説明

無機粒子の製造方法およびその装置

【課題】製紙スラッジを原料として、白色度が高くワイヤ磨耗量が少ない無機粒子の製造方法及び装置を得る。
【解決手段】本発明に係る無機粒子の製造方法は、製紙スラッジを原料として製紙用填料もしくは顔料として再利用可能な無機粒子の製造方法であって、前記製紙スラッジを乾燥する乾燥工程と、前記製紙スラッジ中の炭素含有量1kgに対して0.025〜0.042kmolのO2分圧を有する空気を導入しながら温度500〜600℃で炭素をガス化させて排出するガス化工程と、CO2分圧5〜12vol%の大気雰囲気において温度600〜700℃でガス化残留物を完全燃焼する完全燃焼工程とを備えたことを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばCaCO3含有量20wt%以上でかつ印刷用インキ由来のカーボンブラックを含有する製紙スラッジを原料として、製紙用填料もしくは顔料として再利用可能な無機粒子を製造方法およびその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
製紙用填料もしくは顔料に再利用できる無機粒子(以下、単に「無機粒子」という)には、白色度が高くワイヤ磨耗量が少ないことが要求される。
製紙スラッジを原料とする無機粒子の製造方法として、製紙スラッジ原料を一段もしくは複数段で焼成する方法がある。
このような方法の例としては、例えば特許文献1に記載された「製紙スラッジからの白色顔料又は白色填料の製造方法、および設備」の発明がある。
特許文献1に記載された発明は、「原料スラッジを乾燥させる乾燥工程と、
前記乾燥させた乾燥スラッジを燃焼させ未燃分を含む一次燃焼物を得る一次燃焼工程と、
前記一次燃焼物を、攪拌により酸素との接触を促進させながら、前記一次燃焼工程の燃焼熱を利用して所定の白色度となるまで燃焼させる二次燃焼工程とを含む、ことを特徴とする製紙スラッジからの白色顔料又は白色填料の製造方法。」(特許文献1の請求項1参照)というものである。
【0003】
しかし、この方法の場合、白色度を確保する観点から高温焼成する必要があり、そのため無機物が硬い物質に変成したり、あるいは新たに硬い物質が生成したりして、ワイヤ磨耗量が大きくなり再利用の品質を満足できないという問題がある。他方、この硬質物質を生じさせないように焼成温度を下げると、スラッジ原料の未燃物(カーボンブラックや煤)が製品に混在し白色度を確保できない問題が生じる。
【0004】
そこで、製紙スラッジ原料を炭化するという炭化工程を経た後に焼成する方法が、例えば特許文献2に提案されている。
特許文献2の発明は、「顔料塗工古紙からパルプ分を回収する脱墨工程より廃棄される脱墨スラッジを原料として、これを脱水、乾燥した後、燃焼炉で一次燃焼として温度400〜700℃で有機分を炭化し、 粉砕機で一次粉砕として粗粉砕し、 更に、燃焼炉で二次燃焼として温度650〜700℃で炭化した上記有機分を燃焼し、粉砕機で二次粉砕として平均粒子径を0.5〜5μmに粉砕して、白色顔料とすることを特徴とする顔料塗工古紙の脱墨スラッジを原料とする白色顔料の製造方法。」(特許文献2の請求項1参照)というものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-53984号公報
【特許文献2】特開2001-262002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に記載された炭化工程は、一般に酸素濃度が8%以下の雰囲気で行われるため、熱分解により生成される炭化物には可燃成分として固定炭素5〜20%、揮発分20〜35%が残留する。これらの可燃成分は、焼成物の白色度に大きく影響するため、引き続いて行われる焼成で完全燃焼させる必要がある。
炭化工程で多くの可燃成分が生成されるが、その主成分となる炭素が焼成時に炭素1kg当たり8100kcalの発熱を伴うため、炭化物中の無機分までも加熱することになり、その結果として硬質物質が生成し、填料の再利用が困難となる問題が生じる。
