説明

無人無線操縦ヘリコプタ

【課題】ラダー機構が故障して機体が回転する状態となっても、コントロールして着陸させる。
【解決手段】無人無線操縦ヘリコプタは、メインロータ2、テールロータ4を有するラダー機構3、動力源5、受信器6、サーボモータ7、及びセンサ8を備える。無人無線操縦ヘリコプタは、受信器6の出力をセンサ8で補正してサーボモータ7がメインロータ2とラダー機構3を制御して飛行する。センサ8は、機体1の姿勢と方位を検出する。受信器6は、受信回路14で受信する制御信号とセンサ8からの信号とでサーボモータ7を制御するマイクロコンピュータ15と、ラダー機構3の故障検出部16とを備える。無人無線操縦ヘリコプタは、故障検出部16がラダー機構3の異常を検出する状態で、マイクロコンピュータ15が、メインロータ2の方位に対する回転位置におけるピッチの制御をして機体1を方位でコントロールし、あるいはホバリング状態に安定化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送信器で機体をコントロールする無人無線操縦ヘリコプタに関し、特にテールロータが故障しても墜落しない無人無線操縦ヘリコプタに関する。
【背景技術】
【0002】
無人無線操縦ヘリコプタは、送信器にコントロールされて飛行する。送信器は、機体の前後の傾きをエレベータで制御し、機体の左右の傾きをエルロンで制御し、機体の方向をラダーで制御し、メインロータのピッチをピッチコントロールで制御し、メインロータやテールロータを回転するエンジンの回転数をエンジンコントロールで、又はモータの回転数をインバータで制御してヘリコプタを飛行させる。ヘリコプタは、機体を前後の傾きで前後に移動し、左右の傾きで左右に移動し、テールの方向で機体を飛行させる方向を決め、メインロータのピッチで上下に移動し、さらに、エンジンやモータの回転数でも上下に移動する。送信器は、これらをコントロールする制御信号をPWM変調して一定の周期で時分割にヘリコプタに搭載している受信器に送信する。
【0003】
無人無線操縦ヘリコプタは、送信器から送信される制御信号を受信する受信器と、この受信器の出力で制御されて、メインロータやテールロータをコントロールするサーボモータと、機体の姿勢を検出してサーボモータを制御して機体を安定化させるジャイロセンサを備える。ジャイロセンサは、受信器とサーボモータとの間に接続される。受信器で受信される制御信号は、サーボモータをコントロールして、メインロータやテールロータをコントロールして機体を送信器で制御するように飛行させる。空気中を飛行するヘリコプタは、空気の乱れで姿勢が不安定になるので、このことをジャイロセンサで検出して機体を安定に飛行させる。ただ、ジャイロセンサやサーボモータでは完全に機体を安定に飛行できず、操作者が常に機体の姿勢を見ながら、送信器で機体を頻繁にコントロールする必要がある。
【0004】
ところで、無人無線操縦ヘリコプタは、農薬散布、送電線の監視、空撮、ホビー用などに使用されている。農薬散布や送電線の監視にあっては、専用の自律制御装置が開発されている(特許文献1ないし3参照)。また、市販のホビー用に使用される無人無線操縦ヘリコプタは、補助的な機体の姿勢をジャイロセンサで検出し、このジャイロセンサを、受信器とサーボモータとの間に接続し、ジャイロセンサで機体を安定化している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−118498号公報
【特許文献2】特開2004−256020号公報
【特許文献3】特開2004−256022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上の無人無線操縦ヘリコプタは、全ての機器が正常に動作する状態で安定に飛行できる。しかしながら、機体の方向をコントロールするラダー機構が故障すると、メインロータの回転トルクを打ち消すことができなくなって、機体が回転して制御できなくなって墜落する。ヘリコプタは、大きなメインロータの回転トルクが、機体をメインロータと反対の方向に回転させる逆回転トルクとして作用する。ヘリコプタは、逆回転トルクを打ち消すためにラダー機構を設けている。ラダー機構はテールロータを備え、テールロータでメインロータの逆回転トルクを打ち消している。さらに、ラダー機構は、テールロータのピッチを変更して、機体の方向をコントロールする。ラダー機構は、メインロータを回転させるモータやエンジンでテールロータを回転し、このテールロータのピッチをサーボモータで制御している。サーボモータは、リンク機構を介してテールロータのピッチを可変する機構に連結される。
