説明

炭水化物からヒドロキシメチルフルフラール(HMF)への変換及び誘導体

炭水化物源を固相触媒に接触させることによって炭水化物源から実質的に純粋なHMF、HMFエステル及び他の誘導体を生産する方法。炭水化物出発物質を、カラム内の溶媒中で加熱して有機酸の存在下で連続的に固相触媒を通過させるか、又は、溶液中で有機酸及び固体触媒と共に加熱してHMFエステルを形成する。有機酸を用いずに加熱することによってHMFが形成される。得られた生成物を濾過によって精製して未反応出発物質及び触媒を除去する。次いで、HMFエステル又はHMF及びHMFエステルの混合物は、加圧条件下でHMFエステルを酢酸コバルト、酢酸マンガン及び臭化ナトリウム等の有機酸と結合させることによって、2,5−フランジカルボン酸(FDCA)に酸化してもよい。代替的に、HMFエステルを還元してフラン又はテトラヒドロフランジオールを形成してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
仮出願への相互参照
本出願は、2007年12月14日に提出した米国仮特許出願第61/006,012号(代理人整理番号No.010253−0020)及び2007年12月12日に提出した米国仮特許出願第60/996,946号(代理人整理番号No.010253−0021)に基づく優先権の利益を主張する。これらの全内容はここで言及することによって本明細書中に組み込まれている。
【0002】
本発明は、フルクトース又高フルクトースコーンシロップ(HFCS)などのヘキソース炭水化物供給源から実質的に純粋なHMF及びその誘導体を合成して回収するプロセスに関する。より詳細には、炭水化物を固相触媒などの強酸陽イオン交換樹脂に接触させることによってHMF及びその誘導体を合成して分離及び回収を行う。
【背景技術】
【0003】
フルクトースを酸触媒で脱水して得られる製品の主要なものは、ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)としても知られている2−ヒドロキシメチル−5−フルフルアルデヒドである。HMFの構造を下記に示す。

【0004】
HMFは、炭水化物のような再生可能な資源から容易に入手可能な重要な中間体物質の1つであり、非石油由来性高分子材料の調製に用いられる様々なフラン単量体の形成に適した出発原料である。フルクトースが環式フルクトフラノシル中間体経路を経由してHMFに変換されるという証拠も存在しているが、理論に縛られずに、フルクトースが非環式経路でHMFに変換されると一般に考えられている。HMFの形成機構にかかわらず、反応中に形成される中間体種は、順々に、縮合、再水和、転換及び他の再配置などのさらなる反応を受けて多量の望まれない副産物をもたらす。以下はフルクトースからHMFへの変換について提案されている経路の1つである。

【0005】
HMF及び2,5−二置換フラン誘導体は、再生資源由来の中間体の化学製品の分野において高い潜在能力を有する。その様々な官能性によって、HMFを用いて、ポリマー、溶媒、界面活性剤、調合薬及び病虫害防除薬剤などの広範にわたる製品を作れるであろうと提言されており、また、HMFが抗菌性及び防蝕特性を有することが報告されている。HMFは、フルフリルジアルコール、ジアルデヒド、エステル、エーテル、ハロゲン化物及びカルボン酸などの種々様々な化合物の合成における出発物質又は中間体として重要な成分でもある。
【0006】
さらに、HMFは、バイオ燃料として高い潜在能力を有し、バイオマスに由来する燃料であって化石燃料に代わる有望なものと考えられている。HMFは、鎌状赤血球貧血の治療用としても現在研究されている。要するに、HMFは重要な化合物であり、不純物、副産物及び残存出発物質を多量に含んでいないHMFを大規模に生産する合成方法がほぼ1世紀の間求められ続けている。
【0007】
HMFは、非石油由来性高分子材料の調製において用いられる様々なフラン単量体の形成に適した出発原料である。フランは5員環からなるヘテロ環式有機化合物である。HMF及び2,5−二置換フラン誘導体は、培養資源に由来する化学中間物の分野において高い潜在能力を有する。その様々な官能性により、HMFを用いて、ポリマー、溶媒、界面活性剤、調合薬及び病虫害防除薬剤などの広範な製品の製造に用いられることが提言されており、また、HMFが抗菌性及び防蝕特性を有することが報告されている。
【0008】
HMFの調製は長年知られているが、優れた選択率及び高収率でHMFを提供する方法はまだ見つかっていない。HMFの再水和からレブリン酸及びギ酸等の副産物が生産されるという厄介な問題が生じる。他の望ましくない副反応には、HMF及び/又はフルクトースの重合が含まれ、それらによって固型廃棄物であるフミンポリマーがもたらされる。溶媒選択の結果としてさらなる厄介な問題が発生する場合もある。水は、処分が容易でフルクトースを溶解させるが、あいにく、選択率が低く、水性状態下でポリマー形成が増加し、フミンが増加する。
【0009】
デンプン、セルロース、スクロース又はイヌリンなどの農業原料は、グルコース及びフルクトースなどのヘキソース生産用の安価な出発物質である。上述したように、これらのヘキソースを同様にHMFに変換することができる。糖を脱水してHMFを作ることが知られている。HMFは、1895年にDullによって、レブロースから初めて調製され(Chem.Ztg.,19,216)、Kiermayerによってスクロースから調製された(Chem.Ztg.,19,1003)。しかしながら、これらの初期の合成は出発物質から生成物への変換率が低く、HMFを生産する実用的方法ではなかった。
【0010】
HMFの調製に一般的に用いられる触媒には、HSO、HPO及びHClなどの安価な無機酸が含まれる。これらの酸触媒は溶液中で用いられ、再生するのが難しい。再生及び処分の問題を回避するために、固体スルホン酸触媒が用いられてきた。あいにく、樹脂表面に非活性化フミンポリマーが形成されるので、固体酸樹脂の有用性は限定的である。
【0011】
HMFの精製が煩雑な操作であることも分かっている。HMF及び合成混合物に付随する不純物は、所望の産物を蒸留できる温度に長時間曝露されると、タールの分解産物を生成する傾向がある。この熱不安定性のために、流下薄膜減圧をなお用いなければならない。そのような装置においても、樹脂質の固体が加熱面に形成されて、ロータの失速、及び、頻繁なシャットダウン時間が生じ、操作を非効率的にする。蒸留と、PEG−600等の不揮発性溶媒の添加によって固体フミンポリマーの蓄積を防ぐ研究が従前から行われてきた(Cope、米国特許第2,917,520号)。あいにく、ポリグリコールの使用は、HMF−PEGエーテルの形成の原因となる。
