炭化物系吸着剤及びその製造方法
【課題】炭化物系吸着剤について、製造コストの低廉化および維持コストの低廉化を実現しながら、優れた流体浄化能を発揮できるようにする。
【解決手段】木質系炭化物からなる所定粒径の細片が、表面にセメント系バインダが固化したコート層を有し、個々の細片が互いに結合しないで粒状を維持している状態の炭化物系吸着剤とした。
【解決手段】木質系炭化物からなる所定粒径の細片が、表面にセメント系バインダが固化したコート層を有し、個々の細片が互いに結合しないで粒状を維持している状態の炭化物系吸着剤とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化物系吸着剤及びその製造方法に関し、殊に、粒状の木質系炭化物の表面に所定の機能性物質からなるコーティング層を設けることで炭化物の流体浄化能を増強するものとした、炭化物系吸着剤及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、活性炭等の所定のイオンに対し吸着能を発揮する粉粒状の機能性物質を、所定の容器に入れたりバインダで結合させたりして濾過フィルタを形成し、これに空気や水などの流体を通過させることで含有する有害物質等を吸着・捕捉して浄化することが行われている。
【0003】
例えば、特開平11−226327号公報には、粒状活性炭を通気性に富むポリエステル樹脂加工綿等で両面から挟むとともにプラスチック網で成型してなる空気清浄および浄水用濾過板が記載され、特開2003−116976号公報には粒状の木炭を粒状のトルマリンとともに通気性に富む袋に収容してなる脱臭除湿剤が記載されている。
【0004】
これらの炭化物を流体濾過フィルタとして用いることで、流体に含有する悪臭分子等の有害物質を物理的に吸着して効率的に浄化することができる。しかし、斯かる炭化物は容易に粉砕されて粉末化するため炭粉を生じて汚れの原因になることに加え、物質を吸着し続けることでその吸着部位が飽和に近づき次第に吸着能が低下してしまう。この吸着能の低下は、高温処理や専用の薬剤を併用した洗浄によりある程度は回復させることができるが、現場での処理は容易ではないことから所定期間の使用で吸着剤を交換して対処する場合が多い。
【0005】
これに対し、特開平7−39753号公報や特開2001−17859号公報には、活性炭の表面にアルカリ性物質等の化学成分を添着することにより、所定の有害物質に対する吸着能を増強したり分解能を発揮させたりするものとして、流体浄化機能を高めるとともに効果持続期間を延長した炭化物系吸着剤が提案されている。
【0006】
しかしながら、これらの炭化物系吸着剤は、アルカリ化等による機能向上がさほど大きくないことに加え、化学成分量の低下や吸着部位の飽和により所定期間使用後には機能低下を来すことになる。一方、再使用目的で炭化物系吸着剤に洗浄処理や加熱処理を実施したり、或いは再度化学物質を添着したりするには多大な手間とコストを要することから、前述のものよりも多少交換時期は延びたとしても結局、所定期間使用後に交換の必要が生じていた。
【0007】
そして、吸着剤としては、吸着能の高さ等の観点から活性炭が多用されているが、活性炭は製造コストが高いために導入コストや交換に要する維持コストが嵩みやすい。また、活性炭をエアフィルタとして用いる場合は、活性炭が可燃性物質であるため火気の近くでは使用できないという欠点も有している。
【0008】
これに対し、特開2001−519号公報には、pHが10〜11.5の軽量気泡コンクリート(ALC)粉粒体からなる消脱臭剤が提案されている。これは一般的な活性炭よりも製造コストが低廉であるとともに非可燃性の素材であり、また物理的吸着能に加えてコンクリートによる化学的吸着能・分解能を備えており、さらに水分の存在によりイオン活性化される点を特徴としている。
【0009】
しかしながら、軽量気泡コンクリート粉粒体からなる消脱臭剤の吸着能は、ヤシ殻活性炭による吸着能と同等程度を示しているものの、これを大きく上回るものではなく、臭い強度が強い場合には充分な脱消臭効果を発揮できない場合も多い。また、活性炭と比べて低コストであるとされているが、製造工程にアルミニウム粉末等の発泡剤を混入する工程、及び高温高圧で水蒸気養生する工程に加え、所定サイズの粒状にする粉砕工程を要し、細孔径および比重を所定範囲で揃えるとともに所定サイズの細片に揃える技術と手間を要することから、製造コストの低廉化は充分には達成されていない。さらに、この消脱臭剤は所定期間使用して吸着能が低下した場合はこれを交換することを前提としたものであり、維持コストの低廉化も充分なものではない。
【特許文献1】特開平11−226327号公報
【特許文献2】特開2003−116976号公報
【特許文献3】特開平7−39753号公報
【特許文献4】特開2001−17859号公報
【特許文献5】特開2001−519号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記のような問題点を解決しようとするものであり、炭化物系吸着剤について、製造コストの低廉化および維持コストの低廉化を実現しながら、優れた流体浄化能を発揮できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで、本発明は木質系炭化物からなる所定粒径の細片が、表面にセメント系バインダが固化したコート層を有し、個々の細片が互いに結合しない状態で粒状を維持していることを特徴とする炭化物系吸着剤とした。
【0012】
このように、比較的安価で入手しやすい木質系炭化物からなる細片の表面を、比較的安価で一般的なセメント系バインダで互いに結合しないように所定厚さで覆ってなる粒状の吸着剤としたことにより、製造コストが低廉になるとともに、所定形状の通気性容器に入れることで様々な形状のフィルタとして使用でき、しかも運搬性にも優れたものとなる。そして、セメント系バインダからなるコート層が細片内外において物質透過性を発揮するため、炭化物特有の物理的吸着能とアルカリ性のセメント系バインダからなるコート層特有の機能とが相乗効果を発揮するものとなる。
【0013】
即ち、細片同士が結合しないで粒状を維持することで吸着表面積を最大としつつあらゆる形状に対応可能となり、且つ、炭化物の物理的吸着能が発揮されて目的物質を引き寄せることにより、セメント系バインダ特有の物理的吸着能、化学的吸着能・分解能等の機能を充分に発揮させることができるため、極めて優れた流体浄化能を発揮するものである。
【0014】
しかも、従来例において炭化物の細孔を塞いで機能低下を招いた目的物質の殆どは、表面側のセメント系バインダ層で捕捉されるようになり、その多くが水を加えることでセメント成分によるアルカリ加水分解で無害化されて蒸発等により除去される。従って、当初の浄化能に回復させることが容易であり長期間に亘って交換不要のものとなるため、維持コストが極めて低廉となる。そして、可燃性の木質系炭化物の表面を不燃性のセメント系バインダで覆ったことにより粉末化しにくいとともに全体として極めて難燃性のものとなり、火気付近での使用も可能となる。
【0015】
また、上述した炭化物系吸着剤において、木質系炭化物の細片は紙積層体を焼成してなるフレーク状の炭化物からなるものとすれば、原料が安価であることに加え比較的容易に炭化するため製造コストが低廉となり、且つ、内部の積層構造が炭化物の吸着表面積を大きなものとして、優れた物理的吸着能を発揮するものとなる。
【0016】
さらに、上述した炭化物系吸着剤において、セメント系バインダは、ポルトランドセメントを主成分とするものとすれば、使用するバインダが安価で入手しやすいとともに比較的短時間で固化するものとなり、固化後には優れた強度・耐久性を備えたものとなる。そして、ポルトランド系セメントとして比較的安価な比表面積5000cm2/g未満のものを用いても吸着剤の形態安定性は確保されるとともに上述の効果を得ることができるため、高価な比表面積5000cm2/g以上のものを用いる必要がなく、製造コストを一層低く抑えることができる。
【0017】
さらにまた、上述した炭化物系吸着剤は、粒径が1mm〜7mmの木質系炭化物の細片100体積部に対し、セメント系バインダ10〜15体積部および所定量の水を加えて撹拌混合してなるものとすれば、細片表面のバインダ層が極めて薄い被膜状またはドット状となり、炭化物内外の物質流通性に優れたものとなることから、木質系炭化物とセメント系バインダのコート層との相乗効果を一層良好に発揮するものとなる。
【0018】
加えて、この炭化物系吸着剤において木質系炭化物からなる細片の粒径が4mm〜7mmであるものとすれば、流体透過性と吸着表面積とのバランスに優れて一層物質吸着能に優れた炭化物系吸着剤となる。
【0019】
さらに加えて、木質系炭化物からなる細片に予め所定量の水を加えて表面湿潤状態としてから、所定割合で粉状のセメント系バインダを加えて撹拌混合し、細片表面の水にセメント系バインダが付着して水和反応が進行する状態として、これを所定期間養生することにより、セメント系バインダが固化したコート層を形成するものとした炭化物系吸着剤の製造方法により、上述した炭化物系吸着剤が製造されるものとする。これにより、比較的簡易な工程により低廉なコストでコート層を備えて機能性を高めた炭化物系吸着剤が得られるものとなる。
【0020】
一方、上述した炭化物系吸着剤におけるコート層を備えた細片同士が、さらにセメント系バインダで互いに部分的に結合されて所定形状に成型されてなり、25%以上の空隙率を有する炭化物系吸着剤の成型体とすれば、優れた流体透過性を備えてそのままフィルタ材として使用することができ、上述した炭化物系吸着剤の機能を容易に発揮させることができる。
【0021】
そして、この炭化物系吸着剤の成型体は、上述したコート層を有する炭化物系吸着剤の細片100体積部に対し、セメント系バインダを18〜27体積部および所定量の水を加え混練して所定形状に成型されてなり、27〜37%の空隙率を有するものとすれば、成型体の強度と流体通過性のバランスに優れたものとなる。或いは、コート層を有する細片100体積部に対し、セメント系バインダを27〜37体積部、粒径1mm〜9mmの骨材28〜38体積部、及び所定量の水を加え混練して所定形状に成型されてなり、25%以上の空隙率を有するものとすれば、強度及び比重が増して流体フィルタ以外に構造材を兼ねた流体浄化材として用いることもできる。
