説明

炭化水素流から酸素化汚染物質を除去する方法

【課題】炭化水素流から酸素化汚染物質を除去する方法。
【解決手段】下記段階を含む:(1)汚染された炭化水素流を気相で吸収帯域に導入し、(2)吸収帯域中の炭化水素流を(a)酸素化汚染物質と水の含有量が減った塔頂の炭化水素流と、(b)吸収剤、炭化水素を含み且つ酸素化汚染物質と水の含有量が増した吸収剤ボトム流とを生成するのに有効な条件で水および酸素化汚染物質を吸収できる吸収剤と接触させ、(3)吸収剤ボトム流を(a)炭化水素、酸素化汚染物質と水を含まない吸収剤ボトム流と(b)主として炭化水素、水と酸素化汚染物質を含む塔頂流を生成するのに有効な条件でストリッピング帯域に導入し、(4)ストリッピング帯域の吸収剤ボトム流を吸収帯域へ再循環させ、(5)ストリッピング帯域からの塔頂流を分留して炭化水素を回収し(任意)、(6)吸収帯域の塔頂流を苛性洗浄へ送って酸性成分を除去し、水と酸素化汚染物質をほとんど含まない炭化水素流を回収(任意)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素流から酸素化汚染物質 (oxygenated contaminants) を除去する方法に関するものである。炭化水素流は特定実施例ではアルコールの脱水で生成されるオレフィンを含む。特に、炭化水素流はアルコールの脱水で生成されるアルコールと同じ数の炭素数を有するオレフィンを含む。
【背景技術】
【0002】
オレフィンは従来、石油原料から触媒クラッキング法または水蒸気クラッキング法によって製造される。このクラッキング法、特に水蒸気クラッキングは種々の炭化水素原料から軽質オレフィン、例えばエチレンおよび/またはプロピレンを生成する。エチレンおよびプロピレンはプラスチックやその他の化合物を製造する各種方法で有用な、重要な日用石油化学製品である。
【0003】
原油の供給量は限られ、コストが増加しているため炭化水素生成物の別の製造方法が模索されている。MTO法では軽質オレフィン、例えばエチレンおよびプロピレンと、重質炭化水素、例えばブテンと生成される。このMTO法は分子篩と接触させてメタノールまたはジメチルエーテルを変換する。メタノールからオレフィンを製造する(MTO)方法に対する関心は、メタノールが石炭または天然ガスから合成ガスを製造し、次いでこの合成ガスを処理してメタノールを製造することによって得らことをベースにしている。
【0004】
対応するアルコールの脱水によってオレフィンを製造することもできる。エタノールは炭水化物の発酵によって得られ、生体からの有機物で構成されるため、バイオマスは世界の主要な再生可能エネルギー源である。エタノール脱水によって生じる排出流は主として未変換エタノール、水、エチレン、アセトアルデヒドを含む。アセトアルデヒドはエチレン回収操作で問題を引き起こす。
【0005】
特許文献1(国際特許第2006−048098 A1号明細書)には、種々の炭化水素化合物の混合物から酸素含有有機化合物を除去する方法が記載されている。炭化水素と酸素化物とを含む液相を第1カラムに供給して、酸素化物とボトム留分とを含む軽質留分を生成する。次いで、この軽質留分および炭化水素と酸素化物とのガス混合物を第2カラムに供給する。第2カラム内で軽質炭化水素留分と重質炭化水素留分とに蒸留分離し、第2カラムの上側部分に追加の溶剤を供給して酸素化物を溶かし、その酸素化物を第2カラムのボトム生成物中で排出する。その結果、酸素化物を含まない炭化水素生成物が第2カラムのヘッドから出て、酸素化物と溶剤と残りの炭化水素とを含む混合物は第2カラムのボトムから除去される。溶剤の一部または全体を再生して抽出蒸留カラムに再循環できる。溶剤はアルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノールまたはジエチレングリコールまたはN−メチル−ピロリドン(NMP)にすることができる。具体例ではメタノールおよびNMPを用いている。
【0006】