【0012】
先行技術のプロセスも経済的に実行可能なHMFの生産方法を提供していない。例えば、「Besemer et al Netherlands Organ.Appl.Sci.Res.Nutr.Food Res.」にHMFエステルの酵素的合成が記載されている。このプロセスは、高価な酵素の使用を必要とし、従って、HMFエステルの合成に経済的に実行可能な経路を提供していない。
【0013】
カナダ国特許第654240号(Garber et al.)には、過剰量の無水物及びピリジン溶媒を用いた、HMFから2,5−テトラヒドロフランジメタノールモノエステルへの合成が記載されている。ジエチルエーテル中でラネーNi触媒を用いて還元を行う。しかしながら、この文献には、フルクトースからHMFエステルを合成すること、又は、カルボン酸を用いることが開示されていない。更に、ラネーNi触媒の除去は危険であり、また、触媒を処理するコストが負担である。
【0014】
天然資源からHMFを合成して回収するクロマトグラフィープロセスに一部関係する本明細書は、これらの問題に焦点を当てて解決するものであり、高純度な産物を提供する。HMFに加えて、様々なHMF誘導体の合成及び精製を含むように研究を拡大した。特に興味深い誘導体には、HMFのエステル、及び、酸化形態(2,5−ジホルミルフラン、2,5−フランジカルボン酸及び酸性エステル)、及び、HMFの還元形態(フラン−2,5−ジメタノール及びテトラヒドロフランジオール)が含まれる。これらのエステルはより安定で、容易に分離でき、HMF自体よりも潜在的に更に有用である。
【発明の概要】
【0015】
上記問題に取り組むために、本明細書は、炭水化物源と固相触媒とを接触させることによって、前記炭水化物源から、実質的に純粋なHMF、HMFエステル又はHMFエーテルを生産する方法を提供する。本明細書において、実質的に純粋であるとは、約70%以上、選択的に、約80%以上又は約90%以上のHMF純度を意味する。
【0016】
本明細書は、炭水化物源及び有機酸からHMFエステルを生産する方法も提供する。1つの実施形態においては、炭水化物出発物質を、カラム中で溶媒と共に加熱し、有機酸の存在下で固相触媒中に連続的に流してHMFエステルを形成する。この溶媒を回転蒸発によって除去して実質的に純粋なHMFエステルを提供する。別の実施形態においては、炭水化物を、溶液中で有機酸及び固体触媒と共に加熱してHMFエステルを形成する。次いで、得られたHMFエステルを、濾過、蒸散、抽出、及び、蒸留、又は、これらの任意の組合せによって精製してもよい。
【0017】
別の実施形態においては、加圧下で、HMFエステルを、有機酸、酢酸コバルト、酢酸マンガン及び臭化ナトリウムと結合させることによって、HMFエステルを2,5−フランジカルボン酸(FDCA)に酸化し、濾過及び蒸散後に実質的に純粋なFDCAを得る方法を提供する。
【0018】
別の実施形態においては、HMF及びHMFエステルの反応混合物を、酢酸コバルト、酢酸マンガン及び臭化ナトリウムを加圧下で添加して加熱することによってFDCAに酸化し、濾過及び蒸発させた後にFDCAを分離する方法を提供する。
【0019】
代替の実施形態においては、エタノール等のアルコール、還元剤を加圧下で添加し、加熱、濾過及び蒸発を行うことによって、HMFエステルを還元する方法を提供する。
【0020】
ここに記載されている方法の利点は、炭水化物からHMFエステル及び誘導体への変換率が高いことである。これによって、形態がさらに安定したHMFが得られ、材料コストが低減する。
【0021】
別の実施形態においては、クエン酸源及びアルコールからシトラートエステルを生産する方法を提供する。クロマトグラフィーカラムにおいて触媒の存在下でクエン酸をアルコールとエステル化させて、トリアルキルシトラート、又は、クエン酸のモノエステル及びジエステルを生産する。他の実施形態においては、クエン酸と残存微生物と発酵副産物とを主として含む発酵もろみ液を用いて、トリアルキルシトラート、又は、クエン酸のモノエステル及びジエステルを生産する。別の実施形態においては、触媒及びカラムによってモノエステル及びジエステルを再利用してトリエステルを生成する。
【0022】
さらに別の1つの実施形態においては、中間体HMFエステルを脱アシル化してHMFを調製する方法を提供する。この方法の1つの実施形態においては、有機酸及び触媒の存在下でフルクトースを脱水し、クロマトグラフィーカラムによって分離してHMFエステルを生産する。代替の実施形態においては、クロマトグラフィーカラム中で固相触媒によってHMFエステルを脱アシル化する。代替的に、金属アルコキシドを用いてHMFエステルの脱アシル化及び分離を行う。
【0023】
別の実施形態においては、高温条件で、有機酸の存在下又は非存在下において、炭水化物混合物を固相触媒と接触させることによって、レブリン酸又はレブリン酸エステルを合成する方法を提供する。アルコール溶媒を用いたこのプロセスによって、HMFよりも安定であるHMFエーテル及び/又はレブリネートエステルを合成及び精製してもよい。ここに記載されている方法の利点は、炭水化物から、実質的に純粋なHMF、HMFエステル及びその他のHMF誘導体への変換率が高いことである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は従来のオートクレーブ反応装置を図示する。
【図2】図2は、オートクレーブ反応装置を用いた従来の方法におけるAcHMF変換の比率を示している。
【図3】図3は、本出願の1つの実施形態によるAcHMF変換の比率を示している。
【図4】図4は、本出願の実施形態による、パルス樹脂試験(pulse resin test)を用いた産物のグラフを示している。
【図5】図5は、本出願の1つの実施形態によるクロマトグラムを示している。
【図6】図6は、実質的に純粋な4−アセトキシメチルのフルフラール(AcHMF)を示すH NMR分析グラフである。
【図7】図7は、実質的に純粋な5−プロピオノキシメチルフルフラールを示すH NMR分析グラフである。
【図8】図8は、実質的に純粋な2,5−ジホルミルフラン、2,5−フランジカルボン酸(FDCA)を示すH NMR分析グラフである。