また、炭化工程での可燃成分が多くなれば、炭化装置や焼成装置の容量も大きくする必要がある上、装置が煩雑になるというような設備規模、コストおよび操業性に関する問題も併発する。
【0007】
このように、製紙スラッジを原料として無機粒子を製造する方法は、製品品質と経済性が十分に満足されるまでには至っていないのが現状である。
【0008】
本発明はかかる課題を解決するためになされたものであり、製紙スラッジを原料として、白色度が高くワイヤ磨耗量が少ない無機粒子の製造方法及び装置を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
製紙スラッジは有機成分と無機成分を含んでいる。有機成分としてはセルロース、ラテックス、でんぷん等がある。無機成分としては炭酸カルシウム、カオリン、タルク等の製紙に添加される顔料や填料である。製紙スラッジから無機成分を回収する場合、有機成分を完全除去する必要があり、工業的に行われる方法の一つとして大気雰囲気で燃焼させる方法がある。
有機成分としては固定炭素と揮発分に含まれる炭素が主体であり、炭素が完全に除去されないと無機成分中に残留し、それが無機成分の白色度を下げる要因となる。炭素を除去する方法としては一般的に、(i)酸素と反応させる方法、(ii)水蒸気と反応させる方法、が知られており、式[1]から式[6]に示す反応に基づいている。
【0010】
[酸素との反応]
C+O2→CO2 +8100kcal/kg(完全燃焼) [1] 発熱反応
C+1/2O2→CO +2435kcal/kg(ガス化) [2] 発熱反応
C+CO2→2CO(Boudouard反応) [3] 吸熱反応
[水蒸気との反応]
C+H2O→CO+H2(水性ガス反応) [4] 吸熱反応
C+2H2O→CO2+2H2(水性ガス反応) [5] 吸熱反応
CO+H2O→CO2+H2(シフト反応) [6] 発熱反応
【0011】
式[1]は、完全酸化あるいは燃焼、式[2]は部分燃焼あるいはガス化の式で両式とも熱を発生する発熱反応である。
式[3]はBoudouard反応、式[4]は水性ガス反応で、ともに吸熱反応であり石炭ガス化の主反応ともいわれ、温度700〜1200℃で起こると言われるが、式[4]は吸熱反応部分を高温で進行させるために、最低でも900℃が必要とされる。
式[5]は,式[4]に付随して起こる反応である。式[6]は発熱反応でありシフト反応と言われ特に高温(900℃以上)で反応は早く(平衡に達する時間が短く)ガス化炉出口組成を決定する重要な式の一つとされている。
【0012】
前述のように、式[1]から式[6]の中で、式[3]、[4]、[5]、[6]は反応を促進させるために900℃以上の加熱が必要とされるため、無機成分を構成する物質が変化して、硬質物質を生成して、無機粒子の保有すべき特性を損なう問題が生じる。例えば、無機成分としてスラッジ中に含まれるカオリン(Al2Si2O5(OH)4)は、900℃以上の高温に加熱するとγ-アルミナやムライトの硬質セラミックスに変成したり、あるいはカルシウムと結合して硬質のゲーレナイト(Ca2Al(AlSi)O7)を生成する。これらの硬質物質は抄紙ワイヤを短時間に損耗させるような再利用する上での阻害要因となる。
また、無機成分としてスラッジ中に多く含まれる炭酸カルシウム(CaCO3)は900℃以上の高温に加熱するとほとんどが酸化カルシウム(CaO)に分解し、再利用のためのスラリー化が困難となる問題が生じる。
【0013】
このような問題を回避するために、式[1]と[2]に基づく炭素除去方法が有効となるが、反応時の発熱量の低い式[2]に基づくガス化をさせることで、無機成分が必要以上に加熱されることのなく変成のない状態のまま、炭素を除去できるので好ましい。
ガス化は温度500〜600℃とし、かつ連続炉の中へスラッジ原料中の炭素含有量12kgに対して式[2]に基づく1/2kmol酸素量に相当する空気量、すなわち製紙スラッジ中の炭素含有量1kgに対しては0.025〜0.042kmolのO2分圧を有する空気を導入すれば良い。ガス化により炭素を100%除去する必要はなく、残存した炭素は引き続きの焼成炉で完全燃焼すれば良い。
【0014】
