説明

炭化物の脱塩処理方法及び脱塩処理設備

【課題】 炭化物の塩素濃度を所望程度まで低くしつつも、洗浄に使用する水量を大幅に減少させ得る、炭化物の脱塩処理方法及び脱塩処理設備を提供する。
【解決手段】 撹拌槽2内において炭化物を一次洗浄水と混合し撹拌することにより洗浄する一次洗浄工程と、前記一次炭化物を脱水機3によって一次脱塩炭化物と一次濾液とに分離する一次脱水工程と、前記一次脱塩炭化物を脱水機3に保持させた状態で新水の二次洗浄水によって洗浄する二次洗浄工程と、前記二次洗浄工程において洗浄した炭化物を、脱水機3にて二次脱塩炭化物と二次濾液とに分離する二次脱水工程と、を有し、前記二次濾液を一次洗浄水として再利用することとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱分解ガス溶融炉や炭化炉で生成される炭化物を脱塩処理する方法及び設備に関する。
【背景技術】
【0002】
廃棄物や下水汚泥を直接焼却炉で燃焼させずに、燃料化したのち、各種の炉やボイラー、火力発電設備、或いはエンジン・ガスタービンなどの原動機で利用する技術が種々研究されている。
【0003】
たとえば、熱分解ガス化設備では熱分解と同時にチャーと呼ばれる粉末状の炭が発生する。また、廃棄物や下水汚泥を部分燃焼させたり、外部燃料で間接加熱することにより積極的に炭化させる炭化炉がある。これらの炭化物は、16000〜20000kJ/kgの発熱量があり、微粉末を燃料とするセメントキルンやボイラーの燃料の一部等として利用することが可能である。
【0004】
しかしながら、ごみを原料とする炭化物は塩素を含有しており、そのまま燃焼させた場合には、塩素によるプラントのトラブルや製品への塩素分の混入といった問題が発生する場合があるため、炭化物脱塩処理設備で脱塩することが必要となる。
【0005】
炭化物脱塩処理設備では、炭化物を洗浄水(温水または冷水)で洗浄することにより脱塩処理を施している。洗浄時には、大量の水を使用し、洗浄後の濾液は、排水処理設備にて処理するか、あるいは、炉内噴霧により処理することにより、大量に廃棄している。
【0006】
図3は、従来の炭化物脱塩処理設備の一例を示すブロック図であり、図4は従来の炭化物脱塩処理設備の脱塩処理フローを示すフローチャートである。
【0007】
図3に示すように、炭化物脱塩処理設備100は、炭化物を洗浄水と混合し撹拌して洗浄する撹拌槽101と、撹拌槽101で撹拌洗浄された炭化物を一次脱水する脱水機102と、を備えている。
【0008】
炭化物中に含有される塩素濃度、洗浄水量、洗浄水温度、洗浄時間、洗浄回数等によって、脱塩後の炭化物中の塩素濃度は変わる。炭化物の含有塩素濃度をできるだけ下げるためには洗浄回数を増やせば良いが、コスト面との兼ね合いも考慮すれば、洗浄工程は2回程度が適当である。以下、図3のブロック図及び図4のフローチャートを参照して脱塩処理方法を説明する。
【0009】
まず、一次洗浄工程110において、炭化物と洗浄水(温水または冷水)を撹拌槽101で混合し、十分に撹拌させ、炭化物中の塩素を一次洗浄水側へ移行させる。
【0010】
次に、一次脱水工程111では、脱水機102にて一次脱塩炭化物と一次濾液に分離し、一次脱塩炭化物は二次洗浄工程112でさらに脱塩を行い、一次濾液は排水処理設備103または炉内噴霧(図示せず。)等により処理する。
【0011】
二次洗浄工程112では、脱水機102に一次脱塩炭化物を保持した状態で直接追い水として上水等の未洗浄の二次洗浄水を供給する。この二次洗浄工程112は、一次洗浄工程で炭化物から一次洗浄水側に移行した塩素が完全に脱塩されずに炭化物の周りに付着し、見かけ上、塩素濃度が低減されていない炭化物となっているため、一次洗浄水を二次洗浄水にて追い水(置換)することを目的としている。
【0012】
二次脱水工程113では、脱水機102において炭化物(製品)と二次濾液に分離し、二次濾液は排水処理設備103または炉内噴霧等で処理する。なお、排水処理設備103で処理された水は、河川等に放流される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上記従来の技術においては洗浄工程を2回行っているため、大量の洗浄水が必要となる。また、2回分の濾液が排水量の増大の原因となり、処理能力の大きい排水処理施設が必要となり、あるいは、炉内噴霧処理量の増大にともない大型の排ガス処理設備が必要となり、熱回収量が減少する。
【0014】