【図9】図9は、実施例1においてフルクトースから5−アセトキシメチルフルフラール(AcHMF)が形成されたことを示すHPLCトレースである。
【図10】図10は、実施例2においてフルクトースから5−アセトキシメチルフルフラール(AcHMF)が形成されたことを示すHPLCトレースである。
【図11】図11は、フルクトースから実質的に純粋な5−プロピオノキシメチルフルフラール(PrHMF)が形成されたことを示すHPLCトレースである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本出願は、炭水化物を固相触媒に接触させることによって、炭水化物源からヒドロキシメチルフルフラール(HMF)及びヒドロキシメチルフルフラールエステルを合成及び分離する方法を提供する。
【0026】
クロマトグラフィーカラム中でのHMFの合成及び精製における固相触媒の使用は、熱及び酸触媒への暴露時間を制限し、より低い温度での合成を可能にする。より低い温度にすることによって、エネルギーコストが低減され、反応を加熱及び冷却する時間が短縮される。このプロセスで用いることができる固相触媒の非限定的な例には、アンバーリスト35、アンバーリスト15、アンバーリスト36、アンバーリスト70、アンバーリスト131(Rohm and Haas製)などの酸性樹脂;レバチットS2328、レバチットK2431、レバチットS2568、レバチットK2629(Bayer社製);及び、ダイアニオンSK104、PK228、RCP160、リライトRAD/F(Mitsubishi Chemical America社製)が含まれる。CBV3024及びCBV5534G(Zeolyst International製)のような粘土及びゼオライトなどのその他の固相触媒、T−2665、T−4480(United Catalysis社製)、LZY64(Union Carbide)及びH−ZSM−5(PQ株式会社社製)も用いることができる。アンバーリスト35などの酸性樹脂は、陽イオン性であり、一方で、ゼオライト、アルミナ及び粘土などの触媒は、小分子を捕捉する多孔性粒子である。HSO、HPO、HCl、及び、p−トルエンスルホン酸のような有機酸などの無機酸を含む可溶性触媒も用いてもよい。
【0027】
固相触媒の利点は、溶媒に溶解せず、カラム中に残存しないことである。用いるカラムサイズ及び溶媒の種類に応じて、約30〜50gの樹脂をカラムに詰める。例えば、溶媒ジメチルホルムアミド(DMF)は、カラム中でアンバーリスト35樹脂を膨張させるので、300mmの長さカラムに約30g程度の樹脂を用いることが好ましい。酢酸は樹脂を膨張させないので、酢酸が溶媒であるときには、約50gのアンバーリスト35樹脂を用いる。
【0028】
HMFの合成が脱水反応であるので、含水量を低減した陽イオン交換樹脂が好ましい。反応における水の存在は、ポリマー及びフミン等の副産物の形成を増加させる。従って、カラム試験における固相触媒の最大含水量は、一般に約20%未満であり、あるいは、任意に約15%未満又は約10%未満である。乾燥アンバーリスト35等の多くの市販固相触媒は、含水量が約3%である。しかしながら、一定状態下においては含水量が20%以上の固相触媒を用いてもよい。含水量が約20%より高い固相触媒は、それらの過剰水分及び反応中に水を生成する能力により、「ウェット樹脂」とみなす。ウェット樹脂の含水量が約20%より多ければ、水混和性溶媒を反応用溶媒として選択して前記ウェット樹脂から水を除去してもよい。
【0029】
極性を有する非プロトン性極性溶媒を含む溶媒は、水混和性であり、フルクトースの溶解性及び水の除去を助けるので、好ましい。極性を有する非プロトン性溶媒の一例は、アセトンである。アセトンを用いて、ウェット樹脂を洗浄し、カラムで反応させる前にウェット樹脂を脱水する。その後、得られた脱水樹脂をカラムで反応させる前に真空条件下で乾燥させる。さらに、DMFは水と混和性であり、溶媒として用いてカラムでウェット樹脂を脱水してもよい。ウェット樹脂の脱水は、反応温度を上昇させるステップ若しくはウェット樹脂を脱水するのに適した任意の方法、又は、これらの組合せを含んでいてもよい。
【0030】
炭水化物源からHMF、HMFエステル又は他のHMF誘導体への変換においてカラムを用いることによるさらなる利点は、反応を進めて、未反応出発物質又は1つのステップですべてが生じるその他の望まれない副産物から生成物を分離する能力である。反応物はカラムを通過するので、カラム内で反応が生じた後に生成物の滞留と出発物質との差によってこれらが分離される。結果として、実質的に純粋な形態で生成物がカラムから溶出する。
【0031】
フルクトースは好ましい源であるが、任意の炭水化物源も用いることができる。HMF誘導体の調製に使用できる適切な炭水化物源は、限定されないが、ヘキソース、フルクトースシロップ、結晶性フルクトース、フルクトースの結晶化に由来するプロセスの流れを含む。適切な混合炭水化物源は、コーンシロップなどの工業的に使用し易い任意の炭水化物源も具えていてもよい。他の混合炭水化物源は、限定されないが、ヘキソース、フルクトースシロップ、結晶性フルクトース、高フルクトースコーンシロップ、天然フルクトース、精製したフルクトース、高フルクトースコーンシロップ精製中間体及び副産物、フルクトース又はグルコース又はキシロース結晶化に由来するプロセスの流れ、及び、大豆タンパク濃縮物の製品から得られる大豆糖液等の糖液、又は、これらの混合物を含む。
【0032】
炭水化物源、及び、有機酸又は酸塩類からのHMFエステルの合成は、一連の有用な分子に直接的な経路を提供する。HMFの脂肪族エステル及び芳香族エステルは商業的に入手可能であり、様々な用途がある。本発明のプロセスは、HMFエステルの製造において多数の利点がある。HMFエステルの調製に使用できる適切な炭水化物源は、限定されないが、ヘキソース、フルクトースシロップ、結晶性フルクトース、及び、フルクトースの結晶化に由来するプロセスの流れを含む。また、適切な混合炭水化物源は、コーンシロップなどの工業的に使用し易い任意の炭水化物源を具えていてもよい。混合炭水化物源は、限定されないが、ヘキソース、フルクトースシロップ、結晶性フルクトース、高フルクトースコーンシロップ、天然のフルクトース、精製したフルクトース、高フルクトースコーンシロップ精製中間体及び副産物、フルクトース又はグルコース又はキシロースの結晶化に由来するプロセスの流れ、及び、大豆タンパク濃縮物の製品から得られる大豆糖液などの糖液を含む。広範にわたる出発原料に加えて、限定するものではないが、酢酸、プロピオン酸、酪酸、クエン酸、又は、二価酸を含む様々な有機酸を用いて上記プロセスを行なうことができる。