ガス化を経て残留した炭素は、完全燃焼を引き続き行うことで除去する。完全燃焼は、前記の式[1]に基づかれ、燃焼に伴って炭素1kg当たり8100kcalの発熱が生じるものの、ガス化により炭素のほとんどが除去された無機成分80〜90wt%以上のスラッジ原料となっているため、無機成分が変成するほどの熱量にはならない。そのため、無機成分の白色度を確保し、かつ無機成分の変成が生じないような炭素の除去ができる。
本発明は上記の知見に基づきなされたものであり、具体的には以下の構成からなるものである。
【0015】
(1)本発明に係る無機粒子の製造方法は、製紙スラッジを原料として製紙用填料もしくは顔料として再利用可能な無機粒子の製造方法であって、前記製紙スラッジを乾燥する乾燥工程と、前記製紙スラッジ中の炭素含有量1kgに対して0.025〜0.042kmolのO2分圧を有する空気を導入しながら温度500〜600℃で炭素をガス化させて排出するガス化工程と、CO2分圧5〜12vol%の大気雰囲気において温度600〜700℃でガス化残留物を完全燃焼する完全燃焼工程とを備えたことを特徴とするものである。
【0016】
(2)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記ガス化工程において、CO2発生量が5%未満となるようにガス化工程のO2分圧を制御することを特徴とするものである。
【0017】
(3)また、上記(1)又は(2)に記載のものにおいて、前記完全燃焼工程の前に、ガス化残留物を粒径がメジアン径2mm以下に解砕する解砕工程を備えたことを特徴とするものである。
【0018】
(4)また、上記(1)乃至(3)のいずれかに記載のものにおいて、前記ガス化工程において、加熱装置としてロータリキルンを用いることを特徴とするものである。
【0019】
(5)また、上記(1)乃至(4)のいずれかに記載のものにおいて、前記完全燃焼工程において、焼成装置としてロータリキルンを用いることを特徴とするものである。
【0020】
(6)本発明に係る無機粒子の製造装置は、製紙スラッジを原料として製紙用填料もしくは顔料として再利用可能な無機粒子の製造装置であって、
前記製紙スラッジを乾燥する乾燥装置と、前記製紙スラッジ中の炭素含有量1kgに対して0.025〜0.042kmolのO2分圧を有する空気を導入しながら温度500〜600℃で炭素をガス化させて排出するガス化装置と、CO2分圧5〜12vol%の大気雰囲気において温度600〜700℃でガス化残留物を完全燃焼する焼成装置とを備えたことを特徴とするものである。
【0021】
(7)また、上記(6)に記載のものにおいて、前記ガス化装置は、CO2発生量を検出して該検出されたCO2発生量に基づいてガス化装置内のO2分圧を制御する空気流量調整器を備えていることを特徴とするものである。
【0022】
(8)また、上記(6)又は(7)に記載のものにおいて、前記ガス化装置及び焼成装置としてロータリキルンを用いることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明においては、製紙スラッジを乾燥する乾燥工程と、前記製紙スラッジ中の炭素含有量1kgに対して0.025〜0.042kmolのO2分圧を有する空気を導入しながら温度500〜600℃で炭素をガス化させて排出するガス化工程と、CO2分圧5〜12vol%の大気雰囲気において温度600〜700℃でガス化残留物を完全燃焼する完全燃焼工程とを備えたことにより、未燃物の発生を抑制し白色度を確保できると共に、製紙スラッジ中に潜在する無機物が硬い物質に変成したり、あるいは新たに硬い物質を生成したりすることなく製紙用填料もしくは顔料として再利用可能な無機粒子を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態1に係る無機粒子の製造方法の工程を説明する説明図である。
【図2】本発明の実施の形態2に係る無機粒子の製造装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[実施の形態1]
本発明の一実施の形態に係る無機粒子の製造方法は、図1に示すように、製紙スラッジを原料として、製紙スラッジを乾燥する乾燥工程と、乾燥された製紙スラッジをガス化するガス化工程と、ガス化後に残留したものを完全燃焼する完全燃焼工程を備えてなるものである。
