説明

無機質固化体の製造方法

【課題】 都市ごみの処理により発生する溶融飛灰などの高アルカリ化合物、高石灰化合物を含有する灰を主原料として、高強度の無機質固化体を安定して製造する方法を提供する。
【解決手段】 無機質固化体の化学組成においてKOを等モルでNaOに換算して本来のNaOに加算した総NaOと、SiOと、Alとの3成分組成で、SiOが45重量%以上75重量%未満且つ総NaO/(Al+総NaO)重量比が0.2〜0.8となり、上記3成分にCaOを加えた4成分組成でCaOが20重量%以上40重量%未満となり、原料混合物中の鉄酸化物量がヘマタイト換算で3重量%以上10重量%未満、且つ炭素量が3重量%以上6重量%未満となるように、原料混合物を配合して加熱処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、都市ごみの焼却時に発生する主灰や飛灰、その主灰や飛灰を溶融処理する際に発生する溶融飛灰など、都市ごみの処理により発生する灰の資源化に関し、特に灰中の有害物を無害化すると共に、建築用や土木用などに使用する骨材(無機質固化体)を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
焼却炉において都市ごみを焼却すると、焼却炉内には主灰が残り、排ガス中には飛灰が飛散する。飛灰は電気集塵器やバグフィルターで集められ、主灰と共に廃棄物として地中に埋めることにより処分されていた。しかし、都市ごみを焼却して得られた灰、特に焼却飛灰には、鉛、亜鉛、カドミウムなどの有害な重金属類が多量に含まれているため、埋立て後この灰から地中に溶出した重金属類が、環境汚染を引き起こす原因となっていた。
【0003】
そこで、従来から、これら鉛、亜鉛、カドミウムなどの有害な重金属類の溶出を防ぐ手段として、集められた灰をセメントで固化する方法、有害な重金属類を薬剤で化学的に固定して不溶化する方法、集められた灰を1300℃以上の温度で溶融してガラス質のスラグとする方法などが行われている。
【0004】
一方、本発明者らは、都市ごみの焼却飛灰や主灰を原料として再利用し、その中に含まれる鉛、亜鉛、カドミウムなどの重金属類を揮発除去すると共に、建築用、土木用などに使用する骨材を製造する方法を開発してきた。例えば、焼却飛灰や主灰の主要成分であるSiO、Al、NaO、KO、CaOの組成を調整し、焼成法により固化して骨材を得る方法を既に提案している(特開2003−246656公報参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2003−246656公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
都市ごみの焼却時に発生する焼却飛灰や主灰は、都市ごみの種類や処理方法によって化学組成が異なる。例えば、焼却により都市ごみに含まれるNaClやKClなどが多量に発生すると、これらのNaClやKClは融点が低いため、排ガス中に飛散しやすい。従って、排ガスから捕集された飛灰中には、NaClやKClなどの高アルカリ化合物が高濃度に含まれることが多い。
【0007】
また、焼却飛灰や主灰を溶融処理してスラグ化する際や、近年盛んに導入されている都市ごみのガス化溶融や直接溶融による処理では、排ガス中に溶融飛灰が発生する。この溶融飛灰にはNaClやKClから生成されるHCl、Cl、SOなどの有害ガスが含まれるため、その捕集のためにCa(OH)、CaOなどの石灰化合物の微粒子を排ガス中に分吹き込むことが一般的に行われている。その結果、捕集された溶融飛灰中には、石灰化合物が高濃度に含まれていることが多い。
【0008】
上記特開2003−246656公報記載の方法によれば、焼却飛灰や主灰を原料として再利用して、建築用や土木用などに使用する骨材を製造することができる。しかしながら、上記したNaClやKClなどの高アルカリ化合物を多く含有する灰や、石灰化合物が高濃度に含まれている灰を主原料とする場合には、高強度を有する骨材を安定して得ることが難しかった。また、このような灰を主原料として、副原料の添加により適正範囲に原料混合物の化学組成を調整するためには、多くの副原料を必要とするという問題があった。
