点火コイル、及び、点火コイルの製造方法
【課題】コイルケースの設計変更を最小限に抑え得る点火コイルの提供をする。
【効果】本発明の点火コイル100によると、本体部101の製造工程後にフランジ部13を当該本体部101へ固着させる固着工程が実施されるので、固定用ボスの位置に関わらず、本体部101を先行して製造させることが可能となる。また、フランジ部13の変更モデルが適宜に準備されることにより、適切な形状のフランジ部の選択が可能となり、締結位置の様々な変更形態に対応することが可能となる。
【効果】本発明の点火コイル100によると、本体部101の製造工程後にフランジ部13を当該本体部101へ固着させる固着工程が実施されるので、固定用ボスの位置に関わらず、本体部101を先行して製造させることが可能となる。また、フランジ部13の変更モデルが適宜に準備されることにより、適切な形状のフランジ部の選択が可能となり、締結位置の様々な変更形態に対応することが可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関に用いられる点火コイル及び其の製造方法に関し、特に、コイルケースの設計変更を最小限に抑える最に用いて好適のものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車等に搭載される内燃機関は、複数のプラグホールへ点火コイルが各々挿入され、プラグホールの底部に設けられた点火プラグへ当該点火コイルの各々が接続されている。点火コイルは、入力された電圧を昇圧させ、かかる昇圧電圧を点火プラグへ印加させることにより、点火プラグを放電させ、これにより、内燃機関では、シリンダ内の混合ガスが燃焼され、クランクシャフトに駆動トルクが発生する。
【0003】
例えば、特開2007−242763号公報(特許文献1)では、内燃機関に設けられる点火コイルの一例が紹介されている。かかる点火コイルは、収納ケース(特許請求の範囲におけるコイルケース)とプラグジョイント(実施の形態における高圧タワー)と下部ソケット(実施の形態におけるプラグキャップ)とから構成される。このうち収納ケースは、一次コイル及び二次コイル及び鉄心から成るコイルアッセンブリを収納させている。また、収納ケースは、電力の供給を受けるコネクタハウジング(実施の形態におけるコネクタ部)と昇圧電位を出力させる高圧端子部とボルト穴を具備する取付部(特許請求の範囲におけるフランジ部)とが一体的に形成されている。収納ケースは、プラグジョイント及び下部ソケットがプラグホールへ挿通されると、コイルアセンブリを収容させる壁面がプラグホールの開口面に当接される。そして、収納部の取付部をボルト等の締結具で内燃機関に固定させることにより、点火コイルは、当該内燃機関に固定されることとなる。
【0004】
また、特開2002−329621号公報(特許文献2)では、コイルアッセンブリをプラグホール内へ収容させる所謂ペン型点火コイルが紹介されている。かかる点火コイルにあっても、コイルケースは、コイルアセンブリを収容させるハウジング部とコネクタ部とフランジ部とが一体的に形成されており、締結具でフランジ部を内燃機関に固定させることにより、点火コイルの全体を当該内燃機関へ固定させる。
【0005】
更に、特開平10−326717号公報(特許文献3)では、上述したペン型点火コイルの改変例が紹介されている。かかる点火コイルに用いられるコイルケースは、コイルアセンブリを収容させる外装ケースと、イグナイタを収容させ且つコネクタを配させる回路ケースとが独立して成形される。そして、当該コイルケースは、外装ケースと回路ケースとが互いに溶着されることで一体化され、回路ケースと供に一体的に形成されたフランジ部によって内燃機関へ固定される。尚、特開平10−326717号公報で記されるコイルケースの語意は、外装ケースを指し、特許請求の範囲におけるコイルケースと一致する意味として用いられていない。
【0006】
特開平7−208312号公報(特許文献4)では、特許文献1で説明したタイプにおける点火装置の改変例が示されている。かかる点火装置(特許請求の範囲における点火コイル)は、コイルケースのフランジ部が設けられたボルト穴を楕円形状とさせ、締結ボルトに対してボルト穴をスライドさせることにより、点火装置を配置させる際、内燃機関に対する位置調整が可能とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−242763号公報
【特許文献2】特開2002−329621号公報
【特許文献3】特開平10−326717号公報
【特許文献4】特開平7−208312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1又は特許文献2の技術では、フランジ部がコイルケースに一体的に成形されるため、プラグホールの開口位置に対する締結具の配置位置が変更されると、この度毎にコイルケースの設計変更が要求され、設計作業及び製造工程の煩雑化、在庫管理の複雑化を招いてしまうとの問題が生じる。特に、締結具の配置位置は、内燃機関の型式が異なると、これに応じて変更される場合が多い。また、同一の内燃機関に点火コイルを装着させる場合であっても、シリンダのレイアウトによっては、締結具の配置位置が対称形の位置へ変更される場合も有る。
【0009】
また、特許文献3の技術では、フランジ部が回路ケースに一体的に成形されているため、外装ケースと回路ケースとを溶着させ、又は、コイルケースの内部に絶縁樹脂を充填させてしまうと、その後の工程で、フランジ部の形状を変更することができなくなるとの問題が生じる。また、特許文献3の技術で製造される点火コイルは、少なくとも絶縁樹脂の充填工程後においてフランジ部の形状を変更できないので、上述同様、製造工程の煩雑化、在庫管理の複雑化を招いてしまう。
【0010】
更に、特許文献4の技術に係る点火コイルは、数mm程度の調整を実現させるものであるため、プラグホールの開口位置に対する締結具の配置位置が大きく変更されてしまうと、ボルト穴の調整範囲を超えてしまい、締結具による内燃機関への固定ができなくなるとの問題が生じる。
【0011】
加えて、かかる締結具の配置位置の変更に備えてフランジ部を複数個所に成形させておくことも考えられる。しかし、当該締結具の配置位置の変更は多種多様の形態で実施されるため、かかる点火コイルは、コイルケースにフランジ部が複数設けられても、殆どの変更態様に対応できるものでは無い。また、コイルケースに複数のフランジ部を成形させると、プラグホールの開口面におけるレイアウト上の制約、又は、コストの高騰を招くとの問題が生じる。
【0012】
本発明は上記課題に鑑み、コイルケースの設計変更を最小限に抑え得る点火コイルの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明では次のような点火コイル(第1の発明)の構成とする。即ち、印加された入力電圧を昇圧させるコイルアセンブリと、前記コイルアセンブリを格納させるコイルケースと、内燃機関へ固定されるフランジ部とを備え、前記フランジ部は、前記コイルケースに固着され、当該コイルケースと一体的に前記内燃機関へ固定されることとする。
【0014】
第1の発明の場合、前記フランジ部は、予め準備された複数種類の変更モデルのうちから用いられるのが好ましい。
【0015】
また、本発明では次のような点火コイル(第2の発明)の構成としても良い。即ち、印加された入力電圧を昇圧させるコイルアセンブリと、前記コイルアセンブリを格納させるコイルケースと、内燃機関へ固定されるフランジ部とを備え、前記フランジ部は、前記コイルケースに係止され、当該コイルケースと一体的に前記内燃機関へ固定されることとする。
【0016】
更に、本発明では次のような点火コイル(第3の発明)の構成としても良い。即ち、印加された入力電圧を昇圧させるコイルアセンブリと、前記コイルアセンブリを格納させるコイルケースと、内燃機関へ固定されるフランジ部とを備え、
前記フランジ部は、前記コイルケースに係止及び固着され、当該コイルケースと一体的に前記内燃機関へ固定されることとする。
【0017】
第2の発明または第3の発明の場合、前記コイルケースは、前記フランジを係止させるケース側係止部を少なくとも1つ有することとしても良く、この他、前記フランジ部は、前記コイルケースに係止されるためのフランジ側係止部を有することとしても良い。
【0018】
また、第2の発明または第3の発明の場合、前記コイルケースは、前記フランジ部に設けられたフランジ側係止部に係合するケース側係止部を少なくとも1つ有し、前記コイルケース及び前記フランジ部は、前記ケース側係止部と前記フランジ側係止部とを係合させることにより、互いに係止されることとしても良い。
【0019】