特許文献2(米国特許第20030045655 A1号明細書)は、オレフィン含有流から酸素化物を抽出する方法を提供している。この方法ではオレフィン含有流を抽出物と接触させ、接触させたオレフィン含有流と抽出剤とを抽出蒸留を用いて分離する。抽出剤は1気圧で極性液体組成物であり、平均沸点は1気圧で少なくとも38℃であるのが好ましい。極性液体組成物は少なくとも75重量%の水、アルコールまたはこれらの混合物を含むのがさらに好ましい。抽出剤はさらに、極性組成物であるのが望ましい。このような組成物は化合物、例えば水、一価アルコール、多価アルコールまたはこれらの混合物を含むのが好ましい。好ましい一価アルコールにはエタノールおよびプロパノールがある。好ましい多価アルコールにはグリコールがある。好ましくはグリコールにはエチレングリコールおよびトリエチレングリコールがある。抽出剤は少なくとも約75重量%、好ましくは少なくとも約85重量%、より好ましくは少なくとも約90重量%、さらに好ましくは少なくとも約95重量%の水、一価アルコールおよび/または多価アルコールを含むのが望ましい。抽出剤として最も好ましいのは水である。
【0007】
特許文献3(米国特許第20030098281 A1号明細書)には、オレフィン流の水および/または酸素化物濃度を制御する方法が記載されている。この方法ではオレフィン流を液体吸収剤と接触させる。この液体吸収剤はポリオール、アミン、アミド、ニトリル、複素環式水素含有化合物およびこれらの混合物からなる群の中から選択される。
【0008】
特許文献4(国際特許第WO 03 020678 A2号公報)には、酸素化物からオレフィンを生成する反応プロセスで生じるオレフィン流からジメチルエーテルを除去する方法が記載されている。この方法では酸素化物を分子篩触媒と接触させてオレフィン流を生成し(ここで、オレフィン流はエチレン、プロピレン、ジメチルエーテルおよびC4+オレフィンおよびより高沸点の炭化水素を含む)、オレフィン流をエチレン、プロピレンおよびジメチルエーテルを含む第1流と、C4+オレフィンおよびより高沸点の炭化水素を含む第2流とに分離し、次いで、第1流中に存在するジメチルエーテルを抽出蒸留を用いて分離する。抽出剤は極性組成物であるのが望ましい。このような組成物は化合物、例えば水、一価アルコール、多価アルコールまたはこれらの混合物を含むのが好ましい。好ましい一価アルコールにはエタノールおよびプロパノールがある。好ましい多価アルコールにはグリコールがある。好ましいグリコールにはエチレングリコールおよびトリエチレングリコールがある。抽出剤は少なくとも約75重量%、好ましくは少なくとも約85重量%、より好ましくは少なくとも約90重量%、さらに好ましくは少なくとも約95重量%の水、一価アルコールおよび/または多価アルコールを含むのが望ましい。抽出剤として最も好ましいのは水である。
【0009】
特許文献5(国際特許第WO 03 020670 A1号公報)には、オレフィン流から酸素化成分、例えばアセトアルデヒド、CO2および/または水を除去する方法が記載されている。この文献では上記酸素化成分がオレフィン組成物の次の処理に用いる触媒を汚染することがあるため、除去するのが望ましいと説明されている。さらに、ある種の酸素化化合物、例えばアセトアルデヒドの存在は他のオレフィン精製装置、例えば酸性ガス処理装置の汚損を引き起こすことがある。この従来技術はエチレンおよび/またはプロピレン含有流を処理する方法を提供する。この方法は、エチレン、プロピレン、C4+オレフィンおよびアセトアルデヒドを含むオレフィン流を用意することを含む。オレフィン流は第1留分と第2留分とに分離され、ここで、第1留分はオレフィン流中に存在するエチレンおよび/またはプロピレンの少なくとも大部分を含み、第2留分はオレフィン流中に存在するC4+オレフィンおよびアセトアルデヒドの少なくとも大部分を含む。この場合、第1留分は処理された酸性ガスである。オレフィン流は蒸留分離し、蒸留は抽出剤を用いる抽出蒸留であるのが好ましい。好ましい抽出剤は平均沸点が1気圧で少なくとも38℃の極性組成物である。メタノールは好ましい抽出剤の一種である。
【0010】
