説明

無機絶縁表皮効果加熱ケーブル

表皮効果ヒータケーブルは、無機セラミック絶縁体を有する。ヒータケーブルは、シース内に少なくとも1つのコア導線を有する。電気は、熱を生成するために、外側経路におけるコア導体を通して方向付けられ、帰還路におけるシースの表面「表皮」に沿って戻る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、電熱ケーブルに関し、より具体的には、シース内の少なくとも1つのコア導線を利用する、無機セラミック絶縁体を有し、それにより、熱を生成するために、電気がコア導体を通して外側経路を移動し、シースの表面「表皮」に沿って帰還路を戻る、表皮効果ヒータケーブルに関する。
【発明の概要】
【0002】
本発明は、強磁性壁の断面において効果的な導体経路の深さおよび幅の減少および局在化を有する、隣接し、かつ実質的に平行な、細長い強磁性形状と電気的に通信する、少なくとも1つの絶縁電気コア導体を有する、表皮効果構成要素と、無機セラミック絶縁体構成要素とを有する、ヒータデバイスを含む。好ましくは、無機セラミック絶縁体構成要素は、酸化マグネシウムを含有する。
【0003】
本発明はまた、強磁性壁の断面において効果的な導体経路の深さおよび幅の減少および局在化を有する、隣接し、かつ実質的に平行な、細長い強磁性形状と電気的に通信する、少なくとも1つの絶縁電気コア導体を有する、表皮効果構成要素と、無機セラミック絶縁体構成要素と、を備える、ヒータデバイスを提供するステップと、電気コアを通して電流を印加し、それにより強磁性形状を加熱するステップと、を含む、加熱プロセスを含む。
【0004】
無機絶縁、表皮効果ヒータを提供することが、本発明の目的である。
【0005】
本発明のさらに別の目的は、油田用途に適合される、無機絶縁、表皮効果ヒータを提供することである。
【0006】
本発明の他の目的および利点は、例示および一例として、本発明の特定の実施形態が示される添付の図面と併せて、以下の発明を実施するための形態から明らかとなるであろう。図面は、本明細書の一部を成し、本発明の例示的な実施形態を含み、その種々の目的および特徴を示す。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の一実施形態を示す、部分的に断面の斜視図を示す。
【図2】本発明の一実施形態を示す、部分的に断面の斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、種々の形態の実施形態が可能であるが、現在のところ好ましい実施形態が図面に示され、以下に記載されるとともに、本開示は、本発明の例示と見なされ、説明する特定の実施形態に本発明を限定することを目的としていないことが理解される。
【0009】
図1および2を大まかに参照すると、本発明の無機絶縁、表皮効果ヒータの好ましい実施形態が示される。無機絶縁、表皮効果ヒータ10は、外部導体14の内側に、内部コア導体12を含んでもよい。内部導体および外部導体は、中心軸16の周囲に放射状に配置されてもよい。内部導体および外部導体は、絶縁層18によって分離されてもよい。ある特定の実施形態では、内部導体および外部導体は、ヒータの遠位端20で連結されてもよい。電流は、内部導体12を通してヒータ10に流入し、外部導体14を通して戻ってもよく、またはその逆も可能である。一方または両方の導体12、14は、強磁性材料を含んでもよい。
【0010】
一実施形態では、無機絶縁、表皮効果ヒータ10は、内部強磁性導体12および外部強磁性導体14が提供され、表皮効果電流路は、内部導体の外側および外部導体の内側に生じる。したがって、外部導体の外側は、外部導体の内側の表皮効果電流路に影響を及ぼすことなく、ステンレス鋼等の耐食合金22の層で被覆されてもよい。
【0011】
絶縁層18は、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、酸化ベリリウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素等の、高熱伝導性を有する電気絶縁セラミックを含んでもよい。これらのうち、酸化マグネシウムが最も好ましい。絶縁層は、圧縮粉末(例えば、圧縮セラミック粉末)であってもよい。圧縮は、熱伝導性を改善してもよく、より良好な絶縁抵抗を提供してもよく、最も好ましい、限定されない実施形態において、圧縮は、約80%である。また、本発明の範囲から逸脱することなく、他の圧縮率が利用され得ることに留意されたい。
【0012】
一般的に、絶縁電気コア導体は、交流電流(AC)が、回路の帰還脚部を提供する隣接し、かつ実質的に平行な、細長い強磁性形状を通して還流するように、回路の一方の脚部において、ACを送り出す。コアに直接隣接したバンドの中にある、強磁性形状または導体の局在表面における表皮効果は、誘導および磁気効果によって生じ、加熱効果をもたらす。
