説明

無毒性被覆組成物、その使用方法及びバイオファウリング生物の付着から保護された物品

本発明は種々のバイオファウリング生物の付着からの保護を被覆された表面に与えるメントール及び/又はイソプレゴール並びに少なくとも一種の更なる活性成分を含む被覆組成物に関する。これらの組成物は塗料配合物、ワニス配合物及びシーラント配合物中に使用されることが有利である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は種々のバイオファウリング生物の付着からの保護をそれで被覆された表面に与える活性成分を含む無毒性被覆組成物に関する。これらの組成物は塗料配合物、ワニス配合物及びシーラント配合物中に使用されることが有利である。
特に、本発明は(i)メントール及び/又はイソプレゴールと(ii)少なくとも一種の更なる活性成分(以下に更に定義される)の混合物を含む無毒性被覆組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
殺生物剤は多様な用途を有する種々の被覆材料中に普通に使用される。例えば、船用塗料において、殺生物剤は広範囲のバイオファウリング生物、例えば、藻類、フジツボ、船虫及びその他の水生のやっかいな種の付着に対して水中構造を保護する。湖及び川では、殺生物剤がゼブライガイ(zebra mussels)の如き生水生物から水中構造を保護するのに使用される。微生物、それらの粘稠な生物有機産物及び吸収された有機物が水中に入れられた構造の表面に形成する粘着性のスライムを構成することがわかった。この汚損順序における初期の生物は細菌であり、続いてケイ藻類、ハイドライド(hydrid)、藻類、コケムシ、原生動物そして最後にマクロファウラント(macrofoulant)の生物的発達がある。マクロファウラントはルゴフィリック(rugophilic)であり、即ち、平滑な表面に優先して粗面に沈降する傾向がある。
船底の汚損は長い間存続し得る問題であり、これは速度低下及び増大された燃料消費に寄与する。しかしながら、汚損の問題は船に制限されないが、その他の水中構造に同様に及ぶ。ブイは汚損生物の過度の重量のためにシフトし得る。係留設備における木材くいは船虫及び菌類侵食のために構造の弱化及び最終的な破壊を受ける。都市の給水系の取水スクリーンの汚損は低下された流量及び促進された腐蝕をもたらし得る。コンクリート構造又は鉄セメント構造、例えば、ダムはまたバイオファウリング生物により悪影響される。
船用被覆物は実用的かつ有効な保護を与えるために耐水性である必要があることが当業者により理解されている。本発明の組成物を記載するのに使用される“耐水性”という表現は、加水分解的侵食に有効に耐えることができ、かつ水に対し実質的に不透過性である耐久性の保護バリヤーを与えることができることを表す。耐水性は船用被覆物に本質的に重要である。何とならば、例えば、船サービスにおける殆どの品目を再被覆することが手の出せない程に高価であるからである。何とならば、それらはドライドックに入れられる必要があり、さもなければ再被覆されるために水から取り出される必要があるからである。また、例えば、汚損生物を被覆された表面から洗浄する時間及び費用を最小にすることが望ましい。それ故、船用被覆物により与えられる保護は、それが腐食、汚損、磨耗等に対するものであろうとも、少なくとも数ヶ月の期間にわたって、理想的には、少なくとも数年にわたって有効であるべきである。耐水性ではない被覆組成物は船用被覆物の性能基準を満足することよりもむしろ水中で短寿命であろう。
商用のアンチファウリング被覆物の大半は被覆材料から経時滲出する強力な殺生物剤である有機金属化合物を含む。例えば、トリブチルスズ(TBT)は貝に高度に毒性であることが知られている。Anderson及びDally, Oceans '86, IEEE Publication #86 CH2363-0 (1986)を参照のこと。無脊椎動物及び脊椎動物における急性毒性は1リットル当り1μg(マイクログラム)程度に低い濃度で生じる。Laughlinら, Mar. Ecol. Prog. Ser., 48: 29-36 (1988)を参照のこと。酸化銅(I)及び酸化亜鉛(これらはその他の商用アンチファウラントである)はまた重金属、即ち、銅及び亜鉛を海洋環境に放出することにより機能する。
ラテックス人工塗料及び木材染色において、殺生物剤は臭気並びに粘度及び色の変化を生じ得る微生物汚染に対する缶中保護を与え、かつ乾燥フィルム及び下にある基材を損傷微生物から保護する。このような被覆材料は有効な保護を被覆された表面に与えるために同様に耐水性である必要がある。
【0003】
殺生物剤はまた弾性被覆物、接着剤、コーキング材、艶出コンパウンド、接合セメント等に通常利用され、これらはまた耐水性である。
上記製品に現在使用される或る種の殺生物剤はエコロジー上有害であると示されていたので、幾つかの国際当局(その使命は環境の質を監視することを含む)はそれらの製造及び使用の節減及び最終的な停止を強制している。TBTだけでなく、広範囲の海洋生物に対して毒性作用を有するその他の有機スズ化合物を含む全てのアンチファウラント被覆物が2003年までに世界中で禁止されるという提案が国際海洋組織(IMO)によりなされていた。従って、このような製品の製造業者は既存の配合物をバイオファウリング生物の付着及び生長を防止するのに、一度で、有効であり、かつ環境上良性である別の薬剤を含むように変えることの見込みと直面している。エコロジー上有害な殺生物剤の許容し得る代替物を開発する際に考慮される必要があるその他の基準として、被覆組成物中のその他の成分との化学的適合性、被覆物が適用される乾燥フィルム及び基材との物理的適合性、代替薬剤それら自体又はそれらを含む被覆材料を取り扱い、又は使用する者の安全性並びにそれらの製造のコストが挙げられる。
WO 01/95718は主としてテルペン及びテルペン誘導体、特に(-)-メントール、(-)-トランス-p-メンタン-3,8-ジオール、(-)-メンチルクロリド、3-〔〔5-メチル-2-(1-メチルエチル)シクロヘキシル〕オキシ〕-1,2-プロパンジオール、(-)-イソプレゴール及び(-)-メントンを使用する種々のバイオファウリング生物の付着からの保護をそれらで被覆された表面に与える無毒性被覆組成物に関する。等しい部数の(-)-メントールと(-)-トランス-p-メンタン-3,8-ジオールからなる混合物が実施例7(15頁及び16頁)に記載されており、これらがフジツボの沈降の低比率をもたらした。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
それ故、本発明の一つの目的は、好ましくは時間の延長された期間、特に3-5年にわたって、匹敵するアンチファウリング活性、又は一層良好なアンチファウリング活性を有する塗料又は被覆組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第一局面によれば、本発明は
(i) メントール及び/又はイソプレゴール及び
(ii)
a)2〜6個の炭素原子を有する(好ましくは天然産の)ヒドロキシカルボン酸のメンチルエステル(これらは順に必要によりヒドロキシ基についてC1-C4カルボン酸によりエステル化されてもよい)、
b)式(I):
【0006】
【化1】

