説明

無機粒子ゾルの製造方法、及び無機粒子ゾル

【課題】様々な産業分野に用いることができる、有機溶媒に無機粒子がきわめて均一に分散し透明となるゾル、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】水分散無機微粒子に有機溶媒及び分散剤を加えて懸濁溶液を作製し、次いで、この懸濁溶液から水分を除去し、有機溶媒分散無機粒子ゾルを得る。前記水分の除去は、前記有機溶媒と水との沸点差を利用する方法、限外濾過装置を用いる方法、又は前記有機溶媒と水との凝固点差を利用する方法を使用して行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機溶媒に分散し難い無機粒子、とくに凝集力の高いナノサイズの無機粒子を、添加剤、溶媒交換の方法を工夫することで、均一、透明な状態で有機溶媒へ可溶化することを可能にする、無機粒子ゾルの製造方法及び無機粒子ゾルに関する。
【背景技術】
【0002】
気相合成で合成した金、銀、モリブデンなどの金属粒子、種々の方法で合成したシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、マグネタイトなどの酸化物粒子はサイズがナノ領域となると、バルクとは異なった特異な物理、化学的性質を示すため、それらユニークな特性を材料に応用する研究が各方面にて行なわれている。しかしながら、粒子の凝集が材料物性の向上とその研究の発展を妨げており、革新的な物性を有する材料は提唱されていたとしても、実際には著しい効果を有した商品開発には至っていない。この理由は粒子の大きさがナノサイズとなると、表面積が増大し、粒子表面に存在する置換基から生じる相互作用が強まり、バルクのものに比べ、はるかに凝集が起こりやすくなるためである。
【0003】
無機粒子を材料中に凝集させることなく均一に分散させるためには、粒子を凝集の多い乾燥粉末として扱うのではなく、水や有機溶媒中に均一に分散させた状態として取り扱うことが有効である。たとえば無機粒子を水に分散させたゾルとしては日産化学工業のベーマイトゾル(商品名アルミナゾル520)、扶桑化学工業のクォートロン、川研ファインケミカルのベーマイトゾル(商品名アルミゾル10)、石原産業株式会社のチタニアゾル(商品名TSK−5)など数多い。これらは無機粒子の表面に豊富に存在する親水基の水酸基を利用して水中で分散させている。
【0004】
水分散であればナノスケールであっても均一に分散できるため、粒子の種類も有機溶媒に分散した粒子に比べて多いが、水分散では用いる塗料や樹脂が限定される他、瞬時に揮発させたい場合に扱いづらいなど、用途が限定されてしまう。
【0005】
一方、有機溶媒に無機粒子を分散させたゾルとしては特開平9−208213に開示されている日産化学工業のシリカゾル(商品名スノーテックス)がある。これは市販の水分散コロイダルシリカを蒸留装置内で加熱し、そこへ断続的にアルコールを送り続けることでアルコール分散のシリカゾルを得ている。しかし、この方法では疎水性の有機溶媒に用いると、粒子の凝集が生じ、分散が不十分となった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は様々な産業分野に用いることができる、有機溶媒に無機粒子がきわめて均一に分散し透明となるゾル、およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく、本発明は、
水分散無機微粒子に有機溶媒及び分散剤を加えて懸濁溶液を作製する工程と、
前記懸濁溶液から水分を除去し、有機溶媒分散無機粒子ゾルを得る工程と、
を具えることを特徴とする、無機粒子ゾルの製造方法に関する。
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成すべき鋭意検討を実施した。その結果、分散剤の選定と特に水分を除去する方法に着目し、無機粒子が水中に均一に分散してなる水分散無機粒子に対して有機溶媒及び粒子表面を疎水化する分散剤を加えて懸濁状態を作製し、その状態から水のみを除去するようにすることによって、前記水分散無機粒子の前記無機粒子がその均一な分散状態を保ったまま有機溶媒へ分散することを見出した。その結果、得られた分散溶液は前記無機粒子が均一に分散した透明なゾルとなり、目的とする無機粒子ゾルが得られることを見出した。
【0009】
なお、本発明の好ましい態様において、前記有機溶媒は、その沸点が水の沸点より高く、前記水分は前記有機溶媒と前記水との沸点差を利用して前記懸濁溶液から除去する。このような方法を採用することによって、前記懸濁溶液からの前記水分の除去をより効果的及び効率的に行うことができるようになる。
【0010】
また、本発明の他の好ましい態様においては、前記懸濁溶液より限外濾過装置を用いて、前記水分を除去する。この場合においても、前記懸濁容器からの前記水分の除去を簡易かつ効率的に実施することができる。
【0011】
さらに、本発明のその他の好ましい態様においては、前記有機溶媒は、その凝固点が水の凝固点より低く、前記水分は前記有機溶媒と前記水との凝固点差を利用して前記懸濁溶液から除去する。このような方法を採用することによって、前記懸濁溶液からの前記水分の除去をより効果的及び効率的に行うことができるようになる。
