説明

無機物の洗浄方法

【課題】 一般廃棄物や産業廃棄物の焼却時に発生する焼却灰、焼却飛灰や溶融飛灰、一般廃棄物や産業廃棄物の炭化処理時に得られる炭化物、またはごみ焼却残さ等が埋設されている最終処分場より掘り起こされたごみ焼却残さといった無機物中に含まれる塩素について、洗浄時に発生するSS量および有害重金属類の溶出を抑え、容易に無機物に含まれる塩素を選択的に除去でき、さらに固液分離の面でも優れた無機物の洗浄方法を提供する。
【解決手段】焼却灰、焼却飛灰や溶融飛灰、炭化物、または掘り起こし焼却残さなどの無機物を造粒した後、造粒物を洗浄処理して塩素を除去する無機物の洗浄方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般廃棄物や産業廃棄物の焼却処理時に発生する焼却灰、焼却飛灰や溶融飛灰、一般廃棄物や産業廃棄物の炭化処理時に得られる炭化物、またはごみ焼却残さ等が埋設されている最終処分場より掘り起こされたごみ焼却残さといった無機物中に含まれる塩素を除去する洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般廃棄物や産業廃棄物の焼却時に発生する焼却灰、焼却飛灰や溶融飛灰といった焼却残さの大部分は必要に応じた安定化処理が行われたのち、埋立処分されている。ところが近年、最終処分場の確保が困難になってきており、焼却残さの有効利用が大きな課題となっている。
【0003】
また、一般廃棄物や産業廃棄物を処理するプロセスの一つとして、廃棄物を炭化処理することにより得られる炭化物は発熱量が高く、多孔質であることから、近年その有効利用について多くの研究がなされている。
【0004】
一方で既存の最終処分場を掘り起こして、掘り起こしごみの有効利用を行い、埋立容量を確保するための最終処分場の再生がおこなわれている。掘り起こしごみのうち、特にごみ焼却残さの有効利用が大きな課題となっている。
【0005】
無機物の有効利用方法としては、焼却灰、焼却飛灰、溶融飛灰および掘り起こしごみ焼却残さの場合はセメント原料化や焼成による骨材副原料化、炭化物の場合は代替燃料、吸着剤、土壌改良材等が挙げられる。しかし、これらの廃棄物由来の無機物中には多量の塩素が残留している。これら無機物をそのままセメント原料をはじめとする各種原料として資源化しようとすると、塩素成分がセメント製造プラントに付着して閉塞を引き起こして安定操業が確保できなくなるだけでなく、製造されたセメントについても塩素による鉄筋腐食を起こす場合があることから、その使用量がかなり限定されることとなるため、効率的な塩素除去技術が要求される。
【0006】
そこで、無機物中に含まれる塩素が主に水溶性であることに着目し、水洗浄により脱塩素することが一般的に行われている。焼却灰および焼却飛灰中の塩素分を水中に溶出させる技術が多く知られており、例えば、焼却灰に水、炭酸ガス、燃焼排ガス、または酸のいずれか一つ以上を洗浄剤として添加し、焼却飛灰中からセメントまたはセメント系固化材の製造に障害となる物質を除去した後に、固形分をセメントとして利用する方法(例えば、特許文献1参照)、焼却灰を分級などにより異物を除去した後、水洗を行い、塩素を除去してセメント原料化する方法(例えば、特許文献2参照)、灰と水の流れを向流にし、また灰と水の混合時に細粒化と灰表面を被覆する付着物を剥離させる作用を行わせながら複数段水洗を行い、脱塩する方法(例えば、特許文献3参照)などが知られている。
【0007】
また、炭化物からの塩素分を除去する方法として、例えば、炭化処理して得た炭化物を金属分離した後、湿式粉砕を行い、その後洗浄水槽にて洗浄した後、脱水・乾燥を行って脱塩された炭化物の粉砕物を製品として得る方法(例えば、特許文献4参照)などが知られている。
【0008】
さらに、最終処分場より掘り起こされたごみ焼却残さをセメント原料として再生する方法として、例えば、埋立処分ごみを掘削し、粗大物を重機により除去し、その後、埋立処分ごみをふるい選別機に供給して、ふるい通過ごみに水を添加して内部の水可溶性成分を洗い流した後にセメント製造用の原料および燃料として使用する方法(例えば、特許文献5参照)が知られている。
【特許文献1】特開平9−187748号公報
【特許文献2】特開平11−322381号公報
【特許文献3】特開2003−211129号公報