【0013】
「表皮効果」加熱において、熱は、帰還電流フローのI〜R損失によって、または絶縁導体の周囲の交流磁場によって誘導されるヒステリシスおよび渦電流によって、強磁性エンベロープ壁の中で生成される。
【0014】
絶縁コア導体における電流とエンベロープにおける帰還電流との間の電磁相互作用は、表皮効果により電流をその内面に集中させる。それが、表皮効果加熱ケーブルの名前の由来である。この現象の強度は、コア導体に極めて接近することによって増加する(近接効果と称される)。
【0015】
電流を流出させ、還流させる2つの導体、および適切な電磁遮蔽の近接関係は、これらの効果、この有利なシステムの基礎をさらに高める。交流電流は、これらの条件下で非常に特殊な導体としての機能を果たす、強磁性材料の細長い一片の表皮のバンドに沿ってのみ流動する。
【0016】
限定されない実施例として、種々の強磁性材料およびAC周波数に対して差はあるが、表皮深さの約3倍、または約1/8インチの最小壁厚さを有する、強磁性管が考慮されてもよい。ACは、管の遠位端の内壁に接続される、隣接した、内部の、かつ絶縁されたワイヤによって、管の遠端へと外側に伝導されてもよい。「表皮効果」と呼ばれるものによって、ACの実質的な部分は、導体ワイヤに直接隣接し、かつ平行である管の内面または表皮のその部分において還流する。ワイヤから内在する鋼表面のこのバンドは、表皮効果伝導体/抵抗体と呼ばれ得るものになる。管の表面のバランスは、実際に、それに接触する任意の物体から効果的に電気的に絶縁されている。通常、電導体の実効断面積(管全体)と見なされるものの、この大幅な減少は、そうでなければ導体全体であり得るものの実効抵抗を大幅に増加した。外管壁もまた、実際には、非導電性であり、管は、衝撃なしで接地され、かつ接触さえされ得る。
【0017】
強磁性材料に関連するワイヤの運動は、近接効果、管の抵抗、および生成される熱を変化させ得ることを理解されたい。したがって、回路の磁性戻り脚部に対してコア導体を配置するために、オフセッターまたはセントラライザーが利用されてもよい。オフセッターまたはセントラライザーはまた、コア導体と戻り脚部との間のアーク放電なしで、より高い電流が回路を通過することを可能にするために、コア導体に対して絶縁特性を提供してもよい。さらなる絶縁特性を提供するために、セラミック絶縁体と併せて、不活性ガスが使用されてもよい。
【0018】
ヒータ材料は、ヒータの物理的特性を強化するように選択されてもよい。例えば、ヒータ材料は、内層が、温度の上昇に伴って外層よりも大きい程度まで膨張し、密充填構造をもたらすように、選択されてもよい。ヒータの外層は、耐食性であってもよい。高クリープ強度を有する外層材料を選択することによって、または厚壁導管を選択することによって、構造的支持が提供されてもよい。ヒータを通した金属移動を抑制するために、種々の不透水層が含まれてもよい。
【0019】
強磁性形状は、しばしば、管であってもよく、かつ実用的な流体は、それを通して押される液体であってもよいが、他の場合では、鋼の形状は、管状以外、例えば、平面状、円錐状、回転楕円状等であってもよく、実用的な流体は、それによって運ばれるよりもむしろ、それと接触して通されるか、または押されることによって加熱されてもよい。
【0020】
本発明の無機絶縁、表皮効果ヒータは、雪および氷の融解、パイプラインヒートトレース(陸上および海中)、ならびに坑井孔内加熱、坑底加熱、水平坑井孔加熱、および貯留層刺激を含む、油田用途を含むがこれに限定されない、幅広い用途に適用され得る。
【0021】
ヒータのいくつかの実施形態は、ヒータにある特定の条件が満たされる場合は、ヒータまたはヒータの一部分の電力を切るか、または下げるためのスイッチ(例えば、ヒューズおよび/またはサーモスタットおよび/またはサーミスタおよび/またはサイリスタ)を含んでもよい。ある特定の実施形態では、炭化水素含有構造に熱を提供するために、表皮効果ヒータが使用されてもよい。一実施形態では、表皮効果ヒータケーブルの制御および監視は、温度制御装置および接触器を備える、閉ループフィードバック制御によって達成される。別の実施形態では、光ファイバ温度測定が利用されてもよい。かかるシステムは、ヒータ回路に沿って百から数百の温度感知点を提供するために、アルゴリズムを使用した表皮効果ヒータの制御と関連付けられ得る。いくつかの実施形態では、光ファイバケーブルおよび/またはセンサが、ヒータケーブルに組み込まれ得る。別の実施形態では、ヒータ環境によって提供される圧力に基づき、熱出力を調整するために、圧力センサが利用され得る。
【0022】