【0033】
開示されているプロセスは、フミン及び重合体副産物の形成を最小化する及び/又はなくす。反応が完了しておらず、HMF及び/又は未反応炭水化物が反応混合物中に観察される場合に、これらの成分を水相中に分離して再利用してもよい。さらに、溶媒を回収して再利用することができる。この方法は、出発原料として用いる実質的に純粋なHMFを分離する困難な作業を不要にするので、他の方法より有益である。上記方法は、実質的に純粋な生成物をもたらす単純なプロセスであり、HMFエステルを様々な有用な誘導体及び最終生成物に変換するための供給材料として用いることができる。生成物の純度は、使用する特定の試剤及び条件によって変化する。
【0034】
さらに、本出願は、シトラートエステルを合成する方法、カラムにおいて加熱した固相触媒を用いてレブリン酸又はレブリン酸エステルを合成し、次いで、得られた生成物をカラムで精製する方法を提供する。レブリネートエステル合成の一例においては、炭水化物混合物を含む溶液(例えば25%フルクトースを含む酢酸)を、強酸陽イオン性樹脂(例えばアンバーリスト35)を充填した加熱カラムに通過させる。カラム温度を75℃に維持して流速を5mL/分に設定する。最初の通過においては、Ac−HMF及びAc−レブリネート酸の両方が形成される。次の通過では、Ac−HMFに対してAc−レブリネート酸がより多い比率で生成される。酢酸の濃度は、99%を超える試薬等級から水性溶液中の1%酢酸の範囲であってもよい。
【0035】
レブリン酸を合成するために、例示的合成は、炭水化物混合物を含む溶液(例えば25%のフルクトースを含む水性又はDMF溶液)を、強酸陽イオン性樹脂(例えばアンバーリスト35)を充填した加熱カラムに通過させるステップを含む。カラム温度を100℃に維持して流速を5mL/分に設定する。最初の通過においては、HMF及びレブリネート酸の両方が形成される。次の通過では、HMFに対してレブリネート酸がより多い比率で生成される。
【0036】
本発明のプロセスで用いる溶媒の選択を変えることによって、様々なHMFエステルが選択的に調製される。最終生成物の精製量及び分別量は、用いる溶媒の種類に依存する。例えば、酢酸に溶解させたフルクトース溶液を、固相触媒を通して連続的に流すことによって、結果的に実質的に純粋なアセチル化されたHMF(AcHMF)が形成され、これは所望の最終生成物である。アルコール溶媒を用いたこのプロセスによって、HMFより安定であるHMFエーテル及び/又はレブリネートエステルを合成及び精製することができる。
【0037】
AcHMFはHMFよりも低い沸点を有し、真空蒸留によって分離される。AcHMFもHMFより安定である。AcHMFがあまり水に溶解しないことから、非極性有機溶媒中の抽出が有効な精製方法の1つになる。AcHMFは、低温の非極性溶媒(例えばおよそ0〜25℃のヘキサン)中で結晶化する。さらに、HMFは、加熱によって分解し、容易に分離又は除去されない副産物を生じる。

【0038】
本明細書の1つの実施形態として、固相触媒が充填されたカラムを含むクロマトグラフィーカラムの設定は、前記充填されたカラムを通してフルクトース、HMF、及び、溶媒を複数回供給する連続分離であるか、及び/又は、追加反応物の速度が変わる連続分離であってもよい。この精製技術は、固体(固定層)の連続流に対して逆流する液体の流れ(移動相)に基づいたクロマトグラフィー技術である擬似移動床クロマトグラフィーを含んでいてもよい。逆流は、分離の能力を高め、従って、上記プロセスをさらに効率的にする。また、逆流は、供給材料の連続流を分離させ、より少ない溶媒を用い、従来のバッチクロマトグラフィーと比較して装置の処理量を向上させる。このシステムは、限定されないが、擬似移動床、連続機構(CSEP)又は連続流パイプシステムを代替的に具えていてもよい。
【0039】
例えば、擬似移動床クロマトグラフィーにおいては、溶質が、床よりも速く移動してカラム頂部で溶出するが、床よりもゆっくり動く溶質は、移動床によって供給位置よりも下方に運ばれる。その後、床よりも遅い速さで移動する溶質が固定相中においてカラムの下を移動し続ける間に、供給位置より下の床の部分を加熱して溶質の溶出速度を速くし、また、床より速く移動する溶質をすべてガスの第2の流れによってサイドチューブから溶出させることができる。高画分はさらに高温に加熱したカラム部分によって同様に除去することができる。擬似移動床クロマトグラフィー内でカラムを加熱するために、ジャケットを被せたカラムは、混合物を、プロピレングリコール等の加熱用液体を樹脂床周辺が通過させるようにする。
【0040】
ここに記載されている方法によって行った反応のほとんどにおいて、触媒が、反応が生じるのに必要な酸性度を提供している。イオン交換樹脂は、周囲の溶液中でイオンを結合又は交換することができる合成高分子であり、主として有機分子のクロマトグラフィーに用いられる。イオン交換樹脂の利点には、長寿命、再使用可能、高い選択性及び触媒能、安定性、及び、水性及び非水性の条件の両方で使用できることが含まれる(Rohm及びHaas)。
【0041】
開示されている方法において用いることができる第1のカラムタイプは、重力流カラムである。反応混合物を、ジャケットによって加熱されるカラム頂部に装填し、樹脂を通してゆっくり流れさせ、カラムの保持時間を最大にした。重力流カラムにおける流速は、通常1.0mL/分未満であり、あるいは、一般的には0.1〜1.0mL/分である。カラムを通して生成物が供給されると、その生成物は第2パスに再装填され、所望の生成物をより高い収率で生成すると共に、より長時間樹脂に供することによって純度を高める。重力カラムのサンプルを大きい画分又は複数の画分で回収し、収率を分析した。
【0042】
使用できる別のカラムはパルスカラムである。出発物質を樹脂上に充填し、機械ポンプを用いて、一定の流速を維持してカラムに溶質を送る。生成物をカラム底部から時間設定した画分で回収し、従って、全収率に加えて、保持時間、生成物及び反応物の分離について分析することができる。
【0043】