特許文献6(国際特許第WO 03 020672 A1号公報)には、エチレンおよび/またはプロピレン含有流からジメチルエーテルを除去する方法が記載されている。オレフィン流を吸水カラムに通し、吸水剤としてメタノールを用いる。メタノールおよび随伴水、および一部の酸素化炭化水素を吸水カラムのボトム流として回収し、オーバーヘッドオレフィンを回収し、蒸留カラムへ送る。蒸留カラムではエチレンおよびプロピレン、および、ジメチルエーテルからのより軽い沸点成分およびより重い沸点成分、例えばC4+成分およびメタノール洗浄で残ったメタノールを分離する。蒸留カラムに追加のメタノールを添加して、蒸留カラム内のクラスレートおよび/または自由水の生成を減らす。エチレンおよびプロピレン含有流は蒸留カラムからオーバーヘッドとして出て、より重い沸点成分、例えばジメチルエーテルおよびC4+成分はボトム流として蒸留カラムから出る。エチレンおよびプロピレンは次いで苛性洗浄カラムへ流れる。
【0011】
特許文献7(国際特許第WO 03 033438 A1号公報)には、酸素化物および水を含むオレフィン流を処理する方法が記載されている。この方法は下記の段階を含む:酸素化物および水を含むオレフィン流を用意し;オレフィン流を脱水し;脱水したオレフィン流を圧縮し;オレフィン流をメタノールで洗浄してオレフィン流から酸素化物の少なくとも一部を除去し;メタノール洗浄したオレフィン流を水と接触させ;水と接触したオレフィン流を分留する。オレフィン流はMTO法の排出流である。
【0012】
特許文献8(米国特許第2006 258894 A1号明細書)には縮合生成物のオレフィン含有量を維持しながら、炭化水素流、一般にフィッシャー・トロプシュ反応の縮合生成物の留分から酸素化物を抽出する方法が記載されている。酸素化物抽出法は極性有機溶剤、例えばメタノール、および水を溶剤として用いる抽出カラムで行う液−液抽出法である。ここで、極性有機溶剤および水は抽出カラムに別々に添加する。
【0013】
特許文献9(米国特許第2009 048474 A1号明細書)は、エタノールまたはプロパノールまたはこれらの混合物からなる少なくとも一種の一価脂肪族パラフィン第1級(または第2級)アルコールを含む原料からアルケンを製造する方法であって、下記段階を特徴とする方法に関する:
(1)一価脂肪族パラフィンの第1級(または第2級)アルコールを、高温高圧の反応蒸留カラム内で、対応する同じ炭素数のアルケンに変換し(反応蒸留カラムの頂部から抽出されるヘッド流は主として上記アルケンを含む)、
(2)段階(1)からのヘッド流を次いで、沸点が最も高いアルケンの少なくとも一部を縮合するのに十分な温度に冷却する、
(3)次いで段階(2)からの縮合アルケンの少なくとも一部を上記反応蒸留カラムに還流戻りとして再循環する、
(4)同時に残りのアルケンを回収する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際特許第2006−048098 A1号公報
【特許文献2】米国特許第20030045655 A1号明細書
【特許文献3】米国特許第20030098281 A1号明細書
【特許文献4】国際特許第WO 03 020678 A2号公報
【特許文献5】国際特許第WO 03 020670 A1号公報
【特許文献6】国際特許第WO 03 020672 A1号公報
【特許文献7】国際特許第WO 03 033438 A1号公報
【特許文献8】米国特許第2006 258894 A1号明細書
【特許文献9】米国特許第2009 048474 A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
発明の概要
本発明は炭化水素流から酸素化汚染物質および水を除去する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の対象は下記の段階を含む、炭化水素流から酸素化汚染物質および水を除去する方法にある:
(1)汚染された炭化水素流を気相で吸収帯域に導入し、
(2)吸収帯域中の炭化水素流を、下記(a)と(b)を生成するのに効果的な条件で水および酸素化汚染物質を吸収できる吸収剤と接触させ、
(a)酸素化汚染物質および水の含有量が減少したオーバーヘッド炭化水素流、
(b)吸収剤、炭化水素を含み且つ酸素化汚染物質および水の含有量が増加した吸収剤ボトム流、
(3)吸収剤ボトム流を下記(a)と(b)を生成するのに効果的な条件でストリッピング帯域に導入し、
(a)炭化水素、酸素化汚染物質および水をほとんど含まない吸収剤ボトム流、
