説明

無機酸化物粒子含有シリコーン樹脂シート

【課題】 高い耐熱性及び強度を有し、しかも柔軟性に優れたシリコーン樹脂シートを提供する。
【解決手段】 本発明の無機酸化物粒子含有シリコーン樹脂シートは、ポリシロキサン樹脂中に分散した無機酸化物粒子と該ポリシロキサン樹脂とが化学結合により架橋した架橋構造体を含むシリコーン樹脂組成物からなり、引張り伸び率が5〜15%である無機酸化物粒子含有シリコーン樹脂シートを提供する。ポリシロキサン樹脂として、基本構成単位がT単位である縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサンと、基本構成単位がD単位及びT単位である縮合反応性基含有ポリシロキサンとが用いられているのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機酸化物粒子含有シリコーン樹脂シートに関し、より詳しくは、有機樹脂シート並の柔軟性を備えた無機酸化物粒子含有シリコーン樹脂シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラスは可視光領域において透明であり、その耐熱性や耐候性、耐光性、強度、耐溶剤性、耐水性等いろんな優れた特性を兼ね備えており、住宅や車等の窓、テレビやディスプレイの表面など様々な用途に使用されている。しかしながら、ガラスは、一般的に柔軟性に乏しいという課題がある。近年、ディスプレイ等の小型短小化、薄膜化、軽量化等が求められるようになり、ガラス並みの強度や安定性を有しながら、柔軟な透明シートが求められている。
【0003】
例えばフレキシブルディスプレイや曲面に追従するフレキシブル太陽電池、あるいは近年盛んに研究が進んでいるOLED照明など柔軟で安定且つ透明なシートの需要が高まっている。そのため、特許文献1に記載のあるように、ガラスを研磨して薄膜化して曲げる試みがなされているが、その膜厚や曲げられる角度などに大きな制限がある。
【0004】
そこで、フレキシブルガラスとして、特許文献2に示すように、ゾル−ゲル法等により、薄膜ガラスを作製する試みがなされている。一般に、4官能アルコキシシランであるQユニット系化合物を主体としているが、一般的に硬くて脆いため、膜厚を薄くして柔軟性を出そうとしているが、膜厚や曲げられる角度、また強度に制限がある。
【0005】
一方、柔軟な材料として、有機材料であるポリマーシートは柔軟性に優れ、その膜厚の制御も容易であり、汎用性に優れているものの、ガラス等に比べ、耐熱性や耐候性、耐光性に極めて劣り、使用できる条件等に制限がある。
【0006】
その中でシリコーン樹脂はケイ素−酸素結合の結合エネルギーが一般的な有機物の炭素−炭素結合よりも高く、そのため耐熱性や耐光性等が有機系ポリマーに比べて優れている。シリコーン樹脂は、一般的に4官能と1官能のアルコキシシランから誘導されるMQレジンと、3官能と2官能のアルコキシシランから誘導されるDTレジンが良く知られている。MQレジンは一般的に硬くハードコート剤などに用いられているが、分子量が低く脆いため、柔軟なシートを得ることはできない。
【0007】
一方、特許文献3に記載されているように、3官能成分の縮合物であるポリシルセスキオキサンは比較的柔軟な膜を形成できるとされているが、縮合反応中にかご型構造やラダー構造等の環状化合物が多く生成するために、分子量は2000前後と高分子量化は難しく、柔軟なシートを作製することは困難である。一方、DTレジンは硬い成分である3官能のTユニットと柔軟な成分である2官能のDユニットからなる材料であるが、高分子量化するためには、Dユニットを多くする必要がある。しかしながら、Dユニットは直線状分子でゴム成分であるため、柔軟ではあるが、引張ると伸びたまま元に戻らず、強度的に課題がある。以上のようにシリコーン樹脂単体でシートを無機ガラス並みの耐熱性と強度を有し、有機樹脂並みの柔軟性を備えた透明柔軟シートを与えることは非常に困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−132532号公報
【特許文献2】特開2004−046031号公報
【特許文献3】特開2008−248236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の目的は、高い耐熱性及び強度を有し、しかも柔軟性に優れたシリコーン樹脂シートを提供することにある。
さらに透明性にも優れたシリコーン樹脂シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の目的を達成するため鋭意検討した結果、強度を有する無機酸化物粒子を、硬いが脆いQ単位の代わりに、硬さと脆さのバランスのとれるT単位からなるシルセスキオキサン系材料と強固に結合させることにより、ガラス並みの耐熱性と強度を保持し、さらにT単位と柔軟なD単位からなるDTレジンを連結させることにより、耐熱性と強度を維持しながら、有機樹脂並みの柔軟性を付与できることを見出した。本発明は、これらの知見をもとに、さらに研究を重ねて完成したものである。
【0011】
すなわち、本発明は、ポリシロキサン樹脂中に分散した無機酸化物粒子と該ポリシロキサン樹脂とが化学結合により架橋した架橋構造体を含むシリコーン樹脂組成物からなり、引張り伸び率が5〜15%である無機酸化物粒子含有シリコーン樹脂シートを提供する。
【0012】
この無機酸化物粒子含有シリコーン樹脂シートの引張り弾性率は50〜250MPaの範囲が好ましい。
【0013】
また、前記無機酸化物粒子含有シリコーン樹脂シートの5%重量減少温度は380℃以上であるのが好ましい。
【0014】
さらに、前記無機酸化物粒子含有シリコーン樹脂シートの全光線透過率(厚み:100μm)は88%以上であるのが好ましい。
【0015】
さらにまた、前記無機酸化物粒子含有シリコーン樹脂シートの引張り強度は8N/mm2以上であるのが好ましい。
【0016】
