説明

無影灯

【課題】 光の制御が容易な無影灯を提供する。
【解決手段】 LED素子20と当該LED素子20の光を反射する反射プリズム21とを有するLEDチップ10を少なくとも2以上一列に配置してLEDチップ列11を構成し、前記LEDチップ列11の中心線Oに対して線対称に、かつ、光線が交差するように各LEDチップ10を配置して、照射野Rに無影効果を生じさせるとともに、前記LEDチップ10の各々が、所定の照射距離Lの地点に所定の大きさの照射野Rを形成するビーム開角θ1を有する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療分野に用いられる照明装置に用いて好適な無影灯に関する。
【背景技術】
【0002】
外科手術や歯科治療などの医療分野に用いられている照明装置は、照明域内に影が生じないように設定されていることから、一般に、無影灯と呼ばれている。この種の無影灯は、線状に形成されたハロゲンランプやクリプトンランプ等の白熱電球光源と、この白熱電球光源の光を照射域に向けて反射する反射鏡とを備え、この反射鏡の面内に多数のファセット(小領域)を形成することで反射光を制御し、照射野に無影効果が得られるように構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−195316号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、白熱電球を無影灯の光源として用いた場合、白熱電球のフィラメントの寿命にともなって電球を交換した際に、白熱電球と反射鏡との間に光学的位置ズレが生じたり、或いは、フィラメントの経時変化による変形により白熱電球の光軸がズレたりして、所望の無影効果が得られなくなる、といった問題がある。
また、白熱電球は、光を四方八方に向けて放射するため、反射鏡の設計精度を高めても、放射光全体を制御することは困難であり、照射野の輪郭がぼけが生じたり、照射深度が浅くなるといった問題がある。
【0004】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、光の制御が容易な無影灯を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、LED素子と当該LED素子の光を反射する反射体とを有するLEDチップを少なくとも2以上一列に配置してLEDチップ列を構成し、前記LEDチップ列の中心線に対して線対称に、かつ、光線が交差するように各LEDチップを配置して、照射野に無影効果を生じさせるとともに、前記LEDチップの各々が、所定の照射距離の地点に所定の大きさの照射野を形成するビーム開角を有することを特徴とする無影灯を提供する。
【0006】
また本発明は、上記発明において、前記ビーム開角が3°〜15°の間であることを特徴とする。
【0007】
また本発明は、上記発明において、前記LEDチップ列が配置される基板を備え、前記LEDチップ列の各LEDチップを前記基板に対して傾斜させて配置するようにしたことを特徴とする。
【0008】
また本発明は、上記発明において、前記LEDチップ列の各々のLEDチップの色温度を4000K〜7000Kの間の値としたことを特徴とする。
【0009】
また本発明は、上記発明において、前記LEDチップ列の各々のLEDチップが放射する光の波長を350nm〜1000nmの間の値としたことを特徴とする。
【0010】
また本発明は、上記発明において、互いにビーム開角が異なる前記LEDチップ列を複数設け、前記LEDチップ列の交差ポイントが異なる位置に複数存在するようにしたことを特徴とする。
【0011】
また本発明は、上記発明において、互いに前記色温度、或いは、前記波長が異なる前記LEDチップ列を複数設けるとともに、同一の色温度、或いは、波長を有する前記LEDチップ列を選択的に消灯・点灯可能に構成したことを特徴とする。
【0012】
また上記目的を達成するために、本発明は、LED素子と当該LED素子の光を反射する反射体とを有するLEDチップを少なくとも2以上一列に配置してなるLEDチップ列を備え、前記LEDチップ列の中心線に対して線対称に、かつ、光線が交差するように各LEDチップが配置されて、照射野に無影効果を生じさせるとともに、前記LEDチップの各々が、3°〜15°の間のビーム開角を有するLEDモジュールを複数配列したことを特徴とする無影灯を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、光の制御が容易な無影灯が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
本実施形態では、例えば歯科医療の照明装置に用いて好適な無影灯を例示する。