このとき、好ましくは、前記コイルケースは前記ケース側係止部を複数個所に有し、前記フランジ部は複数設けられた前記ケース側係止部のうちから選択的に定められた所定のケース側係止部へ係止されることとする。
【0020】
更に、第2の発明または第3の発明の場合、前記フランジ部は、予め準備された複数種類の変更モデルのうちから用いられるものであって、前記変更モデルの各々は、前記フランジ側係止部の形状が共通していることとするのが好ましい。
【0021】
また、本発明では次のような点火コイルの製造方法とする。即ち、前記コイルケースの内部に形成された隙間部に絶縁樹脂を含浸させ、前記フランジ部を除く本体部を完成させる第1の工程と、前記本体部のコイルケースに前記フランジ部を係止及び/又は固着させる第2の工程と、を順に実施させることとする。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る点火コイルによると、コイルケースとフランジ部とが互いに独立して製作されるので、締結具の配置位置の変更が生じても、コイルケースの設計変更を伴わずに、当該コイルケースを製造することが可能となる。また、コイルケースの変更種類が少なくなるので、製造工程の簡素化、在庫管理の簡素化が図られる。
【0023】
本発明に係る点火コイルの製造方法によると、フランジ部を除く本体部が第1の工程で完成され、その後の第2の工程で、所望のフランジが本体部へ取り付けられることとなる。従って、締結具の配置位置の変更と無関係に本体部を製造することが可能となり、コイルケースに係る設計変更の頻度を格段に低減させ、これにより、製造工程及び在庫管理の簡素化が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本実施の形態に係る点火コイルの構成を示す図
【図2】実施例1に係るフランジ部の構成を示す図
【図3】超音波溶接の工程を示す図
【図4】実施例1に係る点火コイルの完成品を示す図
【図5】実施例1に係る点火コイルの変形例を示す図
【図6】実施例1に係る点火コイルの変形例を示す図
【図7】実施例2に係る点火コイルを示す図
【図8】実施例2に係る点火コイルを示す図
【図9】超音波溶接の工程を示す図
【図10】実施例3に係る点火コイルを示す図
【図11】実施例4に係る点火コイルを示す図
【図12】実施例4に係る点火コイルの変形例を示す図
【図13】実施例4に係る点火コイルの変形例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る実施の形態につき図面を参照して説明する。図1(a)に示す如く、点火コイル100の本体部101は、コイルケース10とコイルアセンブリ20とイグナイタ30とコネクタ部40とから構成される。
【0026】
コイルアセンブリ20は、コイル部21と鉄心22とから構成されている。このうちコイル部21は、一次巻線を巻回させた一次スプールと、二次巻線を巻回させた二次スプールとから成り、二次スプールの端部には、イグナイタ30を固定させる固定部が形成されている。鉄心は、珪素鋼板の積層体であって、四角形又は日の字形を呈している。当該鉄心は、コイルアセンブリ20へ収容される部分にコイル部21が挿入されている。かかるコイルアセンブリ20は、一次巻線に入力電圧が供給されると、磁束の変動を生じさせ、二次コイルでは、当該磁束の変動に応じて入力電圧が昇圧され、二次巻線の接点にて昇圧電圧を印加させる。
【0027】
イグナイタ30は、パワースイッチング素子及び制御回路をモールドさせたパッケージとされ、当該回路に通電される複数の端子が設けられている。イグナイタ30では、入力信号を受信すると、これに応じてバッテリの電力を断続させ、コイルアセンブリ20へ断続的な電力を供給させる。また、イグナイタ30には、コイルアセンブリ20から戻された電力をグランドに接地させる端子が設けられている。
【0028】
コネクタ部40は、絶縁性の熱可塑性樹脂から成り、開口部を有する矩形状のハウジング部と、コイルアセンブリ20へ固定される被固定部とが形成されている。当該コネクタ部40は、ハウジング部内に複数の端子を配し、当該複数の端子は、イグナイタ30の端子に接続されるように配線されている。かかるコネクタ部40は、本実施の形態にあっては、ハーネスを介してECU(Engine Control Unit)と接続され、バッテリの入力電圧が供給され、また、ECUで生成された駆動信号が入力される。
【0029】
コイルケース10は、絶縁性の熱可塑性樹脂から成り、具体的には、PPS(Poly Phenylene Sulfide)又はPBT(Poly Buthylene Terephthalete)等から組成される。当該コイルケース10は、図示の如く、コイルアセンブリ20を格納させる収容部11と、昇圧電圧を出力させる高電圧端子部12とが主構成要素とされる。
【0030】
収容部11は、略直方体とされ、当該直方体の一方の面Dに大きな開口が形成され、他方の面Bに小型の角状孔が形成されている。かかる収容部11は、コイルアセンブリ20とイグナイタ30とを面Dから収容部の内部へと格納させ、面Bの角状孔に鉄心22の一辺が挿通される。また、かかるコイルアセンブリ20の固定部には、コネクタ部40の被固定部が嵌着される。更に、収容部11には、一次スプールとコイルケースの壁面との間にイグナイタ30が配置され、コネクタ部40とイグナイタ30とに配された端子が溶接され、電気的に接続された状態とされる。そして、収容部11には、これらの部品によって形成された隙間部に、絶縁性の熱硬化性樹脂が含浸される。
【0031】
高圧端子部12は、端部に開口を有する筒状体とされ、収容部11と一体的に成形される。かかる高圧端子12の内部には金属端子が収容され、当該金属端子には、二次巻線の一端が導通され、コイルアセンブリ20で発生した昇圧電圧が印加される。また、高圧端子部12の外壁には、爪状体が形成されており、図1(b)に示す如く、高圧タワー50が嵌着される。
【0032】
尚、当該コイルケース10では、従来例にて説明したフランジ部は一体的に形成されていない。かかるフランジ部は、締結具の配置位置に合わせて個別的に取り付けられる。従って、コイルケース10は、自動車の規格、締結具(締結ボルト)の配置位置に関わりなく、必要な本数に応じて自由に製造することが可能となる。
【0033】
高圧タワー50は、外装が絶縁性材から成り、図示されない内部に昇圧電圧を伝達させる金属製の導通材が配されている。高圧タワー50がプラグホール内に挿入されると、外装の端部が点火プラグの頭部を把持すると供に、導通材の端部が点火プラグへ電気的に接続される。
【0034】
また、高圧タワー50の下端部には、図示の如く、プラグキャップ70が取り付けられる。かかるプラグキャップ70は、振動を吸収する弾性体から成り、高圧タワー50と点火プラグとの導通状態を維持させる。
【0035】
かかる構成を具備する本体部101では、ECUからの駆動信号を受信すると、車載バッテリの入力電圧を断続的にコイルアセンブリ20へ供給させる。このとき、コイルアセンブリ20では、当該入力電圧に基づいて昇圧電圧を発生させ、高圧端子部12から当該昇圧電圧を出力させる。その後、当該昇圧電圧は、高圧タワー50を介して点火プラグへ供給され、シリンダ内のプラグギャップを放電させる。
【0036】
上述の如く、本実施の形態に係る点火コイル100によると、コイルケース10とフランジ部13とが互いに独立して製作されるので、締結具の配置位置の変更が生じても、コイルケースの設計変更を伴わずに、当該コイルケースを製造することが可能となる。また、コイルケースの変更種類が少なくなるので、製造工程の簡素化、在庫管理の簡素化が図られる。
【実施例1】
【0037】
図2には、本実施の形態に係るフランジ部が示されている。かかるフランジ部13は、上述したコイルケース10とは独立して成形され、胴体部13aに孔部13bが形成されている。このうち胴体部13aは、コイルケース10と同一の材質で組成され、略板状体とされている。胴体部13aのケース当接面13cは、コイルケース10との当接面の形状に合わせて形状が定められ、例えば、図2(a)ではフラット面のケースに当接される場合が示されており、図2(b)では曲面のケースに当接される場合が示されている。
【0038】
孔部13bは、ボルトの軸を挿通させる孔径とされ、所定の嵌合寸法となるように加工されている。また、当該孔部13bは、圧縮強度の大きい補強材を埋設させるのが好ましく、これにより、フランジ部13の胴体部13aは、締結ボルトの締め付け圧力から保護される。かかる補強材は、主としてアルミ等の金属材料が用いられ、締結ボルトからの圧力に応じて有効断面積が画定される。
【0039】