また、前記ポリシロキサン樹脂として、基本構成単位がT単位である縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサンと、基本構成単位がD単位及びT単位である縮合反応性基含有ポリシロキサンとが用いられていることが好ましい。
【0017】
さらに、無機酸化物粒子に、基本構成単位がT単位である縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサンが化学結合により結合し、さらに、前記基本構成単位がT単位である縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサンに、基本構成単位がD単位及びT単位である縮合反応性基含有ポリシロキサンが結合して架橋構造体を形成していることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の無機酸化物粒子含有シリコーン樹脂シートによれば、強度のある無機酸化物粒子がポリシロキサン樹脂と化学結合により架橋して架橋構造体を形成しており、引張り伸び率が5〜15%であるため、無機ガラス並みの高い耐熱性及び強度を有し、しかも有機樹脂並みの優れた柔軟性とを備える。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の無機酸化物粒子含有シリコーン樹脂シートは、ポリシロキサン樹脂中に分散した無機酸化物粒子と該ポリシロキサン樹脂とが化学結合により架橋した架橋構造体を含むシリコーン樹脂組成物からなり、且つ引張り伸び率が5〜15%である。
【0020】
無機酸化物粒子としては、粒子表面に反応性官能基を有する無機酸化物粒子であればよく、例えば、シリカ(SiO2あるいはSiO)、アルミナ(Al23)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、酸化チタン(チタニア、TiO2)、ジルコニア(ZrO2)などが挙げられる。これらの中でも、特にシリカが好ましい。無機酸化物粒子は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
前記反応性官能基としては、例えば、ヒドロキシル基、イソシアネート基、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、ビニル型不飽和基、ハロゲン原子、イソシアヌレート基などが挙げられる。これらの中でも、ヒドロキシル基が好ましい。シリカ粒子表面のヒドロキシル基はシラノール基として存在する。
【0022】
無機酸化物粒子の平均粒子径(一次粒子径)は、一般に、1〜1000nm、好ましくは1〜500nm、さらに好ましくは1〜200nm、特に好ましくは1〜100nmである。なお、平均粒子径は、動的光散乱法などにより測定することができる。
【0023】
無機酸化物粒子の粒度分布は狭い方が望ましく、また、一次粒子径のまま分散している単分散状態であることが望ましい。さらに、無機酸化物粒子の表面電位は、酸性領域(例えば、pH2〜5、好ましくはpH2〜4)にあるのが好ましい。ポリシロキサン樹脂との反応時にそのような表面電位を有していればよい。
【0024】
前記無機酸化物粒子としては、コロイド状の上記無機酸化物粒子を用いるのが好ましい。コロイド状の無機酸化物粒子としては、例えば、コロイド状シリカ(コロイダルシリカ)、コロイド状アルミナ(アルミナゾル)、コロイド状酸化スズ(酸化スズ水分散体)、コロイド状酸化チタン(チタニアゾル)などが挙げられる。
【0025】
コロイダルシリカとしては、例えば、特開昭53−112732号公報、特公昭57−9051号公報、特公昭57−51653号公報などにも記載されるように、二酸化ケイ素(無水ケイ酸)の微粒子(平均粒子径が、例えば、5〜1000nm、好ましくは、10〜100nm)のコロイドなどが挙げられる。
【0026】
また、コロイド状シリカは、必要により、例えば、アルミナ、アルミン酸ナトリウムなどを含有することができ、また、必要により、無機塩基(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニアなど)や、有機塩基(例えば、テトラメチルアンモニウムなど)などの安定剤を含有することもできる。
【0027】
このようなコロイド状シリカは、特に制限されず、公知のゾル−ゲル法など、具体的には、例えば、Werner Stober et al;J.Colloid and Interface Sci., 26, 62−69(1968)、Rickey D.Badley et al;Langmuir 6, 792−801(1990)、色材協会誌,61 [9] 488−493(1988)などに記載されるゾル−ゲル法などにより、製造することができる。
【0028】
コロイダルシリカは表面処理を施していない裸の状態であることが好ましい。コロイダルシリカには、表面官能基としてシラノール基が存在する。
【0029】
また、このようなコロイダルシリカとしては、市販品を用いることができ、具体的には、例えば、商品名「スノーテックス−XL」、「スノーテックス−YL」、「スノーテックス−ZL」、「PST−2」、「スノーテックス−20」、「スノーテックス−30」、「スノーテックス−C」、「スノーテックス−O」、「スノーテックス−OS」、「スノーテックス−OL」、「スノーテックス−50」(以上、日産化学工業社製)、商品名「アデライトAT−30」、「アデライトAT−40」、「アデライトAT−50」(以上、日本アエロジル社製)などが挙げられる。これらの中でも、商品名「スノーテックス−O」、「スノーテックス−OS」、「スノーテックス−OL」などが特に好ましい。
【0030】
また、上記のコロイダルシリカ以外のコロイド状の無機粒子としても、市販品を用いることができ、具体的には、例えば、商品名「アルミナゾル100」、「アルミナゾル200」、「アルミナゾル520」(以上、日産化学工業製)などのアルミナゾル(ヒドロゾル)、例えば、商品名「TTO−W−5」(石原産業社製)や商品名「TS−020」(テイカ社製)などのチタニアゾル(ヒドロゾル)、例えば、商品名「SN−100D」、「SN−100S」(以上、石原産業社製)などの酸化スズ水分散体などが挙げられる。