【0007】
(式中、
R1は少なくとも1個、かつ3個以下のヒドロキシ基を有するC2-C6-アルキレン基を表し、かつ
R2及びR3は互に独立にC1-C10-アルキル(これは必要によりヒドロキシ、アミノ及びハロゲンを含む群からの1〜3個の基により置換されていてもよい)、もしくはC5-C7-シクロアルキル、又はC6-C12-アリールを表し、但し、R2及びR3の炭素原子の合計量が3個以上であることを条件とし、又は
R2及びR3は一緒になってアルキレン基(これは、基R2及びR3を有する炭素原子と一緒になって、5-7員環を形成する)を表し、このアルキレン基は、その一部について、C1-C6-アルキル基により置換されることが可能である)
の化合物、
c)式(II):
【0008】
【化2】

【0009】
(式中、
RaはC4-C20-アルキル、C5-C20-シクロアルキルもしくは-ヘテロシクロアルキル又はC5-C20-アルコキシ、C6-C12-アリール、C5-C10-ヘテロアリール或いはC7-C11-アラルキルを表し、
Rbはm+w・n価の脂肪族C1-C8基、脂環式もしくはヘテロ脂環式C3-C15基、芳香族脂肪族C7-C20基、アルコキシ又はアシルオキシを含む脂肪族C3-C15基を表し、
A及びBは互に独立に-O-、-S-又は-NH-を表し、
Yはヒドロキシ、C1-C10-アルコキシ、C2-C6-アシルオキシ、アミノ、メルカプト又は-O-Z-O-を表し、
ZはC1-6-アルキレンを表し、
wは基Yの原子価を表し、かつ
m及びnは互に独立に1から8までの整数を表し、但し、m+nの合計が12以下であることを条件とする)
の化合物(注:グループc)のこれらの化合物が特に好ましい)、
d)式(III):










【0010】
【化3】

【0011】
(式中、
RはHであり、かつkは1から4までの整数であり、又はRはCH3であり、かつkは0から4までの整数である)
の化合物、
e)式(IV):
【0012】
【化4】

【0013】
(式中、
R'はH又はアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、ヒドロキシアルキル基、アルキニル基、アシルオキシアルキル基、アルコキシアルキル基、アミノアルキル基、アシルアミノアルキル基、カルボキシアルキル基或いは式-CpH2pCOOR'''(式中、-CpH2pは直鎖又は分岐鎖アルキレン基であり、pは1から6までの整数であり、かつR'''はC1-C8-アルキルである)のアルキルカルボキシアルキル基を表し、前記基の夫々は25個までの炭素原子を含み、かつ
R”はヒドロキシ基又はアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、ヒドロキシアルキル基、アルキニル基、アシルオキシアルキル基、アルコキシアルキル基、アミノアルキル基、アシルアミノアルキル基、カルボキシアルキル基或いは式-CpH2pCOOR'''(式中、-CpH2pは直鎖又は分岐鎖アルキレン基であり、pは1から6までの整数であり、かつR'''はC1-C8-アルキルである)のアルキルカルボキシアルキル基を表し、前記基の夫々は25個までの炭素原子を含み、但し、R'が水素である場合、R”はまたベンジル及び置換フェニル(その置換基はC1-C4アルキル、ヒドロキシ及びC1-C4-アルコキシ、ニトロ及びハロゲンから選ばれる)から選ばれた10個までの炭素原子のアリール基であってもよいことを条件とする)
の化合物、
f)式(V):
【0014】
【化5】

