、例えばニッケル、鉄、コバルト、銅、貴金属又は上述の金属の合金を基礎とする触媒を挙げられる。有用な貴金属(NM)は、全ての貴金属、例えばRu、Rh、Pd、Ag、Ir、Pt及びAuを含んでいても良く、且つ貴金属のRu及びRhは、単独で使用されず、むしろ、他の遷移金属、例えばCo、Cu、Fe及びニッケル又はこれらの混合物との合金で使用されるのが好ましい。かかる合金は、他の貴金属を使用する場合に好ましく使用され;例えば、担持されたNiCuNM;CoCuNM;NiCoCuNM、NiMoNM、NiCrNM、NiReNM、CoMoNM、CoCrNM、CoReNM、FeCuNM、FeCoCuNM、FeMoNM、FeReNMの合金に興味があり、且つNMは、貴金属であり、Ag及び/又はAuであるのが特に好ましい。
【0051】
触媒は、一般に、通常の形態、例えば粉末又は固定床で使用可能な系として使用されても良く(例、押出物、球体、タブレット、環)、その場合、触媒活性成分は、適宜、担体材料に存在していても良い。有用な担体材料としては、例えば、無機酸化物、例えばZrO2、SiO2、Al23、TiO2、B23、ThO2、CeO2、Y23及びこれらの酸化物の混合物、TiO2、ZrO2、Al23及びSiO2が好ましく、ZrO2が更に好ましい。ZrO2は、純粋なZrO2又は通常のHf−含有ZrO2を意味すると理解される。
【0052】
触媒は、炭化水素の直接アミノ化と、有機化学添加剤(一酸化炭素を含む)の水素化の両方に触媒作用を及ぼすのが更に好ましく、これにより、添加剤の水素化に対して、更に触媒を必要としない。
【0053】
本発明の方法で好ましく使用される触媒は、例えば、還元雰囲気(例、H2雰囲気)を触媒上に通過させるか、或いは最初に酸化雰囲気、その後に還元雰囲気を触媒床上又は触媒床中に通過させることによって再生されても良い。
【0054】
触媒は、その還元された又は酸化された形で存在していても良く;酸化された形で存在するのが好ましい。
【0055】
使用される触媒は、Ni、Co、Fe、Cuの群から選択される1種以上の単体を、好ましくはMo又はAgと組み合わせて含む化合物であるのが好ましく、且つ単体は、還元された又は酸化された形で存在していても良い。特に好ましい触媒は、組み合わせのCo−Cu、Ni−Cu及び/又はFe−Cuであり、特に、これらの組み合わせと、追加のドーピング元素のNi−Cu−X、Fe−Cu−X、Co−Cu−X(但し、XがAg又はMoである。)との組み合わせである。NiCu(Ag又はMo)及び/又はFeCu(Ag又はMo)の合金が特に好ましい。
【0056】
触媒において、一緒に含まれる単体のNi、Co及びFeの質量換算による割合、すなわちこれらの単体の合計質量の割合(全ての単体は、必ずしも触媒に存在している必要はない。)は、触媒の合計質量に対して、0.1〜75質量%の範囲であるのが好ましく、更に好ましくは1〜70質量%の範囲であり、特に2〜50質量%の範囲であり、そしてCuの質量換算による割合は、触媒の合計質量に対して、0.1〜75質量%の範囲であり、好ましくは0.1〜25質量%の範囲であり、更に好ましくは0.1〜20質量%の範囲であり、特に2.5〜10質量%の範囲である。更に、触媒は、担体材料を含んでいても良い。
【0057】
触媒の合計質量に対するドーピング元素Xの質量換算による割合は、0.01〜8質量%の範囲であるのが好ましく、更に好ましくは0.1〜5質量%の範囲であり、特に0.5〜4質量%の範囲である。
【0058】
触媒は、本発明の方法での使用前に、活性化され得るのが好ましい。かかる活性化は、200〜600℃の範囲の温度条件下で行われるのが好ましく、更に好ましくは250〜500℃の範囲の温度条件下で行われ、特に280〜400℃の範囲の温度条件下で行われ、活性化は、不活性気体及び水素又はアンモニアを含む混合物を用いて行われるのが好ましい。また、活性化は、他の化合物を含んでいても良い。活性化により、金属酸化物を金属に還元する。
【0059】
更に、使用される触媒は、Cu、Fe、Ni又はこれらの混合物を含み、層状化二重水酸化物(LDH)又はLDH様化合物に担持される化合物であっても良い。担体としてのLDH又はLDH様化合物をか焼することによって得られる酸化マグネシウムアルミニウムを使用するのが好ましい。LDH又はLDH様化合物をか焼する工程を含む、酸化マグネシウムアルミニウムを調製する好適な方法は、例えば、Catal. Today 1991, 11, 173か、又は"Comprehensive Supramolecular Chemistry", (Ed. Alberti, Bein), Pergamon, NY, 1996, 第7巻, 251に開示されている。
【0060】
本発明の方法における一の実施形態において、使用される触媒は、Ni、Cu、Co、Fe及びMoの群から選択される1種以上の化合物を含む化合物であるのが更に好ましく、そしてこれらの単体は、1以上の酸化状態で、好ましくは、担体としての酸化ジルコニウム及び/又は酸化マグネシウムアルミニウムに存在していても良い。
【0061】
かかる実施形態において、使用される触媒は、少なくとも1種の以下の化合物(a)、(b)、(c)及び/又は(d):
(a)担体としての酸化ジルコニウムに、NiO、CuO及びMoO3を含み、好ましくはNiO、CuO及びMoO3からなる化合物、
(b)担体としての酸化ジルコニウムに、NiO、CuO及びCoOを(好ましくは主として)含む化合物、
(c)担体としての酸化ジルコニウムに、NiO及び/又はCuO及び/又はFe23を含み、好ましくはNiO及び/又はCuO及び/又はFe23からなる化合物、
(d)担体としての酸化マグネシウムアルミニウムに、NiO及び/又はCuO及び/又はFe23を含み、好ましくはNiO及び/又はCuO及び/又はFe23からなる化合物、
を使用するのが最も好ましく、且つ触媒(a)〜(d)は、個々に、又は相互に組み合わせて使用可能である。
【0062】
触媒は、必ずしも必要ないが、NiOを含んで、本発明により本願の明細書に記載される炭化水素の直接アミノ化を行うことが可能であるものの、所定のNiO含有量の触媒は、屡々、その、直接アミノ化の場合の性能に、NiOを有さない触媒より優れている。