【0031】
本発明において、前記ポリシロキサン樹脂(無機酸化物粒子との反応に供するポリシロキサン樹脂)としては、無機酸化物粒子表面の官能基に対して反応性を有するポリシロキサン化合物であれば特に限定されない。前記ポリシロキサン化合物としては、なかでも縮合反応性シリコーン樹脂が好ましい。縮合反応性シリコーン樹脂としては、例えば、基本構成単位がD単位及びT単位である縮合反応性基含有ポリシロキサン(以下、「D・T単位縮合反応性基含有ポリシロキサン」と称する場合がある)、基本構成単位がT単位である縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサン(以下、「縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサン」と称する場合がある)などが挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
前記縮合反応性シリコーン樹脂のなかでも、特に、D・T単位縮合反応性基含有ポリシロキサンと縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサンとの組合せが好ましい。D・T単位縮合反応性基含有ポリシロキサンと縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサンとを組み合わせることにより、形成されるシートにおいて、耐熱性及び強度と、柔軟性とを高いレベルで両立させることができる。
【0033】
前記縮合反応性基としては、シラノール基、アルコキシシリル基(例えば、C1-6アルコキシシリル基等)、シクロアルキルオキシシリル基(例えば、C3-6シクロアルキルオキシシリル基等)、アリールオキシシリル基(例えば、C6-10アリールオキシシリル基等)などが挙げられる。これらの中でも、アルコキシシリル基、シクロアルキルオキシシリル基、アリールオキシシリル基が好ましく、特にアルコキシシリル基が好ましい。
【0034】
本発明において、D・T単位縮合反応性基含有ポリシロキサンは、具体的には、基本構成単位として、下記式(1)で表されるD単位と、下記式(2)で表されるT単位とを含有する。
【化1】

【0035】
上記式(1)中、R1は、同一又は異なって、飽和炭化水素基及び芳香族炭化水素基から選択される1価の炭化水素基を示す。式(2)中、R2は、飽和炭化水素基及び芳香族炭化水素基から選択される1価の炭化水素基を示す。
【0036】
前記R1、R2における飽和炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル基等の炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基;シクロペンチル、シクロヘキシル基等の炭素数3〜6のシクロアルキル基などが挙げられる。また、前記R1、R2における芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル、ナフチル基等の炭素数6〜10のアリール基などが挙げられる。
【0037】
1、R2としては、好ましくは、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基であり、さらに好ましくは、メチル基である。
【0038】
式(1)で表されるD単位は、D・T単位縮合反応性基含有ポリシロキサン中において、それぞれ同一であっても異なっていてもよいが、好ましくは同一である。また、式(2)で表されるT単位は、D・T単位縮合反応性基含有ポリシロキサン中において、それぞれ同一であっても異なっていてもよいが、好ましくは同一である。
【0039】
また、D・T単位縮合反応性基含有ポリシロキサンは、対応するシリコーン単量体の部分縮合物[例えば、ジアルキル(又は、アリール)ジアルコキシシラン等の2官能のシリコーン単量体と、アルキル(又は、アリール)トリアルコキシシラン等の3官能のシリコーン単量体との部分縮合物]であって、その構成単位中に、D単位、T単位、及び下記式(3)
−OR3 (3)
で表される基を含有する。式(3)で表される基はケイ素原子に結合しており、分子末端に存在する。
【0040】
前記R3は、飽和炭化水素基及び芳香族炭化水素基から選択される1価の炭化水素基を示す。飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基としては、上記式(1)中のR1における飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基と同様のものが挙げられる。R3としては、好ましくは飽和炭化水素基であり、さらに好ましくは、炭素数1〜6のアルキル基であり、特に好ましくはメチル基又はエチル基である。
【0041】
このようなD・T単位縮合反応性基含有ポリシロキサンとしては、例えば、アルコキシシリル基(例えば、C1-6アルコキシシリル基)含有ポリメチルシロキサン、アルコキシシリル基(例えば、C1-6アルコキシシリル基)含有ポリメチルフェニルシロキサン、アルコキシシリル基(例えば、C1-6アルコキシシリル基)含有ポリフェニルシロキサンなどが挙げられる。これらのD・T単位アルコキシシリル基含有ポリシロキサンは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0042】
D・T単位縮合反応性基含有ポリシロキサンの中でも、好ましくは、C1-6アルコキシシリル基含有ポリシロキサンであり、さらに好ましくは、メトキシシリル基含有ポリシロキサン又はエトキシシリル基含有ポリシロキサンであり、特に好ましくは、メトキシシリル基含有ポリメチルシロキサン又はエトキシシリル基含有ポリメチルシロキサンである。
【0043】
