説明

炭素吸収源としての吸収性物品

本発明は、例えばおむつ、生理用ナプキン、パンティライナー、または男性もしくは女性用失禁用品のような、吸収性物品を提供する。この物品は、無機材料を含み、該無機材料は大気中二酸化炭素由来の炭素を含む。本発明による物品の製造方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボン・フットプリントが削減された吸収性物品およびそのような吸収性物品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、製造工業が環境に与える影響と、消費者、政府、および製造業者との関連がますます深まってきている。製造工程において排出される総温室ガス、特に二酸化炭素に対し、特別な注意が払われている。
【0003】
ある工程中、事象中、またはある商取引、個人、もしくは製品により排出または吸収される二酸化炭素の量は、しばしばその「カーボン・フットプリント」によって測定される。ある製品がCO排出量に与える影響を推定するため、ライフ・サイクル・アセスメント(LCA)のようなツールが使用されることがある。揺りかごから墓場まで(cradle―to―grave)は、原料の採取(「揺りかご」)から使用段階および廃棄段階(「墓場」)までの、完全なライフ・サイクル・アセスメントである。揺りかごからゲートまで(cradle−to−gate)は、原料の採取(「揺りかご」)から工場のゲートまでの、部分的な製品ライフ・サイクルのアセスメントである。「ゲート」との用語は、例えば、材料生産者のゲートでの完成した材料または更なる製造工程のゲートでの完成品などの、製造工程における多くの段階に当てはまる。これらのツールを使用することによって、ある工程中に排出される大気中COの量を削減させ、更に総合的な結果として大気中COの量が削減されるようこの工程を適応させることが可能となる。
【0004】
大気からの二酸化炭素は、光合成中に、炭素含有化合物に変換される。したがって、植物は、生育中に、その構造内に大気中の二酸化炭素を“閉じ込める”ことができると考えられている。しかし、その後に続く植物の分解またはその焼却によって、閉じ込められていた炭素が二酸化炭素として再び放出される。おむつのような吸収性製品は、通常、植物性材料(通常、パルプフラッフ(pulp fluff)およびセルロース系材料)を含み、このような材料中の炭素は、大気中COに由来する。埋立地に廃棄または焼却の際に、吸収性製品は分解され、大気中COが再び放出される。
【0005】
特許文献1には、大気中COを製紙用フィラーの原料として使用することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第1996/009248号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
炭素の原料として大気中二酸化炭素を使用でき、一方で埋立地において分解される際または焼却される間に必ずしも大気中COを放出するものではない、製造品および製造工程を提供することが有用である。もし光合成以外の方法で大気中COの吸収が可能になれば、植物ベースの材料より幅広い範囲の材料が大気中COの「吸収源」としての機能を果たすことになり、さらに有用である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、本発明は、例えばおむつ、生理用ナプキン、パンティライナー、または男性もしくは女性用失禁用品のような、吸収性物品を提供する。この吸収性物品は、無機材料を含む。無機材料は、大気中二酸化炭素(CO)由来の炭素を含む。
【0009】
炭素を含む無機材料は、好適には、1×10―13以上、好ましくは3×10―13以上、更に好ましくは5×10−13以上の14C/12C比率を有する。
【0010】
無機材料は好適には、例えばアルカリ金属(グループ1)、アルカリ土類金属(グループ2)、およびそれらの混合物の炭酸塩のような、炭酸塩である。無機材料は、炭酸カルシウムであってもよい。
【0011】
吸収性物品はプラスチックフィルムを含んでもよく、無機材料はこのプラスチックフィルム内にあってもよい。吸収性物品は合成繊維を含んでもよく、該無機材料はこの合成繊維内にある。