【0063】
しかしながら、本発明の範囲を限定しない触媒の適例は、文献において既に記載されている。
【0064】
例えば、(a)により好適な触媒は、とりわけDE−A4428004に記載され(実施例1を参照)、その触媒活性組成(catalytically active composition)が、20〜85質量%の、ZrO2として計算されるジルコニウムの酸素化合物と、1〜30質量%の、CuOとして計算される銅の酸素化合物と、30〜70質量%の、NiOとして計算されるニッケルの酸素化合物と、0.1〜5質量%の、MoO3として計算されるモリブデンの酸素化合物と、0〜10質量%の、Al23及びMnO2として計算されるアルミニウム及び/又はマンガンの酸素化合物と、を含む。
【0065】
例えば、(b)により好適な触媒は、とりわけEP1106600に記載され、その触媒活性組成が、22〜45質量%の、ZrO2として計算されるジルコニウムの酸素化合物と、1〜30質量%の、CuOとして計算される銅の酸素化合物と、5〜50質量%の、NiOとして計算されるニッケルの酸素化合物と、5〜50質量%の、CoOとして計算されるコバルトの化合物と、0〜5質量%の、MoO3として計算されるモリブデンの酸素化合物と、0〜10質量%の、Al23及びMnO2として計算されるアルミニウム及び/又はマンガンの酸素化合物と、を含む。
【0066】
また、EP963975は、(b)による触媒についても記載している;実施例3を参照されたい。
【0067】
本発明のアミノ化方法を用いて、任意の炭化水素、例えば芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素及び脂環式炭化水素をアミノ化することが可能であり、これらの炭化水素は、任意の置換基を有していても良く、これらの鎖内又はこれらの環内にヘテロ原子及び二重又は三重結合を有していても良い。本発明のアミノ化法において、芳香族炭化水素及びヘテロ芳香族炭化水素を使用するのが好ましい。特定の生成物は、対応のアリールアミン又はヘテロアリールアミンである。
【0068】
本発明に関して、芳香族炭化水素は、1個以上の環を有し、芳香族性のC−H結合だけを含む不飽和の環式炭化水素を意味すると理解されるべきである。芳香族炭化水素は、1個以上の5員又は6員環を有するのが好ましい。
【0069】
ヘテロ芳香族炭化水素は、芳香族環における1個以上の炭素原子をN、O及びSから選択されるヘテロ原子で置換した芳香族炭化水素を意味すると理解されるべきである。
【0070】
芳香族炭化水素又はヘテロ芳香族炭化水素は、置換されていても、又は無置換であっても良い。置換芳香族又はヘテロ芳香族炭化水素は、芳香族環における炭素原子又はヘテロ原子に結合する1個以上の水素原子を他の基で置換した化合物を意味すると理解されるべきである。かかる基は、例えば、置換又は無置換のアルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、シクロアルキル及び/又はシクロアルキニルの各基である。更に、以下の基であっても良い:ハロゲン、ヒドロキシル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、チオ及びホスフィノ。芳香族又はヘテロ芳香族炭化水素における好ましい基は、C1-6アルキル、C1-6アルケニル、C1-6アルキニル、C3-8シクロアルキル、C3-8シクロアルケニル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ及びアミドであり、且つC1-6は、アルキル基、アルケニル基又はアルキニル基の主鎖における炭素原子の数に関し、C3-8は、シクロアルキル又はシクロアルケニル環における炭素原子の数に関する。置換芳香族又はヘテロ芳香族炭化水素の置換基(基)は、他の置換基を有することも可能である。
【0071】
芳香族又はヘテロ芳香族炭化水素の置換基(基)の数は、任意である。しかしながら、好ましい実施形態において、芳香族又はヘテロ芳香族炭化水素は、芳香族環の炭素原子又はヘテロ原子に直接結合する少なくとも1個の水素原子を有する。従って、6員環は、5個以下の置換基(基)を有するのが好ましく、5員環は、4個以下の置換基(基)を有するのが好ましい。6員の芳香族又はヘテロ芳香族環は、4個以下の置換基を有するのが更に好ましく、3個以下の置換基(基)を有することでさえ更に好ましい。5員の芳香族又はヘテロ芳香族環は、3個以下の基を有するのが好ましく、2個以下の基を有するのが更に好ましい。
【0072】
本発明の方法における特に好ましい実施形態において、一般式:
【0073】
【化2】

【0074】
[但し、Aが独立して、アリール又はヘテロアリールであり、フェニル、ジフェニル、ジフェニルメタン、ベンジル、ジベンジル、ナフチル、アントラセン、ピリジル及びキノリンから選択されるのが好ましく;
nが0〜5であり、特にAが6員のアリール又はヘテロアリール環である場合、0〜4であるのが好ましく;Aが5員のアリール又はヘテロアリール環である場合、nが0〜4であるのが好ましく;環の寸法に関係なく、nが0〜3であるのが更に好ましく、0〜2であるのが最も好ましく、特に0〜1であり;置換基Bを有さないAにおける残りの炭化水素原子又はヘテロ原子が、水素原子を有するか、又は適宜、置換基を有さず;
Bが独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、置換アルキル、置換アルケニル、置換アルキニル、ヘテロアルキル、置換ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、置換ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、置換ヘテロアルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルキル、置換シクロアルケニル、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、カルボニル、アミノ、アミド、チオ及びホスフィノからなる群から選択され、好ましくは、独立してC1-6アルキル、C1-6アルケニル、C1-6アルキニル、C3-8シクロアルキル、C3-8シクロアルケニル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ及びアミドから選択される。]
