説明

無機酸化物被覆磁性ナノ粒子を含む相変化磁気インクおよびその製造方法

【課題】磁性ナノ粒子を含有する磁性インクであって、含まれる微粒子物質の粒度がインクジェット装置のノズルを詰まらせることがない程に十分小さく、かつ環境に安全であり、安定な粒子分散性を有し、固体担体からなる相変化磁性インクの提供。
【解決手段】相変化インク担体と、任意の着色剤と、任意の分散剤と、任意の相乗剤と、任意の酸化防止剤と、磁気コアおよびその上に配置された無機酸化物シェルを含む無機酸化物被覆磁性ナノ粒子とを含む相変化磁気インク。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本明細書に記載のインクは、磁気インク文字認識(MICR)用途を含む様々な用途での使用に好適である。また、得られたインクがMICR用途での使用に好適な保磁力および残留磁気を十分に発揮しなくても印刷インクを装飾目的に使用することができる。それらのインクを偽造防止印刷用途に使用することもできる。
【0002】
MICRインクは、MICR読取装置を介して読取可能であるのに十分に強い磁気信号を生成するのに十分な量の磁性顔料または磁性成分を含む。一般に、インクは、小切手、証券、セキュリティカード等の書類の全体または一部を印刷するために使用される。
【0003】
MICRインクまたはトナーは、磁性粒子をインクベース中に分散させることによって製造される。MICRインクジェットインクを開発する上で多くの課題が存在する。例えば、たいていのインクジェットプリンタは、インクを基板上に吐出するインクジェット印刷ヘッドノズルのサイズが非常に小さいため、インクの微粒子成分の粒径を著しく制限する。インクジェットヘッドノズル開口のサイズは、一般に約40から50ミクロンであるが、径が10ミクロン未満であり得る。この小さなノズルサイズは、インクジェットインク組成物に含まれる微粒子物質が、ノズル詰まりの問題を回避するのに十分に小さいことを必要とする。粒径がノズルサイズより小さくても、粒子は、依然として凝集物のサイズがノズル開口のサイズを上回る程度までともに凝集または密集しているために、ノズル閉塞が生じる。また、微粒子物質は、印刷時にノズル内に堆積することによって外皮を形成して、ノズル閉塞および/または流動パラメータ不良をもたらし得る。
【0004】
さらに、MICRインクジェットインクは、吐出温度で流動性でなくてはならず、乾燥していてはならない。顔料サイズの増大は、顔料粒子の重量の相応の増大をもたらすことによって、液体インク組成物内での顔料の懸濁または分散を維持することを困難にし得る。
【0005】
MICRインクは、必要な磁気特性を提供する磁性材料を含む。磁性材料は、印刷文字がそれらの読取可能特性を保持し、検出装置または読取装置によって容易に検出されるように十分な磁気量を保持しなければならない。磁性材料によって保持される磁気量は、「残留磁気」として知られる。磁性材料は、MICR読取可能信号を生成し、それを長時間にわたって保持する能力を有するために、磁化源に曝露されると十分な残留磁気を示さなければならない。一般に、工業規格によって設定される磁気量の許容可能なレベルは、50から200信号レベル単位であり、100が、米国規格協会によって作成された規格から定められる基準値である。信号が小さくなるとMICR読取装置によって検出されないことがあり、信号が大きくなると、正確な読取値が得られないことがある。読み取られる文書は、提示された文書を認証または検証する手段としてMICR印刷文字を採用するため、文字の見落としや読み違えなどなくMICR文字または他の特徴を正確に読み取ることが重要である。したがって、MICRの目的では、残留磁気は、最低でも20emu/g(電磁単位/グラム)であることが好ましい。より大きな残留磁気値は、より強い読取可能信号に対応する。
【0006】
残留磁気は、磁性顔料塗料の粒径の関数として増加する傾向がある。したがって、磁性粒子の粒径が小さくなると、磁性粒子は、残留磁気が相応に低下することになる。磁性粒子の粒径が小さくなり、インク組成物における磁性粒子の含有率の実質的な限界に達すると、十分な信号強度を達成することがますます困難になる。残留磁気値がより大きくなると、インク配合物における磁性粒子の全含有率が小さくて済み、懸濁特性が向上し、磁性粒子含有率がより大きなインク配合物と比較して沈降する確率が小さくなる。
【0007】
また、MICRインクジェットインクは、圧電プリンタなどのドロップオンデマンド型印刷装置および連続式印刷装置の両方において適正に機能するために、吐出温度(25℃から140℃の範囲の吐出温度)で一般的には約15センチポアズ(cP)未満または2から12cP未満の低粘度を示さなければならない。しかし、粒子の沈降は、より高粘度の液体と比較して、より低粘度の液体で増大するため、低粘度の液体を使用すると、磁性粒子をインク分散体中に成功裡に含めるという課題が増える。
【0008】
米国特許公開第2009/0321676A1号明細書には、その要約書において、磁性ナノ粒子の磁気異方性の値が2×10J/m以上である安定化磁性単結晶ナノ粒子を含むインクが記載されている。磁性ナノ粒子は、FePtなどの強磁性ナノ粒子であってもよい。インクは、粒子の粒径を最小限にして、特に非水性インクジェットインクにおいて優れた磁性顔料分散安定性をもたらす磁性材料を含む。インクのより小さい粒径の磁性粒子は、また、優れた磁気特性を維持することによって、インクに必要な磁性粒子充填量を減少させる。
【0009】
磁性金属ナノ粒子は、MICRインクを効果的にするための重要な特性である高度な磁性残留磁気を提供する可能性を有するため、MICRインクに所望される。しかし、多くの場合、無保護の磁性金属ナノ粒子は、自然発火性であるため、安全上の問題がある。当該粒子を含む相変化インクの大規模生産は、これらの酸化性の高い粒子を扱う際に空気および水を完全に除去することが必要であるため、困難である。また、インク製造プロセスは、無機磁性粒子が特定の有機ベースインク成分と不相溶であり得るため、磁性顔料を用いた場合に特に困難である。
