説明

炭化物樹脂アロイ、それを用いた成形体及び炭化成形体

【課題】本発明は、機械強度と均一性に優れ、炭化物の含有量を高くできる炭化物樹脂アロイ、それを用いた成形体、炭化成形体を提供することを目的とするものである。
【解決手段】バイオマス由来の多孔性炭化物と特定の樹脂とを含有する炭化物樹脂アロイ、バイオマス由来の多孔性炭化物、及び、樹脂、樹脂と親和性を有する特定の化合物、バイオマス由来の多孔性炭化物と親和性を有する特定の化合物とを加熱混練することで得られる炭化物樹脂アロイ、それを用いた成形体、炭化成形体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化物樹脂アロイ、それを用いた成形体及び炭化成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
化石資源を主要な原料とする従来のプラスチック素材に替わり、バイオマス(生物資源)を主要な原料に使うバイオマス・プラスチック(バイオプラ)の利用が広まっている。また、化石資源を原料とするプラスチック材料とバイオマスとを複合化させた材料開発もされている(例えば、特許文献1参照)。しかし、性能面(機械的強度が低い等)、応用面(コストが高い)での制限があり、現在のところ限られて分野でしか利用されていない。
【0003】
近年になり、地球温暖化対策の一環として、排出二酸化炭素量を意識した素材の利用が進んでいる。例えば、リサイクル可能素材の再利用の促進、植物由来のリサイクル素材プラスチックの開発などを挙げることができる。植物性材料をプラスチックと複合化させ、材料としての性能を保ちつつ二酸化炭素排出量の増加を抑制しようという考え方もそのひとつである。これは、植物性材料から排出される二酸化炭素は、その植物性材料が吸収した二酸化炭素と等量であるという「カーボンニュートラル」という考え方に基づいた二酸化炭素削減対策ということができる。こうした観点から、ケナフの靭皮繊維とプラスチックとを複合化させた材料が自動車用内装材(例えば、特許文献2参照)、建材(例えば、特許文献3参照)に使用されている。しかし、このカーボンニュートラルの考え方は、現在より二酸化炭素量を増やさない、あるいは、少しでも増加を抑制しようとするものであり、二酸化炭素削減に寄与するものではない。
【0004】
二酸化炭素を吸収した植物は、燃えたり腐ったりすることで、その二酸化炭素を放出する。二酸化炭素は何十年かのスパンで大気と植物との間を循環することとなり、前記のごとく、その結果として二酸化炭素の削減に寄与するものではない。しかし、大気中の二酸化炭素を吸収して育った植物からなる間伐材・林地残材、端材等を炭化して燃やさずに有効利用することで、二酸化炭素を長期間地表に固定しておくことができる。このような考え方から植物の炭化を進めようとの考え方がある。植物の炭化材料は、日本では古くから利用されてきており、その典型が燃料として利用されている炭である。また、炭は気体の吸着機能があり、吸着材としても利用されてきた。全く異なるコンセプトから高機能材料として、合成繊維を炭化させたカーボン繊維もある。炭化材料を、半永久的に使用する材料として、多方面に、大量に使用できれば、二酸化炭素削減に大きく寄与することができることは明らかである。炭化材料を半永久的に、多方面、大量に使用できるようにするためには、材料としての強度、加工性、機能性が、少なくとも従来材料より劣ることなく、付加的な特徴があることが必要である。また、二酸化炭素固定化への寄与の観点からは、材料中に炭化材料が高充填率されていることが必要であり、一方、多方面に、大量に使用されるためにはその加工性が優れている必要がある。
【0005】