で表される芳香族又はヘテロ芳香族炭化水素を使用する。
【0075】
“独立して”なる用語は、nが2以上である場合、置換基Bが、同一又は異なる、上述した群から選択される基であっても良いことを意味する。
【0076】
本願発明において、アルキルは、分岐又は非分岐の、飽和非環式炭化水素基を意味すると理解されるべきである。アルキル基の適例は、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、t−ブチル、i−ブチル等である。使用されるアルキル基は、1〜50個の炭素原子を有するのが好ましく、更に好ましくは1〜20個の炭素原子を有し、1〜6個の炭素原子を有することでさえ更に好ましく、特に1〜3個の炭素原子を有する。
【0077】
本願発明において、アルケニルは、少なくとも1個の炭素−炭素二重結合を有する分岐又は非分岐の、非環式ヒドロカルビル基を意味すると理解されるべきである。好適なアルケニル基は、例えば、2−プロペニル、ビニル等である。アルケニル基は、2〜50個の炭素原子を有するのが好ましく、更に好ましくは2〜20個の炭素原子を有し、2〜6個の炭素原子を有することでさえ更に好ましく、特に2〜3個の炭素原子を有する。また、アルケニルなる用語は、cis−配向又はtrans−配向(或いはE又はZ配向)を有する基を包含する。
【0078】
本願発明において、アルキニルは、少なくとも1個の炭素−炭素三重結合を有する分岐又は非分岐の、非環式ヒドロカルビル基を意味すると理解されるべきである。アルキニル基は、2〜50個の炭素原子を有するのが好ましく、更に好ましくは2〜20個の炭素原子を有し、1〜6個の炭素原子を有することでさえ更に好ましく、特に2〜3個の炭素原子を有する。
【0079】
置換アルキル、置換アルケニル及び置換アルキニルは、これらの基における1個の炭素原子に結合する1個以上の水素原子を別の基で置換したアルキル、アルケニル及びアルキニル基を意味すると理解されるべきである。かかる別の基の例示は、ヘテロ原子、ハロゲン、アリール、置換アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルキル、置換シクロアルケニル及びこれらの組み合わせである。置換アルキル基の適例は、中でもベンジル、トリフルオロメチルである。
【0080】
ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル及びヘテロアルキニルなる用語は、炭素鎖における1個以上の炭素原子を、N、O及びSから選択されるヘテロ原子で置換したアルキル、アルケニル及びアルキニル基を意味すると理解されるべきである。ヘテロ原子と他の炭素原子との間の結合は、飽和であるか、又は適宜、不飽和であっても良い。
【0081】
本願発明において、シクロアルキルは、単一の環又は複数の縮合環から構成される飽和で環式の非芳香族ヒドロカルビル基を意味すると理解されるべきである。シクロアルキル基の適例は、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクタニル、ビシクロオクチル等である。シクロアルキル基は、3〜50個の炭素原子を有するのが好ましく、更に好ましくは3〜20個の炭素原子を有し、3〜8個の炭素原子を有することでさえ更に好ましく、特に3〜6個の炭素原子を有する。
【0082】
本願発明において、シクロアルケニルは、単一の縮合環又は複数の縮合環を有する部分不飽和で環式の非芳香族ヒドロカルビル基を意味すると理解されるべきである。好適なシクロアルケニル基は、例えば、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロオクテニル等である。シクロアルケニル基は、3〜50個の炭素原子を有するのが好ましく、更に好ましくは3〜20個の炭素原子を有し、3〜8個の炭素原子を有することでさえ更に好ましく、特に3〜6個の炭素原子を有する。
【0083】
置換シクロアルキル及び置換シクロアルケニル基は、炭素環の炭素における1個以上の水素原子を別の基で置換したシクロアルキル及びシクロアルケニル基を意味すると理解されるべきである。かかる別の基の例示は、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、置換アルキル、置換アルケニル、置換アルキニル、アリール、置換アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルキル、置換シクロアルケニル、脂肪族のヘテロ環式基、置換された脂肪族のヘテロ環式基、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、ボリル、ホスフィノ、アミノ、シリル、チオ、セレノ及びこれらの組み合わせである。置換シクロアルキル及びシクロアルケニル基の例示は、中でも4−ジメチルアミノシクロヘキシル、4,5−ジブロモシクロヘプタ−4−エニルである。
【0084】
本願発明の場合、アリールは、単一の芳香族環或いは縮合され、共有結合を介して結合され、又は適当な単位、例えばメチレン又はエチレン単位によって結合される複数の芳香族環を有する芳香族基を意味すると理解されるべきである。また、かかる好適な単位は、ベンゾフェノールにおけるようなカルボニル単位、又はジフェニルエーテルにおけるような酸素単位、又はジフェニルアミンにおけるような窒素単位であっても良い。芳香族環は、例えばフェニル、ナフチル、ジフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルアミン及びベンゾフェノンであっても良い。アリール基は、6〜50個の炭素原子を有するのが好ましく、更に好ましくは6〜20個の炭素原子を有し、最も好ましくは6〜8個の炭素原子を有する。