【特許文献4】特開2002−95883号公報
【特許文献5】特開2005−41714号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記の特許文献1、特許文献2及び特許文献5において開示されている方法は灰中の粒径の細かい部分を含めた洗浄を行うため、固液分離時に粒子状の懸濁物質(SS)が洗浄排水側に移行することとなる。このSS中には鉛、カドミウムなどの有害重金属類が一部微粒子の形で含まれており、また、上記有害重金属類も溶出するため、後段で行う排水処理に負荷がかかるという問題があった。また、上記の特許文献3及び特許文献4において開示されている方法は設備が複雑で、しかも灰の細粒化を行いながら洗浄を行っているために得られる洗浄物の含水率も高くなるという問題もあった。
【0010】
さらに上述した従来の方法においては、固液分離の操作に遠心分離器又はフィルタープレス等を用いているが、細かい部分を含めた洗浄を行うため、装置に一部スラリー状になった洗浄無機物が付着し、その結果定期的な清掃作業が必要となる等、ハンドリングの点でも問題があった。
【0011】
本発明は、洗浄時に発生するSS量及び有害重金属類の溶出を抑え、容易に無機物に含まれる塩素を選択的に除去でき、さらに含水率の低い無機物を得ることができる無機物の洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、無機物を造粒し、その造粒物の洗浄を行うことで、造粒化処理を行わない水洗浄よりも洗浄ろ液中のSSの発生を抑えながら無機物に含まれる塩素を選択的に除去でき、洗浄物の固液分離はより容易となること見出し、本発明に到達した。
【0013】
さらに、高濃度の有害重金属類を含み、溶出の恐れのある無機物については、重金属溶出防止の安定化処理を行った後に造粒を行い、その造粒物の洗浄処理を行うことで、造粒化処理を行わない水洗浄よりも洗浄ろ液中のSSの発生及び重金属類の溶出を抑えながら無機物に含まれる塩素を選択的に除去でき、洗浄物の固液分離はより容易となること見出し、本発明に到達した。
【0014】
すなわち、本発明は、焼却灰、焼却飛灰、溶融飛灰、廃棄物の炭化処理により得られる炭化物及びごみ焼却残さが埋設されている最終処分場より掘り起こされたごみ焼却残さ、からなる群から選ばれる一種以上の無機物を造粒し、次いで得られた造粒物に対し洗浄処理を行って塩素を除去することを特徴とする無機物の洗浄方法を要旨するものであり、好ましくは、造粒物の粒径が、1〜100mmである前記の無機物の洗浄方法であり、また、好ましくは、洗浄処理が、造粒物に洗浄水として炭酸塩を含む水溶液を添加し固液分離するものである前記の洗浄方法であり、さらに好ましくは、無機物を造粒する前に、無機物に対し安定化処理を行うことを特徴とする前記の無機物の洗浄方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、一般廃棄物や産業廃棄物の焼却処理時に発生する焼却灰、焼却飛灰や溶融飛灰、一般廃棄物や産業廃棄物の炭化処理時に得られる炭化物、またはごみ焼却残さ等が埋設されている最終処分場より掘り起こされたごみ焼却残さなどの種々の無機物から塩素を効果的に除去することができる。また、得られた洗浄物は含水率が低いものとなっているためハンドリングが容易になるとともに、この洗浄処理において得られた水洗残さを、より大きな割合で資源化可能な各種原料として有効に利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0017】
本発明において洗浄の対象となる無機物は、焼却灰、焼却飛灰、溶融飛灰、廃棄物の炭化処理により得られる炭化物又はごみ焼却残さ等が埋設されている最終処分場より掘り起こされたごみ焼却残さである。焼却灰とは、一般廃棄物や産業廃棄物を焼却炉で焼却した際に生ずる灰をいい、焼却飛灰とは、一般廃棄物や産業廃棄物の焼却時に発生する酸性ガスを処理した際に生ずる灰をいい、溶融飛灰とは、焼却灰や焼却飛灰の溶融時に発生する酸性ガスを処理した際に生ずる灰をいう。
【0018】