今までに植物を炭化し、材料として利用するために、炭化材料と樹脂との複合材料が提案されている。木炭等の木質材料の炭化物は、多孔質性ゆえの優れた吸着性能をもっているため、脱臭機能を中心にした樹脂複合材料、細菌の繁殖抑制機能を目的とした樹脂複合材料が提案されているが、複合材料の機械強度を向上させたものはまだ提案されていない。例えば、炭粉と、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等、ペット樹脂のいずれかとを混合した炭混合樹脂ペレットが開示されているが炭粉の含有量は50%以下である(特許文献4参照)。例えば、木材チップ炭化物粉と樹脂と界面活性剤とを含む炭材含有樹脂組成物が開示されているが、木材チップ炭化物粉の含有量の上限は33%と低い(特許文献5参照)。一方、木炭を熱可塑性樹脂と複合化させる技術も開示されているが、効果として着色効果しか記載されておらず、また、その含有量も低く、機械強度の改善等の検討は全くなされていない(特許文献6参照)。また木炭の空隙内に硬化ポリマーの連続層を生成した複合体が提案されているが、木炭の物理的強度を向上させるためであり、樹脂自体の強度向上を目的とするものではない(特許文献7参照)。また、第1の反応性官能基を有するポリマー等と、第2の反応性官能基を有する無機粒子を含み、第1及び第2の反応性官能基間の反応により無機粒子とポリマー等が化学結合する耐火性の有機/無機複合材料が提案されているが、耐火性の向上を目的とするものであり、無機粒子として多孔性炭化物使用の記載もない(例えば、特許文献8参照)。また、樹脂原料を多孔性の粉粒体と混合しつつ、反応触媒の存在下で重合反応させて複合材料を得、熱処理により複合炭化材料を得る提案があるが、樹脂と特定の化合物、及び多孔性の炭化物との組み合わせによる複合材料についての記載はない(特許文献9参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平06−345944号公報
【特許文献2】特開2005−200470号公報
【特許文献3】特開2004−143401号公報
【特許文献4】特開2009−293006号公報
【特許文献5】特開平11−043611号公報
【特許文献6】特開2008−222755号公報
【特許文献7】特開平07−186111号公報
【特許文献8】特開2007−197704号広報
【特許文献9】特開2006−188366号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、機械強度が優れ、炭化物の含有量を高くできる炭化物樹脂アロイ、それを用いた成形体、炭化成形体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
下記に示す本発明により上記課題を解決できることを見出した。
[1] バイオマス由来の多孔性炭化物、熱可塑性樹脂、当該熱可塑性樹脂と親和性であり、官能基(A)を有する化合物(X)、及び該バイオマス由来の多孔性炭化物と親和性であり、官能基(B)を有する化合物(Y)とを加熱混練することで官能基(A)と(B)の相互作用を発現させて成る炭化物樹脂アロイであり、該官能基(A)と官能基(B)がカルボキシル基、水酸基、アミノ基、エポキシ基から選ばれた組み合わせであることを特徴とする炭化物樹脂アロイ。
[2] 前記バイオマス由来の多孔性炭化物が、アスペクト比5以上の繊維状である炭化物樹脂アロイ。
[3] 前記記載の炭化物樹脂アロイを含有する成形体。
[4] 前記[3]記載の成形体を酸素の供給を制限した状態で熱処理した炭化成形体。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、機械強度が高く、炭化物の含有量を高くできる炭化物樹脂アロイ、それを用いた成形体、炭化成形体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明におけるバイオマスとは、再生可能な生物由来の有機性資源(植物や動物など)で、化石資源(石油・石炭など)を除いたものをいう。具体的には、植物由来のバイオマスとしては、水中の藻や水草からなる水生バイオマス、雑草や笹、農作物からなる草本バイオマス、そして、木が由来となる木質バイオマス、動物由来のバイオマスがある。
【0011】
本発明において利用できる草本バイオマスである草本とは、樹木のように大きくならず、太く堅い幹をもたない植物をいう。例えば、笹、竹、サトウキビ、トウモロコシ、稲わら、麦わら、葦、お茶滓、ケナフ、アサ、アマ、アバカ、ワタ、コウゾ、ミツマタ、ガンビなどを挙げることができる。また、木質バイオマスとは、一般的な広葉樹、針葉樹をいい、間伐材、林地残材、端材、おが屑、鋸屑、樹皮、建築廃材、パルプ、紙などを挙げることができる。