【0010】
記載したように、磁性金属ナノ粒子は自然発火性であり、空気および水に極めて敏感であり得る。特定の粒径、一般的には約数十ナノメートル以下の鉄ナノ粒子などの磁性金属ナノ粒子は、空気と接触すると自然に発火することが既知である。真空密閉袋で包装された鉄ナノ粒子は、アルゴン環境中などの不活性雰囲気中で開放された場合でも極端に高温になることが既知であり、酸素および水がそれぞれわずか5百万分率で存在している場合でもアルゴンガス中の微量の酸素および水によって迅速に酸化し、それらの磁性残留磁気特性の多くを失うことが既知である。当該粒子を含むインクの大規模生産は、これらの材料を扱う際に空気および水を完全に除去することが必要であるため、厄介である。
【0011】
水性MICRインクは、商業的に入手可能である。水性MICRインクは、相変化または固体インク技術などの特定のインクジェット印刷技術で特殊な印刷ヘッドを使用することを必要とする。さらに、固体インクおよび水性インクの両方を同じプリンタで使用すると、不相溶性が生じる可能性があることに関する懸念がある。固体インク加熱インクタンクに近いことによる水の蒸発、錆、および固体インクの高い湿度感受性などの問題は、固体インク装置に水性MICRインクを実装するために取り組まなければならない問題である。
【0012】
現在、商業的に入手可能な相変化または固体インクMICRインクは存在しない。相変化または固体インクジェット印刷での使用に好適なMICRインクの必要性が存在する。相変化または固体インクジェット印刷での使用に好適なMICRインクを開発する上で多くの課題が存在する。MICR相変化インクプロセスは、(1)無機磁性粒子が相変化インク担体の有機ベース成分と不相溶であり、(2)磁性顔料が一般的な有機顔料よりはるかに高密度である(例えば鉄の密度は8g/cmである)ため、好ましくない粒子沈降を招く可能性があり、(3)未塗布の金属磁性ナノ粒子が自然発火性であるため安全上の問題をもたらすため、磁性顔料を用いた場合に特に困難である。
【0013】
現在利用可能なMICRインクおよびMICRインクの製造方法は、それらの意図する目的に好適である。しかし、磁性材料の粒径が小さく、磁性顔料の分散および分散安定性が向上しているとともに、低粒子充填量で優れた磁気特性を維持する能力を有するMICRインクジェットインクの必要性が依然として存在する。さらに、相変化インクジェット印刷技術での使用に好適であるMICR相変化インクの必要性が依然として存在する。さらに、簡素化され、環境的に安全であり、安定な粒子分散を有する分散性の高い磁気インクを製造することが可能であり、安全かつコスト効果の高い金属ナノ粒子の処理を可能にする、MICRプロセスを製造するためのプロセスの必要性が依然として存在する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
相変化インク担体と、任意の着色剤と、任意の分散剤と、任意の相乗剤と、任意の酸化防止剤と、磁気コアおよびその上に配置された無機酸化物シェルを含む無機酸化物被覆磁性ナノ粒子とを含む相変化磁気インクについて記載する。無機酸化物コーティングは、酸素に対する効果的なバリヤを提供し、その結果としてナノ粒子の磁気コアに、酸化に対する有意な安定性を付与する。これらの磁性ナノ粒子を空気中または通常の不活性雰囲気条件下で扱うことができ、発火の危険性も低減される。
【0015】
本明細書の相変化磁気インクを任意の好適な目的または所望の目的に使用することができる。いくつかの実施形態において、本明細書のインクは、磁気インク文字認識(MICR)インクとして使用される。本開示に従って製造されたインクを、特にMICR用途、ならびに例えば磁気符号化または偽造防止印刷用途に使用することができる。具体的な実施形態において、本明細書のインクは、自動小切手処理のほか、同一に見える印刷物において磁性粒子を検出することなどによる文書認証のための偽造防止印刷のためのMICRインクとして使用される。MICRインクを単独で、または他のインクもしくは印刷材料と組み合わせて使用することができる。
【0016】
本明細書の相変化磁気インクを任意の好適な方法または所望の方法によって製造することができる。いくつかの実施形態において、相変化磁気インクを製造するためのプロセスは、相変化インク担体と、任意の着色剤と、任意の分散剤と、任意の相乗剤と、任意の酸化防止剤と、磁気コアおよびその上に配置された無機酸化物シェルを含む無機酸化物被覆磁性ナノ粒子とを混合すること、加熱して、金属ナノ粒子を含む相変化磁気インクを得ること、場合により相変化磁気インクを液体状態のまま濾過すること、および相変化磁気インクを冷却して固体状態にすることを含む。無機酸化物被覆磁性ナノ粒子を含む濃縮分散体の最初の製造後しばらくしてから、インクにさらなるインク担体材料またはインク成分を加えることができる。
【0017】
相変化インク担体と、任意の着色剤と、任意の分散剤と、任意の相乗剤と、任意の酸化防止剤と、磁気コアおよびその上に配置された無機酸化物シェルを含む無機酸化物被覆磁性ナノ粒子との混合物を加熱することは、選択された材料のための溶融組成物を得るのに十分な任意の温度に加熱することを含むことができる。いくつかの実施形態において、加熱は、80℃から180℃または80℃から160℃または100℃から140℃の温度に加熱することを含む。
【0018】
望まれる場合は、相変化インク担体、任意の分散剤、任意の相乗剤、任意の酸化防止剤および任意の着色剤の1種または複数種を混合して加熱した後に、任意のさらなる添加剤または含まれていない材料を加えて、第1の組成物を調製し、次いで第1の組成物を無機酸化物被覆磁性ナノ粒子と混合した後に、適宜または要望に応じてさらに処理して、相変化磁気インク組成物を形成することができる。
