説明

炭素ナノチューブ、及び、炭素ナノチューブの連続的な表面処理装置

【課題】強酸、強塩基を使用することなく、容易にCNTの溶媒に対する分散性を改善する。
【解決手段】a)炭素ナノチューブ溶液及び酸化剤を50乃至400atmの圧力で注入して前記炭素ナノチューブ溶液及び前記酸化剤の混合液を予熱する段階;b)前記予熱された混合液中の炭素ナノチューブを、50乃至400atmの亜臨界水または超臨界水条件において表面処理する段階;c)前記表面処理された生成物を0乃至100℃に冷却及び1乃至10atmに減圧する段階;及びd)前記減圧された生成物を回収する段階;シを含む連続的な方法で表面処理された、炭素ナノチューブ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素ナノチューブ、及び、炭素ナノチューブの連続的な表面処理装置(より詳しくは、炭素ナノチューブを亜臨界水または超臨界水条件において連続的に表面処理する装置)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
炭素ナノチューブ(Carbon nanotube;以下CNT)は1991年その構造が初めて発見され、これに関する合成と物性、そして応用に関する研究が活発に行われている。また、CNTは電気放電時Fe、Ni、Coなどのような転移金属を添加すれば生成されることが確認され、本格的な研究は1996年レーザー蒸発法によって相当量の試料を作り出してから始まった。このようなCNTはグラファイト(Graphite)面がナノサイズの直径で丸く巻いた中が空いたチューブ形態であり、この際グラファイト面が巻かれる角度及び構造によって電気的特性が導体または半導体などになる。また、CNTは、グラファイト壁の数によって、単一壁の炭素ナノチューブ(Single-walled carbon nanotube;SWCNT)、二重壁の炭素ナノチューブ(Double-walled carbon nanotube; DWCNT)、薄壁の炭素ナノチューブ(Thin multi-walled carbon nanotube)、多重壁の炭素ナノチューブ(Multi-walled carbon nanotube; MWCNT)、束形の炭素ナノチューブ(Roped carbon nanotube)で区分する。
【0003】
特に、CNTは機械的強度及び弾性度に優れ、化学的に安定であり、環境親和性を有しており、電気的に導体及び半導体性を有するのみならず、直径が1nmから数十nmであり、長さが数μmから数十μmで、縦横比が約1,000であって既存の如何なる物質よりも大きい。また、比表面積が非常に大きくて将来の次世帯の情報電子素材、高効率エネルギー素材、高機能性の複合素材、親環境素材などの分野において21世紀を担う尖端の新素材として脚光を浴びている。
【0004】
しかし、CNTが有している多様な長所にもかかわらず、凝集現象が大きくて表面の疎水性(Hydrophobic)が大きいから他の媒質との混合特性がかなり劣悪のみならず、水及び有機溶剤類に対する溶解性もない。従って、CNTの長所を生かしながら多様な用途で活用の幅を広くするためには多様な媒質との相溶性を増大させて分散効率が良好にする方法が必要である。CNTの相溶性を増大させる技術としては表面に別途の特性を加えることができる官能基の置換技術であって、韓国特許発明第450029号から真空及び不活性ガス雰囲気において水酸化カリウム或いは水酸化ナトリウムのような強塩基でCNTの比表面積を増加させたり、または韓国特許公開第2001−102598号、第2005−9711号、または第2007−114553号のように強酸または強塩基を使用して処理する方法などがある。
【0005】
しかし、前記の技術の場合、硝酸、硫酸などの強酸や水酸化カリウム、水酸化ナトリウムのような強塩基を使用するから、環境的に有害であり、取り扱いが容易でなく、反応器の腐食が生じ得る。なお、使用した酸と塩基を洗浄しなければならない過程などの付加工程が伴い、または有害な多量の廃棄物が発生される。また、反応時間が長く、処理量が制限的であるため効率が低くて表面に酸素以外の官能基を付与するためには別途の工程を適用しなければならないから費用と時間がたくさん消耗される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国特許発明第450029号
【特許文献2】韓国特許公開第2001−102598号
【特許文献3】韓国特許公開第2005−9711号