【0012】
本願発明は更に、吸収性物品の製造方法を提供し、該製造方法は以下のステップ:
a.水分の存在下で、大気中COを金属塩(好ましくは、金属硫酸塩)と反応させて、金属炭酸塩を得るステップ、および
b.ステップaで得られた金属炭酸塩を、該吸収性物品に組み込むステップ
を含む。
【0013】
吸収性物品がプラスチックフィルムまたは合成繊維を含む場合、該製造方法は下記の追加ステップ:
b1.金属炭酸塩を該プラスチックフィルムまたは合成繊維に組み込むステップ、および
b2.該プラスチックフィルムまたは合成繊維を該吸収性物品に組み込むステップ
を含む。
【0014】
上記製造方法の金属炭酸塩は、好適には炭酸カルシウムである。
【0015】
[定義]
「無機」という用語は、植物や動物由来ではなく、セルロースのような有機材料や石油のような化石燃料を含まない材料を意味する。通常、無機材料は塩である。無機材料の例として、金属炭酸塩、シアン化物、シアン酸塩、炭化物、およびチオシアン酸塩がある。
【0016】
吸収性物品は、着用者の股領域に着用されることを意図され、血液、尿、便等の身体滲出物の取り込みおよび管理のために使用される物品である。この吸収性物品は、着用者の衣類の下の皮膚の最も近くで着用される。通常、吸収性物品は、おむつ、生理用ナプキン、パンティライナー、または男性もしくは女性用失禁用品のような物品である。
【0017】
二酸化炭素(CO)は、微量(0.05%より少ない)が大気中に自然に発生する。「大気中」二酸化炭素は、地球の大気から直接もたらされるガス状の二酸化炭素を意味するものとして使用されている。また、「大気中」二酸化炭素は、例えば他工程の廃棄炉筒から採取される工業工程の廃棄物であり、リサイクルされる二酸化炭素を示すことがある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明による吸収性物品がおむつである場合の図である。
【図2】図1のII―II線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付の概略図を参照しながら、本発明について、詳細に説明する。
【0020】
図1は、おむつの形状の本発明による吸収性物品10を示す図である。本発明は、おむつに関するものとして記載されるが、生理用ナプキン、パンティライナー、または男性もしくは女性用失禁用品のような他の吸収性物品についても同様に当てはまる。上述のように、「吸収性物品」という用語は、尿、便、月経液といった身体滲出物を吸収し保持するために、着用者の皮膚に対して着用される製品を示す。本発明は主に、使い捨て吸収性物品に関する。使い捨て吸収性物品とは、使用後に洗濯されること、あるいは吸収性物品として修復や再利用されることが意図されていない物品を示す。
【0021】
図1および図2の断面図に示すように、吸収性物品10は通常、該物品10が着用された時に着用者の最も近くに位置する液体浸透性トップシート11を含む。吸収体12は通常、トップシート11の下に位置する。液体不浸透性バックシート13は大抵、吸収体12と着用者の衣服との間に位置する。吸収性物品10は大抵、これら3つの構成要素すべてを含むが、特定の吸収性物品10では、これらの構成要素のうちの一つがない場合もある。
【0022】
液体浸透性トップシート11は、着用者の皮膚の最も近くに位置し、その皮膚に接触する。また、該トップシート11は、身体滲出物を下層の吸収体12へ通過させる。したがって、トップシート11に適した材料は、皮膚に対して柔らかく刺激が少ないものであり、尿や月経液のような体液が容易に貫通するよう意図されているものであるべきである。トップシート11は、例えばスパンボンド式(spunbond)、メルトブロー式(meltblown)、梳式(carded)、ハイドロエンタングルメント式(hydroentangled)、および湿式(wetlaid)等の不織布材料からなることがある。適した不織布材料は、木材パルプや綿繊維等の天然繊維、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびビスコース等の人工繊維、または天然繊維と人工繊維の混合物から構成することができる。ある特定の状況では、トップシート11は、液体を通過させるために穴が開けられたプラスチックフィルムを含んでもよい。トップシート11は更に、粗麻の繊維から構成されてもよく、この繊維は、例えば欧州特許出願公開第0035818号明細書に記載されたように、互いにある接着パターンで接着されてもよい。トップシート11に適した材料の更なる例は、多孔質発泡体や開口部を備えたプラスチックフィルム等である。吸収性物品の異なる部分では、トップシート11は異なってもよい。