【0009】
本発明は、このような従来の事情に鑑み、都市ごみの処理により発生する灰を主原料として骨材のような無機質固化体を得るに際し、特に溶融飛灰などの高アルカリ化合物、高石灰化合物を含有する灰であっても、できるだけ少ない副原料を使用して、建築用や土木用などとして好適な高強度の無機質固化体を安定して製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成するため、溶融飛灰などの高アルカリ化合物、高石灰化合物を含有する灰を主原料とする場合であっても、焼成により高強度な骨材を得ることができる組成範囲について検討した。その結果、灰の主な化学成分であるSiO、Al、KO、NaO、CaOについての組成範囲の制御と共に、焼結促進剤として鉄の酸化物及びその還元剤としての炭素化合物について適正な組成範囲を見出し、本発明に至ったものである。
【0011】
即ち、本発明が提供する無機質固化体の製造方法は、都市ごみの焼却飛灰又は溶融飛灰の少なくとも片方を主原料とする無機質固化体の製造方法であって、
該主原料を含む原料混合物を下記組成条件(a)〜(c)を満たすように配合し、
(a)焼成後の無機質固化体の化学組成において、KOを等モルでNaOに換算して本来のNaOに加算した値を総NaOとし、SiOと、Alと、総NaOの合計量を100重量%としたとき、SiOが45重量%以上75重量%未満、且つ総NaO/(Al+総NaO)の重量比が0.2〜0.8、
(b)焼成後の無機質固化体の化学組成において、SiOと、Alと、CaOと、総NaOの合計量を100重量%としたとき、CaOが20重量%以上40重量%未満、
(c)原料混合物中の鉄酸化物量がヘマタイトに換算したときの内割りで3重量%以上10重量%未満、且つ原料混合物中の炭素量が内割で3重量%以上6重量%未満、
得られた原料混合物を平均粒径15μm以下になるように混合・粉砕した後、その粉砕物に水を加えて成形し、得られた成形体を焼成炉で加熱処理することを特徴とする。
【0012】
上記本発明の無機質固化体の製造方法において、前記原料混合物は、少なくとも主原料に、組成条件を調整するための組成調整材と、炭素化合物からなる還元剤と、粘結材とを添加混合したものである。
【0013】
上記本発明の無機質固化体の製造方法では、前記組成調整材の鉄源として、2価の鉄酸化物であるウスタイト又は3価の鉄酸化物であるヘマタイトの少なくとも1種を用いることが好ましい。また、前記組成調整材のシリカ源としては、珪砂、陶石、長石、カオリナイト、木節粘度、焼却主灰、石炭灰、下水道焼却汚泥から選ばれた少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0014】
上記本発明の無機質固化体の製造方法では、前記還元剤として、石炭又はコークスの少なくとも1種を用いることが好ましい。また、前記粘結剤としては、ベントナイト、糖蜜、パルプ廃液から選ばれた少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0015】
更に、上記本発明の無機質固化体の製造方法においては、前記成形体がペレット状であり、前記焼成炉としてロータリーキルンを用いて加熱処理することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、都市ごみの処理により発生する灰を主原料とし、特に溶融飛灰のように高アルカリ化合物ないし高石灰化合物を含有する灰を主原料とする場合であっても、できるだけ少ない副原料を使用して焼結固化でき、高強度の無機質固化体を安定して製造することができる。従って、焼却飛灰や溶融飛灰などの処理効率を著しく高めることができ、処理コストや処理設備投資を大きく軽減すると共に、建築用や土木用などとして十分な高強度且つ高品質の骨材を提供することが可能となり、都市ごみの処理により発生する灰の再資源化や環境問題の解消に大いに寄与するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