このようなD・T単位縮合反応性基含有ポリシロキサンの縮合反応性基(例えば、アルコキシシリル基)の含有量は、例えば、8〜30重量%、好ましくは10〜25重量%、さらに好ましくは12〜25重量%である。縮合反応性基(例えば、アルコキシシリル基)の含有量は、TGA(示差式重量減少測定装置)にて、室温から300℃まで昇温したときの重量減少の割合から求めることができる。
【0044】
D・T単位縮合反応性基含有ポリシロキサンの数平均分子量(GPC測定による標準ポリスチレン換算)は、例えば、800〜6000の範囲であり、好ましくは1000〜5500、さらに好ましくは1200〜5300である。
【0045】
D・T単位縮合反応性基含有ポリシロキサンとして、商品名「X−40−9246」、「X−40−9250」(以上、信越化学工業社製)などの市販品(D・T単位アルコキシシリル基含有ポリシロキサン)を用いることもできる。
【0046】
本発明において、縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサンは、具体的には、基本構成単位として、前記式(2)で表されるT単位を含有する。式(2)で表されるT単位は、縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサン中において、それぞれ、同一であっても異なっていてもよいが、好ましくは、同一である。
【0047】
また、縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサンは、対応するシリコーン単量体の部分縮合物[例えば、アルキル(又は、アリール)トリアルコキシシラン等の3官能のシリコーン単量体の部分縮合物]であって、その構成単位中に、T単位、及び下記式(4)
−OR4 (4)
で表される基を含有する。式(4)で表される基はケイ素原子に結合しており、分子末端に存在する。
【0048】
前記R4は、飽和炭化水素基及び芳香族炭化水素基から選択される1価の炭化水素基を示す。飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基としては、上記式(1)中のR1における飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基と同様のものが挙げられる。R4としては、好ましくは飽和炭化水素基であり、さらに好ましくは、炭素数1〜6のアルキル基であり、特に好ましくはメチル基又はエチル基である。
【0049】
縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサンは、ランダム型、ラダー型、カゴ型などのいずれであってもよいが、柔軟性の観点からは、ランダム型が最も好ましい。これらの縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサンは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0050】
縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサンの中でも、好ましくは、C1-6アルコキシシリル基含有ポリシルセスキオキサンであり、さらに好ましくは、メトキシシリル基含有ポリシルセスキオキサン又はエトキシシリル基含有ポリシルセスキオキサンであり、特に好ましくは、メトキシシリル基含有ポリメチルシルセスキオキサン又はエトキシシリル基含有ポリメチルシルセスキオキサンである。
【0051】
このような縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサンの縮合反応性基(例えば、アルコキシシリル基)の含有量は、例えば、10〜50重量%、好ましくは15〜48重量%、さらに好ましくは20〜46重量%である。縮合反応性基(例えば、アルコキシシリル基)の含有量は、TGA(示差式重量減少測定装置)にて、室温から300℃まで昇温したときの重量減少の割合から求めることができる。
【0052】
縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサンの数平均分子量(GPC測定による標準ポリスチレン換算)は、例えば、200〜6000の範囲であり、好ましくは300〜3500、さらに好ましくは400〜3000である。
【0053】
縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサンとして、商品名「KR−500」、「X−40−9225」(以上、信越化学工業社製)などの市販品(アルコキシシリル基含有ポリシルセスキオキサン)を用いることもできる。
【0054】
本発明において、前記ポリシロキサン化合物全体に占める、D・T単位縮合反応性基含有ポリシロキサンと縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサンの総量の割合は、好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。
【0055】
本発明では、上記のように、縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサンとD・T単位縮合反応性基含有ポリシロキサンとを併用するのが好ましい。この場合、両者の割合は、特に、前者/後者(重量比)=1/0.9〜1/2.8の範囲が好ましい。縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサンの比率が高くなりすぎると、シートの柔軟性が低下しやすくなる。また、D・T単位縮合反応性基含有ポリシロキサンの比率が高くなりすぎると、シートの弾性率が低下し、引張り伸び率が大きくなりすぎて、実用性に乏しくなりやすい。
【0056】