そこで、本発明は、炭化物の含有塩素濃度を所望程度まで低くしつつも、洗浄に使用する水量を大幅に減少させ得る、炭化物の脱塩処理方法及び脱塩処理設備を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、本発明に係る炭化物の脱塩処理方法は、撹拌槽内において炭化物を一次洗浄水と混合し撹拌することにより洗浄する一次洗浄工程と、 前記一次洗浄工程において洗浄した炭化物を脱水機によって一次脱塩炭化物と一次濾液とに分離する一次脱水工程と、前記一次脱塩炭化物を前記脱水機に保持させた状態で新水の二次洗浄水によって洗浄する二次洗浄工程と、前記二次洗浄工程において洗浄した炭化物を前記脱水機にて二次脱塩炭化物と二次濾液とに分離する二次脱水工程と、を有し、前記二次濾液を前記一次洗浄水に再利用することを特徴とする。
【0016】
また、上記目的を達成するため、本発明に係る炭化物の脱塩処理設備は、炭化物を一次洗浄水と混合し撹拌するための撹拌槽と、前記撹拌槽で一次洗浄水と混合した炭化物を脱水するための脱水機と、炭化物と一次洗浄水との混合物を前記撹拌槽から前記脱水機へ搬送するための搬送路と、前記脱水機に二次洗浄水を供給するための二次洗浄水供給手段と、前記脱水機の脱水濾液を前記撹拌槽へ前記一次洗浄水として供給する一次洗浄水供給流路と、前記脱水機からの脱水濾液を排水するための排水流路と、前記脱水機からの脱水濾液の流路を前記一次洗浄水供給流路または前記排水流路に切り換えるためのバルブと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、二次洗浄水の炭化物の洗浄に利用した後に、一次洗浄水として再利用することにより、炭化物脱塩処理に必要な洗浄水の使用量を最大で50%程度削減することができる。
【0018】
また、炭化物脱塩処理によって排出される脱水濾液の量を削減できるので、排水処理設備の小規模化が可能となり、排水を炉内噴霧で処理する場合は、噴霧量を削減できるので、排ガス処理設備を小規模化でき、回収熱量が増加し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明を実施するための最良の形態について、以下に図1,図2を参照して説明する。図1は、炭化物の脱塩処理設備を示すブロック図であり、図2は、炭化物の脱塩処理方法を示すフローチャートである。
【0020】
図1に示すように、脱塩処理設備1は、炭化物を一次洗浄水と混合撹拌して洗浄するための撹拌槽2と、撹拌槽2で洗浄された炭化物を脱水するための脱水機3と、撹拌槽2から洗浄後の炭化物を脱水機3へ搬送するための搬送路4と、脱水機3に二次洗浄水を供給するための二次洗浄水供給手段5と、脱水機3の脱水濾液を撹拌槽2へ一次洗浄水として供給する一次洗浄水供給流路6と、脱水機3からの脱水濾液を排水するための排水流路7と、一次洗浄水供給流路6と排水流路7とを切り換えるバルブ8と、一次洗浄水供給流路6に設けられた揚水ポンプ9と、を備えている。
【0021】
撹拌槽2は、モータ2aで駆動する撹拌翼2bを備え、一次洗浄水供給流路6の出口が撹拌槽2の槽内に向けられている。撹拌槽2は、図外の炭化炉等の炭化処理施設からコンベア等の搬送手段によって搬送される炭化物を受け入れる。
【0022】
一次洗浄工程S1では、一次洗浄水供給流路6から一次洗浄水が供給され、炭化物と一次洗浄水とを撹拌翼2bによって混合撹拌することにより、炭化物に含有されている塩素分を洗い出し、一次洗浄処理を施す。炭化物に含まれる塩素分は、大部分が塩化ナトリウムや塩化カルシウム等の無機塩の形態で存在しており、これらは水溶性であるため、水で洗浄することにより炭化物から取り除くこと(脱塩) ができる。後に詳述するが、一次洗浄水は、二次洗浄後の脱水濾液が利用される。
【0023】
一般に、脱塩炭化物中の塩素濃度は、洗浄水の温度と洗浄時間と洗浄回数の間に相関関係があり、温度が高く、洗浄時間が長いほど、脱塩炭化物中の塩素濃度は低くなる。そのため、洗浄水の温度を管理し、洗浄時間を管理することにより、脱塩炭化物中の塩素濃度を管理するたことができる。
【0024】
撹拌槽2において一次洗浄された炭化物は、洗浄後の一次洗浄水とともに、搬送路4を通じて脱水機3に搬送される。搬送路4は、炭化物を搬送し得るものであれば特に限定されず、たとえば、金属製または樹脂製のパイプ、可撓性ホース、スクリューコンベア等によって撹拌槽2内の洗浄水と炭化物を脱水機3に搬送できれば良い。
【0025】
一次脱水工程S2では、脱水機3によって、一次脱塩炭化物と一次濾液とに分離し、一次濾液は、排水流路7を通じて排水される。このとき、脱水機3からの濾液の流路を一次洗浄水供給流路6または排水流路7に切り換えるためのバルブ8は、一次濾液を排水流路7へ流すように切り換えられている。脱水機3は、炭化物を脱水し濾液を分離できれるものであれば、脱水方式、脱水機構等は限定されない。
【0026】
