説明

炭素質構造体及びその製造方法

【課題】、熱伝導性能の高い炭素を主体とする基材であり、しかも原料を成形加工することによって任意の形状に賦形でき、かつ家庭用電磁誘導加熱式調理器で用いられるような一般的な出力の電磁誘導加熱により容易に発熱させることが可能な、炭素質組成物を提供する。
【解決手段】熱硬化性樹脂(好ましくは、ディスクキュアー法で測定した熱流動性が100〜190mmのフェノール樹脂)30〜70質量部と、広角X線回折により求めた結晶子サイズLa及び/又はLcが600Å以上である炭素材(好ましくは平均一次粒子径が10μm〜100μmの黒鉛粉末)70〜30質量部からなる樹脂組成物を成形加工し、その後、真空又は不活性ガス雰囲気中、800℃〜1800℃で炭化焼成して得られる炭素質構造体であって、電磁誘導加熱性能を有することを特徴とする炭素質構造体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形加工により目的とする構造体を得ることが可能であり、かつ、電磁誘導加熱可能な炭素質構造体及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電磁誘導加熱とは、インバータ回路から基材へ供給された高周波電流により、高周波磁界が発生し励磁されることで渦電流が誘起され、この渦電流と基材の持つ抵抗によって、ジュール熱が発生し基材が発熱することである。この性質を利用して、各種加熱装置に応用されている。一般的に、磁性金属材料が電磁誘導加熱に適した材料であり、それらの材料を使用した調理具や工業用熱処理装置への応用が使用例として挙げられる。
【0003】
近年、電磁誘導加熱装置の高機能化として、従来の調理具の基材である磁性金属材料に代えて炭素質材料を使用することによって調理具の熱伝導性能を高め、均一加熱をはじめとする調理性能を向上させることが提案されている。(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
量産性を考慮して、切削加工工程を経由することなく、炭素質の成形体を得る方法としては、熱硬化性樹脂をトランスファー成形、押出成形、射出成形、射出圧縮成形などの方法によって任意の形状に賦形し、得られる賦形物を焼成してガラス状炭素質の成形体を得る方法がある(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
また、黒鉛を含有する材料を任意の形状に賦形する方法としては、熱硬化性樹脂と黒鉛とを混練し、任意の形状に賦形し、成形体を得る方法がある(例えば、特許文献3及び4を参照)。
【特許文献1】特開平9−75211号公報
【特許文献2】特開平7−53260号公報
【特許文献3】特公平01−000340号公報
【特許文献4】特許第3296801号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の電磁誘導加熱調理器は、調理具の基材に炭素を主体とする焼結体を用いているので、熱伝導性や励磁の容易性、耐腐食性などを勘案した複数種の金属を複合化したクラッド材を用いることなく、単一種の材料のみで構成することが可能になる。炭素焼結体の製造工程は、例えば、石油コークスや石炭コークスからなる原料を粉砕したのち、結合剤などと共に混練し、CIP成形、型込成形、押出成形などの方法によってブロック状に成形したものを1次焼成により炭素質材料、続く2次焼成により黒鉛化し、この黒鉛化材料を切削加工するようなものであるが、切削加工工程を経由することから高コストであり、量産性に乏しいという問題があった。
【0007】
熱硬化性樹脂をトランスファー成形、押出成形、射出成形、射出圧縮成形などの方法によって任意の形状に賦形し、得られる賦形物を焼成して得られるガラス状炭素質は、電磁誘導加熱が困難である。
【0008】
熱硬化性樹脂と黒鉛とを混練し、任意の形状に賦形した成形体は電磁誘導加熱が困難である。