図1は、本実施形態に係る無影灯1の正面図であり、図2は同無影灯1の横断面図である。これらの図に示すように、無影灯1は、正面が解放された略直方形状のケース体2と、ケース体2の正面側解放部分を覆う透明ガラス板3とを備えている。ケース体2にはヒートシンク4が収容されるとともに、ケース体2の背面2Aにはヒートシンク4を強制空冷する冷却ファン5が取り付けられている。上記ヒートシンク4上にはLED基板6が配置され、このLED基板6上には複数のLEDチップ10が配置されている。これらのLEDチップ10は、横一列にn個(図示例10個)が配置されてLEDチップ列11を構成し、このLEDチップ列11が縦にm段(図示例では5段)配置されている。
また、LED基板6の裏面側には、LEDチップ10を駆動するためのドライバ回路や電源、コンバータなどの各種の電気回路が設けられている。これらの電気回路には、ケース体2の側面2Bから引き出された電源コード7を介して電力が供給され、各LEDチップ10を点灯駆動する。
【0015】
図3は上記LEDチップ10の縦断面図、図4は同LEDチップ10の底面図、図5は同LEDチップ10の右側面図である。これらの図に示すように、LEDチップ10は、略直方形状に形成され、LED素子20及び反射鏡21を収容するチップケース22と、このチップケース22の底面22Aの略中央部からチップケース22の左右に向けて延び、チップケース22の左右側面22B、22Cのそれぞれに沿って上方に延出する2つのリード23A、23Bとを備えている。上記LED素子20は、チップケース22の底面22A略中央部の面上に、光出射面20Aを上方に向けて配置され、上記リード23A、23Bのそれぞれと、金属ワイヤ24により電気的に接続されるとともに、リード23A、23Bのそれぞれの上端部25がソケットとして機能し、上記LED基板6に穿たれたソケット孔6A(図9参照)に挿入されて、LED基板6に設けられたプリント配線と電気的に接続される。これにより、LED基板6からリード23A、23Bを介してLED素子20に駆動電力が供給される。本実施形態では、LED素子20としては、歯科治療を考慮して、色温度が4500Kの白色LED素子が用いられている。なお、LED素子20の色温度としては、4000K〜7000Kの間であることが好ましく、また、波長としては、350nm〜1000nmの間であることが好ましい。
【0016】
ここで、上記リード23A、23Bは、高熱伝導性を有する金属板から形成され、2つのリード23A、23Bのうち、一方のリード23Bの下端部26がLED素子20の下面に面して配置されており、LED素子20の発熱がリード23Bを介して効果的に放熱されるようになっている。また、図1に示すように、LED基板6へのLEDチップ10の取り付け時には、LEDチップ10のチップケース22とLED基板6との間に放熱用金属片12を介在させる構成とし、この放熱用金属板12によってもLEDチップ10の放熱が行われる。
【0017】
さて、上記反射鏡21は、図3乃至図5に示すように、放物面形状に形成された反射面21Aを有し、この反射面21Aが上記LEDチップ10の上面(光出射面)を覆うように配置されている。また、反射面21Aには、高い光反射率を有する例えばアルミニウムなどの金属膜、或いは、コールドミラーなどの光学薄膜が形成されている。すなわち、LED素子20の光出射面20Aから上方に向けて出射された光は反射鏡21の反射面21Aでチップケース22の底面22A側に向けて反射され、図3中破線矢印A、A’で示すように、チップケース22の底面22Aを放射面として光が放射される。LEDチップ10と反射鏡21との間の空間21Bには、LEDチップ10の保護を図るべく、例えばエポキシ樹脂などの樹脂材が充填されている。
【0018】
次いで、上記無影灯1の光学的構成について詳述する。
図6は無影灯1の光線追跡(レイトレース)図である。なお、この図では、図1における横一列に配列されたn個(図示例10個)のLEDチップ10からなるLEDチップ列11の光線を示す。図6に示すように、LEDチップ列11は、中心線Oに対して左からn/2個(図示例5個)のLEDチップ10からなるLEDグループG1と、右からn/2個(図示例5個)のLEDチップ10からなるLEDグループG2とに分けられる。各LEDグループG1、G2は中心線Oで互いに光線を交差させるように、中心線Oに対して線対称に光を放射することで照射野Rに無影効果を生じさせるとともに、LEDチップ10の各々が所定の照射距離の地点に所定の大きさの照射野を形成するビーム開角θ1を有している。
【0019】