【特許文献4】韓国特許公開第2007−114553号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記のような問題点を解決するために、本発明の目的は、別途の表面処理工程無しで連続装置を使用して連続的に亜臨界水または超臨界水条件において炭素ナノチューブの表面を処理する装置、及び、炭素ナノチューブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために本発明は、a)炭素ナノチューブ溶液及び酸化剤を50乃至400atmの圧力で注入して前記炭素ナノチューブ溶液及び前記酸化剤の混合液を予熱する段階;b)前記予熱された混合液中の炭素ナノチューブを、50乃至400atmの亜臨界水または超臨界水条件において表面処理(functionalizing)する段階;c)前記表面処理された生成物を0乃至100℃に冷却及び1乃至10atmに減圧する段階;及びd)前記減圧された生成物を回収する段階;を含む連続的な方法で表面処理された、炭素ナノチューブを提供する。
【0009】
また、本発明は、炭素ナノチューブ溶液及び酸化剤の混合液が50乃至400atmの圧力で注入される予熱槽;前記予熱槽を経た混合液が50乃至400atmの亜臨界水または超臨界水条件において表面処理される表面処理反応槽;前記表面処理反応槽を経て表面処理された生成物を0乃至100℃に冷却して1乃至10atmに減圧する冷却・減圧槽;及び前記冷却・減圧槽を経て生成物が回収される生成物貯蔵槽;から構成される、炭素ナノチューブの連続的な表面処理装置を提供する。
【0010】
以下、本発明に添付された図面を参照して本発明の望ましい一実施例を詳細に説明する。先ず、図面のうち、同一な構成要素または部品はできる限り同一な参照符号を示していることに留意しなければならない。本発明を説明することにおいて、関連された公知機能或いは構成に対する具体的な説明は本発明の要旨を曖昧にしないために省略する。
【0011】
本明細書に使用される程度を表す用語の“約”、“実質的に”などは、言及された意味に固有な製造及び物質の許容誤差が提示される時、その寸法からまたはその寸法に近い意味で使用され、本発明をわかり易くするために正確であったりまたは絶対的な寸法が言及された開示内容を非良心的な侵害者が不当に利用することを防止するために使われる。
【0012】
図1は本発明の望ましい一実施例による炭素ナノチューブの連続的な表面処理工程図である。図1を参照すれば、本発明の炭素ナノチューブはa)予熱段階S100;b)表面処理段階S200;c)冷却・減圧段階S300;及びd)生成物回収段階S400;を含む炭素ナノチューブの連続的な表面処理方法を提供し、前記c)段階の冷却の後、表面処理された生成物を濾過するe)濾過段階S310がさらに含まれ、d)段階の生成物を分散させるf)分散段階S410がさらに含まれる。
【0013】
図2は本発明の望ましい一実施例による炭素ナノチューブの連続的な表面処理装置工程図である。図2を参照すれば、本発明の連続的な表面処理装置工程は予熱槽110、表面処理反応槽130、冷却・減圧槽150、生成物貯蔵槽170が含まれる。
【0014】
先ず、予熱段階S100において、前記予熱槽110にはa)炭素ナノチューブ(CNT)溶液及び酸化剤を50乃至400atmの圧力で注入して混合液を予熱する段階が進まれる。
【0015】
前記炭素ナノチューブ(CNT)溶液は前記混合液が製造される前に、CNTと溶媒が前処理槽10に投入されて循環ポンプ11によってCNT溶液を製造することができる。前記CNT溶液に含まれる前記溶媒は水、脂肪族アルコール、二酸化炭素及びこれらの混合物からなる群から選ばれる。
【0016】
また、前記CNTは前記CNT溶液100重量部を基準に0.0001乃至10重量部含まれてよく、0.001乃至3重量部含まれることが最も望ましい。前記CNTが0.0001重量部未満である場合、CNTの回収量が非常に少なくなり、10重量部を超える場合は前記CNT溶液の粘度上昇で高圧の注入が難しい。
【0017】
前記製造されたCNT溶液がCNT溶液の高圧注入ポンプ12を介して50乃至400atmの圧力で予熱槽110に投入される過程において、酸化剤の高圧注入ポンプ13を介して50乃至400atmの圧力で投入される酸化剤と接触して熱交換器14の前端で前記CNT溶液と酸化剤とが混合されて予熱器110に投入され、これらの混合液が100乃至370℃で予熱される。
【0018】