【0022】
そしてまた、上述した炭化物系吸着剤の成型体において、コート層を有する細片を粒径4mm〜7mmの大細片と粒径1mm〜2mmの小細片とが所定割合で混合されたものとし、成型後に隣接する大細片間に小細片およびセメント系バインダが介在してなるものとすれば、少ないバインダ量で所定の空隙率を確保しながら細片同士を一層堅固に結合させることができ、その大細片と小細片との混合比率を体積比で2:1とすれば空隙率と成型体の強度とのバランスに優れたものとなる。
【0023】
さらに、コート層を有する細片に、上述したセメント系バインダ、或いはこのセメント系バインダ及び前述の骨材を混入し、所定量の水を加えて混練したものを型枠に投入して、縦方向から振動プレスを所定時間与えて成型後、即脱型して所定期間被覆養生するものとした製造方法で、上述した炭化物系吸着剤の成型体が製造されるものとすれば、比較的安価で一般的なセメント系バインダを用いながら、簡易な工程により低廉なコストでムラが少なく均一な多孔質体を得ることができ、優れた流体透過性および均一な強度を備えたものとなる。
【発明の効果】
【0024】
比較的安価で入手容易な木質系炭化物の細片の表面に、比較的安価で一般的なセメント系バインダのコート層を設けて粒状とし、或いはこれをさらにセメント系バインダで結合させて多孔質の成型体とした本発明により、流体透過性を確保しながら炭化物特有の機能とセメント系バインダ特有の機能との相乗効果で優れた流体浄化能を発揮し、且つ、製造コスト及び維持コストの低廉化を実現することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態を説明する。尚、本発明において、空隙率とは気中時空隙率を指すとともに試料への液体の浸潤を細片間に形成された空隙への浸潤のみを想定して細片内部への浸潤を想定しない5分程度の短時間とした場合であって、寸法測定による見掛け体積から水中水位上昇分の真体積を引いて空隙体積を算出し、見掛け体積で割って導いた値を指す。また、比表面積とは、JISのセメントの物理試験法のうち、比表面積試験:R5201による比表面積を指す。さらに、平均粒径とは、ふるい分け試験においてふるいの目開きの寸法で表現したものを指し、フレーク状とは粒状のうち薄片状のものを指すものとする。
【0026】
図1は、本発明における第一の実施の形態の炭化物系吸着剤の製造方法のフローチャートを示している。用いる細片は木質系炭化物であって、予め細片状に粉砕したものを複数の網目サイズのふるいを用いて粒径1mm〜7mmのサイズに揃えたものである。尚、木質系炭化物として、紙積層体を細かく粉砕して焼成してなるフレーク状の炭化物を用いることが推奨される。即ち、通常は廃棄にコストを要する古紙を再利用できるとともに比較的容易に炭化することに加え、作成された炭化物が、積層構造および紙繊維の構造から形態安定性に優れるとともに吸着表面積が大きく機能性に優れているからである。
【0027】
フローチャートに従って説明すると、この細片100体積部をミキサに投入し、適宜水を加えながら表面湿潤状態となるまで撹拌混合する。次に、これに粉状のセメント系バインダを10〜15体積部を加えてさらに撹拌混合する。例えば、通常の湿度において粒径4mmの細片10リットルの場合、セメント系バインダは1.25リットル前後となる。尚、セメント系バインダは、所謂早強セメントのような比表面積5000cm2/g以上の高価なものを用いる必要はなく、比表面積3200cm2/g程度の比較的安価で入手しやすい普通ポルトランドセメントを用いることができる。
【0028】
そして、この撹拌混合は粉状のセメント系バインダが水で湿潤した細片表面にまんべんなく付着して覆うまで行い、撹拌混合終了後は底が網状の容器に入れて所定時間養生する。その際、容器底側から送風して余剰水分を乾燥させるようにすることで、細片同士が結合することを回避して粒状を維持しやすいものとなる。また、所定時間養生後に再度撹拌混合を行えば細片同士の結合を一層回避しやすいものとなる。
【0029】
このように、比較的安価で入手しやすいセメント系バインダを用いて簡易な手順で完成した炭化物系吸着剤は、セメント系バインダが細片の表面で薄膜状またはドット状のコート層を形成したものとなり、そのコート層自体が細片の内外流通性を有するとともに物理的吸着能に加え化学的吸着能・分解能を備えていることから、炭化物の有する機能との相乗効果が期待でき、その流体浄化能の増強が実現するものである。そして、これを所定形状の通気性容器に入れることで、全体として空隙率が高いものとなるとともにあらゆる形状に対応可能となり、流体透過性に優れて比較的大量の流体を処理できるため、流体浄化フィルタとして優れた機能を発揮するものとなる。
【0030】
そして、用いる炭化物は粒度を所定範囲に揃えることが可能であれば木質系の比較的安価なものを使用できることから、製造コストを極めて低廉に抑えることが可能となる。また、固化後の形態安定性に優れたセメント系バインダで覆ったことで、炭化物からなる細片の破砕・粉末化を回避できるとともに極めて難燃性のものとなる。また、長期間の使用で目的物質が貯留・飽和して浄化能が低下した場合であっても、臭い分子等に代表される所定種類の吸着物においては、これに適量の水を噴霧等するだけでアルカリ加水分解が進行して吸着物が分解・無害化され、分解物は自然に蒸発することから、ほぼ当初の性能に戻すことができるため、長期間に亘って交換の必要がなくなり維持コストも極めて低廉に抑えることができる。
【0031】
図2は、本発明における第二の実施の形態である、流体浄化フィルタとして用いる炭化物系吸着剤の成型体の製造方法に関するフローチャートを示している。フローチャートに従って説明すると、前述した炭化物系吸着剤の製造方法により作成した粒径4mm〜7mmの大細片からなる炭化物系吸着剤と、粒径1mm〜2mmの小細片からなる炭化物系吸着剤とを、例えば体積比2:1で混合したものを100体積部計量してミキサに投入し、これにセメント系バインダを18〜27体積部を加える。尚、使用するセメント系バインダは前述と同様に比表面積5000cm2/g未満の安価なものでよく、普通ポルトランドセメントでも充分である。
【0032】
次に、ミキサを回して撹拌混合しながら、適当量の水を湿度等の条件を加味しながら全体として適度な粘性を有するまで加え、充分に混練してから型枠に投入する。そして、縦方向から振動プレス(セメント成型用の一般的な振動装置を使用)を所定時間実施してムラのないようにして、所定厚さの平板状やブロック状に成型後、即脱型して所定期間被覆養生し、炭化物系吸着剤の成型体を得る。尚、最初にミキサに投入するコート層を有する炭化物系吸着剤の細片は、コート層が完全に固化する前のものでもよく、上述した第一の実施の形態の炭化物系吸着剤の製造方法における養生工程の途中または前段階から、直接この炭化物系吸着剤の成型体の製造方法に移行しても同様に作成することができる。
【0033】
このように比較的簡易な手順の製造方法により製造した炭化物系吸着剤の成型体は、隣接するコート層を有する細片同士が少量のセメント系バインダで部分的に結合されて空隙の連通性の高い多孔質のものとなり、結合部分により粒状の炭化物系吸着剤の吸着表面積が僅かに減るものの、ほぼ同様の作用・効果を発揮するとともに、27〜37%の空隙率を有して流体透過性に優れたものとなり、そのまま流体浄化フィルタとして使用することができる。
【0034】
図3は、本発明における第三の実施の形態である、構造材も兼ねることのできる炭化物系吸着剤の成型体の製造方法に関するフローチャートを示している。フローチャートに従って説明すると、本実施の形態は第二の実施の形態の製造方法の工程中に骨材を投入する工程を加えたものである。即ち、前述と同様に例えば大細片と小細片とを体積比2:1で混合したものを100体積部計量してミキサに投入し、これに粒径1mm〜9mmの骨材28〜38体積部およびセメント系バインダを27〜37体積部を加え、その後は上述と同様に所定形状に成型して養生することで、25%以上の空隙率を有する炭化物系吸着剤の成型体を得るものとした。
【0035】
このように、骨材を混入したことで第二の実施の形態の炭化物成型体と比べて機能性物質である炭化物の割合がやや減るものの、強度が増すとともに比重も重くなるため、流体浄化フィルタとしての用途のみではなく壁材や床材等の構造材を兼ねた流体浄化材としての用途にも適したものとなる。また、構造材として使用する場合でも、空隙率が25%以上と比較的高いものであり、上記同様に炭化物の細片の表面をバインダのコート層が薄膜状或いはドット状に点結合した状態で覆うため、炭化物の吸着能を維持しつつ細片内外の流通性に優れてその本来の機能を十分に発揮できるものとなる。例えば、内壁材として使用することで、屋内空気に含まれるホルムアルデヒドなどの有害物質や他の臭い分子等を効率的に吸着したり、或いは空気浄化能に加えて湿度が高い時に吸湿し低い時に水分を放出する調湿能を発揮したりすることも可能となる。
【0036】
以下に、本発明の炭化物系吸着剤および炭化物系吸着剤の成型体について、実施例によりさらに詳細に説明する。本発明によるエアフィルタの流体浄化能について、以下の条件により試験を行い、検証した。
【実施例1】
【0037】