【0019】
一部の実施形態において、本明細書のプロセスは、(1)無機酸化物被覆磁性ナノ粒子、いくつかの実施形態では米国特許公開第20100304006AS号明細書に記載されているように製造された無機酸化物被覆磁性ナノ粒子を1つまたは複数のインクベースあるいはインク担体成分中に加え、例えば140℃の温度(ただし、それに限定されない)で任意の相乗剤および任意の分散剤とともに撹拌しながら溶融させることによって濃縮相変化インクを製造すること、(2)(1)の濃縮混合物を撹拌しながら希釈相変化インクベースに加えて、所望の粘度および濃度要件を達成すること、および(3)場合により磁気インクを濾過することを含むことができる。
【0020】
場合により相変化磁気インクを濾過することができる。濾過を任意の好適な方法または所望の方法によって行うことができる。いくつかの実施形態において、相変化磁気インクを液体状態のままで濾過することができる。いくつかの実施形態において、相変化磁気インクは、ナイロン布フィルタを使用して濾過される。いくつかの実施形態において、相変化磁気インクは、70ミリメートルのMott濾過アセンブリ(Mott Corporation、コネチカット州Farmingtonから入手可能)にて1マイクロメートルナイロンフィルタまたは5マイクロメートルナイロンフィルタにより135℃で濾過される。
【0021】
本明細書の無機酸化物被覆金属磁性ナノ粒子は、望ましくはナノメートルの粒径の範囲にある。例えば、いくつかの実施形態において、無機酸化物被覆金属磁性ナノ粒子は、コアおよびシェルを含む平均粒径(体積平均粒径または最長寸法など)の全体粒径が3から500ナノメートル(nm)、または3から300nm、または3から30nm、または10から500nm、または10から100nm、または10から300nm、または10から50nm、または2から20nm、または25nmである。本明細書において、「平均」粒径は、一般的に、d50で表されるか、または粒径分布の50番目の百分位数の体積中間粒径値として定義され、分布における粒子の50%がd50粒径値より大きく、分布における粒子の他の50%がd50値より小さい。動的光散乱法などの、粒径を推定する光散乱技術を使用する方法によって平均粒径を測定することができる。粒径は、透過型電子顕微鏡法によって生成された粒子の画像、または動的光散乱法の測定値から導かれた顔料粒子の長さを指す。
【0022】
いくつかの実施形態において、本明細書の金属ナノ粒子は、強磁性または超常磁性であり得る。強磁性インクは、磁石によって磁化され、磁石が除去されると飽和磁化の一部を維持する。このインクの主たる用途は、小切手処理に使用される磁気インク文字認識(MICR)である。
【0023】
いくつかの実施形態において、本明細書のインクは超常磁性インクであり得る。超常磁性インクも磁場の存在下で磁化されるが、それらは、磁場が存在しないとそれらの磁化を失う。超常磁性インクの主たる用途は、偽造防止印刷であるが、それに限定されない。この場合、例えば本明細書に記載される磁性粒子およびカーボンブラックを含むインクは、通常の黒色インクのように見えるが、磁気センサまたは磁気撮像デバイスを使用することによって磁気特性を検出することができる。あるいは、このインクによって作製された偽造防止印刷物の磁性金属特性を認証するために金属検出器を使用することができる。磁気検出のための超常磁性画像文字認識のプロセス(すなわち超常磁性インクを使用する方法)が米国特許第5,667,924号明細書に記載されている。
【0024】
上記のように、本明細書の金属ナノ粒子は、強磁性または超常磁性であり得る。超常磁性ナノ粒子は、磁石によって磁化された後に残留磁化が0になる。強磁性ナノ粒子は、磁石によって磁化された後に0より大きい残留磁化を有する。すなわち、強磁性ナノ粒子は、磁石によって誘発された磁化の一部を維持する。ナノ粒子の超常磁性または強磁性特性は、一般には、粒径、形状、材料選択および温度を含むいくつかの要因の関数である。所定の材料では、所定の温度で、保磁力(すなわち強磁性挙動)が、複数磁区構造から単一磁区構造への移行に対応する臨界粒径で最大になる。この臨界粒径は、臨界磁気磁区サイズ(Dc、球形)と呼ばれる。単一磁区の範囲では、熱緩和により、粒径が小さくなると保磁力および残留磁化が急激に低下する。粒径がさらに減少すると、熱効果が支配的になり、それまでは磁気飽和だったナノ粒子を減磁するのに十分に強くなるため、誘発された磁化が完全に失われる。超常磁性ナノ粒子は、残留磁気および保磁力が0である。Dc以上のサイズの粒子は強磁性である。例えば、室温において、Dcは、鉄では15ナノメートルであり、fccコバルトでは7ナノメートルであり、ニッケルでは55ナノメートルである。さらに、粒径が3、8および13ナノメートルの鉄ナノ粒子は超常磁性であるのに対して、粒径が18から40ナノメートルの鉄ナノ粒子は強磁性である。合金では、Dc値が材料に応じて異なり得る。さらに詳細については、Burkeら、Chemistry of Materials、4752〜4761頁、2002を参照されたい。さらに詳細については、米国特許公開第20090321676号明細書(Bretonら)、B.D. Cullity and C.D. Graham、Introduction to Magnetic Materials、IEEE Press(Wiley)、第2版、2009、第11章、Fine Particles and Thin Films、359〜364頁;Luら、Angew.Chem.Int.編、2007、46、1222〜444頁、Magnetic Nanoparticles:Synthesis, Protection, Functionalization and Applicationを参照されたい。
