説明

炭素質材料を破壊するための方法およびシステムならびにその組成物およびシステム

炭素質材料を含む組成物を準備する段階、炭素質材料を硫黄化合物と反応させる段階、および炭素と硫黄を含む生成物を形成する段階を含む、炭素質材料を組成物から実質的に除去する方法、ならびに得られる組成物およびそのために使用されるシステム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2007年4月24日出願の米国特許仮出願第60/926,007号、標題「PROCESS FOR DESTRUCTION OF CARBON DIOXIDE AND OTHER CARBONACEOUS CHEMICALS」、および2007年6月2日出願の米国特許仮出願第60/932,698号、標題「PROCESS FOR DESTRUCTION OF CARBON DIOXIDE AND OTHER CARBONACEOUS CHEMICALS」、および2007年6月26日出願の米国特許出願第11/823,417号、標題「PROCESS AND SYSTEM FOR DESTROYING CARBON ACEOUS MATERIALS AND COMPOSITION AND SYSTEM THEREOF」の優先権の利益を主張し、それらの内容は引用することにより本出願に組み込まれる。
【発明の概要】
【0002】
本発明の一態様は、炭素質材料を含む組成物を準備する段階と、炭素質材料を硫黄化合物と反応させる段階と、炭素と硫黄を含む生成物を形成する段階とを含む、炭素質材料を組成物から実質的に除去する方法を提供する。
【0003】
本発明のこの態様には、硫黄を硫化水素または二硫化炭素に接触させることによる、二酸化炭素およびその他の炭素質化学物質の破壊のための化学的プロセスが含まれる。二酸化炭素が硫化水素で破壊されれば、生じた生成物には水および二硫化炭素、あるいは水、炭素、および硫黄または二酸化硫黄のどちらかが含まれる。二酸化炭素が二硫化炭素で破壊されれば、生じた生成物には炭素および二酸化硫黄が含まれる。二酸化炭素以外の炭素質材料が硫黄で破壊されれば、破壊生成物には、炭素元素またはその他の炭素含有化合物が含まれ、一般には、限定されるものではないが、硫化水素、二酸化硫黄、および二硫化炭素が含まれる。
【0004】
本発明のもう一つの態様は、炭素質材料は、炭素質材料を含む化学組成物および硫黄化合物を準備する段階と、炭素質材料を硫黄化合物に接触させる段階とを含む方法により炭素質材料が除去された、炭素質材料を実質的に含まない組成物を提供する。
【0005】
本発明のさらなる態様は、炭素質材料を含む組成物および硫黄化合物を受け取り、炭素質材料を実質的に含まない生成物を生成するための反応器を含む、炭素質材料を組成物から実質的に除去するためのシステムを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明は、炭素質材料を組成物から実質的に除去する方法を提供する。炭素質材料は、好ましくは二酸化炭素または炭化水素である。二酸化炭素は液体であっても気体であってもよく、炭化水素は固体であっても液体であっても気体であってもよい。一実施形態では、二酸化炭素は、希硫酸を重炭酸ナトリウムまたは炭酸ナトリウムと反応させることにより形成される。しかし、二酸化炭素は、任意の源または任意の反応から供給されてよい。二酸化炭素は、例えば二酸化炭素を塩化カルシウム乾燥剤に通過させることにより、乾燥させてもよい。
【0007】
組成物は、炭素質材料を含むあらゆる組成物であってもよいが、液体または気体であることが好ましい。炭素質材料は、化石燃料およびその他の燃料、大気気体、有機物、地球の成分およびその他の源、例えばセメントキルンおよびアスファルト工場などに存在する可能性がある。この組成物の一例は、発電所で燃焼する化石燃料により生成されるような二酸化炭素である。
【0008】
炭素質材料は、炭素質材料を含む組成物を準備すること、炭素質材料を硫黄化合物と反応させること、および炭素と硫黄を含む生成物を形成することにより、実質的に除去または破壊される。「実質的に」とは、少なくとも50%の除去を意味するが、除去はできる限り100%であり得る。好ましくは、少なくとも95%の炭素質材料が、硫黄化合物と接触して除去される。除去の程度は、どれくらいの炭素質材料が硫黄化合物に接触するかによって決まる、すなわち、100%接触=100%破壊、95%接触=95%破壊、そして接触なし=破壊なし、である。同様に「実質的に」は、完全な接触の場合には完全であることを示し、または硫黄化合物との接触が完全とまでいかない場合に、少なくとも50%、好ましくは95%の接触が起こるならば、比例して完全未満であることを示す。その他の炭素質材料の除去の範囲には、70%〜100%の除去および85%〜100%の除去が含まれ得る。