都市ごみの処理により発生する灰、具体的には、主に焼却処理時に発生する焼却飛灰や主灰、及び焼却飛灰や主灰の溶融処理並びに都市ごみの溶融処理時に排ガス中に発生する溶融飛灰は、SiO、Al、Fe、CaO、MgO、NaO、KOなど種々の化合物から成っている。かかる灰について、その組成を各種成分の添加により調整しながら焼結過程を検討した結果、SiOと、Alと、NaO又はKOとの3元系相平衡図で示される加熱変化に近い焼成過程をたどることを見出した。
【0018】
即ち、焼成後の無機質固化体の化学組成において、KOを等モルでNaOに換算して本来のNaOに加算した値を総NaOとし、SiOと、Alと、総NaOの合計量を100重量%としたとき、まず、SiOを45重量%以上75重量%未満に調整する必要がある。この3成分組成でのSiO量が75重量%以上では、焼成温度が1250℃以上となり、焼成に要する燃料コストの増加や設備の高耐熱化のためのコストが増加して好ましくない。また、SiOが45重量%未満では、焼成による良好な液相が生成されず、高強度な骨材が得られないからである。
【0019】
上記したSiOが45重量%以上75重量%未満において、総NaO/(Al+総NaO)の重量比が0.2〜0.6の範囲であれば、高強度な骨材を安定して得ることができる。上記化学組成範囲はSiO、Al、NaOの3元系相平衡図ではムライト、コランダム、アルバイト、ネフェリン、カーネギエイトの初晶域にあり、シリカ、アルバイト、NaO・2SiOの740℃付近が最も低い共融点となる。しかし、上記化学組成範囲は、この最も低い共融点から離れていて、焼結が緩慢に進むため、高強度な骨材が得られるものと考えられる。
【0020】
一方、総NaO/(Al+総NaO)の重量比が0.6を超えると、SiOが45重量%以上75重量%未満であっても、焼成温度が1000℃以下となって液相の生成が急激となり、高強度の骨材を得ることが困難であった。しかしながら、無機質固化体のCaOの含有量を増加させて、上記3成分にCaOを加えた4成分組成においてCaOを20重量%以上40重量%未満とし、且つ鉄源としての鉄酸化物及びその還元剤を加えて組成を調整することにより、総NaO/(Al+総NaO)の重量比が0.6を超え0.8以下の範囲でも高強度な骨材が得られ得られることが分かった。尚、総NaO/(Al+総NaO)の重量比が0.2〜0.6の範囲では、より一層高強度な骨材を得ることができる。
【0021】
一般に原料混合物の成形体をロータリーキルンなどの焼成炉で焼成すると、成形体内部は還元状態となり、表面は燃焼ガス中の酸素で酸化されて酸化状態になる。即ち、成形体表面では鉄の多くの部分が3価のヘマタイトとして存在し、内部では還元状態のため鉄の多くの部分が2価のウスタイトとして存在する。更に、成形体表面は液相生成温度が内部より高いため、成形体相互や炉内壁への付着を防止しながら高温まで昇温し、そのとき成形体内部では液相が生成されて強度を発現する。
【0022】
このような焼成過程において、CaOは液相が未生成であるか又はその生成量が少ない場合は耐火材として作用し、液相生成量が増加すると融剤として働く特性がある。原料混合物中のCaO含有量を上記した20重量%以上40重量%未満に調整することにより、成形体表面では3価の鉄と共にCaOは耐火度の向上に寄与し、内部ではアルカリ金属が多い状態でも液相が多量に生成するまでは耐火材として作用して内部の融点を低下させ、液相を生成させて成形体の焼結を促進する効果があるものと考えられる。
【0023】
しかし、CaO含有量が40重量%以上の組成では、上記の作用が過度になりすぎるため、表面が融着を始める時点で内部はすでにスラグ化して粗大な空洞を形成するようになり、得られる骨材の強度が低下する。また、CaOの融剤としての効果が顕著になり、液相量が増加し始めると僅かな温度上昇でも著しく液相が増加するため、液相量を適正量に制御することが困難となる。逆にCaO含有量が20重量%未満になると、特にアルカリ金属が多い場合には、低温からの液相の生成を防止する耐火材としての作用が少なくなり、且つ表面と内部の液相生成温度差が少なくなることから、内部の焼結が進むまで表面温度が上昇できなくなり、十分な強度を発現できない。
【0024】