前記高圧注入ポンプを介してCNT溶液及び酸化剤の注入時、圧力が50atm未満であれば、CNT溶液を予熱槽110に注入しにくい又は酸化剤をCNT溶液に添加しにくく、400atmを超えると、高すぎる圧力でエネルギーの損失がもたらされ、CNTを表面処理する点において表面処理程度がそれ以上向上しない。
【0019】
前記予熱槽110は、前記混合液を後述する亜臨界水または超臨界水条件において処理される前に、混合液を予め予熱して反応槽130の温度を一定に保持する。
【0020】
従って、前記予熱器110の前端に熱交換器14を設けて前記CNT溶液と酸化剤の混合液を予熱させる役割を果たし、この熱交換器14は後述する亜臨界水または超臨界水条件で表面処理された生成物を最終的に冷却させる前にまず温度を下げて以後の冷却の時に消費されるエネルギー損失を防止する役割をする。前記温度が100℃未満である場合、以後の臨界条件(閾値条件)において温度をさらに高く上げるようになってエネルギー損失の防止効果がなく、370℃を超えると、予熱の効果を達成する温度以上に温度を上げるのにかかるエネルギー損失がかえって増加して、熱交換器の設置の効果がなくなる。
【0021】
前記CNTは単一壁(Single-walled)、二重壁(Double walled)、薄い多重壁(Thin multi-walled)、多重壁(Multi-walled)、束形(Roped)及びこれらの混合物からなる群から選ばれて使用されることが望ましい。
【0022】
一方、前記酸化剤は酸素、空気、オゾン、硝酸、過酸化水素、及びこれらの混合物から選ばれ、前記混合液中のCNTの炭素当量に比例して0.001当量乃至10当量が含まれる。前記酸化剤によってCNTが酸化されながら表面処理されてCNTの分散性が増加するようになる。従って、前記酸化剤がCNT炭素を基準に0.001当量未満で注入されると、CNTが酸化剤と均一に酸化されずに表面処理の程度が低くなって分散性が改善されず、10当量を超えると、超えられた量ほどに表面処理効果が大きくならずに原料の無駄遣いをもたらす。
【0023】
前記予熱段階を経た混合液は表面処理段階S200に進む。
【0024】
b)前記予熱槽110からa)段階を経て予熱された混合液は連続的な表面処理反応槽130に移送されて50乃至400atmの亜臨界水または超臨界水条件において炭素ナノチューブの表面処理段階が行われる。また、前記亜臨界水または超臨界水条件時の混合液の温度が100乃至600℃であることが望ましい。
【0025】
前記亜臨界水の条件の圧力は50乃至260atmであることが望ましく、60atm乃至260atmであることがさらに望ましい。また、温度は100乃至380℃であることが望ましく、200乃至350℃であることがさらに望ましい。この際の処理時間は1分乃至30分間であることが望ましく、5分乃至15分間であることがさらに望ましい。
【0026】
一方、前記超臨界水条件は150乃至400atmであることが望ましく、210乃至360atmであることが最も望ましい。また、温度は350乃至600℃であることが望ましく、370乃至500℃であることが最も望ましい。この際の処理時間は1分乃至30分間であることが望ましく、5分乃至15分間であることがさらに望ましい。
【0027】
このような亜臨界水または超臨界水条件によって前記酸化剤と前記CNT溶液が完璧に混合されて短時間内に、前記酸化剤が固まっているCNT粒子間に均一に浸透してCNT表面を均一な濃度で酸化されるようにする。従って、前記亜臨界水または超臨界水の状態で前記酸化剤の浸透力が優れたものとなって、酸化反応がより均一となって速く進み、表面処理効果が増進されるようになる。
【0028】
前記亜臨界水または超臨界水条件は表面処理の程度の調節のための選択条件で、水が前記に示した温度または圧力の条件を意味する。
【0029】
特に、亜臨界水条件において表面処理されたCNTの場合、水或いは有機溶剤における分散度が最も高い特性を示し、超臨界水条件の場合、亜臨界水の条件より少量の酸化剤を使用しても表面処理が亜臨界水程度の効果を示す。
【0030】
前記予熱器110の前端に設けられて混合液の予熱に使われた熱交換器14の熱源は前記表面処理反応槽130から排出されて表面処理された高温の生成物溶液であり、前記混合液は生成物溶液が100乃至370℃になるように1次冷却するに使用されてエネルギー損失を防止することができる。
【0031】
前記表面処理段階を経た表面処理された生成物を冷却・減圧段階S300に進ませて、c)前記表面処理された生成物を0乃至100℃に冷却及び1乃至10atmに減圧する段階に進む。