【0007】
ヘリコプタは、エンジンやモータで、さらに大きなメインロータの回転によって、相当な振動状態で飛行されることから、リンク機構の故障などが発生しやすく、テールロータを含むラダー機構が故障すると墜落するのを防止できない。飛行機は、たとえラダー機構が故障しても、エルロンで機体をコントロールして墜落を防止できる。しかしながら、ヘリコプタは、ラダー機構が故障すると完全に制御できなくなって墜落する。
【0008】
本発明は、この欠点を解決することを目的に開発されたものである。本発明の重要な目的は、ラダー機構が故障して機体が回転する状態となってもコントロールして着陸できる無人無線操縦ヘリコプタを提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0009】
本発明の無人無線操縦ヘリコプタは、機体1を前後左右上下に移動させるメインロータ2と、機体1の水平面内の姿勢をコントロールするテールロータ4を有するラダー機構3と、このメインロータ2とテールロータ4とを回転させる動力源5と、メインロータ2とラダー機構3をコントロールする信号を受信する受信器6と、この受信器6に接続されてメインロータ2とラダー機構3を制御するサーボモータ7と、受信器6に接続されて受信器6の信号を補正してサーボモータ7でもってメインロータ2とラダー機構3を制御するセンサ8とを備えている。無人無線操縦ヘリコプタは、受信器6の信号をセンサ8で補正してサーボモータ7がメインロータ2のピッチとラダー機構3を制御して飛行する。センサ8は、機体1の姿勢を検出する姿勢センサと、機体1の方位を検出する方位センサとを備えている。受信器6は、送信器20から送信される制御信号を受信する受信回路14と、この受信回路14から出力される制御信号とセンサ8からの信号とでサーボモータ7を制御するマイクロコンピュータ15と、ラダー機構3の異常を検出する故障検出部16とを備えている。無人無線操縦ヘリコプタは、故障検出部16がラダー機構3の異常を検出する状態で、マイクロコンピュータ15が、メインロータ2の方位に対する回転位置におけるピッチの制御をしてラダー機構3の故障状態で機体1を方位でコントロールし、あるいはホバリング状態に安定化させるようにしている。
【0010】
以上の無人無線操縦ヘリコプタは、ラダー機構が故障しても機体の方向でなく東西南北の方位でコントロールし、あるいはホバリング状態に安定化させて着陸できる。それは、以上の無人無線操縦ヘリコプタが、ラダー機構が故障する状態では、メインロータの東西南北の方位を基準としてメインロータのピッチをコントロールするからである。
【0011】
ヘリコプタは、送信器の操作をニュートラルとする状態で、常に安定して飛行するわけではない。空気の乱れや風で機体が不安定になるからである。このため、操作者は、常にヘリコプタの姿勢を見ながら送信器を操作して、風や空気の乱れを修正するように機体をコントロールする必要がある。このために、機体を空気中に停止させるホバリング状態にあっても、操作者は送信器を微細に操作して、機体を修正するための制御信号を常に送信する必要がある。エルロンで機体左右の傾きを、エレベータで機体前後の傾きを、ラダー機構で機体の向きを、さらにメインロータのピッチやエンジンの回転数を微細にコントロールして上下位置を制御してホバリングさせる必要がある。この状態でラダー機構が故障して、水平面内で回転する状態になると、操作者は送信器でエルロンやエレベータを操作して機体をコントロールできなくなって墜落する。
【0012】
ヘリコプタは、ラダー機構が故障しても、ホバリング状態として空気中に停止させることで安全に着陸できる。以上の無人無線操縦ヘリコプタは、ラダー機構が故障して、機体が水平面内で回転するようになっても、機体の方向ではなくて、メインロータの東西南北に対する方位を基準としてメインロータのピッチをコントロールするので、機体がどの方位を向くかに関係なくメインロータの回転位置におけるピッチをコントロールしてホバリング状態として着陸できる。ラダー機構が故障する状態で、機体をホバリング状態として空気中に停止させてゆっくりと降下させて着陸でき、また、操作者が、機体の方向でなくて、東西南北の方位でエルロンとエレベータを操作して機体をコントロールして着陸できる。
