説明

炭含有タック紙

【課題】 炭粉の効果である、酸化抑制・脱臭・消臭・静電気除去効果を有し、且つ細かな溝にも追随できる腰の弱い(剛性の低い)タック紙であり、さらに紙基材を選択することにより、印刷による表示、装飾効果を得ることが可能であるタック紙を提供すること。
【解決手段】 紙基材の面上に炭粉含有層及び粘着剤層が順次、且つ互いに接して設けられた炭含有タック紙であって、該炭粉含有層がポリカーボネート系水分散型ポリウレタン樹脂を結着剤とする層であることを特徴とする炭含有タック紙。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭粉を含有し、ラベルやステッカーに使用するのに適したタック紙に関する。
【背景技術】
【0002】
炭は燃料以外に例えば脱臭、消臭、防虫、防黴、有害物質の吸着・分解、吸湿・放湿、電磁波の防止、静電気除去、マイナスイオンの発生及びそれによる酸化防止、遠赤外線放射など多くの効能があることが知られてきた。
【0003】
上記のような炭の燃料以外の優れた効能を利用するために、炭をそのまま適当な大きさ、形状に切断、切削した形で、又は、細粒状に粉砕して適当な容器に封入して使用することが行われている。
【0004】
しかし、炭をそのまま用いる場合には、形状などから使用場所、使用目的に制約があり、細粒状で用いるときには粉塵として飛散する、他の材料との混合、混練などが容易ではないなど、使い方に制限を受けるという問題があった。
【0005】
これに対し、容易に自由な形状に形成して簡便に使用場所において邪魔にならずに使用できる形として、基材シートの片面に乾式の接着剤により白炭をコーティングした白炭シート層を設け、他方の面に粘着剤層及び剥離紙層を順次積層したシール紙(例えば、特許文献1参照)や、シート材の片面にインクジェット受容層を形成し、他方の面に木炭粉末含有層を設けたインクジェット印刷用シート(例えば、特許文献2参照)が提案されている。
【0006】
前者のシール紙は、粘着剤と細粒状の白炭を混練したもので粘着剤層を作ろうとした場合は白炭と粘着剤が分離してしまい、白炭が固着しないという問題を上記の構成にすることにより解決したものであり、シール紙(タック紙)状であるので使用場所、使用態様が大幅に拡大され、その使用上の利便性が得られた上に、白炭の機能は十二分に発揮されると説明されている。
しかし、このシール紙は白炭シート層を表面層としているため、摩擦による影響を受けやすく、また表示や装飾のための印刷を直接施すことはできず、そのため、特許文献1の段落0007に記載されているように、白炭シート層上に印刷を施したり保護層として機能させるキャストコート紙を積層することが提案されているが、その場合は、層構成としては、紙層が2層となる。そして、この構成であると、紙層が2層ある分だけ厚くなり、また腰が強くなり(剛性が高くなり)、表面に段差のある粘着対象物に貼着すると、段差のある表面に追随しにくかったり、経時的にタック紙と被着物との間に隙間ができやすくなったりするので、タック紙のはがれや、隙間へのごみ・異物の付着につながり、結果として美観を損ねる恐れがあった。
一方、後者の場合は、印刷は可能であるが、接着層を設けてタック紙として使用することについては、記載も示唆もされていない。
【0007】
【特許文献1】特開2003−183607号公報
【特許文献2】特開2002−113939号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような状況下で、炭粉の効果である、酸化抑制・脱臭・消臭・静電気除去効果を有し、印刷により表示、装飾効果を得ることが可能であり、且つ細かな溝にも追随できる腰の弱い(剛性の低い)タック紙であり、また、印刷により表示、装飾効果を得ることも可能であるタック紙を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、前記の課題を達成すべく研究を重ねた結果、特定の樹脂を結着剤として炭粉含有層を形成することにより、炭粉含有層に接して粘着剤層を形成しても、炭粉含有層と粘着剤層との間に必要な層間接着性が得られ、その目的を達成し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0010】
すなわち、本発明は、
(1)紙基材の片面に炭粉含有層及び粘着剤層が順次、且つ互いに接して設けられた炭含有タック紙であって、該炭粉含有層がポリカーボネート系水分散型ポリウレタン樹脂を結着剤とする層であることを特徴とする炭含有タック紙、
(2)炭粉含有層が更にカテキン粉末、キトサン粉末、トルマリン粉末及び銀粉末のいずれか1以上を含む層である上記(1)の炭含有タック紙、