【0032】
前記表面処理された生成物を前記熱交換器14による1次冷却後、冷却装置15を介して0乃至100℃に冷却する段階に進ませる。前記冷却温度は20乃至50℃で調節することがさらに望ましい。
【0033】
前記冷却された生成物を冷却・減圧槽150に移送して1乃至10atmに冷却・減圧する段階に進ませるが、前記冷却・減圧は先ず前記の冷却された状態を保持したままで冷却・減圧槽150でキャピラリー減圧装置で10乃至100atmに先ず減圧し、圧力調節装置16で1乃至10atmに最終減圧する。
【0034】
d)前記冷却・減圧を経た生成物を最終的に生成物貯蔵槽170に回収する段階に進ませる。従って、本発明の表面処理された炭素ナノチューブ溶液が完成されて生成物回収段階S400が進まれる。
【0035】
e)前記生成物は溶液状でそのまま利用できるが、粉末での使用のために回収も可能であるが、粉末形態のCNTを得るために前記c)段階において前記表面処理された生成物を冷却させた後、高圧濾過させる段階がさらに含まれる。
【0036】
従って、前記表面処理されて冷却・減圧された生成物には濾過段階S310がさらに含まれてよい。
【0037】
図3は本発明の望ましい一実施例による炭素ナノチューブの濾過装置が含まれた連続的な表面処理装置の工程図である。図3を参照すれば、前記図1の装置から前記表面処理されて冷却された生成物を濾過させるために0.001乃至10μmの空隙を有する高圧フィルタが並列で連結されてスイッチング方式で運転される濾過槽210、230がさらに含まれ、前記濾過槽210、230を介して濾過液211、231と表面処理されたCNT濾過生成物213、233に分離排出され、前記濾過液211、231は濾過圧力調節装置21を通じて常圧状態に減圧されて濾過液貯蔵槽300に移送されて処理される。前記濾過槽210、230は必要容量に応じて1つ以上並列に設置できる。
【0038】
具体的に、前記並列に連結された濾過槽210、230で表面処理されたCNT濾過生成物と濾過液に分離されるとき、前記濾過槽210に圧力がかかるとバルブを締めて濾過槽230を開け、前記表面処理されて冷却された生成物を濾過させ、これと同時に濾過槽210内の表面処理されたCNT濾過生成物213を回収し、濾過液211は濾過液貯蔵槽300に移送されて処理される。
【0039】
前記と同一な方法で濾過槽230に圧力がかかるとバルブを締め、濾過槽210に取り替えてこれを開けて連続的に表面処理され冷却された生成物を濾過させ、濾過槽230内の表面処理されたCNT濾過生成物233が回収され、濾過液231は濾過液貯蔵槽300に移送されて処理される過程を繰り返して交互にスイッチ方式に濾過させることによって連続的に表面処理を進ませる。
【0040】
また、前記表面処理されて冷却・減圧された生成物または濾過段階を介して濾過されて表面処理されたCNT濾過生成物は分散段階S410がさらに含まれる。
【0041】
具体的に、前記表面処理されて冷却・減圧された液状の生成物またはe)段階を経た濾過生性物で得られたd)段階の表面処理されたCNT、つまり生成物は前記d)段階以後、f)前記生成物を分散させる段階がさらに含まれる。
【0042】
前記分散は、超音波、プルイダイザー、プルバーライザー、ビードミル、ペイントシェーカーからなる群から選ばれる。
【0043】
ここで、前記d)またはe)段階の生成物は溶媒である水または有機溶剤に分散されるが、溶媒100重量部を基準にして0.00001乃至10重量部が含まれる。前記有機溶剤にはアルコール、ケトン、アミン、アルキルハロゲン、エーテル、フラン、硫黄含有溶剤、及びこれらの混合物からなる群から選ばれ、前記溶媒に分散された生成物の含量が0.00001未満である場合、表面処理による分散性向上効果を予想することが難しく、10重量部を超過すると、分散過程における粘度上昇で効果的な分散が難しい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の望ましい一実施例による炭素ナノチューブの連続的な表面処理工程図である。
【図2】本発明の望ましい一実施例による炭素ナノチューブの連続的な表面処理装置の工程図である。
【図3】本発明の望ましい一実施例による炭素ナノチューブの濾過装置が含まれた連続的な表面処理装置の工程図である。
【図4】本発明の実施例1及び比較例1による表面処理された炭素ナノチューブの赤外線分光スペクトルの結果である。