【0015】
(式中、
R#はC1-C5-アルキル、C1-C8-ヒドロキシアルキル又は6個までの炭素原子を有するアルキルカルボキシアルキルであり、
RXは水素又はC1-C5-アルキルであり、かつ
RY及びRZは独立にC1-C5-アルキルであり、
但し、RX、RY及びRZは一緒になって合計で少なくとも5個の炭素原子、好ましくは5-10個の炭素原子を与えることを条件とし、かつ
RXが水素である場合、RYはC2-C5-アルキルであり、かつRZはC3-C5-アルキルであり、かつRY及びRZの少なくとも一つは、好ましくは式(V)中のマークされた炭素原子(*)に対しα位又はβ位で、分岐されている)
の化合物
からなる群から選ばれた化合物、及び
(iii) フィルム形成剤
を含むことを特徴とする(好ましくは無毒性の)塗料又は被覆組成物を提供する。
【0016】
本明細書中、式(II)の化合物の使用が特に好ましい。本発明の相当する局面が特に有益である。従って、“ii)a)〜f)にリストされた化合物”についてのあらゆる言及はまたグループii)c)の化合物単独についての言及と理解されるべきである。
アルキル基の例として、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec.-ブチル、イソブチル及びtert.-ブチルが挙げられる。
アルケニル基の例として、エテニル、プロペニル、2-メチルプロペニル、n-ブテニルが挙げられる。
アルコキシ基の例として、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、sec.-ブトキシ、tert.-ブトキシが挙げられる。
構造異性体及び立体異性体を含む、メントール及び/又はイソプレゴール並びに上記ii)a)〜f)にリストされた化合物の異性体形態の全てが、本発明の実施に使用されてもよい。
メントール及び/又はイソプレゴール並びに上記ii)a)〜f)にリストされた化合物の混合物は、組成物が被覆物として適用される表面上のバイオファウリング生物の付着を抑制するのに有効な量で被覆組成物中に存在する。
上記ii)a)〜f)にリストされた化合物は組成物の0.01重量%から約50重量%までの量で存在することが好ましい。
また、本発明によれば、上記塗料又は被覆組成物を含む塗料、好ましくは船用塗料が提供される。
【0017】
また、本発明によれば、メントール及び/又はイソプレゴール並びに上記ii)a)〜f)にリストされた化合物、特に上記ii)c)にリストされた式IIの化合物を含む被覆材料の或る使用方法が提供される。一つのこのような方法はメントール及び/又はイソプレゴール並びに上記ii)a)〜f)にリストされた少なくとも一種、即ち、一種以上の化合物を含む被覆物をこのような表面に適用すること(例えば、はけ塗、噴霧又は浸漬による)により水性環境中に存在する汚損生物から水性環境に暴露された表面を保護することを伴う。別法はこのような表面に適用される被覆配合物中に少なくとも一種の上記化合物を入れることにより望ましくない菌類生物、例えば、カビ、白カビ等の付着及び成長から被覆された表面を保護することを伴う。
本発明の別の局面として、表面の少なくとも一部に本明細書に記載された組成物の被覆物を有する物品が提供され、その被覆物はバイオファウリング生物の有害な作用への暴露に対する保護を与える。
上記被覆組成物は、それがバイオファウリング生物の付着及び生長に対する有効な保護を与えるとともに、既知のエコロジー上有害な作用を生じない点で、環境上許される被覆製品に関する上記基準の全てを満足する。更に、メントール、イソプレゴール及びii)a)〜f)にリストされた化合物、特に上記グループii)c)のものは、通常の船用塗料及びその他の塗料配合物と、化学的かつ物理的の両方で適合性であることが示され、取り扱うのに安全であり、しかも比較的に低いコストで得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明によれば、上記ii)a)〜f)にリストされた化合物、特にグループii)c)の化合物は、特にそれらがメントール及び/又はイソプレゴールと組み合わされる場合に、一種以上のこのような化合物を含む被覆組成物が適用される表面、特に水中構造の表面上のバイオファウリング生物の付着を抑制するのに有益であることが発見された。このような混合物又は組み合わせはメントール及び/又はイソプレゴールと較べて相乗的に高められた活性を示す。
本明細書に使用される“バイオファウリング生物”という用語は塩水環境及び生水環境の両方で汚損順序に関与するあらゆる全ての生物を表し、細菌、ケイ藻類、ハイドライド、藻類、コケムシ、原生動物及びマクロファウラントを含むが、これらに限定されない。
本発明のメントールは有利にはl-メントール又はラセミ体メントール、好ましくはl-メントールである。
本発明のイソプレゴールは有利には(-)-イソプレゴール又はラセミ体のイソプレゴール、好ましくはラセミ体のイソプレゴールである。
時間の延長された期間にわたって有効なアンチファウリング剤であるとわかった有利な化合物は上記(ii)a)から選ばれた化合物、即ち、メンチルエステル、特にl-メントール、ベータ-ヒドロキシ酪酸、アルファ-ヒドロキシイソ吉草酸、アルファ-ヒドロキシカプロン酸、アルファ-ヒドロキシ-アルファ-メチル-吉草酸、グリコール酸及び乳酸のエステルであり、メンチルラクテートが好ましい。この化合物は、例えば、フレスコラートML(登録商標)(Haarmann & Reimer)として市販されている。l-メントールのエステル及びラセミ体の乳酸のエステル(l-メンチルラクテート)が特に好ましい。









【0019】
【化6】

l-メンチルラクテート
上記(ii)a)のメンチルエステルは公知であり、DE 26 08 226(本明細書に参考としてそのまま含まれる)に記載されている。
時間の延長された期間にわたって有効なアンチファウリング剤であるとわかった有利な化合物は上記(ii)b)から選ばれ、式(Ia)〜(Id)の化合物である。
【0020】
【化7】

【0021】
式中、R1は上記意味を有し、好ましくはR1
【0022】
【化8】

を表す。
(ii)b)の好ましい化合物はメントングリセリンアセタールである。この化合物は、例えば、フレスコラートMGA(登録商標)(Haarmann & Reimer)として市販されている。使用される出発物質及び調製方法に応じて、メントングリセリンアセタールは光学異性体の混合物として、又は純粋な異性体の形態で使用し得る。式(Iaa)のジアステレオマーの混合物が特に好ましい。
【0023】
【化9】

上記(ii)b)の化合物、特に上記式(Ia)〜(Id)の化合物は、公知であり、EP 0 507 190(本明細書に参考としてそのまま含まれる)に記載されている。
時間の延長された期間にわたって有効なアンチファウリング剤であるとわかった特に有利な化合物は上記(ii)c)から選ばれた化合物である。式(IIa)〜(IIj)の化合物が特に好ましい。
【0024】
【化10】