【0085】
置換アリール基は、アリール基の炭素原子に結合する1個以上の水素原子を1個以上の他の基で置換したアリール基である。好適な他の基は、アルキル、アルケニル、アルキニル、置換アルキル、置換アルケニル、置換アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルキル、置換シクロアルケニル、ヘテロシクロ、置換ヘテロシクロ、ハロゲン、ハロゲン置換アルキル(例、CF3)、ヒドロキシル、アミノ、ホスフィノ、アルコキシ、チオ並びに芳香族環で縮合されているか、又は結合によって結合されていても良く、或いは適当な基を介して相互に結合されていても良い飽和及び不飽和の環式炭化水素の両方である。好適な基は、既に上述した通りである。
【0086】
本願発明によると、ヘテロシクロは、基における1個以上の炭素原子を、ヘテロ原子、例えばN、O又はSで置換した飽和、部分不飽和又は不飽和の環式基を意味すると理解されるべきである。ヘテロシクロ基の例示は、ピペラジニル、モルホリニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロフラニル、ピペリジニル、ピロリジニル、オキサゾリニル、ピリジル、ピラジル、ピリダジル、ピリミジルである。
【0087】
置換ヘテロシクロ基は、いずれかの環原子に結合する1個以上の水素原子を別の基で置換したヘテロシクロ基である。好適な別の基は、ハロゲン、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、ボリル、ホスフィノ、アミノ、シリル、チオ、セレノ及びこれらの組み合わせである。
【0088】
アルコキシ基は、一般式−OZ1(但し、Z1がアルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、シリル及びこれらの組み合わせから選択される。)で表される基を意味すると理解されるべきである。好適なアルコキシ基は、例えばメトキシ、エトキシ、ベンジルオキシ、t−ブトキシ等である。アリールオキシなる用語は、一般式−OZ1(但し、Z1がアリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール及びこれらの組み合わせから選択される。)で表される基を意味すると理解されるべきである。好適なアリールオキシ基は、中でもフェノキシ、置換フェノキシ、2−ピリジノキシ、8−キノリノキシである。
【0089】
アミノ基は、一般式−NZ12(但し、Z1及びZ2が独立して、それぞれ水素、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、シリル及びこれらの組み合わせから選択される。)で表される基を意味すると理解されるべきである。
【0090】
本発明のアミノ化方法で好ましく使用される芳香族又はヘテロ芳香族炭化水素は、ベンゼン、ジフェニルメタン、ナフタレン、アントラセン、トルエン、キシレン、フェノール及びアニリン、更にはピリジン、ピラジン、ピリダジン、ピリミジン及びキノリンから選択される。上述した芳香族又はヘテロ芳香族炭化水素の混合物を使用することも可能である。芳香族炭化水素、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、トルエン、キシレン、ピリジン、フェノール及び/又はアニリンを使用するのが特に好ましく、ベンゼン、トルエン及び/又はピリジンを使用するのが極めて好ましい。
【0091】
特に好ましくは、ベンゼンを本発明のアミノ化法で使用することにより、形成される生成物は、アニリンである。
【0092】
アミノ基が導入される化合物は、アンモニアであるのが更に好ましい。これは、本発明により、炭化水素、特にベンゼンをアンモニアと反応させるのが更に好ましいことを意味する。適宜、反応条件下でアンモニアを除去する化合物についても、使用法を見出すことが可能である。
【0093】
モノ−及びジアルキル−N,(N)−置換芳香族アミン、例えばモノ−及び/又はジメチルアニリンを調製する場合、モノ−及びジアルキルアミン、好ましくはモノ−及びジ(メ)エチルアミンを使用することも可能である。
【0094】
本発明のアミノ化法における反応条件は、アミノ化されるべき芳香族炭化水素及び使用される触媒を含む要因に応じて異なる。
【0095】
アミノ化、好ましくはベンゼンのアミノ化、すなわち、ベンゼンとアンモニアの反応は、200〜800℃、好ましくは300〜500℃、更に好ましくは350〜400℃、最も好ましくは350〜500℃の温度条件下で行われるのが一般的である。
【0096】
アミノ化、好ましくはベンゼンのアミノ化、すなわち、ベンゼンとアンモニアの反応における反応圧力は、1〜1000バールであるのが好ましく、更に好ましくは2〜300バールであり、特に2〜125バールであり、特に好ましくは15〜110バールである。
【0097】
本発明のアミノ化法、好ましくはベンゼンのアミノ化における滞留時間は、バッチ法にて行う場合、一般に15分〜8時間であり、好ましくは15分〜4時間であり、更に好ましくは15分〜1時間である。好ましい連続法にて行う場合、滞留時間は、一般に0.1秒〜20分であり、好ましくは0.5秒〜10分である。好ましい連続法の場合、この場合の“滞留時間”は、触媒上における滞留時間であるので、固定床触媒用の触媒床における滞留時間を意味し;流動床反応器の場合、反応器の合成部(触媒が配置される反応器の部分)が考えられる。
【0098】
使用される炭化水素及びアミン成分の相対量は、行われるアミノ化反応及び反応条件に応じて異なる。一般に、少なくとも化学量論量の炭化水素及びアミン成分を使用する。しかしながら、一方の反応パートナーを化学量論過剰に使用して、所望の生成物側に平衡をシフトさせて、より高い転化率を達成するのが一般に好ましい。アミン成分を化学量論過剰に使用するのが好ましい。
【0099】