【0023】
液体不浸透性バックシート13は、吸収体12の衣服に面した表面上に位置し、身体滲出物が吸収体12から漏れて着用者の衣服を汚すのを防ぐ役割を果たす。よって、吸収体12の衣服に面した側を覆う液体不浸透性バックシート13は、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンフィルムといった薄いプラスチックフィルム、液体不浸透性材料によって被覆された不織布材料、耐液体浸透性のある疎水性の不織布材料、または一つ以上の不織布材料を有する一つ以上のプラスチックフィルムの積層物等の液体不浸透性材料である。感触向上のため、液体不浸透性バックシート13は、好ましくは衣服に面したその表面上に、柔らかい不織布材料を含む。吸収体12から蒸気を逃すことはできても液体はそこを通過させないように、液体不浸透性バックシート13が通気性を持つことがある。通気性のある液体不浸透性バックシート13の例は、多孔質ポリマーフィルム、スパンボンドおよびメルトブロー層の不織布積層物、並びに多孔質ポリマーフィルムおよび不織布の積層物である。
【0024】
吸収体12は、着用者から身体滲出物を受け入れて保持するよう働く。よって、吸収体12は、吸収性材料を含む。吸収体12は、従来のどのような種類のものであってもよい。よくある吸収性材料の例は、セルロース系フラッフパルプ、組織層、高吸収性ポリマー(超吸収剤と呼ばれる)、吸収性発泡材料、吸収性不織布材料等である。吸収体12において、セルロース系フラッフパルプと超吸収剤を組み合わせることは一般的である。例えば乳幼児用おむつや失禁用ガードでよく見られる薄い吸収体は、しばしばセルロース系フラッフパルプと超吸収剤の圧縮された混合構造または積層構造を含む。吸収体12の大きさと吸収容量は、例えば乳幼児用や失禁状態の成人用等の異なった用途に適するように変えられてもよい。
【0025】
吸収体12は、排泄物の処理を改善するために選ばれることがある層を一つ以上含んでもよい。このような層は、多量の液体を短期間で受け取り、吸収体12全域に均等に分布させるよう設計されている。これらの層は、いわゆる移動、分布、サージ、または取得層を含み、大抵トップシート11と吸収体12の間および/または吸収体12とバックシート13の間に位置している。
【0026】
一般にトップシート11とバックシート13は、XY平面において同様の延長部を有し、一方で吸収体12は大抵、多少小さめの延長部を有する。吸収体12がトップシート11とバックシート13によって形成された包体内に封入されるよう、トップシート11とバックシート13が吸収体12の周囲で互いに接合される。吸収体12は、少なくとも吸収性物品10の股部分に位置し、前方部や後方部へ多少延長されてもよい。トップシート11、吸収体12、およびバックシート13は、例えば超音波溶接、熱溶接、または接着などの当該技術分野で一般的な任意の手段によって互いに接合されてもよい。
【0027】
吸収性物品10は、無機材料を含む。無機材料は、例えば、液体や臭気を吸収したり、吸収性物品とその材料に嵩を与えたり、または無機材料が多孔質構造の形成を促進するという点で通気性を持たせたりといった、様々な機能を有する。
【0028】
無機材料は、炭素を含む。最も好適には、炭素は炭素アニオン(CO2−)として存在する。その他の炭素含有無機材料には、例えば、シアン化物(CN)、シアン酸塩(OCN)、炭化物、およびチオシアン酸塩(SCN)等が含まれる。
【0029】
好適には、無機材料は塩、すなわち全体の電荷がゼロとなるような好適な比率のカチオンとアニオンからなる材料である。例えば、無機材料は、炭酸塩からなってもよく、それらの例は、アルカリ金属(グループ1:例えばLi、Na、K)、アルカリ土類金属(グループ2:例えばMg、Ca)、およびそれらの混合物の炭酸塩である。最も好適には、無機材料は炭酸カルシウム(CaCO)である。