【0009】
硫黄化合物は、硫黄を含むあらゆる化合物であってよい。好ましくは、硫黄化合物は、硫黄、硫化水素または二硫化炭素を有する。硫黄は、液体または固体状態、例えば一般的な黄色の硫黄粉末で提供されてよく、好ましくは、炭素質材料との反応の前に励起させてフリーラジカル反応性の硫黄となる、すなわち解離した状態になる。固体の硫黄は、炭素質材料と反応する前に液化または蒸発させてよい。硫黄を液相もしくは気相状態に変換することは、電磁放射または加熱により達成される。
【0010】
酸素は、Oにより表される一対の原子として天然に存在し、硫黄は安定性かつ非反応性のSとして存在する。しかし、硫黄が解離されてフリーラジカルになると、硫黄は反応性となる。硫黄は室温で非常にゆっくりフリーラジカルに昇華し、温度が上昇するにつれてフリーラジカルの数は増加する。硫黄が液体状態である場合、大量のフリーラジカルが硫黄の表面の近傍に浮遊し、硫黄の沸点である約444.6摂氏温度以上で、多量の蒸気がフリーラジカルとなる。
【0011】
反応は、炭素質材料が硫黄化合物に接触すると起こる。炭素質材料および硫黄化合物は好ましくは、酸素含量が最小化されている、無酸素雰囲気を有する反応器の中に注入されてよい。この雰囲気が少しでも酸素を含むならば、硫黄は多くの場合、存在する酸素と優先的に反応して二酸化硫黄を生成する、すなわち、硫黄の優先傾向は酸素と反応することであるので、酸素の存在は硫黄の無駄遣いとなり得る。しかし、微量の酸素は硫黄と未反応のままであることも理解され、本発明の目的において、本明細書において用いられる用語「無酸素」は、0.01%の酸素〜0.00%の酸素の間も意味し得る。反応器の内容物は、電磁放射によるか、または内容物が高い融点を有する場合には1,500摂氏度まで加熱することにより、反応の速度を加速させるために励起させてよい。
【0012】
反応の一実施形態では、二酸化炭素は、例えばバブリングにより、約室温〜約400摂氏度の温度にて二硫化炭素を通じて注入される。この実施形態では、二硫化炭素は二酸化炭素によって酸化される。
【0013】
反応は、約室温〜1,500摂氏度の温度で起こり得る。室温より高い温度は、一部の場合では、反応を加速させ得る。反応器はまた、反応を加速させるために大気圧より高く加圧してもよい。加圧は、硫化水素を含む反応において特に好ましい。
【0014】
反応物は、連続ベースで反応器に供給されてよい。実験室用途には、反応器はバッチ反応器であることが好ましく、工業用途には、反応器は連続する管型反応器であることが好ましい。ひとたび反応器に反応体が充填されると、反応器は密封されてアルゴンなどの不活性ガスでパージされてよい。
【0015】
反応の生成物には、炭素、硫黄、二酸化硫黄、水、および二硫化炭素が含まれる。二酸化硫黄、二硫化炭素および水は、液体であっても気体であってもよく、炭素は固体である。
【0016】
一実施形態では、炭素質材料は二酸化炭素であり、硫黄化合物は硫化水素であり、生成物は、水および二硫化炭素、炭素元素、硫黄元素、および/または二酸化硫黄である。この実施形態では、反応体の比率は、二酸化炭素のモル体積対硫化水素のモル体積が1:2〜3:2の範囲であってよい。
【0017】
もう一つの実施形態では、炭素質材料は二酸化炭素であり、硫黄化合物は二硫化炭素であり、生成物は炭素元素および二酸化硫黄である。さらに別の実施形態では、炭素質材料は炭化水素であり、硫黄化合物は硫黄であり、生成物は、炭素、硫化水素、二硫化炭素および/または二酸化硫黄である。
【0018】
これらの実施形態は、以下の化学反応で表され得る。
化学反応1: CO+2HS→2HO+C+2S
化学反応2: CO+2HS→2HO+CS
化学反応3: 3CO+2HS→2HO+3C+2SO
化学反応4: 2CO+CS→3C+2SO
【0019】
反応の間、炭素質材料および硫黄化合物を、水酸化ナトリウムに溶解して溶液を形成してよい。これらの実施形態は以下の化学反応で表される。
水酸化ナトリウム1に溶解した場合の化学反応:
CO+2NaOH→NaCO+H
S+2NaOH→NaS+2H
NaCO+2NaS+3HO→C+2S+6NaOH
重炭酸ナトリウムとの代替反応:
NaHCO+2NaS+2HO→C+2S+5NaOH
水酸化ナトリウム2に溶解した場合の化学反応:
2NaOH+CO→NaCO+H
2NaOH+HS→NaS+2H
3NaCO+2NaS+3HO→3C+2NaSO+6NaOH
化学反応: 3CO+2NaS→3C+2NaSO
【0020】