【0013】
たとえば、ラダー機構が故障する状態で、機体が垂直姿勢から東に傾斜する状態でテールを回転させる状態になると、送信器から送信することなく、受信器に内蔵しているマイクロコンピュータがセンサで機体の傾きを検出して、メインロータが南北の方向から東側を回転する状態でピッチを大きくして上昇力を大きく、反対に西側を回転する状態でピッチを小さくして上昇力を小さくして、東側の傾斜を修正する。したがって、水平面内で回転する機体が東西南北のどの方向に傾斜しても傾きを修正するようにコントロールして着陸できる。さらに、ラダー機構が故障する状態で、送信器から東西南北の方位で機体をコントロールしてホバリング状態として着陸させることもできる。
【0014】
本発明の無人無線操縦ヘリコプタは、故障検出部16がラダー機構3の故障を検出すると、マイクロコンピュータ15が機体1をホバリング状態で次第に降下させるようにサーボモータ7でメインロータ2のピッチを制御することができる。
以上の無人無線操縦ヘリコプタは、ラダー機構が故障すると、ヘリコプタをホバリングさせる状態として、次第に降下させるので、ラダー機構の故障したヘリコプタを墜落させることなく安全に着陸できる。
【0015】
本発明の無人無線操縦ヘリコプタは、ラダー機構3が、テールロータ4のピッチを可変させる範囲を制御する制限機構17を設けることができる。
以上の無人無線操縦ヘリコプタは、ラダー機構が故障する状態で、機体が水平面内で回転する速度を遅く制限できる。したがって、ラダー機構が故障してもヘリコプタをより確実に着陸できる。
【0016】
本発明の無人無線操縦ヘリコプタは、センサ8が、3軸角度センサと3軸角速度センサと3軸加速度センサと、方位センサとGPSによる位置センサとを備えることができる。
以上の無人無線操縦ヘリコプタは、機体をより安定に飛行できると共に、GPSでもって所定の位置に確実に飛行できる特徴も実現する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施例にかかる無人無線操縦ヘリコプタの概略構成図である。
【図2】図1に示す無人無線操縦ヘリコプタのラダー機構を示す概略水平断面図である。
【図3】図1に示す無人無線操縦ヘリコプタのラダー機構が故障して機体が回転しながら傾斜する状態を示す正面図である。
【図4】図3に示す無人無線操縦ヘリコプタの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための無人無線操縦ヘリコプタを例示するものであって、本発明は無人無線操縦ヘリコプタを以下のものに特定しない。さらに、この明細書は、特許請求の範囲を理解しやすいように、実施例に示される部材に対応する番号を、「特許請求の範囲」および「課題を解決するための手段の欄」に示される部材に付記している。ただ、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するものでは決してない。
【0019】
図1に示す無人無線操縦ヘリコプタは、機体1を前後左右上下に移動させるメインロータ2と、機体1の水平面内の姿勢をコントロールするテールロータ4を有するラダー機構3と、このメインロータ2とテールロータ4とを回転させる動力源5と、メインロータ2とラダー機構3を制御する信号を受信する受信器6と、この受信器6に接続されてメインロータ2とラダー機構3を制御するサーボモータ7と、受信器6に接続されて受信器6の信号を補正してメインロータ2とラダー機構3を制御するセンサ8とを備えている。
【0020】
以上の無人無線操縦ヘリコプタは、送信器20から送信される制御信号を受信器6で受信し、受信器6の受信信号をセンサ8の信号で補正してサーボモータ7がメインロータ2のピッチとラダー機構3を制御して飛行する。
【0021】