【0030】
無機材料内の炭素は、大気中二酸化炭素(CO)に由来する。つまり、大気中二酸化炭素を他の好適な試薬と反応させて無機材料を形成する化学工程が行われる。「由来する」との用語は、「実質的に直接由来する」ことを意味する。すなわち、自然に発生し、その地質学的歴史のある時点において、天然の炭素循環の一部として大気からの二酸化炭素を組み込んだ可能性のある無機材料を含むことは、この用語に意図されていない。例えば、本発明による無機材料は、過去20年以内、好ましくは過去10年以内の大気中二酸化炭素(CO)に由来する。
【0031】
無機材料内の炭素が大気中二酸化炭素由来であるので、無機材料の製造中ひいては吸収性物品10の製造中に、二酸化炭素が大気から取り除かれる。したがって、特に埋立地に吸収性物品が廃棄されている間は、大気中COを起源とする炭素は大気から隔離され、無機状態で閉じ込められている。
【0032】
CaCOが焼却される時に放出されるCOを再利用するために、CaOを使用する可能性がある。まず、大気中COの存在下で酸化カルシウムを温めて炭酸カルシウムを得ることにより、COを大気から抽出する。このステップは、400C°前後の工程温度を必要とする。この高い工程温度は、焼却による熱または太陽電池の使用によって得ることができる。これにより、焼却時にCaCOからのCO排出を削減させ、使用可能な新しいCaCOを生産する。よって、本発明の材料のために取得されるCOeq/kgは、減少する。
【0033】
(「放射性炭素年代測定」と同様の工程において)無機材料内の炭素同位体の比率を分析することによって、本発明の吸収性物品10を既知の吸収性物品と区別することができる。対象の同位体は、しばしば地球の大気の上層において生成される14Cである。14Cでは、放射能性崩壊が起きる。14Cは大気中で絶えず生成されているので、大気中の14Cの12Cに対する比率は比較的一定である。しかし、岩や鉱物や石油等の化石燃料に14Cが閉じ込められると、14Cの量は徐々に減少する。よって、本発明は、炭素を含む無機材料の14C/12C比率が1×10−13以上、好ましくは3×10−13以上、より好ましくは5×10−13以上である、吸収性物品を提供する。14C/12C比率およびそれを決定する好適な方法についての詳細は、米国特許出願公開2007/0219521号明細書とその中で引用される参考文献に説明されている。
【0034】
無機材料が炭酸カルシウムである場合、この材料を大気中COから製造する好適な方法は、国際公開第1996/009248号パンフレット内で見つかるかもしれない。このCaCOをつくり出す反応式は、CaSO+HO+CO(atm)→CaCO+HSOである。
【0035】
本発明の無機材料は、上記に示した吸収性物品10の一つ以上の構成要素内にあってもよい。つまり、無機材料は、トップシート11、吸収体12、もしくはバックシート13、または二つ以上のこれらの構成要素内にあってもよい。無機材料は大抵、微粒子状で存在する。
【0036】
本発明の無機材料は、プラスチックフィルム内にあってもよい。プラスチックフィルムを製造するために好適なポリマーには、ポリアルケン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはその混合物)、ポリエステル、およびポリアミド、またはその混合物が含まれる。好適には、このポリマーは、再生可能資源(いわゆるバイオポリマー)から得られてもよい。そのようなバイオポリマーは、本発明の材料および製品の廃棄または焼却時に排出されるCO当量の算出に対して更に好ましい影響を及ぼすであろう。
【0037】
無機材料を含むプラスチックフィルムは当該技術分野で既知であり、例として米国特許第6576809号明細書や特開2000―136254号公報が挙げられる。そのようなフィルムは通常、無機材料を溶融ポリマーに加え、その後ポリマーを引き伸ばしたりブローイングを行ってフィルムにすることにより製造される。そのようなフィルムにおける無機材料は、フィルムに多孔性をもたらす。従来のフィルムでは、無機材料は30−70重量%の割合で存在してもよい。本発明によると、無機材料は2−80重量%、好ましくは5−70重量%の割合でプラスチックフィルムに存在してもよい。もし無機材料がプラスチックフィルム内にある場合、このプラスチックフィルムは、物品10のトップシート11またはバックシート13、好ましくはバックシート13に存在してもよい。よって本発明は、吸収性物品10がプラスチックフィルムを含み、無機材料がそのプラスチックフィルム内にある、吸収性物品10を提供する。更により好適には、本発明の吸収性物品10のバックシート13は積層体を含み、ここで本発明のプラスチックフィルムがその層の一つである。