【0025】
【化11】

【0026】
メントールグリコールカーボネート(IIa)、メントールプロピレングリコールカーボネート(IIb)及びメントールグリセリンカーボネート(IIc)が特に好ましい。使用される出発物質及び調製方法に応じて、カーボネート(IIa)、(IIb)及び(IIc)は光学異性体の混合物として、又は純粋な異性体の形態で使用し得る。l-メントールから誘導された化合物(IIa)、(IIb)及び(IIc)が好ましい。上記(ii)c)の化合物、特に上記式(IIa)〜(IIj)の化合物は、公知であり、EP 0 583 651(本明細書に参考としてそのまま含まれる)に記載されている。
時間の延長された期間にわたって有効なアンチファウリング剤であるとわかった有利な化合物は上記(ii)d)から選ばれ、メンチルメトキシアセテート及びメンチル3,6-ジオキサヘプタノエートであり、l-メントールのメンチルエステルが特に好ましい。上記(ii)d)の化合物は、公知であり、DE 191 547及びEP 1 034 161(本明細書に参考としてそのまま含まれる)に記載されている。
時間の延長された期間にわたって有効なアンチファウリング剤であるとわかり、上記(ii)e)から選ばれる好ましい化合物は、式(IVa)のN-エチル-p-メンタン-3-カルボキサミド(市販のWS-3としてまた知られている)であり、これは光学異性体の混合物として、又は純粋な異性体の形態で使用でき、式(IVb)の異性体が有利である。
【0027】
【化12】

上記(ii)e)の化合物は、公知であり、米国特許第4,136,163号(本明細書に参考としてそのまま含まれる)に記載されている。
時間の延長された期間にわたって有効なアンチファウリング剤であるとわかり、上記(ii)f)から選ばれる好ましい化合物は、式(Va)の2-イソプロピル-N-2,3-トリメチルブタンアミド(市販のWS-23としてまた知られている)である。
【0028】
【化13】