【0012】
動物由来のバイオマスとしては、一般的には動物の死骸や粉などをいうが、本発明において利用できる動物由来のバイオマスとしては、酢酸菌などから作られるバイオセルロース、ホヤの被嚢などを挙げることができる。
【0013】
本発明におけるバイオマスの多孔性炭化物は、前記バイオマスで多孔質のものを炭化処理し、炭化物としたものである。酸素の供給を制限した状態で加熱すると、有機高分子化合物は、炭素比率の高い結合で構成された安定な構造へと移行する。例えば、有機高分子化合物の複合体の一種である木材を酸素の供給を制限した状態で加熱すると、まず200℃までの熱処理で高分子から低分子への変化が起こり、160〜500℃の間で構成要素であるセルロース、ヘミセルロース、リグニンなどが分解してくる。400〜1800℃で炭化が起こり木炭となる。バイオマスに対する炭化処理も同様な操作で行われる。本発明で用いられるバイオマスの炭化物は、160〜700℃の温度範囲での炭化処理により得られたものが好ましく用いられるが、炭化物を更に水蒸気、二酸化炭素、空気その他のガスを使って700〜950℃程度で高温処理したもの、塩化亜鉛等の化学薬品により処理した後で高温処理して活性化したものは比表面積が高くなるためにより好ましく用いられる。
本発明の多孔性炭化物とは、少なくとも表面に多数の孔が存在して凹凸となっており、特に炭化物の内外の表面に存在する孔が内部で繋がっているものが好ましい。特に針葉樹の仮道管のように中空で内外の表面に開いた連続孔が多数存在し、比表面積が大きいバイオマスを用いた炭化物が好ましい。例えば紙の原料として針葉樹からパルプを製造する方法と同様に化学処理して得られる仮道管のセルロース繊維を炭化して得られる。
【0014】
炭化処理する装置としては、例えば、炭焼き窯、伏せ焼き、移動炭化炉、スクリュー炉、撹拌式流動炭化炉、黒炭窯などを使用でき、特に制限されない。また、その処理条件も何ら制限することはない。
【0015】
本発明における多孔性炭化物の生成に用いられるバイオマスは多孔性で繊維構造を有した繊維状であることが好ましい。本発明での繊維構造とは、アスペクト比(繊維長/繊維径)が5以上であるものをいい、繊維構造を有するバイオマスを炭化処理して炭化物とした後でも、そのアスペクト比はほぼ処理前の数値が保たれ、繊維構造を有する炭化物となる。好ましくは、針葉樹由来の仮道管の形状を維持している炭化物である。
バイオマスの炭化物の生成は、バイオマス原料を予め繊維状に微細化した後で炭化処理を行うのが好ましいが、炭化処理後の形状が粉状ではなく、塊状である場合には、そのままでは形状が大きすぎるため、樹脂との混練になじみにくいので、微小粉状に粉砕する必要がある。粉砕する手段としては、例えば、クラッシャータイプ、ミルタイプ、摩砕タイプ、カッタータイプ等の一般的な粉砕機を用いることができる。一般に炭は硬度が高いため、まず、クラッシャータイプの強力な粉砕機で粗く粉砕してから、ミルタイプ、摩砕タイプ、カッタータイプの微粉砕機で粉砕することが挙げられるが、炭化物が繊維状を維持されるような処理方法が好ましい。特に、バイオマスを繊維状に解繊したものを原料に用いて炭化したものでアスペクト比5以上の繊維状の形状を維持した炭化物が好ましく、針葉樹の仮道管形状を維持した原料を用いた炭化物や、針葉樹を微細化した粒状物を炭化後に仮道管を繊維状に分離した炭化物が好ましい。
【0016】
本発明の炭化物樹脂アロイは、バイオマス由来の多孔性炭化物、熱可塑性樹脂、当該熱可塑性樹脂と親和性を有する、官能基(A)を含有の化合物(X)、及び該バイオマス由来の多孔性炭化物と親和性を有する、官能基(B)を含有の化合物(Y)とを加熱混練して官能基(A)と(B)の相互作用を発現させることで得られる。熱可塑性樹脂と親和性を有する化合物(X)とは、例えば選ばれた熱可塑性樹脂と同一な基本構造を有し、該熱可塑組成樹脂と相溶する樹脂であって、かつ官能基(A)を有するものである。例えば、熱可塑性樹脂がポリプロピレンであれば、官能基(A)を有するポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート(PBT)であれば、官能基(A)を有するPBT、ポリカーボネート(PC)であれば、官能基(A)を有するPCである。