【0038】
本発明の無機材料は、合成繊維内にあってもよい。合成繊維を製造するために好適なポリマーには、ポリアルケン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはその混合物)、ポリエステル、およびポリアミド、またはその混合物が含まれる。上記のフィルム同様、合成繊維のポリマーは、再生可能資源(いわゆるバイオポリマー)から得られてもよい。これらの繊維は、単一、複合、または多成分繊維であってもよい。これらの繊維は、長繊維またはステープルファイバー(staple fibres)であってもよい。無機材料を含む合成繊維は、当業者によく知られており、例として米国特許出願公開第2009/0104831号明細書や米国特許第4341213号明細書が挙げられる。そのような繊維における無機材料は、多孔性や他の特性を繊維にもたらす。無機材料は、繊維が延伸またはブローイングされる前に、その繊維を作りだすポリマーに加えられてもよい。無機材料は、2−40重量%、好ましくは5−25重量%の割合で本発明の合成繊維に存在してもよい。本発明の無機材料を含む合成繊維は、(例えば、トップシート11、バックシート13、またはその他の層の一部として)不織布層を形成しても、または吸収体12の一部として疎らに配置されていてもよい。よって本発明は、吸収性物品10が合成繊維を含み、無機材料がその合成繊維内にある、吸収性物品10を提供する。
【0039】
あるいは、本発明の無機材料は、不織布層内にあってもよい。本発明の無機材料は、任意の既知の不織布技術および当業者によく知られている任意の繊維組成とともに使用されてもよい。例として、無機材料はその製造中に、例えば不織布層を作りだす繊維混合物に無機材料を混合したり、または無機材料を既存の不織布層に加えたりすることによって、不織布層の構造に組み込まれてもよい。この場合の無機材料は、上記のように合成繊維自体の内にあるというより、個々の繊維の間に閉じ込められている。無機材料を不織布層に組み込むために、バインダー材料が使われてもよい。
【0040】
本発明の無機材料は、吸収性物品10における吸収体12の一つ以上の構成要素に存在してもよい。例えば、本発明の無機材料は、現代の吸収性物品10の吸収体12の重要な構成要素である高吸収性樹脂(SAP)に存在してもよい。あるいは、無機材料は、吸収性物品10の吸収体12内の他の場所に結合されてもよい。
【0041】
更なる選択肢として、本発明の無機材料は、吸収性物品10内部で単に疎らな状態であってもよい。したがって、無機材料は、トップシート11とバックシート13によって形成された包体内に存在する。
【0042】
また、本発明は、吸収性物品10の製造方法を提供する。この製造方法は、下記のステップ:
a.水分の存在下で、大気中COを金属塩と反応させて、金属炭酸塩を得るステップ、および
b.ステップaで得られた金属炭酸塩を、該吸収性物品10に組み込むステップ
を含む。
【0043】
好適には、金属塩は金属硫酸塩である。金属硫酸塩の場合、この方法のステップaに関して、国際公開第1996/009248号パンフレットにおいて更に詳細に説明されている。吸収性物品10がプラスチックフィルムまたは合成繊維を含むという特殊な場合には、該製造方法は下記の追加ステップ:
b1.金属炭酸塩を該プラスチックフィルムまたは合成繊維に組み込むステップ、および
b2.該プラスチックフィルムまたは合成繊維を該吸収性物品10に組み込むステップ
を含む。
【0044】
上記の吸収性物品10の全ての特性、その構成要素、および無機材料は、本発明の方法に対して同様に適用することができる。特に、上記方法で使用される金属炭酸塩は、炭酸カルシウムであってもよい。プラスチックフィルムまたは合成繊維は、吸収性物品10の任意の好適な構成要素に組み込まれてもよい。特に、プラスチックフィルムは、吸収性物品10のバックシート13に組み込まれてもよい。