以下、原料となる製紙スラッジ及び各工程を詳細に説明する。
【0026】
<製紙スラッジ>
本実施の形態において原料とする製紙スラッジは、例えばCaCO3含有量20wt%以上でかつ印刷用インキ由来のカーボンブラックを含有する製紙スラッジであり、古紙からパルプ分を取り出す脱墨工程から廃棄物として排出されるものである。
CaCO3含有量20wt%以上としたのは、回収すべき無機粒子の主体がCaCO3であることから、回収効率を高めるためである。
【0027】
<乾燥工程>
乾燥工程は、例えば機械式脱水装置(例えば、デカンタ型遠心脱水装置)を用いて水分含有率が約50%程度になるまで脱水後、例えば直接加熱式ロータリキルン型乾燥装置によって水分含有率が0〜15%になるまで乾燥する。
【0028】
<ガス化工程>
ガス化工程は、乾燥後の製紙スラッジ中の炭素を主体とする有機分をガス化させて排出する工程である。ガス化工程においては、製紙スラッジ中の炭素含有量1kgに対して0.025〜0.042kmolのO2分圧を有する空気を導入しながら温度500〜600℃で加熱する。
O2分圧を0.025〜0.042kmolとしたのは、固定炭素の残留量を少なくしてガス化すると共に硬質物質の生成を少なくするためである。
より具体的には、O2分圧を0.025kmol以上としたのは、O2分圧が0.025kmol未満では製紙スラッジが炭化する傾向が大きくなり、ガス化工程において固定炭素の残留が多くなるからである。固定炭素の残留量が多くなると、前述したように、ガス化工程の次に行う完全燃焼工程において、炭素が燃焼する際の高熱により硬質物質が生成されやすくなり、好ましくない。
他方、O2分圧を0.042kmol以下としたのは、O2分圧が0.042kmol超では、ガス化工程において燃焼支配的となり、硬質物質であるセラミックが生成されてワイヤ磨耗度が高くなるからである。
なお、O2分圧はCO2発生量によって検知することができる。もし製紙スラッジ中の炭素含有量1kgについて前出の式[1]の完全燃焼をさせるには、O2分圧が0.084kmol相当の空気を導入することになり、その結果21vol%のCO2が発生する。一方、もし製紙スラッジ中の炭素含有量1kgが前出の式[2]のガス化になれば、O2分圧が0.042kmol相当の空気を導入することになり、その結果、CO2は全く発生しない。従って、前出の式[2]のガス化を監視するには、ガス化工程で生じる排ガスのCO2濃度を測定し0vol%となるように制御すればよいが、ガス化工程で許容される500〜600℃の温度変動幅や市販のCO2濃度測定の精度を考慮すれば、O2分圧を0.042kmol以下にするためには、CO2発生量が5%未満となるように制御するようにすればよい。
【0029】
また、加熱温度を500〜600℃としたのは、ガス化を十分にすると共にセラミックの生成を抑制するためである。
換言すれば、加熱温度が500℃未満ではガス化が不十分となり、600℃超では、CaCO3→CaO+CO2という反応が起こり、セラミックが生成されたり、再利用のためのスラリー化が困難となる問題が生じるので、このようは状態を回避するためである。
【0030】
なお、ガス化工程における加熱装置としてロータリキルンを用いることで、連続的に大量処理が可能になるので、好ましい。
【0031】
<完全燃焼工程>
完全燃焼工程は、ガス化後に残留したものを完全燃焼する工程である。完全燃焼工程では、CO2分圧5〜12vol%の大気雰囲気において温度600〜700℃でガス化残留物を完全燃焼する。
CO2分圧を増やすのは、CaCO3→CaO+CO2という反応を防止して、CaCO3の回収効率を向上させるためである。
また、温度範囲を、600〜700℃に限定したのは、CaCO3の分解を抑制しながら残留する固定炭素を燃焼させるためである。換言すれば、600℃未満では固定炭素が十分燃焼せず、700℃超ではCaCO3の分解が顕著になるとともに、硬質物質の生成の生ずる恐れがある。
【0032】
なお、完全燃焼工程における焼成装置としてロータリキルンを用いることで、連続的に大量処理が可能になるので、好ましい。
