説明

無塗装の自動車両用プラスチックに含まれる赤外線反射顔料

【課題】赤外線反射顔料と熱可塑性成分とを含む、自動車両に用いるプラスチック組成物を提供する。
【解決手段】赤外線反射成分を含むプラスチック組成物は、赤外線反射顔料を含まない等色プラスチック組成物と比較して、約750nm〜約2500nm波長のスペクトルにおける反射率が少なくとも約300%増加し、赤外線反射顔料を含まない等色プラスチック組成物と比較して、ASTM規格D4803−97試験法に記載の手順に従って測定したデルタTが少なくとも約15℃である。また、自動車両用プラスチック部品を赤外線源へ暴露したときに、自動車両用プラスチック部品の温度上昇を抑制する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無塗装の自動車両用プラスチック中に分散させる赤外線(IR)反射顔料を含む、プラスチック組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車両用プラスチック部品、特に自動車外装プラスチック部品は、軽量であり、衝撃強度が高く、自動車両の寿命まで色が維持されることが好ましい。またプラスチック配合物の多くは、日光に長時間暴露される結果、温度上昇による構造上の歪みが生じる。
【0003】
複合無機着色顔料(CICP)は、IR反射率特性を増加させて温度上昇を抑制する目的で、バイナルサイディング(プラスチック製壁板・羽目板)、特に白色バイナルサイディングに混合されている。特許文献1は、壁板材料や屋根材料などの建築材料におけるCICPの使用を開示している。無機顔料の種類やそれらの用途についての概要は、非特許文献1が参照可能である。
【0004】
プラスチック組成物の温度上昇を抑制することで、プラスチック組成物から形成される部品において、膨張抑制効果が得られる。特に赤外線輻射下での暴露による温度上昇にともなう膨張を抑制することで、自動車両の隣接するプラスチック部品間の間隙を設計上小さくすることができる。
【特許文献1】米国特許第6,454,848号明細書
【非特許文献1】Kirk-Othmer Encyclopedia of Chemical Technology、第4版、第18巻
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自動車両、特に自動車の製造において、特性と寿命が改善された材料が望まれている。自動車製造で他に考慮すべき重要な点としては、車両の総重量とそれが燃費に及ぼす影響が挙げられる。本発明は、自動車両用材料の寿命と性能を改善し、車両の総重量を低減する手段を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、赤外線輻射下での暴露による温度上昇に対して改善した耐性を有する軽量プラスチック製自動車両部品への需要を満たすものである。
【0007】
本発明によると、赤外線反射顔料と熱可塑性成分とを含む、無塗装の自動車両用プラスチック部品が提供される。無塗装の自動車両用プラスチック部品は、約750nm〜約2500nm波長のスペクトルにおける少なくとも1つの波長の光を少なくとも約60%反射することができる。無塗装の自動車両用プラスチック部品は、最大温度上昇が約95℃未満であり、引張伸びが約200%以上である。
【0008】
本発明はまた、自動車両用プラスチック部品の温度上昇を抑制する方法を提供する。本発明の方法は、赤外線反射顔料およびプラスチック組成物を用意するステップ、前記赤外線反射顔料を約5質量パーセント未満の濃度でプラスチック組成物に混合するステップ、および前記プラスチック組成物を自動車両用プラスチック部品に形成するステップを含む。次いで本発明の自動車両用プラスチック部品を、約750nm〜約2500nm波長の線源へ暴露させることができる。このような暴露にあたり、前記自動車両用プラスチック部品は、最大温度上昇が約95℃未満であり、約750nm〜約2500nm波長のスペクトルにおける少なくとも1つの波長の光を少なくとも約60%反射し、引張伸びが約200%以上である。
【0009】
さらに本発明は、赤外線反射顔料と熱可塑性成分とを含む、自動車両に使用するプラスチック組成物を提供する。プラスチック組成物は、750nm〜2500nmの反射率を約300%増加させることができ、赤外線反射顔料を含まない等色プラスチック組成物と比較して、ASTM規格D4803−97試験法に記載の手順に従って測定したデルタTが少なくとも約15℃である。
【0010】