具体的には、LEDチップ10が鉛直方向(すなわち、中心線Oが鉛直方向)に光を照射して照射野R1を形成する場合、当該照射野R1の横幅D1と、LEDチップ10から照射野R1までの照射距離Lと、各LEDチップ10の鉛直面内におけるビーム開角θ1との間には、次式1の関係がある。
D1=tanθ1×L・・・(式1)
【0020】
上記(式1)に示されるように、LEDチップ10のビーム開角θ1が小さいと、照射野R1の幅D1も小さくなってしまう。したがって、ある程度の幅を有する照射野R1を得るためには、照射距離Lを大きくしなければならなくなる。また、各々が同一のビーム開角θ1を有するLEDチップ10を同一直線上に配置するとともに、それそれのLEDチップ10が鉛直方向に光を放射する構成とした場合、各LEDチップ10からの光線が交差する領域が小さくなるため、効率の良い無影効果は得ることができない。
【0021】
そこで、本実施形態では、LEDチップ10をLED基板6に対して傾けて取り付けることで、照射距離Lを無駄に大きくとらなくとも、十分な幅の照射野R1を得ることを可能としている。詳細には、LED基板6に対するLEDチップ10を傾斜角度θ2だけ傾けた場合、照射野Rの横幅D2は、次式2により示される。
D2={tan((θ1)/2+θ2)+tan((θ1)/2−θ2)}×L・・・(式2)
すなわち、図7及び図8に示すように、LEDチップ10をLED基板6に対して傾斜角度θ2だけ傾けて取り付けることで、照射距離L及びビーム開角θ1が一定である場合には、照射野R1の横幅が傾斜角度θ2の分だけD1からD2に引き伸ばされて広い照射野R1を得ることができるのである。
【0022】
したがって、本実施形態では、前掲図6に示すように、上記LEDグループG1のLEDチップ10において、外側のLEDチップ10から内側(中心線O付近)のLEDチップ10にかけて、それぞれの傾斜角度θ2を段階的に小さくするとともに、このLEDグループG1に対して中心線Oについて線対称となるように上記LEDグループG2のそれぞれのLEDチップ10を傾けて、LEDグループG1及びLEDグループG2のそれぞれの光線を交差させる構成とすることで、照射距離L及び各LEDチップ10のビーム開角θ1を一定としつつ、全体としてより広い照射野Rが得られるようにしている。
また、このように、LEDチップ10を傾斜させてLED基板6に取り付けることで、LEDグループG1、G2のそれぞれの光線が交差する交差ポイント(集交点)KがLEDチップ10側に近づくため、交差ポイントKから照射野Rまでの間(すなわち、無影効果を生じるゾーン)に、医療従事者が作業するのに十分な距離(スペース)を確保することができる。
【0023】
LEDチップ10のLED基板6への取り付け構造について詳述すると、図9に示すように、LED基板6の表面のソケット孔6Aは、LED基板6の表面垂線Pに対して角度θ2だけ傾斜するように穿設されており、このソケット孔6Aに、LEDチップ10のリード23B、23Aを差し込むことで、LEDチップ10がLED基板6に対して傾斜角度θ2だけ傾いた姿勢で取り付けられる。また、LED基板6とLEDチップ10との間に介在する放熱用金属片12は、LEDチップ10のチップケース22との当接面12AがLED基板6の表面に対して角度θ2だけ傾斜するように構成されており、これによっても、LEDチップ10が傾斜角度θ2だけ傾斜した姿勢で確実に、LED基板6に取り付けられる。なお、本実施形態では、LEDチップ10の傾斜角度θ2を、外側のLEDチップ10で約10°、内側のLEDチップ10で約1°としている。
【0024】
さて、本発明において、発明者らは、LEDチップ10のビーム開角θ1として3°≦θ1≦15°が最良であることを見出している。詳細には、ビーム開角θ1を3°未満とすると、照射距離Lが一定である場合には、1個のLEDチップ10が形成する照射野Rの横幅が極端に狭くなってしまい、無影灯1全体として広い照射野Rを得るためには、横方向に多数のLEDチップ10を配列する必要がある。
例えば、一般に、歯科治療用無影灯としては、照射距離L=650mmのときに、幅150mmの照射野Rを形成するものが用いられているが、本実施形態の構成において、LEDチップ10のビーム開角θ1が3°未満の場合に、照射距離L=650mm、照射野Rの幅150mmを形成するためには、横一列にLEDチップ10が約20個以上必要となってしまい、コストが増大する。
【0025】
逆にビーム開角θ1を15°以上に広げた場合では、1個のLEDチップ10が形成する照射野Rの横幅は広がるものの、無影灯1全体としては照射距離Lの増大に伴って照射野Rの輪郭に生じるぼやけが顕著となるとともに、照射野Rにおける単位面積当たりの照度が極端に低下してしまうため、それを補う為にLEDチップ10の使用数を増やさなければならず、コストが増大する。
【0026】