図7を参照して、前述した第一の実施の形態の製造方法による炭化物系吸着剤150gを、25cm×25cmの方形状の通気性を有する袋(不織布フィルタ袋)に入れ、内部を4等分するように十字のミシン目を入れて座布団状としたフィルタ10Aを準備し、本願発明者らが作成した換気扇11を内蔵するエアクリーナ1Aの直径20cmの吸込口13を総てカバーするようにセットし、これを底面側の直径20cmの開口窓12aに網が張られた蓋12で挟み込んで厚さ2.2cmの状態にして固定した。そして、エアクリーナ1Aを60cm×34cm×60cmの試験用ボックス4の背面側に設けた直径20cmの吸入口4bに開口窓12aが一致するように密着配置した。そして、試験用ボックス4の前面扉4aを開いて30cm×24cm×2cmのトレーに入れた検体2を配設し、エアクリーナ1Aでボックス内部の空気を吸引・浄化するものとして、臭い強度をそれぞれ10秒間隔で測定した。尚、前面扉4aを閉めると臭いは外部に殆ど漏れない状態となるが、エアクリーナ1Aの運転による吸引に伴って扉隙間からの外気の流入は可能となっている。
【0038】
炭化物系吸着剤の作成は、木質系炭化物の細片として、紙フェノール積層板を細かく粉砕後焼成して木質系炭化物とした粒径3mm〜5mmの細片(商品名:セラチップ、品番:S5020、日本シイエムケイ株式会社製)10リットルをミキサに入れ、適当量の水を加えながら撹拌混合し表面が湿潤となるようにし、これにセメント系バインダとして普通ポルトランドセメント(比表面積3300cm2/g、太平洋セメント株式会社製)1.25リットルを加え、セメント粉末が細片の表面にまんべんなく付着するまで撹拌混合した。そして、3mmの細片を通さない目開きの網を底面に設けた乾燥容器に移し、下側から余剰分の水分が乾燥するまで送風して養生し、作成した。
【0039】
図4の完成した炭化物系吸着剤(右)とコート層を設ける前の木質系炭化物の細片(左)の外観比較写真、および図5の炭化物吸着剤の拡大写真を参照して、ポルトランドセメントで覆う前の炭化物の細片が黒色であるのに対し、作成した炭化物系吸着剤は炭化物の黒色にやや灰色がかった色調を呈している。ポルトランドセメントは固化後に明るい灰色になるのに対し、炭化物系吸着剤の細片表面が灰色のポルトランドセメントで完全に覆われておらず、表面が薄膜状に覆われている部分とドット状に覆われている部分とを有したコート層となっていることが推定される。また、拡大写真より、このコート層を備えた細片は互いに結合していない粒状を維持してフレーク状を呈しているとともに、これらは集合状態で隣接する吸着剤の細片間に無数の空隙が形成されている。
【0040】
試験は、検体2として1.ホルマリン(日本薬局方、36%ホルムアルデヒド水溶液)100ml、2.ブチセロ(一般名:ブチルセロソルブ(100%)、ダイソーケミカル株式会社製)100ml、3.着火したたばこ2本(銘柄:マイルドセブン(登録商標)、日本たばこ産業株式会社製)の3種類を用い、トレー状容器に入れて検体2として試験用ボックス4の底面略中央位置に配設した。尚、たばこの測定は、測定開始時点で火を付けた2本のたばこの煙を試験用ボックス4内に人が吹き込んで煙を充満させてから、火のついたままトレーの上に置いて行った。
【0041】
臭気モニタ装置(商品名:ハンディにおいモニタ、品番:OMX―GR、新栄株式会社製)の測定端子3aは、エアクリーナ1Aの吹出口14直近に配置し、測定間隔10秒で15分間測定した。対照例として検体2の上方約30cmに配置した測定端子3bで検体側の臭い強度を同時に測定した。図9〜図11に、その実験結果のグラフを示す(臭い強度のレベルはポイントで示した)。尚、エアクリーナ1Aによる平均風速は、吸込側0.38m/秒、吹出側は1.44m/秒であった。
【0042】
(結果)1.ホルムアルデヒド:図9に示すように、検体側の臭い強度が80秒以降200ポイント以上を記録していたのに対し、エアクリーナ1Aで浄化後の吹出側の臭い強度は60秒以降、継続的に20ポイント以下となった。2.ブチセロ:図10に示すように、検体側の臭い強度が90秒以降100ポイント以上を示し、600秒以降150ポイント以上となっていたのに対し、吹出側の臭い強度は、90秒以降継続的に15ポイントを下回った。3.たばこ:図11に示すように、検体側の臭い強度が90秒後には440ポイントに達し600秒まで40〜430ポイントを示した後60〜290ポイントを示していたのに対し、吹出側の臭い強度は、600秒まで5〜70ポイントを記録した後、火が完全に消えて煙の出なくなった660秒以降は継続的に5ポイントを下回った。
【0043】
この実験結果により、本発明による炭化物系吸着剤は、通気性袋に入れてエアフィルタとして用いた場合に、エアクリーナ1A作動後1〜2分後(たばこは消火後)には人間が殆ど気にならないレベルの臭い強度となったことから、消臭機能が十分に発揮されていたということが言える。また、エアクリーナ1Aの吹出口側において、風速1.44m/秒を有していたことから、フィルタ10Aは優れた流体透過性を有していることが分かり、エアフィルタとして有用な素材と考えられる。
【実施例2】
【0044】
図8を参照して、実施例1において用いた実験装置のうち、粒状の炭化物系吸着剤を入れたフィルタ10Aの代わりに、上述の第二の実施の形態に示した炭化物系吸着剤の成型体の製造方法により製作した25cm×25cm×1.5cmのパネル状のフィルタ10Bを用いて、上述と同様の条件で 1.ホルマリン、2.ブチセロ、3.たばこについて試験した。
【0045】
流体浄化フィルタ10Bの作成は、先ず上述した手順で炭化物系吸着剤を作成する。即ち、木質系炭化物の細片として、紙フェノール積層板を細かく粉砕後焼成して炭化物とした粒径3mm〜5mmの大細片(商品名:セラチップ、品番:S5020、日本シイエムケイ株式会社製)および粒径1.5mm〜2mmの小細片(商品名:セラチップ、品番:S3005、日本シイエムケイ株式会社製)とが容積比2:1で10リットルとなるように計量して容量250リットルのミキサ(製品名:高速ギヤードモルタルミキサー、型番:GM−6、タケムラテック社製)にいれ、適当量の水を加えながら撹拌混合し表面が湿潤となるようにして、セメント系バインダとして上述の普通ポルトランドセメント1.25リットルを加えてセメント粉末が細片の表面にまんべんなく付着するまで撹拌混合した。そして、底面が3mmの細片を通さない目開きの網とされた容器に移し、下側から余剰分の水分が乾燥するまで送風して養生して作成した。
【0046】
この大細片と小細片とが2:1で混在するコート層を備えた炭化物系吸着剤を再度ミキサに入れ、上述の普通ポルトランドセメント3リットルを加えて撹拌混合後、適当量の水を注入して適度な粘性を持つまで混練しながら注水した。尚、注水量は2リットルであった。
【0047】
そして、充分に混練してからプレートを作成するための型枠(内側30cm×30cm、正方形)に投入し、発明者作成の振動プレス装置を用いて成型した。詳細には、型枠に挿入された上板(30cm×30cm)とこれを受ける下板(40×40cm)とで挟まれた混練物を、上方向からエアシリンダー(製品名:SCA2、チューブ径80mm、CKD社製)でプレス(351kg)しながら、上下方向から振動モータ(KM5−2PA(遠心力0.49KN)、エクセン社製、上板1台・下板2台配置)かけて振動プレスを10秒間実施し、ムラのないように平板状に成型した。この振動プレスにより当初2.2cmあった厚さが1.5cmとなった。振動プレス後は直ちに脱型し、被覆養生してから25×25cmにカットして炭化物系吸着剤の成型体であるフィルタ10Bを得た。
【0048】
図6(A)のフィルタ10Bの断面の状態を示す外観写真を参照して、作成された炭化物系吸着剤の成型体からなるフィルタ10Bは、細片表面がポルトランドセメントで総て覆われた場合に灰色を呈するのに対し、実施例1の炭化物系吸着剤の色調よりも全体的にやや灰色寄りではあるが、その多くの部分が炭化物の黒色にやや灰色がかった色調を呈しており、炭化物系吸着剤同士を結合させるためのポルトランドセメントで完全に覆われていないことが推定される。また、断面の状態から空隙に富むとともに各空隙は互いに連通していることが分かる。さらに、フィルタ10Bはガスレンジの上に載置してヤカンで湯を沸かしている図6(B)の外観写真に示すように、水が沸騰するまで火で加熱した場合でも燃えたり変形したりすることのない、極めて難燃性で耐火性に優れたものである。
【0049】
これを上述と同様に装着してエアクリーナ1Bとし、上述と同様の条件で試験を行った(たばこ消臭試験は試験時間660秒で終了した)。図12〜図14に、その試験結果のグラフを示す(臭い強度のレベルはポイントで示した)。尚、フィルタ10Bの空隙率は35%であり、エアクリーナ1Bによる平均風速は、吸込側0.55m/秒、吹出側2.92m/秒であった。尚、参考までに木質系炭化物において大細片と小細片との容積比を1:1で作成した場合の平均風速は、吸込み側0.31m/秒、吹出し側は2.18m/秒であり、大細片と小細片との容積比を2:1としたことで、流体透過性が良好になったものと思われる。
【0050】
(結果)1.ホルマリン:図12に示すように、検体側の臭い強度が80秒以降50ポイント以上を記録し最高で150ポイント以上を記録し、500秒以降もほぼ40ポイント以上を記録していたのに対し、エアクリーナ1Bによる浄化後の吹出側の臭い強度は継続的に40ポイントを下回った。2.ブチセロ:図13に示すように、検体側の臭い強度が40秒以降に100ポイント前後〜400ポイントを記録していたのに対し、吹出側の臭い強度は降継続的に100ポイントを下回った。3.たばこ:図14に示すように、検体側の臭い強度が110秒以降50ポイント前後〜240ポイントを記録していたのに対し、吹出側の臭い強度は120秒以降継続的に15ポイントを下回り、460秒以降は5ポイント以下を示し、610秒以降はほぼ0ポイントを示した。
【0051】
この実験結果より、本発明による炭化物系吸着剤の成型体は、僅か1.5cmの薄さのパネル状として用いた場合でも、対照例と比べて有意に低い臭いレベルとなったことから、消臭機能が充分に発揮されていたということが言える。また、エアフィルタ1Bの吹出口側において、風速2.92m/秒を有していたことから、優れた流体透過性を有していることが分かり、エアフィルタとして有用な素材と考えられる。
【0052】