生成物はそれらが形成された後に分離することができる。生成物を排出し、任意の固体、液体および気体を分離することができる。次に気体生成物は、冷却されてよい。一実施形態では、二酸化硫黄生成物を硫化水素と反応させて硫黄と水を生成する。もう一つの実施形態では、二酸化硫黄生成物を酸素および水と反応させて硫酸を生成する。これらの実施形態は、以下の反応で表される。
硫黄は次の反応から回収することができる: SO+2HS→2HO+3S
またはSOを用いて硫酸を生成する: 2SO+O+2HO→2HSO
【0021】
二酸化硫黄はまた、約−10摂氏度で液化させるか、または亜硫酸塩系の化学物質に変換して回収することができる。硫化水素は、−60摂氏度未満の温度で回収されてよい。あるいは、硫化水素を水酸化ナトリウム溶液に溶解して硫化ナトリウムを生成してよい。
【0022】
過剰な硫黄を反応器の中に供給してよい。好ましくは、任意の過剰量は1〜20%の範囲であるが、用途により必要とされるのであればそれよりも多いまたは少ない量を用いてもよい。そのようなものとして、任意の未反応の硫黄は、組成物、すなわち固体残渣を二硫化炭素で洗浄することにより変換され得る。生成物を洗浄することにより二酸化硫黄の気体を回収し、亜硫酸ナトリウムを作出してもよい。
【0023】
二酸化炭素およびその他の炭素質材料を、それらの原子組成を再配置することにより破壊する方法は、同時に新しい炭素分子を作出する。これらの炭素分子は無定形であるか、または構造化された形である。構造化炭素分子(The structured carbon molecules)は、様々な物理的特性をもつ様々な種類の分子であり、それには、限定されるものではないが、黒鉛状炭素、ダイヤモンド状炭素、フラーレン、バッキーボール、C60、ナノチューブおよび構造化炭素のようなナノ繊維が含まれる。例えば所望の種の播種などの制御条件下で、例えばカーボンナノチューブを、作出し、かつ/または成長させることができる。
【0024】
本発明はまた、炭素質材料を組成物から実質的に除去するための上記の方法およびシステムにより炭素質材料が除去される、炭素質材料を実質的に含まない組成物を提供する。このシステムは反応器を必要とする。小規模では、そのネック部に反応体の添加および生成物の出口のためのアダプターが取り付けられた、シングルもしくはマルチネックガラスフラスコでバッチ型反応を行ってよい。反応器は、Pyrex(登録商標)、Kimble(登録商標)Glass、United Glass Technologies and Buchi(登録商標)Corporationにより供給されるような、耐熱性のホウケイ酸ガラスまたは石英ガラス製であってよい。温度は、温度計のガラス接触により、またはその他の手段により、例えば非接触レーザー誘導赤外線の示度により測定されてよく、生成物ガスはVigreuxカラムで冷却されてよい。一実施形態では、Vigreuxカラムは反応器の上に設置されて、冷却器の役割を果たす。その上、二酸化炭素反応体ガスを、気体発生装置で作製し、次に塩化カルシウム乾燥剤に通過させてそのガスを乾燥させてよい。
【0025】
大規模では、反応器は、下り勾配を設けたロータリーキルン型反応器、超音波反応器、または反応体を接触させるために慣用されるその他の多数の種類の反応器であってよい。これらの反応器はガラスライニングされた反応器であってよい。装置は本出願に記載されるものに限定されない。本方法の段階を行う限り、どのような装置を用いてもよい。
【0026】
本発明の実施形態および例には、以下のものも含まれる。例は、本発明の方法、組成物およびシステムを説明するために提示される。これらの例は、当業者が本発明を理解する際の助けとなることを目的とする。しかし、本発明はそれにより決して制限されるものではない。
【0027】
一実施形態には、二酸化炭素が(酸性ガスまたはその他の源からの)硫化水素と1モル体積の二酸化炭素対2モル体積の硫化水素の比率で反応して合成物を生成する場合の、二酸化炭素の実質的な破壊のための方法が含まれる。本方法のこの実施形態には、以下の段階が含まれる。
(a)二酸化炭素および硫化水素を、適当な比率で1,500摂氏度までの無酸素雰囲気(硫化水素は、その雰囲気が少しでも酸素を含有するならば、存在する酸素と優先的に反応して二酸化硫黄を生成する)の反応器の中に注入して反応させ、水と、炭素元素および硫黄、または二硫化炭素のいずれかを生成する段階。
(b)この反応の生成物を分離する段階。
【0028】
化学反応は、CO+2HS→2HO+C+2Sとなり得る。あるいは、化学反応は、CO+2HS→2HO+CSとなり得る。加えて、化学反応は、水酸化ナトリウムに溶解させた場合には、以下の通りとなり得る。
CO+2NaOH→NaCO+H
