説明

炭層を設けた密閉気泡体の発泡樹脂

【課題】炭層を設けて発泡ポリエチレン、発泡ポリプロピレン、発泡ポリスチレン、発泡エチレン酢酸ビニルを寝具や衣料として使用した密閉気泡体の発泡樹脂を提供する。
【解決手段】発泡ポリエチレン1、発泡ポリプロピレン、発泡ポリスチレン、発泡エチレン酢酸ビニルに柔軟な炭層2を設けると、炭層2によって水分の吸収発散機能、遠赤外線放出作用、臭いの吸収作用が生まれ、体を深部から温め代謝を活性化する望ましい寝具材料になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
炭層を設けて複合材化した発泡ポリエチレン、発泡ポリプロピレン、発泡ポリスチレン、発泡エチレン酢酸ビニルに関する。
【背景技術】
【0002】
特願平成06−042640に発泡ポリエチレン層の表面側にはアルミ蒸着ポリエステル層が形成され、さらにその上に接着剤としてのポリエチレンラミネート層を介してその裏面に印刷層が形成されているポリエステル層が形成される。一方、発泡ポリエチレン層の裏面側には接着剤としてのポリエチレンラミネート層を介してポリエステル層が形成された簡易毛布として使用できるシートはある。
【0003】
特願2002−088930に酸素透過速度および二酸化炭素透過速度が1,000〜700,000cc/m・day・atmかつ水蒸気透過量50〜300g/m・day・atm(at40℃・90%RH)の合成樹脂フィルムを用いて青果物を密封した包 装体において、包装体内の一部または全ての青果物と合成樹脂フィルムの間に0.0015<重量(g)/体積(cc)<0.6の通気性を有する物体を介在させてなることを特徴とする青果物の包装体で、通気性を有する物体が合成樹脂製スポンジ、発泡ポリスチレン、発泡ポリプロピレン、発泡ポリエチレン製ネット、不織布、糸瓜、紙、綿のいずれか1つ、あるいはこれらを組み合わせたものである青果物の包装体はある。
【0004】
このように、発泡樹脂で密閉気泡体である発泡ポリエチレン、発泡ポリプロピレン、発泡ポリスチレン、発泡エチレン酢酸ビニルは安価で柔らかく、保温性があり、衝撃を吸収し、加工性に優れているため多くの用途に使用されている。
【0005】
しかし、発泡樹脂は密閉気泡体であるため保温効果には優れているが、肌触りが悪く、通気性がないため寝具や衣類への用途は限定されていた。
【特許文献1】特願平成06−042640
【特許文献2】特願2002−088930
【発明の開示】

【解決しようとする課題】
【0006】
発泡ポリエチレン、発泡ポリプロピレン、発泡ポリスチレン、発泡エチレン酢酸ビニルなどの発泡樹脂は安価で、軽くて、柔らかく、密閉気泡体のため通気性がなくて保温性がよく、衝撃吸収性があり、一定の強度があり、加工性に優れているが、通気性がなく水を吸収しない性質がある。
【0007】
発泡ポリエチレン、発泡ポリプロピレン、発泡ポリスチレン、発泡ポリエチン酢酸ビニルの片面にアルミを蒸着させた2層構造のシートは、発泡樹脂の断熱性、保温性を利用したものであり、既に存在している。
【0008】
発明者は独立気泡を有する発泡樹脂の通気性がなく、水を吸収しない性質を改善し、優れた保温性を保持し、新たに炭の吸着性、温熱効果を加えて、寝具や衣類に利用できるように複合材化を志向した。
【0009】
寝具や衣料として使用する場合には、発泡ポリエチレン、発泡ポリプロピレン、発泡ポリスチレン、発泡エチレン酢酸ビニルの保温特性を保持しながら、水分の吸収発散機能を持たせ、肌触りをよくすることが必要である。
【0010】
更に人体を内部から加熱して、健康を維持できれば、望ましい寝具や衣料として利用できる新しい素材になる。
【課題を解決する手段】
【0011】