尚、第一の実施例に比べて1.ホルマリンおよび2.ブチセロの消臭効果がやや劣っていたことから、同様の試験について流体浄化フィルタ10Bを2枚重ねて30mmの厚さでさらに実施したところ、ホルマリンは80秒以降に継続して15ポイント前後を記録し、ブチセロは10ポイントを上回ることがなく300秒以降は継続的に5ポイント以下を示した。従って、フィルタ10Bは厚さを増すことで吸着能が向上することが分かった。また、詳細は示さないが、第三の実施の形態の骨材入りの炭化物系吸着剤の成型体についても同様に試験したが、第二の実施例と比較して流体透過性は僅かに下回ったもののほぼ同等の結果が得られ有意性を確認することができた。尚、骨材を入れたことで重力が増すとともに堅牢さが向上しており、特に構造材を兼ねた使用方法において有用なものとなると思われた。
【0053】
さらに、比較のために、第一の実施例におけるセメント系バインダによるコート層を設ける前の粒径3mm〜5mmの細片(商品名:セラチップ、品番:S5020、日本シイエムケイ社製)をそのまま同じフィルタ袋に入れてエアクリーナにセットして同様に消臭テストを実施したところ、臭い強度は20ポイント以下にはなるものの5ポイントを下回ることがなく、たばこ臭が依然として人に感じられるレベルであった。このことから、炭化物にセメント系バインダのコート層を設けた本発明は、炭化物単独よりも優れた消臭能を発揮していること分かる。
【0054】
上述した実施例1および実施例2の結果より、本発明による炭化物系吸着剤および炭化物系吸着剤の炭化物成型体は、コストの低廉化を実現しながら炭化物の有する機能を増強して、優れた流体浄化能を発揮することが確認された。この極めて優れた消臭効果から、炭化物自体の消臭効果がさらに増強されていると考えられるものであるが、これにはマイナスイオン系材料であるセメント系バインダ自体の特性が影響していると想定される。
【0055】
例えば、臭いの発生源として特に人に不快感を与えるものを挙げると、アルデヒド・ケトン類、カルボン酸類(有機酸類)、エステル類等があるが、これらとアルカリ性素材であるセメント系バインダのOH−との間で以下の反応が生じると考えられる。
【0056】
アルデヒド・ケトン類:アルデヒドとケトンの炭素に、OH−が求核付加し、ジオールを与え、これらが水溶性の陰イオンとなる。カルボン酸類:カルボン酸はアルカリ性条件下でプロトンが離れ、水溶性の陰イオンとなる。例えば不快な臭いを持つ洛酸や吉草酸などはアルカリと反応させることで無臭となる。エステル類:化粧品や果物等に含まれるエステルはアルカリ性条件下で加水分解し、水溶性のカルボン酸アニオンとアルコールを与える。
【0057】
従って、木質系炭化物による吸着のみでなく、臭いの原因分子がバインダに触れて無臭化されることもその消臭機能に関与していると考えられる。また、上述した反応物は総て炭化物系吸着剤に水を加えることにより前述のアルカリ加水分解で無臭化された後アルコール分が蒸発して除去されるものであるため、消臭フィルタとして交換を要さずに長期間に亘って使用可能となることが期待され、維持コストも低廉に抑えることが可能となると考えられる。実例として、例えばブチセロを使用する半導体工場において、活性炭をエアクリーナのエアフィルタとして用いていたのを、実施例1のエアクリーナ1Aに替えて約10ヶ月経過したが、従来1月毎にエアフィルタを交換していたのに対し、現在のところ交換の必要もなく新しい活性炭を使用する場合よりも優れた消臭能を継続して発揮している。
【0058】
尚、本発明に係る炭化物系吸着剤および炭化物系吸着剤の炭化物成型体の開発にあたり、本願発明者らは用いる炭化物の細片について様々な原料・形状・サイズ・混合比率で実施し、また、コート層となるバインダについて様々なものを用いて、フィルタとして用いた場合の流体透過性・流体浄化能等の機能について調べた。その結果、上述の解決手段に示した各構成がこれらの観点において優れていたことから採用したものである。
【0059】
即ち、表面のコート層をセメント系バインダとすることで、炭化物の形態を維持しつつその物理的吸着能を確保しやすいとともに、セメント材特有の機能が有効に働くものであるが、セメント系バインダを10〜15体積部としたのは10体積部未満になると流体浄化能および形態維持能が急に低下し15体積部を超えると急に吸着能が低下したことによるものであり、これらの機能は安価な普通ポルトランドセメントでも充分発揮されたことから高価な比表面積5000cm2/g以上のものに限定しないものとした。
【0060】
また、炭化物細片の粒径が1mm未満になると空隙率が不充分になって流体透過性が大きく低下し、7mmを超えると空隙部分における合計表面積が不充分になって吸着能が急に低下したからである。さらに、細片を粒径4mm〜7mmの大細片と粒径1mm〜2mmの小細片の2種類のサイズとしてこれを2:1の混合比率で用いて成型したとき、成型体の強度と流体透過性のバランスに優れたものとなったからである。さらにまた、炭化物系吸着剤同士を結合させるためのセメント系バインダは、18体積部未満になると結合力が急に低下し、27体積部を超えると空隙率が急に低下するとともに吸着能が大きく低下したことによるものである。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の第一の実施の形態の製造方法を示すフローチャート。
【図2】本発明の第二の実施の形態の製造方法を示すフローチャート。
【図3】本発明の第三の実施の形態の製造方法を示すフローチャート。
【図4】実施例1において作成した炭化物系吸着剤(右)とコート層を設ける前の炭化物の細片(左)との外観比較写真。
【図5】図4の炭化物系吸着剤の拡大写真。
【図6】(A)は実施例2において作成した炭化物系吸着剤の成型体の断面の状態を示す外観写真、(B)はその成型体をガスレンジにかけてヤカンの水を沸かしている状態を示す外観写真。
【図7】実施例1における試験装置を示す縦断面図。
【図8】実施例2における試験装置を示す縦断面図。
【図9】図7の試験装置においてホルマリンを検体とした試験結果を示すグラフ。
【図10】図7の試験装置においてブチセロを検体とした試験結果を示すグラフ。
【図11】図7の試験装置においてたばこを検体とした試験結果を示すグラフ。
【図12】図8の試験装置においてホルマリンを検体とした試験結果を示すグラフ。
【図13】図8の試験装置においてブチセロを検体とした試験結果を示すグラフ。
【図14】図8の試験装置においてたばこを検体とした試験結果を示すグラフ。
【符号の説明】
【0062】
1A,1B エアクリーナ、2 検体、3a,3b 測定端子、10A,10B フィルタ
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化物系吸着剤及びその製造方法に関し、殊に、粒状の木質系炭化物の表面に所定の機能性物質からなるコーティング層を設けることで炭化物の流体浄化能を増強するものとした、炭化物系吸着剤及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、活性炭等の所定のイオンに対し吸着能を発揮する粉粒状の機能性物質を、所定の容器に入れたりバインダで結合させたりして濾過フィルタを形成し、これに空気や水などの流体を通過させることで含有する有害物質等を吸着・捕捉して浄化することが行われている。
【0003】
例えば、特開平11−226327号公報には、粒状活性炭を通気性に富むポリエステル樹脂加工綿等で両面から挟むとともにプラスチック網で成型してなる空気清浄および浄水用濾過板が記載され、特開2003−116976号公報には粒状の木炭を粒状のトルマリンとともに通気性に富む袋に収容してなる脱臭除湿剤が記載されている。
【0004】
これらの炭化物を流体濾過フィルタとして用いることで、流体に含有する悪臭分子等の有害物質を物理的に吸着して効率的に浄化することができる。しかし、斯かる炭化物は容易に粉砕されて粉末化するため炭粉を生じて汚れの原因になることに加え、物質を吸着し続けることでその吸着部位が飽和に近づき次第に吸着能が低下してしまう。この吸着能の低下は、高温処理や専用の薬剤を併用した洗浄によりある程度は回復させることができるが、現場での処理は容易ではないことから所定期間の使用で吸着剤を交換して対処する場合が多い。
【0005】
これに対し、特開平7−39753号公報や特開2001−17859号公報には、活性炭の表面にアルカリ性物質等の化学成分を添着することにより、所定の有害物質に対する吸着能を増強したり分解能を発揮させたりするものとして、流体浄化機能を高めるとともに効果持続期間を延長した炭化物系吸着剤が提案されている。
【0006】
しかしながら、これらの炭化物系吸着剤は、アルカリ化等による機能向上がさほど大きくないことに加え、化学成分量の低下や吸着部位の飽和により所定期間使用後には機能低下を来すことになる。一方、再使用目的で炭化物系吸着剤に洗浄処理や加熱処理を実施したり、或いは再度化学物質を添着したりするには多大な手間とコストを要することから、前述のものよりも多少交換時期は延びたとしても結局、所定期間使用後に交換の必要が生じていた。
【0007】
そして、吸着剤としては、吸着能の高さ等の観点から活性炭が多用されているが、活性炭は製造コストが高いために導入コストや交換に要する維持コストが嵩みやすい。また、活性炭をエアフィルタとして用いる場合は、活性炭が可燃性物質であるため火気の近くでは使用できないという欠点も有している。
【0008】
これに対し、特開2001−519号公報には、pHが10〜11.5の軽量気泡コンクリート(ALC)粉粒体からなる消脱臭剤が提案されている。これは一般的な活性炭よりも製造コストが低廉であるとともに非可燃性の素材であり、また物理的吸着能に加えてコンクリートによる化学的吸着能・分解能を備えており、さらに水分の存在によりイオン活性化される点を特徴としている。
【0009】