S+2NaOH→NaS+2H
NaCO+2NaS+3HO→C+2S+6NaOH。
重炭酸ナトリウムを用いる代替反応は、
NaHCO+2NaS+2HO→C+2S+5NaOH
となり得る。
【0029】
クラウス法は、現在硫化水素を硫黄に変換するための産業の標準として当分野で公知である。硫化水素は天然ガス中に自然に存在し、硫化水素濃度が高く、精油またはその他の産業プロセス中に生成する場合には「酸性ガス」と呼ばれる。100年以上にわたって用いられているクラウス法では、過不足のない硫化水素が空気または酸素によって酸化されて二酸化硫黄となって硫化水素の残りと反応し、硫黄元素および水を生成する。この方法の一部は850摂氏度より高い温度で達成され、一部は触媒、例えば活性アルミナまたは二酸化チタンの存在下で達成される。クラウス法の化学反応は、
2HS+3O→2SO+2HOそして次に4HS+2SO→3S+4H
である。
【0030】
この実施形態の一つの利点は、二酸化炭素を酸素の代わりに用いることにより、硫化水素を除去する同じ最終結果が達成され得ることであり、この実施形態のパラメータを操作することはあまり厳密でないので、それによりクラウス法を旧式のものにする。その他の利点には、カーボン中立に向けての、またはカーボン中立(neutrality)のための二酸化炭素の破壊、ならびに炭素および硫黄の産生が含まれる。その他の利益の中で、例であって限定するものではないが、濃縮された生成物を、限定されるものではないが、生成物の販売を含む目的のために輸送してもよい。さらに、例であって限定するものではないが、本発明のこの実施形態は、硫黄が販売され、適当なタンカーで輸送されるための方法を提供することができる。
【0031】
本方法のこの実施形態で用いられる硫化水素ガスは、気体発生装置中で硫化ナトリウムへの希硫酸の反応により調製され、次に乾燥剤に通過させてそれを乾燥させることができることが既に実証されている。本方法のこの実施形態で用いられる二酸化炭素ガスは、気体発生装置中で重炭酸ナトリウムまたは炭酸ナトリウムへの希硫酸の反応により調製することができ、この反応により生じた二酸化炭素ガスは、このガスを乾燥させるための塩化カルシウム乾燥剤に通される。下に示される最初の化学反応は、室温またはそれより高い温度にて、例えば二酸化炭素44.4部対硫化水素100部の比でこれら2種類の気体を混合し、大気圧で数日待つか、それらを圧縮することにより行われ得る。この同じ比の二酸化炭素と硫化水素は、高い温度および圧力下では急速に結合し、下に示される二硫化炭素および水を生成する2番目の反応は、約600摂氏度を上回る温度で多く見られる。気体を水酸化ナトリウムに溶解させ、反応を加速させるために、混合溶解気体の入ったフラスコを日光の当たるところに置くことも、非常に遅いが、反応をもたらす。一例では、これらの水性反応は、106グラムの純粋な無水炭酸ナトリウムを400ml(「ミリリットル」)の温蒸留水に溶解し、これを800mlの温蒸留水に溶解した156.1グラムの純粋な無水硫化ナトリウムと混合するか、または、84グラムの純粋な無水重炭酸ナトリウムを1リットルの温蒸留水に溶解し、これを、800mlの温蒸留水に溶解した156.1グラムの純粋な無水硫化ナトリウムと混合することにより、実証されている。
【0032】
現下の実施形態は、限定されるものではないが、以下のものを含む方法で、工業的に実施することができる。
(a)本発明のこの実施形態を用いる天然ガスを燃やす発電所は、高価な硫黄含有量の低いガスの代わりに、酸性ガスを含む硫黄含有量の高いガスを用いることができた。希薄酸素燃焼を用いて過剰な酸素を最小限にすることが好ましい。二酸化炭素と二酸化硫黄を混合した(例えば、空気が酸化剤である場合には窒素などの他の空気成分を含むまたは含まない)熱い排ガスを、下り勾配を設けたロータリーキルン型反応器(加圧は反応速度を大いに加速する)の中に、硫化水素を連続ベースで供給しながら供給することによって、熱い二酸化炭素が硫化水素と反応する。ロータリーキルン型反応器からの排出物は、炭素、硫黄、水、およびその他の空気成分(例えば、発電所において空気が酸化剤である場合には窒素)である。固体生成物を排出ガスから分離することは、従来の重力分離装置およびバッグハウス技術で実現することができる。硫黄は二硫化炭素に溶解するが、炭素は溶解しない。
(b)粗ガスを用いる発電所から離れているガス田は、一般に、不要な留分の燃焼による、自己生成二酸化炭素が豊富に手に入る用地(sites)を有する。この粗ガスは、二酸化炭素を硫化水素と反応させて硫化水素を除去し、硫黄および水を生成することができ、クラウス法によく似ている(同じ装置を用いることができる)。加圧は反応速度を大いに加速する。この場合もやはり、硫黄は二硫化炭素に溶解するが、炭素は溶解しないため、従来の重力分離装置およびバッグハウス技術で分離を行ってよい。加えて、本発明のこの実施形態は、ガス田が、限定されるものではないが、発電所を含む、その他の事業体に粗ガスを売るための方法を提供することができる。