上記(ii)f)の化合物は、公知であり、米国特許第4,230,688号(本明細書に参考としてそのまま含まれる)に記載されている。
メントール及び/又はイソプレゴール対ii)a)〜f)にリストされた化合物の合計の重量比は、典型的には20:1〜1:5、好ましくは10:1〜1:2である。メントール及びイソプレゴールが組成物中に一緒に使用される場合、メントール:イソプレゴールの比は典型的には1:10〜10:1、好ましくは1:5〜5:1の範囲にある。
好ましい実施態様において、メントール、イソプレゴール及びメントールプロピレングリコールカーボネートの組み合わせが、使用され、イソプレゴール:メントールの比が3:1〜1:2であり、メントールプロピレングリコールカーボネート:イソプレゴールの比が2:1〜1:5である。特に好ましい実施態様において、メントールプロピレングリコールカーボネート:イソプレゴール:メントールの比が約1:2:1である。
本発明に使用される化合物は既知の合成経路を使用して容易に入手し得る出発物質から合成されてもよく、又は市販されている。
必要により、本発明の組成物はJ. Agric. Food Chem. 49, 5383-5390 (2001)に記載されたような、環状アルファ-ケトエナミン、好ましくは5-メチル-4-(1-ピロリジニル)-3-〔2H〕-フラノン、4,5-ジメチル-3-(1-ピロリジニル)-2〔5H〕-フラノン及び4-メチル-3-(1-ピロリジニル)-2〔5H〕-フラノンを含んでもよい。
メントール及び/又はイソプレゴール並びに上記ii)a)〜f)にリストされた化合物は、単一アンチファウリング剤として通常の塗料組成物に含まれてもよく、又はその他のアンチファウリング剤、殺生物剤、抗生物質、及び天然の製品又は抽出物と組み合わせて添加されてバイオファウリング生物の付着に対して累積的又は相乗的効果を生じ得る。(無毒性の)アンチファウリング剤の例として、デカラクトン、アルファ-アンゲリカラクトン、アルファ-サントニン、アルファ-メチル-ガンマ-ブチルラクトン及びアラントラクトンが挙げられる。例示の殺生物剤(殺菌剤及び殺藻類剤)として、イソチアゾロン(例えば、Sea Nine-211)、亜鉛オマジン(登録商標)(2-ピリジンチオール-1-オキサイド、亜鉛錯体)、クロロタロニル、及びトリアジン殺藻類剤が挙げられる。好適な抗生物質の典型例はテトラサイクリンであり、これは登録されたアンチファウラントである。
【0029】
メントール及び/又はイソプレゴール並びに上記ii)a)〜f)にリストされた化合物はまた有機金属アンチファウラント、例えば、トリブチルスズもしくはトリフェニルスズ、又は無機アンチファウラント、例えば、酸化亜鉛もしくは酸化銅(I)と組み合わされて所定の被覆材料中のこのような毒性アンチファウラントの合計量を減少し得る。
本発明の組成物のフィルム形成成分は表面が沈められる場合に保護すべき表面に容易に適用され、付着するあらゆる成分又は成分の組み合わせであってもよい。特別な適用について選ばれる特定のフィルム形成成分は保護すべき物品の材料及び構造並びにその性能要件に応じて変化するであろう。表面に本発明の保護被覆物が施された後に、被覆物中に存在する活性成分メントール及び/又はイソプレゴール並びにii)a)〜f)にリストされた少なくとも一種の化合物、例えば、グループii)c)の化合物がバイオファウリング生物と接触し、それによりそれらの付着を防止する。種々の合成ポリマーがこの目的に有益である。好適なポリマー樹脂の例として、不飽和ポリマー樹脂、ビニルエステル、酢酸ビニル、及び塩化ビニルをベースとする樹脂並びにウレタンをベースとする樹脂が挙げられる。不飽和ポリエステル樹脂は不飽和酸及び酸無水物、飽和酸及び酸無水物、グリコール、並びにグリコールモノマーから生成される。好ましいフィルム形成成分は天然ロジン及び塩化ビニル-酢酸ビニルコポリマーの混合物である。本発明の実施に適している商用の船用塗料ビヒクルはアメロン・インターナショナル(パサデナ、CA)の製品であるアメーロック698である。匹敵する船用塗料ビヒクルがまたJotan, AS(サンデフォード、ノルウェー)から入手し得る。
【0030】
本発明の被覆組成物は、一種以上の望ましい性質、例えば、増大又は低下された硬度、強度、増大又は低下された剛性、低減された薬物、増大又は低下された透過性、又は改良された耐水性を与えるように、メントール及び/又はイソプレゴール並びに上記ii)a)〜f)にリストされた化合物、及びフィルム形成成分に加えて成分を含んでもよい。このような性質を付与するための特別な成分又は成分のグループの選択は当業者の能力内にある。
本発明の被覆組成物は種々の塗料配合物中に使用されてもよく、船用塗料が好ましい。
バイオファウリング物質に対する有効な保護に必要とされる被覆組成物中の、活性薬剤(それは単一化合物又は混合物であってもよい)、即ち、ii)a)〜f)にリストされた一種以上の化合物、特に上記グループii)c)の一種以上の化合物及び、好ましくは、メントール及び/又はイソプレゴールの%は活性薬剤それ自体、フィルム形成剤の化学的性質だけでなく、活性薬剤の有効性に影響し得る組成物中に存在するその他の添加剤に応じて変化し得る。一般に、活性薬剤は被覆組成物の約0.01重量%〜約50重量%、好ましくは組成物の約0.1重量%〜約10重量%を構成する。
上記ii)a)〜f)にリストされた化合物及び、存在する場合の、メントール及び/又はイソプレゴールは塗料/被覆物製造方法中に無毒性塗料、被覆組成物又は塗料配合物に含まれてもよく、又は使用の時点で塗料/被覆物ベース混合物に添加されてもよい。メントール及び/又はイソプレゴール(存在する場合)及び上記ii)a)〜f)にリストされた化合物は、フィルム形成成分に単に混合し得る。これは“自由会合”被覆物として知られており、これはフィルム形成成分からのメントール及び/又はイソプレゴール並びに上記ii)a)〜f)にリストされた化合物の滲出を可能にする。アンチファウリング剤は“融蝕性又は自己艶出被覆物”として知られている、樹脂に共有結合されてもよく、その結合が海水中で加水分解した後にのみ放出される。調節された加水分解は遅い放出速度を可能にするとともに、親水性部位を樹脂に生じる。結合されたメントール及び/又はイソプレゴール並びに上記ii)a)〜f)にリストされた化合物の新しい層は、その後に、加水分解された層が洗い去られる時に露出される。また、Tillerら, Proc. Natl. Acad. Sci., 2001, 98, 5981-5985(その全内容が参考として本明細書に含まれる)を参照のこと。更に、メントール及び/又はイソプレゴール(存在する場合)並びに上記ii)a)〜f)にリストされた化合物はまた被覆物のマトリックスへの化合物の調節された放出を可能にし、それにより被覆物の有効性を延長し、かつアンチファウリング効果を生じるのに必要な化合物の量を減少する除放性材料とともに混入されてもよい。このような除放性材料へのカプセル化はまた被覆物の苛酷な化学的環境からメントール及び/又はイソプレゴール並びに上記ii)a)〜f)にリストされた化合物を保護し、またそれらが分解を受け易かったとしても、樹脂中に閉じ込められている間に化合物の分解を減少するであろう。これらの除放性材料の例として、a)金属シリンダー又は1,2-ビス-(10,12-トリコサジノイル)-グリセル-3-ホスホコリンの如き変性分子を含むミクロシリンダー、(b)リポソーム、及び(c)シクロデキストリンが挙げられる。