メインロータ2は動力源5で回転される。動力源5は、エンジンやモータで、歯車10を介してメインロータ2とテールロータ4とを回転させる。歯車10は、メインロータ2とテールロータ4とを一定の比率で回転させて、テールロータ4でもってメインロータ2の回転トルクを打ち消して機体1を所定の方向に制御する。
【0022】
メインロータ2は、スワッシュプレート11をサーボモータ7Aで傾斜させて回転位置におけるピッチを変更し、さらに、スワッシュプレート11を上下に移動させて、メインロータ2のピッチをコントロールしている。スワッシュプレート11は、リンク機構12を介してサーボモータ7Aに連結される。スワッシュプレート11は、スワッシュプレート11の3点を3個のサーボモータ7Aに連結している。各々のサーボモータ7Aが、スワッシュプレート11を傾斜し、また上下に移動させて、メインロータ2のピッチをコントロールする。
【0023】
スワッシュプレート11が、機体1の左右に傾斜されて機体1を左右に傾斜させ、前後に傾斜されて機体1を前後に傾斜させ、上下に移動されて機体1を上昇、降下させる。送信器20のエルロンを操作して機体1を左右に傾斜させ、エレベータを操作して機体1を前後に傾斜させ、メインロータ2のピッチをコントロールして、機体1を上下に移動させる。したがって、送信器20のエルロンが操作されるとスワッシュプレート11は機体1の左右に傾斜され、エレベータが操作されるとスワッシュプレート11は前後に傾斜され、メインロータ2のピッチがコントロールされると、スワッシュプレート11は上下に移動される。
【0024】
ラダー機構3は、動力源5で回転されるテールロータ4と、このテールロータ4のピッチをコントロールするリンク機構13とを備える。リンク機構13はサーボモータ7Bに連結しており、サーボモータ7Bでリンク機構13を駆動してテールロータ4のピッチを制御して、機体1の方向をコントロールする。図2のリンク機構13は、サーボモータ7Bで駆動される駆動アーム13Aと、この駆動アーム13Aの先端に一端を連結してなるコントロールロッド13Bと、このコントロールロッド13Bの他端に連結されて、テールロータ4のピッチを変更するコンロッド13Cとを備える。図のコンロッド13Cは、全体の形状をL字状としており、そのコーナー部を傾動軸18を介して、傾動できるように機体1に固定している。さらに、L字状のコンロッド13Cは、一方の折曲部をコントロールロッド13Bに連結し、他方の折曲部をテールロータ4のピッチを変更するプレート19に連結している。このリンク機構13は、サーボモータ7Bで駆動される駆動アーム13Aでコントロールロッド13Bを軸方向に移動し、このコントロールロッド13Bの軸方向の運動を、コンロッド13Cを介して、テールロータ4の回転軸4Aの軸方向の運動に変換してテールロータ4のピッチを変更する。
【0025】
さらに、図2に示すラダー機構3は、テールロータ4のピッチを可変させる範囲を制御する制限機構17を備えている。図の制限機構17は、コンロッド13Cの傾動範囲を制限するストッパ17Aである。この制限機構17は、コントロールロッド13Bで駆動されて傾動するコンロッド13Cの折曲部の両側にストッパ17Aを設けており、これらのストッパ17Aでコンロッド13Cの傾動範囲を制限して、テールロータ4のピッチの可変範囲を制限している。ただ、制限機構は、テールロータのピッチの可変範囲を制限できる他の全ての機構とすることができる。たとえば、制限機構17は、図2の鎖線で示すように、テールロータ4の回転軸4Aに一対のカラー17Bを設けると共に、これらのカラー17Bをプレート19の両側に離して配置することにより、同様の効果を得ることができる。以上のラダー機構3は、たとえば、コントロールロッド13Bが切断される等の故障によって、テールロータ4のピッチの変更が不能になる状態で、コンロッド13Cが制限なく傾動されてテールロータ4のピッチが異常な状態となるのを阻止する。すなわち、この制限機構17は、ラダー機構3が故障する状態で、テールロータ4のピッチが大きくなりすぎたり、小さくなりすぎるのを阻止して、機体1が水平面内で回転する速度が速くなるのを防止する。このように、ラダー機構3が制限機構17を備えるヘリコプタは、ラダー機構3が故障する状態で、機体1が水平面内で回転する速度を遅く制限できるので、ラダー機構3が故障しても、より確実に着陸できる。
【0026】