図3には、超音波溶接を用いた固着工程(特許請求の範囲における第2の工程)が示されている。尚、同図では、本体部101を図1における矢線Xの方向に観察した状態が示されている。
【0040】
図示の如く、超音波溶接機500は、テーブル上に金型501〜503を適宜に配している。かかる金型501〜503は、本体部101を図示の如く固定把持する形状に形成されている。また、金型502及び503は、互いに組合された際に、フランジ部13を挿通させるガイド孔を形成させる。
【0041】
当該ガイド孔の上部には、ホーン505とブースタ504とが配置されている。当該ホーン505は、振動を発生させる振動子が内部に収容されており、超音波溶接機500の本体から信号を受けると、数十Khz程度の振動を発生させる。
【0042】
また、ホーン505の下部にはブースタ504が接続されている。当該ブースタ504は、ホーン505から受けた振動を適宜の状態に調整させ、被固着体とされるフランジ部13へ振動を伝達させる。
【0043】
かかる超音波溶接機500では、本体部101が金型501〜503の中へ組み込まれると、金型502及び503で形成されたガイド孔にフランジ部13を投入させる。その後、ホーン505を把持するアームが鉛直下方にスライドされ、図示の如く、フランジ13の露出面にブースタ504が当接される。更に後、超音波溶接機本体から信号が出力されると、ホーン505は、振動を発生させ、ブースタ504を介してフランジ部13を高周波振動させる。このとき、フランジ部13とコイルケース10との当接面では、高周波振動によって急激な発熱が発生し、互いの当接面が溶解する。このとき、双方の材質は同一であるので、フランジ部13は、溶解した当接面にて分子結合され、振動が停止すると本体部101のコイルケースに固着されることとなる。
【0044】
尚、本実施例では、超音波溶接機500を用いてフランジ部13をコイルケース10に固着させることとしているが、特許請求の範囲に係る固着方法は、かかる方法に限定されるものではない。当該固着方法は、例えば、接着剤によってフランジ部13をコイルケース10に固着させても良く、超音波溶接法以外の摩擦溶接法又は熱溶接法を用いて双方を固着させても良い。
【0045】
図4(a)には、上述した工程を経て完成した点火コイル100が示されている。かかる点火コイル100は、図示の如く、フランジ部13がコイルケース10の側面から突出した状態にて固着されている。また、同図では、高圧タワー50にレインカバー60が嵌め込まれている。尚、かかるレインカバー60は、弾性材料が用いられている。
【0046】
図4(b)には、かかる点火コイルをエンジン(内燃機関)へ固定させた状態が示されている。図示の如く、エンジン200は、エンジンブロック202の上方にエンジンヘッド201が配置されている。エンジン200は、ピストンを摺動させるシリンダ(図示なし)が形成され、混合ガスを吸気させる吸気バルブ及び燃焼ガスを排気させる排気バルブが適所にレイアウトされている。また、当該エンジンにはプラグホール202aが形成され、当該プラグホール202aの底部には、プラグギャップをシリンダ内に露出させるように点火プラグが固定されている。エンジンヘッド201は、図示されないカム構造を収容させ、上述した吸気バルブ及び排気バルブを適宜に駆動させる。当該エンジンヘッド201には、エンジンブロックのプラグホール202aと同軸的に当該エンジンヘッド側のプラグホール201aが形成されている。また、エンジンヘッド201の上端側には、固定用ボス201bがエンジンヘッド201と一体的に形成されている。かかる固定用ボス201bには、図示の如く、締結ボルト80を螺着させる雌ネジタップが形成されている。
【0047】
図示の如く、点火コイル100は、高圧タワー50及びプラグキャップ70がプラグホールへ挿通されると、レインカバー60によってプラグホール201aの開口部がシールされる。また、点火コイル200のフランジ部13は、エンジンヘッド201の固定用ボス201aに当接され、締結ボルト80によってエンジン200に固定される。このとき、フランジ部13は、点火コイル100のコイルケース10に固着されているので、コイルケース10は、フランジ部13と一体的に内燃機関200へ固定される。
【0048】
上述の如く、本実施例に係る点火コイル100の製造方法によると、本体部101の製造工程後(特許請求の範囲における第1の工程)にフランジ部13を当該本体部101へ固着させる固着工程(特許請求の範囲における第2の工程)が実施されるので、固定用ボスの位置に関わらず、本体部101を先行して製造させることが可能となる。また、締結具の配置位置の変更と無関係に本体部を製造することが可能となるので、コイルケースに係る設計変更の頻度を格段に低減させ、これにより、製造工程及び在庫管理の簡素化が図られる。
【0049】
図5には、本実施例に係るフランジ部の種々の取付け例が示されている。尚、同図では、図4における矢線Yの方向から点火コイルの頭部を観察した状態が示されている。
【0050】
図5(a)に示す如く、実線で示されるフランジ部13は、図3で示される金型を用いた場合の取付け例であって、当該フランジ部13が側面Aにレイアウトされる。しかし、本実施例では、フランジ部13とコイルケース10との当接面を変更させることにより、フランジ部13を点火コイル100の側面B又は側面Cに固着させることが可能となる。特に、超音波溶接機を用いる場合、金型の形状を変更させることにより、フランジ部13を点火コイル100の側面B又は側面Cに固着させることが可能となる。
【0051】
図5(b)には、点火コイルの側面Cにフランジ部13を固着させた状態が示されている。図示の如く、フランジ部13は、当接面13cを点火コイル100に対して水平方向Fsに移動させることで、水平方向Fsの固着位置を自由に設定することが可能となる。また、これに限らず、フランジ部13と点火コイル100との固着位置は、プラグホールの軸心に平行な鉛直方向への調整も可能である。
【0052】
尚、コイルケース10と独立して製作されるフランジ部13は、予め準備された変更モデルの中から選択的に用いることとするのが好ましい。例えば、フランジ部13は、図6に示す如く、変更モデル13a及び変更モデル13b及び変更モデル13cが準備されていることとする。このとき、図6(a)に示す如く、締結ボルト80の締結位置がコイルケース10から距離d1だけ離れている場合、点火コイル100は、本体部101に変更モデル13aを用いて製造されると良い。また、何らかの理由で締結位置が距離d2の位置へ変更された場合、点火コイル100は、本体部101に変更モデル13bを用いて製造されると良い。
【0053】
また、図6(b)に示す如く、水平方向Fsの基準位置paに締結ボルト80の締結位置が有る場合、点火コイル100は、本体部101に変更モデル13aを用いて製造されると良い。更に、基準位置paから水平方向Fsへ移動した地点pbに締結位置が有る場合、点火コイル100は、本体部101に変更モデル13cを用いて製造されると良い。
【0054】
上述の如く、本実施例に係る点火コイル100によると、フランジ部13の変更モデルが適宜に準備されることにより、適切な形状のフランジ部の選択が可能となり、締結位置の様々な変更形態に対応することが可能となる。
【実施例2】
【0055】
図7には、点火コイル100の斜視図が示されている。尚、同図では、便宜的に鉄心22が図示省略されている。図7(a)に示す如く、コイルケース10には、側壁部にケース側係止部14aが一体的に形成されている。かかるケース側係止部14aの各々は、互いに平行となるようにレイアウトされ、フランジ部13の板厚と同程度の距離を隔てている。
【0056】
本実施例では、図7(b)に示す如く、フランジ部13がコイルケース10のケース側係止部14aの間で係止される。このとき、同図におけるケース側係止部14aは水平方向Fsと平行となる配置であるため、当該フランジ部13は、コイルケース10に対して水平方向Fsへのスライド調整が可能となる。
【0057】
尚、図8に示す如く、ケース側係止部14bの向きを鉛直方向Fhに一致させることで、フランジ部13は、鉛直方向Fhへ調整可能にケース側係止部14bで係止されることとなる。
【0058】
図9には、超音波溶接を用いた固着工程が示されている。尚、同図にあっても、本体部101を図1における矢線Xの方向に観察した状態が示されている。
【0059】
図示の如く、超音波溶接機500は、テーブル上に金型501のみが配されている。かかる金型501は、本体部101を図示の如く固定可能とする形状に形成されている。尚、図3における金型502及び503は、フランジ部13がコイルケース10に係止されるため、省略が可能となる。
【0060】