【0012】
なお、本発明の一態様において、前記水分散無機微粒子に対して懸濁剤を加えることができる。前記懸濁溶液を作製する際には、前記水分散無機微粒子に対して上記有機溶媒及び分散剤を適当量加えることによって得ることができる。しかしながら、水分散無機微粒子、有機溶媒及び分散剤の種類や量によって十分に懸濁した懸濁溶液を得ることができない場合がある。したがって、このような場合には、適宜に懸濁剤を用いて目的とする懸濁溶液を得るようにすることができる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明によれば、これまで困難であったナノサイズの粒子を有機溶媒へ分散できるだけでなく、多くの既存の無機粒子を応用性の高い有機溶媒ゾルを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明のその他の特徴及び利点について、発明を実施するための最良の形態に基づいて詳細に説明する。
【0015】
(水分散無機微粒子)
本発明においては、最初に、所定の無機粒子が水中に均一に分散した水分散無機微粒子を準備する。このような水分散無機微粒子は、予め水分散無機微粒子として市販されているものをそのまま用いることもできるし、使用者において所望の無機粒子粉末を水に均一に分散させることによって得るようにすることもできる。
【0016】
また、上記水分散無機微粒子中に分散配合されている上記無機粒子としては、目的とする無機粒子ゾルの用途及び水中への分散性などを考慮すると、金属粒子、金属酸化物粒子、及び炭素無機材料粒子であることが好ましい。
【0017】
前記金属粒子としては、金、銀、銅、モリブデンなどの金属単体、カドミウムセレン、硫化亜鉛などの無機化合物を挙げることができる。
【0018】
前記金属酸化物粒子としては、水分散を容易にし、かつ後述する分散剤の反応活性点となる水酸基が豊富な酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化銅、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化ナトリウム、酸化イットリアなどを好ましくは例示することができる。このような金属酸化物粒子の中でも分散剤との反応が容易な水酸基を有するベーマイト、ヘマタイト、チタニア、カルシアが特に好ましい。これらは特異な形状を有する粒子を作りやすいばかりか、粒子自体に様々な機能を有しており、各方面の産業分野で有用な粒子となる。
【0019】
前記炭素無機材料粒子としては、カーボン、カーボンナノチューブ、フラーレンなど炭素骨格を有する無機材料粒子を例示できる。これらの無機粒子は任意の割合で組み合わせて用いても良い。
【0020】
無機粒子の形状は繊維状、紡錘状、棒状、針状、中空筒状、柱状、板状、球状などの定形粒子であることが好ましい。一方、不定形粒子、たとえば粒子の前駆体となる水酸化物などのゲル状物質は、後に目的とする無機粒子ゾルを作製した際に、有機溶媒中にて良好な分散状態を維持できず、均一な無機粒子ゾルを得ることができない場合がある。
【0021】
なお例えば酸化アルミニウムはさまざまな種類、形態があり、アルゴナイド社のナノセラムファイバー VariantAは結晶性でありながら通常の結晶成長では作製できないような湾曲した繊維状アルミナである。このような酸化アルミニウムを一般に不定形ベーマイト、疑ベーマイトと呼び、分析上は結晶性の悪いベーマイトと解析する。しかしそれらはベーマイト結晶と水酸化アルミニウム、水酸化アルミニウムとベーマイトの中間結晶の集合体であり、この状態を不定形ベーマイトと解釈するものである。このような不定形粒子の場合には上記不都合が発生する場合もあるため、本願発明に用いる無機粒子の形状は繊維状、紡錘状、棒状、針状、中空筒状、柱状、板状、球状などの定形粒子であることが好ましい。
【0022】
また、上記無機粒子は、ナノサイズの粒子だけでなく、ミクロンサイズの粒子にももちろん使うことが可能である。ただし、ミクロンサイズの粒子では透明な有機溶媒分散の無機粒子ゾルを得ることができない場合がある。
【0023】
上記無機粒子の製造方法は特に限定されるものではないが、湿式合成法で製造することが好ましく、特には水熱合成法、ゾルゲル法、及び逆ミセル法によって製造することが好ましい。このような方法で無機粒子を製造した場合、粒子同士の癒着、結合を抑制することができ、均一かつ微小な大きさの無機粒子を安定的に製造することができる。
【0024】
一方、気相合成、化学蒸着法、焼成処理により得られた粒子は粒子同士が癒着し、均一かつ微小な大きさの無機粒子を安定的に製造することができない。したがって、以下に詳述する水分除去を行なって有機溶媒中に分散した無機粒子ゾルを得た場合においても、前記有機溶媒中に粒子同士が癒着したまま分散するようになってしまう。したがって、このような無機粒子ゾルを用いた実際の用途において、前記無機粒子の本来的な効果を発現できない場合がある。
【0025】
なお、上述した金属酸化物粒子は、表面に水酸基を有することが多く、水への分散性が良い。したがって、水分散無機微粒子を構成する無機粒子は、特に金属酸化物粒子であることが好ましい。
【0026】