本発明の無機酸化物粒子含有シリコーン樹脂シートにおいて、無機酸化物粒子の含有量は、例えば、2〜19重量%、好ましくは3〜17重量%、さらに好ましくは4〜15重量%である。無機酸化物粒子の含有量が少なすぎると、機械的強度が低下しやすく、無機酸化物粒子の含有量が多すぎると、シートが脆くなりやすい。
【0057】
本発明の無機酸化物粒子含有シリコーン樹脂シートの引張り伸び率は5〜15%である。引張り伸び率が5%未満の場合は、柔軟性が十分でなく、脆くて割れやすい。また、引張り伸び率が15%を超える場合は、シートが軟らかすぎて、実用性に乏しくなる。無機酸化物粒子含有シリコーン樹脂シートの引張り伸び率は、無機酸化物粒子の含有量、無機酸化物粒子の平均一次粒子径、ポリシロキサン樹脂の種類、縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサンとD・T単位縮合反応性基含有ポリシロキサンとを併用する場合におけるこれらの配合比等により調整できる。
【0058】
本発明の無機酸化物粒子含有シリコーン樹脂シートの引張り弾性率は、50〜250MPa(特に、80〜240MPa)の範囲にあることが好ましい。引張り弾性率が50MPa未満の場合は、シートが軟らかくなりすぎる場合があり、250MPaを超える場合は、シートが硬くなりすぎる場合がある。無機酸化物粒子含有シリコーン樹脂シートの引張り弾性率は、無機酸化物粒子の含有量、無機酸化物粒子の平均一次粒子径、ポリシロキサン樹脂の種類、縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサンとD・T単位縮合反応性基含有ポリシロキサンとを併用する場合におけるこれらの配合比等により調整できる。
【0059】
本発明の無機酸化物粒子含有シリコーン樹脂シートの5%重量減少温度は、380℃以上(例えば、380〜500℃)が好ましい。5%重量減少温度が380℃未満では、耐熱性が不十分になりやすい。無機酸化物粒子含有シリコーン樹脂シートの5%重量減少温度は、無機酸化物粒子の含有量、ポリシロキサン樹脂の種類、縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサンとD・T単位縮合反応性基含有ポリシロキサンとを併用する場合におけるこれらの配合比等により調整できる。
【0060】
本発明の無機酸化物粒子含有シリコーン樹脂シートの引張り強度は、8N/mm2以上(例えば、8〜25N/mm2)であるのが好ましい。引張り強度が8N/mm2未満であると、シートの機械的強度が不十分となる場合がある。無機酸化物粒子含有シリコーン樹脂シートの引張り強度は、無機酸化物粒子の含有量、無機酸化物粒子の平均一次粒子径、ポリシロキサン樹脂の種類、縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサンとD・T単位縮合反応性基含有ポリシロキサンとを併用する場合におけるこれらの配合比等により調整できる。
【0061】
本発明の無機酸化物粒子含有シリコーン樹脂シートの全光線透過率(厚み:100μm)は、88%以上が好ましい。前記全光線透過率が88%未満の場合は、シートの透明性が不十分になりやすい。無機酸化物粒子含有シリコーン樹脂シートの全光線透過率は、例えば、無機酸化物粒子の種類、無機酸化物粒子の平均一次粒子径等により調整できる。無機酸化物粒子の平均一次粒子径を小さくすることにより、シートの全光線透過率を高くすることができる。
【0062】
次に、本発明の無機酸化物粒子含有シリコーン樹脂シートの製造法について説明する。
【0063】
本発明の無機酸化物粒子含有シリコーン樹脂シートは、例えば、前記無機酸化物粒子とポリシロキサン樹脂(好ましくは、D・T単位縮合反応性基含有ポリシロキサン及び/又は縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサン)とを、溶媒中、好ましくは酸の存在下で反応させることにより製造できる。
【0064】
前記溶媒としては、水;メタノール、エタノール、2−プロパノール、2−メトキシエタノール等のアルコール;これらの混合液などが挙げられる。これらのなかでも、水とアルコールの混合溶媒が好ましく、さらに好ましくは、水と2−プロパノールとの混合溶媒、水と2−プロパノールと2−メトキシエタノールとの混合溶媒である。
【0065】
前記酸としては、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸などの無機酸;酢酸、p−トルエンスルホン酸などの有機酸などが挙げられる。これらのなかでも、無機酸が好ましく、特に硝酸が好ましい。これらの酸は水溶液として使用することができる。酸の使用量は、反応系のpHを2〜5(好ましくは、2〜4)程度に調整できる量であればよい。
【0066】
反応の方法としては特に限定されず、例えば、(i)無機酸化物粒子と溶媒との混合液中にポリシロキサン樹脂と溶媒との混合液を添加する方法、(ii)ポリシロキサン樹脂と溶媒との混合液中に無機酸化物粒子と溶媒との混合液を添加する方法、(iii)溶媒中に、無機酸化物粒子と溶媒との混合液、及びポリシロキサン樹脂と溶媒との混合液をともに添加する方法等のいずれであってもよい。
【0067】
反応温度は、例えば、40〜150℃、好ましくは50〜130℃(例えば80〜130℃)である。また、反応時間は、例えば、0.5〜24時間(例えば0.5〜10時間)、好ましくは1〜12時間(例えば1〜5時間)である。
【0068】
なお、ポリシロキサン樹脂として、D・T単位縮合反応性基含有ポリシロキサンと縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサンとを併用する場合には、無機酸化物粒子と、D・T単位縮合反応性基含有ポリシロキサンと縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサンとの混合物とを反応させてもよく、また、無機酸化物粒子に、まず、D・T単位縮合反応性基含有含有ポリシロキサンを反応させ、次いで、縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサンを反応させてもよく、さらには、無機酸化物粒子に、まず、縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサンを反応させ、次いで、D・T単位縮合反応性基含有ポリシロキサンを反応させてもよい。