かかる固着工程にあっても、フランジ部13は、高周波振動によってコイルケース10の側壁部に固着される。即ち、当該フランジ部13は、ケース側係止部14aによってコイルケース10に係止された後、当該固着工程にてコイルケース10に固着されることとなる。
【0061】
尚、前述同様、特許請求の範囲に係る固着方法は、かかる方法に限定されるものではない。例えば、接着剤によってフランジ部13をコイルケース10に固着させても良く、超音波溶接法以外の摩擦溶接法又は熱溶接法を用いて双方を固着させても良い。
【0062】
そして、図4に示す如く、点火コイル100の高圧端子50及びプラグキャップ70がプラグホールへ挿通されると、フランジ部13は、エンジンヘッド201の固定用ボス201aに当接され、締結ボルト80によってエンジン200に固定される。このとき、フランジ部13は、点火コイル100のコイルケース10に固着されているので、当該コイルケース10と一体的に内燃機関200へ固定される。
【0063】
上述の如く、本実施例に係る点火コイル100によると、フランジ部13とコイルケース10との固着位置を調整させ、又は、適切な形状のフランジ部13を選択することにより、締結位置の様々な変更に対応することが可能となる。
【実施例3】
【0064】
図10には、点火コイル100の改変例が示されている。尚、同図では、コイルケース10の斜視図が示されており、便宜的に鉄心22が図示省略されている。図10(a)に示す如く、フランジ部13には、当接面にフランジ側係止部13eが一体的に形成されている。かかるフランジ側係止部13eは、端部に爪状体13dが形成されており、当該爪状体は、互いの間隔がコイルケース10の水平方向の幅と略一致するように設定されている。
【0065】
本実施例では、図10(b)に示す如く、フランジ側係止部13eの爪状体13dによって、フランジ部13がコイルケース10の適宜な位置に係止される。このとき、当該フランジ部13は、コイルケース10に対して鉛直方向Fhへのスライド調整が可能となる。
【0066】
尚、本実施例にあっても、超音波溶接機による固着工程を実施させても良い。また、これに限らず、接着剤によってフランジ部13をコイルケース10に固着させても良く、超音波溶接法以外の摩擦溶接法又は熱溶接法を用いて双方を固着させても良い。
【0067】
そして、本実施例に係る点火装置100にあっても、図4に示す如く、高圧端子50及びプラグキャップ70がプラグホールへ挿通されると、フランジ部13は、エンジンヘッド201の固定用ボス201aに当接され、締結ボルト80によってエンジン200に固定される。このとき、フランジ部13は、点火コイル100のコイルケース10に固着されているので、当該コイルケース10と一体的に内燃機関200へ固定される。
【0068】
上述の如く、本実施例に係る点火コイル100によると、フランジ部13とコイルケース10との固着位置を調整させ、又は、フランジ部13の変更モデルが適宜に準備されることにより、締結位置のあらゆる変更形態に対応した形状が実現される。
【実施例4】
【0069】
図11には、点火コイル100の更なる改変例が示されている。尚、同図では、コイルケース10の斜視図が示されており、便宜的に鉄心22が図示省略されている。図11(a)を参照すると、フランジ部13には、当接面にフランジ側係止部13fが一体的に形成されており、併せて、コイルケース10には、ケース側係止部14が一体的に形成されている。
【0070】
図示の如く、フランジ部13のフランジ側係止部13fは、T字型の形状を呈しており、コイルケース10との当接面に設けられている。また、コイルケース10のケース側係止部14は、フランジ側係止部13fを受け入れる溝部を有し、当該コイルケース10の側壁に設けられている。
【0071】
そして、フランジ部13及びコイルケース10は、かかるフランジ側係止部14をケース側係止部13fの溝部へ圧入させることにより、互いに係止されることとなる。尚、特許請求の範囲における係合の語意は、上述した圧入を含むものであるが、これに限らず、互いを止め合わせる手段であれば、その態様を問うものではない。そして、フランジ部13及びコイルケース10の係合状態がエンジン等の振動に耐え得るものであれば、上述した固着工程を省略させることもできる。また、双方の係合状態を更に強化する目的として、上述した固着工程を採用さても良い。
【0072】
尚、本実施例に係る点火コイル100では、図12(a)に示す如く、コイルケース10の複数個所A〜Cに同一形状のケース側係止部14を形成させるのが好ましい。これにより、これらのケース側係止部14の中から所定のケース側係止部14を選択することが可能となる。即ち、フランジ部13は、図12(b)〜図12(d)に示す如く、所望の方向へフランジ部13を取り付けることが可能となる。
【0073】
また、本実施例に係る点火コイル100では、図13に示す如く、フランジ部13として複数種類の変更モデルを準備しておき、これら変更モデルのフランジ側係止部13fを共通の形状とさせておくのが好ましい。これにより、或るケース側係止部14に対して、異なる変更モデルを取り付けることが可能となる。そして、図13(a)に示す如く、当接面からボルトの孔部13bまで距離が異なる変更モデル13a及び13bを準備しておけば、図中のFd方向への孔位置の設定又は変更が可能となる。更に、図13(b)に示す如く、傾斜状態の異なる変更モデル13a、13c、13dを準備しておけば、図中の水平方向への孔位置の設定又は変更が可能となる。
【0074】
尚、本発明は、実施の形態にて説明した点火コイルに限定されるものではなく、所謂ペン型の点火コイルへの適用も可能である。
【符号の説明】
【0075】
100 点火コイル
10 コイルケース
14 ケース側係止部
13 フランジ部
13e フランジ側係止部
20 コイルアセンブリ
200 内燃機関
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関に用いられる点火コイル及び其の製造方法に関し、特に、コイルケースの設計変更を最小限に抑える最に用いて好適のものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車等に搭載される内燃機関は、複数のプラグホールへ点火コイルが各々挿入され、プラグホールの底部に設けられた点火プラグへ当該点火コイルの各々が接続されている。点火コイルは、入力された電圧を昇圧させ、かかる昇圧電圧を点火プラグへ印加させることにより、点火プラグを放電させ、これにより、内燃機関では、シリンダ内の混合ガスが燃焼され、クランクシャフトに駆動トルクが発生する。
【0003】
例えば、特開2007−242763号公報(特許文献1)では、内燃機関に設けられる点火コイルの一例が紹介されている。かかる点火コイルは、収納ケース(特許請求の範囲におけるコイルケース)とプラグジョイント(実施の形態における高圧タワー)と下部ソケット(実施の形態におけるプラグキャップ)とから構成される。このうち収納ケースは、一次コイル及び二次コイル及び鉄心から成るコイルアッセンブリを収納させている。また、収納ケースは、電力の供給を受けるコネクタハウジング(実施の形態におけるコネクタ部)と昇圧電位を出力させる高圧端子部とボルト穴を具備する取付部(特許請求の範囲におけるフランジ部)とが一体的に形成されている。収納ケースは、プラグジョイント及び下部ソケットがプラグホールへ挿通されると、コイルアセンブリを収容させる壁面がプラグホールの開口面に当接される。そして、収納部の取付部をボルト等の締結具で内燃機関に固定させることにより、点火コイルは、当該内燃機関に固定されることとなる。
【0004】
また、特開2002−329621号公報(特許文献2)では、コイルアッセンブリをプラグホール内へ収容させる所謂ペン型点火コイルが紹介されている。かかる点火コイルにあっても、コイルケースは、コイルアセンブリを収容させるハウジング部とコネクタ部とフランジ部とが一体的に形成されており、締結具でフランジ部を内燃機関に固定させることにより、点火コイルの全体を当該内燃機関へ固定させる。
【0005】
更に、特開平10−326717号公報(特許文献3)では、上述したペン型点火コイルの改変例が紹介されている。かかる点火コイルに用いられるコイルケースは、コイルアセンブリを収容させる外装ケースと、イグナイタを収容させ且つコネクタを配させる回路ケースとが独立して成形される。そして、当該コイルケースは、外装ケースと回路ケースとが互いに溶着されることで一体化され、回路ケースと供に一体的に形成されたフランジ部によって内燃機関へ固定される。尚、特開平10−326717号公報で記されるコイルケースの語意は、外装ケースを指し、特許請求の範囲におけるコイルケースと一致する意味として用いられていない。