【0009】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、熱伝導性能の高い炭素を主体とする基材であり、しかも原料を成形加工することによって任意の形状に賦形でき、かつ家庭用電磁誘導加熱式調理器で用いられるような一般的な出力の電磁誘導加熱により容易に発熱させることが可能な、炭素質組成物を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、熱硬化性樹脂と特定の炭素材からなる組成物を成形加工し、これを焼成することによって上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明の第一は、熱硬化性樹脂30〜70質量部と、広角X線回折により求めた結晶子サイズLa及び/又はLcが600Å以上である炭素材70〜30質量部からなる樹脂組成物を成形加工し、その後、真空又は不活性ガス雰囲気中、800℃〜1800℃で炭化焼成して得られる炭素質構造体であって、電磁誘導加熱性能を有することを特徴とする炭素質構造体を要旨とするものであり、好ましくは、炭素材が、平均一次粒子径が10μm〜100μmの黒鉛粉末であるものであり、また、好ましくは、熱硬化性樹脂が、ディスクキュアー法で測定した熱流動性が100〜190mmのフェノール樹脂であるものであり、また、好ましくは、体積固有抵抗値が3.0mΩcm以下であるものである。
【0012】
本発明の第二は、熱硬化性樹脂30〜70質量部と、広角X線回折により求めた結晶子サイズLa及び/又はLcが600Å以上である炭素材70〜30質量部からなる樹脂組成物を成形加工し、その後、真空又は不活性ガス雰囲気中、800℃〜1800℃で炭化焼成して、電磁誘導加熱性能を有する炭素質構造体を得ることを特徴とする炭素質構造体の製造方法を要旨とするものである。
【0013】
本発明の第三は、上記した本発明の第一の炭素質構造体からなることを特徴とする炊飯器用釜を要旨とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、原料を射出成形することによって量産性良く任意の形状に賦形でき、かつ家庭用電磁誘導加熱式調理器で用いられるような一般的な出力の電磁誘導加熱により容易に発熱させることが可能な、電磁誘導加熱用炭素質組成物が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明について詳細に説明する。本発明は、熱硬化性樹脂と一定の炭素材からなる組成物を成形加工し、その後、炭化焼成したものであって、電磁誘導加熱性能を有する炭素質構造体である。熱硬化性樹脂を炭化焼成することにより得られる炭素材のみでは、電磁誘導加熱することが困難であるため、電磁誘導加熱性能を有する黒鉛材などの一定の炭素材を炭素質組成物中に含有させることで、目的とする性能を発現させることができるものである。
【0016】
本発明に用いられる熱硬化性樹脂は、溶融成形等で目的とした形状を作成した後、加熱することで熱硬化反応が進行し、加熱溶融しなくなる樹脂のことであり、例えば、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、カルボジイミド樹脂、フルフリルアルコール樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等、これらの共重合体や混合物が使用でき、1種類の熱硬化性樹脂であってもよいし、主成分の熱硬化性樹脂以外にその特性を損なわない範囲で異種の樹脂を組み合わせた2種類以上の熱硬化性樹脂の混合物であっても構わない。また、主成分の樹脂に混合される樹脂はそれら熱硬化性樹脂の低分子量物でも構わないし、加工性や成形性等を改良する目的での添加剤を含有していても構わない。上記樹脂の中で、フェノール樹脂は、成形用材料として工業的に生産されているため入手しやすく、また、焼成炭化による炭素含有率が高いため好ましい。フェノール樹脂には、レゾール型とノボラック型があり、レゾール型は加熱による自己硬化反応を起すが、ノボラック型の場合は、硬化剤を含有させることが必要であり、硬化剤の例としては、ヘキサメチレンテトラミン(ヘキサミン)がある。また、目的に合った硬化速度を発現させる為に、硬化促進剤を添加することも可能である。
【0017】
フェノール樹脂の場合、JIS K 6911の方法に従ったディスクキュアー法で測定した熱流動性が100〜190mmであることが好ましい。これは、溶融成形時における樹脂の流動性を示す指標である。熱流動性が前記下限値未満であると、成形時に十分な流動性が確保できず、精密な形状を成形することが難しくなることがある。また、熱流動性が前記上限値を超えると、成形時に金型内への充填が充分に出来なくなくことから気泡の発生やヒケなどの問題が発生し易く、また、バリの発生が顕著となり目的とする成形品を得ることが難しくなることがある。
【0018】