【0025】
任意の好適な金属または所望の金属をこのプロセスにおけるナノ粒子コアに使用することができる。いくつかの実施形態において、磁性ナノ粒子は、Fe、Mn、Co、Niならびにそれらの混合物および合金からなる群から選択されるコアを含む。他の実施形態において、磁性ナノ粒子は、Fe、Mn、Co、Ni、FePt、CoPt、MnAl、MnBiならびにそれらの混合物および合金からなる群から選択されるコアを含む。一部の具体的な実施形態において、金属ナノ粒子は、Fe、MnおよびCoの少なくとも1つを含む。
【0026】
さらなる実施形態において、金属ナノ粒子は、二種金属ナノ粒子または三種金属ナノ粒子である。具体的な実施形態において、金属ナノ粒子は、二種金属コアまたは三種金属コアを含む。好適な二種金属磁性ナノ粒子の例としては、限定することなく、CoPt、fcc相FePt、fct相FePt、FeCo、MnAl、MnBiおよびそれらの混合物等が挙げられる。三種金属ナノ粒子の例としては、限定することなく、上記磁気ナノ粒子の三種混合物、またはコバルト被覆fct相FePtなどの三種金属ナノ粒子を形成するコア/シェル構造体が挙げられる。
【0027】
より大きな粒子のボールミル磨砕(ナノサイズの顔料の製造に使用される一般的な方法)の後に焼鈍することを含む当該技術分野で既知の任意の方法によって磁性ナノ粒子を製造することができる。ボールミル粉砕は、後に必要な単一結晶形に結晶化することが必要になる非晶質のナノ粒子を生成するため、焼鈍が一般に必要である。ナノ粒子を高周波(RF)プラズマによって直接製造することもできる。適切な大規模RFプラズマ反応器は、Tekna Plasma Systems(ケベック、Sherbrooke)から入手可能である。
【0028】
本明細書のコーティングまたはシェルは、任意の好適な、または所望の無機酸化物コーティングを含むことができる。本明細書のコーティングまたはシェルのための好適な無機酸化物の例としては、シリカ、チタニア、酸化亜鉛、酸化鉄等、およびそれらの組合せが挙げられる。
【0029】
無機酸化物を含む保護層またはシェルを有するコア−シェル粒子を任意の好適な方法または所望の方法によって製造することができる。例えば、金属ナノ粒子の表面のシリカコーティングを、金属ナノ粒子の表面のテトラアルコキシシランの触媒加水分解によって設けることができる。金属ナノ粒子の表面に水が直に接触するのを回避するために、該プロセスは、シリカ前駆体の加水分解/縮合に必要なだけの量の水の存在下で、テトラヒドロフランなどの有機溶媒を含む媒体中で実施される。この方法によって製造される被覆磁性ナノ粒子としては、Fe、Fe/Co合金が挙げられる。さらに詳細については、米国特許公開第20100304006A1号明細書を参照されたい。フェロセン(鉄金属源)およびTEOS(オルト珪酸テトラエチル)エアロゾル(シロキサン保護コーティング源)のレーザ誘発熱分解を含む連続プロセスによるシリカ被覆鉄ナノ粒子の一工程製造によってコア−シェルナノ粒子を製造することもできる。さらに詳細については、Bomati−Miguelら、Journal of Magnetism and Magnetic Materials、290〜291、272〜275頁(2005)を参照されたい。触媒量のアンモニア溶液の存在下で、オルト珪酸テトラエチル(TEOS)を含むエタノール溶液に分散された鉄ナノ粒子にシリカ層を堆積させることによって、コア−シェルナノ粒子を製造することもできる。さらに詳細については、Niら、Materials Chemistry and Physics、120 206〜212(2010)を参照されたい。
【0030】
磁性金属ナノ粒子の上層の制御部分酸化に基づく金属酸化物被覆磁性金属ナノ粒子の製造のための一般手順を使用することもできる。例えば、FeCoナノ粒子上の薄い酸化鉄/酸化コバルト被覆層を、プラズマトーチを用いた金属前駆体粒子の制御酸化によって作製することができる。さらに詳細については、Turgut,Zら、Journal of Applied Physics(1999)、85(8,Pt.2A)、4406〜4408を参照されたい。
【0031】
(5から11ナノメートルの)酸化鉄被覆鉄ナノ粒子を、電着プロセスを用いて製造することができる。さらに詳細については、Banerjee,S.ら、Journal of Magnetism and Magnetic Materials(2000)、219(1)、45〜52を参照されたい。
【0032】
いくつかの実施形態において、磁性ナノ粒子は、0.2ナノメートル(nm)から100nmまたは0.5nmから50nmまたは1nmから20nmの厚さを有する無機酸化物シェルを含む。
【0033】
磁性ナノ粒子は任意の形状であってよい。磁性ナノ粒子の例示的な形状としては、限定することなく、針形、粒状、球形、板状、針状、円筒状、八面体形、十二面体形、管状、立方体形、六角形、卵形、球状、樹枝状、角柱形および不定形等を挙げることができる。不定形は、本開示の文脈において、認識可能な形状を有する不明確な形と定義される。例えば、不定形は、明確な辺または角度を有さない。単一ナノ結晶の短軸に対する長軸の比(D長/D短)は、10:1未満、2:1未満または3:2未満であり得る。具体的な実施形態において、磁気コアは、アスペクト比が3:2から10:1未満の針状形を有する。
【0034】
インク中の磁性ナノ粒子の必要充填量は、任意の好適な量または所望の量であってもよく、いくつかの実施形態においては、0.5重量パーセントから30重量パーセント、5重量パーセントから10重量パーセントまたは6重量パーセントから8重量パーセントであるが、これらの範囲外の量も可能である。