【0006】
特開平7−208312号公報(特許文献4)では、特許文献1で説明したタイプにおける点火装置の改変例が示されている。かかる点火装置(特許請求の範囲における点火コイル)は、コイルケースのフランジ部が設けられたボルト穴を楕円形状とさせ、締結ボルトに対してボルト穴をスライドさせることにより、点火装置を配置させる際、内燃機関に対する位置調整が可能とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−242763号公報
【特許文献2】特開2002−329621号公報
【特許文献3】特開平10−326717号公報
【特許文献4】特開平7−208312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1又は特許文献2の技術では、フランジ部がコイルケースに一体的に成形されるため、プラグホールの開口位置に対する締結具の配置位置が変更されると、この度毎にコイルケースの設計変更が要求され、設計作業及び製造工程の煩雑化、在庫管理の複雑化を招いてしまうとの問題が生じる。特に、締結具の配置位置は、内燃機関の型式が異なると、これに応じて変更される場合が多い。また、同一の内燃機関に点火コイルを装着させる場合であっても、シリンダのレイアウトによっては、締結具の配置位置が対称形の位置へ変更される場合も有る。
【0009】
また、特許文献3の技術では、フランジ部が回路ケースに一体的に成形されているため、外装ケースと回路ケースとを溶着させ、又は、コイルケースの内部に絶縁樹脂を充填させてしまうと、その後の工程で、フランジ部の形状を変更することができなくなるとの問題が生じる。また、特許文献3の技術で製造される点火コイルは、少なくとも絶縁樹脂の充填工程後においてフランジ部の形状を変更できないので、上述同様、製造工程の煩雑化、在庫管理の複雑化を招いてしまう。
【0010】
更に、特許文献4の技術に係る点火コイルは、数mm程度の調整を実現させるものであるため、プラグホールの開口位置に対する締結具の配置位置が大きく変更されてしまうと、ボルト穴の調整範囲を超えてしまい、締結具による内燃機関への固定ができなくなるとの問題が生じる。
【0011】
加えて、かかる締結具の配置位置の変更に備えてフランジ部を複数個所に成形させておくことも考えられる。しかし、当該締結具の配置位置の変更は多種多様の形態で実施されるため、かかる点火コイルは、コイルケースにフランジ部が複数設けられても、殆どの変更態様に対応できるものでは無い。また、コイルケースに複数のフランジ部を成形させると、プラグホールの開口面におけるレイアウト上の制約、又は、コストの高騰を招くとの問題が生じる。
【0012】
本発明は上記課題に鑑み、コイルケースの設計変更を最小限に抑え得る点火コイルの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明では次のような点火コイル(第1の発明)の構成とする。即ち、印加された入力電圧を昇圧させるコイルアセンブリと、前記コイルアセンブリを格納させるコイルケースと、内燃機関へ固定されるフランジ部とを備え、前記フランジ部は、前記コイルケースに固着され、当該コイルケースと一体的に前記内燃機関へ固定されることとする。
【0014】
第1の発明の場合、前記フランジ部は、予め準備された複数種類の変更モデルのうちから用いられるのが好ましい。
【0015】
また、本発明では次のような点火コイル(第2の発明)の構成としても良い。即ち、印加された入力電圧を昇圧させるコイルアセンブリと、前記コイルアセンブリを格納させるコイルケースと、内燃機関へ固定されるフランジ部とを備え、前記フランジ部は、前記コイルケースに係止され、当該コイルケースと一体的に前記内燃機関へ固定されることとする。
【0016】
更に、本発明では次のような点火コイル(第3の発明)の構成としても良い。即ち、印加された入力電圧を昇圧させるコイルアセンブリと、前記コイルアセンブリを格納させるコイルケースと、内燃機関へ固定されるフランジ部とを備え、
前記フランジ部は、前記コイルケースに係止及び固着され、当該コイルケースと一体的に前記内燃機関へ固定されることとする。
【0017】
第2の発明または第3の発明の場合、前記コイルケースは、前記フランジを係止させるケース側係止部を少なくとも1つ有することとしても良く、この他、前記フランジ部は、前記コイルケースに係止されるためのフランジ側係止部を有することとしても良い。
【0018】
また、第2の発明または第3の発明の場合、前記コイルケースは、前記フランジ部に設けられたフランジ側係止部に係合するケース側係止部を少なくとも1つ有し、前記コイルケース及び前記フランジ部は、前記ケース側係止部と前記フランジ側係止部とを係合させることにより、互いに係止されることとしても良い。
【0019】
このとき、好ましくは、前記コイルケースは前記ケース側係止部を複数個所に有し、前記フランジ部は複数設けられた前記ケース側係止部のうちから選択的に定められた所定のケース側係止部へ係止されることとする。
【0020】
更に、第2の発明または第3の発明の場合、前記フランジ部は、予め準備された複数種類の変更モデルのうちから用いられるものであって、前記変更モデルの各々は、前記フランジ側係止部の形状が共通していることとするのが好ましい。
【0021】
また、本発明では次のような点火コイルの製造方法とする。即ち、前記コイルケースの内部に形成された隙間部に絶縁樹脂を含浸させ、前記フランジ部を除く本体部を完成させる第1の工程と、前記本体部のコイルケースに前記フランジ部を係止及び/又は固着させる第2の工程と、を順に実施させることとする。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る点火コイルによると、コイルケースとフランジ部とが互いに独立して製作されるので、締結具の配置位置の変更が生じても、コイルケースの設計変更を伴わずに、当該コイルケースを製造することが可能となる。また、コイルケースの変更種類が少なくなるので、製造工程の簡素化、在庫管理の簡素化が図られる。
【0023】
本発明に係る点火コイルの製造方法によると、フランジ部を除く本体部が第1の工程で完成され、その後の第2の工程で、所望のフランジが本体部へ取り付けられることとなる。従って、締結具の配置位置の変更と無関係に本体部を製造することが可能となり、コイルケースに係る設計変更の頻度を格段に低減させ、これにより、製造工程及び在庫管理の簡素化が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本実施の形態に係る点火コイルの構成を示す図
【図2】実施例1に係るフランジ部の構成を示す図
【図3】超音波溶接の工程を示す図
【図4】実施例1に係る点火コイルの完成品を示す図
【図5】実施例1に係る点火コイルの変形例を示す図
【図6】実施例1に係る点火コイルの変形例を示す図
【図7】実施例2に係る点火コイルを示す図
【図8】実施例2に係る点火コイルを示す図
【図9】超音波溶接の工程を示す図
【図10】実施例3に係る点火コイルを示す図
【図11】実施例4に係る点火コイルを示す図
【図12】実施例4に係る点火コイルの変形例を示す図
【図13】実施例4に係る点火コイルの変形例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る実施の形態につき図面を参照して説明する。図1(a)に示す如く、点火コイル100の本体部101は、コイルケース10とコイルアセンブリ20とイグナイタ30とコネクタ部40とから構成される。
【0026】
コイルアセンブリ20は、コイル部21と鉄心22とから構成されている。このうちコイル部21は、一次巻線を巻回させた一次スプールと、二次巻線を巻回させた二次スプールとから成り、二次スプールの端部には、イグナイタ30を固定させる固定部が形成されている。鉄心は、珪素鋼板の積層体であって、四角形又は日の字形を呈している。当該鉄心は、コイルアセンブリ20へ収容される部分にコイル部21が挿入されている。かかるコイルアセンブリ20は、一次巻線に入力電圧が供給されると、磁束の変動を生じさせ、二次コイルでは、当該磁束の変動に応じて入力電圧が昇圧され、二次巻線の接点にて昇圧電圧を印加させる。
【0027】
イグナイタ30は、パワースイッチング素子及び制御回路をモールドさせたパッケージとされ、当該回路に通電される複数の端子が設けられている。イグナイタ30では、入力信号を受信すると、これに応じてバッテリの電力を断続させ、コイルアセンブリ20へ断続的な電力を供給させる。また、イグナイタ30には、コイルアセンブリ20から戻された電力をグランドに接地させる端子が設けられている。