【0031】
作用のメカニズムに関する特別な理論に束縛されたくないが、本発明の被覆組成物の活性薬剤、即ち、メントール及び/又はイソプレゴール並びに上記ii)a)〜f)にリストされた化合物の少なくとも一種は、バイオファウリング生物を排斥する環境を被覆された基材の表面に生じ、それにより被覆された表面におけるそれらの付着及び成長を防止することにより機能すると考えられる。これに関して、メントール及び/又はイソプレゴール並びに上記ii)a)〜f)にリストされた化合物は、走化性を誘発する汚損生物の冷受容体と相互作用することによりアンチファウラントとして作用すると推測される。この相互作用は永久であることは必要とされず、それ故、アンチファウラント活性を示すためにメントール及び/又はイソプレゴール並びに上記ii)a)〜f)にリストされた化合物が不可逆的に消費されることは必要ではないと考えられる。それ故、メントール及び/又はイソプレゴール並びに上記ii)a)〜f)にリストされた化合物をフィルム形成剤に共有結合し、それによりアンチファウラント成分が海洋環境に放出されない被覆物を得ることが望ましいであろう。しかしながら、微生物に対する抑制効果は吸入、呼吸、消化又は微生物による活性薬剤の吸収により生じられてもよい。
また、(i)メントール及び/又はイソプレゴール、(ii)上記ii)a)〜f)にリストされた少なくとも一種の化合物、及び(iii)フィルム形成剤を含む被覆物で被覆された表面を有するあらゆる物品が本発明の範囲内にある。本発明の被覆された物品はバイオファウリング生物が付着し易いあらゆる材料、例えば、金属、木材、コンクリート、プラスチック、複合材料及び石を含み得る。このような生物の付着及び生長を抑制する被覆物から利益を受け得る物品の代表例として、ボート及び船、特にそれらの船体、魚網、係留設備、例えば、桟橋及びくい、ブイ、海洋リギング装置、水分配系のための取水スクリーン並びに装飾性又は機能性のセメント又は石フォーメーションが挙げられる。
【0032】
本発明の更なる局面は以下のものである。
−アンチファウリング剤としての、上記ii)a)〜f)にリストされた化合物のいずれか、及びこれらの混合物からなる群から選ばれた化合物の使用。
−水性環境に暴露された表面を前記水性環境中に存在する汚損生物から保護するための(a)上記ii)a)〜f)にリストされた化合物のいずれか、及びこれらの混合物からなる群から選ばれた化合物、もしくは(b)本発明の塗料もしくは被覆組成物又は(c)本発明の塗料の使用。
−水性環境に暴露された表面を前記水性環境中に存在する汚損生物から保護するための船用塗料組成物を製造するための、上記ii)a)〜f)にリストされた化合物のいずれか、及びこれらの混合物からなる群から選ばれた化合物の使用。
−前記使用において、化合物はメントールグリコールカーボネート(IIa)、メントールプロピレングリコールカーボネート(IIb)、メントールグリセリンカーボネート(IIc)、l-メンチルラクテート、メントングリセリンアセタール、N-エチル-p-メンタン-3-カルボキサミド、2-イソプロピル-N-2,3-トリメチルブタンアミド、メンチルメトキシアセテート、メンチル3,6-ジオキサヘプタノエート、及びこれらの混合物からなる群から選ばれることが好ましい。
【0033】
−a)上記ii)a)〜f)にリストされた化合物からなる群から選ばれた一種以上の化合物(特にグループii)からの化合物)、
フィルム形成剤、
必要により、一種以上の典型的な添加剤、及び
必要により、メントール及び/又はイソプレゴール
を含む船用塗料組成物であって、
船用塗料が基材に適用され、その後に基材が海水に暴露される場合に、成分a)及び、存在する場合の、d)の合計量が汚損生物を抑制又は防止するのに有効である、船用塗料組成物。
本発明の更なる局面が特許請求の範囲に記載されている。
(a)上記ii)a)〜f)にリストされた化合物からなる群から選ばれた一種以上の化合物及び(b)メントール及び/又はイソプレゴールの混合物の使用が好ましい。何とならば、このような混合物は相乗的に高められた活性を示すからである(下記の実施例2を参照のこと)。
下記の実施例は本発明を更に詳しく記載するために示される。これらの実施例は本発明の組成物、方法及び被覆された物品の特別な実施態様を単に説明することを目的にするものであり、本発明を限定すると何ら見なされるべきではない。これらの実施例はバイオファウリング生物の沈降を抑制する際の本発明の或る化合物の効力を測定するために行なわれた試験の結果を示す。
【実施例1】
【0034】
アンチファウリング試験方法
a.フジツボの収集及び培養
フジツボ、タテジマフジツボ(Balanus amphitrite Darwin)の成体を、ツチコリン、インドのセイント・マリー大学にあるサクレッド・ハート海洋研究センターから集めた。フジツボを砕き、ナウプリウス段階の幼生をRittschofら, J. Exp. Mar. Biol. Ecol., 82:131-146 (1984)の方法に従ってキプリド(cyprid)段階への培養のために集めた。キプリドはフジツボ幼生が表面に付着するのに応答能のある段階である。表面への付着後に、幼生がその後にフジツボへの変態を受ける。
b.沈降アッセイ
Rittschofら, J. Chem. Ecol., 11:551-563 (1985)により既に記載された方法を使用して、フジツボ沈降アッセイを行なった。簡単に言えば、ファルコン50x9mmプラスチックペトリ皿に33-35千分の1部(ppt)の塩度の濾過海水5mlを入れ、これに生後3日のキプリド段階の幼生を加えた。メントール及び/又はイソプレゴール及び/又は上記ii)a)〜f)にリストされた化合物を、海水を含む皿に種々の濃度で導入した。対照は試験化合物が加えられなかったこれらの皿により代表された。28℃で9時間にわたるインキュベーション後に、皿を解剖顕微鏡の下で調べて死亡率があるかどうかを測定した。次いで幼生を10%のホルマリンで殺し、付着された幼生及び付着されなかった幼生の数をカウントした。沈降データを皿の底に付着した幼生の%として表した。
沈降試験を使用して上記ii)a)〜f)にリストされた幾つかの異なる化合物の有効濃度を測定した。有効濃度(EC50)は試験サンプル中に存在するフジツボ幼生のキプリド段階の50%の沈降を抑制した濃度である。結果を表2及び表3に示す。
ラセミ体(±)の化合物を接頭辞rac-で表す。
【0035】
表1