組成調整材の鉄源として添加する鉄酸化物は、前記したように耐火度の向上に寄与し、焼結を促進する作用がある。また、2価の酸化鉄はアルカリ金属と同様に融剤としても作用するが、アルカリ金属よりも作用が緩慢であるため焼成による骨材の特性を制御しやすい。かかる鉄酸化物としては、2価の鉄化合物であるウスタイト又は3価の鉄酸化物であるヘマタイトの少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0025】
原料混合物中の鉄酸化物の含有量は、ヘマタイト換算した内割り量で3〜10重量%が好ましく、特に高アルカリ化合物が多い原料混合物ではこの範囲内で少ない方が好ましい。CaO含有量が20%以上40重量%未満の範囲では、CaO自体に融点調整の作用があるため、鉄酸化物の適正量上限は低CaOの場合より少ないが、上記の10重量%を越えると、CaOと同様に成形体内部と表面の溶融温度差が大きくなりすぎるため好ましくない。また、鉄酸化物が3重量%未満では、成形体内部と表面の液相生成温度差が得られなくなるため、内部の焼結が進むまで温度が上昇できなくなり、強度を発現できない。
【0026】
また、上記鉄酸化物の還元剤として、炭素化合物を添加する。かかる炭素化合物としては、石炭又はコークスの少なくとも1種を用いることが好ましい。原料混合物中の炭素量は、前記したように成形体表面と内部の酸化及び還元雰囲気の調整のため、内割りで3重量%以上6重量%未満とする必要がある。即ち、炭素量が内割りで6重量%以上になると成形体表面まで還元状態となり、表面を酸化状態にして耐火度を上昇させることができなくなり、逆に3重量%未満では成形体内部を還元状態に保てないため好ましくない。
【0027】
本発明の無機質固化体の製造方法においては、焼却飛灰や主灰及び溶融飛灰などの都市ごみの処理により発生する灰を主原料とし、この主原料にシリカ源や鉄源などの組成調整材を添加すると共に、炭素化合物からなる還元剤を加えて、上記した化学組成範囲に調整する。成分調整材や還元剤を加えた主原料に、更に粘結材を添加混合して原料混合物とする。
【0028】
一般に焼却飛灰や主灰及び溶融飛灰などの主原料中のSiOは、本発明の化学組成範囲のSiO量である45重量%以上75重量%未満に比べて少ない含有量である場合が多い。その場合には、少なくともSiOを含む組成調整材を加えて、原料混合物の組成を調整する。かかる組成調整材のシリカ源としては、珪砂、陶石、長石、カオリナイト、木節粘土、焼却主灰、石炭灰、下水道焼却汚泥から選ばれた少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0029】
また、粘結材の添加は、原料混合物を成形体としたときの形状保持、及び焼成時の粉化防止に有効である。特にペレット状の成形体をロータリーキルンで焼成する場合、キルン内をペレットが転動移動する際に、磨り減って粉化しやすい。粉化量が多いと、ペレットが相互に付着したりキルン内壁に付着したりして、焼成操作が困難になるうえ、実収率の低下や煤塵の捕集設備への負荷を増加させるため好ましくない。粘結材としては、ベントナイト、パルプ廃液、糖蜜から選ばれた少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0030】
上記のごとく調整した原料混合物は、平均粒径が15μm以下になるように混合・粉砕する。焼却飛灰や溶融飛灰の平均粒径は数μm程度であるが、主灰や組成調整材は平均粒径が大きいため、粘結材添加後に粉砕機で粉砕しながら混合して、平均粒径を15μm以下とする。原料混合物の平均粒径が15μmを超えると、得られる骨材の強度が低下するため好ましくない。
【0031】
得られた原料混合物の粉砕物は、水を加えて混練し、所定の形状に成形する。例えば、転動造粒によるか又は押し出し造粒により、直径5〜15mmのペレット状に成形することが好ましい。得られた成形体を焼成炉で加熱処理することにより、例えば1000〜1250℃で焼成することにより、骨材として必要な強度を備えた無機質固化体が得られる。
【0032】