本発明のアミノ化法は、連続的に、バッチ式で、又は半連続的に行われても良い。好適な反応器は、これにより、撹拌器付きタンク型反応器又は管型反応器である。一般的な反応器は、例えば、撹拌器付き高圧タンク型反応器、オートクレーブ、固定床反応器、流動床反応器、移動床、循環流動床、塩浴反応器、反応器としての平板熱交換器、熱交換しても又は熱交換が無くても良い複数のトレイを有するか、或いはトレイの間で副流を取り出し/供給するトレイ型反応器、半径流又は軸流反応器として可能な構造において、連続撹拌タンク、泡鐘タンク等であり、そして所望の反応条件(例えば、温度、圧力及び滞留時間)に好適な反応器を使用する。反応器は、単一の反応器として、連続する個々の反応器として及び/又は2基以上の平行する反応器の形で使用されても良い。反応器は、AB型(交互型)で運転されても良い。本発明の方法は、バッチ反応、半連続反応又は連続反応として行われても良い。反応における特定の反応器の構造及び性能は、行われるべきアミノ化法、アミノ化される芳香族炭化水素の物質状態、必要とされる反応時間及び使用される触媒の性質に応じて変更可能である。直接アミノ化に用いる本発明の方法を撹拌器付き高圧タンク型反応器、固定床反応器又は流動床反応器において行うのが好ましい。
【0100】
特に好ましい実施形態において、1基以上の流動床反応器を、ベンゼンのアニリンへのアミノ化において使用する。
【0101】
炭化水素及びアミン成分を、気体又は液体の状態で、特定の反応器の反応領域に導入しても良い。好ましい相は、行われるアミノ化及び使用される反応器に応じて異なる。好ましい実施形態において、例えばベンゼンからアニリンを調製する場合、ベンゼン及びアンモニアは、反応領域において気体の反応物質として存在するのが好ましい。一般に、ベンゼンは、加熱及び蒸発されて、気体を形成する液体として供給され、一方、アンモニアは、反応領域において、気体の状態又は超臨界相で存在する。ベンゼンは、少なくともアンモニアと一緒に超臨界状態で存在することも同様に可能である。
【0102】
炭化水素及びアミン成分を一緒に、反応器の反応領域に対して、例えば予備混合反応材料流として導入するか、又は別個に導入しても良い。別個に添加する場合、炭化水素及びアミン成分を同時に、時間を分けて、又は連続的に反応器の反応領域に導入しても良い。アミン成分を添加し、そして炭化水素を、時間を分けて添加するのが好ましい。
【0103】
適宜、他の共反応材料、助触媒又は他の試薬を、行われるアミノ化に応じて、本発明の方法における反応器の反応領域に導入する。例えば、ベンゼンのアミノ化において、酸素又は酸素含有気体を、共反応材料として反応器の反応領域に導入することが可能である。反応領域に導入され得る気体の酸素の相対量は、変更可能であり、使用される触媒系を含む要因に応じて異なる。アニリンに対する気体の酸素のモル比は、例えば、0.05:1〜1:1の範囲であっても良く、好ましくは0.1:1〜0.5:1の範囲である。しかしながら、酸素又は酸素含有気体を反応領域に添加することなく、ベンゼンのアミノ化を行うことも可能である。
【0104】
アミノ化は、炭化水素に対するアンモニアのモル比を1にて行われるのが好ましい。
【0105】
アミノ化後、所望の生成物を、当該分野で公知の方法によって分離することが可能である。
【実施例】
【0106】
実施例1:触媒の調製
触媒は、DE−A4428004に従って調製された。
【0107】
4.48質量%のNi(NiOとして計算)、1.52質量%のCu(CuOとして計算)及び2.28質量%のZr(ZrO2として計算)を含む、硝酸ニッケル、硝酸銅及び酢酸ジルコニウムの水溶液を、70℃の温度条件下、20%の炭酸ナトリウム水溶液との一定の流れにおいて撹拌容器中で同時に沈殿させて、ガラス電極で測定される7.0のpHを得た。これにより得られる懸濁液をろ過し、そしてろ液の電気伝導率が約20μSになるまで、ろ過ケークを脱イオン水で洗浄した。その後、十分なアンモニウムヘプタモリブデートを、依然として湿潤のろ過ケークに取り込み、以下に規定される酸化物混合物を得た。その後、ろ過ケークを、乾燥キャビネット又は噴霧乾燥器において150℃の温度条件下で乾燥した。その後、このようにして得られる水酸化物−炭酸塩混合物を430〜460℃の温度条件下で4時間に亘って熱処理した。これにより調製される酸化物種は、以下の組成を有していた:50質量%のNiO、17質量%のCuO、1.5質量%のMoO3及び31.5質量%のZrO2。触媒を、3質量%のグラファイトと混合し、そしてタブレットに付形した。
【0108】
実施例2:触媒の調製
8.1kgのNiO、2.9kgのCuO、2.8kgのMgO及び10.2kgのAl23を含む、硝酸ニッケル、硝酸銅、硝酸マグネシウム及び硝酸アルミニウムの、溶液全体で111kgの水溶液を、20℃の温度条件下、7.75kgの炭酸ナトリウム及び78kgの水酸化ナトリウムの、合計体積244リットルの水溶液との一定の流れにおいて撹拌容器中で同時に沈殿させて、ガラス電極で測定される9.5のpHを得た。これにより得られる懸濁液をろ過し、そしてろ液の電気伝導率が約20μSになるまで、ろ過ケークを脱イオン水で洗浄した。その後、ろ過ケークを、150℃の温度条件下、乾燥キャビネットにおいて乾燥した。その後、このようにして得られる水酸化物−炭酸塩混合物を430〜460℃の温度条件下で4時間に亘って熱処理した。これにより調製される酸化物種は、以下の組成を有していた:56.6質量%のNiO、19.6質量%のCuO、15.4質量%のMgO及び8.5質量%のAl23
【0109】
実施例3:触媒の調製(EP963975によるNi−Co−Cu/ZrO2を基礎とした)