本発明はまた、前記赤外線反射顔料を用意するステップ、前記赤外線反射顔料をプラスチック組成物に混合するステップ、前記プラスチック組成物を自動車両用プラスチック部品に形成するステップ、および前記自動車両用プラスチック部品を赤外線源に暴露するステップを含む、自動車両用プラスチック部品の温度上昇を抑制する方法を提供する。本自動車両用プラスチック部品は、赤外線反射顔料を含まない等色自動車両用プラスチック部品と比較して、約750nm〜約2500nm波長のスペクトルにおける反射率を少なくとも約300%増加することができ、その結果、自動車両用プラスチック部品の温度上昇を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明について詳細に説明する。
【0012】
本発明は、赤外線反射顔料と熱可塑性成分とを含む、無塗装の自動車両用プラスチック部品に関する。無塗装の自動車両用プラスチック部品には、当該部品が約750nm〜約2500nm波長のスペクトルにおける少なくとも1つの波長の光を少なくとも約60%反射し、最大温度上昇が約95℃未満、引張伸びが約200%以上となるのに十分な量で、赤外線反射顔料を混合することができる。
【0013】
ある実施形態において、本発明の無塗装の自動車両用プラスチック部品は、約750nm〜約2500nm波長のスペクトルにおける少なくとも1つの波長の光を少なくとも約70%反射し、最大温度上昇が約75℃未満である。
【0014】
本発明は、赤外線反射顔料と熱可塑性成分とを含む、自動車両に用いるプラスチック組成物に関する。本プラスチック組成物は、赤外線反射顔料を含まない等色(color matched)プラスチック組成物と比較して、約750nm〜約2500nm波長のスペクトルにおける反射率を少なくとも約300%増加することができ、ASTM規格D4803−97試験法に記載の手順に従って測定したデルタTが少なくとも約15℃である。
【0015】
プラスチック組成物は、高延性プラスチック組成物であってもよい。高延性とは、ASTM規格D638−03試験手順で測定した引張伸びが少なくとも約200%であるプラスチック組成物のことをいう。
【0016】
本発明によると、プラスチック組成物は、約750nm〜約2500nm波長のスペクトルにおける反射率を少なくとも約300%増加することができ、好ましくは本プラスチック組成物は、赤外線反射顔料を含まない等色自動車両用プラスチック部品と比較して、約750nm〜約2500nmのスペクトルにおける反射率を少なくとも約350%増加することができる。
【0017】
本プラスチック組成物は、赤外線反射顔料を含まない等色プラスチック組成物と比較して、ASTM規格D4803−97試験法に記載の手順に従って測定したデルタTが少なくとも約20℃、好ましくはデルタTが少なくとも約25℃である。本明細書でいう「温度上昇」とは、ASTM規格D4803−97試験法のプロトコルに基づいた、赤外線輻射下で暴露した物質の温度変化を意味する。
【0018】
本発明のプラスチック組成物はコーティングを施していないものであってもよいが、より好ましくは、プラスチック組成物は無塗装である。完成品に色を着ける目的で、プラスチック組成物は、着色剤または染料をさらに含んでいてもよい。完成品に所望の特性を賦与する目的で、プラスチック組成物は、他の添加物をさらに含んでいてもよい。
【0019】
プラスチック組成物は、赤外線反射顔料を約5質量パーセント未満で含むことができる。プラスチック組成物は、赤外線反射顔料を約2質量パーセント未満で含むことが好ましい。
【0020】
本発明によると、プラスチック組成物は、左側および右側フロントフェンダ、 左側および右側リアフェンダ、左側および右側フロントボデーパネル、左側および右側リアボデーパネル、ドアパネル、フードパネル、ルーフパネル、トランクパネル、テールゲートパネル、アップリケ(applique)またはガーニッシュ(garnish)、グリル、ハンドル、およびその他の一般的な外装部品からなる群より選ばれる少なくとも1種に形成することができる。
【0021】
プラスチック組成物配合において、赤外線反射顔料は複合無機着色顔料であってもよい。好適な複合無機着色顔料は後述する。
【0022】
プラスチック組成物は、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリオレフィン、置換ポリオレフィン、熱可塑性ポリオレフィンゴム、ポリカーボネート/アクリロニトリルスチレンアクリレート、アクリロニトリルエチレンスチレン、ポリカーボネート/ポリエチレンテレフタレート、アクリロニトリルスチレンアクリレート、およびこれらの共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むプラスチックを配合することができる。
【0023】