【0028】
コネクタ部40は、絶縁性の熱可塑性樹脂から成り、開口部を有する矩形状のハウジング部と、コイルアセンブリ20へ固定される被固定部とが形成されている。当該コネクタ部40は、ハウジング部内に複数の端子を配し、当該複数の端子は、イグナイタ30の端子に接続されるように配線されている。かかるコネクタ部40は、本実施の形態にあっては、ハーネスを介してECU(Engine Control Unit)と接続され、バッテリの入力電圧が供給され、また、ECUで生成された駆動信号が入力される。
【0029】
コイルケース10は、絶縁性の熱可塑性樹脂から成り、具体的には、PPS(Poly Phenylene Sulfide)又はPBT(Poly Buthylene Terephthalete)等から組成される。当該コイルケース10は、図示の如く、コイルアセンブリ20を格納させる収容部11と、昇圧電圧を出力させる高電圧端子部12とが主構成要素とされる。
【0030】
収容部11は、略直方体とされ、当該直方体の一方の面Dに大きな開口が形成され、他方の面Bに小型の角状孔が形成されている。かかる収容部11は、コイルアセンブリ20とイグナイタ30とを面Dから収容部の内部へと格納させ、面Bの角状孔に鉄心22の一辺が挿通される。また、かかるコイルアセンブリ20の固定部には、コネクタ部40の被固定部が嵌着される。更に、収容部11には、一次スプールとコイルケースの壁面との間にイグナイタ30が配置され、コネクタ部40とイグナイタ30とに配された端子が溶接され、電気的に接続された状態とされる。そして、収容部11には、これらの部品によって形成された隙間部に、絶縁性の熱硬化性樹脂が含浸される。
【0031】
高圧端子部12は、端部に開口を有する筒状体とされ、収容部11と一体的に成形される。かかる高圧端子12の内部には金属端子が収容され、当該金属端子には、二次巻線の一端が導通され、コイルアセンブリ20で発生した昇圧電圧が印加される。また、高圧端子部12の外壁には、爪状体が形成されており、図1(b)に示す如く、高圧タワー50が嵌着される。
【0032】
尚、当該コイルケース10では、従来例にて説明したフランジ部は一体的に形成されていない。かかるフランジ部は、締結具の配置位置に合わせて個別的に取り付けられる。従って、コイルケース10は、自動車の規格、締結具(締結ボルト)の配置位置に関わりなく、必要な本数に応じて自由に製造することが可能となる。
【0033】
高圧タワー50は、外装が絶縁性材から成り、図示されない内部に昇圧電圧を伝達させる金属製の導通材が配されている。高圧タワー50がプラグホール内に挿入されると、外装の端部が点火プラグの頭部を把持すると供に、導通材の端部が点火プラグへ電気的に接続される。
【0034】
また、高圧タワー50の下端部には、図示の如く、プラグキャップ70が取り付けられる。かかるプラグキャップ70は、振動を吸収する弾性体から成り、高圧タワー50と点火プラグとの導通状態を維持させる。
【0035】
かかる構成を具備する本体部101では、ECUからの駆動信号を受信すると、車載バッテリの入力電圧を断続的にコイルアセンブリ20へ供給させる。このとき、コイルアセンブリ20では、当該入力電圧に基づいて昇圧電圧を発生させ、高圧端子部12から当該昇圧電圧を出力させる。その後、当該昇圧電圧は、高圧タワー50を介して点火プラグへ供給され、シリンダ内のプラグギャップを放電させる。
【0036】
上述の如く、本実施の形態に係る点火コイル100によると、コイルケース10とフランジ部13とが互いに独立して製作されるので、締結具の配置位置の変更が生じても、コイルケースの設計変更を伴わずに、当該コイルケースを製造することが可能となる。また、コイルケースの変更種類が少なくなるので、製造工程の簡素化、在庫管理の簡素化が図られる。
【実施例1】
【0037】
図2には、本実施の形態に係るフランジ部が示されている。かかるフランジ部13は、上述したコイルケース10とは独立して成形され、胴体部13aに孔部13bが形成されている。このうち胴体部13aは、コイルケース10と同一の材質で組成され、略板状体とされている。胴体部13aのケース当接面13cは、コイルケース10との当接面の形状に合わせて形状が定められ、例えば、図2(a)ではフラット面のケースに当接される場合が示されており、図2(b)では曲面のケースに当接される場合が示されている。
【0038】
孔部13bは、ボルトの軸を挿通させる孔径とされ、所定の嵌合寸法となるように加工されている。また、当該孔部13bは、圧縮強度の大きい補強材を埋設させるのが好ましく、これにより、フランジ部13の胴体部13aは、締結ボルトの締め付け圧力から保護される。かかる補強材は、主としてアルミ等の金属材料が用いられ、締結ボルトからの圧力に応じて有効断面積が画定される。
【0039】
図3には、超音波溶接を用いた固着工程(特許請求の範囲における第2の工程)が示されている。尚、同図では、本体部101を図1における矢線Xの方向に観察した状態が示されている。
【0040】
図示の如く、超音波溶接機500は、テーブル上に金型501〜503を適宜に配している。かかる金型501〜503は、本体部101を図示の如く固定把持する形状に形成されている。また、金型502及び503は、互いに組合された際に、フランジ部13を挿通させるガイド孔を形成させる。
【0041】
当該ガイド孔の上部には、ホーン505とブースタ504とが配置されている。当該ホーン505は、振動を発生させる振動子が内部に収容されており、超音波溶接機500の本体から信号を受けると、数十Khz程度の振動を発生させる。
【0042】
また、ホーン505の下部にはブースタ504が接続されている。当該ブースタ504は、ホーン505から受けた振動を適宜の状態に調整させ、被固着体とされるフランジ部13へ振動を伝達させる。
【0043】
かかる超音波溶接機500では、本体部101が金型501〜503の中へ組み込まれると、金型502及び503で形成されたガイド孔にフランジ部13を投入させる。その後、ホーン505を把持するアームが鉛直下方にスライドされ、図示の如く、フランジ13の露出面にブースタ504が当接される。更に後、超音波溶接機本体から信号が出力されると、ホーン505は、振動を発生させ、ブースタ504を介してフランジ部13を高周波振動させる。このとき、フランジ部13とコイルケース10との当接面では、高周波振動によって急激な発熱が発生し、互いの当接面が溶解する。このとき、双方の材質は同一であるので、フランジ部13は、溶解した当接面にて分子結合され、振動が停止すると本体部101のコイルケースに固着されることとなる。
【0044】
尚、本実施例では、超音波溶接機500を用いてフランジ部13をコイルケース10に固着させることとしているが、特許請求の範囲に係る固着方法は、かかる方法に限定されるものではない。当該固着方法は、例えば、接着剤によってフランジ部13をコイルケース10に固着させても良く、超音波溶接法以外の摩擦溶接法又は熱溶接法を用いて双方を固着させても良い。
【0045】
図4(a)には、上述した工程を経て完成した点火コイル100が示されている。かかる点火コイル100は、図示の如く、フランジ部13がコイルケース10の側面から突出した状態にて固着されている。また、同図では、高圧タワー50にレインカバー60が嵌め込まれている。尚、かかるレインカバー60は、弾性材料が用いられている。
【0046】
図4(b)には、かかる点火コイルをエンジン(内燃機関)へ固定させた状態が示されている。図示の如く、エンジン200は、エンジンブロック202の上方にエンジンヘッド201が配置されている。エンジン200は、ピストンを摺動させるシリンダ(図示なし)が形成され、混合ガスを吸気させる吸気バルブ及び燃焼ガスを排気させる排気バルブが適所にレイアウトされている。また、当該エンジンにはプラグホール202aが形成され、当該プラグホール202aの底部には、プラグギャップをシリンダ内に露出させるように点火プラグが固定されている。エンジンヘッド201は、図示されないカム構造を収容させ、上述した吸気バルブ及び排気バルブを適宜に駆動させる。当該エンジンヘッド201には、エンジンブロックのプラグホール202aと同軸的に当該エンジンヘッド側のプラグホール201aが形成されている。また、エンジンヘッド201の上端側には、固定用ボス201bがエンジンヘッド201と一体的に形成されている。かかる固定用ボス201bには、図示の如く、締結ボルト80を螺着させる雌ネジタップが形成されている。
【0047】