(3)炭粉含有層中の炭粉の含有量が5〜15質量%である上記(1)又は(2)の炭含有タック紙、
(4)粘着剤層がアクリル系エマルジョンタイプ粘着剤からなる層である上記(1)〜(3)のいずれかの炭含有タック紙、及び
(5)紙基材が印刷可能な紙である上記(1)〜(4)のいずれかの炭含有タック紙、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の炭含有タック紙は、炭粉の効果である、酸化抑制・脱臭・消臭・静電気除去効果を有し、且つ紙部分が紙基材1層のみであるので、全体を薄くすることができ、細かな溝にも追随できる腰の弱い(剛性の低い)タック紙である。また、紙基材が露出しているので、紙基材を印刷可能なものとし、印刷により表示、装飾効果を得ることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の炭含有タック紙において、紙基材は、シート状で且つ通気性を有する紙基材であればよく、特に制限されず、種々の紙基材が使用可能であるが、例えば、上質紙、再生紙、アート紙、コート紙、微塗工紙、意匠紙、キャスト塗工紙、板紙、和紙、不織布、合成紙等の一般印刷用紙が挙げられる。勿論、紙基材として、インクジェット記録用に開発されたインクジェット記録用紙を用いることもできる。
【0013】
これらの紙基材の厚さは特に制限されず、用途などに応じて適宜調整すればよいが、タック紙として必要な強度を得るためには50μm以上が好ましく、タック紙として必要な柔軟性を得るためには70μm以下が好ましい。 即ち、紙基材の厚さは、50〜70μm、特に50〜60μmの範囲が好ましい。
【0014】
本発明の炭含有タック紙において、炭粉含有層に使用する炭粉の原料となる炭としては、黒炭、白炭などの木炭や、竹炭が使用可能であるが、遠赤外線の点からは、白炭の1種である備長炭が好ましい。
【0015】
炭粉の平均粒径は、炭粉含有層に必要な強度を得るためには20μm以上が好ましく、炭粉含有層に必要な柔軟性を得るためには50μm以下が好ましい。即ち、炭粉の平均粒径は、20〜50μm、特に25〜30μmの範囲が好ましい。
【0016】
本発明の炭含有タック紙において、炭粉含有層の結着剤としてはポリカーボネート系水分散型ポリウレタン樹脂を使用する。
ポリウレタン樹脂は、トルエン・ジメチルホルムアミド・メチルエチルケトンのような、有機溶剤に溶かした形で市場に供給されているが、こうした有機溶剤は環境汚染の一因となる為、本発明では、環境にやさしい水分散型ポリウレタン樹脂を使用する。
【0017】
本発明で使用するポリカーボネート系水分散型ポリウレタン樹脂は、平均分子量10,000以下のものが好ましい。
【0018】
炭粉含有層中における炭粉の固形分含有量は、炭粉の効果を十分発揮させるには、5質量%以上が好ましく、炭粉含有層の形成を容易にするのは15質量%以下がこのましい。
即ち炭粉含有層中における炭粉の含有量は、5〜15質量%の範囲、特に8〜12質量%の範囲が好ましい。
【0019】
炭粉含有層には、使用目的に応じて、カテキン粉末(酸化防止効果)、キトサン粉末(脱臭)、トルマリン粉末(マイナスイオン効果)又は銀粉末(殺菌、静電気除去効果)の1種以上を添加しても良い。
これらの添加量は、炭粉含有層中の固形分含有量として1質量%以下とするのが適当である。
【0020】
炭粉含有層は、炭粉とポリカーボネート系水分散型ポリウレタン樹脂を、適宜添加されるその他の成分とともに、水に分散して塗工液を調整し、この塗工液を紙基材の一方の面に塗工し、乾燥させることにより形成する。
塗工液は、塗工の利便さから、固形分濃度が20〜30質量%の範囲になるように調製するのが好ましい。
塗工液の前記紙基材上への塗工には、従来公知の塗工方法、例えば、グラビア印刷、スクリーン印刷等が用いられる。
塗工液の塗工量は、乾燥後の厚みが20〜30μmとなる量が適当である。
【0021】
本発明の炭含有タック紙においては、前記のようにして形成した炭粉含有層に接して粘着剤層を設ける。
粘着剤層に使用する粘着剤としては、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ビニル系粘着剤等の各種粘着剤が使用できるが、耐候性の点からはアクリル系粘着剤が好ましい。
【0022】
アクリル系粘着剤には非架橋型と架橋型があり、何れも粘着剤層の形成材料として用いることができるが、凝集性、粘着性、接着性等の点で、架橋型(アクリル系架橋型粘着剤)が好ましい。このアクリル系架橋型粘着剤としては、接着性を付与する主モノマー成分、接着性や凝集力を付与するコモノマー成分、及び、架橋や接着性改良のための官能基含有モノマー成分を主とする重合体又は共重合体(アクリルポリマー)を弾性材料とするものを用いることができる。