本発明はまた、自動車両用プラスチック部品の温度上昇を抑制する方法を提供する。本方法は、赤外線反射顔料およびプラスチック組成物を用意するステップ、赤外線反射顔料を約5質量パーセント未満の濃度で前記プラスチック組成物に混合するステップ、前記プラスチック組成物を自動車両用プラスチック部品に形成するステップ、および前記自動車両用プラスチック部品を、約750nm〜約2500nm波長の線源に暴露するステップを含む。本方法により提供される自動車両用プラスチック部品は、最大温度上昇が約95℃未満であり、前記約750nm〜約2500nm波長のスペクトルにおける少なくとも1つの波長の光を少なくとも約60%反射することができる。自動車両用プラスチック部品はまた、引張伸びが約200%以上である。
【0024】
本発明の方法は、最大温度上昇が約75℃未満である自動車両用プラスチック部品であり、約750nm〜約2500nmのスペクトルにおける少なくとも1つの波長の光を少なくとも約70%反射する部品を提供する。
【0025】
本発明はさらに、赤外線反射顔料を用意するステップ、前記赤外線反射顔料をプラスチック組成物に混合するステップ、前記プラスチック組成物を自動車両用プラスチック部品に形成するステップ、および自動車両用プラスチック部品を赤外線源に暴露するステップを含む、自動車両用プラスチック部品の温度上昇を抑制する方法を提供する。本自動車両用プラスチック部品は、赤外線反射顔料を含まない等色自動車両用プラスチック部品と比較して、約750nm〜約2500nm波長のスペクトルにおける反射率を少なくとも約300%増加することができる。
【0026】
本発明の方法によると、本自動車両用プラスチック部品は、赤外線反射顔料を含まない等色自動車両用プラスチック部品と比較して、約750nm〜約2500nm波長のスペクトルにおける反射率を少なくとも約350%増加することができ、より好ましくは、約750nm〜約2500nm波長のスペクトルにおける反射率を少なくとも約400%増加することができる。
【0027】
本発明の方法は、赤外線反射顔料を含まない等色自動車両用プラスチック部品と比較して、ASTM規格D4803−97試験法に記載の手順に従って測定したデルタTが少なくとも約15℃、好ましくはデルタTが少なくとも約20℃、更により好ましくはデルタTが少なくとも約25℃となるのに十分な量で、赤外線反射顔料をプラスチック組成物に含ませるステップを含むことができる。
【0028】
本発明の方法は、コーティングを施していないおよび/また無塗装である自動車両用プラスチック部品を提供する。製造工程を単純化し、完成車両を軽量化するために、完成自動車両部品を例えば透明塗料または上塗塗料などでコーティングしないことが望ましい。
【0029】
自動車両用プラスチック部品の製造に用いられるプラスチック組成物は、約5質量パーセント未満の赤外線反射顔料を含んでいてもよく、好ましくはプラスチック組成物は、約2質量パーセント未満の赤外線反射顔料を含むことができる。
【0030】
本発明の方法は、左側および右側フロントフェンダ、左側および右側リアフェンダ、左側および右側フロントボデーパネル、左側および右側リアボデーパネル、ドアパネル、フードパネル、ルーフパネル、トランクパネル、テールゲートパネル、アップリケまたはガーニッシュ、グリル、ハンドル、およびその他の一般的な外装部品からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むあらゆる自動車両用プラスチック部品の製造に用いることができる。
【0031】
本発明の方法において、赤外線反射顔料は、複合無機着色顔料を含んでいてもよい。本発明の様々な実施形態に好適に用いることのできる複合無機着色顔料は、例えば、米国特許第6,036,763号;第6,174,360号公報;第6,235,106号公報;第6,416,868号公報;第6,454,848号公報;および第6,579,356号公報に記載がある。本発明に有用なCICPは、プラスチック組成物に約5質量パーセント未満、好ましくは約2質量パーセント未満で混合したとき、所望のレベルでIRを反射することができる。
【0032】
本発明によると、CICPの有する向上したIR反射能によって、顔料が可視領域で所望の色を得ることが可能になり、また可視領域外のうち著しい部分の赤外線を反射することが可能になる。日光照射を受ける場合、IR反射CICPを含まない物体と比較して、CICPを含む物体は赤外線を反射するので表面温度が低く保たれる。CICPは好ましくは、可視波長(400〜700nm)より高い率で、約700nm〜約2000nmのIR波長を反射する。IR波長は、近赤外(700〜2000nm)、中赤外(2000〜4000nm)、遠赤外(4000〜5500nm)の3つの任意領域に分解される。同じような色を出す従来の非IR反射着色剤と比較して、CICPの温度上昇は非常に小さく、赤外線反射率は非常に高い。
【0033】