図示の如く、点火コイル100は、高圧タワー50及びプラグキャップ70がプラグホールへ挿通されると、レインカバー60によってプラグホール201aの開口部がシールされる。また、点火コイル200のフランジ部13は、エンジンヘッド201の固定用ボス201aに当接され、締結ボルト80によってエンジン200に固定される。このとき、フランジ部13は、点火コイル100のコイルケース10に固着されているので、コイルケース10は、フランジ部13と一体的に内燃機関200へ固定される。
【0048】
上述の如く、本実施例に係る点火コイル100の製造方法によると、本体部101の製造工程後(特許請求の範囲における第1の工程)にフランジ部13を当該本体部101へ固着させる固着工程(特許請求の範囲における第2の工程)が実施されるので、固定用ボスの位置に関わらず、本体部101を先行して製造させることが可能となる。また、締結具の配置位置の変更と無関係に本体部を製造することが可能となるので、コイルケースに係る設計変更の頻度を格段に低減させ、これにより、製造工程及び在庫管理の簡素化が図られる。
【0049】
図5には、本実施例に係るフランジ部の種々の取付け例が示されている。尚、同図では、図4における矢線Yの方向から点火コイルの頭部を観察した状態が示されている。
【0050】
図5(a)に示す如く、実線で示されるフランジ部13は、図3で示される金型を用いた場合の取付け例であって、当該フランジ部13が側面Aにレイアウトされる。しかし、本実施例では、フランジ部13とコイルケース10との当接面を変更させることにより、フランジ部13を点火コイル100の側面B又は側面Cに固着させることが可能となる。特に、超音波溶接機を用いる場合、金型の形状を変更させることにより、フランジ部13を点火コイル100の側面B又は側面Cに固着させることが可能となる。
【0051】
図5(b)には、点火コイルの側面Cにフランジ部13を固着させた状態が示されている。図示の如く、フランジ部13は、当接面13cを点火コイル100に対して水平方向Fsに移動させることで、水平方向Fsの固着位置を自由に設定することが可能となる。また、これに限らず、フランジ部13と点火コイル100との固着位置は、プラグホールの軸心に平行な鉛直方向への調整も可能である。
【0052】
尚、コイルケース10と独立して製作されるフランジ部13は、予め準備された変更モデルの中から選択的に用いることとするのが好ましい。例えば、フランジ部13は、図6に示す如く、変更モデル13a及び変更モデル13b及び変更モデル13cが準備されていることとする。このとき、図6(a)に示す如く、締結ボルト80の締結位置がコイルケース10から距離d1だけ離れている場合、点火コイル100は、本体部101に変更モデル13aを用いて製造されると良い。また、何らかの理由で締結位置が距離d2の位置へ変更された場合、点火コイル100は、本体部101に変更モデル13bを用いて製造されると良い。
【0053】
また、図6(b)に示す如く、水平方向Fsの基準位置paに締結ボルト80の締結位置が有る場合、点火コイル100は、本体部101に変更モデル13aを用いて製造されると良い。更に、基準位置paから水平方向Fsへ移動した地点pbに締結位置が有る場合、点火コイル100は、本体部101に変更モデル13cを用いて製造されると良い。
【0054】
上述の如く、本実施例に係る点火コイル100によると、フランジ部13の変更モデルが適宜に準備されることにより、適切な形状のフランジ部の選択が可能となり、締結位置の様々な変更形態に対応することが可能となる。
【実施例2】
【0055】
図7には、点火コイル100の斜視図が示されている。尚、同図では、便宜的に鉄心22が図示省略されている。図7(a)に示す如く、コイルケース10には、側壁部にケース側係止部14aが一体的に形成されている。かかるケース側係止部14aの各々は、互いに平行となるようにレイアウトされ、フランジ部13の板厚と同程度の距離を隔てている。
【0056】
本実施例では、図7(b)に示す如く、フランジ部13がコイルケース10のケース側係止部14aの間で係止される。このとき、同図におけるケース側係止部14aは水平方向Fsと平行となる配置であるため、当該フランジ部13は、コイルケース10に対して水平方向Fsへのスライド調整が可能となる。
【0057】
尚、図8に示す如く、ケース側係止部14bの向きを鉛直方向Fhに一致させることで、フランジ部13は、鉛直方向Fhへ調整可能にケース側係止部14bで係止されることとなる。
【0058】
図9には、超音波溶接を用いた固着工程が示されている。尚、同図にあっても、本体部101を図1における矢線Xの方向に観察した状態が示されている。
【0059】
図示の如く、超音波溶接機500は、テーブル上に金型501のみが配されている。かかる金型501は、本体部101を図示の如く固定可能とする形状に形成されている。尚、図3における金型502及び503は、フランジ部13がコイルケース10に係止されるため、省略が可能となる。
【0060】
かかる固着工程にあっても、フランジ部13は、高周波振動によってコイルケース10の側壁部に固着される。即ち、当該フランジ部13は、ケース側係止部14aによってコイルケース10に係止された後、当該固着工程にてコイルケース10に固着されることとなる。
【0061】
尚、前述同様、特許請求の範囲に係る固着方法は、かかる方法に限定されるものではない。例えば、接着剤によってフランジ部13をコイルケース10に固着させても良く、超音波溶接法以外の摩擦溶接法又は熱溶接法を用いて双方を固着させても良い。
【0062】
そして、図4に示す如く、点火コイル100の高圧端子50及びプラグキャップ70がプラグホールへ挿通されると、フランジ部13は、エンジンヘッド201の固定用ボス201aに当接され、締結ボルト80によってエンジン200に固定される。このとき、フランジ部13は、点火コイル100のコイルケース10に固着されているので、当該コイルケース10と一体的に内燃機関200へ固定される。
【0063】
上述の如く、本実施例に係る点火コイル100によると、フランジ部13とコイルケース10との固着位置を調整させ、又は、適切な形状のフランジ部13を選択することにより、締結位置の様々な変更に対応することが可能となる。
【実施例3】
【0064】
図10には、点火コイル100の改変例が示されている。尚、同図では、コイルケース10の斜視図が示されており、便宜的に鉄心22が図示省略されている。図10(a)に示す如く、フランジ部13には、当接面にフランジ側係止部13eが一体的に形成されている。かかるフランジ側係止部13eは、端部に爪状体13dが形成されており、当該爪状体は、互いの間隔がコイルケース10の水平方向の幅と略一致するように設定されている。
【0065】
本実施例では、図10(b)に示す如く、フランジ側係止部13eの爪状体13dによって、フランジ部13がコイルケース10の適宜な位置に係止される。このとき、当該フランジ部13は、コイルケース10に対して鉛直方向Fhへのスライド調整が可能となる。
【0066】
尚、本実施例にあっても、超音波溶接機による固着工程を実施させても良い。また、これに限らず、接着剤によってフランジ部13をコイルケース10に固着させても良く、超音波溶接法以外の摩擦溶接法又は熱溶接法を用いて双方を固着させても良い。
【0067】
そして、本実施例に係る点火装置100にあっても、図4に示す如く、高圧端子50及びプラグキャップ70がプラグホールへ挿通されると、フランジ部13は、エンジンヘッド201の固定用ボス201aに当接され、締結ボルト80によってエンジン200に固定される。このとき、フランジ部13は、点火コイル100のコイルケース10に固着されているので、当該コイルケース10と一体的に内燃機関200へ固定される。
【0068】
上述の如く、本実施例に係る点火コイル100によると、フランジ部13とコイルケース10との固着位置を調整させ、又は、フランジ部13の変更モデルが適宜に準備されることにより、締結位置のあらゆる変更形態に対応した形状が実現される。
【実施例4】
【0069】
図11には、点火コイル100の更なる改変例が示されている。尚、同図では、コイルケース10の斜視図が示されており、便宜的に鉄心22が図示省略されている。図11(a)を参照すると、フランジ部13には、当接面にフランジ側係止部13fが一体的に形成されており、併せて、コイルケース10には、ケース側係止部14が一体的に形成されている。
【0070】
図示の如く、フランジ部13のフランジ側係止部13fは、T字型の形状を呈しており、コイルケース10との当接面に設けられている。また、コイルケース10のケース側係止部14は、フランジ側係止部13fを受け入れる溝部を有し、当該コイルケース10の側壁に設けられている。
【0071】