【図5】本発明の実施例1及び比較例1による表面処理された炭素ナノチューブのラマンスペクトルの結果である。
【図6】(a)及び(b)は本発明の実施例1及び比較例1による表面処理された炭素ナノチューブの透過電子顕微鏡(TEM)の写真である。
【図7】本発明の実施例1及び比較例1による表面処理された炭素ナノチューブの水系或いは有機溶剤系の分散状態である。
【図8】本発明の実施例1及び比較例1による表面処理された炭素ナノチューブのX線−光電子分光スペクトル(XPS)の結果である。
【図9】本発明の実施例1による表面された炭素ナノチューブの濃度に応じるUV/Vis分光スペクトルの結果である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
下記の実施例を通じてより詳しく説明する。
【0046】
<実施例1>
多重壁CNT10gを蒸留水990gと循環ポンプ11で混合して前処理槽10でCNT溶液を作製した。前記CNT溶液をCNT高圧注入ポンプ12を介して30g/minの流速で予熱槽110に投入される前、これと共に245atm乃至252atmで圧縮された気相状態の酸素が熱交換器14の前端で0.8g/minの流速でCNT溶液と混合されて、前記混合液は熱交換器14を介して200乃至260℃で予熱された予熱槽110に投入された。
【0047】
前記予熱された混合液は350℃及び230atm乃至250atmの亜臨界水状態の表面処理反応器130に注入されて表面処理され、前記表面処理された生成物は再び熱交換器14に移送されて200℃で1次冷却後、再び冷却装置15を介して約25℃の温度に冷却された後、連続的に表面処理された9.8gの生成物を得た。
【0048】
<実施例2>
酸化剤である酸素を0.4g/minの流速でCNT溶液と混合させ、前記CNT溶液と酸化剤の混合液の予熱時に熱交換器14の温度が350乃至370℃であり、超臨界水状態で温度を400℃で反応させて表面処理を進ませたことを除いては、前記実施例1と同一に表面処理して9.2gの生成物を得た。
【0049】
<実施例3>
多重壁CNT20gを蒸留水980gと循環ポンプ11で混合して前処理槽10でCNT溶液を作製したことを除いては、実施例1と同一に表面処理して18.6gの生成物を得た。
【0050】
<実施例4>
酸化剤として酸素の代わりに空気を使用したことを除いては、実施例1と同一に表面処理して9.6gの生成物を得た。
【0051】
<実施例5>
酸化剤として酸素の代わりに空気を使用したことを除いては、実施例2と同一に表面処理して9.7gの生成物を得た。
【0052】
<実施例6>
酸化剤として酸素の代わりにオゾンを使用したことを除いては、実施例1と同一に表面処理して9.1gの生成物を得た。
【0053】
<実施例7>
酸化剤として酸素の代わりにオゾンを使用したことを除いては、実施例2と同一に表面処理して9.2gの生成物を得た。
【0054】
<実施例8>
酸化剤として酸素の代わりに50%過酸化水素水溶液108.8g(1.6M)を使用したことを除いては、実施例1と同一に表面処理して8.7gの生成物を得た。
【0055】
<実施例9>
酸化剤として酸素の代わりに50%過酸化水素水溶液108.8g(1.6M)を使用したことを除いては、実施例2と同一に表面処理して9.0gの生成物を得た。
【0056】
<実施例10>
酸化剤として酸素の代わりに硝酸を使用し、CNT溶液の製造時に前処理槽10で多重壁CNT10gを蒸留水964.8gに入れた後、撹拌させながら硝酸25.2g(0.4M)を添加してCNT及び硝酸溶液を製造して混合液を製造したことを除いては、実施例1と同一に表面処理して8.3gの生成物を得た。
【0057】
<実施例11>
酸化剤として酸素の代わりに硝酸を使用し、CNT溶液の製造時に前処理槽10で多重壁CNT10gを蒸留水964.8gに入れた後、撹拌させながら硝酸25.2g(0.4M)を添加してCNT及び硝酸溶液を製造して混合液を製造したことを除いては、実施例2と同一に表面処理して8.1gの生成物を得た。
【0058】
<実施例12>
前記実施例1と同一に表面処理された生成物を冷却した後、0.001乃至10μm空隙を有する高圧フィルタが並列に連結された濾過槽210、230で表面処理されたCNT濾過生成物と濾過液に分離して表面処理されたCNT濾過生成物を回収し、これから連続的に表面処理された9.5gの生成物を得た。
【0059】
<実施例13>