2.39質量%のNiO、2.39質量%のCoO、0.94質量%のCuO及び2.82質量%のZrO2を含む、硝酸ニッケル、硝酸銅及び酢酸ジルコニウムの水溶液を、70℃の温度条件下、20%の炭酸ナトリウム水溶液との一定の流れにおいて撹拌容器中で同時に沈殿させて、ガラス電極で測定される7.0のpHを得た。これにより得られる懸濁液をろ過し、そしてろ液の電気伝導率が約20μSになるまで、ろ過ケークを脱イオン水で洗浄した。その後、ろ過ケークを、乾燥キャビネット又は噴霧乾燥器において150℃の温度条件下で乾燥した。その後、このようにして得られる水酸化物−炭酸塩混合物を450〜500℃の温度条件下で4時間に亘って熱処理した。これにより調製される触媒は、以下の組成を有していた:28質量%のNiO、28質量%のCoO、11質量%のCuO及び33質量%のZrO2。触媒を、3質量%のグラファイトと混合し、そしてタブレットに付形した。酸化物タブレットを還元した。還元は、280℃の条件下で行われ、その過程での加熱速度は、3℃/分であった。還元は、最初に、N2における10%のH2を用いて50分間、その後、N2における25%のH2を用いて20分間、その後、N2における50%のH2を用いて10分間、その後、N2における75%のH2を用いて10分間、そして最後に、100%のH2を用いて3時間に亘って行われた。割合は、それぞれ体積%である。還元された触媒の不動態化は、希釈空気(N2において最大O2含有量5体積%の空気)において室温条件下で行われた。
【0110】
実施例4:ニトロベンゼンを添加しない触媒でのベンゼンのアミノ化(比較実施例)
反応器入口に2〜4mmの石英ガラス片、実施例1より得られ、20ml=23.6gの、6×3mmのタブレットの形の触媒及び反応器出口に2〜4mmの石英ガラス片が充填された菅型反応器を、空気下で(50L(STP)/時)、350℃に加熱した。加熱後、空気の供給を止め、反応器を窒素でパージ処理し、その後、供給を始めた。85バールの全圧及び350℃の反応器内部温度の条件下で、59.4gのベンゼン/時及び118gのアンモニア/時を触媒に対して供給した。反応器からの溶出液を2℃の温度に冷却し、そして凝縮物をメタノールで均質化し、内部標準を用いるガスクロマトグラフィによって分析した。3.5時間の稼動時間後に開始され、4時間後に終了した収集時間に亘って集められたサンプルにおけるアニリンの収率は、供給された1モルのベンゼン及び1時間当たり、8.2ミリモルのアニリンであった。これは、28.89gのアニリン/1リットルの触媒及び1時間(1リットルの触媒及び1時間当たり28.89gのアニリン)の空時収量に相当していた。
【0111】
特にアンモニアからなるオフガスのオンラインガスクロマトグラフィサンプルは、4.0時間の実験作動後のオフガスに対して、0.128体積%の水素含有量を示し、これは、供給される1モルのベンゼン及び1時間当たり、11ミリモルの水素である水素形成に相当していた。
【0112】
オフガスにおける水素の量は、稼働時間及び触媒の還元の増大と共に連続的に増大した:1.4時間後では、供給される1モルのベンゼン及び1時間当たり3ミリモルのH2であり、2.8時間後では、供給される1モルのベンゼン及び1時間当たり8ミリモルのH2であり、4時間後では、供給される1モルのベンゼン及び1時間当たり11ミリモルのH2であり、そして4.6時間後では、供給される1モルのベンゼン及び1時間当たり14ミリモルのH2であった。
【0113】
実施例5:ベンゼン給送材料に0.5%のニトロベンゼンを添加する触媒でのベンゼンのアミノ化(本願)
反応器入口に2〜4mmの石英ガラス片、実施例1より得られ、20ml=23.6gの、6×3mmのタブレットの形の触媒及び反応器出口に2〜4mmの石英ガラス片が充填された菅型反応器を、空気下で(50L(STP)/時)、350℃に加熱した。加熱後、空気の供給を止め、反応器を窒素でパージ処理し、その後、供給を始めた。85バールの全圧及び350℃の反応器内部温度の条件下で、99.5%のベンゼン及び0.5%のニトロベンゼンからなる59.6gの芳香族化合物の混合物(すなわち、それぞれ0.3gのニトロベンゼン/時及び0.002モルのニトロベンゼン/時)/時及び118gのアンモニア/時を触媒に対して供給した。反応器からの溶出液を2℃の温度に冷却し、そして凝縮物をメタノールで均質化し、内部標準を用いるガスクロマトグラフィによって分析した。3.5時間の稼動時間後に開始され、4時間後に終了した収集時間に亘って集められたサンプルにおけるアニリンの収率は、供給された1モルの芳香族化合物及び1時間当たり、11.3ミリモルのアニリンであった。これは、40.15gのアニリン/1リットルの触媒及び1時間(1リットルの触媒及び1時間当たり40.15gのアニリン)の空時収量に相当していた。
【0114】
特にアンモニアからなるオフガスのオンラインガスクロマトグラフィサンプルは、4.0時間の実験作動後のオフガスに対して、0.034体積%の水素含有量を示し、これは、供給される1モルのベンゼン及び1時間当たり、4ミリモルの水素である水素形成に相当していた。
【0115】
本実施例においても同様に、オフガスにおける水素の量は、稼働時間及び触媒の還元の増大と共に増大したものの、実施例4と比較して、著しく低い絶対水準に至り、且つ更にゆっくりであった:1.2時間後では、供給される1モルの芳香族化合物及び1時間当たり1ミリモルのH2であり、2.1時間後では、供給される1モルの芳香族化合物及び1時間当たり2ミリモルのH2であり、4時間後では、供給される1モルの芳香族化合物及び1時間当たり4ミリモルのH2であり、そして4.8時間後では、供給される1モルの芳香族化合物及び1時間当たり5ミリモルのH2であった。
【0116】
実施例6:ベンゼン給送材料に1.0%のニトロベンゼンを添加する触媒でのベンゼンのアミノ化(本願)
反応器入口に2〜4mmの石英ガラス片、実施例1より得られ、20ml=23.6gの、6×3mmのタブレットの形の触媒及び反応器出口に2〜4mmの石英ガラス片が充填された菅型反応器を、空気下で(50L(STP)/時)、350℃に加熱した。加熱後、空気の供給を止め、反応器を窒素でパージ処理し、その後、供給を始めた。85バールの全圧及び350℃の反応器内部温度の条件下で、99.0%のベンゼン及び1.0%のニトロベンゼンからなる59.1gの芳香族化合物の混合物(すなわち、それぞれ0.6gのニトロベンゼン/時及び0.005モルのニトロベンゼン/時)/時及び118gのアンモニア/時を触媒に対して供給した。反応器からの溶出液を2℃の温度に冷却し、そして凝縮物をメタノールで均質化し、内部標準を用いるガスクロマトグラフィによって分析した。3.5時間の稼動時間後に開始され、4時間後に終了した収集時間に亘って集められたサンプルにおけるアニリンの収率は、供給された1モルの芳香族化合物及び1時間当たり、17.8ミリモルのアニリンであった。これは、62.93gのアニリン/1リットルの触媒及び1時間(1リットルの触媒及び1時間当たり62.93gのアニリン)の空時収量に相当していた。