【0069】
これらの中でも、無機酸化物粒子に、まず、縮合反応性基シリル基含有ポリシルセスキオキサンを反応させ、次いで、D・T単位縮合反応性基含有ポリシロキサンを反応させる方法を採用すると、極めて高い耐熱性及び強度と、非常に優れた柔軟性とを併せ持つシートを得ることができる。以下、この方法について説明する。
【0070】
すなわち、本発明の無機酸化物粒子含有シリコーン樹脂シートの好ましい製造法は、無機酸化物粒子と基本構成単位がT単位である縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサンとを反応させる第1の反応工程と、前記第1の反応工程で得られた反応生成物に、さらに、基本構成単位がD単位及びT単位である縮合反応性基含有ポリシロキサンを反応させる第2の反応工程と、前記第2の反応工程で得られた反応生成物を成膜化する工程とを少なくとも具備する。
【0071】
まず、第1の反応工程について説明する。第1の反応工程では、無機酸化物粒子と基本構成単位がT単位である縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサンとを反応させる。
【0072】
反応は、溶媒中、好ましくは酸の存在下で行われる。溶媒としては、前記の溶媒を使用できる。酸としても、前記の酸を使用できる。酸の使用量は、反応系のpHを2〜5(好ましくは、2〜4)程度に調整できる量であればよい。反応の方法としては、特に限定されず、前記の(i)〜(iii)の方法を採りうる。
【0073】
第1の反応工程での反応温度は、例えば、40〜150℃、好ましくは50〜100℃である。また、反応時間は、例えば、0.3〜8時間(例えば0.3〜5時間)、好ましくは0.5〜6時間(例えば0.5〜3時間)である。
【0074】
次に、第2の反応工程について説明する。第2の反応工程では、前記第1の反応工程で得られた反応生成物に、さらに、基本構成単位がD単位及びT単位である縮合反応性基含有ポリシロキサンを反応(縮合)させる。前記第1の反応工程で得られた反応液そのものを第2の反応工程に供してもよいが、前記反応液に、液性調整、濃縮、希釈、溶媒交換等の適宜な処理を施した後、第2の反応工程に供することもできる。この工程では、第1の反応工程で無機酸化物粒子と反応させた前記基本構成単位がT単位である縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサンの有する縮合反応性基と、基本構成単位がD単位及びT単位である縮合反応性基含有ポリシロキサンの縮合反応性基とを反応させる。
【0075】
反応は、溶媒中で行われる。溶媒としては、前記の溶媒を使用できる。反応は、酸性下で行うのが好ましい。反応系のpHは、例えば2〜5、好ましくは2〜4である。反応の方法としては、特に限定はなく、前記第1の反応工程で得られた反応生成物を含む液中に、基本構成単位がD単位及びT単位である縮合反応性基含有ポリシロキサンと溶媒との混合液を添加する方法、基本構成単位がD単位及びT単位である縮合反応性基含有ポリシロキサンと溶媒との混合液中に、前記第1の反応工程で得られた反応生成物を含む液を添加する方法等のいずれであってもよい。
【0076】
第2の反応工程での反応温度は、例えば、40〜150℃(例えば50〜150℃)、好ましくは60〜130℃である。また、反応時間は、例えば、0.3〜8時間(例えば0.3〜5時間)、好ましくは0.5〜6時間(例えば0.5〜3時間)である。
【0077】
この好ましい方法によれば、強度を有する無機酸化物粒子を、硬さを付与できるT単位からなるポリシルセスキオキサンと強固に結合することにより高い耐熱性と強度を保持でき、次に柔軟なD単位を有するDTレジンを結合させるので、高い耐熱性及び強度と柔軟性とを両立させることができる。第1の段階で無機酸化物粒子と前記基本構成単位がT単位である縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサンとを反応させた後、DTレジンを結合させる場合は、粒子架橋を利用した強靱性をより強力に築くことができるが、最初に柔軟なDTレジンを無機酸化物粒子と反応させると、粒子架橋が前者と比較して弱く、柔軟ではあるが、引張り強度が前者の場合と比較して著しく低下する。
【0078】
成膜化工程では、第2の反応工程で得られた反応生成物を成膜化する。第2の反応工程で得られた反応液をそのまま成膜に供してもよいが、前記反応液に、液性調整、濃縮、希釈、溶媒交換、洗浄等の適宜な処理を施した後、成膜化工程に供することもできる。また、硬化触媒を添加した後、成膜化に付すこともできる。
【0079】
成膜法としては、特に限定はされず、公知乃至慣用の成膜法を採用できるが、反応生成物を含む溶液又は分散液(無機酸化物粒子含有シリコーン樹脂組成物)を転写用基材上に塗工し、乾燥し、必要に応じて、反応を完結させるため加熱硬化することにより成膜化する方法が好ましく用いられる。乾燥温度は、例えば、50〜150℃(例えば80〜150℃)程度である。また、加熱硬化する際の温度は、例えば、40〜250℃(例えば150〜250℃)程度である。成膜工程に関しては、上記2段階反応法に限らず、無機酸化物粒子含有シリコーン樹脂シートの製造全般に適用できる。
【0080】
前記転写用基材としては、表面に剥離処理が施されたものを使用できる。転写用基材の材質は、特に限定されず、ポリエステル等の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、金属、ガラス等が挙げられる。
【0081】