また、上記水分散無機粒子では上記無機粒子が沈殿することなく、均一に分散していることが必要である。均一に分散しているかどうか判別し難い場合は、前記水分散無機微粒子中の前記無機粒子の含有量が10重量%以下となるように希釈すると良い。ただし、水分散の時点で凝集、沈殿が起きている場合、本方法を用いて有機溶媒へ無機粒子を分散させても、その凝集、沈殿を引き継いで、有機溶媒に均一に分散した無機粒子ゾルを得ることができない。また、このとき水への分散性を上げる目的で一般的な解膠処理剤、たとえば酢酸、塩酸、硝酸などを用いても良い。
【0027】
(分散剤)
本発明で用いることができる分散剤は、上述した水分散無機微粒子中の無機粒子上の水酸基と強く作用して粒子表面を被覆し、前記無機粒子が以下に詳述する有機溶媒中で均一に分散するようにして機能する。
【0028】
このような分散剤としては、有機酸、有機酸エステルに代表される有機化合物を用いることができる。前記有機化合物としては、スルホン酸、カルボン酸、リン酸の有機基置換誘導体を例示することができる。
【0029】
スルホン酸系の場合、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸などのアルキルスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、スチレンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸などの芳香族スルホン酸、及びこれらの低級アルコールとのエステル、アルカリ金属塩、アンモニウム塩が挙げられる。
【0030】
カルボン酸の場合、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ステアリン酸、リノール酸、乳酸、マロン酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、アクリル酸などのアルキルカルボン酸、安息香酸、フタル酸各異性体、サリチル酸などの芳香族カルボン酸、さらにはポリアクリル酸などの高分子カルボン酸、及びこれらの低級アルコールとのエステル、アルカリ金属塩、アンモニウム塩が挙げられる。
【0031】
リン酸誘導体の場合、トリブチルホスフェート、ジエチルホスフェート、メチルホスフェートなどのリン酸モノ/ジ/トリアルキルエステル、トリフェニルホスフェートなどのリン酸アリールエステル、ジメチルフェニルホスフォナイトなどのホスフォン酸エステル、トリブチルホスファイト、トリフェニルホスファイトなどの亜リン酸エステル、トリフェニルホスフィンオキシドなどのホスフィンオキシド、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイドなどの環状亜リン酸エステル、メチルホスフォン酸、エチルホスフォン酸、フェニルホスフォン酸などのホスフォン酸、メチルホスフィン酸、エチルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸などのホスフィン酸、およびこれらの低級アルコールとのエステル、アルカリ金属塩、アンモニウム塩を挙げることができる。
【0032】
(有機溶媒)
本発明で使用する有機溶媒は、以下に詳述するような方法で懸濁溶液を作製できるものであれば特に限定されるものではなく、汎用のものを使用することができる。例えば芳香環、ハロゲン原子、酸素原子及び窒素原子のいずれかを分子構造に有する有機化合物であることが塗料や樹脂用途に好ましい。具体的にはベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クロロベンゼンなどの芳香族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、アセトン、メチルエチルケトンなどの脂肪族ケトン類、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどの脂環式ケトン類、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサンなどの環状エーテル類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールなどのグリコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジベンジルエーテル、エチレングリコールジフェニルエーテル、1,2−ジアセトキシエタン、1−アセトキシ−2−メトキシエタンなどのグリコール類のエーテル化又はエステル化誘導体、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、シクロヘキサノールなどのアルコール類、フェノール、クレゾール類などのフェノール誘導体、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、sym−テトラクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素類、ピリジン、メチルピリジン類、ジメチルピリジン類などのピリジン誘導体、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのN−アルキルアミド類、ニトロメタンやニトロベンゼンなどのニトロ化炭化水素類、アセトニトリルやベンゾニトリルなどのニトリル類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類などが例示できる。