【0035】
いくつかの実施形態において、磁性ナノ粒子は、20emu/gから100emu/g、40emu/gから80emu/gまたは50emu/gから70emu/gの残留磁気を有することができるが、これらの範囲外の量も可能である。具体的な実施形態において、磁性ナノ粒子は、20emu/グラムから100emu/グラムの残留磁気を有する。
【0036】
いくつかの実施形態において、磁性ナノ粒子の保磁力は、200エルステッドから50000エルステッド、1000エルステッドから40000エルステッドまたは10000エルステッドから20000エルステッドであり得るが、これらの範囲外の量も可能である。
【0037】
いくつかの実施形態において、磁気飽和モーメントは、例えば、20emu/gから150emu/g、30emu/gから120emu/gまたは40emu/gから80emu/gであってもよいが、これらの範囲外の量も可能である。いくつかの実施形態において、磁性ナノ粒子は、20emu/gから150emu/gの磁気飽和モーメントを有する。
【0038】
本明細書のMICR相変化インクは、任意の所望の、または有効な担体組成物を含むことができる。好適なインク担体材料の例としては、モノアミド、テトラアミドおよびそれらの混合物等の脂肪アミドが挙げられる。好適な脂肪アミドインク担体材料の具体的な例としては、ステアリルステアラミド、二量体酸とエチレンジアミンとステアリン酸との反応生成物である二量体酸系テトラアミド、および二量体酸とエチレンジアミンと少なくとも36個の炭素原子を有するカルボン酸との反応生成物である二量体酸系テトラアミド等、ならびにそれらの混合物が挙げられる。脂肪アミドインク担体が、二量体酸とエチレンジアミンと少なくとも36個の炭素原子を有するカルボン酸との反応生成物である二量体酸系テトラアミドである場合は、カルボン酸は、一般式
【化1】

(式中、Rは、直鎖状、分枝状、飽和、不飽和および環式アルキル基を含むアルキル基であり、前記アルキル基は、一実施形態において少なくとも36個の炭素原子を有し、別の実施形態において少なくとも40個の炭素原子を有し、前記アルキル基は、一実施形態において多くとも200個の炭素原子を有し、別の実施形態において多くとも150個の炭素原子を有し、さらに別の実施形態において多くとも100個の炭素原子を有するが、これらの範囲外の炭素原子数も可能である)のカルボン酸である。この式のカルボン酸は、例えばBaker Petrolite(オクラホマ州Tulsa)から商業的に入手可能であり、その開示内容が参照により全面的に本明細書に組み込まれている米国特許第6,174,937号明細書の実施例1に記載されているように製造され得る。
【0039】
ウレタンイソシアネート由来材料、尿素イソシアネート由来材料、ウレタン/尿素イソシアネート由来材料およびそれらの混合物等のイソシアネート由来樹脂およびワックスも相変化インク担体材料として好適である。
【0040】
脂肪アミド材料とイソシアネート由来材料との混合物を本開示のインクのためのインク担体組成物として採用することもできる。
【0041】
本開示のためのさらなる好適な相変化インク担体材料としては、パラフィン、微結晶ワックス、ポリエチレンワックス、エステルワックス、アミドワックス、脂肪酸、脂肪アルコール、脂肪アミドおよび他の蝋質材料、スルホンアミド材料、(例えばタル油ロジンおよびロジンエステルなどの)異なる天然源から製造された樹脂系材料、および多くの合成樹脂、オリゴマー、ポリマーおよびコポリマー、例えば、エチレン/酢酸ビニルコポリマー、エチレン/アクリル酸コポリマー、エチレン/酢酸ビニル/アクリル酸コポリマーおよびアクリル酸とポリアミドのコポリマー等、アイオノマーならびにそれらの混合物が挙げられる。これらの材料の1種または複数種を脂肪アミド材料および/またはイソシアネート由来材料との混合物で使用することもできる。
【0042】
担体は、任意の好適な量または所望の量で存在し得る。いくつかの実施形態において、インク担体は、インクに対して0.1重量パーセントから99重量パーセントまでの量で相変化インクに存在する。
【0043】
場合により分散剤がインク配合物に存在してもよい。分散剤の役割は、被覆材料との相互作用を安定化することによって被覆磁性ナノ粒子の分散安定性をさらに向上させることである。好適な分散剤としては、オレイン酸、トリオクチルホスフィン酸化物(TOPO)、ヘキシルホスホン酸(HPA)、ポリビニルピロリドン(PVP)誘導体およびそれらの組合せが挙げられるが、それらに限定されない。好適な分散剤としては、ベータヒドロキシカルボン酸およびそれらのエステル、長鎖脂肪族カルボン酸とのソルビトールエステル、ポリビニルピロリドンおよび誘導体などのポリマー化合物、およびSolsperse(登録商標)ポリマー分散剤ならびにそれらの組合せを挙げることもできる。好適な分散剤のさらなる例としては、Disperbyk(登録商標)108、Disperbyk(登録商標)116、(BYK)、Borchi(登録商標)GEN911、Irgasperse(登録商標)2153および2155(Lubrizol)、Clariantの酸および酸エステルワックス、例えばLicowax(登録商標)を挙げることができる。好適な分散剤は、米国特許公開第2010/0292467号にも記載されている。さらなる好適な分散剤としては、ペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシルおよびウンデシル等の、5から60個の炭素を有する鎖などの長鎖直鎖状、環式または分枝状脂肪族鎖を含むベータ−ヒドロキシカルボン酸およびそれらのエステル;ラウリル酸、オレイン酸(SPAN(登録商標)85)、パルミチン酸(SPAN(登録商標)40)およびステアリン酸(SPAN(登録商標)60)などの長鎖脂肪族カルボン酸とのソルビトールエステル;ポリビニルピロリドン、ポリ(1−ビニルピロリドン)−グラフト−(1−ヘキサデセン)、ポリ(1−ビニルピロリドン)−グラフト−(1−トリアコンテン)、ポリ(1−ビニルピロリドン−コ−アクリル酸などのポリマー化合物、およびそれらの組合せが挙げられる。