このように、ビーム開角θ1を3°≦θ1≦15°とすることで、LEDチップ10の数を抑えつつ、なおかつ、歯科医療に求められる十分な面積及び照度を持つ照射野Rを形成可能とするとともに、照射野Rの輪郭にぼやけ等が生じるのを防止することができるのである。なお、ビーム開角θ1として、3°≦θ1≦15°のどの値を用いるかは、本無影灯1と照射野Rまでの照射距離Lにより決定される。例えば、歯科治療においては、無影灯1を治療箇所に近接させた位置(例えばL=400mm)にセットして治療を行う場合があり、また、これとは逆に無影灯1を治療箇所から離した位置(例えばL=1000mm)にセットして治療を行う場合がある。これら、無影灯1の近接使用時、無影灯1の標準使用時(L=600mm)、無影灯1を離して使用時の各々において、好適なビーム開角θ1の値を図10に示す。これらビーム開角θ1の調整は、上記反射鏡21の反射面21Aの形状を変更することで行われる。
【0027】
以上説明したように、本実施形態によれば、LED素子20と当該LED素子20の光を反射する反射プリズム21とを有するLEDチップ10を光源として無影灯1を構成したため、光源が点光源とみなせ、反射面21Aの設計が容易となる。また、光源の指向性が白熱電球より高いため、光線を正確に制御でき、照射野Rの形状及び、輪郭をはっきりさせることができる。
【0028】
特に、本実施の形態では、LED素子20と反射プリズム21とを一体に構成しているため、LED素子20の経時変化や交換などによる光源の光軸ずれなどの問題が生じることがない。さらに、LED素子20は白熱電球に比べて長寿命であるため、光源の交換頻度が少なくなる。
【0029】
また、LEDチップ10を薄型に構成すれば、無影灯1の厚さを10mm以下にすることも可能となり、薄型化が容易となる。さらに、光源として白熱電球を用いるとともに、ガラス反射鏡を有する従来の無影灯にくらべ、その重量を3分の1以下にするといったように、軽量化が容易に図られる。
また、従来の白熱電球に比べ、照射野Rに対する輻射熱が抑制され、無影灯1に照らされた治療対象部位が熱を持ってしまうといったことがない。
【0030】
また、本実施形態によれば、LEDチップ10を配列してなるLEDチップ列11を備え、このLEDチップ列11の中心線Oに対して線対称に、かつ、光線が交差するように各LEDチップ10を配置して照射野Rに無影効果を生じさせるとともに、LEDチップ10の各々が、所定の照射距離Lの地点に所定の大きさの照射野Rを形成するビーム開角θ1を有する構成としたため、所望の地点に所望の大きさの照射野Rを形成することができる。
【0031】
特に、本実施の形態では、ビーム開角θ1を3°〜15°の間としたため、LEDチップ10の数を抑えつつ、なおかつ、十分な面積及び照度を持つ照射野Rが形成可能となるとともに、照射野Rの輪郭にぼやけ等が生じるのを防止することができる。
【0032】
また、本実施の形態によれば、LEDチップ列11の各LEDチップ10をLED基板6に対して傾斜させて配置するようにしたため、照射距離L及び各LEDチップ10のビーム開角θ1を一定としつつ、全体としてより広い照射野Rが得られるようにしている。また、光線が交差する交差ポイントKがLEDチップ10側に近づくため、交差ポイントKから照射野Rまでの間(すなわち、無影効果を生じるゾーン)に、医療従事者が作業するのに十分な距離(スペース)を確保することができる。
【0033】
なお、上述した実施の形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の範囲内で任意に変形及び応用が可能である。
【0034】
(変形例1)上述した実施形態において、LEDチップ10のそれぞれのビーム開角θ1を同一のものとしたが、これに限らない。例えば、LEDチップ列11の各LEDチップ10のビーム開角θ1を全体的に大きくしてθ1’とすると、図10に示すように、LEDチップ10側により近いところに交差ポイントK’が位置することになる。したがって、例えば、ビーム開角がθ1のLEDチップ11列と、ビーム開角がθ1’(≠θ1)のLEDチップ列11とを縦方向に交互に配置することで、ビーム開角がθ1のLEDチップ列11が形成する交差ポイントKが手などで遮られた場合でも、ビーム開角がθ1’のLEDチップ列11が形成する交差ポイントK’が遮られるのが防止され、無影効果を得ることが可能となる。また、このように、互いにビーム開角θ1が異なるLEDチップ列11を組み合わせて無影灯1を構成することで、照射野Rにおける照度分布むらの低減を図ることができる。
【0035】