発泡ポリエチレン、発泡ポリプロピレン、発泡ポリスチレン、発泡エチレン酢酸ビニルに柔軟性がある炭層を設けると、水分の吸収発散機能を得ることばかりか、人体内部を暖める温熱作用と消臭作用を持たせることが出来る。
【0012】
木炭は自重の約80パーセントの水を吸収し、水蒸気放出性に優れている。また、比表面積が大きく、空気を浄化する機能に優れているため、心地よい生活環境を提供できる。
【0013】
炭は活性炭、木炭、竹炭など植物由来のものであればよく、30ミクロン未満に微細化した炭粉を使用すると、ざらざらする摩擦感はあるが、適度の刺激があり肌心地がよい。
【0014】
遠赤外線放射特性において、特に木炭の放射率、放射出力は、理想黒体に近似している。個人差はあるが、当社の測定試験によると、シーツの大きさの白炭シートを使用した場合、3℃以上表面体温を上昇させる作用があった。
【0015】
このように発泡ポリエチレン、発泡ポリプロピレン、発泡ポリスチレン、発泡エチレン酢酸ビニルに柔軟性がある炭層を設けて複合材化すると、保温性に優れて人体内部を暖め寝室の空気も浄化する多機能を有した新しい素材ができ、健康維持に役立つ。
【0016】
柔軟な炭層を得るためには、炭粉とエチレン酢酸ビニル樹脂エマルジョン接着剤を混合して得た炭塗料を使用するのが望ましいが、水性ラテックス系接着剤や水性で柔軟性がある接着剤であればエチレン酢酸ビニル樹脂接着剤でなくてもよい。
【0017】
炭層は、発泡ポリエチレン、発泡ポリプロピレン、発泡ポリスチレン、発泡エチレン酢酸ビニルに炭塗料を適切な厚みで塗布して得るが、樹脂は接着性が悪く、特に発泡ポリエチレンは難接着材料で接着困難である。
【0018】
接着性を良くするため、接着面を接着プライマー、コロナ放電、研磨などで表面処理した後、炭塗料を接着させる。接着後乾燥すれば、炭層ができる。
【0019】
炭は破砕して汚れる性質があるため、破砕限界の15ミクロン程度の微小化した炭粉を使用するのが好ましく、炭塗料中の接着剤固形物重量比を27パーセント以上にすれば通常では汚れない。
【0020】
炭層の厚みは0.2mm程度がよいが炭量が多いほど水分の吸収がよく、さらさらして心地よい。
【0021】
請求項1は発泡ポリエチレン、発泡ポリプロピレン、発泡ポリスチレン、発泡エチレン酢酸ビニルのいずれか1つ、または二以上を張り合わせたものと、柔軟な炭層で構成されていることが特徴であり、夫々の発泡樹脂による優れた保温性、炭による遠赤外線放射作用によって体内部を加熱する温熱特性と空気浄化作用、吸水作用、双方が有する柔軟性がある素材になる。
【0022】
請求項2は請求項1にアルミ層を加えて3層構造にしたことが特徴であり、遠赤外線がアルミに反射する性質を利用して、人体に放射される遠赤外線をより多くするために実施されたものである。
【0023】
請求項3は請求項1、請求項2の炭層の上に肌心地がよい布を張り合わせて、4層構造にしたことが特徴である。
【0024】
炭層は樹脂と炭粉で構成されていて、固形物重量比は炭粉が67%重量程度で、樹脂が33%重量程度が好ましい混合重量比である。炭層の厚さは概ね0.2mmが適当であるが、これより厚くても薄くてもよい。
【0025】
炭層を設けるため、溶剤系接着剤を使用した炭塗料を使用すると、炭が溶剤を吸着するため臭いが長期間保持され問題が残る。したがって接着剤は水溶性のものを使用しなければならない。
【0026】
しかし、水溶性接着剤は合成樹脂には接着しにくい、特に発泡ポリエチレンは水をはじくため接着しにくい。よって、接着させるために、表面をコロナ放電などで傷つけて接着させたり、表面をヤスリで研磨したり、接着プライマーを使用したりして接着する。
【0027】
