説明

無人搬送車用台車及び無人搬送車

【課題】その場旋回やカニ歩き等の細かい動作が可能な無人搬送車用台車及び無人搬送車を提供する。
【解決手段】車体2と、車体2上に設けた積載部3と、車体2底部の対角位置に設けた全方向移動車輪4aと駆動部5とからなる無人搬送車用台車1であって、全方向移動車輪4aは、ホイール41と、ホイール41の周囲に配列されホイール41の回転方向に対して直交する横方向へ自在に回転する複数個の分割タイヤ42と、からなり、分割タイヤ42は、内周部の直径が外周部の直径よりも小さく、ホイール41の周面に車輪外周円の円弧を形成するように配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は全方位に走行可能な、無人搬送車用台車及び無人搬送車に関する。
【背景技術】
【0002】
図7に示すように、従来の全方位に走行可能な無人搬送車101は、無人搬送車用台車102と交差点制御装置103と、駆動制御装置104とからなる。
無人搬送車用台車102は、略直方体形状の車体105と、車体105上に設けられた積載部106と、車体105の底部に設けられた2つの駆動輪107と、4つの自在キャスター108とを備え、駆動輪107は、モータ(図示せず)と操舵機構(図示せず)を備えている。
【0003】
無人搬送車101は、基地局との無線通信により、交差点制御装置103、駆動制御装置104を介して、駆動輪107のモータ(図示せず)が制御され、走行面に埋設された誘導線(図示せず)から発信される電波信号に従って、誘導線に沿って走行することになる。
【0004】
このような無人搬送車は、搬送台車102を自在キャスターで支えて走行するため、積荷を搭載した状態で自在キャスターには大きな加重が加わることになる。このため、接地力の小さい駆動輪では、自在キャスターの動きをスムーズに制御することが困難であり、また、進行方向を変えるときには自在キャスターへの加重バランスが崩れ、車体が左右に傾くことがある。このような問題を解決するために、特許文献1には、自在キャスター輪にショックアブソーバーを設けて、滑らかな動きを図る無人搬送車が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−30650号公報
【特許文献2】特開2002−137602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、残念ながら、従来の無人搬送車は、積荷を目的地付近までほぼ直線的に運ぶように設計されているため、曲がる動きでは大きな回転半径を必要としている。したがって、移動経路に設けられた右左折点やターン地点などで方向転換のための広いスペースを必要としていた。しかし、移動経路内に広い方向転換スペースを確保することが難しい場合もあり、工程ライン設計上、移動経路確保のための制約が大きかった。
【0007】
また、目的地付近まで近づいた無人搬送車を作業エリア内に幅寄せするため、無人搬送車の横付け用の引き込み装置を設置するか人手による幅寄せ作業を必要としていた。しかし、幅寄せ作業においても、切り返しのためのスペースや無人搬送車の細かい動きが求められていた。ところが、前述したように、無人搬送車は、前進や後退のような前後方向への直線的な動きを重点とした設計がなされているため、その場旋回や車両の前後の進行方向に対して横方向への移動(カニ歩きともいう)等の細かい動作には不向きであり、位置補正にスペースと労力を必要とする。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みて、その場旋回やカニ歩き等の細かい動作が可能な無人搬送車用台車及び無人搬送車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の無人搬送車用台車は、車体と、車体上に設けられた積載部と、車体底部の対角位置に設けられた駆動操舵輪とからなる。
【0010】
また本発明の無人搬送車は、車体と、車体上に設けられた積載部と、車体底部の対角位置に設けられた駆動操舵輪と、駆動操舵輪を制御する制御装置とからなる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の無人搬送車用台車及び無人搬送車は、その場旋回やカニ歩き等の小回りのよい動きができるので、Uターン、右左折、幅寄せに広いスペースを必要としない。さらに、車両を中心としたその場旋回が可能なので、車両のバランスを崩すことなく荷崩れを起こすことなく、狭いスペースでも進行方向を変更することができる。また、作業エリア脇に横付けする場合に、引き込み装置やアプローチスペースを必要とせず、さらに労力を省くことが可能である。また、工程ライン等の変更にも柔軟に対応できるので、工程ライン設計上の制約を少なくすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の無人搬送車用台車の外観を示す図である。