なお、上記のように、LEDチップ10のビーム開角θ1が異なると、同一の横幅D1の照射野Rが得られるまでの距離Lが短くなる。したがって、ビーム開角θ1が異なるLEDチップ列11を縦に組み合わせる場合には、同一照射距離Lで、同一の横幅Dの照射野Rを形成するように、それぞれのLEDチップ列11でLEDチップ10の上記傾斜角度θ2を調整する。例えば、ビーム開角θ1が5°のLEDチップ列11と、ビーム開角θ1が13°のLEDチップ列11とを組み合わせて、照射距離L=600mmの位置に横幅D=150mmの照射野Rを形成する場合に、それぞれのLEDチップ10の傾斜角度θ2に用いて好適な値を図12に示す。
【0036】
(変形例2)上述した実施形態において、LEDチップ列11ごとに色温度を4000K〜7000Kの間で異ならせるとともに、各LEDチップ列11ごとに点灯・消灯を選択的に行うスイッチを設ける構成とし、医療従事者が治療状況などにより、所望の色温度のLEDチップ列11だけを点灯させて、治療を行い易くすることも可能である。
【0037】
(変形例3)上述した実施形態において、LEDチップ10を平面上に配置する構成に限らず、例えば、LED基板6を断面放物線状に構成して、LEDチップ10を放物面状に配置してLEDチップ列11を構成しても良い。また、例えば、LEDチップ10を、長焦点楕円面上に配置する構成としても良い。さらに、複数のLEDチップ10を正面視矩形(長方形或いは正方形)のケース体2内に縦列と横列とが直交するように配置する構成に限らず、正面視平行四辺形などの他の四角形のケース体2内に、このケース体2の縦列と横列とが90度以外の角度で交差するようにマトリクス状に配置する構成としても良い。また、変形例4で詳述するように、同心円上にLEDチップ10を配列する構成としても良い。
なお、LEDチップ10は正面視四角形に限らず、ビーム開角θ1が3°≦θ1≦15°に設計されていれば、円形或いは多角形形状でも良い。また、LEDチップ10において、上記ビーム開角θ1が得られる限りにおいて、LED素子20をLEDチップ10の正面視中心部に配置する必要も無く、また、反射面21Aも非対称の形状のものを用いることもできる。
【0038】
(変形例4)上述した実施の形態では、歯科医療の照明装置に用いて好適な無影灯を例示したが、これに限らず、外科手術などに使用される照明装置(いわゆる手術灯)に本発明を適用することも可能である。図13は本変形例に係る無影灯1’の構成と、その光線追跡とを示す図である。この図に示すように、本実施形態の無影灯1’においては、LEDチップ10’が底面視略円形に形成されるとともに、このLEDチップ10’が同心円状に複数配置され、また、LEDチップ10’の反射鏡21(図示せず)が底面視略円形に形成されており、各LEDチップ10’の放射面から円錐状に光を放射する。各LEDチップ10’のビーム開角θ1は、3°〜15°の間で、照射距離Lに応じて適宜設定されており、上述した実施の形態と同様、十分な面積及び照度を持つ照射野Rを形成可能とするとともに、照射野Rの輪郭にぼやけ等が生じるのを防止することを可能となっている。また、光源としてLED素子20が用いられているため、無影灯1’の軽量化が図られ、医療従事者が無影灯1’の位置を変えるといった作業を簡単に行うことができる。
【0039】
なお本変形例に対して、上述した変形例1及び変形例2を適用しても良い。すなわち、各円周ごとに、ビーム開角θ1が異なるLEDチップ10’を配置する構成としても良く、また、色温度が異なるLEDチップ10’を配置する構成としても良い。
【0040】
(応用例1)上述した実施の形態のLEDチップ10を複数設けて1つのLEDモジュールを構成し、当該LEDモジュール100を更に複数組み合わせることで、無影灯1を構成するといった応用が可能である。
【0041】
図14は上記LEDモジュール100の正面図、図15は同LEDモジュール100の横断面図である。図14に示すように、LEDモジュール100は、LED基板6上に縦横にマトリクス状に配置された複数のLEDチップ10(図示例では縦横に2つずつ)がモジュールケース101に収容されて構成されている。各LEDチップ10は同一のビーム開角θ1(3°≦θ1≦15°)を有するとともに、LED基板6に対して所定の傾斜角度θ2で取り付けられており、横一列のLEDチップ10間で光線を交差させて照射野Rに無影効果を生じさせるように構成されている。また、1つのLEDモジュール100には、同一の波長及び色温度を有するLEDチップ10が用いられている。
【0042】
図16は、上記LEDモジュール100を横に3個配列した場合の光線追跡図である。この図に示すように、両端のLEDモジュール100は、他方のLEDモジュール100と光線を交差させるように水平線Hに対して角度θ3だけ傾斜させて取り付けられており、これにより、各LEDモジュール100単体での無影効果に加えて、LEDモジュール100同士での無影効果を得ることができる。
【0043】
また、ビーム開角θ1や色温度、波長が異なるLEDモジュール100を複数組み合わせることで、所望の照射野Rを形成することも可能である。特に、LEDモジュール100単位で消灯、点灯を制御可能とすることで、医療従事者が作業に応じて、適宜、所望の照射野Rを簡単に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施の形態に係る無影灯の正面図である。
【図2】同無影灯の横断面図である。
【図3】LEDチップの縦断面図である。
【図4】LEDチップの底面図である。
【図5】LEDチップの右側面図である。
【図6】LEDチップ列の光線追跡図である。
【図7】LEDチップの傾斜角度を説明するための図である。
【図8】LEDチップの傾斜角度を説明するための図である。
【図9】LEDチップの取り付け構造を説明するための図である。
【図10】照射距離とビーム開角との最適な組み合わせを示す図である。
【図11】LEDチップ列の光線追跡図である。
【図12】照射距離とビーム開角との最適な組み合わせを示す図である。
【図13】本発明の変形例に係る無影灯の構成と、その光線追跡を示す図である。
【図14】LEDモジュールの構成を示す図である。
【図15】LEDモジュールの構成を示す図である。
【図16】LEDモジュールを組み合わせてなる無影灯の光線追跡図である。
【符号の説明】
【0045】
1 無影灯
6 LED基板
10 LEDチップ
11 LEDチップ列
20 LED素子
21 反射プリズム(反射体)
21A 反射面
23B、23A リード
100 LEDモジュール
K 交差ポイント
L 照射距離
O 中心線
R 照射野
θ1 ビーム開角
θ2 傾斜角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
LED素子と当該LED素子の光を反射する反射体とを有するLEDチップを少なくとも2以上一列に配置してLEDチップ列を構成し、
前記LEDチップ列の中心線に対して線対称に、かつ、光線が交差するように各LEDチップを配置して、照射野に無影効果を生じさせるとともに、
前記LEDチップの各々が、所定の照射距離の地点に所定の大きさの照射野を形成するビーム開角を有する
ことを特徴とする無影灯。
【請求項2】
前記ビーム開角が3°〜15°の間であることを特徴とする請求項1に記載の無影灯。
【請求項3】
前記LEDチップ列が配置される基板を備え、
前記LEDチップ列の各LEDチップを前記基板に対して傾斜させて配置するようにした
ことを特徴とする請求項1または2に記載の無影灯。
【請求項4】
前記LEDチップ列の各々のLEDチップの色温度を4000K〜7000Kの間の値としたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の無影灯。
【請求項5】
前記LEDチップ列の各々のLEDチップが放射する光の波長を350nm〜1000nmの間の値としたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の無影灯。
【請求項6】
互いにビーム開角が異なる前記LEDチップ列を複数設け、前記LEDチップ列の交差ポイントが異なる位置に複数存在するようにした
ことを特徴とする請求項1乃至5に記載の無影灯。
【請求項7】
互いに前記色温度、或いは、前記波長が異なる前記LEDチップ列を複数設けるとともに、
同一の色温度、或いは、波長を有する前記LEDチップ列を選択的に消灯・点灯可能に構成したことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載に無影灯。
【請求項8】
LED素子と当該LED素子の光を反射する反射体とを有するLEDチップを少なくとも2以上一列に配置してなるLEDチップ列を備え、
前記LEDチップ列の中心線に対して線対称に、かつ、光線が交差するように各LEDチップが配置されて、照射野に無影効果を生じさせるとともに、前記LEDチップの各々が、3°〜15°の間のビーム開角を有するLEDモジュールを複数配列したことを特徴とする無影灯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2006−156074(P2006−156074A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−343406(P2004−343406)
【出願日】平成16年11月29日(2004.11.29)
【出願人】(000000192)岩崎電気株式会社 (533)
【Fターム(参考)】