(b)主として炭化水素、水および酸素化汚染物質を含むオーバーヘッド流、
(4)ストリッピング帯域の吸収剤ボトム流を吸収帯域へ再循環させ、
(5)必要に応じてさらに、ストリッピング帯域からのオーバーヘッド流を分留して炭化水素を回収し、
(6)必要に応じてさらに、吸収帯域のオーバーヘッドを苛性洗浄へ送って酸性成分を除去し、且つ、水および酸素化汚染物質をほとんど含まない炭化水素流を回収する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施例を示す。
【図2】本発明の一実施例を示す。
【図3】本発明の一実施例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
酸素化汚染物質および水を含む炭化水素流は精製プラントまたは化学プラント内の流れにすることができる。炭化水素はオレフィンを含むことができる。
酸素化汚染物質および水を含む炭化水素流中の酸素化汚染物質の比率は5重量%以下にすることができる。
【0019】
本発明の一実施例では、酸素化汚染物質および水を含む炭化水素流はアルコール脱水によって少なくとも一種のオレフィンを生成する際に生じる排出流である。その一例としてはエタノール脱水によって生じる主として未変換エタノール、水、エチレン、アセトアルデヒドを含む排出流がある。
本発明の一実施例では、酸素化汚染物質および水を含む炭化水素流は、アルコールと同じ炭素数を有するオレフィンを生成するアルコールの脱水反応器から出てくる流れ(反応器の排出流、脱水反応器の出口流ともよばれる)である。この出口流は主として未変換アルコール、水、アルコールに対応するオレフィン、酸素化汚染物質を含む。
【0020】
本発明の一実施例では、本発明はエタノールの脱水によって製造されたエチレンの精製に極めて効率的である。
この脱水反応器の出口流は例えば主としてエチレン、1重量%以下の酸素化物、エタン、CO、CO2、H2、CH4およびC3+炭化水素を含む。
この脱水反応器の出口流は、主としてエチレンおよび水蒸気および少量の酸素化物、エタン、CO、CO2、H2、CH4およびC3+炭化水素を含む。「少量」とは、エタン+CO+CO2+H2+CH4+C3+炭化水素とエチレンとの重量比が20/80以下、大抵の場合、10/90以下であることを意味する。
【0021】
本発明の一実施例では、エタン+CO+CO2+H2+CH4+C3+炭化水素とエチレンとの重量比は10/90以下、且つ、0.1/99.9以上である。
本発明の一実施例では、エタン+CO+CO2+H2+CH4+C3+炭化水素とエチレンとの重量比は5/95以下である。
本発明の一実施例では、酸素化物の比率は50〜5000wppmである。
本発明の一実施例では、酸素化物の比率は3000wppm以下である。
本発明の一実施例では、酸素化物の比率は2000wppm以下である。
【0022】
上記の脱水反応器の出口流は初めに冷却され、一般には冷却塔(クエンチタワー)内でクエンチ媒体として水を用いて冷却される。冷却塔では脱水反応器の出口に含まれる水の大部分が凝縮され、液体の水溶性ボトム流として塔のボトムから取りだす。この水溶性ボトム流の一部を熱交換器で冷却し、クエンチ媒体としてクエンチカラムの頂部に再循環する。
【0023】
酸素化汚染物質の例としては下記のものが挙げられる:アルコール、エーテル、例えばジエチルエーテルおよびメチルエチルエーテル、カルボン酸、例えば酢酸、アルデヒド、例えばアセトアルデヒド、ケトン、例えばアセトン、およびエステル、例えばメチルエステル。アルコール脱水で特に問題のある酸素化汚染物質はアルデヒドである。
【0024】
酸素化汚染物質および水を含む炭化水素流は低圧、例えば1〜3絶対バールで利用可能であり、水を高い比率で含むことができる。次いで、この炭化水素流を一つまたは複数の段階で圧縮および冷却し、大部分の水を除去し、さらに吸収帯域へ供給するのが有利である。吸収帯域の圧力は5〜40絶対バール、好ましくは10〜30絶対バールであるのが有利である。
【0025】