そして、フランジ部13及びコイルケース10は、かかるフランジ側係止部14をケース側係止部13fの溝部へ圧入させることにより、互いに係止されることとなる。尚、特許請求の範囲における係合の語意は、上述した圧入を含むものであるが、これに限らず、互いを止め合わせる手段であれば、その態様を問うものではない。そして、フランジ部13及びコイルケース10の係合状態がエンジン等の振動に耐え得るものであれば、上述した固着工程を省略させることもできる。また、双方の係合状態を更に強化する目的として、上述した固着工程を採用さても良い。
【0072】
尚、本実施例に係る点火コイル100では、図12(a)に示す如く、コイルケース10の複数個所A〜Cに同一形状のケース側係止部14を形成させるのが好ましい。これにより、これらのケース側係止部14の中から所定のケース側係止部14を選択することが可能となる。即ち、フランジ部13は、図12(b)〜図12(d)に示す如く、所望の方向へフランジ部13を取り付けることが可能となる。
【0073】
また、本実施例に係る点火コイル100では、図13に示す如く、フランジ部13として複数種類の変更モデルを準備しておき、これら変更モデルのフランジ側係止部13fを共通の形状とさせておくのが好ましい。これにより、或るケース側係止部14に対して、異なる変更モデルを取り付けることが可能となる。そして、図13(a)に示す如く、当接面からボルトの孔部13bまで距離が異なる変更モデル13a及び13bを準備しておけば、図中のFd方向への孔位置の設定又は変更が可能となる。更に、図13(b)に示す如く、傾斜状態の異なる変更モデル13a、13c、13dを準備しておけば、図中の水平方向への孔位置の設定又は変更が可能となる。
【0074】
尚、本発明は、実施の形態にて説明した点火コイルに限定されるものではなく、所謂ペン型の点火コイルへの適用も可能である。
【符号の説明】
【0075】
100 点火コイル
10 コイルケース
14 ケース側係止部
13 フランジ部
13e フランジ側係止部
20 コイルアセンブリ
200 内燃機関
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印加された入力電圧を昇圧させるコイルアセンブリと、前記コイルアセンブリを格納させるコイルケースと、内燃機関へ固定されるフランジ部とを備え、
前記フランジ部は、前記コイルケースに固着され、当該コイルケースと一体的に前記内燃機関へ固定されることを特徴とする点火コイル。
【請求項2】
前記フランジ部は、予め準備された複数種類の変更モデルのうちから用いられることを特徴とする請求項1に記載の点火コイル。
【請求項3】
印加された入力電圧を昇圧させるコイルアセンブリと、前記コイルアセンブリを格納させるコイルケースと、内燃機関へ固定されるフランジ部とを備え、
前記フランジ部は、前記コイルケースに係止され、当該コイルケースと一体的に前記内燃機関へ固定されることを特徴とする点火コイル。
【請求項4】
印加された入力電圧を昇圧させるコイルアセンブリと、前記コイルアセンブリを格納させるコイルケースと、内燃機関へ固定されるフランジ部とを備え、
前記フランジ部は、前記コイルケースに係止及び固着され、当該コイルケースと一体的に前記内燃機関へ固定されることを特徴とする点火コイル。
【請求項5】
前記コイルケースは、前記フランジを係止させるケース側係止部を少なくとも1つ有することを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の点火コイル。
【請求項6】
前記フランジ部は、前記コイルケースに係止されるためのフランジ側係止部を有することを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の点火コイル。
【請求項7】
前記コイルケースは、前記フランジ部に設けられたフランジ側係止部に係合するケース側係止部を少なくとも1つ有し、
前記コイルケース及び前記フランジ部は、前記ケース側係止部と前記フランジ側係止部とを係合させることにより、互いに係止されることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の点火コイル。
【請求項8】
前記コイルケースは前記ケース側係止部を複数個所に有し、前記フランジ部は複数設けられた前記ケース側係止部のうちから選択的に定められた所定のケース側係止部へ係止されることを特徴とする請求項7に記載の点火コイル。
【請求項9】
前記フランジ部は、予め準備された複数種類の変更モデルのうちから用いられるものであって、
前記変更モデルの各々は、前記フランジ側係止部の形状が共通していることを特徴とする請求項6乃至請求項8に記載の点火コイル。
【請求項10】
前記コイルケースの内部に形成された隙間部に絶縁樹脂を含浸させ、前記フランジ部を除く本体部を完成させる第1の工程と、
前記本体部のコイルケースに前記フランジ部を係止及び/又は固着させる第2の工程と、
を順に実施させることを特徴とする請求項1乃至請求項9に記載の点火コイルの製造方法。
【請求項1】
印加された入力電圧を昇圧させるコイルアセンブリと、前記コイルアセンブリを格納させるコイルケースと、内燃機関へ固定されるフランジ部とを備え、
前記フランジ部は、前記コイルケースに固着され、当該コイルケースと一体的に前記内燃機関へ固定されることを特徴とする点火コイル。
【請求項2】
前記フランジ部は、予め準備された複数種類の変更モデルのうちから用いられることを特徴とする請求項1に記載の点火コイル。
【請求項3】
印加された入力電圧を昇圧させるコイルアセンブリと、前記コイルアセンブリを格納させるコイルケースと、内燃機関へ固定されるフランジ部とを備え、
前記フランジ部は、前記コイルケースに係止され、当該コイルケースと一体的に前記内燃機関へ固定されることを特徴とする点火コイル。
【請求項4】
印加された入力電圧を昇圧させるコイルアセンブリと、前記コイルアセンブリを格納させるコイルケースと、内燃機関へ固定されるフランジ部とを備え、
前記フランジ部は、前記コイルケースに係止及び固着され、当該コイルケースと一体的に前記内燃機関へ固定されることを特徴とする点火コイル。
【請求項5】
前記コイルケースは、前記フランジを係止させるケース側係止部を少なくとも1つ有することを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の点火コイル。
【請求項6】
前記フランジ部は、前記コイルケースに係止されるためのフランジ側係止部を有することを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の点火コイル。
【請求項7】
前記コイルケースは、前記フランジ部に設けられたフランジ側係止部に係合するケース側係止部を少なくとも1つ有し、
前記コイルケース及び前記フランジ部は、前記ケース側係止部と前記フランジ側係止部とを係合させることにより、互いに係止されることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の点火コイル。
【請求項8】
前記コイルケースは前記ケース側係止部を複数個所に有し、前記フランジ部は複数設けられた前記ケース側係止部のうちから選択的に定められた所定のケース側係止部へ係止されることを特徴とする請求項7に記載の点火コイル。
【請求項9】
前記フランジ部は、予め準備された複数種類の変更モデルのうちから用いられるものであって、
前記変更モデルの各々は、前記フランジ側係止部の形状が共通していることを特徴とする請求項6乃至請求項8に記載の点火コイル。
【請求項10】
前記コイルケースの内部に形成された隙間部に絶縁樹脂を含浸させ、前記フランジ部を除く本体部を完成させる第1の工程と、
前記本体部のコイルケースに前記フランジ部を係止及び/又は固着させる第2の工程と、
を順に実施させることを特徴とする請求項1乃至請求項9に記載の点火コイルの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−199108(P2010−199108A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−38851(P2009−38851)
【出願日】平成21年2月23日(2009.2.23)
【出願人】(000109093)ダイヤモンド電機株式会社 (387)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月23日(2009.2.23)
【出願人】(000109093)ダイヤモンド電機株式会社 (387)
【Fターム(参考)】
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