【0033】
もう一つの実施形態には、二酸化炭素が(酸性ガスまたはその他の源からの)硫化水素と3モル体積の二酸化炭素対2モル体積の硫化水素の比率で反応して合成物を生成する場合の、二酸化炭素の実質的な破壊のための方法が含まれる。本方法のこの実施形態には、以下の段階が含まれる。
(a)二酸化炭素および硫化水素を、適当な比率で1,500摂氏度までの無酸素雰囲気(硫化水素は、その雰囲気が少しでも酸素を含有するならば、存在する酸素と優先的に反応して二酸化硫黄を生成する)の反応器の中に注入して反応させ、水、炭素元素、および二酸化硫黄を生成する段階。
(b)この反応の生成物を分離する段階。
【0034】
化学反応は、3CO+2HS→2HO+3C+2SOである。水酸化ナトリウムに溶解させた場合、この化学反応は以下の通りであり得る。
2NaOH+CO→NaCO+H
2NaOH+HS→NaS+2H
3NaCO+2NaS+3HO→3C+2NaSO+6NaOH
あるいは、この化学反応は、3CO+2NaS→3C+2NaSO
であり得る。
【0035】
本発明に関して、この実施形態の一つの利点は、二酸化炭素を酸素の代わりに用いることにより、硫化水素を除去する同じ最終結果が達成され得ることであり、新しい方法のこの実施形態のパラメータを操作することはあまり厳密でないので、それによりクラウス法を旧式のものにする。加えて、その他の利点もこの実施形態によりもたらされる。それらの利点には、カーボン中立に向けての、またはカーボン中立のための二酸化炭素の破壊、ならびに炭素および二酸化硫黄の産生が含まれ、二酸化硫黄は輸送用に−10摂氏度で容易に液化されて使用者に販売される。使用者には、限定されるものではないが、硫酸、肥料、殺虫剤およびその他の硫黄系の化学物質の製造業者が含まれ得る。本方法のこの実施形態で用いられる硫化水素ガスは、気体発生装置中で硫化ナトリウムへの希硫酸の反応により調製され、このガスを乾燥剤に通過させて乾燥させることができることは既に実証されている。本方法のこの実施形態で用いられる二酸化炭素ガスは、気体発生装置中で重炭酸ナトリウムまたは炭酸ナトリウムへの希硫酸の反応により調製することができ、この反応により生じた二酸化炭素ガスは、このガスを乾燥させるための塩化カルシウム乾燥剤に通される。この実施形態に示される最初の化学反応は、室温でさえ、二酸化炭素133.4部対硫化水素100部の比でこれら2種類の気体を混合し、大気圧で数日待つことにより行われ得る。この二酸化炭素と硫化水素の同じ比は、高い圧力および温度下では急速に結合する(クラウス法を参照のこと)。気体を水酸化ナトリウムに溶解させ、混合溶解気体の入ったフラスコを日光の当たるところに置くことも、非常に遅いが、反応をもたらす。これらの水性反応は、106グラムの純粋な無水炭酸ナトリウムを400mlの温蒸留水に溶解し、これを400mlの温蒸留水に溶解した78グラムの純粋な無水硫化ナトリウムと混合するか、または、84グラムの純粋な無水重炭酸ナトリウムを1リットルの温蒸留水に溶解し、これを、100mlの温蒸留水に溶解した78グラムの純粋な無水硫化ナトリウムと混合することにより、実証されている。二酸化炭素を蒸留水中硫化ナトリウムの20重量%溶液中にバブリングすることは、二酸化炭素ガスを注入するために用いる、細砕された(frittered)バブラーでの炭素の形成、および反応式に示されるような、溶液中の亜硫酸ナトリウムの形成をもたらすことが実証されている。
【0036】
この実施形態は、限定されるものではないが、以下のものを含む方法で、工業的に実施することができる。
(a)この新規な技術を用いる、既存の天然ガスを燃やす発電所は、高価な硫黄含有量の低いガスの代わりに、硫黄含有量の高いガスまたは酸性ガスを用いることができた。二酸化炭素と二酸化硫黄を混合した(例えば、空気が酸化剤である場合には窒素などの他の空気成分を含むまたは含まない)熱い排ガスを、下り勾配を設けたロータリーキルン型反応器の中に供給することにより(ここに硫化水素も連続ベースで供給される)、熱い二酸化炭素が硫化水素と反応し、ロータリーキルン型反応器からの排出物は、炭素、二酸化硫黄、水、およびその他の空気成分、例えば、発電所で空気が酸化剤である場合には窒素となった。この実施形態では、目的が二酸化硫黄を生成することである場合には、発電所は希薄な酸素を作動させる必要はなかった。従来の重力分離装置およびバッグハウス技術を用いてガスから固体を分離し、ガスを冷却した後(溶解した二酸化硫黄を含まない水を回収するための最初の段階を濃縮する高温の水を用いる、または、例えば、亜硫酸ナトリウムを調製する場合であれば、この水を用いて水酸化ナトリウムを溶解させる)、二酸化硫黄を−10摂氏度で液化してよい。それにより、例であって限定するものではないが、液化二酸化硫黄を液体としてその他の使用者に輸送および/または販売することが可能である。あるいは、生成物ガスを、例であって限定するものではないが、水酸化ナトリウム洗浄塔で洗浄して亜硫酸ナトリウムを生成してもよい。