カラム試験では、使用するカラムの種類及び溶媒の安定性に応じて、温度を、約70℃〜約125℃、任意に約75℃〜約95℃、又は、任意に約80℃〜約90℃に変更してもよい。一般的には流速を約1.0mL/分に維持して、カラムの保持時間を最大にし、カラムの頂部を通って流れるようにする。しかしながら、重力カラムについては、力源に依存していないので、流速をより遅く維持してもよい。より高い温度を用いてもよい。
【0044】
本出願の1つの実施形態においては、加熱したガラスジャケットを被せたカラム内に、酢酸を用いて可溶性させたフルクトースと共にアンバーリスト35を充填する。連続移動床の使用により、生成物がバッチではなく流れによってカラムを通過するので、該生成物の樹脂への暴露時間が最短になる。得られた生成物は純度の高いアセチルHMFである。
【0045】
本発明の別の実施形態においては、連続流プロセスによってシトラートエステルの形成が可能になる。出発物質であるクエン酸は、溶媒を含む溶液、又は溶媒を含む発酵もろみ液に存在している。アルコール溶媒を用いて実質的に純粋なトリアルキルシトラート又はクエン酸のモノエステル及びジエステルのいずれかを得る。溶媒の種類、樹脂の種類、カラム中の時間、及び/又は、温度などの要因によって、モノエステル及びジエステルが形成されるか、又は、実質的に純粋なトリアルキルシトラートが形成されるかが決まる。モノエステル及びジエステルが得られる場合、カラム中で混合物を再利用して実質的に純粋なトリエステルを生成することができる。
【0046】
本発明の別の態様によれば、固相触媒を用いて、選択した糖アルコール又はモノ無水糖アルコール出発物質から無水糖アルコールへのクロマトグラフィー合成、分離及び精製が可能である。より詳細には、クロマトグラフィーカラム内のソルビトール源及び固相触媒からイソソルビドを合成、分離及び精製する。実質的に純粋なイソソルビドを得るまで、中間体化合物であるソルビタン、又は、ソルビタン/イソソルビド/ソルビトールの混合物は回収して再利用できる。

【0047】
本発明の別の態様においては、中間体HMFエステルを経由してHMFを調製するプロセスを提供する。好ましくは、フルクトースを炭水化物源として用い、クロマトグラフィーカラム中において有機酸及び触媒の存在下で脱水させてHMFエステルを提供する。その後、塩基を用いて処理する際に、HMFエステルを脱アシル化させる。塩基性材料は、限定されないが、樹脂、粘土、アルミナ及びゼオライトなどの固相触媒を含んでいてもよい。出発物質と塩基性触媒とを相互接触させることができる限り、任意の方法でエステルの鹸化を実行することができる。例えば、この反応を、流動床、管状反応器、コイル、カラム又はパイプにおいて、回分式で又は連続式で行なうことができる。AcHMFのHMFへの脱アシル化も金属アルコキシドを用いて実行できる。一般的にHMFエステルがHMFよりも安定であるため、この方法が望ましい場合がある。
【0048】
HMFエステル形成の別の実施形態においては、溶液中で炭水化物を有機酸及び固相触媒と混合させる。溶液を約100℃〜約140℃の温度に約90分〜約150分加熱してHMFエステルを形成する。HMFエステルは、カラムクロマトグラフイー、沈殿、及び、再結晶、又は、これらの組み合わせによってさらに精製することができる。合成したHMFエステルに、濾過及び/又は例えば回転蒸散による蒸散を行って、触媒及び有機酸を除去する。HMFエステルは、メチルt−ブチルエーテルを用いた抽出によって回収することができる。原料を単蒸留(115℃、3トール)に供して、HMFエステルを結晶とすることができる。その後、代替的に、溶媒の蒸散後に加熱したヘキサンなどの適切な溶媒を用いてろ過したHMFエステルを抽出してもよい。
【0049】
FDCAを生成する一実施形態においては、限定するものではないが、5−アセトキシメチルフルフラール(AcHMF)等のHMFエステル、又は、限定するものではないが、酢酸、酢酸コバルト、酢酸マンガン、及び、臭化ナトリウム等の有機酸を含む反応混合物を反応装置内に入れて、約85℃〜約110℃又は約100℃で、約400〜約1000psi、又は、約500〜約800psiの酸素に約100分〜約150分間供する。その後、溶液をろ過し、溶媒を蒸散させて2,5−フランジカルボン酸(FDCA)を得る。

【0050】
HMFエステルを還元する一実施形態においては、AcHMF及びエタノールを含む反応混合物を反応槽内に充填する。Sud Chemie社(ルーイビル、ケンタッキー)から入手したG−69B触媒を容器に加え、その容器を、好ましくは4×500psiで、好ましくは1000rpmで攪拌しながら水素でパージする。その後、容器を続けて攪拌しながら、好ましくは600psiまで加圧し、150℃よりも高温、好ましくは170℃に加熱する。約1時間後にその反応を約1時間195℃に加熱し、次いで室温に冷ます。その後、真空濾過によって触媒を除去する。溶媒は、好ましくは、例えば回転蒸散によって除去する。還元した生成物は、限定されていないが、2,5−フランジメタノール(FDM)及びテトラヒドロフランジオール(THF−ジオール)を含んでいる。
【0051】
HMFエステルの多用途性の一例として、HMF及びHMFエステルの組合せを含む反応混合物は、単一の生成物であるFDCAに酸化することができる。2,5−フランジカルボン酸(FDCA)は、有機酸中の大部分のHMFエステルと残りのHMFとの混合物から形成されている。例えば酢酸、酢酸コバルト、酢酸マンガン及び臭化ナトリウムなどの有機酸中でその混合物を反応させる。全混合物は、酸素又は空気で加圧し、少なくとも100℃に1時間以上加熱することができる。得られた溶液をろ過及び蒸散させて、FDCAを分離する。
【0052】
フルクトース源からHMFエステル中間体を経由してHMFを合成することができる。例えば、有機酸及び触媒の存在下でフルクトースを脱水してHMFエステルを提供する。塩基を用いて処理する際に、HMFエステルを脱アシル化する。塩基性材料は、限定されないが、樹脂剤、粘土、アルミナ及びゼオライトなどの固相触媒を含んでいてもよい。出発物質と塩基性触媒とを相互接触させることができる限り、任意の方法でエステルの鹸化を行うことができる。この反応は、例えば、流動床、管状反応器、コイル、カラム又はパイプにおいて、回分式で又は連続式で行なうことができる。HMFへのAcHMFの脱アシル化も金属アルコキシドを用いて実行できる。
【0053】
実施例
実施例1