【0117】
特にアンモニアからなるオフガスのオンラインガスクロマトグラフィサンプルは、4.0時間の実験作動後のオフガスに対して、0.025体積%の水素含有量を示し、これは、供給される1モルのベンゼン及び1時間当たり、2ミリモルの水素である水素形成に相当していた。
【0118】
本実施例においても同様に、オフガスにおける水素の量は、稼働時間及び触媒の還元の増大と共に増大したものの、実施例4と比較して、著しく低い絶対水準に至り、且つ更にゆっくりであった:1.0時間後では、供給される1モルの芳香族化合物及び1時間当たり1ミリモルのH2であり、2.1時間後では、供給される1モルの芳香族化合物及び1時間当たり1ミリモルのH2であり、3.0時間後では、供給される1モルの芳香族化合物及び1時間当たり2ミリモルのH2であり、4時間後では、供給される1モルの芳香族化合物及び1時間当たり2ミリモルのH2であり、そして5.0時間後では、供給される1モルの芳香族化合物及び1時間当たり3ミリモルのH2であった。
【0119】
実施例7:ベンゼン給送材料に3.0%のニトロベンゼンを添加する触媒でのベンゼンのアミノ化(本願)
反応器入口に2〜4mmの石英ガラス片、実施例1より得られ、20ml=23.6gの、6×3mmのタブレットの形の触媒及び反応器出口に2〜4mmの石英ガラス片が充填された菅型反応器を、空気下で(50L(STP)/時)、350℃に加熱した。加熱後、空気の供給を止め、反応器を窒素でパージ処理し、その後、供給を始めた。85バールの全圧及び350℃の反応器内部温度の条件下で、97%のベンゼン及び3%のニトロベンゼンからなる60.1gの芳香族化合物の混合物(すなわち、それぞれ1.858gのニトロベンゼン/時及び0.015モルのニトロベンゼン/時)/時及び118gのアンモニア/時を触媒に対して供給した。反応器からの溶出液を2℃の温度に冷却し、そして凝縮物をメタノールで均質化し、内部標準を用いるガスクロマトグラフィによって分析した。3.5時間の稼動時間後に開始され、4時間後に終了した収集時間に亘って集められたサンプルにおけるアニリンの収率は、供給された1モルの芳香族化合物及び1時間当たり、12.2ミリモルのアニリンであった。これは、1リットルの触媒及び1時間当たり44.39gのアニリンである空時収量に相当していた。本実施例において、ピーク値は、1時間後直ぐに得られ、これは、供給された1モルの芳香族化合物及び1時間当たり、15.1ミリモルのアニリンであった。これは、55.24gのアニリン/1リットルの触媒及び1時間(1リットルの触媒及び1時間当たり55.24gのアニリン)の空時収量に相当していた。
【0120】
特にアンモニアからなるオフガスのオンラインガスクロマトグラフィサンプルは、GC器機の検出限界未満の水素含有量、すなわち、約<30〜50ppmを示した。5時間の稼動時間後であっても、水素を検出不可能であった。
【0121】
実施例8:ベンゼン給送材料に11.1%のニトロベンゼンを添加する触媒でのベンゼンのアミノ化(本願)
反応器入口に2〜4mmの石英ガラス片、実施例1より得られ、20ml=23.6gの、6×3mmのタブレットの形の触媒及び反応器出口に2〜4mmの石英ガラス片が充填された菅型反応器を、空気下で(50L(STP)/時)、350℃に加熱した。加熱後、空気の供給を止め、反応器を窒素でパージ処理し、その後、供給を始めた。85バールの全圧及び350℃の反応器内部温度の条件下で、88.9%のベンゼン及び11.1%のニトロベンゼンからなる61.3gの芳香族化合物の混合物(すなわち、それぞれ6.8gのニトロベンゼン/時及び0.055モルのニトロベンゼン/時)/時及び118gのアンモニア/時を触媒に対して供給した。反応器からの溶出液を2℃の温度に冷却し、そして凝縮物をメタノールで均質化し、内部標準を用いるガスクロマトグラフィによって分析した。3.5時間の稼動時間後に開始され、4時間後に終了した収集時間に亘って集められたサンプルにおけるアニリンの収率は、供給された1モルの芳香族化合物及び1時間当たり、30.9ミリモルのアニリンであった。これは、1リットルの触媒及び1時間当たり120.78gのアニリンである空時収量に相当していた。本実施例において、ピーク値は、1時間後直ぐに得られ、これは、供給された1モルの芳香族化合物及び1時間当たり、43.8ミリモルのアニリンであった。これは、171.36gのアニリン/1リットルの触媒及び1時間の空時収量に相当していた。
【0122】
特にアンモニアからなる、本実施例におけるオフガスのオンラインガスクロマトグラフィサンプルは、GC器機の検出限界未満の水素含有量、すなわち、約<30〜50ppmを示した。5時間の稼動時間後であっても、水素を検出不可能であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素をアンモニアでアミノ化する方法であって、
水素と反応する添加剤の存在下でアミノ化を行う工程を含み、且つ添加剤として、少なくとも1種の有機化合物、N2O、ヒドロキシルアミン、ヒドラジン及び/又は一酸化炭素を使用することを特徴とするアミノ化方法。
【請求項2】
水素と反応する添加剤として、一酸化炭素、カルボニル化合物、ニトリル、イミン、アミド、ニトロ化合物、ニトロソ化合物、オレフィン、アルキン、有機過酸化物、有機酸、有機酸誘導体、ヒドラジン誘導体、ヒドロキシルアミン、キノン、芳香族化合物及び/又はsp2混成炭素原子を有する分子を使用する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