このようにして、高い耐熱性及び強度と優れた柔軟性とを併せ持ち、しかも透明性の高い無機酸化物粒子含有シリコーン樹脂シートを得ることができる。こうして得られる無機酸化物粒子含有シリコーン樹脂シートの厚みは、用途に応じて適宜選択できるが、通常、1〜2000μm、好ましくは10〜500μm、さらに好ましくは20〜300μmである。
【0082】
本発明の無機酸化物粒子含有シリコーン樹脂シートは、ガラス並みの強度及び耐熱性を有し、しかも柔軟性、透明性を有しているので、特に、フレキシブルディスプレイ、フレキシブル太陽電池、OLED照明等の表面シート等、小型化、薄膜化、軽量化が要求される用途、あるいは、曲面に取り付けられるシート等に好適に用いることができる。
【実施例】
【0083】
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は、それらに何ら制限されるものではない。なお、以下の説明において、「部」および「%」は、特に明記のない限り、重量基準である。
【0084】
実施例1
撹拌機、還流冷却器及び窒素導入管を備えた容器に、平均粒子径8−11nmのコロイダルシリカ溶液(商品名:スノーテクスOS、日産化学社製、固形分濃度20%)15g、2−プロパノール15g、2−メトキシエタノール5gを加えた。濃硝酸を加えて液の酸性度(pH)を2〜4の範囲内に調整した。次いで70℃に昇温したのち、分子末端に反応性のメトキシシリル基を有するシルセスキオキサン化合物(商品名:X−40−9225、信越化学社製、メトキシ含有量24%)25gを2−プロパノール25gに溶解した液を、滴下ロートを用いて1時間かけて滴下し、シルセスキオキサン化合物とコロイダルシリカ粒子表面の反応を行った。
次いで、分子末端に反応性のメトキシシリル基を有する3官能アルコキシシラン及び2官能アルコキシシランから誘導されるポリシロキサン化合物(商品名:X−40−9246、信越化学社製、メトキシ含有量12%)35gを2−プロパノール35gに溶解した液を1時間かけて滴下して、前記コロイダルシリカ上のシルセスキオキサン化合物と反応を行った。100℃で1時間加熱撹拌を行った後、ロータリーエバポレーターにて溶媒を留去し、次いでトルエンを80g加えて、100℃で1時間加熱撹拌を行った。室温に冷却し、溶媒を留去して粘度調整を行い、樹脂溶液を得た。
これをシリコーン系剥離剤で剥離処理を施したポリエチレンテレフタレート(PET)シート(膜厚38μm、商品名「MRF−38」、三菱樹脂社製)に、乾燥後の膜厚が100μmになるように塗工して、オーブンで100℃で10分、200℃で30分間保持して目的の無機酸化物粒子含有シリコーン樹脂シートAを得た。
【0085】
実施例2
実施例1と同様の実験装置を用い、分子末端に反応性のメトキシシリル基を有するシルセスキオキサン化合物(商品名:X−40−9225、信越化学社製、メトキシ含有量24%)の量を30g、溶解するための2−プロパノールの量を30g、分子末端に反応性のメトキシシリル基を有する3官能アルコキシシラン及び2官能アルコキシシランから誘導されるポリシロキサン化合物(商品名:X−40−9246、信越化学社製、メトキシ含有量12%)の量を30g、溶解するための2−プロパノールの量を30gに変えた以外は実施例1と同様の操作を行い、無機酸化物粒子含有シリコーン樹脂シートBを得た。
【0086】
実施例3
実施例1と同様の実験装置を用い、分子末端に反応性のメトキシシリル基を有するシルセスキオキサン化合物(商品名:X−40−9225、信越化学社製、メトキシ含有量24%)の量を20g、溶解するための2−プロパノールの量を20g、分子末端に反応性のメトキシシリル基を有する3官能アルコキシシラン及び2官能アルコキシシランから誘導されるポリシロキサン化合物(商品名:X−40−9246、信越化学社製、メトキシ含有量12%)の量を40g、溶解するための2−プロパノールを40gに変えた以外は実施例1と同様の操作を行い、無機酸化物粒子含有シリコーン樹脂シートCを得た。
【0087】
実施例4
実施例1と同様の実験装置を用い、平均粒子径8−11nmのコロイダルシリカ溶液(商品名:スノーテクスOS、日産化学社製、固形分濃度20%)の量を30g、初期の2−プロパノールの量を30gにした以外は実施例1と同様の操作を行い、無機酸化物粒子含有シリコーン樹脂シートDを得た。
【0088】
実施例5
実施例1と同様の実験装置を用い、分子末端に反応性のメトキシシリル基を有するシルセスキオキサン化合物として、商品名「X−40−9225」の代わりに、商品名「KR−500」(信越化学社製、メトキシ含有量28%)25gに変えた以外は実施例1と同様の操作を行い、無機酸化物粒子含有シリコーン樹脂シートEを得た。
【0089】
実施例6
実施例1と同様の実験装置を用い、無機酸化物粒子として、平均粒子径8−11nmのコロイダルシリカ溶液(商品名:スノーテクスOS、日産化学社製、固形分濃度20%)の代わりに、平均粒子径が20nmのコロイダルシリカ(商品名:スノーテックスO−40、日産化学、固形分濃度40%)10gを用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、無機酸化物粒子含有シリコーン樹脂シートFを得た。
【0090】
比較例1
実施例1と同様の実験装置を用い、平均粒子径8−11nmのコロイダルシリカ溶液(商品名:スノーテクスOS、日産化学社製、固形分濃度20%)を75g、初期の2−プロパノールの量を75gに増やした以外は実施例1と同様の操作を行い、無機酸化物粒子含有シリコーン樹脂シートGを得た。
【0091】
比較例2
実施例1と同様の実験装置を用い、平均粒子径8−11nmのコロイダルシリカ溶液(商品名:スノーテクスOS、日産化学社製、固形分濃度20%)を1.5g、初期の2−プロパノールを1.5gにした以外は実施例1と同様の操作を行った。樹脂溶液の粘度が低く、膜厚100μmのシートを得ることはできなかった。
【0092】
比較例3