官能基(A)、または官能基(B)の具体例は水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基及びそれらの誘導体が挙げられる。官能基(A)と官能基(B)とは反応により化学的に結合可能な組み合わせが選択される。例えば、カルボキシル基は水酸基、エポキシ基、アミノ基と反応し、更にエポキシ基とアミノ基は反応する。
【0017】
バイオマス由来の多孔性炭化物と親和性を有する、官能基(B)を含有する化合物(Y)とは、例えば、カルボン酸変性ポリブタジエン、グリシジル基変性ポリブタジエン、スチレン無水マレイン酸、スチレン無水マレイン酸、酸変性スチレンブタジエン樹脂、ポリグリセン、酸変性シリコーン樹脂、エポキシ変性シリコーン樹脂、アミノ変性シリコーン樹脂などが挙げられる。
【0018】
本発明における炭化物とアロイを構成する熱可塑性樹脂としては特に制限されず、合成樹脂、天然樹脂など適宜利用することができる。例えば、高密度ポリエチレン樹脂、中密度ポリエチレン樹脂、低密度ポリエチレン樹脂からなるポリエチレン樹脂類、ポリプロピレン樹脂類、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、アクリロニトリルスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ポリフェニレンスルファイド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、非晶ポリアリレート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアミドイミド樹脂等の熱可塑性樹脂などを挙げることができる。例えば、天然樹脂としては、天然ゴム、松脂(ロジン)、シェラック、琥珀、ダンマルガム、マスチック、コーパル、バルサムなどを挙げることができる。
【0019】
また、本発明の熱可塑性樹脂として、生分解性樹脂を用いることもできる。例えば、具体的には、高分子多糖類、微生物ポリエステル、脂肪族ポリエステル等が挙げられ、より具体的には、ポリ乳酸樹脂、ポリカプロラクトン樹脂、ポリブチレンサクシネートアジペート樹脂、ポリエチレンサクシネート樹脂、ポリエチレンサクシネートカーボネート樹脂、ポリブチレンサクシネート樹脂、ポリブチレンアジペートテレフタレート樹脂、ポリヒドロキシアルカノート(例えば、ポリ(3−ヒドロキシ酪酸)(PHB)、ポリ(3−ヒドロキシ吉草酸)(PHV))、ラクトン樹脂、低分子量脂肪族ジカルボン酸と低分子量脂肪族ジオールから得られるポリエステル樹脂、酢酸セルロース系等の複合体、変性デンプン−変性ポリビニルアルコール複合体、その他の複合体を挙げることができる。
【0020】
本発明の炭化物樹脂アロイには各種添加剤を適宜加えることができる。添加剤としては、相溶化剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、離型剤、可塑剤、紫外線吸収剤、光安定剤、顔料、染料、帯電防止剤、導電性付与剤、分散剤、透明核剤、抗菌剤、防黴剤、難燃剤等の添加剤を、単独または2種類以上併せて使用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0021】
本発明の炭化物樹脂アロイにおいて、バイオマス由来の多孔性炭化物、熱可塑性樹脂、化合物(X)、及び化合物(Y)の質量部比率は、合計100質量部に対して、好ましくはバイオマス由来の多孔性炭化物が10〜90質量部、熱可塑性樹脂が5〜85質量部、化合物(X)が1〜10質量部、化合物(Y)が1〜10質量部、より好ましくは各々、20〜60質量部、30〜70質量部、1〜5質量部、1〜5質量部である。この範囲にあれば成形体の機械強度、均一性も良好となる。
【0022】