しかしながら、軽量気泡コンクリート粉粒体からなる消脱臭剤の吸着能は、ヤシ殻活性炭による吸着能と同等程度を示しているものの、これを大きく上回るものではなく、臭い強度が強い場合には充分な脱消臭効果を発揮できない場合も多い。また、活性炭と比べて低コストであるとされているが、製造工程にアルミニウム粉末等の発泡剤を混入する工程、及び高温高圧で水蒸気養生する工程に加え、所定サイズの粒状にする粉砕工程を要し、細孔径および比重を所定範囲で揃えるとともに所定サイズの細片に揃える技術と手間を要することから、製造コストの低廉化は充分には達成されていない。さらに、この消脱臭剤は所定期間使用して吸着能が低下した場合はこれを交換することを前提としたものであり、維持コストの低廉化も充分なものではない。
【特許文献1】特開平11−226327号公報
【特許文献2】特開2003−116976号公報
【特許文献3】特開平7−39753号公報
【特許文献4】特開2001−17859号公報
【特許文献5】特開2001−519号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記のような問題点を解決しようとするものであり、炭化物系吸着剤について、製造コストの低廉化および維持コストの低廉化を実現しながら、優れた流体浄化能を発揮できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで、本発明は木質系炭化物からなる所定粒径の細片が、表面にセメント系バインダが固化したコート層を有し、個々の細片が互いに結合しない状態で粒状を維持していることを特徴とする炭化物系吸着剤とした。
【0012】
このように、比較的安価で入手しやすい木質系炭化物からなる細片の表面を、比較的安価で一般的なセメント系バインダで互いに結合しないように所定厚さで覆ってなる粒状の吸着剤としたことにより、製造コストが低廉になるとともに、所定形状の通気性容器に入れることで様々な形状のフィルタとして使用でき、しかも運搬性にも優れたものとなる。そして、セメント系バインダからなるコート層が細片内外において物質透過性を発揮するため、炭化物特有の物理的吸着能とアルカリ性のセメント系バインダからなるコート層特有の機能とが相乗効果を発揮するものとなる。
【0013】
即ち、細片同士が結合しないで粒状を維持することで吸着表面積を最大としつつあらゆる形状に対応可能となり、且つ、炭化物の物理的吸着能が発揮されて目的物質を引き寄せることにより、セメント系バインダ特有の物理的吸着能、化学的吸着能・分解能等の機能を充分に発揮させることができるため、極めて優れた流体浄化能を発揮するものである。
【0014】
しかも、従来例において炭化物の細孔を塞いで機能低下を招いた目的物質の殆どは、表面側のセメント系バインダ層で捕捉されるようになり、その多くが水を加えることでセメント成分によるアルカリ加水分解で無害化されて蒸発等により除去される。従って、当初の浄化能に回復させることが容易であり長期間に亘って交換不要のものとなるため、維持コストが極めて低廉となる。そして、可燃性の木質系炭化物の表面を不燃性のセメント系バインダで覆ったことにより粉末化しにくいとともに全体として極めて難燃性のものとなり、火気付近での使用も可能となる。
【0015】
また、上述した炭化物系吸着剤において、木質系炭化物の細片は紙積層体を焼成してなるフレーク状の炭化物からなるものとすれば、原料が安価であることに加え比較的容易に炭化するため製造コストが低廉となり、且つ、内部の積層構造が炭化物の吸着表面積を大きなものとして、優れた物理的吸着能を発揮するものとなる。
【0016】
さらに、上述した炭化物系吸着剤において、セメント系バインダは、ポルトランドセメントを主成分とするものとすれば、使用するバインダが安価で入手しやすいとともに比較的短時間で固化するものとなり、固化後には優れた強度・耐久性を備えたものとなる。そして、ポルトランド系セメントとして比較的安価な比表面積5000cm2/g未満のものを用いても吸着剤の形態安定性は確保されるとともに上述の効果を得ることができるため、高価な比表面積5000cm2/g以上のものを用いる必要がなく、製造コストを一層低く抑えることができる。
【0017】
さらにまた、上述した炭化物系吸着剤は、粒径が1mm〜7mmの木質系炭化物の細片100体積部に対し、セメント系バインダ10〜15体積部および所定量の水を加えて撹拌混合してなるものとすれば、細片表面のバインダ層が極めて薄い被膜状またはドット状となり、炭化物内外の物質流通性に優れたものとなることから、木質系炭化物とセメント系バインダのコート層との相乗効果を一層良好に発揮するものとなる。
【0018】
加えて、この炭化物系吸着剤において木質系炭化物からなる細片の粒径が4mm〜7mmであるものとすれば、流体透過性と吸着表面積とのバランスに優れて一層物質吸着能に優れた炭化物系吸着剤となる。
【0019】
さらに加えて、木質系炭化物からなる細片に予め所定量の水を加えて表面湿潤状態としてから、所定割合で粉状のセメント系バインダを加えて撹拌混合し、細片表面の水にセメント系バインダが付着して水和反応が進行する状態として、これを所定期間養生することにより、セメント系バインダが固化したコート層を形成するものとした炭化物系吸着剤の製造方法により、上述した炭化物系吸着剤が製造されるものとする。これにより、比較的簡易な工程により低廉なコストでコート層を備えて機能性を高めた炭化物系吸着剤が得られるものとなる。
【0020】
一方、上述した炭化物系吸着剤におけるコート層を備えた細片同士が、さらにセメント系バインダで互いに部分的に結合されて所定形状に成型されてなり、25%以上の空隙率を有する炭化物系吸着剤の成型体とすれば、優れた流体透過性を備えてそのままフィルタ材として使用することができ、上述した炭化物系吸着剤の機能を容易に発揮させることができる。
【0021】
そして、この炭化物系吸着剤の成型体は、上述したコート層を有する炭化物系吸着剤の細片100体積部に対し、セメント系バインダを18〜27体積部および所定量の水を加え混練して所定形状に成型されてなり、27〜37%の空隙率を有するものとすれば、成型体の強度と流体通過性のバランスに優れたものとなる。或いは、コート層を有する細片100体積部に対し、セメント系バインダを27〜37体積部、粒径1mm〜9mmの骨材28〜38体積部、及び所定量の水を加え混練して所定形状に成型されてなり、25%以上の空隙率を有するものとすれば、強度及び比重が増して流体フィルタ以外に構造材を兼ねた流体浄化材として用いることもできる。
【0022】
そしてまた、上述した炭化物系吸着剤の成型体において、コート層を有する細片を粒径4mm〜7mmの大細片と粒径1mm〜2mmの小細片とが所定割合で混合されたものとし、成型後に隣接する大細片間に小細片およびセメント系バインダが介在してなるものとすれば、少ないバインダ量で所定の空隙率を確保しながら細片同士を一層堅固に結合させることができ、その大細片と小細片との混合比率を体積比で2:1とすれば空隙率と成型体の強度とのバランスに優れたものとなる。
【0023】
さらに、コート層を有する細片に、上述したセメント系バインダ、或いはこのセメント系バインダ及び前述の骨材を混入し、所定量の水を加えて混練したものを型枠に投入して、縦方向から振動プレスを所定時間与えて成型後、即脱型して所定期間被覆養生するものとした製造方法で、上述した炭化物系吸着剤の成型体が製造されるものとすれば、比較的安価で一般的なセメント系バインダを用いながら、簡易な工程により低廉なコストでムラが少なく均一な多孔質体を得ることができ、優れた流体透過性および均一な強度を備えたものとなる。
【発明の効果】
【0024】
比較的安価で入手容易な木質系炭化物の細片の表面に、比較的安価で一般的なセメント系バインダのコート層を設けて粒状とし、或いはこれをさらにセメント系バインダで結合させて多孔質の成型体とした本発明により、流体透過性を確保しながら炭化物特有の機能とセメント系バインダ特有の機能との相乗効果で優れた流体浄化能を発揮し、且つ、製造コスト及び維持コストの低廉化を実現することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態を説明する。尚、本発明において、空隙率とは気中時空隙率を指すとともに試料への液体の浸潤を細片間に形成された空隙への浸潤のみを想定して細片内部への浸潤を想定しない5分程度の短時間とした場合であって、寸法測定による見掛け体積から水中水位上昇分の真体積を引いて空隙体積を算出し、見掛け体積で割って導いた値を指す。また、比表面積とは、JISのセメントの物理試験法のうち、比表面積試験:R5201による比表面積を指す。さらに、平均粒径とは、ふるい分け試験においてふるいの目開きの寸法で表現したものを指し、フレーク状とは粒状のうち薄片状のものを指すものとする。
【0026】
図1は、本発明における第一の実施の形態の炭化物系吸着剤の製造方法のフローチャートを示している。用いる細片は木質系炭化物であって、予め細片状に粉砕したものを複数の網目サイズのふるいを用いて粒径1mm〜7mmのサイズに揃えたものである。尚、木質系炭化物として、紙積層体を細かく粉砕して焼成してなるフレーク状の炭化物を用いることが推奨される。即ち、通常は廃棄にコストを要する古紙を再利用できるとともに比較的容易に炭化することに加え、作成された炭化物が、積層構造および紙繊維の構造から形態安定性に優れるとともに吸着表面積が大きく機能性に優れているからである。
【0027】
フローチャートに従って説明すると、この細片100体積部をミキサに投入し、適宜水を加えながら表面湿潤状態となるまで撹拌混合する。次に、これに粉状のセメント系バインダを10〜15体積部を加えてさらに撹拌混合する。例えば、通常の湿度において粒径4mmの細片10リットルの場合、セメント系バインダは1.25リットル前後となる。尚、セメント系バインダは、所謂早強セメントのような比表面積5000cm2/g以上の高価なものを用いる必要はなく、比表面積3200cm2/g程度の比較的安価で入手しやすい普通ポルトランドセメントを用いることができる。
【0028】
そして、この撹拌混合は粉状のセメント系バインダが水で湿潤した細片表面にまんべんなく付着して覆うまで行い、撹拌混合終了後は底が網状の容器に入れて所定時間養生する。その際、容器底側から送風して余剰水分を乾燥させるようにすることで、細片同士が結合することを回避して粒状を維持しやすいものとなる。また、所定時間養生後に再度撹拌混合を行えば細片同士の結合を一層回避しやすいものとなる。