先行する圧縮段階での回収水は溶けた酸素化汚染物質および炭化水素の一部を含む。本発明の一実施例では圧縮段階に続く冷却段階で回収された水を水ストリッピングカラムへ送り、主として酸素化汚染物質および炭化水素を含むオーバーヘッド流と、主として純水のボトム流とを生成する。必要に応じてさらに、オーバーヘッド流を燃焼して酸素化汚染物質を破壊し、熱を回収するか、分留して炭化水素を回収する。汚染された炭化水素流を第1圧縮段階の前に冷却して水を回収することもできる。
【0026】
本発明の特定実施例では、吸収帯域に再循環される吸収剤は、吸収帯域に入る前に、冷却される。吸収剤は約30℃以下、好ましくは約20℃以下に冷却するのが有利である。
【0027】
吸収剤は、ポリオール、アミン、アミド、ニトリル、複素環式窒素含有化合物およびこれらの混合物からなる群の中から選択されるのが有利である。使用可能なポリオール、アミン、アミド、ニトリル、複素環式窒素含有化合物の例としてはエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン、ヒンダード環状アミン、アセトニトリル、n−メチルピロリドン、および、ジメチルホルムアミドおよびこれらの化合物の任意の2種またはそれ以上の混合物が挙げられる。本発明に従って処理したオレフィンは、ポリオレフィンを製造する原料としての使用に特に適している。
【0028】
相当量の水および酸素化汚染物質を炭化水素蒸気流から、蒸気流を有効量の吸収剤と接触させることによって除去する。吸収剤はポリオール、アミン、アミド、ニトリルおよび/または複素環式窒素含有化合物にするのが好ましい。この種の吸収剤は特に望ましい。なぜなら、ジメチルエーテル、アセトアルデヒドおよび水と同じような汚染物質除去の困難を取り除くが、炭化水素流中に任意成分として存在するオレフィンを容易に吸収しないからである。これは、酸素化汚染物質をオレフィン流から極めて高い効率で除去できることを意味する。
【0029】
高い有効性を得るために、吸収系に導入する吸収剤材料は非酸素化炭化水素吸収材料、例えば希釈剤をほとんど含まないようにする必要がある。例えば、吸収装置に導入される吸収剤材料はエチレンおよび/またはプロピレンを多く含むオレフィン流からジメチルエーテルおよび/または水を除去するのに有効である少なくとも約75重量%の吸収剤材料を含む必要がある。吸収剤材料は少なくとも約90重量%、好ましくは少なくとも約95重量%、さらに好ましくは少なくとも約98重量%の吸収剤を含むのが望ましい。吸収剤の例としてはエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン、ヒンダード環状アミン、アセトニトリル、n−メチルピロリドンおよびジメチルホルムアミドおよびこれらを合わせたものからなる群の中から選択される少なくとも一種の化合物が挙げられる。
【0030】
本発明では通常の吸収システムを使用できる。本発明の一実施例では、吸収システムは充填カラムを用いるが、プレート吸収カラムを用いることもできる。別の実施例では、吸収カラムは吸収カラムの頂部に位置する液体注入口を有する。吸収剤液体はカラム頂部に均等に分配する。吸収剤液体の均等分配は分配プレートまたはスプレーノズルを用いて実行するのが望ましい。吸収カラムのボトムにはガス注入口があり、ここで、水および酸素化汚染物質を含む炭化水素流が吸収カラムに入る。蒸気成分はカラムの下方へ移動する液体吸収剤に向流してカラムの上方へ移動する。これは向流吸収として知られる。カラム内の充填またはプレートはカラム内で蒸気成分と液体成分とを均一に接触させる表面を提供する。向流吸収カラムでは、液体相と蒸気相の両方に可溶なガスの濃度はカラムのボトムで最高であり、カラムの頂部で最低である。液体排出口は吸収カラムのボトムにあり、一般にガス注入口より下側にある。液体吸収剤に最も可溶なガスが少ない気相排出口は吸収カラムの頂部にあり、一般に液体注入口の上側にある。
【0031】
本発明の特定の実施例ではストリッピング帯域は蒸留カラムである。ストリッピング帯域の蒸留カラムのオーバーヘッド流を冷却して、酸素化汚染物質および炭化水素と酸素化汚染物質とを含む気相を含む水相を生成する。この水相の一部は蒸留カラムの還流として用い、残部は必要に応じて上述の水ストリッピングカラムへ送る。
【0032】