【0036】
表2

【実施例2】
【0037】
(-)-メントール、rac-イソプレゴール及びl-メントールプロピレングリコールカーボネートを別々に、また組み合わせて含む船用塗料組成物を使用する汚損生物の抑制
竹フロート及びスタイロフォームフロートの層を使用して、浮遊プラットフォームを構築した。4インチx12インチx0.25インチ(1インチ=2.54cm)の寸法の試験パネルを収容するようにプラットフォームをホルダーで設計した。
殺生物有効量の酸化銅(I)を含み、その他の殺生物剤を含まない、第一実験塗料を調製し、これを対照として使用した。この組成物は40重量部の酸化銅(I)、10重量部の酸化鉄レッド、5重量部のキシレン、10重量部のブチルアルコール、5重量部のポリアミド樹脂、6重量部の可塑剤からなった。この組成物に、0.5重量%のrac-イソプレゴール、0.25重量%の(-)-メントール及び0.25重量%のl-メントールプロピレングリコールカーボネートの組み合わせを添加した(組成物A)。第二塗料組成物を、酸化銅(I)を含む同じ船用塗料ビヒクル(これに2重量%の(-)-メントールを添加した)から調製した(組成物B)。第三配合物を、同じ酸化銅(I)を含む船用塗料ビヒクル(これに2重量%のrac-イソプレゴールを添加した)からつくった(組成物C)。第四配合物を同じ酸化銅(I)を含む船用塗料ビヒクル(これに2重量%のl-メントールプロピレングリコールカーボネートを添加した)からつくった(組成物D)。
上記寸法を有する中実鉄パネルをこうして調製された塗料配合物で塗装し、浮遊プラットフォーム中のホルダーに入れ、78週の期間にわたってサン・ジオニシオ湾(フィリピン)のバイタック・コーブ(Bitac Cove)の中央付近に連続して沈めた。パネルを3ヶ月毎に数分にわたって調べ、写真撮影後に直ちに再度沈めた。78週後に、パネルを取り出し、検査した。パネルに付着したフジツボの数をカウントした。主要汚損生物として、フジツボ、バラナス・アンフィトライト・コムニス(Balanus amphitrite communis)、及び岩ガキ、クラッソストレア・クキュラータ(Crossostrea cuculata)が挙げられた。
得られたデータを下記の表3に示す。これらのデータはrac-イソプレゴール、(-)-メントール及びl-メントールプロピレングリコールカーボネートの夫々が夫々16.1%、12.2%及び23.4%の沈降率を有する有効なアンチファウリング剤であることを示す。その3種の化合物を夫々0.5%及び0.25%の低濃度で組み合わせて使用した場合、保護効果が2.0%の沈降率で一層明らかであった。
【0038】
表3

【0039】
以上の実施例はメントール及び/又はイソプレゴール並びに上記ii)a)〜f)にリストされた化合物を含む本発明の組成物が水中構造の表面(それに組成物が被覆物として適用されている)における汚損海洋藻類及びプランクトン生物の付着を防止するのに有効であることを明らかに示す。更に、これらのデータは本発明の組成物の長く持続する活性及び成分の互いの相乗効果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i) メントール及び/又はイソプレゴール、
(ii) 式(II)の化合物、
【化1】

(式中、
RaはC4-C20-アルキル、C5-C20-シクロアルキルもしくは-ヘテロシクロアルキル又はC5-C20-アルコキシ、C6-C12-アリール、C5-C10-ヘテロアリール或いはC7-C11-アラルキルを表し、
Rbはm+w・n価の脂肪族C1-C8基、脂環式もしくはヘテロ脂環式C3-C15基、芳香族脂肪族C7-C20基、アルコキシ又はアシルオキシを含む脂肪族C3-C15基を表し、
A及びBは互に独立に-O-、-S-又は-NH-を表し、
Yはヒドロキシ、C1-C10-アルコキシ、C2-C6-アシルオキシ、アミノ、メルカプト又は-O-Z-O-を表し、
ZはC1-6-アルキレンを表し、
wは基Yの原子価を表し、かつ
m及びnは互に独立に1から8までの整数を表し、但し、m+nの合計が12以下であることを条件とする)
及び
(iii) フィルム形成剤
を含むことを特徴とする塗料又は被覆組成物。
【請求項2】
前記式(II)の化合物が前記組成物の約0.01重量%から約50重量%までの量で存在する、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
式(II)の化合物がメントールグリコールカーボネート(IIa)、メントールプロピレングリコールカーボネート(IIb)又はメントールグリセリンカーボネート(IIc)である、請求項1又は2記載の組成物。
【請求項4】
メントール、イソプレゴール及びメントールプロピレングリコールカーボネートを含む、請求項1から3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の組成物を含むことを特徴とする塗料。
【請求項6】
船用塗料として配合される、請求項5記載の塗料。
【請求項7】
水性環境に暴露された表面を前記水性環境中に存在する汚損生物から保護するための請求項1から4のいずれかに記載の組成物又は請求項5もしくは6記載の塗料の使用。
【請求項8】
水性環境に暴露された表面を前記水性環境中に存在する汚損生物から保護する方法であって、前記表面にメントール及び/又はイソプレゴール並びに請求項1記載の式(II)の少なくとも一種の化合物を含む被覆物を適用することを特徴とする保護方法。
【請求項9】
前記被覆組成物がはけ塗、噴霧又は浸漬により前記表面に適用される、請求項8記載の方法。
【請求項10】
水中表面を有する物品であって、前記表面の少なくとも一部が請求項1から4のいずれかに記載の組成物又は請求項5もしくは6記載の塗料で被覆されていることを特徴とする前記物品。
【請求項11】
船郭又は魚網の形態の請求項10記載の物品。
【請求項12】
アンチファウリング剤としての請求項1記載の式(II)の化合物の使用。
【請求項13】
水性環境に暴露された表面を前記水性環境中に存在する汚損生物から保護するための請求項1記載の式(II)の化合物の使用。
【請求項14】
水性環境に暴露された表面を前記水性環境中に存在する汚損生物から保護するための船用塗料組成物を製造するための請求項1記載の式(II)の化合物の使用。
【請求項15】
(a)メントール、(b)イソプレゴール又は(c)メントールとイソプレゴールの混合物のアンチファウリング効果を相乗的に増進するための請求項1記載の式(II)の化合物の使用。
【請求項16】
請求項1記載の式(II)の化合物がメントールグリコールカーボネート(IIa)、メントールプロピレングリコールカーボネート(IIb)、メントールグリセリンカーボネート(IIc)、及びこれらの混合物からなる群から選ばれる、請求項12から15のいずれかに記載の使用。
【請求項17】
a)請求項1記載の式(II)の一種以上の化合物、
b)フィルム形成剤、
c)必要により、一種以上の典型的な添加剤、及び
d)必要により、メントール及び/又はイソプレゴール
を含む船用塗料組成物であって、
その船用塗料が基材に適用され、その後にその基材が海水に暴露される場合に、成分a)及び存在する場合のd)の合計量が汚損生物を抑制又は防止するのに有効であることを特徴とする船用塗料組成物。
【請求項18】
(i) メントール及び/又はイソプレゴール及び
(ii)
a)2〜6個の炭素原子を有する天然産ヒドロキシカルボン酸のメンチルエステル(これらは順に必要によりヒドロキシ基についてC1-C4カルボン酸によりエステル化されてもよい)、
b)式(I)の化合物:
【化2】