フルクトースからHMF及びAcHMFを合成する従来の方法には、オートクレーブ反応装置(Parr社)によるバッチ反応と、続いて行う精製用の別のステップが含まれる。図1に示すように、温度調節器2は、反応混合物及びオートクレーブ反応装置1内の加熱ジャケットの温度の両方を管理する。加熱ジャケット(図示せず)を用いて反応を加熱する。圧力計3は、反応がガスを生成しているかどうかを示すか、又は、圧力がかかったときの容器にかかる圧力をモニターする。速度制御器4は攪拌機構用である。攪拌は、反応混合物をすべての必要な材料に接触させておくのに必要である。サンプルポート5は、科学者がサンプルを回収し、進行をモニタする反応中の特定時点を検索できるようにする。反応物は反応装置容器内に入れる前は溶液中に存在していなければならない。
【0054】
オートクレーブ反応用の反応条件を変更して様々な反応条件による影響を試験した。100mLのParr反応装置においてその反応を行った。約20グラムの高フルクトースコーンシロップ(HFCS)を各反応に加えた。異なる3つの温度:摂氏110℃、125℃及び150℃において、イオン交換樹脂を用いて又は用いずに試験した。樹脂としてアンバーリスト35交換品を選択した。結果を表1に示す。

【0055】
上記表1に示すように、図2に示すオートクレーブ反応装置内で、比較例#4において、150℃で、樹脂を用いて、最大量のAcHMFが形成された。容量100mLのParr反応装置において、溶液中の6.7799gのフルクトース及び23.79gのHFCSを150℃に加熱した。AcHMF収率は、比較例#4において0.2331であった。
【0056】
実施例1のこれらの例において、実質的に純粋なHMFの第1の生産方法は、充填カラムを使用している。タイプの異なる2つのカラムを用いてHMFを生産及び精製した。しかしながら、望ましい溶媒中に浸し、その樹脂が適切に膨張したときに加熱したカラムに充填した陽イオン交換樹脂で各カラムを充填した。陽イオン交換樹脂は、この反応に陽子を加えるイオン交換樹脂である。使用した樹脂の水分を約20%未満から約10%未満まで変動させて、HMFの再水和を防いだ。カラムの結果を図3に示す。大部分の生成物は、未反応フルクトースである残存物を含むHMFであった。この実施例において、アンバーリスト35交換樹脂は、重力流カラムを含む試験を行ったすべてのカラムにおいて最良に機能した。
【0057】
最大反応条件には、アンバーリスト35イオン交換樹脂及び酢酸を充填したカラム中の80℃が含まれており、AcHMFの生成が約0.395モルであった。カラムは、数多くの理由によって従来のバッチ反応よりも堅実に機能した。生成物は、クロマトグラフィーカラム内の樹脂により長く滞留し、バッチ反応よりもより多くの量の樹脂がカラム内に残存する。加熱したジャケットを被せたカラムによって、カラム中の温度をより良く制御できる。
【0058】
表2において(*)印のあるサンプルは、比較例である。比較例はバッチ反応を含む。オートクレーブ内の温度は、反応中におよそ105℃〜155℃に変動した。カラムから得た反応混合物を別のパス用にフィードバックすることもでき、それによって所望の生成物の収率がさらに増加する。80℃におけるパルス反応及び90℃における重力カラム反応と比較すると、125℃のような高温で実行するときのバッチ反応における収率は低い。温度が150℃のアンバーリスト35を用いたバッチ反応における収率は、温度のため高くなった。

【0059】
実施例2
図4に示すグラフは、80℃におけるパルス樹脂試験であって、最初の33分間に流速を約1.48mL/分に設定し、33分から反応完了時の約63分までは約1.36mL/分に設定した試験の結果を示している。約30分後に、出発物質であるフルクトースのモル分率約0.0006と比較して、0.07モルのAcHMFが溶出した。副産物であるレブリン酸及びギ酸も測定した。AcHMFの合成において、測定可能なレブリン酸は認められなかった。




【0060】
実施例3
HMFエステル中間体を用いたフルクトースからのHMFの調製
この実施例は、HMFエステルを脱保護して実質的に純粋なHMFを提供する本方法の使用を示す。供給材料を調製し、メタノールと(Rohm and Haas社、ウッドリッジ、イリノイから入手した)アンバーリストA26OH樹脂が入ったバイアル瓶内に置いた。アンバーリストA26OH樹脂は、強塩基性、タイプ1、陰イオン性、第四アンモニウム基を含む架橋されたステーレンジビニルベンゼン共重合体をベースとした巨大網状の高分子樹脂である。室温で約5分間静置した後に、その材料を薄層クロマトグラフィー(tlc)で分析して脱アシル化を示した。固体の収率は、Shimadzu QP−2010 GC質量分析計で測定すると、約85%のHMF及び約8%のAcHMFであった。クロマトグラムを図5に示す。残存物質は残留メタノールであった。そのメタノール溶液をヒートガンを用いて60℃に5分未満加熱することによって、残存するAcHMFをHMFに変換した。代替的に、生成物を固相触媒を有するクロマトグラフィーカラムを通過させることによって、残存AcHMFがHMFに変換される。

【0061】
実施例4
フルクトースからの5−アセトキシメチルフルフラール(AcHMF)の調製
酢酸(50g)及びアンバーリスト15樹脂(4g)を含む100mLの反応槽内に結晶性フルクトース(18g)を置いた。一定間隔で回収したサンプルと共にその溶液を110℃で3時間加熱した。分析結果及びHPLCトレースによってAcHMFが形成されたことを確認した。生成物混合物の分析は、9.89%のAcHMF及び5.14%のHMFを含む溶液(AcHMFの収率が41%であり、HMFの収率が28%である。)を示した。ここで開示されている収率は例示的なものに過ぎず、反応条件を最適化したときに可能な最適収量を必ずしも反映していない。HPLCトレースによってAcHMFが形成されたことを確認した(図4参照)。
【0062】
実施例5
フルクトースからのAcHMFの合成及び精製
結晶性フルクトース(180g)を、酢酸(500g)及びアンバーリスト15樹脂(40g)が入った1L反応槽内に置く。その溶液を125℃で2時間加熱する。NMR及び分析結果はAcHMFが形成されたことを示している。その溶液をろ過して樹脂触媒を除去し、回転蒸散によって酢酸を除去する。メチルt−ブチルエーテルを用いた抽出によってAcHMFを回収する。原料を単蒸留(115℃、3トール)に供してオレンジ色の結晶としてAcHMFを提供する。HPLCトレースによってAcHMFの形成を確認する(図5参照)。また、H NMR分析は、実質的に純粋なAcHMFを示している。NMR(δ,1H):9.70(s,1.0H);7.40(s,1.0H);6.80(s,1.0H);5.10(s,2.0H);2.10(s,3.0H)。図1を参照されたい。