また、廃棄物の炭化処理により得られる炭化物とは、一般廃棄物や産業廃棄物を炭化炉で処理した際に得られるものをいう。ごみ焼却残さ等が埋設されている最終処分場より掘り起こされたごみ焼却残さとは、最終処分場を掘り起こした際に発生する掘り起こし廃棄物を、約100mmの粗選別および磁力選別を行い、鉄類が除去された100mm以下の部分を乾燥後、振動ふるいおよび手選別を行い、最終的に焼却残さを含む土砂類、可燃物+プラスチック類、ビン・カン類、石・ガレキ類に分別して得られるもののうちの一つであるごみ焼却残さをいう。
【0019】
上記の無機物は、焼却飛灰、溶融飛灰、炭化物については粒径が1〜50μmの粉末状であり、水分は0.5%〜10%とほとんど含まれていない。一方、焼却灰および最終処分場より掘り起こされたごみ焼却残さについては粒径が0.1〜100mmの砂状であり、水分は20〜50%と湿っている場合が多い。また一般に焼却飛灰、溶融飛灰のほうが焼却灰および最終処分場より掘り起こされたごみ焼却残さに比べ、塩素濃度が10〜20倍程度高い。
【0020】
なお、本発明における無機物は、これらのうちから選択される一種以上のものであればよく、複数の無機物が混合されたものを処理対象物としても差し支えない。
【0021】
本発明においては、上記に示した無機物を造粒することを必須とする。本発明で用いられる造粒方法は、いずれの手段でもよく、例えば、押出造粒、圧縮造粒、転動造粒、撹拌造粒等による造粒が挙げられる。これらのうち、押出造粒が造粒物のハンドリングや洗浄後の固液分離の点で好ましい。また、場合によっては2段組み合わせをしてもよい。
【0022】
具体的には、スクリュー式押出造粒の場合、円筒上のスクリューケースの先端に、造粒物の径となる所定の大きさの多数の穴のあいた平板ダイスが垂直に取り付けてあり、スクリューの回転により、ダイスに向かって、無機物と水とを混練した粉体を加圧、圧縮して押しつけ、穴より押し出して、造粒物を得ることができる。
【0023】
本発明において、造粒物の形状については特に限定しないが、洗浄水を均一に造粒物に行き渡らせるという点で成形物は球状、円筒状である方が好ましい。その具体的な大きさは造粒物の径が1〜100mmが好ましく、特に2〜10mmが好ましい。1mm未満の場合は造粒物からの脱水が困難となる上、重金属類が粒子状の形で溶出しやすくなり、また100mmを超える場合は洗浄水が造粒物の内部にまで十分に浸透せず、塩素除去が困難となるので好ましくない。
【0024】
なお、造粒前の無機物について、そのままでは造粒が困難な場合には、無機物の粉砕を行って一度粉末状態にしてから造粒を行ってもよい。そのための粉末化は、造粒機を傷つけない程度の粉砕が好ましく、例えば、ローラーミルによる圧縮・せん断による方法で粒径を1mm以下になるまで粉砕してもよい。
【0025】
また、本発明における造粒時には、造粒物の崩壊防止のために、無機物につなぎ剤を添加して造粒を行ってもよい。ここで使用されるつなぎ剤としては、セメント、石膏、水ガラス、ベントナイトなどの無機成分、でんぷん、にかわ、天然ゴム、タール、アスファルト、糖蜜、パルプ、レジン等の有機成分などが挙げられ、これらのうち、セメント、アスファルトが価格の点で好ましい。つなぎ剤は、無機物に対し、0.1〜50重量%、さらに好ましくは1〜30 重量%、最も好ましくは5〜20 重量%添加する。
【0026】
本発明においては、次に上記で得られた造粒物に対し洗浄処理を行うことが必要である。洗浄処理は、造粒物に洗浄水を加えた後、浸漬洗浄あるいは機械撹拌を用いて洗浄操作を行う。
【0027】
本発明における洗浄処理は、造粒物中に含まれる塩素がほとんど除去されるまで洗浄することが望ましいが、その数値は限定されない。ただし、水可溶性塩素がほぼ除去されていることが好ましく、具体的には洗浄処理後の洗浄液の電気伝導度が4.0mS/cm以下、さらに好ましくは2.0mS/cm以下、最も好ましくは1.0mS/cm以下となれば、洗浄処理を終了しても差し支えない。
【0028】
また、本発明における洗浄処理に使用する洗浄水としては、水の外、塩素除去効果を上げるために炭酸塩を含む水溶液を用いてもよく、例えば、炭酸ナトリウム1%水溶液を用いた造粒物の浸漬洗浄を行ってもよい。
【0029】
洗浄水の添加量は、造粒物と洗浄水の固液比を、造粒物の湿重量:洗浄水の容量=1:1〜1:30が好ましく、特に1:2〜1:10が好ましい。1:1未満の場合は混合および塩素溶解が困難となり、1:30を超える場合は設備容量および排水処理の負担が大きくなるので好ましくない。ここで、造粒物の湿重量とは、造粒物が水分を含んだ状態での重量をいう。