【図2】全方向移動車輪の外観を示す図である。
【図3】全方向移動車輪の断面を示す図である。
【図4】全方向移動車輪の車体底部への取り付けの一例を示した模式図である。
【図5】全方向移動車輪の車体底部への取り付けの一例を示した模式図である。
【図6】駆動操舵輪の制御の概略を示す図である。
【図7】従来の無人搬送車用台車を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の無人搬送車用台車及び無人搬送車を図面に基づいて詳細に説明する。
【0014】
図1に、略直方体形状の車体2と、車体2上に設けられた積載部3と、車体底部の対角位置に設けられた4個の駆動操舵輪4とからなる本発明の無人搬送車用台車1の外観図を示す。ただし、積載部の底板は、説明上省いて示している。
【0015】
駆動操舵輪4は、全方向移動車輪4aと駆動部5とからなり、全方向移動車輪4aは、例えば特許文献2により知られている。図2に全方向移動車輪4aの外観を示す。すなわち、全方向移動車輪4aは、ホイール41と、ホイール41の周囲に配列され、ホイール41の回転方向Aに対して直交する横方向Bへ自在に回転する複数個の分割タイヤ42とからなり、前記分割タイヤ42は、内周部の直径が外周部の直径よりも小さく、前記ホイール41の周面に車輪外周円の円弧を形成するように配置されている。
【0016】
分割タイヤ42は合成樹脂で成形されており、図3に示すように、ホイール41の回転方向Aに対して、その半径円と同一面状で直交方向に対して斜めに交差する回転軸線上に位置するシャフト43を備えると共に、その直径の大きな外周部から内周部に向けて直径を連続的に小さくし、かつ周面が車輪外周円の円弧を形成し、半紡錘形状に形成されている。さらに、ホイール41の周面には軸受アーム44が設けられ、軸受アーム44は、隣り合う分割タイヤ42の隙間に侵入し、途中位置では分割タイヤ42の外周部の凹部45内でシャフト43に対して直交方向へ曲げられている。軸受アーム44は、回転自在に支持され、さらに先端部44aを回転自在に支持する。
【0017】
駆動操舵輪4は、モータと連結され、車体2底部に固定される。図4及び5は、駆動操舵輪4の車体2の底部への取り付けの一例を示した模式図である。駆動操舵輪4とモータとの連結は、たとえば、図4に示すように、全方向移動車輪4aに隣接するベアリング6、モータベアリング51とモータ軸52を介してモータを備える駆動部5に接続して構成される。駆動操舵輪4と車体2への固定は、たとえば、モータベアリング51とベアリング6の間にモータブラケット7を配置し、モータブラケット7の上部に設けられたボルト穴とボルトによって行われる。
【0018】
図5は、駆動操舵輪4の車体底部への取り付けと、全方向移動車輪4aの回転方向を示す図である。車体2の安定性と細かい動作を可能にするため、駆動操舵輪4は、車体2の対角位置に、仮想中心線X−X、すなわち、無人搬送車の前進、後退方向と全方向移動車輪4aの仮想中心線x−xとの角度θが30度〜60度の範囲の角度に取り付けることが望ましく、さらに好ましくは4個の駆動操舵輪4がすべて同じ角度で取り付けられることである。すなわち、駆動操舵輪4は、無人搬送車の前進、後退方向に対して、30度〜60度の角度で車体底部の4隅に取り付けられている。
このように、駆動操舵輪4をθの角度を有して車体底部に取り付けることにより、無人搬送車用台車及び無人搬送車は、車体の中心を回転中心としたその場旋回が可能になる。したがって、無人搬送車は、移動の途中であっても、旋回スペースさえ確保できれば、移動方向を変えることが可能になり、小回りのある、しかも、積荷の荷崩れを防止する動きが可能になる。
【0019】
また、全方向移動車輪4aはホイール41の回転方向Aにあわせて分割タイヤ42が横回転し、無人搬送車用台車及び無人搬送車の進行方向と力がコントロールされるため、θが上記範囲外となると、前進後退と横方向への動きの速度差が大きくなることから作業効率上及び安全確保上好ましくない。特に、横方向への速度が前進後退の速度に比べ早くなるのは好ましくない。