受信器6は、送信器20から送信される制御信号を受信する受信回路14と、この受信回路14から出力される制御信号とセンサ8からの信号とでサーボモータ7を制御するマイクロコンピュータ15と、ラダー機構3の異常を検出する故障検出部16とを備えている。
【0027】
受信器6は、送信器20から送信される制御信号を受信する。送信器20から送信される制御信号は、複数チャンネルのサーボモータ7を制御するPWM変調された信号である。制御信号は、エレベータサーボを駆動する制御信号と、エルロンサーボを制御する制御信号と、ラダーサーボを制御する制御信号と、ピッチコントロールサーボを制御する制御信号と、回転数コントロールサーボを制御する制御信号からなる複数のチャンネルの制御信号を時分割に決まった順番に、繰り返し並べたものである。PWM変調された制御信号は、各々のサーボモータ7A、7B、7Cに出力され、サーボモータ7A、7B、7Cは、PWM変調のパルス幅に相当する位置に移動して停止する。送信器20が送信する制御信号は、そのパルス幅を、エルロンやエレベータの舵角に相当して変化させている。すなわち、送信器20は、搬送波をPWM変調して送信するパルス幅を調整して、エルロンやエレベータの舵角をコントロールする。送信器20が特定のパルス幅の制御信号を送信し、受信器6がこのパルス幅の制御信号を受信し、このパルス幅に相当する位置にサーボモータ7A、7B、7Cを移動させて、サーボモータ7A、7B、7Cで機体1の姿勢をコントロールする。
【0028】
ラダー機構3が故障しない状態で、送信器20から送信される制御信号は受信器6に受信され、受信器6が受信する制御信号が各々のサーボモータ7A、7B、7Cに出力される。各々のサーボモータ7A、7B、7Cは、エルロンを制御して機体1の左右の傾きを制御し、エレベータを制御して機体1の前後の傾きを制御し、テールロータ4のピッチを制御して機体1の方向を制御し、さらに、メインロータ2のピッチやメインロータ2の回転数を制御して、機体1を上下に移動させる。センサ8は、機体1の姿勢や加速度を検出して、機体1が空気の乱れや風で不安定にならないように、サーボモータ7の動きを補正する。
【0029】
センサ8は、機体1の姿勢を検出する姿勢センサと、機体1が東西南北のどの方向を向いているかの方位を検出する方位センサとを備えている。姿勢センサは、機体1の姿勢を検出する3軸角度センサと3軸角速度センサと3軸加速度センサとを備えている。さらに、センサ8は、好ましくは3軸角度センサと3軸角速度センサと3軸加速度センサと方位センサに加えて、GPSによる位置センサも備えている。位置センサを備えるヘリコプタは、位置センサが検出する位置信号を時間と共にメモリに記憶し、あるいは位置信号をヘリコプタに搭載しているサブ送信器(図示せず)でサブ受信器に送信して、ヘリコプタの飛行位置を地図上に表示できる。また、送信器20から入力される地図上の特定位置を示す信号でもって、ヘリコプタを指定される位置に飛行できる。
【0030】
マイクロコンピュータ15は、ラダー機構3が故障する状態で、センサ8の信号を演算して、機体1を方位でコントロールしてサーボモータ7を制御する。ヘリコプタは、ラダー機構3が故障すると、機体1がメインロータ2の回転方向と反対方向に回転される状態となる。故障検出部16は、機体1が回転される状態を検出して、ラダー機構3の故障を判定する。機体1の回転はセンサ8で検出される。したがって、故障検出部16は、センサ8からの信号で機体1が一定の速度以上で回転することを検出して、ラダー機構3の故障を検出する。
【0031】
ラダー機構3の故障したヘリコプタは、機体1をホバリング状態として、ゆっくりと降下させて安全に着陸して回収できる。ラダー機構3の故障しないヘリコプタは、左右の傾きをエルロンで細かく調整し、前後の傾きをエレベータで細かく調整し、さらに機体1を一定の向きとするためにラダーを細かく調整して、空気中で停止させてホバリングできる。しかしながら、ラダー機構3が故障したヘリコプタは、水平面内で回転する状態となって、常に向きが変わるのでエルロンやエレベータで安定にコントロールできなくなって墜落する。
【0032】