【0030】
本発明においては塩素除去効果を上げるために、洗浄水の温度を30〜100℃に設定するのが好ましく、さらに好ましくは40〜80℃である。操作としては、洗浄水が所定の液温となるように恒温水槽を用いて温度調整を行えばよい。
【0031】
なお、機械撹拌を用いる場合は、造粒物を壊砕しない程度の撹拌が好ましく、例えば回転式攪拌機を用いて造粒物に撹拌パドルが触れないように、多数の穴をもつメッシュの容器で撹拌部を覆いながら10分〜2時間撹拌を行うことができる。
【0032】
本発明においては塩素除去効果を上げるために、多段式洗浄を用いてもよく、例えば、まず浸漬洗浄あるいはその他の方法による第一洗浄を行い、固液分離後に得られた水洗残さに対し、浸漬洗浄あるいはその他の方法による第二洗浄を行い、その後脱水を行ってもよい。
【0033】
本発明においては、次いで、固液分離による脱水を行い、水洗残さと水洗ろ液とに分離する。脱水する手段としてはどのような方法でもよく、例えば重力沈降分離や遠心分離などが用いられる。
【0034】
本発明においては、無機物を造粒する前に、無機物に対し安定化処理を行うことが好ましい。安定化処理としては、無機物にセメントあるいは重金属固定化剤の一方、または両方を添加し、重金属を無機物中に固定化するようにするのがよい。そのようなセメントには、普通、早強、超早強、中庸熱、特殊などの各種ポルトランドセメントの他、スラグやフライアッシュ等を混合した混合セメントがいずれも使用できるが、普通ポルトランドセメントあるいは早強ポルトランドセメントが重金属の安定化の点で好ましい。また、重金属固定剤には、有機系キレート形成基を有し、当該キレート形成基と重金属とが強固に結合することにより、各種重金属イオンを安定化できるものであれば特に限定されない。このような有機系キレート化剤としては、例えば、ジチオカルバミン酸系、イミン系、ピロリジン系等が挙げられる。
【0035】
これらの添加量は限定的ではないが、通常、無機物に対して、セメントは0.1〜50重量%、さらに好ましくは1〜30 重量%、最も好ましくは3〜20 重量%添加し、また重金属固定化剤は0.1〜30重量%、さらに好ましくは1〜20 重量%、最も好ましくは3〜10 重量%添加
する。
【0036】
具体的には、重金属類溶出の恐れのある無機物に対し、所定量の普通ポルトランドセメント、および所定量のジチオカルバミン酸系の重金属固定化剤並びに所定量の水分を同時に混練機内に供給して、無機物の安定化処理を行う。その後、市販の成型機または造粒機を用いて安定化物の造粒化を行い、造粒化物を作成する。この造粒化物に対して、洗浄処理を行い、脱塩処理された水洗残さを得てもよい。
【0037】
本発明により塩素が除去された無機物は、乾燥および粉砕により、水分量および粒度の調整が行われた後、搬出され、各種原料として用いられる。洗浄処理後の塩素濃度は低ければ低いほどよいが、セメント原料の場合、できるだけJIS規格のセメント原料の塩素含有許容量である乾ベースで350ppm以下とした方が好ましい。塩素濃度が少なくなるほど、この洗浄処理により得られた物質がセメント原料の一部に代替えされる割合が増加する。
【0038】
以下、本発明の実施の形態を図面により説明する。
図1、図2は本発明の二つの実施の形態に係わる無機物の処理装置を示すブロック図である。いずれの実施形態においても、無機物を造粒する造粒装置5、造粒物を洗浄する洗浄装置8、固液分離装置9、排水処理設備12を備えている。
【0039】
図1の実施の形態では、まず無機物が造粒装置5に投入されて造粒が行われる。造粒物は洗浄装置8に移され洗浄水と混合される。本発明における混合方法は洗浄装置8に洗浄水7を加えた後、浸漬洗浄あるいは機械攪拌を用いて洗浄操作を行う。次に固液分離装置9による脱水を行ない水洗残さ10と水洗ろ液11とに分離する。水洗ろ液については排水処理装置12により、微量重金属類の除去が行われた後、排水13と排水処理残さ14とに分離される。排水は中和処理し系外へ放流するか、または濃縮晶析などにより、塩回収を行っても良い。
【0040】
図2の実施の形態では、まず無機物が安定化処理装置2に投入されて重金属の安定化処理が行われる。この安定化処理装置2で処理された安定化無機物4は、図1の場合と同様に造粒装置5に投入されて造粒が行われる。なお、安定化処理装置が無機物の造粒も兼ねている装置の場合はこの装置を用いてもよい。図2のその他の構成は図1と同一である。