【0033】
以上のように、本実施の形態の無機粒子の製造方法によれば、未燃物の発生を抑制し白色度を確保できると共に、製紙スラッジ中に潜在する無機物が硬い物質に変成したり、あるいは新たに硬い物質を生成したりすることなく製紙用填料もしくは顔料として再利用可能な無機粒子を得ることができる。
【0034】
なお、完全燃焼工程の前に、ガス化残留物を粒径がメジアン径2mm以下に解砕する解砕工程を備えることにより、ガス化残留物の比表面積が増えるため、空気との接触と熱の伝わりやすさの観点から、固定炭素および有機分の燃焼が促進されるので、好ましい。
【0035】
[実施の形態2]
本実施の形態においては、上記実施の形態1で説明した無機粒子の製造方法を実現するための装置について図2に基づいて説明する。
本実施の形態における無機粒子の製造装置1は、製紙スラッジを乾燥する乾燥装置3と、乾燥後の製紙スラッジの炭素をガス化して排出するガス化装置5と、ガス化後残留物を解砕する解砕機7と、ガス化後の残留物を完全燃焼する焼成装置9とを備えたものである。
以下、各装置を詳細に説明する。
【0036】
<乾燥装置>
乾燥装置3は、例えば機械式脱水装置(例えば、デカンタ型遠心脱水装置)と、直接加熱式ロータリキルン型乾燥装置3によって構成することができる。
この場合、機械式脱水装置によって、製紙スラッジの水分含有率が約50%程度になるまで脱水することができる。また、直接加熱式ロータリキルン型乾燥装置3によって脱水後の製紙スラッジの水分含有率が0〜15%になるまで乾燥することができる。
【0037】
<ガス化装置>
ガス化装置5は、乾燥後の製紙スラッジの炭素をガス化して排出する装置であり、前述のガス化工程を実現する装置である。
ガス化装置5としては、例えばロータリキルンを用いることで、連続的に大量処理が可能になるので、好ましい。
【0038】
ガス化工程においては、製紙スラッジ中の炭素含有量1kgに対して0.025〜0.042kmolのO2分圧を有する空気を導入しながら温度500〜600℃で加熱する必要がある。
そのため、ガス化装置5は、導入する空気量を調整するための流量調整器11を備えている。なお、O2分圧はCO2発生量によって検知することができるので、流量調整器11はガス化装置5から排出されるCO2量を測定するCO2計測器13の検知信号に基づいて導入空気量を調整するようにすればよい。
また、温度制御に関しては、図示しないガス化装置5内の温度検知器の検知信号に基づいて加熱装置の加熱量を調整するようにすればよい。
【0039】
<解砕機>
解砕機7は、ガス化残留物を粒径がメジアン径2mm以下に解砕する装置であり、例えばローラミルを用いることができる。解砕機7によってガス化残留物を解砕することで固定炭素および有機分の燃焼が促進される。
【0040】
<焼成装置>
焼成装置9は、ガス化後の残留物を完全燃焼する装置であり、例えばロータリキルンを用いることができる。
焼成装置9においては、CO2分圧5〜12vol%の大気雰囲気において温度600〜700℃でガス化残留物を完全燃焼する。
焼成装置9に導入する空気にCO2を注入する必要があることから、焼成装置9にCO2注入装置を付属させるのが好ましい。
【0041】
以上のように構成された無機粒子の製造装置1を用いることで、前述の無機粒子製造方法を実現することができ、それによって、前述した無機粒子製造方法で述べた効果、すなわち未燃物の残留を削減し白色度を確保できると共に、製紙スラッジ中に潜在する無機物が硬い物質に変成したり、あるいは新たに硬い物質を生成したりすることなく製紙用填料もしくは顔料として再利用可能な無機粒子を得ることができるという効果が得られる。
【実施例】
【0042】
以下においては、無機粒子製造方法の具体例を説明する。
<使用原料>
CaCO3含有量20wt%以上でかつ印刷用インキ由来のカーボンブラックを含有する製紙スラッジ原料として、再生紙製造工程で発生する脱墨パルプスラッジ(DIPスラッジ)を用いた。
<乾燥工程>
DIPスラッジを機械式脱水装置(デカンタ)で約50%水分に脱水後、直接加熱式ロータリキルン型乾燥装置にて乾燥室内温度100〜140℃、滞留時間1〜3hで水分0〜15%に乾燥した。