上記気相は水が供給される洗浄カラムへ送り、酸素化汚染物質を含むオーバーヘッド炭化水素流と、酸素化汚染物質を含むボトム水流とを生成するのが有利である。洗浄カラムのボトム、ストリッピング帯域内でストリッピングカラムオーバーヘッドを冷却して回収し且つ還流として用いない水相の残部は、除去すべき酸素化汚染物質を主成分として含むのが有利である。具体的には、汚染された炭化水素流を吸収帯域に入る前に圧縮する場合には、酸素化汚染物質の一部が凝縮水中に入る。下記(1)〜(3)を合わせたものは除去すべき酸素化汚染物質を主成分として、有利には90重量%以上含む:
(1)凝縮水中の酸素化汚染物質、
(2)洗浄カラムのボトム中の酸素化汚染物質、
(3)ストリッピング帯域内でストリッピングカラムオーバーヘッドを冷却して回収し、還流として用いない水相の残部。
洗浄カラムのオーバーヘッド流中に含まれる除去すべき酸素化汚染物質は極めて少ないのが有利である。
【0033】
洗浄カラムのオーバーヘッド流は必要に応じてさらに、酸素化汚染物質および水を含む炭化水素流を生成したプロセスに再循環して精製する。水溶性ボトム流は必要に応じてさらに上記水溶性ストリッピングカラムへ送る。
【0034】
本発明の一実施例では下記(1)〜(3):
(1)吸収帯域に入る前の汚染された炭化水素の圧縮中に回収された水流、
(2)洗浄カラムのボトム流、
(3)ストリッピング帯域内のストリッピングカラムオーバーヘッドを冷却して回収され且つ還流として用いない水相の残部
をフラッシュドラムへ送り、有利には下側部分で洗浄カラムへ送って洗浄し、ガスのオーバーヘッドと、一部を洗浄カラムへ送り且つ吸収剤として用いる水溶液のボトム流とを生成する。水溶液のボトム流の残部は、除去すべき酸素化汚染物質の大部分を含む。この実施例は[図2]に示されている。
【0035】
本発明の一実施例では下記(1)と(2):、
(1)吸収帯域に入る前の汚染された炭化水素の圧縮中に回収された水流、
(2)ストリッピング帯域内のストリッピングカラムオーバーヘッドを冷却して回収され且つ還流として用いない水相の残部
をフラッシュドラムへ送り、有利には下側部分で洗浄カラムへ送って洗浄し、ガスするオーバーヘッドと、一部を洗浄カラムへ送り且つ吸収剤として用いる水溶性ボトム流とを生成する。
フラッシュドラム野水溶性ボトム流の残部および洗浄カラムのボトム流を、水ストリッピングカラムとよばれるストリッピングカラムへ送り、主として酸素化汚染物質および炭化水素を含むオーバーヘッド流と、主として純水のボトム流とを生成する。必要に応じてさらに、オーバーヘッド流を燃やして酸素化汚染物質を破壊し、熱を回収する。このオーバーヘッド流は除去すべき酸素化汚染物質の大部分を含む。この実施例は[図3]に示されている。
【実施例】
【0036】
[図1]は本発明の一実施例を示す。1は吸収帯域、2はストリッピング帯域、3は苛性洗浄、4は凝縮器−分離器、5は洗浄カラムである。酸素化汚染物質および水を含む炭化水素流11を吸収帯域1へ供給して、酸素化汚染物質および水の含有量が減少したオーバーヘッド流12と、吸収剤、炭化水素を含み且つ酸素化汚染物質および水の含有量が増加した吸収剤ボトム流13とを生成する。吸収剤ボトム流13をストリッピング帯域2に送り、炭化水素、酸素化汚染物質および水をほとんど含まない吸収剤ボトム流14と、主として炭化水素、水および酸素化汚染物質を含むオーバーヘッド流15とを生成する。カラム2のボトムのリボイラは[図1]に示していない。流れ14を冷却して吸収帯域1に再循環する。流れ15は凝縮器分離器4で凝縮して還流16と、酸素化汚染物質を含む水相17と、主として炭化水素および酸素化汚染物質を含む気相18とを生成する。この流れ18を水20が供給された洗浄カラム5へ送り、流れ11の炭化水素および少量(有利には約10重量%以下)の酸素化汚染物質を含むオーバーヘッド炭化水素流19と、酸素化汚染物質を含むボトム水流21とを生成する。流れ17および21は主成分(有利には約90重量%以上)が流れ11の酸素化汚染物質である。必要に応じてさらに、オーバーヘッド流19を酸素化汚染物質および水を含む炭化水素流を生成するプロセスに再循環する。吸収帯域のオーバーヘッド流12を苛性洗浄3へ送って酸性成分を除去し、水、酸性成分および酸素化汚染物質をほとんど含まない炭化水素流22を回収する。
【0037】