マイクロコンピュータ15は、故障検出部16でラダー機構3の故障を検出すると、メインロータ2の方位、すなわち東西南北に対する回転位置におけるピッチの制御をして機体1を制御する。ラダー機構3が故障する状態では、機体1の方向でメインロータ2のピッチをコントロールしない。マイクロコンピュータ15は、方位センサで機体1の方位を検出し、機体1の方位から回転するメインロータ2の方位を判定する。水平面内で回転しているメインロータ2は、機体1との相対位置と、機体1の方位から東西南北に対する方位が特定されるので、マイクロコンピュータ15は、方位センサで機体1の方位を検出して、回転しているメインロータ2の方位を検出することができる。
【0033】
ラダー機構3が故障する状態で、マイクロコンピュータ15は、機体1の方位によらず、メインロータ2の東西南北に対する方位でメインロータ2のピッチをコントロールする。ヘリコプタは、空気の乱れや風で姿勢が不安定になる。図3と図4は、ラダー機構3が故障して機体1が回転しながら、東に傾斜した状態を示している。東に傾斜する状態は、メインロータ2の回転軸2Aの上端が、地球の垂線に対して東側にずれて、回転するメインロータ2が東側を回転する水平位置が西側を回転する水平位置よりも低くなる状態である。この状態になると、マイクロコンピュータ15は、メインロータ2が南北の方向から東側を回転する状態でピッチを大きくして図4において右側の上昇力を大きくし、反対に西側を回転する状態でピッチを小さくして図4において左側の上昇力を小さくする。この状態で、機体1は、図3の矢印Aで示す復元力が作用して、水平姿勢に修正される。
【0034】
回転するメインロータ2が、水平位置が低くなる領域を通過するときにピッチを大きく、反対に水平位置を高くする領域を通過するときにピッチを小さくすることで、機体1の傾きを修正して空気中にホバリングできる。ただ、風のある状態では、機体1を風上に向かって傾斜させる姿勢に制御して、空気中に停止してホバリングできる。したがって、機体1が風で流されることをセンサ8が検出する状態にあっては、マイクロコンピュータ15は、機体1を移動させないように、メインロータ2が風下側を通過するときにピッチを大きく、風上側を通過するときにピッチを小さくして、空気中に停止してホバリングできる。マイクロコンピュータ15は、風上と風下の方位を、センサ8で機体1が移動される方向から検出する。
【0035】
マイクロコンピュータ15は、ラダー機構3が故障する状態では、送信器20の信号によらず、センサ8で機体1の姿勢や傾きを検出して、空気中でホバリングできるようにメインロータ2のピッチをコントロールして着陸させる。ただし、ヘリコプタは、ラダー機構3が故障する状態においても、送信器20で操作できる状態として、送信器20で操作してヘリコプタを着陸させることもできる。このヘリコプタは、送信器20で東西南北を基準として機体1の傾きをコントロールする制御信号を送信し、この信号を受信器6で受信して、メインロータ2のピッチを東西南北の方位を基準としてコントロールして機体1をホバリング状態として着陸させる。
【0036】
ラダー機構3が故障する状態で、機体1を空気中にホバリングして停止できるヘリコプタは、ゆっくりと降下させて着陸して回収される。ただ、ヘリコプタが離れた位置でラダー機構3が故障する場合は、特定の方向に移動させて着陸させることもできる。特定の方向に移動させるには、移動させる東西南北の方位を送信器20から送信し、受信器6でこの信号を受信してメインロータ2のピッチをコントロールして機体1を移動させる。ラダー機構3が故障して機体1が回転する状態となっても、ヘリコプタは、メインロータ2の回転軸2Aを同じ方位に傾斜させる状態で機体1を回転させる。したがって、マイクロコンピュータ15が、メインロータ2のピッチをコントロールし、メインロータ2の回転軸2Aの傾斜角と方位とをコントロールすることで、機体1をホバリング状態とし、また、特定の方向に移動させることができる。
【0037】