いくつかの実施形態では、AC周波数は、強磁性材料の表皮深さを変更するように調節されてもよい。例えば、室温での1%炭素鋼の表皮深さは、60Hzで約0.11cm、180Hzで約0.07cm、および440Hzで約0.04cmである。外部強磁性導体の厚さは、典型的には、表皮深さの3倍であるため、より高い周波数の使用は、より小型のヒータをもたらし得、設備費用を削減し得る。約50Hz〜約1000Hzの間の周波数が使用され得る。
【0023】
いくつかの実施形態では、電流は、強磁性材料の最適な表皮深さを達成するように調節されてもよい。より小さい表皮深さは、より小さい寸法を有するヒータが使用されることを可能にし得、それにより設備費用が削減される。ある特定の実施形態では、印加された電流は、少なくとも約10アンペアから最大で500アンペア以上に及んでもよい。いくつかの実施形態では、交流電流は、最大で約2500ボルト、または約2500ボルトを超える電圧で供給されてもよい。
【0024】
図1および2を再び参照すると、本明細書に記載するある特定の実施形態では、無機絶縁、表皮効果ヒータは、約60Hzの周波数で動作するように寸法決定される。表皮効果ヒータの寸法は、表皮効果ヒータが他の周波数で同様に動作するために、本明細書に記載するものから調整されてもよいことを理解されたい。
【0025】
本発明の無機絶縁、表皮効果ヒータは、既存の形態の電熱ケーブルと比較して、非常に高い出力能力を有し、単一ヒータにより、高流量用途のための十分な電力を提供することが可能になる。ヒータは、概して、厚肉鋼壁外層を組み込む実施形態におけるように、頑丈な構造を提供する。別の実施形態では、無機絶縁、表皮効果ヒータは、ロッド形態で製造される場合は、既存のコイル管設備を使用して配置され得、設置費が削減される。コイル管配置下での使用では、無機絶縁、表皮効果ヒータは、油またはガス管の内側に容易に設置され得、それにより、ヒータから流体への熱伝達を最大限にすることができる。表皮効果ヒータとして、2または3つのケーブルの他の形態が完全な回路を形成するために必要とされ得る一方で、単一ケーブルが、完全な電熱回路を容易に提供することができる。
【0026】
ある特定の実施形態では、強磁性材料は、種々の電気および/または機械特性を提供するために、他の材料(例えば、非強磁性材料および/または銅等の高伝導性材料)と一体化されてもよい。表皮効果ヒータのいくつかの部分は、表皮効果ヒータの他の部分よりも低い抵抗を有してもよい(異なる形状によって、および/または異なる強磁性および/または非強磁性材料を使用することによって引き起こされる)。種々の材料および/または寸法を有する表皮効果ヒータの部分を有することによって、ヒータの各部分からの所望の熱出力を調整することが可能であり得る。
【0027】
本発明の特定の形態が示されているが、本発明が、本明細書に記載され、示される特定の形態または配列に限定されないことを理解されたい。本発明の範囲から逸脱することなく、種々の変更が行われてもよく、本発明は、本明細書に示され、記載されるものに限定されると見なされるものではないことは、当業者に明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
強磁性壁の断面において効果的な導体経路の深さおよび幅の減少および局在化を有する、隣接し、かつ実質的に平行な、細長い強磁性形状と電気的に通信する、少なくとも1つの絶縁電気コア導体を有する、表皮効果構成要素と、
無機セラミック絶縁体構成要素と、を備える、ヒータデバイス。
【請求項2】
前記無機セラミック絶縁体構成要素は、酸化マグネシウムを含む、請求項1に記
載のヒータデバイス。
【請求項3】
強磁性壁の断面において効果的な導体経路の深さおよび幅の減少および局在化を有する、隣接し、かつ実質的に平行な、細長い強磁性形状と電気的に通信する、少なくとも1つの絶縁電気コア導体を有する、表皮効果構成要素と、無機セラミック絶縁体構成要素と、を備える、ヒータデバイスを提供するステップと、
前記電気コアを通して電流を印加し、それにより前記強磁性形状を加熱するステップと、を含む、加熱プロセス。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−523088(P2012−523088A)
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−503395(P2012−503395)
【出願日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際出願番号】PCT/US2009/039292
【国際公開番号】WO2010/114547
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(510093060)タイコ・サーマル・コントロルズ・エルエルシー (5)
【Fターム(参考)】