本発明に用いられる炭素材としては、導電性の優れているものが好ましく用いられる。具体的には黒鉛の結晶構造が発達したものであり、天然や人造の黒鉛がこれに該当する。天然に産出する鉱物としての黒鉛は、特に限定されないが、例えば、天然黒鉛と称される鱗片状の黒鉛や土壌黒鉛等が挙げられ、これらは、一般的に、導電性に優れている。また、人造黒鉛は特に限定されないが、例えば、石炭系コークスを熱処理したものと石油系コークスを熱処理したもの等があり、形状は鱗状、針状、塊状、球状、凝集体等がある。
【0019】
本発明に用いられる上記のような炭素材は、広角X線回折により求めた結晶子サイズLa及びLcの少なくともどちらか一方が600Å以上であることが必要である。結晶子サイズLa及びLcのいずれもが600Å未満となるような炭素材では、炭素材の結晶子間の導電パスが寸断され易く、炭素材単体の体積抵抗が増大するため、渦電流が誘起され難くなり、たとえ炭素材を高充填しても、得られる炭素質構造体は電磁誘導加熱特性を得ることが困難になる。
【0020】
炭素材の粒径に関しては、10μm〜100μmが好ましい。粒径が前記下限値未満であると、得られる炭素質構造体中における黒鉛粒子間の導電パスが寸断され易くなり、体積抵抗が増大するため、電磁誘導加熱特性を得ることが困難になる。一方、前記上限値を超えると結晶構造の発達が顕著で、成形時に配向し易く、また黒鉛の結晶面間の層剥離(劈開)を生じやすいため、成形品の機械的強度の低下を招くほか、焼成炭化後の炭素質構造体の外観の劣化及び機械的強度の低下を引き起こす恐れがある。
【0021】
本発明の炭素質構造体を製造するには、まず、上記した熱硬化性樹脂を30〜70質量部、好ましくは30〜50質量部と、上記した炭素材を70〜30質量部、好ましくは70〜50質量部からなる樹脂組成物を成形加工することが必要である。熱硬化性樹脂の含有量が前記下限値未満であるか、炭素材の含有量が前記上限値を超えると、成形時に十分な流動性が確保できず、精密な形状を成形することが難しくなることがある。これは樹脂量が相対的に少なく、黒鉛粒子間を充填するにはその体積が不充分であるためであり、この結果成形品の機械的強度にも影響することがある。
【0022】
一方、熱硬化性樹脂の含有量が前記上限値を越えるか、炭素材の含有量が前記下限値未満であると、成形品の導電性が低下し、実用に適した電磁誘導加熱特性が得難くなる。これは樹脂体積が増えることで電磁誘導加熱の性能を発現する黒鉛材の含有量が少なくなるため、得られる炭素質構造体が目的とする性能を発現しなくなるためである。
【0023】
また、前記成形前組成物には、焼成炭化後の炭素質構造体の特性を損なわない範囲で他の炭素材、無機材料、焼成により炭化する材料などを併せて用いることもできる。このようなものとしては特に限定されないが、例えば、炭素繊維やカーボンブラック、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、フラーレン、木粉、セルロース粒子、熱硬化性樹脂硬化物などが挙げられる。炭素繊維やカーボンブラックは、樹脂組成物中の樹脂相内に分散して導電助剤として機能すると共に、炭素繊維の場合はその形状により、曲げ強さや靭性などの機械的特性を改善する効果があり、これらを必要に応じて配合することができる。
【0024】
成形前の樹脂組成物は、通常の方法により混練することができる。すなわち、前記原材料を所定量配合し、リボンブレンダーやプラネタリミキサーなどを用いて予備混合した後、80℃〜110℃の加熱ロールや二軸混練機を用いて溶融混練し、これをさらに造粒化するか、冷却後粉砕・分級などの操作を経て成形用材料とすることができる。
【0025】
前記の成形前の樹脂組成物の成形方法は特に限定されず、射出成形、加圧成形、トランスファー成形などが適応できる。その中でも射出成形法が成形時間の短縮が可能であることから最も好ましい。熱硬化性樹脂組成物の射出成形は工業的に確立された成形技術であり、精密な成形が可能であり、本発明の目的とする構造体を得る方法として適応可能である。また、所望に応じて、成形加工時の改良剤である高級脂肪酸や高級脂肪酸金属塩等の加工助剤や離型剤、熱硬化性樹脂用架橋促進剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤等、必要に応じて架橋剤を用いることが可能である。
【0026】