(b)粗ガスを用いる発電所から離れているガス田は、硫化水素を二酸化炭素と反応させて硫化水素を除去し、二酸化硫黄、炭素および水を生成することができる。クラウス法で用いられ得る同じ装置をこの実施形態で用いてよい。加圧は反応速度を大いに加速する。加えて、本発明のこの実施形態は、ガス田が、限定されるものではないが、発電所を含む、その他の事業体に粗ガスを売るための方法を提供することができる。上で述べたように、二酸化硫黄は液化されるか、または反応させて亜硫酸塩系の化学物質を生成することができ、この化学物質は、例であって限定するものではないが、販売され得る。
【0037】
もう一つの実施形態には、二酸化炭素が二硫化炭素と反応して合成物を生成する場合の二酸化炭素の実質的な破壊のための方法が含まれる。本方法のこの実施形態には、以下の段階が含まれる。
(a)二酸化炭素および二硫化炭素を、適当な比率で1,500摂氏度までの無酸素雰囲気の反応器の中に注入して反応させ、炭素、および二酸化硫黄を形成する段階。
(b)この反応の生成物を分離する段階。
【0038】
化学反応は、2CO+CS→3C+2SOである。
【0039】
この反応は、細砕されたガラス製バブラーを用いて二酸化炭素ガスを二硫化炭素に通してバブリングすることにより実証されている。室温でさえ、炭素はゆっくりと細砕したガラス上に形をなす。この反応は高い温度では非常に速く、約400摂氏度の温度でピークとなることが実証されている。例として、そして限定を意図するものではないが、本方法のこの実施形態で用いられる二酸化炭素ガスは、気体発生装置中の重炭酸ナトリウムまたは炭酸ナトリウムへの希硫酸の反応により調製することができ、この反応により生じた二酸化炭素ガスは、このガスを乾燥させるための塩化カルシウム乾燥剤に通される。
【0040】
現下の実施形態は、限定されるものではないが、以下のものを含む方法で、工業的に実施することができる。例であって限定するものではないが、現下の燃焼技術を用いる場合のように、二酸化炭素を生成せずに二硫化炭素を処分することが必要な場合には、超音波反応器中で二酸化炭素によって二硫化炭素を酸化させることができる。
【0041】
さらなる実施形態には、二酸化炭素が液相もしくは気相状態の硫黄と反応する場合に、二酸化炭素以外の炭素質材料の実質的な破壊のための方法が含まれ、それは電磁放射によるかまたは加熱により、固体硫黄を液化または蒸発させて合成物を生成することにより実現される。本方法のこの実施形態には、以下の段階が含まれる。
(a)二酸化炭素以外の炭素質材料を1,500摂氏度までの無酸素雰囲気の反応器に入れる段階(炭素質材料は液相もしくは気相状態の硫黄に接触し、反応して硫化水素、様々な形態の炭素および/またはその他の炭素含有化合物、ならびに時には破壊される物質の組成によって、二硫化炭素、二酸化硫黄などを形成する)
(b)炭素元素またはその他の炭素含有化合物の残渣から生成した気体生成物を分離する段階。
【0042】
この実施形態は、破壊困難な膨大なファミリー(vast family)および時には有毒な炭素含有化合物(炭化水素)を説明するために、ポリ塩化ビニル、PVCを用いて実証されている。ダイオキシンによる有毒ガスは非常に高い温度の燃焼でさえ起こるためである。バッチ型反応は、マルチネックのホウケイ酸ガラス製反応容器で行われてよく、ネックは標準的な先細り型の磨りガラスであり、
(a)開始前および完了後にガラス管の中を通ってシステムをパージするために好ましい、不活性ガス、例えば、限定されるものではないが、アルゴンの添加(これは液体もしくは気体の検体の添加にも用いられ得る)
(b)温度計での温度の測定、および/または
(c)Vigreuxカラムを通過する気体の退出およびコレクタへの進入
を可能にするアダプターが取り付けられている。
【0043】
Vigreuxカラムは、反応器の上に取り付けて、硫黄の漏れを制限するためのバッフル付き空冷還流冷却器として用いることができる(硫黄の沸点より低い低温反応用)。二酸化硫黄は約−10摂氏度で液化するため、分析および使用のために冷却液化装置(refrigerated condenser)およびレシーバフラスコで回収することができる。硫化水素はこのトラップを通過し、それを回収するために−60摂氏度未満の温度である必要がある別のトラップに進入することができ、またはガス洗浄瓶中の水酸化ナトリウム溶液に溶解されて硫化ナトリウムを生成することができる。