【0029】
このように、比較的安価で入手しやすいセメント系バインダを用いて簡易な手順で完成した炭化物系吸着剤は、セメント系バインダが細片の表面で薄膜状またはドット状のコート層を形成したものとなり、そのコート層自体が細片の内外流通性を有するとともに物理的吸着能に加え化学的吸着能・分解能を備えていることから、炭化物の有する機能との相乗効果が期待でき、その流体浄化能の増強が実現するものである。そして、これを所定形状の通気性容器に入れることで、全体として空隙率が高いものとなるとともにあらゆる形状に対応可能となり、流体透過性に優れて比較的大量の流体を処理できるため、流体浄化フィルタとして優れた機能を発揮するものとなる。
【0030】
そして、用いる炭化物は粒度を所定範囲に揃えることが可能であれば木質系の比較的安価なものを使用できることから、製造コストを極めて低廉に抑えることが可能となる。また、固化後の形態安定性に優れたセメント系バインダで覆ったことで、炭化物からなる細片の破砕・粉末化を回避できるとともに極めて難燃性のものとなる。また、長期間の使用で目的物質が貯留・飽和して浄化能が低下した場合であっても、臭い分子等に代表される所定種類の吸着物においては、これに適量の水を噴霧等するだけでアルカリ加水分解が進行して吸着物が分解・無害化され、分解物は自然に蒸発することから、ほぼ当初の性能に戻すことができるため、長期間に亘って交換の必要がなくなり維持コストも極めて低廉に抑えることができる。
【0031】
図2は、本発明における第二の実施の形態である、流体浄化フィルタとして用いる炭化物系吸着剤の成型体の製造方法に関するフローチャートを示している。フローチャートに従って説明すると、前述した炭化物系吸着剤の製造方法により作成した粒径4mm〜7mmの大細片からなる炭化物系吸着剤と、粒径1mm〜2mmの小細片からなる炭化物系吸着剤とを、例えば体積比2:1で混合したものを100体積部計量してミキサに投入し、これにセメント系バインダを18〜27体積部を加える。尚、使用するセメント系バインダは前述と同様に比表面積5000cm2/g未満の安価なものでよく、普通ポルトランドセメントでも充分である。
【0032】
次に、ミキサを回して撹拌混合しながら、適当量の水を湿度等の条件を加味しながら全体として適度な粘性を有するまで加え、充分に混練してから型枠に投入する。そして、縦方向から振動プレス(セメント成型用の一般的な振動装置を使用)を所定時間実施してムラのないようにして、所定厚さの平板状やブロック状に成型後、即脱型して所定期間被覆養生し、炭化物系吸着剤の成型体を得る。尚、最初にミキサに投入するコート層を有する炭化物系吸着剤の細片は、コート層が完全に固化する前のものでもよく、上述した第一の実施の形態の炭化物系吸着剤の製造方法における養生工程の途中または前段階から、直接この炭化物系吸着剤の成型体の製造方法に移行しても同様に作成することができる。
【0033】
このように比較的簡易な手順の製造方法により製造した炭化物系吸着剤の成型体は、隣接するコート層を有する細片同士が少量のセメント系バインダで部分的に結合されて空隙の連通性の高い多孔質のものとなり、結合部分により粒状の炭化物系吸着剤の吸着表面積が僅かに減るものの、ほぼ同様の作用・効果を発揮するとともに、27〜37%の空隙率を有して流体透過性に優れたものとなり、そのまま流体浄化フィルタとして使用することができる。
【0034】
図3は、本発明における第三の実施の形態である、構造材も兼ねることのできる炭化物系吸着剤の成型体の製造方法に関するフローチャートを示している。フローチャートに従って説明すると、本実施の形態は第二の実施の形態の製造方法の工程中に骨材を投入する工程を加えたものである。即ち、前述と同様に例えば大細片と小細片とを体積比2:1で混合したものを100体積部計量してミキサに投入し、これに粒径1mm〜9mmの骨材28〜38体積部およびセメント系バインダを27〜37体積部を加え、その後は上述と同様に所定形状に成型して養生することで、25%以上の空隙率を有する炭化物系吸着剤の成型体を得るものとした。
【0035】
このように、骨材を混入したことで第二の実施の形態の炭化物成型体と比べて機能性物質である炭化物の割合がやや減るものの、強度が増すとともに比重も重くなるため、流体浄化フィルタとしての用途のみではなく壁材や床材等の構造材を兼ねた流体浄化材としての用途にも適したものとなる。また、構造材として使用する場合でも、空隙率が25%以上と比較的高いものであり、上記同様に炭化物の細片の表面をバインダのコート層が薄膜状或いはドット状に点結合した状態で覆うため、炭化物の吸着能を維持しつつ細片内外の流通性に優れてその本来の機能を十分に発揮できるものとなる。例えば、内壁材として使用することで、屋内空気に含まれるホルムアルデヒドなどの有害物質や他の臭い分子等を効率的に吸着したり、或いは空気浄化能に加えて湿度が高い時に吸湿し低い時に水分を放出する調湿能を発揮したりすることも可能となる。
【0036】
以下に、本発明の炭化物系吸着剤および炭化物系吸着剤の成型体について、実施例によりさらに詳細に説明する。本発明によるエアフィルタの流体浄化能について、以下の条件により試験を行い、検証した。
【実施例1】
【0037】
図7を参照して、前述した第一の実施の形態の製造方法による炭化物系吸着剤150gを、25cm×25cmの方形状の通気性を有する袋(不織布フィルタ袋)に入れ、内部を4等分するように十字のミシン目を入れて座布団状としたフィルタ10Aを準備し、本願発明者らが作成した換気扇11を内蔵するエアクリーナ1Aの直径20cmの吸込口13を総てカバーするようにセットし、これを底面側の直径20cmの開口窓12aに網が張られた蓋12で挟み込んで厚さ2.2cmの状態にして固定した。そして、エアクリーナ1Aを60cm×34cm×60cmの試験用ボックス4の背面側に設けた直径20cmの吸入口4bに開口窓12aが一致するように密着配置した。そして、試験用ボックス4の前面扉4aを開いて30cm×24cm×2cmのトレーに入れた検体2を配設し、エアクリーナ1Aでボックス内部の空気を吸引・浄化するものとして、臭い強度をそれぞれ10秒間隔で測定した。尚、前面扉4aを閉めると臭いは外部に殆ど漏れない状態となるが、エアクリーナ1Aの運転による吸引に伴って扉隙間からの外気の流入は可能となっている。
【0038】
炭化物系吸着剤の作成は、木質系炭化物の細片として、紙フェノール積層板を細かく粉砕後焼成して木質系炭化物とした粒径3mm〜5mmの細片(商品名:セラチップ、品番:S5020、日本シイエムケイ株式会社製)10リットルをミキサに入れ、適当量の水を加えながら撹拌混合し表面が湿潤となるようにし、これにセメント系バインダとして普通ポルトランドセメント(比表面積3300cm2/g、太平洋セメント株式会社製)1.25リットルを加え、セメント粉末が細片の表面にまんべんなく付着するまで撹拌混合した。そして、3mmの細片を通さない目開きの網を底面に設けた乾燥容器に移し、下側から余剰分の水分が乾燥するまで送風して養生し、作成した。
【0039】
図4の完成した炭化物系吸着剤(右)とコート層を設ける前の木質系炭化物の細片(左)の外観比較写真、および図5の炭化物吸着剤の拡大写真を参照して、ポルトランドセメントで覆う前の炭化物の細片が黒色であるのに対し、作成した炭化物系吸着剤は炭化物の黒色にやや灰色がかった色調を呈している。ポルトランドセメントは固化後に明るい灰色になるのに対し、炭化物系吸着剤の細片表面が灰色のポルトランドセメントで完全に覆われておらず、表面が薄膜状に覆われている部分とドット状に覆われている部分とを有したコート層となっていることが推定される。また、拡大写真より、このコート層を備えた細片は互いに結合していない粒状を維持してフレーク状を呈しているとともに、これらは集合状態で隣接する吸着剤の細片間に無数の空隙が形成されている。
【0040】
試験は、検体2として1.ホルマリン(日本薬局方、36%ホルムアルデヒド水溶液)100ml、2.ブチセロ(一般名:ブチルセロソルブ(100%)、ダイソーケミカル株式会社製)100ml、3.着火したたばこ2本(銘柄:マイルドセブン(登録商標)、日本たばこ産業株式会社製)の3種類を用い、トレー状容器に入れて検体2として試験用ボックス4の底面略中央位置に配設した。尚、たばこの測定は、測定開始時点で火を付けた2本のたばこの煙を試験用ボックス4内に人が吹き込んで煙を充満させてから、火のついたままトレーの上に置いて行った。
【0041】
臭気モニタ装置(商品名:ハンディにおいモニタ、品番:OMX―GR、新栄株式会社製)の測定端子3aは、エアクリーナ1Aの吹出口14直近に配置し、測定間隔10秒で15分間測定した。対照例として検体2の上方約30cmに配置した測定端子3bで検体側の臭い強度を同時に測定した。図9〜図11に、その実験結果のグラフを示す(臭い強度のレベルはポイントで示した)。尚、エアクリーナ1Aによる平均風速は、吸込側0.38m/秒、吹出側は1.44m/秒であった。
【0042】
(結果)1.ホルムアルデヒド:図9に示すように、検体側の臭い強度が80秒以降200ポイント以上を記録していたのに対し、エアクリーナ1Aで浄化後の吹出側の臭い強度は60秒以降、継続的に20ポイント以下となった。2.ブチセロ:図10に示すように、検体側の臭い強度が90秒以降100ポイント以上を示し、600秒以降150ポイント以上となっていたのに対し、吹出側の臭い強度は、90秒以降継続的に15ポイントを下回った。3.たばこ:図11に示すように、検体側の臭い強度が90秒後には440ポイントに達し600秒まで40〜430ポイントを示した後60〜290ポイントを示していたのに対し、吹出側の臭い強度は、600秒まで5〜70ポイントを記録した後、火が完全に消えて煙の出なくなった660秒以降は継続的に5ポイントを下回った。
【0043】