顔料のIR反射性能は一般に、スペクトルの可視領域(波長400〜700nm)と比較した、スペクトルの太陽赤外領域(波長700〜2500nm)において提供される反射率の相対量によって調べられる。カーボンブラックなどの一般的な黒色顔料は、両方の領域において低反射率を有している。本発明の様々な実施形態にCICPを用いて、IR反射率を向上させることができる。
【0034】
プラスチック組成物は、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリオレフィン、置換ポリオレフィン、熱可塑性ポリオレフィンゴム、ポリカーボネート/アクリロニトリルスチレンアクリレート、アクリロニトリルエチレンスチレン、ポリカーボネート/ポリエチレンテレフタレート、アクリロニトリルスチレンアクリレート、およびこれらの共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0035】
本発明によると、プラスチック組成物は、自動車両の外装に用いるのに好適な高延性組成物であってもよい。温度上昇を抑制するのに十分な量で赤外線反射顔料を混合するが、組成物の延性に悪影響を及ぼすものであってはならない。プラスチック組成物の延性は、例えば、引張下での物質の伸びを調べることによって測定する。引張伸びを調べるのに好適な方法としては、ASTM規格D638−03引張強度測定試験法が挙げられる。本明細書において「引張伸び」とは、ASTM規格D638−03試験法に従って測定した、試験片の伸長のことをいう。本明細書に記載するASTM規格および試験法全てに関するより詳しい情報は、ASTMインターナショナル(米国ペンシルバニア州19428−2959ウエストコンショホッケン、私書箱C700、バー・ハーバー・ドライブ100)より入手可能である。ASTM規格に基づいて行った試験は、例えばJIS規格や工業分野で認知度の高い他のプロトコル、当業者に知られる技法など、同等の試験プロトコルに従って実施してもよい。
【0036】
ASTM規格D4803−97試験法は、ポリ塩化ビニル系建築用製品における温度上昇を予測する試験法について説明している。この試験法を用いて、赤外線スペクトルの部分を反射する効率に関して、組成物を評価することができ、従って組成物からなる製品における温度上昇の抑制に関して、評価することができる。
【0037】
「等色プラスチック組成物」とは、類似したまたは同一の色を有するプラスチック組成物のことをいう。異なるプラスチック組成物間の色は、分光光度計を用いて、ASTM規格E308(1996)「表色系を用いた物体色計測の標準的技法」に記載の手順に従って測定・比較することができる。本明細書でいう「等色組成物」とは、類似したL測定値を有する組成物、すなわちデルタEが約1.5未満で異なる、好ましくはデルタEが約1未満で異なる色を有する組成物を意味する。
【0038】
上記したように、そして本発明によると、プラスチック組成物に用いられる赤外線反射顔料またはその混合物はその種類に関わらず、下記を満たすのに十分な量でプラスチック組成物中に含まれている必要がある。
1)赤外線反射顔料を含まない等色自動車両用プラスチック部品と比較して、組成物に入射する約750nm〜約2500nm波長の赤外線スペクトルにおける反射率を約300%、好ましくは少なくとも約350%、および最も好ましくは少なくとも約400%増加する。および/または、
2)ASTM規格D4803−97に記載の試験法および手順に従って測定した、赤外線輻射下での暴露によるプラスチック組成物温度上昇を、少なくとも約15℃に抑制する。温度上昇の抑制またはデルタTは、試験組成物と等色であるが赤外線反射顔料を全く含まないプラスチック組成物に関して計測する。あるいは例えば、比較用の等色組成物が用意できない場合には、ASTM規格D4803−97試験における、本発明によるプラスチック組成物の温度上昇の最大値を、約105℃未満、約95℃未満、約85℃未満、または約75℃未満とする。および/または、
3)プラスチック組成物からなる試験片の有効膨張率を、少なくとも約26%、好ましくは少なくとも約35%、最も好ましくは少なくとも約44%低減させる。膨張率の効果的な減少は、材料の温度低下によるものであり、好ましくは自動車両において部品がぴったりとはまることが可能なもの、すなわち隣接する部品間で間隙を設計上小さなものとするのに十分なものでなければならない。
【0039】
車両部品は、車体を製造するのに組み立てられる部品として予め形成することができる。車両部品またはボデーパネルの例としては、フード、トランクリッド、フェンダー、ドア、ルーフパネル、クオータパネル、アップリケまたはガーニッシュ、グリル、ハンドル、およびその他の一般的な外装部品が挙げられる。これらボデーパネルのそれぞれは、後に例えば嵌合接着で連結される別々のボデーパネルであってもよい。パネルの連結は、例えば接合、ボルト留め、接着、ネジ留め、鋲留めなどの幾つかの異なる方法で行うことができる。ボデーパネルの幾つかは外皮とインナパネルの両方を備えていてもよい。ボデーパネルのインナパネルは一般に、乗員搭乗部後部、トランク、ホイールハウジングを補強する役割を果たす。