本発明の炭化物樹脂アロイ単独または他の樹脂との混合組成物を成形処理して成形体となすことができる。成形方法としては、射出成形、押出成形、ブロー成形、T−ダイ成形、回転成形等各種成形方法を用いることができる。
【0023】
本発明の炭化物樹脂アロイを含有する成形体を酸素の供給を制限した状態で熱処理することで、本発明の炭化成形体となすことができる。成形体を熱処理することで、含有している樹脂が炭化し、成形体を構成している炭化物がその構造を変化させ、結晶成長をするように各炭化物同士の親和性が向上して融和してくることにより、より優れた機械特性を発現することができる。
【0024】
本発明における酸素を制限した状態とは、炭化処理を行う装置内を窒素ガス等の不活性ガスで置換した状態にしてもよいし、真空ポンプ等で装置内の酸素濃度を低下させた状態でもよく、特に制限されず、装置が密閉状態に近い状況にあり、炭化処理中に外部から空気(酸素)が供給されない状態をいう。
【0025】
炭化成形体を作成する際の炭化処理の好ましい温度は、200〜1000℃であり、更に好ましくは、200〜500℃の第1段階、次に500〜1000℃の第2段階と2種類の温度条件で2段階に渡って処理することが好ましい。炭化処理時間は、その炭化温度により変わるが、好ましくは0.5〜8時間、更に好ましくは1〜8時間である。2段階に渡って炭化処理する場合は、低温で炭化処理する第1段階は0.5〜4時間、高温で炭化処理する第2段階は1〜4時間で処理することが好ましい。
【実施例】
【0026】
次に本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。特に記載のない場合には部、及び%は質量部、質量%を表す。
【0027】
(実施例1)
バイオマス由来の多孔性炭化物として平均長さ2mmでアスペクト比が5の竹炭を用意し、熱可塑性樹脂としてポリカーボネート(帝人化成社製、パンライト(登録商標)L1225Y)、化合物(X)としてエポキシ基を有する変性ポリカーボネート(日油社製、モディパー(登録商標)CL430−G)、及び化合物(Y)として変性ポリブタジエン(酸変性ポリブタジエン、サートマー社製、RICON130MA8)を各々の質量比で30/64/4/2とし、280℃、60秒間混練して炭化物樹脂アロイを作製した。
【0028】
(実施例2)
実施例1で用いた竹炭と、熱可塑性樹脂としてAS樹脂(ダイセルポリマー社製、050SF)、化合物(X)としてエポキシ変性AS樹脂(日油社製、A4400)、及び化合物(Y)として、変性ポリブタジエン(酸変性ポリブタジエン、サートマー社製、RICON 130MA8)を各々の質量比で30/64/4/2とし、230℃、60秒間混練して炭化物樹脂アロイを作製した。
【0029】
(実施例3)
バイオマス由来の多孔性炭化物として、杉材を1cm角程度に粉砕した後、不活性雰囲気下650℃で一次焼成した。次に酸素濃度10容量%以下の雰囲気で、350℃2.5時間加熱し、更に0.2N水酸化ナトリウム水溶液で10分浸せきして、アスペクト比100の炭化物を取りだした。この炭化物に替えた以外は実施例1と同様にして炭化物樹脂アロイを作製した。
【0030】
(実施例4)
バイオマス由来の多孔性炭化物として、LBKPを水素環境下で1500℃1時間焼成して得られた、アスペクト比70の炭化物に替えた以外は実施例1と同様にして、炭化樹脂アロイを作製した。
【0031】
(実施例5)
実施例1でバイオマス由来の多孔性炭化物として平均粒径1mmまで粉砕したアスペクト比2の不定形の杉炭に替えた以外は同様にして炭化物樹脂アロイを得た。
【0032】
(比較例1)
バイオマスの炭化物である竹炭を、平均長さ2mm、アスペクト比5の杉粉に変更した以外は実施例1と同様にして、木粉樹脂アロイを作製したが、著しく木粉は熱変性した。
【0033】
(比較例2)
バイオマスの炭化物である竹炭を、平均粒径50μmのアスペクト比約2以下の球形黒鉛粉末(日本黒鉛工業社製、CGB−50)に替えた以外は実施例1と同様にして、炭化物樹脂アロイを得た。
【0034】
(比較例3)
変性ポリブタジエンを抜いてポリカーボネートを66質量部とした以外は実施例1と同様にして、炭化物樹脂アロイを得た。
【0035】
(実施例6)