いくつかの実施形態において、分散剤は、オレイン酸、ラウリル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、トリオクチルホスフィン酸化物、ヘキシルホスホン酸、ポリビニルピロリドン、ポリ(1−ビニルピロリドン)−グラフト−(1−ヘキサデセン)、ポリ(1−ビニルピロリドン)−グラフト−(1−トリアコンテン)、ポリ(1−ビニルピロリドン−コ−アクリル酸)、ペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシルまたはウンデシルベータヒドロキシカルボン酸およびそれらの組合せからなる群から選択される。
【0044】
分散剤は、任意の好適な量または所望の量で存在し得る。いくつかの実施形態において、分散剤は、インクに対して0.1重量パーセントから25重量パーセントの量で相変化インクに存在する。
【0045】
いくつかの実施形態において、相乗剤もインクベースに含まれていてもよい。相乗剤を、任意の好適な時間または所望の時間に加えることができる。
【0046】
相乗剤は、任意の好適な量または所望の量で存在し得る。いくつかの実施形態において、相乗剤は、インクに対して0.1重量パーセントから10重量パーセントの量で相変化インクに存在する。
【0047】
任意の好適な相乗剤または所望の相乗剤を採用することができる。いくつかの実施形態において、相乗剤をLubrizol Corporationから入手可能なSolsperse(登録商標)5000またはSolsperse(登録商標)22000から選択することができる。
【0048】
本開示の相変化インクは、着色剤化合物をさらに含むことができる。この任意の着色剤は、所望の色または色調を得るための所望の量または有効な量、例えば、インクに対して1重量パーセントから20重量パーセントの量でインクに存在し得る。着色剤は、染料、含量およびそれらの混合物等を含む任意の好適な着色剤または所望の着色剤であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書の相変化磁気インクに対して選択される着色剤は顔料である。具体的な実施形態において、本明細書の相変化磁気インクに対して選択される着色剤はカーボンブラックである。
【0049】
本開示によるMICRインクに使用されるさらなる好適な着色剤としては、限定することなく、カーボンブラック、ランプブラック、アイロンブラック、ウルトラマリン、ニグロシン染料、アニリンブルー、DuPont(登録商標)オイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロリド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ロダミン6Cレーキ、クロムイエロー、キナクリドン、ベンジジンイエロー、マラカイトグリーン、ハンサイエローC、マラカイトグリーンヘキサレート、オイルブラック、アゾオイルブラック、ローズベンガル、モノアゾ顔料、ジアゾ顔料、トリアゾ顔料、第三級アンモニウム塩、サリチル酸およびサリチル酸誘導体の金属塩、ファーストイエローG3、ハンサブリリアントイエロー5GX、ジアゾイエローAAA、ナフトールレッドHFG、レーキレッドC、ベンズイミダゾロンカルミンHF3CS、ジオキサジンバイオレット、ベンズイミダゾロンブラウンHFR.アニリンブラック、酸化チタン、タルトラジンレーキ、ロダミン6Gレーキ、メチルバイオレットレーキ、ベーシック6Gレーキ、ブリリアントグリーンレーキ、ハンサイエロー、ナフトールイエロー、ロダミンB、メチレンブルー、ビクトリアブルーおよびウルトラマリンブルー等が挙げられる。
【0050】
製造されるMICRインクは黒色または暗褐色である。本開示によるMICRインクを、インク製造時に着色剤を加えることによって着色インクとして製造することができる。あるいは、着色剤を含まない(すなわち着色剤無添加の)MICRインクを初回通過時に基板に印刷した後で2回目通過を行うことができ、着色インクをMICR読取可能にするように、MICR粒子を含まない着色インクがMICRインクの上に直接印刷される。いくつかの実施形態において、本明細書のプロセスは、(1)相変化インク担体と、任意の着色剤と、任意の分散剤と、任意の相乗剤と、任意の酸化防止剤と、磁気コアおよびその上に配置された無機酸化物シェルを含む無機酸化物被覆磁性ナノ粒子とを含む相変化磁気インクをインクジェット印刷装置に導入すること、(2)インクを溶融させること、および(3)溶融インクの液滴を画像様パターンで基板上に噴射させること、(4)相変化インク担体と、着色剤と、任意の分散剤と、任意の相乗剤と、任意の酸化防止剤とを含む相変化インクをインクジェット印刷装置に導入すること、(5)インクを溶融させること、および(6)(5)の溶融インクの液滴を画像様パターンで基板上に噴射させることであって、該画像様パターンが、(4)のインクをMICR読取可能にするように(3)の画像様パターンを被覆することを含むことができる。
【0051】
本開示のインクは、酸化防止剤を場合により含むこともできる。インク組成物の任意の酸化防止剤は、画像を酸化から保護するとともに、インク製造過程の加熱部分を通じてインク組成物を酸化から保護する。
【0052】