【0040】
本明細書でいう「自動車両」は、自力で動くことのできるあらゆる車両を意味し、例として自動車、トラック、バス、オートバイ、トラクター、全地形型車両、自走式芝刈り機、乗用芝刈り機、モータスクータなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0041】
本明細書で言及する全ての出版物、記事、論文、特許、特許公報およびその他の文献は、ここに参照して全文を開示に含むものとする。
【0042】
本発明の好ましい実施形態を説明したが、当業者には、本発明の範囲内で様々な変形や改変が可能であることは明らかであろう。
【0043】
本発明のさらにより深い理解を助けるために、以下に実施例を記す。本発明の原理を説明するために記載した特定の技術、条件、材料、報告データは例に過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0044】
2種のポリプロピレン組成物を標準法により調製した。一つのポリプロピレン組成物には標準的な非IR反射着色剤を用い、もう一つのポリプロピレン組成物にはIR反射CICP着色剤を用いた。組成物の外見は両方とも黒色であった。IR反射CICP着色剤を約2質量%未満でポリプロピレンに添加した。試料のカラーマッチングを調べ、SSR型太陽スペクトル反射率計(Devices and Services社、米国テキサス州ダラス)を用いてIR反射率を調べた。IR反射率の結果を図1に示す。
【0045】
この結果は、ポリプロピレン組成物にIR反射CICPを混合すると、IR反射率が増加することを実証している。
【0046】
各組成物のシートを調製し、ASTM規格D4803−97試験法の記述に従って、IR熱源への暴露による温度上昇の抑制能を測定した。熱画像カメラで測定したところ、IR反射CICPを含む試料シートは、標準的な非IR反射着色剤を含む試料シートに比べて最高温度が18℃低かった(100℃対118℃)。結果を図2に示す。
【0047】
0.25%〜5%の範囲の様々な量でCICPを含む、同じ基礎原料を用いて試料を調製した。これらの試料について引張伸びを調べた。3質量%のCICP添加レベルまで引張伸びに減少が生じず、5質量%のCICP添加レベルまで引張伸びに測定可能な減少は見られなかった。結果を図3に示す。
【実施例2】
【0048】
2種のポリプロピレン組成物を標準法により調製した。一つのポリプロピレン組成物には標準的な非IR反射着色剤を用い、もう一つのポリプロピレン組成物にはIR反射CICP着色剤を用いた。組成物の外見は両方とも灰色であった。IR反射CICP着色剤を約2質量%未満でポリプロピレンに添加した。試料のカラーマッチングを調べ、SSR型太陽スペクトル反射率計(Devices and Services社)を用いてIR反射率を調べた。IR反射率の結果を図1に示す。
【0049】
この結果は、ポリプロピレン組成物にIR反射CICPを混合すると、IR反射率が増加することを実証している。
【0050】
各組成物のシートを調製し、ASTM規格D4803−97試験法の記述に従って、IR熱源への暴露による温度上昇の抑制能を測定した。熱画像カメラで測定したところ、IR反射CICPを含む試料シートは、標準的な非IR反射着色剤を含む試料シートに比べて最高温度が18℃低かった(104℃対122℃)。結果を図2に示す。
【0051】
本発明の様々な実施形態について上記した詳細な記述は、例証および説明を目的とするものである。開示の実施形態に本発明が包括されるまたは限定されることを企図していない。当業者には、様々な改変および変形が可能であることが明らかであろう。実施形態は、本発明の原理とその実際の適用を最もよく説明するために選択して記述している。これにより、当業者が様々な実施形態の本発明を理解し、意図する用途にあった様々な改変をできるようになっている。本発明の範囲は、付属の請求の範囲およびその同等物によって定義されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】参照試料と本発明によるプラスチック試料についての、反射率パーセント対波長のグラフを示す。
【図2】ASTM規格D4803−97プロトコルに従って調べた、2種の標準的なプラスチック組成物と2種の本発明によるプラスチック組成物の熱画像を示す。
【図3】本発明によるプラスチック試料についての、様々な添加レベルにおける、引張伸びパーセント対赤外線反射顔の添加質量パーセントのグラフを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線反射顔料と熱可塑性成分とを含む、無塗装の自動車両用プラスチック部品であって、