[図2]は本発明の一実施例を示し、[図1]にフラッシュドラム50、圧縮器33、35、分離器34、36、冷却器37、38を組み入れたものである。流れ17および21をフラッシュドラム50へ送る。酸素化汚染物質および水を含む炭化水素流41を圧縮器33へ送って、熱交換器37内で冷却し、分離器34へ送って、気相42および水相43を生成する。気相42を圧縮器35へ送って、熱交換器38内で冷却し、分離器36へ送って、気相44および水相45を生成する。流れ41と同様であるが、水および酸素化汚染物質の含有量が減少した気相44をライン11を介して吸収帯域へ送る。主として、溶けた酸素化汚染物質および炭化水素の一部を含む水である水流43および45をフラッシュドラム50へ送る。フラッシュドラム50からの気相52を洗浄カラム5へ送る。フラッシュドラム50からの水流51は酸素化汚染物質を含む。フラッシュドラムボトム流の一部を流れ20として洗浄カラム5へ送り、吸収剤として用いる。
【0038】
[図3]は本発明の一実施例を示し、[図2]に凝縮器31およびリボイラ32を備えた水ストリッピングカラム30を組み入れたものである。フラッシュドラム50からの水流51および洗浄カラムからの流れ21をストリッピングカラム30へ送る。この水ストリッピングカラム30は、主として炭化水素および酸素化汚染物質を含むオーバーヘッド流47と、主として純水の底流48とを生成する。流れ47は破壊または再循環することができる。
【0039】
アルコール脱水方法は下記文献に記載されている。
【特許文献10】国際特許第WO 2009 098262号公報
【特許文献11】国際特許第WO 2009 098267号公報
【特許文献12】国際特許第WO 2009 098268号公報
【特許文献13】国際特許第WO 2009 098269号公報
【0040】
上記特許の内容は本明細書の一部をなす。本発明はエタノールの脱水で生成したエチレンを精製するのに非常に効率的である。
エタノール脱水に続いて精製すべき排出流の一般的な乾燥重量組成(%)は以下の通り(合計100%):
一酸化炭素 0.01〜0.1
エタン 0.01〜0.1
エチレン 95〜99.75
プロピレン 0.0〜0.01
アセトアルデヒド 0.03〜0.3
エタノール 0.2〜2.0
イソブチレン 0.0〜0.1
1−ブテン 0.0〜0.1
トランス−2−ブテン 0.0〜0.3
シス−2−ブテン 0.0〜0.3
3−メチル−1−ブテン 0.0〜0.3
【0041】
水の比率はエチレン1モル当たり1モルの水からエチレン1トン当たり約5トンまでにすることができる。上記の一般的な流れを本発明の方法で精製してアセトアルデヒド含有量が5ppm以下、多くの場合3ppm以下、さらに多くの場合2ppm以下のエチレン流を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の段階を含む、炭化水素流から酸素化汚染物質および水を除去する方法:
(1)汚染された炭化水素流を気相で吸収帯域に導入し、
(2)吸収帯域中の炭化水素流を、下記(a)と(b)を生成するのに効果的な条件下で水および酸素化汚染物質を吸収できる吸収剤と接触させ、
(a)酸素化汚染物質および水の含有量が減少したオーバーヘッド炭化水素流、
(b)吸収剤、炭化水素を含み且つ酸素化汚染物質および水の含有量が増加した吸収剤ボトム流
(3)吸収剤ボトム流を、下記(a)と(b)を生成するのに効果的な条件でストリッピング帯域に導入し、
(a)炭化水素、酸素化汚染物質および水をほとんど含まない吸収剤ボトム流、
(b)主として炭化水素、水および酸素化汚染物質を含むオーバーヘッド流、
(4)ストリッピング帯域の吸収剤ボトム流を吸収帯域へ再循環させ、
(5)必要な場合には、ストリッピング帯域からのオーバーヘッド流を分留して炭化水素を回収し、
(6)必要な場合には、吸収帯域のオーバーヘッドを苛性洗浄へ送って酸性成分を除去し、水および酸素化汚染物質をほとんど含まない炭化水素流を回収する。
【請求項2】