【0044】
硫黄粉末は、数インチ深く反応器に装填することができ、PVC管の切片(またはその他の破壊困難な固体または液体炭化水素)を硫黄の上に設置することができる。次に、反応器を密封し、アルゴンまたはその他の不活性ガスでパージするべきである。液体または気体の炭化水素を小規模なバッチ試験ベースで破壊する場合、適したアダプターを介して反応器がパージされた後に炭化水素を反応器に加えてよい。PVCの破壊の場合、PVCパイプの切片は約200摂氏度の温度に達するまでは非常に液体硫黄の上に浮遊しているリングのように見え、約200摂氏度の温度に達した時点で、その時には充満した(engorged)PVC「リング」を取り巻く小さな泡が観察されたことが実証されている。温度が上昇するにつれて、反応速度および発生する気体の量は加速した。炭素の残渣を残して反応器から発生した硫化水素と塩化水素(塩酸)の両方が硫黄に混入した。
【0045】
本方法のこの実施形態は、非常に低い温度で、かつ、一部の従前の方法、例えば、米国特許第4,581,442号に開示される方法などにおいて必要なほど厳密でない動作条件で炭化水素を化学的に分解する。
【0046】
本方法のこの実施形態は、限定されるものではないが、以下のものを含む方法で、工業的に実施することができる。セメント製造に用いられるようなロータリーキルンを、炭素質化合物と硫黄をその特定の炭素質材料に適当な運転温度でキルンの中に連続的に供給することにより、炭化水素を含む炭素質化合物を、それらのより単純な成分に変換するためにも用いることができる。一般に、急速な反応には硫黄のフリーラジカルと炭素質材料との間の密接な接触が必要とされる。この物質の実質的な破壊には、過剰な硫黄が存在することが必要である。過剰な硫黄は、硫黄が易溶性である二硫化炭素で固体残渣を洗浄することにより回復することができる。これは、有害な副生成物を産生せずにVX神経ガスおよびPVCプラスチックのような有害な複合化学物質を破壊することのできる方法である。
【0047】
本発明を詳細に、その具体的な実施形態に関して説明したが、その精神および範囲から逸脱することなく様々な変更および修正がなされてよいことは当業者には明らかである。従って、添付される特許請求の範囲およびその同等物の範囲内にあるならば、本発明は、本発明の修正形態および改変形態に及ぶことが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素質材料を組成物から実質的に除去するための方法であって、
炭素質材料を含む前記組成物を準備する段階と、
前記炭素質材料を硫黄化合物と反応させる段階と、
炭素と硫黄を含む生成物を形成する段階と
を含む、方法。
【請求項2】
前記炭素質材料が、二酸化炭素および炭化水素の少なくとも1種を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記硫黄化合物が、硫黄、硫化水素および二硫化炭素の少なくとも1種を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記生成物が、炭素、硫黄、二酸化硫黄、水、および二硫化炭素の少なくとも1種を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記生成物が、無定形炭素および構造化炭素の少なくとも1種を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記反応させる段階が、硫黄、硫化水素および二硫化炭素の少なくとも1種と前記炭素質材料を接触させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記反応させる段階が、固体硫黄を液化することおよび蒸発させることの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記反応させる段階が、大気圧より高い圧力を有する反応器の中に前記組成物を供給することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記反応させる段階が、無酸素雰囲気を有する反応器を準備することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記反応させる段階が、
前記炭素質材料および前記硫黄化合物を、無酸素雰囲気の反応器の中に内容物として注入することと、