【0063】
実施例6
フルクトースからのプロピオノキシメチルフルフラール(PrHMF)の合成
結晶性フルクトース(40g)、プロピオン酸(100mL)及び乾燥したアンバーリスト15樹脂を、ディーンスタークトラップ、磁気撹拌棒及び温度プローブを装備した500mLの三首丸底フラスコに置いた。その反応混合物を130℃で30分間加熱した。HPLCトレースは、HMFエステルへの迅速な変換を示している。樹脂を濾過して除去し、溶媒を蒸散させ、加熱したヘキサンで原油を抽出した。ヘキサン抽出物を蒸散することによって黄色の油が得られ、該油はH NMRによって実質的に純粋な5−プロピオノキシメチルフルフラールであると確認された。計算によってフルクトースからのPrHMFの全収率が28%であることが示された。反応条件は最適化されていない。HPLCトレースによってPrHMFの形成が確認され(図6参照)、H NMR分析によってPrHMFの形成(δ,1H):9.70(s,1.0H);7.20(s,1.0H);6.60(s,1.0H);5.06(s,2.0H);2.47(t,2.0H);1.05(d,3.0H)が示された。図2を参照されたい。

【0064】
実施例7
5−アセトキシメチルフルフラール(AcHMF)から2,5−フランジカルボン酸(FDCA)への酸化
AcHMF(5.0g)、酢酸(50mL)、酢酸コバルト(0.132g)、酢酸マンガン(0.135g)及び臭化ナトリウム(0.114g)を含む反応混合物を、100mLの反応装置内に置き、100℃で2時間に渡って500〜800psiの酸素に供した。溶媒の濾過及び蒸散時に2.53gの黄褐色の固体を分離した。H NMRは実質的に純粋なFDCAを示している。AcHMFからのFDCAの全収率は54%である。図3を参照されたい。
【0065】
実施例8
5−アセトキシメチルフルフラール(AcHMF)の還元
AcHMF(5.0g)及びエタノール(50mL)を含む反応液を100mLの反応槽内に満たした。Sub Chemie社(ルーイビル、ケンタッキー)から入手可能なG−69B触媒(0.50g)を反応槽に加えた。反応槽を水素(4×500psi)を用いて撹拌して(1000rpm)パージした。その後、反応槽を600psiに加圧し、連続的に攪拌しながら170℃に加熱した。1時間後に反応を195℃にさらに1時間加熱した。次いで、その反応を室温まで冷まして、真空濾過によって触媒を除去した。溶媒の大部分を回転蒸散で除去して黄色の油(16.97g)を得た。UV分析(λ=284nm)がAcHMFの存在を示さないことは、AcHMFが2,5−ジヒドロキシメチルテトラヒドロフランに完全に変換されたことを示している。
【0066】
実施例9
FDCAへのHMF及びHMFエステルの混合物の酸化
主成分HMFエステルと残りのHMFとからなる(酢酸中の)生成混合物を、酢酸コバルト、酢酸マンガン及び臭化ナトリウムの添加による酸化に供した。この混合物を酸素で加圧し、100℃より高い温度で1時間以上加熱した。濾過及び蒸散時にFDCAの生成物を分離した。
【0067】
実施例10
フルクトースからのHMFの調製
DMF中のアンバーリスト35乾燥樹脂(40g)のスラリーをジャケットを被せたカラムに加えた。カラムをオイル循環槽で95℃に加熱した。樹脂を無水DMFで洗浄した。次いで、樹脂頂部までDMF量を減らした。その後、30%フルクトースを含む150gのDMFをカラムに装填した。フルクトース溶液を、2回に渡って約1時間以上かけてゆっくりと樹脂を通過させた。Tlc及びNMR分析は、HMFの68%の収率を示す。
【0068】
上記好ましい実施形態の構造、機能及び操作のいくつかが、本開示を実施するのに必須ではなく、単に例示的実施形態又は実施形態の完全性のために明細書に含まれていることは理解されるであろう。さらに、上記引用特許文献に詳細に記載されている構造、機能及び操作は、本開示と組み合わせて実施できるが、実施において必須ではないことは理解されるであろう。
【0069】
開示の実施形態は、本開示の精神及び範囲から実質的に逸脱せずに、詳細に記載されたのとは異なるように実施してもよい。ここで開示されている収率は例示的なものに過ぎず、反応条件を最適化したときに可能な最適収量を必ずしも反映していない。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭水化物源を固相触媒に接触させるステップによってHMFを合成することを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記炭水化物源を接触させるステップが:
溶媒中で炭水化物源の溶液を形成するステップと;
前記溶液をカラム中の固相触媒を通過させるステップと;
前記HMFを前記カラムから溶出させるステップと、
をさらに具えることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法において、前記溶媒がDMFであることを特徴とする方法。
【請求項4】
HMFエステルを調製する方法において:
炭水化物源を含む材料を、添加触媒を用いて又は添加触媒を用いずに、カルボン酸と結合させて反応混合物を提供するステップと;
前記炭水化物源の酸触媒反応を促進するのに充分な温度及び時間前記反応混合物を加熱して生成混合物を形成するステップと;
前記生成混合物からHMFエステルを分離するステップと、
を具えることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法において、前記反応混合物を加熱するステップが:
前記溶液に前記カラムの固相触媒を通過させて前記HMFエステルを溶出させるステップをさらに具えることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項4に記載の方法において、前記HMFエステルが、濾過、蒸散、抽出及び蒸留からなる群より選択されるプロセスによって前記生成混合物から分離されることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項4に記載の方法において、前記溶媒が極性を有する非プロトン性溶媒であることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項2に記載の方法において、前記カラムを約70℃〜約125℃の温度に加熱することを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項4に記載の方法において、前記反応混合物を約100℃〜約140℃の温度に加熱することを特徴とする方法。