<ガス化工程>
乾燥後、スラッジ原料を間接加熱式ロータリキルンにて炉内温度550℃、滞留時間1h、製紙スラッジ原料中の炭素含有量1kgに対して0.042kmolのO2分圧を有する空気を導入しながら炭素をガス化させた。
<解砕工程>
ガス化により得られたガス化残留物はローラミルを用いメジアン径で2mm以下に解砕した。
<燃焼工程>
引き続き、ガス化残留物は撹拌スクリュウ内蔵型円筒加熱装置により、温度700℃、滞留時間2.0h、炉内CO2分圧を6vol%となるように燃焼用空気導入、の運転条件で完全燃焼させ無機物を作成した。
【0043】
以上のようにして生成された無機物について、成分、白色度、炭酸カルシウム分解率、ワイヤ磨耗度を測定および分析した。結果を表1に示す。
【0044】
【表1】

【0045】
白色度80%以上、炭酸カルシウム分解率(X線回折)10%以下、ワイヤ磨耗度については良好、となる製紙用填料もしくは顔料として再利用可能な無機粒子が得られた。
【符号の説明】
【0046】
1 無機粒子の製造方法
3 乾燥装置
5 ガス化装置
7 解砕機
9 焼成装置
11 流量調整器
13 CO2計測器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製紙スラッジを原料として製紙用填料もしくは顔料として再利用可能な無機粒子の製造方法であって、
前記製紙スラッジを乾燥する乾燥工程と、前記製紙スラッジ中の炭素含有量1kgに対して0.025〜0.042kmolのO2分圧を有する空気を導入しながら温度500〜600℃で炭素をガス化させて排出するガス化工程と、CO2分圧5〜12vol%の大気雰囲気において温度600〜700℃でガス化残留物を完全燃焼する完全燃焼工程とを備えたことを特徴とする無機粒子の製造方法。
【請求項2】
前記ガス化工程において、CO2発生量が5%未満となるようにガス化工程のO2分圧を制御することを特徴とする請求項1に記載の無機粒子の製造方法。
【請求項3】
前記完全燃焼工程の前に、ガス化残留物を粒径がメジアン径2mm以下に解砕する解砕工程を備えたことを特徴とする請求項1又は2記載の無機粒子の製造方法。
【請求項4】
前記ガス化工程において、加熱装置としてロータリキルンを用いることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項記載の無機粒子の製造方法。
【請求項5】
前記完全燃焼工程において、焼成装置としてロータリキルンを用いることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項記載の無機粒子の製造方法。
【請求項6】
製紙スラッジを原料として製紙用填料もしくは顔料として再利用可能な無機粒子の製造装置であって、
前記製紙スラッジを乾燥する乾燥装置と、前記製紙スラッジ中の炭素含有量1kgに対して0.025〜0.042kmolのO2分圧を有する空気を導入しながら温度500〜600℃で炭素をガス化させて排出するガス化装置と、CO2分圧5〜12vol%の大気雰囲気において温度600〜700℃でガス化残留物を完全燃焼する焼成装置とを備えたことを特徴とする無機粒子の製造装置。
【請求項7】
前記ガス化装置は、CO2発生量を検出して該検出されたCO2発生量に基づいてガス化工程のO2分圧を制御する空気流量調整器を備えていることを特徴とする請求項6記載の無機粒子の製造装置。
【請求項8】
前記ガス化装置及び焼成装置としてロータリキルンを用いることを特徴とする請求項6又は7記載の無機粒子の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−46847(P2012−46847A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−190711(P2010−190711)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(501120122)スチールプランテック株式会社 (49)
【Fターム(参考)】