前記実施例2と同一に表面処理された生成物を冷却した後、0.001乃至10μm空隙を有する高圧フィルタが並列に連結された濾過槽210、230で表面処理されたCNT濾過生成物と濾過液に分離して表面処理されたCNT濾過生成物を回収し、これから連続的に表面処理された8.8gの生成物を得た。
【0060】
<比較例1>
酸化剤を投入せず、実施例1と同一に反応を進ませた。
【0061】
<比較例2>
酸化剤を投入せず、実施例2と同一に反応を進ませた。
【0062】
*試験方法
1.赤外線分光器(FT-IR spectroscopy)
Varian社の4100モデルを使用し、分析用試料はカリウムブロマイド(KBr)粉末と混合して陶器鉢でまんべんなく撹拌した後、ペレットを製造して測定した。
【0063】
図4は、本発明の実施例1及び比較例1による表面処理された炭素ナノチューブの赤外線分光スペクトルの結果である。図4を参照すれば、比較例1に比べて表面処理された機能基のピークが現われたことからみて表面処理がなされたことが確認できた。前記測定結果から得られた表面処理された構造はヒドロキシ基、アルコール基、カルボン酸基、ケトン基、エーテル基、CH−sp3基である。
【0064】
2.ラマン分光器(Raman Spectroscopy)
Jobin-Yvon社のLabRam HRモデルで、800mm focal length monochromatorとアルゴンイオンレーザー514.532nm波長の光源を使用する装置を使った。試料は真空乾燥オーブンで水分を乾燥させた粉末を使用した。
【0065】
図5は、本発明の実施例1及び比較例1による表面処理された炭素ナノチューブのラマンスペクトルの結果である。図5を参照すれば、比較例1に比べて1580cm−1付近(Gピーク)で実施例1のピーク変化を示すことによって表面が酸化されたことが確認できた。変化されたピークは1620cm−1ピーク(D′ピーク)で現れる。ラマンスペクトルで1580cm−1ピークと変化された1620cm−1ピークの割合[R=D′ピーク面積(A′)/Gピーク面積(A)]を計算してCNTの表面処理程度を予想した。
【0066】
3.透過電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope; TEM)
JEOL社のJEM-2100F(HR)モデルであり、ホリックタイプのグリード上で測定した。
【0067】
図6(a)は本発明の実施例1による表面処理された炭素ナノチューブの透過電子顕微鏡(TEM)の写真であり、図6(b)は比較例1による炭素ナノチューブの透過顕微鏡(TEM)の写真である。図6(a)の比較例1に比べて図6(b)の結果のように表面処理された炭素ナノチューブの壁の境界線が薄められていて表面処理されたことがわかった。
【0068】
4.分散状態
本発明の実施例1による表面処理された炭素ナノチューブ0.2gを水99.8gに分散させた状態である。前記水系の他に有機溶剤を使用したときにも分散状態が良好であった。
【0069】
図7は、本発明の実施例1及び比較例1による表面処理された炭素ナノチューブの水系分散状態である。図7を参照すれば、比較例1から全く分散効果が現れていなくてCNTが沈んで水と分離されているが、実施例1の場合、CNTが沈まずに水にまんべんなく分散されていることからみて表面処理によって分散状態が改善されたことが確認できた。
【0070】
5.X−線光電子分光器(X-ray photoelectron spectroscopy; XPS)
VG Scientifics社のESCALAB 250モデルを使用して測定した。試料は真空乾燥オーブンで水分を乾燥させた粉末を使用した。
【0071】
図8は、本発明の実施例1及び比較例1による表面処理された炭素ナノチューブのX−線光電子分光スペクトル(XPS)の結果である。図8を参照すれば、本発明の実施例1は、比較例1に比べて、結合エネルギー564eVの近くで頻度が著しく現れたピークからみて、CNTの表面処理の酸化効果が確認できた。XPSで観察された炭素と酸素のピークの相対含量を用いてCNTの表面処理程度を予想することができる。
【0072】
6.紫外線/可視光線分光器(UV/vis spectroscopy)
Beckman社のDU650モデルを使用した。試料は水系或いは有機溶剤を使用して分散させた図6の分散液を希釈して測定した結果である。
【0073】