焼成炉としては、特にペレット状の成形体を連続焼成する場合、ロータリーキルンを用いることが好ましい。しかも、ロータリーキルンは設備が簡易で加熱用燃焼ガス気流と原料が接触しやすく、高温での滞留時間も数十分程度と長いことから、重金属類のガス中への揮発を促進しやすい。更に、得られる骨材の品質にばらつきが少なく、重金属類の溶出を少なくして無害化する場合の信頼性が高い点において、ロータリーキルンは焼成設備として好ましい。
【0033】
本発明によれば、都市ゴミの処理時に得られる灰を主原料とし、特に高アルカリ化合物ないし高石灰化合物を含有する溶融飛灰を主原料とする場合でも、最少量の副原料の添加により焼成固化させて、建築用又は土木用の骨材として使用し得る高強度な無機質固化体を製造することができる。これにより、従来は廃棄されていた溶融飛灰や焼却飛灰などを有効に再利用でき、その再資源化や環境汚染の解消に大いに寄与することができる。また、特別な製造設備を必要とせず、セメントなどの製造に使用されているロータリーキルンを用いて製造できるため、処理コストや設備投資の軽減が可能である。
【0034】
また、本発明方法により得られる無機質固化体は強度が700N以上であり、建築用や土木用に使用される骨材として十分満足すべき強度を備えている。尚、この無機質固化体は、24時間の吸水率が10〜20%と比較的高い。これは、主原料である都市ゴミを処理して得られる灰が、アルカリ金属や塩素を比較的多く含むため、焼成時にこれら一部が揮発し飛散して、骨材に微細な気孔が多数形成されるためと考えられる。
【実施例】
【0035】
都市ごみの処理により発生した溶融飛灰又は焼却飛灰を主原料として、骨材の製造を行った。実験に使用した溶融飛灰、焼却飛灰、珪砂、ベントナイト、ヘマタイト、石炭灰、アルミナ、消石灰、コークスの化学組成を下記表1に示した。
【0036】
【表1】

【0037】
これらの主原料及び副原料を下記表2に示す配合となるように計量採取し、振動ミルで粉砕混合した。粉砕後の原料混合物の粒度分布をレーザー回折式粒度分布計で測定したところ、平均粒径は15μm以下であった。
【0038】
【表2】

【0039】
粉砕混合した原料混合物に水を加えながら混練し、押出成形機で直径約10mmの円柱状のペレットに造粒して乾燥した後、ロータリーキルン(煉瓦内径650〜500mm×長さ8000mm)に供給して焼成した。
【0040】
得られた骨材の化学組成を下記表3に示した。尚、骨材の化学組成は、KOを等モルでNaOに換算して本来のNaOに加算した値を総NaOとして、3成分組成ではSiOと、Alと、総NaOの合計量を100重量%とし、また4成分組成ではSiOと、Alと、CaOと、総NaOの合計量を100重量%として計算した。表中のNaOは、上記の総NaOを表す。
【0041】
【表3】

【0042】
また、下記表4には、原料混合物組成におけるヘマタイトと炭素の量、及び焼成温度を示した。尚、表4のヘマタイトは、原料混合物中の酸化鉄をヘマタイトに換算した値(換算ヘマタイト)を意味する。
【0043】
得られた各試料の骨材について、その強度と密度を測定した結果を下記表4に併せて示した。尚、骨材の強度の測定は、円柱状の骨材の円柱軸に直角方向から加圧して、破壊する時の荷重を試料毎に20点測定し、その平均値を求めて圧潰強度とした。また、骨材の密度は、JIS A 1110に基づいて測定した。
【0044】
【表4】

【0045】
上記の結果から分かるように、本発明の実施例による骨材、即ち、骨材の3成分組成でSiOが45重量%以上75重量%未満で、総NaO/(Al+総NaO)の重量比が0.2〜0.8となり、且つ骨材の4成分組成でCaOが20重量%以上40重量%未満であって、原料中の換算ヘマタイト量が3重量%以上10重量%未満及び炭素量が3重量%以上6重量%未満である各試料1〜5の骨材は、圧潰強度が約830〜3270Nと極めて高強度であった。
【0046】
一方、比較例の各試料においては、試料6は骨材の4成分組成におけるCaOが20重量%未満と少なく、また試料7はCaOが40重量%以上と多いため、得られた骨材は密度が約1.3〜1.4g/mlと低く、圧潰強度も約200〜310Nと低い結果となった。また、試料8はSiOが75重量%以上と多く、試料9では40重量%未満と少ないため、得られた骨材は密度が約1.3〜1.4g/ml程度と低く、圧潰強度も約380〜410Nと実施例の各試料と比較して低い結果となった。