【0033】
これらのうち、環境安全性やコストの点で好ましいのは、トルエン、キシレン、クロロベンゼンなどの芳香族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、アセトン、メチルエチルケトンなどの脂肪族ケトン類、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどの脂環式ケトン類、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソランなどの環状エーテル類、前記全てのグリコール類のエーテル化又はエステル化誘導体、前記全てのアルコール類、前記全てのN−アルキルアミド類であり、溶解力と揮発性など塗料や樹脂向けの実用性能の点でさらに好ましいのはトルエン、キシレン、クロロベンゼンなどの芳香族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、アセトン、メチルエチルケトンなどの脂肪族ケトン類、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどの脂環式ケトン類、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソランなどの環状エーテル類、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジベンジルエーテル、1,2−ジアセトキシエタン、1−アセトキシ−2−メトキシエタンなどのグリコール類のエーテル化又はエステル化誘導体、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブチルアルコールなどの炭素数1〜4のアルコール類、N,N−ジメチルホルムアミドである。
【0034】
これらの例示した有機化合物は、前記有機溶媒として単独で、若しくは複数種を混合して使用可能である。これらの例示した有機化合物は、後述する水分の除去方法に応じてその沸点、水との共沸化合物の形成性、凝固点などの観点で好ましいものを選択する。
【0035】
(懸濁溶液の作製)
本願発明における懸濁溶液は、上述した水分散無機微粒子に対して上述した有機溶媒及び分散剤を加えることによって作製する。具体的には、以下に示すようにして操作を経て作製することができる。
【0036】
最初に、水分散無機微粒子をフラスコに入れ、前記水分散無機微粒子と同量以上の有機溶媒を入れ、磁気攪拌機、機械攪拌、超音波洗浄機などを用い、前記水分散無機微粒子の水と前記有機溶媒とを混合させる。次いで、得られた混合溶液に対して上述した分散剤を添加し、前記水分散無機微粒子中の無機粒子上の水酸基と反応させて、その粒子表面を被覆するようにする。以上のような操作を経ることにより、基本的には目的とする懸濁溶液を作製することができる。
【0037】
しかしながら、水分散無機微粒子、有機溶媒及び分散剤の種類や量によって十分に懸濁した懸濁溶液を得ることができない場合がある。したがって、このような場合には、適宜に懸濁剤を用いて目的とする懸濁溶液を得るようにすることができる。
【0038】
また、本発明においては、分散剤を用いているものの、このような分散剤がなくても有機溶媒と水分散無機微粒子とを適宜に選択して組み合わせることにより、目的とする懸濁溶液さらには無機粒子ゾルが得られる場合は、前記分散剤を用いないようにすることもできる。
【0039】
なお、本発明における懸濁溶液とは、均一なエマルジョン状態、有機溶媒と水が2層に分かれた状態、粒子や添加剤が残り、沈殿しているなどの状態を示している。均一なエマルジョン状態となることが好ましいが、一部沈殿が残っている状態となっても水を除去してゆくに従って均一となる。
【0040】
また、懸濁溶液中の無機粒子の濃度は50重量%以下となるようにすることが好ましい。懸濁溶液中の無機粒子の濃度が50重量%を超えると、溶液の粘度が上昇して攪拌効率を損ない、分散剤を添加してもその効果が十分に得られず、前記無機粒子が均一に分散した懸濁溶液さらには無機粒子ゾルが得られなくなる場合がある。
【0041】
なお、前記無機粒子の濃度の下限は特に限定されるものではないが、無機粒子ゾルとした場合に、その無機粒子の効果を種々の用途において発現させるためには、(1)重量%とすることが好ましい。
【0042】
(水分の除去)
上述のようにして懸濁溶液を作製した後は、以下に詳述する方法によって前記懸濁溶液から水分を除去する。このような水分除去方法は特に限定されるものではないが、水分除去を簡易かつ効果的、効率的に行なうという観点から、懸濁溶液を構成する前記有機溶媒と前記水との沸点差を利用して前記懸濁溶液から水分を除去する方法、前記懸濁溶液より限外濾過装置を用いて、前記水分を除去する方法、又は前記懸濁溶液を構成する前記有機溶媒と前記水との凝固点差を利用して前記懸濁溶液から水分を除去する方法などを好ましく用いることができる。以下に、これらの方法について詳述する。
【0043】
<有機溶媒と水との沸点差を利用する方法>