【0045】
多くの実施形態や図に関して本発明の説明がなされてきた。しかし、本発明はこれらの実施形態に限られたものと理解されるべきでなく、本発明の範囲は添付された特許請求の範囲によって規定される。
【0046】
カーボン・フットプリントの算定
下記方程式にしたがって、CaSOと大気中COから製造されたCaCOの算定が行われる。
CaSO+HO+CO→CaCO+HSO
【0047】
1モルのCOが1モルのCaCOをもたらす。CaCOの分子量は80g/モルであり、COの分子量は44g/モルである。
【0048】
1kgのCaCOを生産するためには、0.55kgのCOが必要であり、計算上は、1kgのCaCOを生産すると0.5kgのCOeqを消費するとみなす。消費量は0.5kgのCOeqと見積もられているが、これはその過程において少量のCOが生成される可能性があるためである。
【0049】
CaSOは他の工業工程から出る廃棄物であるので、この物質を生産することによってCOに対する寄与がもたらされることはない。
【0050】
地中から採掘されるCaCOについて比較する。採掘工程はそれ自体がある程度のカーボン・フットプリントを有する。
【0051】
その他の数値については、下記の参考文献から採用した。
PPおよびPEの生産:
Plastics Europe(March 2005)I Boustead、Eco−profiles of the European Plastics Industry
CaCOの生産:
Ecoinvent Data v.2.0(2007)、Kellenberger D.et al.Life Cycle Inventories of Building Products.、Ecoinvent Report no.7.
廃棄物の取扱い:
Ecoinvent Data v.2.0(2007)、Doka G.Life Cycle Inventories of Waste Treatment Services、Ecoinvent Report no.13.
【0052】
比較計算の実施例
【実施例1】
【0053】
実施例1−ポリマー顆粒
ポリマー顆粒の生産についてCO当量が見積もられた。すなわち、この実施例における「ゲート」は、完成ポリマー顆粒の生産であると考えられる。
【0054】
図示されたポリマーの数値には、ポリマー顆粒をフィルムまたは不織布に転換するためのCO寄与が含まれていない点を考慮することが重要である。ポリマー顆粒のフィルムおよび繊維への転換並びに製品製造は、転換ラインの効率性および製造に使用されるエネルギー源に応じて、異なるCO当量をもたらす。NW生産を目的とした、フィルムにするための押し出しおよび繊維にするための紡績のいずれも、生産ユニット、技術、およびエネルギー源(国によって異なる)に大きく左右される。不織布の生産では、エネルギー消費が0.7−1.4のCO寄与をもたらす。フィルムの押し出しは、工程温度が低いので、恐らく多少少ない寄与をもたらす。同じ場所で同じ設備を用いて生産された場合には、比較される全てのフィルムが大体同じ数値になると推測されるので、この数値は加算されていない。様々なフィルムのCO当量の削減率についての相対的価値に影響があるであろう。
【0055】
揺りかごからゲートまでの算定は、ポリマー顆粒の生産に基づいている。焼却および埋め立てのような異なる廃棄オプションが調査されている。これらのデータを表1に示す。
【0056】
【表1】

【実施例2】
【0057】
実施例2−ポリマー・フィルム
揺りかごからゲートまでおよび揺りかごから墓場までの見積もりがフィルムの生産について実施され、ここで純PE顆粒が、CaCOで50%が満たされたPE顆粒および大気中CO由来のCaCOで50%が満たされた本発明のPE顆粒と比較された。工程を勘案すると、50%のフィラーが妥当であろうと推測される。
【0058】
100%焼却、100%埋め立て、および70%埋め立て/30%焼却(ヨーロッパにおける通常の廃棄物処理比率)について見積もりが実施された。結果を表2に示す。70/30のオプションではカーボン・フットプリントの削減量がフィラーの割合よりも高いことは驚くべき効果であり、PEと比較すると55%の削減である。これは、COが埋立地に「閉じ込められている」ためである。地質源から採掘されたCaCOで満たされたPEフィルムと比較すると、COの削減量は16%である。