【実施例】
【0041】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0042】
本実施例において、塩素含有量は試料中の金属類の全量を計る方法として知られているアルカリ溶融法に準拠して測定した。すなわち、試料に所定量の炭酸カリウムナトリウムを加えて900℃でアルカリ溶融し、溶融物をチオシアン酸水銀(II)吸光光度法による測定を行い、得られた値を塩素量とした。
【0043】
実施例1
図1に示したフロー図に従って処理を行った。無機物(1)として流動床ごみ焼却施設より排出され、安定化処理された焼却飛灰が主に埋設されている最終処分場より掘り起こされたごみ焼却残さを用いた(埋立経過年数半年〜1年)。この無機物の粒度分布を調査したところ、90%以上が1mm以下の粒子であった。また含水率は11.0%、塩素含有濃度は40,800mg/kg-dryであった。
【0044】
造粒装置5としては押出成形機を使用した。ここで用いた押出成型機は、スクリュー前押出装置(不二パウダル(株)製、EXD-60型)を用いた。この造粒装置5に無機物(1)を投入して造粒操作を行い、円筒状(円筒高さ約8mm)の造粒物6を得た。この造粒物6の塩素含有濃度は51,700mg/kg-dryであった。
【0045】
次いで、作成した造粒物6のうち、200.0gを洗浄装置8に投入した。洗浄装置8としては市販の手つき穴あきカゴ(目幅約0.64 mm)およびボウル(いずれもポリプロピレン製、容量1.5L)である。手付き穴あきカゴの上に造粒物6を乗せ、所定量の洗浄水7(1,000 mL、固液比1:5)が満たされたボウルの中に浸漬させて常温(20〜25℃)で1日静置、すなわち浸漬洗浄を行った。洗浄水7には純水を用いた。浸漬洗浄終了後、固液分離装置9にて固液分離を行った。固液分離装置9としてはボウルより浸漬洗浄が終了した手付き穴あきカゴを取り出してボウルの上部に1時間静置して水切りを行う、すなわち自然重力沈降による固液分離により、水洗残さ(1)(塩素濃度:7,900mg/kg-dry、含水率:30.8%)が180.0g(乾量)と水洗ろ液(1)(SS含有濃度:6,950mg/L)が880mL得られた。
【0046】
実施例2
図2に示したフロー図に従って処理を行った。無機物(2)として、某焼却施設より排出された焼却飛灰(塩素含有濃度62,800mg/kg-dry、含水率7.5%)を安定化処理装置2に供給し、安定化処理を行った。安定化処理装置はセメント固化処理装置(本田鐵工(株)製、TMHW-50型)を用い、セメント添加量約4重量%、加湿水約25重量%で混練した。その後、安定化無機物4を造粒装置5に投入する。造粒装置には、パン型造粒機(ヤマト機販(株)製、YG-2500型)を用い、造粒物6(直径約10mm、球状)を得た。この造粒物6の塩素含有濃度は63,000mg/kg-dryであった。
【0047】
次いで、作成した造粒物6のうち、200.0gを洗浄装置8へ投入した。洗浄装置8としては市販の手つき穴あきカゴ(目幅約0.64 mm)およびボウル(いずれもポリプロピレン製、容量1.5L)である。手付き穴あきカゴの上に造粒物6を乗せ、所定量の洗浄水7(1,000 mL、固液比1:5)が満たされたボウルの中に浸漬させて常温(20〜25℃)で1日静置、すなわち浸漬洗浄を行った。洗浄水7には純水を用いた。浸漬洗浄終了後、固液分離装置9にて固液分離を行った。固液分離装置9としてはボウルより浸漬洗浄が終了した手付き穴あきカゴを取り出してボウルの上部に1時間静置して水切りを行う、すなわち自然重力沈降による固液分離を行い、塩素濃度が14,900mg/kg-dry、含水率が28.7%の水洗残さ(2)として180.1g(乾量)、SS含有濃度が370mg/Lの水洗ろ液(2)として900mL得た。
【0048】
比較例1
実施例1と同じ無機物(1)200.0gを直接洗浄装置8に投入する以外は実施例1と同様の操作を行い、塩素濃度が8,100mg/kg-dry、含水率が43.0%の水洗残さ(3)として184.0g(乾量)、SS含有濃度が11,300mg/Lの水洗ろ液(3)として830mLを得た。
【0049】
比較例2