実施例1で用いた竹炭と、熱可塑性樹脂としてAS樹脂(ダイセルポリマー社製、050SF)、加工物(X)として酸変性AS樹脂(日油社製、A8400)、及び化合物(Y)として、変性ポリブタジエン(エポキシ基変性ポリブタジエン、サートマー社製、RICON 657)を各々の質量比で70/22/3/5とし、230℃、60秒間混練して炭化物樹脂アロイを作製した。
【0036】
(実施例7)
実施例3で用いた多孔性炭化物を用いて、実施例6と同様にして、炭化物樹脂アロイを作製した。
【0037】
(実施例8)
実施例6で作製した炭化物樹脂アロイを用いて、押出成形機で幅100mm×厚み4mmの角材を押出温度230℃で押出し、長さ300mmに切断した。連続式還元炉を用いて水素・窒素混合雰囲気中で、450℃で2時間処理した後、そのまま900℃まで処理温度を上昇させ3時間処理し本発明の炭化成形体を得た。
【0038】
(実施例9)
実施例7で作製した炭化物樹脂アロイを用いて、実施例8の条件で本発明の炭化成形体を得た。
【0039】
(比較例4)
竹炭に替えて、比較例1の杉粉を用いて、実施例6と同様にして、木粉樹脂アロイを作製した。
【0040】
(比較例5)
竹炭に替えて、比較例2の黒鉛を用いて、実施例6と同様にして、炭化物樹脂アロイを作製した。
【0041】
(比較例6)
比較例4の木粉樹脂アロイを用いて、実施例8と同様にして、炭化成形体を作製したが、焼成時に構造体は崩壊した。
【0042】
(比較例7)
比較例5の炭化物樹脂アロイを用いて、実施例8と同様にして、炭化成形体を作製したが、焼成時に構造体は崩壊した。
【0043】
(曲げ弾性率と曲げ強度)
実施例1〜7及び比較例1〜5で作製した炭化物樹脂アロイを用いて押出し成形機(池貝社製、商品名:PCM30 ポリカーボネート形成時には280℃、AS成形時には230℃)で板(幅100mm×厚み4mm×長さ2000mm)を押出し成形した。次に作製した板より試験片を切出した。それぞれ5個の試験片についてJIS K7171に則って測定し、その平均値をもって、曲げ弾性率と曲げ強度とし、結果を表1に与えた。いずれの場合も本発明の炭化物樹脂アロイを用いた成形体は、高い曲げ弾性率と曲げ強度を示した。
【0044】
(曲げ弾性率と曲げ強度)
実施例8〜9で作製した炭化成形体より試験片を切出した。それぞれ5個の試験片についてJIS K7171に則って測定し、その平均値をもって、曲げ弾性率と曲げ強度とし、結果を表2に与えた。いずれの場合も本発明の炭化成形体は、高い曲げ弾性率と曲げ強度を示した。
【0045】
【表1】

【0046】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、例えば家電機器部材、電子機器部材、自動車部材、機能性建材等の用途で、従来の樹脂素材に換えて用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマス由来の多孔性炭化物、熱可塑性樹脂、当該熱可塑性樹脂と親和性であり、官能基(A)を有する化合物(X)、及び該バイオマス由来の多孔性炭化物と親和性であり、官能基(B)を有する化合物(Y)とを加熱混練することで官能基(A)と(B)の相互作用を発現させて成る炭化物樹脂アロイであり、該官能基(A)と官能基(B)がカルボキシル基、水酸基、アミノ基、エポキシ基から選ばれた組み合わせであることを特徴とする炭化物樹脂アロイ。
【請求項2】
前記バイオマス由来の多孔性炭化物が、アスペクト比5以上の繊維状である請求項1記載の炭化物樹脂アロイ。
【請求項3】
請求項1、2のいずれかに記載の炭化物樹脂アロイを含有する成形体。
【請求項4】
請求項3記載の成形体を酸素の供給を制限した状態で熱処理した炭化成形体。

【公開番号】特開2012−87214(P2012−87214A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−235103(P2010−235103)
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【出願人】(899000068)学校法人早稲田大学 (602)
【Fターム(参考)】