【0059】
【表2】

【実施例3】
【0060】
実施例3−ポリマー繊維
類似の見積もりを、CaCOが満たされたポリマー繊維について実施した。値は、ポリプロピレン(PP)繊維について見積もった。データを表3に示す。工程を勘案すると、20%のフィラーが妥当であろうと推測される。純PP繊維と比較して、推計20%のkg当りのCO当量の減少が、本発明の20%CaCOフィラーを使用することによって得ることができる。
【0061】
【表3】

【0062】
上記の算定はCaCOに基づいて実施されたが、もちろん本発明はCaCOに限られたものではない。同様の算定は、大気中COから生産された他の無機材料に対して実施されてもよい。
【符号の説明】
【0063】
10 吸収性物品
11 トップシート
12 吸収体
13 バックシート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
おむつ、生理用ナプキン、パンティライナー、または男性もしくは女性用失禁用品のような吸収性物品(10)であって、前記吸収性物品(10)は無機材料を含み、前記無機材料は大気中二酸化炭素(CO)由来の炭素を含む吸収性物品。
【請求項2】
前記炭素含有無機材料が、1×10―13以上、好ましくは3×10―13以上、更に好ましくは5×10−13以上の14C/12C比率を有する請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記無機材料は、例えばアルカリ金属(グループ1)、アルカリ土類金属(グループ2)、およびそれらの混合物の炭酸塩のような、炭酸塩である請求項1または2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記無機材料が炭酸カルシウムである請求項3に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記吸収性物品(10)がプラスチックフィルムを含み、前記無機材料が前記プラスチックフィルム内にある請求項1から4のいずれか一項に記載の吸水性物品。
【請求項6】
前記吸収性物品(10)が合成繊維を含み、前記無機材料が前記合成繊維内にある請求項1から4のいずれか一項に記載の吸水性物品。
【請求項7】
吸収性物品(10)の製造方法であって、前記製造方法が以下のステップ:
a.水分の存在下で、大気中COを金属塩と反応させて、金属炭酸塩を得るステップ、および
b.ステップaで得られた前記金属炭酸塩を、前記吸収性物品(10)に組み込むステップ
を含む吸収性物品の製造方法。
【請求項8】
前記金属塩が金属硫酸塩である請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記吸収性物品(10)がプラスチックフィルムまたは合成繊維を含み、前記製造方法が下記の追加ステップ:
b1.前記金属炭酸塩を前記プラスチックフィルムまたは合成繊維に組み込むステップ、および
b2.前記プラスチックフィルムまたは合成繊維を前記吸収性物品(10)に組み込むステップ
を含む請求項7または8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記金属炭酸塩が炭酸カルシウムである請求項7から9のいずれか一項に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−513422(P2013−513422A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543043(P2012−543043)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際出願番号】PCT/SE2009/051399
【国際公開番号】WO2011/071429
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(506215320)エスセーアー・ハイジーン・プロダクツ・アーベー (157)
【Fターム(参考)】