上記懸濁溶液を構成する有機溶媒と水との沸点差を利用して前記懸濁溶液から水分を除去するに際しては、基本的に前記懸濁溶液を常圧下又は減圧下に配置して行う。減圧下に配置する場合は、前記懸濁溶液を配置した雰囲気を所定の真空度(減圧下)まで排気することによって、前記水を前記有機溶媒に先駆けて沸騰させ、前記水を蒸発させて除去する。一方、常圧下に配置する場合は、前記懸濁溶液を適宜加熱し、例えば100℃前後に加熱することによって、前記水を前記有機溶媒に先駆けて沸騰させ、前記水を蒸発させて除去する。
【0044】
なお、この方法においては、使用する上記有機溶媒の沸点が水よりも高いことが必要であり、好ましくは、常圧下100℃を越え、400℃以下であるような沸点を有する有機溶媒を使用する。具体的には、トルエン(111℃)、キシレン(140℃)などの芳香族炭化水素系溶媒、酢酸ブチル(125℃)などのエステル系溶媒、シクロペンタノン(130℃)、シクロヘキサノン(155℃)などのケトン系溶媒、1,4−ジオキサン(101℃)やエチレングリコール(196℃)及びそのエーテルなどのエーテル系溶媒、n-ブタノール(118℃)、シクロヘキサノール(160℃)などのアルコール系溶媒、syn-テトラクロロエタン(146℃)などのハロゲン系溶媒、ピリジン(115℃)(N,N−ジメチルホルムアミド(153℃)、ジメチルスルホキシド(189℃)などの非プロトン系極性溶媒などを挙げることができる。
【0045】
なお、上記の例示においては、常圧下での沸点を併せて挙げている。また、ここでいう“常圧下”とは、基本的には“大気圧下”を意味するものである。
【0046】
<限外濾過装置を用いる方法>
限外濾過装置を用いて懸濁溶液から水を除去するに際しては、限外濾過膜もしくは細孔セラミック膜を備えた一般的な限外濾過装置を用いて行なう。これらの膜は用いる有機溶媒の種類に応じて選択する。具体的方法としては、懸濁溶液を数回サイクルさせることで水分を除く。水は有機溶媒と共に膜を通過するため、失った分を新しい乾燥した有機溶媒で補填する。このサイクルを繰り返し、懸濁溶液から水を少しずつ除去することができる。
【0047】
なお、本方法を用いて水を除く場合に限り、上記懸濁溶液は均一なエマルジョン状態となっていることが好ましい。懸濁溶液中に塊がある場合、限外濾過の細孔を目詰まりさせる可能性がある他、塊の中の水分を除くことができず、結果として有機溶媒に均一に分散した無機粒子ゾルを得ることができない場合がある。
【0048】
<有機溶媒と水との凝固点差を利用する方法>
上記懸濁溶液を構成する有機溶媒と水との凝固点差を利用して前記懸濁溶液から水分を除去するに際しては、上記懸濁溶液を水の沸点近傍あるいはそれ以下にまで冷却し、前記有機溶媒に先駆けて水のみを凝固させ、この凝固した水分を取り除くことによって行う。例えば、上記懸濁溶液を所定の容器内に入れ、その後投げ込み式の冷却機を入れて、水分だけを凝固させることにより水分を除去することができる。
【0049】
なお、この方法においては、使用する上記有機溶媒の凝固点が水よりも低いことが必要であり、好ましくは常圧下で、0℃より低く、−200℃以上であるような有機溶媒を用いる。このような有機溶媒としては、トルエン(−93℃)などの芳香族炭化水素系溶媒、酢酸エチル(−84℃)などのエステル系溶媒、シクロペンタノン(−51℃)、シクロヘキサノン(−47℃)などのケトン系溶媒、1,2ジメトキシエタン(−58℃)、テトラヒドロフラン(−108℃)などのエーテル系溶媒、メチルアルコール(−98℃)、エチルアルコール(−114℃)などのアルコール系溶媒、クロロホルム(−63℃)、クロロベンゼン(−45℃)などのハロゲン系溶媒、ピリジン(−42℃)(N,N−ジメチルホルムアミド(−60℃)などの非プロトン系極性溶媒などを挙げることができる。
【0050】
なお、上記の例示においては、常圧下での凝固点を併せて挙げている。また、ここでいう“常圧下”とは、基本的には“大気圧下”を意味するものである。
また、上述した3つの方法は、有機溶媒と水とを分離するためのみでなく、有機溶媒同士を分離するために用いることもできる。例えば、トルエンに分散した無機粒子ゾルにシクロヘキサノンを加え、沸点差を利用することにより、トルエンからシクロヘキサノンに溶媒を交換することで、シクロヘキサノン分散無機粒子ゾルを作ることができる。
【0051】
以上のようにして懸濁溶液から水分を除去することにより、上記有機溶媒中に上記水分散無機微粒子中の無機粒子が分散してなる有機溶媒分散無機粒子ゾル、すなわち無機粒子ゾルを得ることができる。但し、前記無機粒子ゾル中の前記無機粒子の濃度は20重量%以下であることが好ましい。20重量%を超えると、前記ゾルの流動性が欠乏してチクソトロピーが発生し、前記ゾルの使用用途が限定されてしまう。
【0052】
また、上記のようにして得た無機粒子ゾル中における無機粒子の均一分散性は曇価を測定することにより判別できる。測定方法としては前記無機粒子ゾルを1センチ角の石英セルに入れ、Hazeメータを用いて測定する。このとき均一に無機粒子が分散していれば、曇価は10%以下となる。曇価が10%以上となるとゾル全体が白く濁り、TEM観察においても粒子の凝集が判別でき、粒子が均一に分散できていないことがわかる。
【実施例】