前記赤外線反射顔料を、
前記無塗装の自動車両用プラスチック部品が、約750nm〜約2500nm波長のスペクトルにおける少なくとも1つの波長の光を少なくとも約60%反射し、その最大温度上昇が約95℃未満となり、そしてその引張伸びが約200%以上となる
のに十分な濃度で含む
ことを特徴とする自動車両用プラスチック部品。
【請求項2】
前記約750nm〜約2500nm波長のスペクトルにおける少なくとも1つの波長の光の反射率が少なくとも約70%であることを特徴とする請求項1に記載の無塗装の自動車両用プラスチック部品。
【請求項3】
赤外線反射顔料を含まない等色プラスチック組成物と比較して、ASTM規格D4803−97試験法に記載の手順に従って測定したデルタTが約20℃であることを特徴とする請求項1に記載の無塗装の自動車両用プラスチック部品。
【請求項4】
コーティングを施していないことを特徴とする請求項1に記載の無塗装の自動車両用プラスチック部品。
【請求項5】
左側および右側フロントフェンダ、左側および右側リアフェンダ、左側および右側フロントボデーパネル、左側および右側リアボデーパネル、ドアパネル、フードパネル、ルーフパネル、トランクパネル、テールゲートパネル、アップリケまたはガーニッシュ、グリル、ハンドル、およびその他の一般的な外装部品からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の無塗装の自動車両用プラスチック部品。
【請求項6】
前記赤外線反射顔料は、複合無機着色顔料を含むことを特徴とする請求項1に記載の無塗装の自動車両用プラスチック部品。
【請求項7】
前記赤外線反射顔料を約5質量パーセント未満で含むことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の無塗装の自動車両用プラスチック部品。
【請求項8】
前記赤外線反射顔料を約2質量パーセント未満で含むことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の無塗装の自動車両用プラスチック部品。
【請求項9】
前記熱可塑性成分は、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリオレフィン、置換ポリオレフィン、熱可塑性ポリオレフィンゴム、ポリカーボネート/アクリロニトリルスチレンアクリレート、アクリロニトリルエチレンスチレン、ポリカーボネート/ポリエチレンテレフタレート、アクリロニトリルスチレンアクリレート、およびこれらの共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1に記載の無塗装の自動車両用プラスチック部品。
【請求項10】
赤外線反射顔料およびプラスチック組成物を用意するステップ;
前記赤外線反射顔料を約5質量パーセント未満の濃度で前記プラスチック組成物に混合するステップ;
前記プラスチック組成物を自動車両用プラスチック部品に形成するステップ;および
前記自動車両用プラスチック部品を約750nm〜約2500nm波長の線源に暴露するステップ
を含む自動車両用プラスチック部品の温度上昇を抑制する方法であって、
前記自動車両用プラスチック部品は、
最大温度上昇が約95℃未満であり、
前記約750nm〜約2500nm波長のスペクトルにおける少なくとも1つの波長の光を少なくとも約60%反射し、そして
引張伸びが約200%以上である
ことを特徴とする方法。
【請求項11】
前記自動車両用プラスチック部品は、前記約750nm〜約2500nm波長のスペクトルにおける少なくとも1つの波長の光を少なくとも約70%反射することを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記赤外線反射顔料は、最大温度上昇が約75℃未満となるのに十分な量で前記プラスチック組成物中に含まれることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記自動車両用プラスチック部品は、コーティングを施していないことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記赤外線反射顔料は、約2質量パーセント未満の濃度で前記プラスチック組成物に混合されていることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記自動車両用プラスチック部品は、左側および右側フロントフェンダ、左側および右側リアフェンダ、左側および右側フロントボデーパネル、左側および右側リアボデーパネル、ドアパネル、フードパネル、ルーフパネル、トランクパネル、テールゲートパネル、アップリケまたはガーニッシュ、グリル、ハンドル、およびその他の一般的な外装部品からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記赤外線反射顔料は、複合無機着色顔料を含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記プラスチック組成物は、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリオレフィン、置換ポリオレフィン、熱可塑性ポリオレフィンゴム、ポリカーボネート/アクリロニトリルスチレンアクリレート、アクリロニトリルエチレンスチレン、ポリカーボネート/ポリエチレンテレフタレート、アクリロニトリルスチレンアクリレート、およびこれらの共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項18】
赤外線反射顔料と熱可塑性成分とを含む、自動車両に用いるプラスチック組成物であって、
前記プラスチック組成物は、赤外線反射顔料を含まない等色プラスチック組成物と比較して、前記約750nm〜約2500nm波長のスペクトルにおける反射率が約300%増加し、赤外線反射顔料を含まない等色プラスチック組成物と比較して、ASTM規格D4803−97試験法に記載の手順に従って測定したデルタTが約15℃となる
のに十分な量で前記赤外線反射顔料を含むことを特徴とするプラスチック組成物。
【請求項19】
赤外線反射顔料を含まない等色自動車両用プラスチック部品と比較して、前記約750nm〜約2500nm波長のスペクトルにおける反射率が約350%増加していることを特徴とする請求項18に記載のプラスチック組成物。
【請求項20】
赤外線反射顔料を含まない等色プラスチック組成物と比較して、ASTM規格D4803−97試験法に記載の手順に従って測定したデルタTが約20℃であることを特徴とする請求項18に記載のプラスチック組成物。
【請求項21】
コーティングを施していないことを特徴とする請求項18に記載のプラスチック組成物。
【請求項22】
左側および右側フロントフェンダ、左側および右側リアフェンダ、左側および右側フロントボデーパネル、左側および右側リアボデーパネル、ドアパネル、フードパネル、ルーフパネル、トランクパネル、テールゲートパネル、アップリケまたはガーニッシュ、グリル、ハンドル、およびその他の一般的な外装部品からなる群より選ばれる少なくとも1種に形成されることを特徴とする請求項18に記載のプラスチック組成物。
【請求項23】
前記赤外線反射顔料は、複合無機着色顔料を含むことを特徴とする請求項18に記載のプラスチック組成物。
【請求項24】
前記赤外線反射顔料を約5質量パーセント未満で含むことを特徴とする請求項18から23のいずれか1項に記載のプラスチック組成物。
【請求項25】
前記赤外線反射顔料を約2質量パーセント未満で含むことを特徴とする請求項18から23のいずれか1項に記載のプラスチック組成物。
【請求項26】
ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリオレフィン、置換ポリオレフィン、熱可塑性ポリオレフィンゴム、ポリカーボネート/アクリロニトリルスチレンアクリレート、アクリロニトリルエチレンスチレン、ポリカーボネート/ポリエチレンテレフタレート、アクリロニトリルスチレンアクリレート、およびこれらの共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項18に記載のプラスチック組成物。
【請求項27】
赤外線反射顔料を用意するステップ;
前記赤外線反射顔料をプラスチック組成物に混合するステップ;
前記プラスチック組成物を自動車両用プラスチック部品に形成するステップ;および
前記自動車両用プラスチック部品を赤外線源に暴露するステップ
を含む自動車両用プラスチック部品の温度上昇を抑制する方法であって、
前記自動車両用プラスチック部品は、
赤外線反射顔料を含まない等色自動車両用プラスチック部品と比較して、約750nm〜約2500nm波長のスペクトルにおける反射率が少なくとも約300%増加している
ことを特徴とする方法。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−127573(P2008−127573A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−300470(P2007−300470)
【出願日】平成19年11月20日(2007.11.20)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】