【0020】
本例では、4個の全方向移動車輪4aが、仮想中心線に対し45度の角度で車体2の対角位置、すなわち底部頂点域に取り付けられている。したがって、全方向移動車輪4aは、無人搬送車用台車の進行方向又は後退方向に向けてそれぞれ、「八」の字を形成するように車体2の四隅に取り付けられている。したがって、その場旋回をする場合には、4個の駆動操舵輪を同じ方向に回転させることで、車体の中心を回転中心としたその場旋回が可能なのでその場旋回のコントロールが容易であり、前進後退と横方向への速度をバランスの取れた範囲にできる。またその場旋回時の車体中心のブレを最小限度に抑えることができ、荷崩れの防止につながる。
【0021】
駆動操舵輪4の取り付け角度θは、上記範囲内で車体2のサイズや形状に応じて、上記した角度の範囲内で適宜定めることができる。また、車体の上下動を少なくするため、車体とモータブラケットの間にサスペンションを設けてもよい。
【0022】
本発明の無人搬送車は、車体と、車体上に設けられた積載部と、車体底部の対角位置に設けられた駆動操舵輪と、駆動操舵輪の動作を制御する制御装置とからなる。制御装置は、交差点制御装置や駆動操舵輪制御装置を含み、車体上あるいは車体内部に組み込まれている。
【0023】
図6に無人搬送車の動作を制御する一例を概略的に示す。
すなわち、無人搬送車は、CPUを備えた第一の制御装置と第二の制御装置を備え、第一の制御装置が基地局との無線通信を行う。第一の制御装置のメインCPUは、第一モータドライバを介して第一モータ部及び第二モータ部の回転センサー、走行モータ及びブレーキを制御する。第二制御装置のメインCPUは、第一の制御装置のメインCPUとの交信を行い、第二モータドライバを介して第三モータ部及び第四モータ部の回転センサー、走行モータ及びブレーキを制御する。
【0024】
以上述べた構成により、無人搬送車用台車及び無人搬送車は、その場旋回やカニ歩き等の小回りのよい動きができるので、Uターン、右左折、幅寄せに広いスペースを必要としない。
さらに、作業エリア脇に横付けする場合に、引き込み装置や広いアプローチスペースを必要とせず、さらに労力を省くことが可能である。また、工程ライン等の変更においてもバリエーションのある移動経路にも柔軟に対応できるので、工程ラインの設計上、制約を少なくすることが可能となる。
また、自在キャスターを使用しないので、車体の安定性が高く、さらに構成部品・稼動部分が少ないのでメンテナンスに要する労力や時間を少なくすることが可能である。
【符号の説明】
【0025】
1 無人搬送車用台車
2 車体
3 積載部
4 駆動操舵輪
4a 全方向移動車輪
5 駆動部
6 ベアリング
7 モータブラケット
41 ホイール
42 分割タイヤ
43 シャフト
44 軸受アーム
44a 先端部
45 凹部
51 モータベアリング
52 モータ軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、該車体上に設けられた積載部と、上記車体底部の対角位置に設けられた駆動操舵輪とからなる、無人搬送車用台車。
【請求項2】
前記駆動操舵輪が、モータと全方向移動車輪とからなり、モータブラケットを介して前記車体底部に取り付けられている、請求項1記載の無人搬送車用台車。
【請求項3】
前記駆動操舵輪が、前記車体の仮想中心線X−Xと全方向移動車輪の仮想中心線x−xとの角度θが30度〜60度の角度で前記車体底部の対角位置に取り付けられている、請求項1又は2記載の無人搬送車用台車。
【請求項4】
前記全方向移動車輪は、ホイールと、該ホイールの周囲に配列され該ホイールの直進方向に対して直交する横方向へ自在に回転する複数個の分割タイヤとからなり、該分割タイヤは、内周部の直径が外周部の直径よりも小さく、上記ホイールの周面に車輪外周円の円弧を形成するように配置されている、請求項1〜3の何れかに記載の無人搬送車用台車。
【請求項5】
車体と、該車体上に設けられた積載部と、上記車体底部の対角位置に設けられた駆動操舵輪と、該駆動操舵輪を制御する制御装置とからなる、無人搬送車。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−235082(P2010−235082A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−88152(P2009−88152)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)