本発明の炭素質構造体を得るためには、上述のように成形加工した樹脂組成物に対して炭化焼成を行うことが必要である。炭化焼成は、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下、もしくは真空または減圧雰囲気下の無酸素雰囲気下で温度800〜1800℃で炭化焼成することが好ましい。800℃未満の温度での焼成では、熱硬化性樹脂成分が充分に炭化することができないため、導電性などの特性が十分に発現しない。一方、1800℃を超える温度を適応させても得られる炭素質構造体の特性に大きな変化は生じない。製造時におけるエネルギーを有効に活用する観点から、さらに好ましい炭化焼成温度は1000〜1500℃である。また、その炭化過程において熱硬化性樹脂成分の体積収縮によって、成形体の寸法収縮が起こるため、成形加工時には焼成後寸法を見込んだ寸法の成形体を製造する必要がある。なお、本発明に用いられる炭素質組成物のサイズは特に限定されるものではなく目的に応じて設計変更できるものである。炭化焼成に際しては、黒鉛粉、コークス、C/Cコンポジット材料、セラミックス材料などの埋め粉を使用しても良い。
【0027】
また、炭化焼成期間中においては昇温速度をコントロールすることが好ましい。熱硬化性樹脂成分の種類やその含有比率により、焼成温度に対する炭化焼成時の体積収縮率は一定でない。例えば、熱硬化性樹脂成分としてフェノール樹脂を用いた場合、炭化焼成温度が400〜600℃の範囲においてガスの発生が多く、この温度範囲における重量減少、および体積収縮が他の温度範囲におけるそれよりも大きくなるため、この温度範囲において昇温速度が速いと対象物にクラックが発生しやすい。このため、400〜600℃の範囲における昇温速度を他の温度範囲における昇温速度に比べて低くすることにより、すなわち、400〜600℃の範囲の重量減少速度、及び体積収縮速度を小さくすることにより、クラックの発生を防止することが可能となる。焼成対象品の厚みとその割れとの関係について説明すると、割れの発生を防止するためには、対象品の厚みが厚くなるにしたがって昇温速度を低く、すなわち、トータルの焼成期間を長くすることが必要である。
【0028】
一般的に熱硬化性樹脂の硬化物を炭化焼成すると、ガラス状炭素が得られる。ガラス状炭素とは、外観が黒色、かつ、ガラス状で、破面も光沢ある貝殻状を示す硬質で非晶質の炭素であり、非常に均質ならびに緻密な構造を有する。この材料は、一般的な炭素材料の特徴である導電性能、化学的安定性、耐熱性、高純度等の性能に加え、材料表面が粉化し脱落することがないという優れた特徴を有する。ガラス状炭素の一般的な特性としては、密度が1.45〜1.60g/cmと軽量であり、かつ曲げ強度は50〜200MPaと高強度であり、硫酸や塩酸などの酸に強く耐食性がある。導電性は比電気抵抗が4〜20mΩcmであり黒鉛と比べるとやや高い値を示すが、ガス透過性が10−9〜10−12cm/sと非常に小さいなどの特徴がある。
【0029】
また、熱硬化性樹脂と炭素材からなる成形材料を成形加工し、炭化焼成すると、熱硬化性樹脂に由来するガラス状炭素成分と炭素材に由来する炭素材成分とからなる炭素質組成物となり、電磁誘導加熱用炭素質構造体として用いられる場合に必要な導電性を得ることができるほか、高強度、高耐食性などの特徴を併せ持つ材料となる。
【0030】
本発明の炭素質構造体は、電磁誘導加熱特性および導電性を付与することを目的として炭素材を配合する。本発明の炭素質構造体では、体積抵抗値が3.0mΩcm未満であることが好ましく、2.0mΩcm未満であることがより好ましい。体積抵抗値が前記の値を超えると、渦電流の誘起が阻害され、従来の家庭用電磁誘導加熱調理器で発熱させることが困難である。一方で、電磁誘導加熱は基材の持つ抵抗によってジュール熱を発生させるものであるので、ある程度の抵抗は必要であり、例えば銅やアルミのように抵抗が小さいと発熱しない。炭素材は銅やアルミに比べて抵抗が大きいため、抵抗が小さいことによる問題は生じない。
【実施例】
【0031】
以下に実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0032】
実施例1
JIS K6911の方法に従ったディスクキュアー法により、試料2gを160℃で1分間1145kgの荷重で熱プレスし、形成される円板の直径が150mmであるフェノール樹脂(ユニチカ社製 ユニベックスNタイプ)70重量部と、平均粒子径が30μm、結晶子サイズLaが720Å、Lcが880Åである人造黒鉛(日本黒鉛社製 PAG―5)30重量部とからなり、一般的な成形助剤を少量添加した組成物をVブレンダーでドライブレンドした後に、二軸混練機(APV社製 MP30PC)にて溶融混練して得られたものを成形材料とし、射出成形機(日精樹脂工業社製 MODEL FE80S12ASEK)を用いて120mm×120mm×2.4mmtのサイズに射出成形し、フェノール樹脂と人造黒鉛とを主成分とする組成物の成形体を得た。この成形体を真空パージ式焼成炉(光洋サーモシステム社製 GR−122412−30VS)を用いて、窒素ガス雰囲気中、最高温度1000℃で炭化焼成し、炭素質組成物の成形体を得た。得られた炭素質組成物の体積抵抗値を、抵抗測定装置(三菱化学社製 ロレスタGT)を用いて4探針法で測定した。また、炭素質組成物の電磁誘導加熱性能の評価は、家庭用電磁誘導加熱調理器(エレクトロラックス社製 EIH1628)を用い、出力レベルをミディアムとして電源投入60秒後の投入電流値を測定して行った。体積抵抗値は2.9mΩcmであり、電磁誘導加熱時の投入電流値は4.0Aであった。