好適な酸化防止剤の具体的な例としては、Chemtura Corporation(ペンシルバニア州Philadelphia)から商業的に入手可能なNAUGUARD(登録商標)524、NAUGUARD(登録商標)76およびNAUGUARD(登録商標)512、ならびにBASFから商業的に入手可能なIRGANOX(登録商標)1010等が挙げられる。任意の酸化防止剤は、存在する場合は、任意の所望の量または有効な量、例えば、インクに対して0.01重量パーセントから20重量パーセントの量でインクに存在する。
【0053】
本開示のインクは、粘度調整剤を場合により含むこともできる。インク組成物の粘度を、適切な添加剤を使用することによって調整することができる。好適な粘度調整剤の例としては、ステアロン等の脂肪族ケトン、ポリスチレンおよびポリメチルメタクリレートなどのポリマー、ならびにBYK Chemieから入手可能なものなどの増粘剤等が挙げられる。任意の粘度調整剤は、存在する場合は、任意の所望の量または有効な量、例えば、インクに対して0.1から99重量パーセントの量でインクに存在する。
【0054】
インクに対する他の任意の添加剤としては、透明剤、粘着剤および可塑剤等が挙げられる。
【0055】
当該添加剤をそれらの通常の目的のための従来の量で含めることができる。それら任意の添加剤は、任意の好適な量または所望の量、例えば、インクに対して0.1から50重量パーセントの量で存在してもよい。
【0056】
いくつかの実施形態において、本明細書のMICR相変化インク組成物は、50℃以上150℃以下の融点を有するが、これらの範囲外の融点も可能である。
【0057】
いくつかの実施形態において、本明細書のMICR相変化インク組成物は、吐出温度(いくつかの実施形態においては75℃以上140℃以下であるが、これらの範囲外の吐出温度も可能である)において25センチポアズ以下の溶融粘度または2センチポアズ以上の溶融粘度を有するが、これらの範囲外の溶融粘度も可能である。
【0058】
本開示のMICR相変化インクを直接印刷インクジェットプロセスに対応する装置、および間接(オフセット)印刷インクジェット用途に採用することができる。本開示の別の実施形態は、本開示のMICR相変化インクをインクジェット印刷装置に取り入れ、インクを溶融させ、溶融インクの液滴を画像様パターンで記録基板上に噴射させることを含むプロセスに関する。いくつかの実施形態において、基板は、最終画像記録シートなどの最終画像受取基板であり、溶融インクの液滴は、画像様パターンで最終受取基板上に直接(例えば紙に直接)噴射される。本開示のさらに別の実施形態は、本開示のインクをインクジェット印刷装置に取り入れ、インクを溶融させ、溶融インクの液滴を画像様パターンで中間転写部材上に噴射させ、インクを画像様パターンで中間転写部材から最終記録基板上に噴射させることを含むプロセスに関する。1つの具体的な実施形態において、印刷装置は、圧電気振動素子の振動によってインクの液滴を画像様パターンで噴射させる圧電印刷プロセスを採用する。いくつかの実施形態において、中間転写部材を、最終記録シートの温度より高く、印刷装置における溶融インクの温度より低い温度まで加熱する。本開示のインクをホットメルト音響インクジェット印刷、ホットメルトサーマルインクジェット印刷、およびホットメルト連続流または偏向インクジェット印刷等の他のホットメルト印刷プロセスに採用することもできる。本開示の相変化インクをホットメルトインクジェット印刷プロセス以外の印刷プロセスに使用することもできる。
【0059】
普通紙、罫線ノート紙、ボンド紙、シリカ被覆紙、透明材料、織物、繊維製品、プラスチック、ポリマーフィルム、金属および木材などの無機基板を含む任意の好適な基板または記録シートを採用することができる。
【実施例】
【0060】
実施例1
未塗布金属ナノ粒子による火災危険の例。MTI Corp.(米国カリフォルニア州Richmond)の未塗布の鉄ナノ粒子(平均粒径が50ナノメートル)を、安全対策として酸素量および湿分量がそれぞれ5ppm(百万分率)および5ppmになるようにアルゴンで最初に不活性化させたグローブボックス内に広げた。これらの条件下でも、それらのナノ粒子は即座に非常に高温になった。それらは、アルゴンガス中で(それぞれ5ppmの)微量の酸素および水によって迅速に酸化され、それらの磁性残留磁気特性のほとんどを実質的に失った。空気中で広げたとしたら、これらの自然発火性材料が即座に発火したであろう。
【0061】
実施例2
2.a.シリカ被覆ナノ粒子.平均粒径が300ナノメートルのシリカ被覆鉄ナノ粒子を、NaOH/N・HO還元剤によるFeCl・6HOの還元によって合成する。エタノールで洗浄した後、ストーバー法を使用することによってシリカコーティングを堆積させる。この手順において、シリカ層をオルト珪酸テトラエチル前駆体から堆積させ、それをpH8から9のアンモニア/水混合物中にて40℃で4時間にわたって加水分解させる。シリカ被覆鉄ナノ粒子を作製するための手順は、Niら、Materials Chemistry and Physics 10、206〜212(2010)に詳細に記載されている。
【0062】
2.b.濃縮インク。残留している可能性のある油およびグリースを除去するために最初にアセトンで、次いでトルエンで予備洗浄し、次いで溶媒を除去するために120℃に加熱されたオーブンにて乾燥させたHoover Precision Products,Inc.から入手可能な1800.0グラムの1/8インチ径の440Cグレード25鋼球を、Union Processから入手可能なSzegvari01アトライタに充填する。以下の成分を一緒に加え、600ミリリットルビーカー中にて120℃で溶融混合する。89.86グラムのKemamide(登録商標)S−180(Chemtura Corporationから商業的に入手可能なステアリルステアラミド)および15.12グラムのSolsperse(登録商標)17000(Lubrizol Corporationから入手可能なポリマー分散剤)。均一な溶液を得た後、混合物をアトライタ容器に定量的に移してから、3.02グラムのSolsperse(登録商標)5000(Lubrizol Corporationから入手可能な相乗剤)を加える。Solsperse(登録商標)5000の磨砕を175RPMで1時間続けてから、実施例2.aに記載したように製造した72グラムのシリカ被覆鉄粒子をアトライタ容器に加える。着色混合物を225RPMで19時間にわたって終夜磨砕させた後に、得られた濃縮物を溶融状態で鋼球から排出および分離し、次いで凍結させる。