【0023】
上記主モノマー成分としては、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジル等のアクリル酸アルキルエステル;メタクリル酸ブチル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル等のメタクリル酸アルキルエステル等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0024】
上記コモノマー成分としては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリル等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0025】
上記官能基含有モノマー成分としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸等のカルボキシ含有モノマー;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、N−メチロールアクリルアミド等のヒドロキシル基含有モノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド、グリシジルメタクリレート等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0026】
上記アクリルポリマーを含む溶液に添加される架橋剤としては、イソシアナート系、エポキシ系、エチレンイミン系、アルキレート系等が挙げられ、これらの中から官能基と反応し得る種類の架橋剤を適宜選択して用いる。
【0027】
上記アクリル系粘着剤には、通常、上記アクリルポリマー(架橋型の場合は更に架橋剤)以外に、ロジン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、石油系炭化水素樹脂、クロマン系樹脂等の粘着付与剤を含有させる。
【0028】
さらに、上記アクリル系粘着剤には、必要に応じ、フタル酸エステル、リン酸エステル、塩化パラフィン、液状ポリブテン、ラノリン、動・植物性油、鉱物油等の軟化剤や可塑剤;亜鉛華、酸化チタン、クレー、炭酸カルシウム、水和アルミニウム、顔料等の充填剤;ジチオカーバメイト、金属キレート剤等の老化防止剤等の1種又は2種以上を含有させることができる。
尚、アクリル系粘着剤の形態にはエマルジョン型と溶剤型があるが、どちらの形態も使用可能である。
【0029】
粘着剤層は、上記のような成分からなる粘着剤組成物に、必要に応じて溶媒を配合した塗工液を、公知の方法により塗工し、乾燥させることにより形成する。
粘着剤層用の塗工液の塗工量は、乾燥後の厚みが20〜30μmとなる量が適当である。
粘着剤層は、前記のようにして形成した炭粉含有層上に直接塗工液を塗工して形成する方法のほか、剥離紙上に塗工液を塗工、乾燥して粘着剤層を形成し、それを炭粉含有層上に、炭粉含有層と粘着剤層とが接するように積層する方法によって設けても良い。
本発明の炭含有タック紙は、通常の場合、使用するまでは、保護のために、粘着剤層面は剥離紙で覆われる。剥離紙としては、一般的な剥離紙が使用でき、例えば片面にシリコン加工を施したクラフト紙系の剥離紙を挙げることができる。
【実施例】
【0030】
次に、本発明を実施例により、更に詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、炭含有タック紙の性能は、以下に示す要領に従って評価した。
【0031】
(1)凹凸部貼付性
図1に示すように、L字型のプラスチック成形体1に、縦50mm、横20mmの試験片を、上端から15mm及び35mmの位置で互いに逆方法に90°階段状に折り曲げて貼付した。(従って、上端から15mm迄の部分がL字型のプラスチックの上面Aに、上端から15〜35mm迄の部分がL字型のプラスチックの側面Bに、残りの部分がL字型のプラスチックの下面Cに、各々貼付されている。)
【0032】
(2)粘着剤層と炭粉含有層との層間接着性
試験片の粘着剤層に、ニチバン製セロテープ(登録商標)(幅18mm)を貼り付け、90度方向に一気に剥離した。
【0033】
実施例1
下記の成分を均一に混合して、炭粉含有層形成用の塗工液を調製した。
(1)炭粉:平均粒径28μmの備長炭の微粒子・・・・・・・・・10質量部