【請求項10】
HMFエステルを実質的にすべてFDCAに変換するのに充分な時間、圧力及び温度を上昇させて、請求項4に記載の方法で形成したHMFエステルを、有機酸、酢酸コバルト、酢酸マンガン及び臭化ナトリウムと反応させることによってFDCAを形成することを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法において、前記反応の圧力が約400psi〜約1000psiであることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項4に記載の方法で形成したHMFエステルを還元する方法において、前記エステルを還元するのに充分な時間、圧力及び温度を上昇させて、触媒と共に溶媒中で前記エステルの溶液を加熱するステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法において、前記圧力が約600psiであり、前記温度が約170℃であることを特徴とする方法。
【請求項14】
HMFエステルを陰イオン性固相触媒に接触させることによってHMFを合成することを特徴とする方法。
【請求項15】
シトラート源及びアルコールを有する溶液を固相触媒に接触させるステップと、前記固相触媒を充填したカラムから前記溶液を溶出させて溶出液を得るステップとによってシトラートエステルを合成することを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法が更に:
前記カラムから前記溶出液を回収するステップと;
前記溶出液に前記カラムの2回目の通過を行って三置換シトラートエステルを生成するステップと、
を具えることを特徴とする方法。
【請求項17】
レブリン酸を合成する方法において:
炭水化物源を溶液に溶解させるステップと、
前記炭水化物を含む溶液に固相触媒を含むカラムを通過させるステップと、
前記カラムからレブリン酸を溶出させて溶出液を得るステップと、
を具えることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法が更に:
前記炭水化物を含む溶液に前記カラムを通過させた後に反応生成物を含む前記溶出液を回収するステップと;
前記溶出液を回収した後に前記溶出液に前記カラムを通過させるステップと、
をさらに具えることを特徴とする方法。
【請求項19】
レブリネートエステルを合成する方法において:
酢酸を含む溶液に炭水化物源を溶解させるステップと、
炭水化物を含む前記溶液に固相触媒を含むカラムを通過させるステップと、
前記カラムからレブリネートエステルを溶出させて溶出液を得るステップと、
を具えることを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法が更に:
前記炭水化物を含む溶液に前記カラムを通過させた後に反応生成物を含む前記溶出液を回収するステップと、
前記溶出液を回収した後に前記溶出液に前記カラム通過させるステップと、
を具えることを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項19に記載の方法において、前記溶液中の酢酸濃度が約75%より高いことを特徴とする方法。
【請求項22】
カラム中でフルクトース源を有機酸と固相触媒に接触させてHMFエステルを生産するステップと、前記HMFエステルを脱アシル化するステップとによってHMFを合成することを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法において、前記HMFエステルを金属酸化膜を用いて脱アシル化することを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項2に記載の方法において、前記溶液に前記カラムを通過させることによって反応中にHMFを精製することを特徴とする方法。
【請求項25】
請求項5に記載の方法において、前記溶液に前記カラムを通過させることによって反応中にHMFエステルを精製することを特徴とする方法。
【請求項26】
請求項17に記載の方法において、前記溶液に前記カラムを通過させることによって反応中にシトラートエステルを精製することを特徴とする方法。
【請求項27】
請求項19に記載の方法において、前記溶液に前記カラムを通過させることによって反応中にレブリン酸を精製することを特徴とする方法。
【請求項28】
請求項21に記載の方法において、前記溶液に前記カラムを通過させることによって反応中にレブリン酸エステルを精製することを特徴とする方法。
【請求項29】
レブリネートエステルを合成する方法において:
アルコールを含む溶液に炭水化物源を溶解させるステップと、
前記炭水化物を含む溶液に固相触媒を含むカラムを通過させるステップと、
前記カラムからレブリネートエステルを溶出させて反応生成物を含む溶出液を得るステップと、を具えることを特徴とする方法。
【請求項30】
請求項29に記載の方法が更に:
前記反応生成物を含む溶出液を得た後に該溶出液に前記カラムを通過させるステップを具えることを特徴とする方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2011−506478(P2011−506478A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538202(P2010−538202)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【国際出願番号】PCT/US2008/086659
【国際公開番号】WO2009/076627
【国際公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(591079443)アーチャー ダニエルズ ミッドランド カンパニー (7)
【氏名又は名称原語表記】ARCHER DANIELS MIDLANDCOMPANY
【Fターム(参考)】