【0033】
実施例2
フェノール樹脂の比率を50重量部、人造黒鉛の比率を50重量部とした以外は、実施例1と同様の操作で炭素質組成物の成形体を得た。体積抵抗値は2.0mΩcmであり、電磁誘導加熱時の投入電流値は7.5Aであった。
【0034】
実施例3
フェノール樹脂の比率を30重量部、人造黒鉛の比率を70重量部とした以外は、実施例1と同様の操作で炭素質組成物の成形体を得た。体積抵抗値は1.7mΩcmであり、電磁誘導加熱時の投入電流値は9.0Aであった。
【0035】
実施例4
人造黒鉛を、平均粒子径19μm、黒鉛結晶子サイズLaが510Å、Lcが1000Åのもの(日本黒鉛、HAG−10W)とし、フェノール樹脂の比率を50重量部、人造黒鉛の比率を50重量部とした以外は、実施例1と同様の操作で炭素質組成物の成形体を得た。体積抵抗値は2.2mΩcmであり、電磁誘導加熱時の投入電流値は5.8Aであった。
【0036】
実施例5
人造黒鉛を、平均粒子径10μm、黒鉛結晶子サイズLaが690Å、Lcが550Åのもの(日本黒鉛、LB−EX)とし、フェノール樹脂の比率を50重量部、人造黒鉛の比率を50重量部とした以外は、実施例1と同様の操作で炭素質組成物の成形体を得た。体積抵抗値は2.4mΩcmであり、電磁誘導加熱時の投入電流値は4.7Aであった。
【0037】
比較例1
フェノール樹脂の比率を10重量部、人造黒鉛の比率を90重量部とした以外は、実施例1と同様の操作を実施しようとしたところ、射出成形できなかった。
【0038】
比較例2
フェノール樹脂の比率を90重量部、人造黒鉛の比率を10重量部とした以外は、実施例1と同様の操作で炭素質組成物の成形体を得た。体積抵抗値は4.5mΩcmであった。電磁誘導加熱時の投入電流値は0Aであり、発熱しなかった。
【0039】
比較例3
人造黒鉛を、平均粒子径5μm、黒鉛結晶子サイズLaが270Å、Lcが560Åのもの(日本黒鉛、LB−SP)とし、フェノール樹脂の比率を50重量部、人造黒鉛の比率を50重量部とした以外は、実施例1と同様の操作で炭素質組成物の成形体を得た。体積抵抗値は4.0mΩcmであった。電磁誘導加熱時の投入電流値は0Aであり、発熱しなかった。
【0040】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂30〜70質量部と、広角X線回折により求めた結晶子サイズLa及び/又はLcが600Å以上である炭素材70〜30質量部からなる樹脂組成物を成形加工し、その後、真空又は不活性ガス雰囲気中、800℃〜1800℃で炭化焼成して得られる炭素質構造体であって、電磁誘導加熱性能を有することを特徴とする炭素質構造体。
【請求項2】
炭素材が、平均一次粒子径が10μm〜100μmの黒鉛粉末である請求項1記載の炭素質構造体。
【請求項3】
熱硬化性樹脂が、ディスクキュアー法で測定した熱流動性が100〜190mmのフェノール樹脂である請求項1又は2記載の炭素質構造体。
【請求項4】
体積固有抵抗値が3.0mΩcm以下である請求項1〜3のいずれかに記載の炭素質構造体。
【請求項5】
熱硬化性樹脂30〜70質量部と、広角X線回折により求めた結晶子サイズLa及び/又はLcが600Å以上である炭素材70〜30質量部からなる樹脂組成物を成形加工し、その後、真空又は不活性ガス雰囲気中、800℃〜1800℃で炭化焼成して、電磁誘導加熱性能を有する炭素質構造体を得ることを特徴とする炭素質構造体の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の炭素質構造体からなることを特徴とする炊飯器用釜。


【公開番号】特開2009−242176(P2009−242176A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−91577(P2008−91577)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】