水素と反応する添加剤として、ニトロベンゼン、一酸化炭素、シアン化水素酸、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、ベンゾニトリル、ベンズアルデヒドとアンモニア又は第1級アミンとの反応により得られるイミン、脂肪族アルデヒドとアンモニア又は第1級アミンとの反応により得られるイミン、ホルムアルデヒド、アセトアミド、ベンズアミド、ニトロソベンゼン、エテン、プロペン、1−ブテン、2−ブテン、イソブテン、n−ペンテン及びペンテン異性体、シクロペンテン、n−ヘキセン、ヘキセン異性体、シクロヘキセン、n−ヘプテン、ヘプテン異性体、シクロヘプテン、n−オクテン、オクタジエン、シクロオクテン、シクロオクタジエン、アセチレン、プロピン、ブチン、フェニルアセチレン、m−クロロ過安息香酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、上述したカルボン酸のエステル又は無水物、ヒドラジン、フェニルヒドラジン、脂肪族又は芳香族ケトンのヒドラジン、ヒドロキシルアミン、アルキルヒドロキシルアミン及び/又はアリールヒドロキシルアミンを使用する請求項1に記載の方法。
【請求項4】
水素と反応する添加剤として、還元性窒素化合物、アセチレン、3〜6個の炭素原子を有するアルキン及び/又は2〜6個の炭素原子を有するオレフィンを使用する請求項1に記載の方法。
【請求項5】
水素と反応する添加剤として、ニトロベンゼンを使用する請求項1に記載の方法。
【請求項6】
水素と反応する添加剤として、ヒドラジンを使用する請求項1に記載の方法。
【請求項7】
水素と反応する添加剤として、ヒドロキシルアミンを使用する請求項1に記載の方法。
【請求項8】
水素と反応する添加剤として、N2Oを使用する請求項1に記載の方法。
【請求項9】
アミノ化に触媒作用を及ぼす触媒の存在下でベンゼンをアンモニアと反応させ、そして水素と反応する添加剤として、ニトロベンゼンを使用する請求項1に記載の方法。
【請求項10】
水素と反応する添加剤は、炭化水素と一緒に反応器の入口に計量導入される請求項1に記載の方法。
【請求項11】
ニトロベンゼン/ベンゼンの混合物は、共通の給送配管において、反応器の入口から反応器に導入され、アンモニアは、別の配管において、反応器の入口から反応器に導入される請求項1に記載の方法。
【請求項12】
共通の配管からのニトロベンゼン/ベンゼンの混合物及び別の配管からのアンモニアを、最初に、混合器又は蒸発器において結合させ、そして均一な混合物として、アミノ化に触媒作用を及ぼす触媒床に導入する請求項1に記載の方法。
【請求項13】
水素と反応する添加剤の質量換算による割合は、使用される炭化水素及び添加剤の合計質量に対して、0.001〜50質量%の範囲である請求項1に記載の方法。
【請求項14】
ニトロベンゼン及びベンゼンの合計質量に対して、0.1〜15質量%の範囲のニトロベンゼンを含むベンゼンとニトロベンゼンの混合物を使用する請求項1に記載の方法。
【請求項15】
炭化水素の直接アミノ化及び添加剤の水素化の両方に触媒作用を及ぼす触媒を使用する請求項1に記載の方法。
【請求項16】
触媒として、Ni−Cu−X、Fe−Cu−X、Ni−Cu−Co−X及び/又はCo−Cu−X(但し、ZがAg又はMoである。)を含む化合物を使用する請求項1に記載の方法。
【請求項17】
触媒において一緒に用いられる単体のNi、Co及びFeの質量換算による割合は、触媒の合計質量に対して、0.1〜75質量%の範囲であり、そしてCuの質量換算による割合は、触媒の合計質量に対して、0.1〜75質量%の範囲である請求項16に記載の方法。
【請求項18】
触媒の合計質量に対するドーピング元素Xの質量換算による割合は、触媒の合計質量に対して、0.01〜8質量%の範囲である請求項16に記載の方法。
【請求項19】
使用される触媒は、担体としての酸化ジルコニウム上のNiO、CuO及び/又はMoO3である請求項1に記載の方法。
【請求項20】
使用される触媒は、担体としての酸化ジルコニウム上のNiO、CuO及び/又はCoOである請求項1に記載の方法。
【請求項21】
使用される触媒は、担体としての酸化ジルコニウム上のNiO、CuO及び/又はFe23である請求項1に記載の方法。
【請求項22】
使用される触媒は、担体としての酸化マグネシウムアルミニウム上のNiO、CuO及び/又はFe23である請求項1に記載の方法。
【請求項23】
触媒として、少なくとも1種の以下の化合物(a)、(b)、(c)及び/又は(d):
(a)担体としての酸化ジルコニウム上に、NiO、CuO及びMoO3を含み、好ましくはNiO、CuO及びMoO3のみからなる化合物、
(b)担体としての酸化ジルコニウム上に、NiO、CuO及びCoOを(好ましくは主として)含む化合物、
(c)担体としての酸化ジルコニウム上に、NiO及び/又はCuO及び/又はFe23を含み、好ましくはNiO及び/又はCuO及び/又はFe23のみからなる化合物、
(d)担体としての酸化マグネシウムアルミニウム上に、NiO及び/又はCuO及び/又はFe23を含み、好ましくはNiO及び/又はCuO及び/又はFe23のみからなる化合物、
を使用し、且つ触媒(a)〜(d)は、個々に、又は相互に組み合わせて使用可能である請求項1に記載の方法。
【請求項24】
アミノ化は、連続的に行われる請求項1に記載の方法。
【請求項25】
アミノ化は、200〜800℃の範囲の温度条件下で行われる請求項1に記載の方法。
【請求項26】
アミノ化は、1〜1000バールの範囲の圧力条件下で行われる請求項1に記載の方法。

【公表番号】特表2009−544651(P2009−544651A)
【公表日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−521217(P2009−521217)
【出願日】平成19年7月17日(2007.7.17)
【国際出願番号】PCT/EP2007/057355
【国際公開番号】WO2008/009668
【国際公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】