ラダー機構3が故障する状態で、ヘリコプタを制御する送信器20は、機体1の前後左右の傾きをコントロールするのではなく、東西南北の方位に対する傾きをコントロールする。たとえば、エルロンで機体1の東西方位の傾きを、エレベータで機体1の南北の傾きをコントロールして、機体1をホバリング状態とし、あるいは特定の方位に飛行して着陸させる。受信器6は、送信器20から送信される制御信号で、東西南北の傾きを制御するようにメインロータ2のピッチをコントロールして、ホバリング状態とし、あるいは特定の方位に飛行させて着陸させる。受信器6のマイクロコンピュータ15は、送信器20から送信される制御信号で、機体1の東西南北の傾きを制御するようにメインロータ2のピッチを回転位置でコントロールして、機体1をホバリング状態とし、あるいは飛行させて着陸させる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、無人無線操縦ヘリコプタの操作において、ラダー機構が故障する状態にあっても安全に着陸させて、空撮作業や農薬散布作業などを安全に中断できる。
【符号の説明】
【0039】
1…機体
2…メインロータ 2A…回転軸
3…ラダー機構
4…テールロータ 4A…回転軸
5…動力源
6…受信器
7…サーボモータ 7A…サーボモータ
7B…サーボモータ
7C…サーボモータ
8…センサ
10…歯車
11…スワッシュプレート
12…リンク機構
13…リンク機構 13A…駆動アーム
13B…コントロールロッド
13C…コンロッド
14…受信回路
15…マイクロコンピュータ
16…故障検出部
17…制限機構 17A…ストッパ
17B…カラー
18…傾動軸
19…プレート
20…送信器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体(1)を前後左右上下に移動させるメインロータ(2)と、
前記機体(1)の水平面内の姿勢をコントロールするテールロータ(4)を有するラダー機構(3)と、
前記メインロータ(2)と前記テールロータ(4)とを回転させる動力源(5)と、
前記メインロータ(2)と前記ラダー機構(3)をコントロールする信号を受信する受信器(6)と、
この受信器(6)に接続されて前記メインロータ(2)と前記ラダー機構(3)を制御するサーボモータ(7)と、
前記受信器(6)に接続されて、前記受信器(6)の信号を補正して前記サーボモータ(7)でもって前記メインロータ(2)と前記ラダー機構(3)を制御するセンサ(8)とを備えており、
前記受信器(6)の出力を前記センサ(8)で補正して、前記サーボモータ(7)が前記メインロータ(2)のピッチと前記ラダー機構(3)を制御して飛行するようにしてなる無人無線操縦ヘリコプタであって、
前記センサ(8)が、機体(1)の姿勢を検出する姿勢センサと、機体(1)の方位を検出する方位センサとを備えており、
前記受信器(6)が、送信器(20)から送信される制御信号を受信する受信回路(14)と、この受信回路(14)から出力される制御信号とセンサ(8)からの信号とで前記サーボモータ(7)を制御するマイクロコンピュータ(15)と、前記ラダー機構(3)の異常を検出する故障検出部(16)とを備えており、
前記故障検出部(16)がラダー機構(3)の異常を検出する状態で、前記マイクロコンピュータ(15)が、メインロータ(2)の方位に対する回転位置におけるピッチの制御をしてラダー機構(3)の故障状態で機体(1)を方位でコントロールし、あるいはホバリング状態に安定化させるようにしてなる無人無線操縦ヘリコプタ。
【請求項2】
前記故障検出部(16)がラダー機構(3)の故障で、前記マイクロコンピュータ(15)が機体(1)をホバリング状態で次第に降下させるようにサーボモータ(7)でメインロータ(2)のピッチを制御する請求項1に記載される無人無線操縦ヘリコプタ。
【請求項3】
前記ラダー機構(3)が、テールロータ(4)のピッチを可変させる範囲を制御する制限機構(17)を設けてなる請求項1又は2に記載される無人無線操縦ヘリコプタ。
【請求項4】
前記センサ(8)が、3軸角度センサと3軸角速度センサと3軸加速度センサと、方位センサとGPSによる位置センサとを備える請求項1ないし3のいずれかに記載される無人無線操縦ヘリコプタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−76628(P2012−76628A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−224377(P2010−224377)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【出願人】(304020292)国立大学法人徳島大学 (307)