また、炭層は発泡樹脂に順応して折り曲げ、伸縮しなければならないため、炭塗料には柔軟性のある接着剤、例えばエチレン酢酸ビニル樹脂エマルジョン接着剤、ラテックス系接着剤、シリコンゴム系接着剤を使用する。
【発明の効果】
【0028】
炭は遠赤外線中の育成光線を多く放射する特性がある。育成光線は身体深部に到達して水分子中の水素原子を振動させ、細胞の活性化を経て人体深部を暖める作用がある。
【0029】
内部から体が暖まると、細胞代謝が活性化して健康維持に役立つ、発泡樹脂には衝撃吸収性、保温性があり温まった体温を冷えから守る作用がある。また炭には吸着作用があるため、汗や臭いを吸着して睡眠環境も整える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
発泡ポリエチレンシートをコロナ放電で表面処理する。一方で、エチレン酢酸ビニル樹脂エマルジョン接着剤と炭粉を1:1の重量比率で混合し、適量の水を加えて、炭塗料を得る。
【0031】
表面処理した発泡ポリエチレン面に、1平方メートル当り300gの炭塗料を塗布する。乾燥すると水が蒸発して厚さが約0.24mmのエチレン酢酸ビニル樹脂と炭粉で構成された炭層を得る。
【0032】
エチレン酢酸ビニル樹脂エマルジョン接着剤の固形物重量比率は約52パーセントであるため、炭層の炭粉比率は67%になり、吸着性は保持される。
【産業上の利用分野】
【0033】
シーツなどの寝具、ひじ、膝、足、背中、腹回りなどの冷える部分への温熱具として使用できる。また植物の幹に巻くと、細胞代謝の活性化を促し成長促進、耐病性の向上などを得る事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【0035】
【図1】は発泡ポリエチレンと炭層で構成されたシートの概略斜視図である。
【図2】は炭層と発泡ポリエチレンとアルミ層の順で構成されたシートの概略斜視図である。
【図3】は炭層とアルミ層と発泡ポリエチレンの順で構成されたシートの概略斜視図である。
【図4】はアルミ層と発泡ポリエチレンと炭層と布で構成されたシートの概略斜視図である。
【符号の説明】
1 発泡ポリエチレン
2 炭層
3 アルミ層
4 布

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡ポリエチレン、発泡ポリプロピレン、発泡ポリスチレン、発泡エチレン酢酸ビニルのいずれか1つ、または2以上を張り合わせたものと、柔軟な炭層で構成されたことが特徴の複合材であり、寝具や衣類に使用すると、保温効果と温熱効果と消臭効果と吸水作用を得ることができる柔軟なシートである。
【請求項2】
請求項1の遠赤外線放射を増幅するためになされたものであり、炭層と発泡ポリエチレン、発泡ポリプロピレン、発泡ポリスチレン、発泡エチレン酢酸ビニルのいずれか1つ、または2以上を張り合わせた層の間、または炭層の反対面に、アルミ層を設けた構造であることが特徴の、保温効果と温熱効果と消臭効果と吸水作用を有する柔軟なシートである。
【請求項3】
請求項1、請求項2の炭層面を覆うように、布層を設けた構造が特徴であり、柔らかな肌触りで、保温効果と温熱効果と消臭効果と吸水作用を有する柔軟なシートである。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−120359(P2010−120359A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−317678(P2008−317678)
【出願日】平成20年11月18日(2008.11.18)
【出願人】(598095042)株式会社森林研究所 (24)
【Fターム(参考)】