反応の速度を加速させるために前記内容物を励起させること
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記反応させる段階が、二酸化炭素のモル体積対硫化水素のモル体積の比率を1:2〜3:2にもたらすことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記反応させる段階が、過剰な硫黄を提供することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記生成物を前記組成物から分離する段階をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
約室温〜1,500摂氏度の温度を有する反応器を準備する段階をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記硫黄を励起させて解離状態にする段階をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記硫黄化合物が、気体形態および液体形態の少なくとも1種を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記炭素質材料が二酸化炭素を含み、前記硫黄化合物が硫化水素を含み、かつ、前記生成物が、水と、二硫化炭素、炭素元素、硫黄元素、および二酸化硫黄の少なくとも1種とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記炭素質材料が二酸化炭素を含み、前記硫黄化合物が二硫化炭素を含み、かつ、前記生成物が炭素元素および二酸化硫黄を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記炭素質材料が炭化水素を含み、前記硫黄化合物が硫黄を含み、かつ、前記生成物が炭素、硫化水素、二硫化炭素および二酸化硫黄の少なくとも1種を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記炭素質材料が前記組成物から完全に除去される、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記炭素質材料の少なくとも95%が前記組成物から除去される、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
請求項1に記載の方法により生成された組成物。
【請求項23】
炭素質材料を含む化学組成物および硫黄化合物を準備する段階と、
前記炭素質材料を前記硫黄化合物に接触させる段階と
を含む方法により、前記炭素質材料が除去された、炭素質材料を実質的に含まない組成物。
【請求項24】
前記炭素質材料が、二酸化炭素および炭化水素の少なくとも1種を含む、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記硫黄化合物が、硫黄、硫化水素および二硫化炭素の少なくとも1種を含む、請求項23に記載の組成物。
【請求項26】
前記方法が、炭素、硫黄、二酸化硫黄、水、および二硫化炭素の少なくとも1種の生成物を生成する段階をさらに含む、請求項23に記載の組成物。
【請求項27】
炭素質材料を含む組成物および硫黄化合物を受け取り、前記炭素質材料を実質的に含まない生成物を生成するための反応器を含む、前記炭素質材料を前記組成物から実質的に除去するためのシステム。
【請求項28】
前記炭素質材料が、二酸化炭素および炭化水素の少なくとも1種を含む、請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
前記硫黄化合物が、硫黄、硫化水素および二硫化炭素の少なくとも1種を含む、請求項27に記載のシステム。
【請求項30】
前記生成物が、炭素、硫黄、二酸化硫黄、水、および二硫化炭素の少なくとも1種を含む、請求項27に記載のシステム。

【公表番号】特表2010−524841(P2010−524841A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−506260(P2010−506260)
【出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際出願番号】PCT/US2008/005299
【国際公開番号】WO2008/133947
【国際公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(509294243)スワプソル・コーポレイション (2)
【Fターム(参考)】