実施例1と同様の実験装置を用い、分子末端に反応性のメトキシシリル基を有するシルセスキオキサン化合物(商品名:X−40−9225、信越化学社製、メトキシ含有量24%)の量を40g、溶解するための2−プロパノールを40gに変え、さらに分子末端に反応性のメトキシシリル基を有する3官能アルコキシシラン及び2官能アルコキシシランから誘導されるポリシロキサン化合物(商品名:X−40−9246、信越化学社製、メトキシ含有量12%)の量を30g、溶解するための2−プロパノールの量を30gに変えた以外は実施例1と同様の操作を行い、無機酸化物粒子含有シリコーン樹脂シートHを得た。
【0093】
比較例4
実施例1と同様の実験装置を用い、分子末端に反応性のメトキシシリル基を有するシルセスキオキサン化合物(商品名:X−40−9225、信越化学社製、メトキシ含有量24%)の量を17.4g、溶解するための2−プロパノールを17gに変え、さらに分子末端に反応性のメトキシシリル基を有する3官能アルコキシシラン及び2官能アルコキシシランから誘導されるポリシロキサン化合物(商品名:X−40−9246、信越化学社製、メトキシ含有量12%)の量を52.6g、溶解するための2−プロパノールの量を53gに変えた以外は実施例1と同様の操作を行い、無機酸化物粒子含有シリコーン樹脂シートIを得た。
【0094】
比較例5
無機酸化物粒子として、平均粒子径が約300nmの溶融シリカ(商品名:SFP−20M、デンカ社製)20gを水80gに超音波ホモジナイザーを用いて分散して水分散液を得た。分散液は白濁していた。平均粒子径8−11nmのコロイダルシリカ溶液(商品名:スノーテクスOS、日産化学、固形分濃度20%)の代わりに、この分散液15gを用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、無機酸化物粒子含有シリコーン樹脂シートJを得た。
【0095】
<評価>
実施例及び比較例で得られた各無機酸化物粒子含有シリコーン樹脂シートについて、以下の評価を行った。
【0096】
(1)全光線透過率
株式会社村上色彩技術研究所製のヘイズメーター(商品名「HM−150」)を用いて、全光線透過率(%)(厚み:100μm)を測定した。
【0097】
(2)シート物性
厚み100μmの無機酸化物粒子含有シリコーン樹脂シートを縦5cm、幅1cmにカットして、オートグラフ(SHIMAZU社製)のチャック部に長さ2cmになるようにセットして、300mm/minの速度で引張試験を行い、引張り弾性率(MPa)、引張り強度(N/mm2)、引張り伸び率(%)を測定した。
【0098】
(3)5%重量減少温度
Tg/DTA装置(SII社製)を用い、サンプルをセラミックスパンに詰めて、空気を流しながら室温から1000℃まで10℃/minの昇温速度で温度を上げて重量減少を測定し、重量減少率が5%のところを5%重量減少温度とした。
【0099】
(4)柔軟性
直径0.1mmから10mmまでの針金を用意し、無機酸化物粒子含有シリコーン樹脂シートを巻きつけて、シートが割れたときの直径をもって柔軟性の評価とした。直径0.1mmでも割れないものは○と評価した。また、直径10mmでも割れたものは×とした。
【0100】
結果を表1に示す。なお、表1において、「シリカ量」は、原料(固形分換算)の総重量に対するシリカ(SiO2)の割合(重量%)を示す。「シルセスキオキサン」は、分子末端に反応性のメトキシシリル基を有するシルセスキオキサン化合物を意味する。「ポリシロキサン」は、分子末端に反応性のメトキシシリル基を有する3官能アルコキシシラン及び2官能アルコキシシランから誘導されるポリシロキサン化合物を意味する。「シルセスキオキサン/ポリシロキサン」は、「シルセスキオキサン」と「ポリシロキサン」との重量比を示す。
【0101】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリシロキサン樹脂中に分散した無機酸化物粒子と該ポリシロキサン樹脂とが化学結合により架橋した架橋構造体を含むシリコーン樹脂組成物からなり、引張り伸び率が5〜15%である無機酸化物粒子含有シリコーン樹脂シート。
【請求項2】
引張り弾性率が50〜250MPaである請求項1記載の無機酸化物粒子含有シリコーン樹脂シート。
【請求項3】
5%重量減少温度が380℃以上である請求項1又は2記載の無機酸化物粒子含有シリコーン樹脂シート。
【請求項4】
全光線透過率(厚み:100μm)が88%以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載の無機酸化物粒子含有シリコーン樹脂シート。
【請求項5】
引張り強度が8N/mm2以上である請求項1〜4のいずれか1項に記載の無機酸化物粒子含有シリコーン樹脂シート。
【請求項6】
前記ポリシロキサン樹脂として、基本構成単位がT単位である縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサンと、基本構成単位がD単位及びT単位である縮合反応性基含有ポリシロキサンとが用いられている請求項1〜5のいずれか1項に記載の無機酸化物粒子含有シリコーン樹脂シート。
【請求項7】
無機酸化物粒子に、基本構成単位がT単位である縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサンが化学結合により結合し、さらに、前記基本構成単位がT単位である縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサンに、基本構成単位がD単位及びT単位である縮合反応性基含有ポリシロキサンが結合して架橋構造体を形成している請求項1〜6のいずれか1項に記載の無機酸化物粒子含有シリコーン樹脂シート。

【公開番号】特開2013−35940(P2013−35940A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173010(P2011−173010)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】