(2)結着剤:ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂(日華化学社製、エバファノール APL−55) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・90質量部
この塗工液を、紙基材(坪量73kgのアート紙、日本製紙社製)の片面に、グラビヤ印刷によって塗工し、乾燥後の厚さが約30μmの炭粉含有層を形成した。
次いで、この炭粉含有層上にアクリル系エマルジョンタイプ粘着剤(ゼネラルタック社製、一般強粘)を、グラビヤ印刷によって塗工し、乾燥後の厚さが約30μmの粘着剤層を形成した。
このようにして得られた炭含有タック紙について、曲面貼付性及び粘着剤層と炭粉含有層との接着強度を測定したところ、次のような結果が得られた。
凹凸部貼付性:角部に浮き及びシワの発生はなかった。
層間接着性:粘着剤層と炭粉含有層との分離は見られなかった。
【0034】
比較例1
実施例1で使用したのと同じ炭粉含有層形成用の塗工液を、実施例1と同様にして紙基材(アート紙)の片面に塗工し、半乾燥の状態となった時点で、紙基材と同じアート紙を塗工層面に重ね、更に、乾燥後の厚さが約30μmの炭粉含有層を2枚のアート紙で挟んだ積層体を作成した。
次いで、この積層体の片面(アート紙面)に実施例1と同様に乾燥後の厚さが約30μmの粘着剤層を形成した。
このようにして得られた、アート紙/炭粉含有層/アート紙/粘着剤層、の構成からなる炭含有タック紙について、凹凸部貼付性及び粘着剤層と炭粉含有層との接着強度を測定したところ、次のような結果が得られた。
凹凸部貼付性:角部で浮きが発生した。
層間接着性:粘着剤層と炭粉含有層との分離は見られなかった。
【0035】
比較例2
炭粉含有層形成用の塗工液の結着剤を、90質量部のアクリル系樹脂水性エマルジョンであるモビニール735(クラリアントポリマー社製、固形分43重量%)に替えた以外は、実施例1と同様にして炭含有タック紙を得た。
得られた炭含有タック紙について、凹凸部貼付性及び粘着剤層と炭粉含有層との接着強度を測定したところ、次のような結果が得られた。
凹凸部貼付性:粘着剤層と炭粉含有層とが分離し、紙部(炭粉含有層とアート紙との積層部)で浮きが発生した。
層間接着性:粘着剤層と炭粉含有層との分離が起こり、粘着剤層がセロテープに付着した。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の炭含有タック紙は、酸化抑制・脱臭・消臭・静電気除去効果を有し、しかも腰が弱い(剛性が低い)ので、段差のある表面に追随しやすく、経時的にタック紙と被着物との間に隙間もできず、タック紙のはがれや、隙間へのごみ・異物の付着が起こらない。
また、紙基材が露出しているので、紙基材を印刷可能なものとし、カラー印刷等を施すことにより、装飾性の高いシール・ステッカーとして、またはレーザープリンター用紙として幅広く活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】凹凸部貼付性の試験における試験片の貼付方法を示すための斜視図
【符号の説明】
【0038】
1:L字型のプラスチック成形体
2:試験片



【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材の片面に炭粉含有層及び粘着剤層が順次、且つ互いに接して設けられた炭含有タック紙であって、該炭粉含有層がポリカーボネート系水分散型ポリウレタン樹脂を結着剤とする層であることを特徴とする炭含有タック紙。
【請求項2】
炭粉含有層が更にカテキン粉末、キトサン粉末、トルマリン粉末及び銀粉末のいずれか1以上を含む層である請求項1に記載の炭含有タック紙。
【請求項3】
炭粉含有層中の炭粉の含有量が5〜15質量%である請求項1又は2に記載の炭含有タック紙。
【請求項4】
粘着剤層がアクリル系エマルジョンタイプ粘着剤からなる層である請求項1〜3のいずれかに記載の炭含有タック紙。
【請求項5】
紙基材が印刷可能な紙である請求項1〜4のいずれかに記載の炭含有タック紙。


【図1】
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【公開番号】特開2006−22144(P2006−22144A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−199108(P2004−199108)
【出願日】平成16年7月6日(2004.7.6)
【出願人】(000004374)日清紡績株式会社 (370)
【出願人】(504260553)ゼネラルタック株式会社 (1)
【出願人】(397029873)株式会社大木工藝 (21)
【Fターム(参考)】