【0053】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は当然に以下の実施例に限定されるものではない。
【0054】
(実施例1)
フラスコ内に触媒化成工業(株)製「Cataloid−AS−3」(水分散ベーマイト長軸長さ100nm、短軸長さ10nm、固形分7重量%、比重1.05)500g、トルエン1000gを入れ、磁気攪拌機を用いてフラスコ内を良く攪拌しながら城北化学工業(株)製「JAMP4(モノn−ブチルホスフェート)」を7g添加し、30分間室温のまま攪拌を続けた。次に減圧下ロータリーエバポレーターを用いて水を除去した。蒸留はフラスコ内のゾルが透明感を増すまで行なった。その後、フラスコ内の温度を、トルエンが蒸留できる温度に設定し、フラスコ内のゾルの固形分が10重量%になるようにトルエンの量を調整し、トルエン分散ベーマイトゾルをほぼ定量的に得た。
【0055】
なお、前記ゾルの収量は350gであり、固形分は10重量%であり、Hazeは9.5%であった。また、目視観察によって、前記ゾルは無色透明であることを確認し、TEM観察によって、前記ベーマイト凝集塊が無いことが確認された。
【0056】
(実施例2)
ビーカーに巴工業(株)製「CAM9010」(粉末ベーマイト、一次粒子径短軸長さ15nm、長軸長さ40nm)20gと蒸留水180gを入れ、磁気攪拌機を用いて6時間攪拌した。その後超音波洗浄器にて2時間超音波洗浄処理を行った。すると固形分10%の水ゾルを得ることができた。さらにこの水ゾルに対し1,4ジオキサン1500gを入れ、磁気攪拌機を用いてフラスコ内を良く攪拌しながら和光純薬工業(株)製「パラトルエンスルホン酸一水和物」を3g添加し、30分間室温のまま攪拌を続けた。次に減圧下ロータリーエバポレーターを用いて水を除去した。蒸留はフラスコ内のゾルが透明感を増すまで行なった。なお、共沸が激しいため、適宜1,4ジオキサンを足しながら水を除去した。
【0057】
次いで、フラスコ内のゾルの固形分が10重量%になるように1,4ジオキサンの量を調整し、目的とする1,4ジオキサン分散ベーマイトゾルを得た。このゾルの収量は190gであり、固形分は10.2重量%であり、Hazeは4.5%であった。また、目視観察によって、前記ゾルは無色透明であることを確認し、TEM観察によって、前記ベーマイト凝集塊が無いことが確認された。
【0058】
(実施例3)
フラスコ内に扶桑化学工業(株)製「クォートロンPL−1」(水分散シリカ粒子径15nm、固形分12重量%)200g、トルエン1000g、磁気攪拌機を用いてフラスコ内を良く攪拌しながら日本化学工業(株)製フェニルホスホン酸を4g添加し、30分間室温のまま攪拌を続けた。次に減圧下、ロータリーエバポレーターを用いて、水を除去した。蒸留はフラスコ内のゾルが透明感を増すまで、行なった。水を除去後、フラスコ内の温度を、トルエンが蒸留できる温度に設定し、フラスコ内のゾルの固形分が10重量%になるようにトルエンの量を調整し、トルエン分散ベーマイトゾルをほぼ定量的に得た。
【0059】
なお、前記ゾルの収量は350gであり、固形分は6.8重量%であり、Hazeは9.5%であった。また、目視観察によって、前記ゾルは無色透明であることを確認し、TEM観察によって、前記ベーマイト凝集塊が無いことが確認された。
【0060】
(実施例4)
フラスコ内に0.3M酸化亜鉛、0.6M硝酸、0.3Mニトリロ三酢酸と0.6Mアンモニア水、2.0M酢酸アンモニウム、1重量%ゼラチンに調整した6種類の化合物の水溶液に良く攪拌しながら水酸化ナトリウムでpHを8.6になるように調整した溶液A1000mLに2.4×10−3M硫化ナトリウム、1.2Mチオアセトアミド、1重量%ゼラチンに調整した溶液B250mLをすばやく加え、60℃で2時間攪拌を続けた。溶液はゲル化しているので、遠心分離機を用いて沈殿物と上澄みに分けた。沈殿物には硫化亜鉛の粒子が含まれているので、これを回収し、10重量%になるように見当をつけ、蒸留水を加え、水分散硫化亜鉛粒子(粒子径5nm)200g(固形分濃度約10重量%)を得た。
【0061】
次いで、上述のようにして得た水ゾルに対しシクロヘキサノン1000gを入れ、磁気攪拌機を用いてフラスコ内を良く攪拌しながら和光純薬工業(株)製「パラトルエンスルホン酸一水和物」を4g添加し、30分間室温のまま攪拌を続けた。次に減圧下ロータリーエバポレーターを用いて水を除去した。蒸留はフラスコ内のゾルが透明感を増すまで行なった。共沸するため適宜シクロヘキサノンを足しながら水を除去した。フラスコ内のゾルの固形分が10重量%になるようにシクロヘキサノンの量を調整し、トルエン分散酸化亜鉛ゾルを得た。前記ゾルの収量は200gであり、固形分は9重量%であり、Hazeは3.2%であった。また、目視観察によって、前記ゾルは薄黄色の透明であることを確認し、TEM観察によって、前記ベーマイト凝集塊が無いことが確認された。
【0062】
(実施例5)
フラスコ内に触媒化成工業(株)製「Cataloid−AS−3」(水分散ベーマイト長軸長さ100nm、短軸長さ10nm、固形分7重量%、比重1.05)500g、THF1000gを入れ、磁気攪拌機を用いてフラスコ内を良く攪拌しながら城北化学工業(株)製「JAMP4(モノn−ブチルホスフェート)」を7g添加し、30分間室温のまま攪拌を続けた。フラスコ内の溶液を限外濾過装置にかけ、6サイクル循環させた。このとき適宜、THFを足しながら行った。水が5%以下になったのを確認し、装置から取り出し、THF分散ベーマイトゾルを得た。なお、前記ゾルの収量は300gであり、固形分は8重量%であり、Hazeは8.5%であった。また、目視観察によって、前記ゾルは無色透明であることを確認し、TEM観察によって、前記ベーマイト凝集塊が無いことが確認された。