この実験結果により、本発明による炭化物系吸着剤は、通気性袋に入れてエアフィルタとして用いた場合に、エアクリーナ1A作動後1〜2分後(たばこは消火後)には人間が殆ど気にならないレベルの臭い強度となったことから、消臭機能が十分に発揮されていたということが言える。また、エアクリーナ1Aの吹出口側において、風速1.44m/秒を有していたことから、フィルタ10Aは優れた流体透過性を有していることが分かり、エアフィルタとして有用な素材と考えられる。
【実施例2】
【0044】
図8を参照して、実施例1において用いた実験装置のうち、粒状の炭化物系吸着剤を入れたフィルタ10Aの代わりに、上述の第二の実施の形態に示した炭化物系吸着剤の成型体の製造方法により製作した25cm×25cm×1.5cmのパネル状のフィルタ10Bを用いて、上述と同様の条件で 1.ホルマリン、2.ブチセロ、3.たばこについて試験した。
【0045】
流体浄化フィルタ10Bの作成は、先ず上述した手順で炭化物系吸着剤を作成する。即ち、木質系炭化物の細片として、紙フェノール積層板を細かく粉砕後焼成して炭化物とした粒径3mm〜5mmの大細片(商品名:セラチップ、品番:S5020、日本シイエムケイ株式会社製)および粒径1.5mm〜2mmの小細片(商品名:セラチップ、品番:S3005、日本シイエムケイ株式会社製)とが容積比2:1で10リットルとなるように計量して容量250リットルのミキサ(製品名:高速ギヤードモルタルミキサー、型番:GM−6、タケムラテック社製)にいれ、適当量の水を加えながら撹拌混合し表面が湿潤となるようにして、セメント系バインダとして上述の普通ポルトランドセメント1.25リットルを加えてセメント粉末が細片の表面にまんべんなく付着するまで撹拌混合した。そして、底面が3mmの細片を通さない目開きの網とされた容器に移し、下側から余剰分の水分が乾燥するまで送風して養生して作成した。
【0046】
この大細片と小細片とが2:1で混在するコート層を備えた炭化物系吸着剤を再度ミキサに入れ、上述の普通ポルトランドセメント3リットルを加えて撹拌混合後、適当量の水を注入して適度な粘性を持つまで混練しながら注水した。尚、注水量は2リットルであった。
【0047】
そして、充分に混練してからプレートを作成するための型枠(内側30cm×30cm、正方形)に投入し、発明者作成の振動プレス装置を用いて成型した。詳細には、型枠に挿入された上板(30cm×30cm)とこれを受ける下板(40×40cm)とで挟まれた混練物を、上方向からエアシリンダー(製品名:SCA2、チューブ径80mm、CKD社製)でプレス(351kg)しながら、上下方向から振動モータ(KM5−2PA(遠心力0.49KN)、エクセン社製、上板1台・下板2台配置)かけて振動プレスを10秒間実施し、ムラのないように平板状に成型した。この振動プレスにより当初2.2cmあった厚さが1.5cmとなった。振動プレス後は直ちに脱型し、被覆養生してから25×25cmにカットして炭化物系吸着剤の成型体であるフィルタ10Bを得た。
【0048】
図6(A)のフィルタ10Bの断面の状態を示す外観写真を参照して、作成された炭化物系吸着剤の成型体からなるフィルタ10Bは、細片表面がポルトランドセメントで総て覆われた場合に灰色を呈するのに対し、実施例1の炭化物系吸着剤の色調よりも全体的にやや灰色寄りではあるが、その多くの部分が炭化物の黒色にやや灰色がかった色調を呈しており、炭化物系吸着剤同士を結合させるためのポルトランドセメントで完全に覆われていないことが推定される。また、断面の状態から空隙に富むとともに各空隙は互いに連通していることが分かる。さらに、フィルタ10Bはガスレンジの上に載置してヤカンで湯を沸かしている図6(B)の外観写真に示すように、水が沸騰するまで火で加熱した場合でも燃えたり変形したりすることのない、極めて難燃性で耐火性に優れたものである。
【0049】
これを上述と同様に装着してエアクリーナ1Bとし、上述と同様の条件で試験を行った(たばこ消臭試験は試験時間660秒で終了した)。図12〜図14に、その試験結果のグラフを示す(臭い強度のレベルはポイントで示した)。尚、フィルタ10Bの空隙率は35%であり、エアクリーナ1Bによる平均風速は、吸込側0.55m/秒、吹出側2.92m/秒であった。尚、参考までに木質系炭化物において大細片と小細片との容積比を1:1で作成した場合の平均風速は、吸込み側0.31m/秒、吹出し側は2.18m/秒であり、大細片と小細片との容積比を2:1としたことで、流体透過性が良好になったものと思われる。
【0050】
(結果)1.ホルマリン:図12に示すように、検体側の臭い強度が80秒以降50ポイント以上を記録し最高で150ポイント以上を記録し、500秒以降もほぼ40ポイント以上を記録していたのに対し、エアクリーナ1Bによる浄化後の吹出側の臭い強度は継続的に40ポイントを下回った。2.ブチセロ:図13に示すように、検体側の臭い強度が40秒以降に100ポイント前後〜400ポイントを記録していたのに対し、吹出側の臭い強度は降継続的に100ポイントを下回った。3.たばこ:図14に示すように、検体側の臭い強度が110秒以降50ポイント前後〜240ポイントを記録していたのに対し、吹出側の臭い強度は120秒以降継続的に15ポイントを下回り、460秒以降は5ポイント以下を示し、610秒以降はほぼ0ポイントを示した。
【0051】
この実験結果より、本発明による炭化物系吸着剤の成型体は、僅か1.5cmの薄さのパネル状として用いた場合でも、対照例と比べて有意に低い臭いレベルとなったことから、消臭機能が充分に発揮されていたということが言える。また、エアフィルタ1Bの吹出口側において、風速2.92m/秒を有していたことから、優れた流体透過性を有していることが分かり、エアフィルタとして有用な素材と考えられる。
【0052】
尚、第一の実施例に比べて1.ホルマリンおよび2.ブチセロの消臭効果がやや劣っていたことから、同様の試験について流体浄化フィルタ10Bを2枚重ねて30mmの厚さでさらに実施したところ、ホルマリンは80秒以降に継続して15ポイント前後を記録し、ブチセロは10ポイントを上回ることがなく300秒以降は継続的に5ポイント以下を示した。従って、フィルタ10Bは厚さを増すことで吸着能が向上することが分かった。また、詳細は示さないが、第三の実施の形態の骨材入りの炭化物系吸着剤の成型体についても同様に試験したが、第二の実施例と比較して流体透過性は僅かに下回ったもののほぼ同等の結果が得られ有意性を確認することができた。尚、骨材を入れたことで重力が増すとともに堅牢さが向上しており、特に構造材を兼ねた使用方法において有用なものとなると思われた。
【0053】
さらに、比較のために、第一の実施例におけるセメント系バインダによるコート層を設ける前の粒径3mm〜5mmの細片(商品名:セラチップ、品番:S5020、日本シイエムケイ社製)をそのまま同じフィルタ袋に入れてエアクリーナにセットして同様に消臭テストを実施したところ、臭い強度は20ポイント以下にはなるものの5ポイントを下回ることがなく、たばこ臭が依然として人に感じられるレベルであった。このことから、炭化物にセメント系バインダのコート層を設けた本発明は、炭化物単独よりも優れた消臭能を発揮していること分かる。
【0054】
上述した実施例1および実施例2の結果より、本発明による炭化物系吸着剤および炭化物系吸着剤の炭化物成型体は、コストの低廉化を実現しながら炭化物の有する機能を増強して、優れた流体浄化能を発揮することが確認された。この極めて優れた消臭効果から、炭化物自体の消臭効果がさらに増強されていると考えられるものであるが、これにはマイナスイオン系材料であるセメント系バインダ自体の特性が影響していると想定される。
【0055】
例えば、臭いの発生源として特に人に不快感を与えるものを挙げると、アルデヒド・ケトン類、カルボン酸類(有機酸類)、エステル類等があるが、これらとアルカリ性素材であるセメント系バインダのOH−との間で以下の反応が生じると考えられる。
【0056】
アルデヒド・ケトン類:アルデヒドとケトンの炭素に、OH−が求核付加し、ジオールを与え、これらが水溶性の陰イオンとなる。カルボン酸類:カルボン酸はアルカリ性条件下でプロトンが離れ、水溶性の陰イオンとなる。例えば不快な臭いを持つ洛酸や吉草酸などはアルカリと反応させることで無臭となる。エステル類:化粧品や果物等に含まれるエステルはアルカリ性条件下で加水分解し、水溶性のカルボン酸アニオンとアルコールを与える。
【0057】
従って、木質系炭化物による吸着のみでなく、臭いの原因分子がバインダに触れて無臭化されることもその消臭機能に関与していると考えられる。また、上述した反応物は総て炭化物系吸着剤に水を加えることにより前述のアルカリ加水分解で無臭化された後アルコール分が蒸発して除去されるものであるため、消臭フィルタとして交換を要さずに長期間に亘って使用可能となることが期待され、維持コストも低廉に抑えることが可能となると考えられる。実例として、例えばブチセロを使用する半導体工場において、活性炭をエアクリーナのエアフィルタとして用いていたのを、実施例1のエアクリーナ1Aに替えて約10ヶ月経過したが、従来1月毎にエアフィルタを交換していたのに対し、現在のところ交換の必要もなく新しい活性炭を使用する場合よりも優れた消臭能を継続して発揮している。
【0058】
尚、本発明に係る炭化物系吸着剤および炭化物系吸着剤の炭化物成型体の開発にあたり、本願発明者らは用いる炭化物の細片について様々な原料・形状・サイズ・混合比率で実施し、また、コート層となるバインダについて様々なものを用いて、フィルタとして用いた場合の流体透過性・流体浄化能等の機能について調べた。その結果、上述の解決手段に示した各構成がこれらの観点において優れていたことから採用したものである。
【0059】
即ち、表面のコート層をセメント系バインダとすることで、炭化物の形態を維持しつつその物理的吸着能を確保しやすいとともに、セメント材特有の機能が有効に働くものであるが、セメント系バインダを10〜15体積部としたのは10体積部未満になると流体浄化能および形態維持能が急に低下し15体積部を超えると急に吸着能が低下したことによるものであり、これらの機能は安価な普通ポルトランドセメントでも充分発揮されたことから高価な比表面積5000cm2/g以上のものに限定しないものとした。