脱水機から排水された一次濾液は、排水処理施設10に送られるか、あるいは、図示しない炉内噴霧によって処理される。排水処理施設10で浄化処理された水は、河川等に放流される。
【0027】
なお、図1に示す例では、一次洗浄水供給流路6と排水流路7の分岐点に設けた方向切換弁によって流路を切り換えるように構成されているが、脱水機3からの脱水濾液の流路を一次洗浄水供給流路6または排水流路7に切り換えることができれば良く、バルブの個数、配管構成、配管数、バルブの配置等は限定されない。
【0028】
二次洗浄工程S3では、脱水機3において一次濾液と分離された一次脱塩炭化物が、脱水機3に同じ位置で保持された状態で、二次洗浄水供給手段5を通じて二次洗浄水が供給され、二次洗浄される。二次洗浄水には、洗浄に未使用の新水を用いる。これは、一次洗浄で炭化物から一次洗浄水側に移行した塩素は、完全に脱水されずに炭化物の周りに付着し、見かけ上、塩素濃度が低減されていない炭化物となっているため、一次洗浄水を二次洗浄水にて追い水(置換)するためである。
【0029】
次に、二次脱水工程S4において、二次洗浄された炭化物を、脱水機3によって二次脱塩炭化物と二次濾液とに分離することにより、二次脱水処理を施す。二次濾液は、一次洗浄水供給流路6を通じて、ポンプ9の作用により、一次洗浄水として、撹拌槽2へ供給される。このとき、バルブ8は、二次濾液を一次洗浄水供給流路6へ供給するように切り換えられている。
【0030】
二次濾液中には多少の塩素が含まれるが、その含まれる割合は、一次洗浄での脱塩割合と比べて十分に小さいため、二次濾液を一次洗浄水として再利用することができる。
【0031】
上記のように、二次濾液を一次洗浄水として再利用することにより、洗浄に必要な水の使用量を最大で50%程度削減することができる。
【0032】
また、脱水工程から発生する濾液量を削減できるため、排水処理設備で処理する場合には小規模の排水処理設備で処理可能となり、炉内噴霧で処理する場合には小規模の排ガス処理設備で処理可能となり、熱回収量を増やすことができる。
【0033】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲の範囲内において、種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る炭化物脱塩処理設備の一実施形態を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る炭化物脱塩処理方法の一実施形態を示すフローチャートである。
【図3】従来の炭化物脱塩処理設備を示すブロック図である。
【図4】従来の炭化物脱塩処理方法を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0035】
1 脱塩処理装置
2 撹拌槽
3 脱水機
4 搬送路
5 二次洗浄水供給手段
6 一次洗浄水供給流路
7 排水流路
8 バルブ
9 ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撹拌槽内において炭化物を一次洗浄水と混合し撹拌することにより洗浄する一次洗浄工程と、
前記一次洗浄工程において洗浄した炭化物を、脱水機によって一次脱塩炭化物と一次濾液とに分離する一次脱水工程と、
前記一次脱塩炭化物を前記脱水機に保持させた状態で、新水の二次洗浄水によって洗浄する二次洗浄工程と、
前記二次洗浄工程において洗浄した炭化物を、前記脱水機にて二次脱塩炭化物と二次濾液とに分離する二次脱水工程と、を有し、
前記二次濾液を前記一次洗浄水に再利用することを特徴とする、炭化物の脱塩処理方法。
【請求項2】
炭化物を一次洗浄水と混合し撹拌するための撹拌槽と、
前記撹拌槽で一次洗浄水と混合した炭化物を脱水するための脱水機と、
炭化物と一次洗浄水との混合物を前記撹拌槽から前記脱水機へ搬送するための搬送路と、
前記脱水機に二次洗浄水を供給するための二次洗浄水供給手段と、
前記脱水機の脱水濾液を前記撹拌槽へ前記一次洗浄水として供給する一次洗浄水供給流路と、
前記脱水機からの脱水濾液を排水するための排水流路と、
前記脱水機からの脱水濾液の流路を、前記一次洗浄水供給流路または前記排水流路に切り換えるためのバルブと、
を備えることを特徴とする炭化物の脱塩処理設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−269782(P2009−269782A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−120995(P2008−120995)
【出願日】平成20年5月7日(2008.5.7)
【出願人】(000133032)株式会社タクマ (308)
【Fターム(参考)】