酸素化汚染物質と水を含む炭化水素流を、水の大部分を除去するために一つまたは複数の段階で圧縮、冷却し、さらに吸収帯域に供給する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ストリッピング帯域が蒸留カラムである請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ストリッピング帯域の蒸留カラムのオーバーヘッド流を冷却して、酸素化汚染物質を含む水相と、炭化水素および酸素化汚染物質を含む気相とを生成し、上記水相の一部を蒸留カラムの還流として用いる請求項3に記載の方法。
【請求項5】
冷却によって生成した炭化水素および酸素化汚染物質を含む気相を洗浄カラムへ送り、この洗浄カラムに水を供給して、酸素化汚染物質を含むオーバーヘッド炭化水素流と、酸素化汚染物質を含むボトム水流とを生成する請求項4に記載の方法。
【請求項6】
洗浄カラムのオーバーヘッドを、酸素化汚染物質および水を含む炭化水素流を生成したプロセスへ再循環して精製する請求項5に記載の方法。
【請求項7】
下記(1)〜(3)をフラッシュドラムへ送り、ガスのオーバーヘッドを生成し、これを洗浄カラムへ送って洗浄し、水ボトム流の一部を洗浄カラムへ送り、吸収剤として用いる請求項5または6に記載の方法:
(1)吸収帯域に入る前の汚染された炭化水素の圧縮中に回収された水流、
(2)洗浄カラムのボトム流、
(3)ストリッピング帯域内のストリッピングカラムオーバーヘッドを冷却して回収され、還流として用いない水相の残部。
【請求項8】
下記(1)〜(3):
(1)吸収帯域に入る前の汚染された炭化水素の圧縮中に回収された水流、
(2)ストリッピング帯域内のストリッピングカラムオーバーヘッドを冷却して回収され、還流として用いない水相の残部
をフラッシュドラムへ送り、ガスオーバーヘッドを生成し、これを洗浄カラムへ送って洗浄し、水ボトム流の一部を洗浄カラムへ送り、吸収剤として用い、
フラッシュドラムの水溶性ボトム流の残部および洗浄カラムのボトム流を、水溶性ストリッピングカラムとよばれるストリッピングカラムへ送り、主として酸素化汚染物質および炭化水素を含むオーバーヘッド流と、主として純水のボトム流とを生成する請求項5または6に記載の方法。
【請求項9】
酸素化汚染物質および水を含む炭化水素流の圧縮段階に続く冷却段階で回収された水を、水ストリッピングカラムとよばれる水ストリッピングカラムへ送り、主として酸素化汚染物質および炭化水素を含むオーバーヘッド流と、主として純水のボトム流とを生成する請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
酸素化汚染物質および水を含む炭化水素流が、少なくともオレフィンを作るアルコール脱水によって生成された排出流である請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
酸素化汚染物質および水を含む炭化水素流が主としてエチレン、1重量%以下の酸素化物、エタン、CO、CO2、H2、CH4およびC3+炭化水素を含む請求項10に記載の方法。
【請求項12】
吸収帯域の圧力が5〜40絶対バールである請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
吸収剤がポリオール、アミン、アミド、ニトリル、複素環式窒素含有化合物およびこれらの混合物からなる群の中から選択される請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
吸収剤がエチレングリコール、ジエチレングリコールおよびトリエチレングリコールの中から選択される請求項13に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−515035(P2013−515035A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545279(P2012−545279)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【国際出願番号】PCT/EP2010/070275
【国際公開番号】WO2011/076752
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(504469606)トタル リサーチ アンド テクノロジー フエリユイ (180)
【Fターム(参考)】