【0060】
また、炭化物細片の粒径が1mm未満になると空隙率が不充分になって流体透過性が大きく低下し、7mmを超えると空隙部分における合計表面積が不充分になって吸着能が急に低下したからである。さらに、細片を粒径4mm〜7mmの大細片と粒径1mm〜2mmの小細片の2種類のサイズとしてこれを2:1の混合比率で用いて成型したとき、成型体の強度と流体透過性のバランスに優れたものとなったからである。さらにまた、炭化物系吸着剤同士を結合させるためのセメント系バインダは、18体積部未満になると結合力が急に低下し、27体積部を超えると空隙率が急に低下するとともに吸着能が大きく低下したことによるものである。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の第一の実施の形態の製造方法を示すフローチャート。
【図2】本発明の第二の実施の形態の製造方法を示すフローチャート。
【図3】本発明の第三の実施の形態の製造方法を示すフローチャート。
【図4】実施例1において作成した炭化物系吸着剤(右)とコート層を設ける前の炭化物の細片(左)との外観比較写真。
【図5】図4の炭化物系吸着剤の拡大写真。
【図6】(A)は実施例2において作成した炭化物系吸着剤の成型体の断面の状態を示す外観写真、(B)はその成型体をガスレンジにかけてヤカンの水を沸かしている状態を示す外観写真。
【図7】実施例1における試験装置を示す縦断面図。
【図8】実施例2における試験装置を示す縦断面図。
【図9】図7の試験装置においてホルマリンを検体とした試験結果を示すグラフ。
【図10】図7の試験装置においてブチセロを検体とした試験結果を示すグラフ。
【図11】図7の試験装置においてたばこを検体とした試験結果を示すグラフ。
【図12】図8の試験装置においてホルマリンを検体とした試験結果を示すグラフ。
【図13】図8の試験装置においてブチセロを検体とした試験結果を示すグラフ。
【図14】図8の試験装置においてたばこを検体とした試験結果を示すグラフ。
【符号の説明】
【0062】
1A,1B エアクリーナ、2 検体、3a,3b 測定端子、10A,10B フィルタ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質系炭化物からなる所定粒径の細片が、表面にセメント系バインダが固化したコート層を有し、個々の前記細片が互いに結合しない状態で粒状を維持している、ことを特徴とする炭化物系吸着剤。
【請求項2】
前記細片は、紙積層体を焼成してなるフレーク状の炭化物である、ことを特徴とする請求項1に記載した炭化物系吸着剤。
【請求項3】
前記セメント系バインダは、ポルトランドセメントを主成分としていることを特徴とする請求項1または2に記載した炭化物系吸着剤。
【請求項4】
請求項3に記載したポルトランド系セメントは、比表面積が5000cm2/g未満のものであることを特徴とする炭化物系吸着剤。
【請求項5】
請求項1,2,3または4に記載した炭化物系吸着剤は、粒径が1mm〜7mmの前記細片100体積部に対し、前記セメント系バインダ10〜15体積部および所定量の水を加えて撹拌混合してなる、ことを特徴とする炭化物系吸着剤。
【請求項6】
前記細片は、粒径が4mm〜7mmであることを特徴とする、請求項5に記載した炭化物系吸着剤。
【請求項7】
前記細片に、予め所定量の水を加えて表面湿潤状態としてから、所定割合で粉状の前記セメント系バインダを加えて撹拌混合し、前記細片表面の水に前記セメント系バインダが付着して水和反応が進行する状態とし、所定期間養生することで固化して前記コート層が形成されるものとした、請求項1,2,3,4,5または6に記載した炭化物系吸着剤の製造方法。
【請求項8】
請求項1,2,3,4,5または6に記載した炭化物系吸着剤における前記コート層を有する細片同士が、さらに前記セメント系バインダで互いに部分的に結合されて所定形状に成型されてなり、25%以上の空隙率を有することを特徴とする炭化物系吸着剤の成型体。
【請求項9】
請求項8に記載した炭化物系吸着剤の成型体は、前記コート層を有する細片100体積部に対し、前記セメント系バインダ18〜27体積部および所定量の水を加えて混練して所定形状に成型されてなり、27〜37%の空隙率を有する、ことを特徴とする炭化物系吸着剤の成型体。
【請求項10】
請求項8に記載した炭化物系吸着剤の成型体は、前記コート層を有する細片100体積部に対し、前記セメント系バインダを27〜37体積部、粒径1mm〜9mmの骨材28〜38体積部、及び所定量の水を加え混練して所定形状に成型されてなり、25%以上の空隙率を有する、ことを特徴とする炭化物系吸着剤の成型体。
【請求項11】
請求項8,9,10に記載した炭化物系吸着剤の成型体は、前記コート層を有する細片が粒径4mm〜7mmの大細片と粒径1mm〜2mmの小細片とが所定割合で混合されたものであり、成型後に隣接する前記大細片間に前記小細片および前記セメント系バインダが介在してなる、ことを特徴とする炭化物系吸着剤の成型体。
【請求項12】
請求項11に記載した炭化物系吸着剤の成型体において、前記大細片と前記消細片の混交比率は体積比で2:1である、ことを特徴とする炭化物系吸着剤の成型体。
【請求項13】
前記コート層を有する細片に、前記セメント系バインダ、或いは前記セメント系バインダ及び前記骨材を混入し、所定量の水を加えて混練したものを型枠に投入して、縦方向から振動プレスを所定時間与えて成型後、即脱型して所定期間被覆養生するものとした、請求項8,9,10,11,12に記載した炭化物系吸着剤の成型体の製造方法。
【請求項1】
木質系炭化物からなる所定粒径の細片が、表面にセメント系バインダが固化したコート層を有し、個々の前記細片が互いに結合しない状態で粒状を維持している、ことを特徴とする炭化物系吸着剤。
【請求項2】
前記細片は、紙積層体を焼成してなるフレーク状の炭化物である、ことを特徴とする請求項1に記載した炭化物系吸着剤。
【請求項3】
前記セメント系バインダは、ポルトランドセメントを主成分としていることを特徴とする請求項1または2に記載した炭化物系吸着剤。
【請求項4】
請求項3に記載したポルトランド系セメントは、比表面積が5000cm2/g未満のものであることを特徴とする炭化物系吸着剤。
【請求項5】
請求項1,2,3または4に記載した炭化物系吸着剤は、粒径が1mm〜7mmの前記細片100体積部に対し、前記セメント系バインダ10〜15体積部および所定量の水を加えて撹拌混合してなる、ことを特徴とする炭化物系吸着剤。
【請求項6】
前記細片は、粒径が4mm〜7mmであることを特徴とする、請求項5に記載した炭化物系吸着剤。
【請求項7】
前記細片に、予め所定量の水を加えて表面湿潤状態としてから、所定割合で粉状の前記セメント系バインダを加えて撹拌混合し、前記細片表面の水に前記セメント系バインダが付着して水和反応が進行する状態とし、所定期間養生することで固化して前記コート層が形成されるものとした、請求項1,2,3,4,5または6に記載した炭化物系吸着剤の製造方法。
【請求項8】
請求項1,2,3,4,5または6に記載した炭化物系吸着剤における前記コート層を有する細片同士が、さらに前記セメント系バインダで互いに部分的に結合されて所定形状に成型されてなり、25%以上の空隙率を有することを特徴とする炭化物系吸着剤の成型体。
【請求項9】
請求項8に記載した炭化物系吸着剤の成型体は、前記コート層を有する細片100体積部に対し、前記セメント系バインダ18〜27体積部および所定量の水を加えて混練して所定形状に成型されてなり、27〜37%の空隙率を有する、ことを特徴とする炭化物系吸着剤の成型体。
【請求項10】
請求項8に記載した炭化物系吸着剤の成型体は、前記コート層を有する細片100体積部に対し、前記セメント系バインダを27〜37体積部、粒径1mm〜9mmの骨材28〜38体積部、及び所定量の水を加え混練して所定形状に成型されてなり、25%以上の空隙率を有する、ことを特徴とする炭化物系吸着剤の成型体。
【請求項11】
請求項8,9,10に記載した炭化物系吸着剤の成型体は、前記コート層を有する細片が粒径4mm〜7mmの大細片と粒径1mm〜2mmの小細片とが所定割合で混合されたものであり、成型後に隣接する前記大細片間に前記小細片および前記セメント系バインダが介在してなる、ことを特徴とする炭化物系吸着剤の成型体。
【請求項12】
請求項11に記載した炭化物系吸着剤の成型体において、前記大細片と前記消細片の混交比率は体積比で2:1である、ことを特徴とする炭化物系吸着剤の成型体。
【請求項13】
前記コート層を有する細片に、前記セメント系バインダ、或いは前記セメント系バインダ及び前記骨材を混入し、所定量の水を加えて混練したものを型枠に投入して、縦方向から振動プレスを所定時間与えて成型後、即脱型して所定期間被覆養生するものとした、請求項8,9,10,11,12に記載した炭化物系吸着剤の成型体の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図4】
【図5】
【図6】
【図2】
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【図11】
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【図6】
【公開番号】特開2007−105619(P2007−105619A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−298565(P2005−298565)
【出願日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(505383693)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(505383693)
【Fターム(参考)】
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