図9は本発明の実施例1による表面処理された炭素ナノチューブの濃度に応じるUV/Vis分光スペクトルの結果である。図9を参照すれば、表面処理された炭素ナノチューブが分散媒に0.50(1)、1.25(2)、2.50(3)、5.00(4)ppmで分散された量に応じる変化であって、CNT濃度が増加することに沿って透過度(%T)が減少してCNT分散含量が増加されることに沿って透過率が低くなることが確認できた。
【0074】
【表1】

【0075】
前記表1は図5及び図8の現れた結果を数値化したものであって、前記表面処理された炭素ナノチューブの表面処理程度がラマン分光器で0.01≦A′/A≦0. 50であり、XPSで0.1≦O1s,atom%≦30atom%で測定されたことが確認できた。
【0076】
本発明は、前述した実施例及び添付された図面に限られるものではなく、本発明の技術的思想を外れない範囲内で多様な置換、変形及び変更が可能であることは、本発明が属する技術分野において通常の知識を持っている者にとって明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0077】
上述したように、本発明の炭素ナノチューブの連続的な表面処理方法は亜臨界水または超臨界水条件において有害でなく、取り扱い及び廃水処理が容易である酸化剤を使用し、連続的な装置を通じて炭素ナノチューブが表面処理されて製造工程の短縮効果がある。
【0078】
なお、本発明の炭素ナノチューブは用途によって溶液状または粉末状で連続的な装置を通じて得られる効果がある。
【符号の説明】
【0079】
10:前処理槽 11:循環ポンプ
12:CNT溶液の高圧注入ポンプ 13:酸化剤の高圧注入ポンプ
14:熱交換器 15:冷却装置
16:圧力調節装置 21:濾過圧力調節装置
110:予熱槽 130:表面処理反応槽
150:冷却・減圧槽 170:生成物貯蔵槽
210、230:濾過槽 211、231:濾過液
213、233:表面処理されたCNT濾過生成物
300:濾過液貯蔵槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)炭素ナノチューブ溶液及び酸化剤を50乃至400atmの圧力で注入して前記炭素ナノチューブ溶液及び前記酸化剤の混合液を予熱する段階;
b)前記予熱された混合液中の炭素ナノチューブを、50乃至400atmの亜臨界水または超臨界水条件において表面処理する段階;
c)前記表面処理された生成物を0乃至100℃に冷却及び1乃至10atmに減圧する段階;及び
d)前記減圧された生成物を回収する段階;
を含む連続的な方法で表面処理された、炭素ナノチューブ。
【請求項2】
前記表面処理された炭素ナノチューブの表面処理程度がラマン分光器で0.01≦A′/A≦0. 50であり、XPSで0.1≦O1s,atom%≦30atom%である、請求項1に記載の炭素ナノチューブ。
【請求項3】
炭素ナノチューブ溶液及び酸化剤の混合液が50乃至400atmの圧力で注入される予熱槽;
前記予熱槽を経た混合液が50乃至400atmの亜臨界水または超臨界水条件において表面処理される表面処理反応槽;
前記表面処理反応槽を経て表面処理された生成物を0乃至100℃に冷却して1乃至10atmに減圧する冷却・減圧槽;及び
前記冷却・減圧槽を経て生成物が回収される生成物貯蔵槽;
から構成される、炭素ナノチューブの連続的な表面処理装置。
【請求項4】
前記予熱槽の前端に熱交換器が備えられ、前記熱交換器では前記混合液と前記表面処理された生成物とが熱交換される、請求項3に記載の炭素ナノチューブの連続的な表面処理装置。
【請求項5】
前記冷却・減圧槽において減圧装置としてはキャピラリー減圧装置が使用される、請求項3に記載の炭素ナノチューブの連続的な表面処理装置。
【請求項6】
0.001乃至10μmの空隙を有する高圧フィルタが並列で連結されてスイッチング方式で運転される濾過槽がさらに含まれる、請求項3に記載の炭素ナノチューブの連続的な表面処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−193110(P2012−193110A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−158062(P2012−158062)
【出願日】平成24年7月13日(2012.7.13)
【分割の表示】特願2009−79554(P2009−79554)の分割
【原出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(595137310)ハンファ ケミカル コーポレーション (31)
【Fターム(参考)】