実施例2と同じ無機物(2)200.0gを直接洗浄装置8に投入する以外は実施例2と同様の操作を行い、塩素濃度が18,600mg/kg-dry、含水率が57.7%の水洗残さ(4)として149.9g(乾量)、SS含有濃度が87,000mg/Lの水洗ろ液(4)として860mLを得た。
【0050】
実施例1、2で得られた水洗残さ(1)、(2)、および比較例1、2で得られた水洗残さ(3)、(4)についての塩素含有量濃度と含水率ついて表1に示す。
【0051】
【表1】

また、実施例1、2および比較例1、2で得られた水洗ろ液(1)〜(4)中のSS濃度、重金属濃度について表2に示す。
【0052】
【表2】

表1から、実施例と比較例において、塩素含有濃度、含水率および水洗ろ液中のSS濃度に差が見られることがわかる。すなわち実施例1は比較例1に比べて塩素含有濃度が8,100mg/kg-dryから7,900mg/kg-dryに、含水率が43.0%から30.8%に低下しており、また実施例2は比較例2に比べて塩素含有濃度が18,600mg/kg-dryから14,900mg/kg-dryに、含水率が57.7%から28.7%に低下しており、無機物を造粒してから洗浄を行うことにより、塩素除去が効果的に行われ、また洗浄物の固液分離もより効率的に行われていることがわかる。
【0053】
また、表2から、実施例と比較例において、SSおよび重金属濃度についても差が見られることがわかる。すなわち実施例1は比較例1に比べてSS濃度は11,300mg/Lから6,950mg/Lに、Pb濃度は2.44mg/Lから0.04mg/Lに、Cd濃度は0.051mg/Lから0.002mg/Lに、T-Hg濃度は0.0048mg/Lから検出下限値以下(<0.0005mg/L)に、Se濃度は0.013mg/Lから0.002mg/Lに、As濃度は0.086mg/Lから検出下限値以下(<0.005mg/L)に低下しており、また実施例2は比較例2に比べてSS濃度は87,000mg/Lから370mg/Lに、Pb濃度は7.25mg/Lから0.02mg/Lに、Cd濃度は0.132mg/Lから0.002mg/Lに、T-Hg濃度は0.0127mg/Lから検出下限値以下(<0.0005mg/L)に、Se濃度は0.031mg/Lから0.002mg/Lに、As濃度は0.257mg/Lから検出下限値以下(<0.005mg/L)にに低下しており、無機物を造粒してから洗浄を行うことにより、SSおよび有害重金属類の水洗ろ液中への溶出防止も効果的に行われていることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の方法のフローを示す処理装置のブロック図である。
【図2】本発明の方法の別のフローを示す処理装置のブロック図である。
【符号の説明】
【0055】
1:無機物
2:安定化処理装置
3:安定化処理剤
4:安定化無機物
5:造粒装置
6:造粒物
7:洗浄水
8:洗浄装置
9:固液分離装置
10:水洗残さ
11:水洗ろ液
12:排水処理設備
13:排水
14:排水処理残さ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼却灰、焼却飛灰、溶融飛灰、廃棄物の炭化処理により得られる炭化物及びごみ焼却残さが埋設されている最終処分場より掘り起こされたごみ焼却残さ、からなる群から選ばれる一種以上の無機物を造粒し、次いで得られた造粒物に対し洗浄処理を行って塩素を除去することを特徴とする無機物の洗浄方法。
【請求項2】
造粒物の粒径が、1〜100mmである請求項1記載の無機物の洗浄方法。
【請求項3】
洗浄処理が、造粒物に洗浄水として炭酸塩を含む水溶液を添加し固液分離するものである請求項1又は2記載の無機物の洗浄方法。
【請求項4】
無機物を造粒する前に、無機物に対し安定化処理を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の無機物の洗浄方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−69185(P2007−69185A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−262272(P2005−262272)
【出願日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】