【0047】
比較例の試料10は総NaO/(Al+総NaO)の重量比が0.8以上と大きく、試料11では0.2未満と小さいため、得られた骨材は密度が約1.3〜1.5g/mlと低く、圧潰強度も約130〜330Nと低かった。また、試料12は原料混合物中のヘマタイトが10重量%以上、試料13では3重量%未満であるため、得られた骨材は密度が約1.4〜1.6g/mlと低く、圧潰強度も280〜370Nと低い結果となった。また、比較例の試料14は原料混合物中の炭素量が6重量%以上と多く、試料15では3重量%未満と少なく配合したため、得られた骨材は密度が約1.2〜1.3g/ml程度と低く、圧潰強度も180〜260Nであった。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
都市ごみの焼却飛灰又は溶融飛灰の少なくとも片方を主原料とする無機質固化体の製造方法であって、
該主原料を含む原料混合物を下記組成条件(a)〜(c)を満たすように配合し、
(a)焼成後の無機質固化体の化学組成において、KOを等モルでNaOに換算して本来のNaOに加算した値を総NaOとし、SiOと、Alと、総NaOの合計量を100重量%としたとき、SiOが45重量%以上75重量%未満、且つ総NaO/(Al+総NaO)の重量比が0.2〜0.8、
(b)焼成後の無機質固化体の化学組成において、SiOと、Alと、CaOと、総NaOの合計量を100重量%としたとき、CaOが20重量%以上40重量%未満、
(c)原料混合物中の鉄酸化物量がヘマタイトに換算したときの内割りで3重量%以上10重量%未満、且つ原料混合物中の炭素量が内割で3重量%以上6重量%未満、
得られた原料混合物を平均粒径15μm以下になるように混合・粉砕した後、その粉砕物に水を加えて成形し、得られた成形体を焼成炉で加熱処理することを特徴とする無機質固化体の製造方法。
【請求項2】
前記原料混合物は、前記主原料に、少なくとも、上記組成条件(a)〜(c)を調整するための組成調整材と、炭素化合物からなる還元剤と、粘結材とを添加混合したものであることを特徴とする、請求項1に記載の無機質固化体の製造方法。
【請求項3】
前記組成調整材の鉄源として、2価の鉄酸化物であるウスタイト又は3価の鉄酸化物であるヘマタイトの少なくとも1種を用いることを特徴とする、請求項1又は2に記載の無機質固化体の製造方法。
【請求項4】
前記組成調整材のシリカ源として、珪砂、陶石、長石、カオリナイト、木節粘度、焼却主灰、石炭灰、下水道焼却汚泥から選ばれた少なくとも1種を用いることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の無機質固化体の製造方法。
【請求項5】
前記還元剤として、石炭又はコークスの少なくとも1種を用いることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の無機質固化体の製造方法。
【請求項6】
前記粘結剤として、ベントナイト、糖蜜、パルプ廃液から選ばれた少なくとも1種を用いることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の無機質固化体の製造方法。
【請求項7】
前記成形体がペレット状であり、前記焼成炉としてロータリーキルンを用いて加熱処理することを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の無機質固化体の製造方法。



【公開番号】特開2006−182605(P2006−182605A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−378432(P2004−378432)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【出願人】(591288355)財団法人国際環境技術移転研究センター (53)
【Fターム(参考)】