【0063】
(実施例6)
フラスコ内に触媒化成工業(株)製(水分散ベーマイト長軸長さ100nm、短軸長さ10nm、固形分7重量%、比重1.05)500g、THF1000gおよび磁気攪拌子を入れフラスコ内を良く攪拌しながら和光純薬工業製パラトルエンスルホン酸一水和物を10g添加し、30分間室温のまま攪拌を続けた。攪拌を続けたままフラスコ内の溶液に−30℃に設定した投げ込みクーラーを入れ、フラスコを密閉した。適宜投げ込みクーラーに着く氷を除き、氷が着かなくなったところで、投げ込みクーラーを除去し、次いで、蒸留装置へ溶液を移動し、熱を加えTHFを蒸発させ、フラスコ内の濃度を10%になるように調節し、THF分散ベーマイトゾルを得た。
【0064】
なお、前記ゾルの収量は350gであり、固形分は7重量%、Hazeは6.5%であった。また、目視観察によって、前記ゾルは無色透明であることを確認し、TEM観察によって、前記ベーマイト凝集塊が無いことが確認された。
【0065】
(実施例7)
ビーカーに田中貴金属(株)製銀コロイド(固形分2%、粒子径20nm、添加剤ポリビニルピロリドン)200gにシクロヘキサノール500gを入れ、磁気攪拌機を用いて良く攪拌した。30分攪拌後、減圧下ロータリーエバポレーターを用いて水を除去した。蒸留はフラスコ内のゾルが透明感を増すまで行なった。
【0066】
次いで、フラスコ内のゾルの固形分が3重量%になるように1,4ジオキサンの量を調整し、目的とする銀粒子シクロヘキサノール分散ゾルを得た。このゾルの収量は130g、固形分は3重量%、Hazeは3.0%であった。また、目視観察によって、前記ゾルは無色であり、TEM観察によって、凝集塊が無いことが確認できた。
【0067】
(比較例1)
触媒化成工業(株)製「Cataloid−AS−3」(水分散ベーマイト長軸長さ100nm、短軸長さ10nm、固形分7重量%、比重1.05)を液体窒素を用いて急冷し、フリーズドライ装置を用いてベーマイト粒子を粉末化した。フラスコに粉末20g、THF180g、添加剤として城北化学工業(株)製「JAMP4(モノn−ブチルホスフェート)」を4g加え、機械攪拌3時間、超音波洗浄器300分の処理を行なった。溶液は白濁した、粘度の高い溶液となった。この溶液の収量は200gであり、固形分は10重量%であり、Hazeは 90%であった。また、目視観察によって、前記溶液は白濁していることを確認し、TEM観察によって、2ミクロンの凝集塊の存在が確認できた。
【0068】
(比較例2)
触媒化成工業(株)製「Cataloid−AS−3」(水分散ベーマイト長軸長さ100nm、短軸長さ10nm、固形分7重量%、比重1.05)を真空オーブンを用いて200℃で6時間、真空下乾燥させ、ベーマイト粒子を粉末化した。フラスコに粉末20g、シクロヘキサノン180g、添加剤として城北化学工業(株)製「JAMP4(モノn−ブチルホスフェート)」を4g加え、機械攪拌3時間、超音波洗浄器300分の処理を行なった。得られた溶液は白濁し、沈殿も確認できた。また、前記溶液の収量は200gであり、固形分は10重量%であり、Haze は測定限界だった。また、目視で凝集沈殿を確認できた他、TEM観察を行なうと6ミクロンの凝集塊が確認できた。
【0069】
(比較例3)
扶桑化学工業(株)製「クォートロンPL−1」(水分散シリカ粒子径15nm、固形分12重量%)に対し、スプレードライ装置を用いてシリカ粒子を粉末化した。フラスコに粉末20g、トルエン180g、日本化学工業(株)製フェニルホスホン酸を4g添加し、機械攪拌3時間、超音波洗浄器300分の処理を行なった。得られた溶液は白濁した、粘度の高い溶液となった。また、前記溶液の収量は200gであり、固形分は10重量%であり、Hazeは80%であった。また、目視において、前記溶液は白濁していることを確認し、TEM観察を行なうと0.5ミクロンの凝集塊が確認できた。
【0070】
以上、実施例及び比較例から明らかなように、本発明の方法に従って得た無機粒子ゾルでは、無機粒子が凝集することなく均一に分散し、透明性にも優れていることが分かる。
【0071】
以上、具体例を挙げながら本発明を詳細に説明してきたが、本発明は上記内容に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸脱しない限りにおいてあらゆる変形や変更が可能である。
【0072】
(比較例4)
触媒化成工業(株)製「Cataloid−AS−3」(水分散ベーマイト長軸長さ100nm、短軸長さ10nm、固形分7重量%、比重1.05)300gを蒸留装置に入れ、さらにイソプロピルアルコールを3000g入れ、約3300gの混合溶液とした。この溶液を加熱し、1000gにするまで濃縮した。その後室温に戻し、再びイソプロピルアルコールを加え、約3000gの溶液に戻した。この操作を5回繰り返し、最後に蒸留により濃度を10%に調整してイソプロピルアルコール分散ベーマイトゾルを200g得た。得たゾルは白色であり、Hazeは90%だった。沈殿こそ確認できなかったが、TEM観察を行うと、0.2ミクロンほどの凝集塊を確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の方法で得た無機粒子ゾルは、樹脂材料、顔料、化粧品、蛍光体材料、磁気記録材料、電子部品材料、燃料電池材料などの分野で好適に用いることができる。たとえば、樹脂材料分野では樹脂補強剤として添加する無機粒子を樹脂中に均一分散させる際に、本発明を応用し、有機溶媒に均一に分散させた無機粒子ゾルを用いれば、機械的物性、透明性に有利な樹脂組成物を製造できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分散無機微粒子に有機溶媒及び分散剤を加えて懸濁溶液を作製する工程と、
前記懸濁溶液から水分を除去し、有機溶媒分散無機粒子ゾルを得る工程と、
を含むことを特徴とする、無機粒子ゾルの製造方法。
【請求項2】
前記水分散無機微粒子は金属粒子を含むことを特徴とする、請求項1に記載の無機粒子ゾルの製造方法。
【請求項3】
前記水分散無機微粒子は金属酸化物粒子を含むことを特徴とする、請求項1に記載の無機粒子ゾルの製造方法。
【請求項4】
前記金属酸化物粒子は、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化銅、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化ナトリウム、及び酸化イットリアからなる群より選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする、請求項3に記載の無機粒子ゾルの製造方法。
【請求項5】
前記金属酸化物粒子は、ベーマイト、ヘマタイト、チタニア、及びカルシアからなる群より選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする、請求項4に記載の無機粒子ゾルの製造方法。
【請求項6】
前記水分散無機微粒子は炭素無機材料粒子を含むことを特徴とする、請求項1に記載の無機粒子ゾルの製造方法。
【請求項7】
前記水分散無機微粒子中に含まれる無機粒子は定形粒子であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一に記載の無機粒子ゾルの製造方法。
【請求項8】
前記水分散無機微粒子中に含まれる無機粒子は、湿式合成法で製造することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一に記載の無機粒子ゾルの製造方法。
【請求項9】
前記分散剤は、水酸基、カルボニル基、窒素原子、リン原子及び硫黄原子からなる群より選ばれる少なくとも一種の基又は原子を含む化合物であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一に記載の無機粒子ゾルの製造方法。
【請求項10】
前記分散剤は、スルホン酸系分散剤、カルボン酸系分散剤及びリン酸系分散剤から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする、請求項9に記載の無機粒子ゾルの製造方法。
【請求項11】
前記有機溶媒が芳香環、ハロゲン原子、酸素原子、および窒素原子のいずれかを含む化合物である請求項1〜10のいずれかに記載の無機粒子ゾルの製造方法。
【請求項12】
前記有機溶媒は、その沸点が水の沸点より高く、前記水分は前記有機溶媒と前記水との沸点差を利用して前記懸濁溶液から除去することを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一に記載の無機粒子ゾルの製造方法。
【請求項13】
前記懸濁溶液より限外濾過装置を用いて、前記水分を除去することを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一に記載の無機粒子ゾルの製造方法。
【請求項14】
前記有機溶媒は、その凝固点が水の凝固点より低く、前記水分は前記有機溶媒と前記水との凝固点差を利用して前記懸濁溶液から除去することを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一に記載の無機粒子ゾルの製造方法。
【請求項15】
前記懸濁溶液中の無機粒子の濃度が50重量%以下であることを特徴とする、請求項1〜14のいずれか一に記載の無機粒子ゾルの製造方法。
【請求項16】
前記水分散無機微粒子に対して懸濁剤を加えることを特徴とする、請求項1〜15のいずれか一に記載の無機粒子ゾルの製造方法。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか一に記載の方法で製造されたことを特徴とする、無機粒子ゾル。

【公開番号】特開2007−260593(P2007−260593A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−90655(P2006−90655)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】