【0063】
2.c.シリカ被覆磁性ナノ粒子を含む磁気インクの製造。磁気インクを実施例2.bの濃縮物から以下の方法で形成する。以下の成分を一緒に加え、600ミリリットルビーカー中にて120℃で溶融混合して溶液#1を形成する。Baker Petroliteの71.9グラムの蒸留ポリエチレンワックス、16.45グラムのトリアミドワックス(米国特許第6,860,930号明細書に記載されているトリアミド)、4.97グラムのKemamide(登録商標)S−180(Chemtura Corporationから商業的に入手可能なステアリルステアラミド)、16.59グラムのKE−100(登録商標)樹脂(Arakawa Corporationから商業的に入手可能なテトラヒドロアビエチン酸とグリセロールとのエステル)、(米国特許第6,309,453号明細書の実施例4に記載されている)2.28グラムのウレタン樹脂および0.3グラムのNaugard(登録商標)445(Chemtura Corporationから入手可能な酸化防止剤)。実施例2.b.で形成した37.5グラムの濃縮物を250ミリリットルビーカーに移して、オーブンにて120℃で溶融させ、次いでオーバーヘッド撹拌機を備えたホットプレートに移す。液飛びを回避するために低速度で濃縮物を撹拌しながら溶液#1を徐々に加える。300RPMの高速度で2時間にわたってさらに撹拌を続けて、磁気インクを形成させる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相変化インク担体と、任意の着色剤と、任意の分散剤と、任意の相乗剤と、任意の酸化防止剤と、磁気コアおよびその上に配置された無機酸化物シェルを含む無機酸化物被覆磁性ナノ粒子とを含む相変化磁気インク。
【請求項2】
前記磁性ナノ粒子は、二種金属コアまたは三種金属コアを含む請求項1に記載の相変化磁気インク。
【請求項3】
前記磁性ナノ粒子は、Fe、Mn、Co、Ni、FePt、CoPt、MnAl、MnBiならびにそれらの混合物および合金からなる群から選択されるコアを含む請求項1に記載の相変化磁気インク。
【請求項4】
前記磁性ナノ粒子は、シリカ、チタニア、酸化亜鉛、酸化鉄およびそれらの組合せからなる群から選択される無機酸化物シェルを含む請求項1に記載の相変化磁気インク。
【請求項5】
前記磁性ナノ粒子は、3から300ナノメートルの体積平均粒径を有する請求項1に記載の相変化磁気インク。
【請求項6】
前記相変化インク担体材料は、パラフィン、微結晶ワックス、ポリエチレンワックス、エステルワックス、アミドワックス、脂肪酸、脂肪アルコール、脂肪アミド、スルホンアミド材料、タル油ロジン、ロジンエステル、エチレン/酢酸ビニルコポリマー、エチレン/アクリル酸コポリマー、エチレン/酢酸ビニル/アクリル酸コポリマー、アクリル酸とポリアミドのコポリマー、アイオノマーならびにそれらの混合物からなる群から選択される1つまたは複数の材料を含む請求項1に記載の相変化磁気インク。
【請求項7】
前記磁気コアは、アスペクト比が3:2から10:1未満の針状形を有する請求項1に記載の相変化磁気インク。
【請求項8】
前記磁性ナノ粒子は、20emu/gから150emu/gの磁気飽和モーメントを有する請求項1に記載の相変化磁気インク。
【請求項9】
前記磁性ナノ粒子は、20emu/gから100emu/gの残留磁気を有する請求項1に記載の相変化磁気インク。
【請求項10】
相変化磁気インクを製造するためのプロセスであって、相変化インク担体と、任意の着色剤と、任意の分散剤と、任意の相乗剤と、任意の酸化防止剤と、磁気コアおよびその上に配置された無機酸化物シェルを含む無機酸化物被覆磁性ナノ粒子とを混合すること、加熱して、金属ナノ粒子を含む相変化磁気インクを得ること、場合により相変化磁気インクを液体状態のまま濾過すること、および相変化磁気インクを冷却して固体状態にすることを含むプロセス。
【請求項11】
(1)相変化インク担体と、任意の着色剤と、任意の分散剤と、任意の相乗剤と、任意の酸化防止剤と、磁気コアおよびその上に配置された無機酸化物シェルを含む無機酸化物被覆磁性ナノ粒子とを含む相変化磁気インクをインクジェット印刷装置に取り入れること、(2)インクを溶融させること、および(3)溶融インクの液滴を画像様パターンで基板上に噴射させることを含み、(4)任意の着色剤と、任意の分散剤と、任意の相乗剤と、任意の酸化防止剤とを含む相変化インクをインクジェット印刷装置に取り入れること、(5)インクを溶融させること、および(6)(5)の溶融インクの液滴を画像様パターンで基板上に噴射させることであって、該画像様パターンが、(4)のインクをMICR読取可能にするように(3)の画像様パターンを被覆し、場合により該基板が最終記録基板であり、溶融インクの液滴が画像様パターンで最終記録基板上に直接噴射されることを場合によりさらに含むプロセス。

【公開番号】特開2012−193365(P2012−193365A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−47125(P2012−47125)
【出願日】平成24年3月2日(2012.3.2)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】