(式中、
R1は少なくとも1個、かつ3個以下のヒドロキシ基を有するC2-C6-アルキレン基を表し、かつ
R2及びR3は互に独立にC1-C10-アルキル(これは必要によりヒドロキシ、アミノ及びハロゲンを含む群からの1〜3個の基により置換されていてもよい)、もしくはC5-C7-シクロアルキル、又はC6-C12-アリールを表し、但し、R2及びR3の炭素原子の合計量が3個以上であることを条件とし、又は
R2及びR3は一緒になってアルキレン基(これは、基R2及びR3を有する炭素原子と一緒になって、5-7員環を形成する)を表し、このアルキレン基は、その一部について、C1-C6-アルキル基により置換されることが可能である)
d)式(III)の化合物:
【化3】

(式中、
RはHであり、かつkは1から4までの全数であり、又はRはCH3であり、かつkは0から4までの全数である)
e)式(IV)の化合物:
【化4】

(式中、
R'はH又はアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、ヒドロキシアルキル基、アルキニル基、アシルオキシアルキル基、アルコキシアルキル基、アミノアルキル基、アシルアミノアルキル基、カルボキシアルキル基或いは式-CpH2pCOOR'''(式中、-CpH2pは直鎖又は分岐鎖アルキレン基であり、pは1から6までの整数であり、かつR'''はC1-C8-アルキルである)のアルキルカルボキシアルキル基を表し、前記基の夫々は25個までの炭素原子を含み、かつ
R”はヒドロキシ基又はアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、ヒドロキシアルキル基、アルキニル基、アシルオキシアルキル基、アルコキシアルキル基、アミノアルキル基、アシルアミノアルキル基、カルボキシアルキル基或いは式-CpH2pCOOR'''(式中、-CpH2pは直鎖又は分岐鎖アルキレン基であり、pは1から6までの整数であり、かつR'''はC1-C8-アルキルである)のアルキルカルボキシアルキル基を表し、前記基の夫々は25個までの炭素原子を含み、但し、R'が水素である場合、R”はまたベンジル及び置換フェニル(その置換基はC1-C4アルキル、ヒドロキシ及びC1-C4-アルコキシ、ニトロ及びハロゲンから選ばれる)から選ばれた10個までの炭素原子のアリール基であってもよいことを条件とする)
f)式(V)の化合物:
【化5】

(式中、
R#はC1-C5-アルキル、C1-C8-ヒドロキシアルキル又は6個までの炭素原子を有するアルキルカルボキシアルキルであり、
RXは水素又はC1-C5-アルキルであり、かつ
RY及びRZは独立にC1-C5-アルキルであり、
但し、RX、RY及びRZは一緒になって合計で少なくとも5個の炭素原子、好ましくは5-10個の炭素原子を与えることを条件とし、かつ
RXが水素である場合、RYはC2-C5-アルキルであり、かつRZはC3-C5-アルキルであり、かつRY及びRZの少なくとも一つは、好ましくは式(V)中のマークされた炭素原子(*)に対しα位又はβ位で、分岐されている)
からなる群から選ばれた化合物、及び
(iii) フィルム形成剤
を含むことを特徴とする塗料又は被覆組成物。
【請求項19】
前記化合物が前記組成物の約0.01重量%から約50重量%までの量で存在する、請求項18記載の組成物。
【請求項20】
上記(ii)a)から選ばれた化合物がl-メンチルラクテートである、請求項18記載の組成物。
【請求項21】
上記(ii)b)から選ばれた化合物がメントングリセリンアセタールである、請求項18記載の組成物。
【請求項22】
上記(ii)e)から選ばれた化合物がN-エチル-p-メンタン-3-カルボキサミドである、請求項18記載の組成物。
【請求項23】
上記(ii)f)から選ばれた化合物が2-イソプロピル-N-2,3-トリメチルブタンアミドである、請求項18記載の組成物。
【請求項24】
請求項18から23のいずれかに記載の組成物を含むことを特徴とする塗料。
【請求項25】
船用塗料として配合される、請求項24記載の塗料。
【請求項26】
水性環境に暴露された表面を前記水性環境中に存在する汚損生物から保護するための請求項18から23のいずれかに記載の組成物又は請求項24もしくは25記載の塗料の使用。
【請求項27】
水性環境に暴露された表面を前記水性環境中に存在する汚損生物から保護する方法であって、前記表面にメントール及び/又はイソプレゴール並びに請求項18のii)a)〜f)にリストされた少なくとも一種の化合物を含む被覆物を適用することを特徴とする保護方法。
【請求項28】
前記被覆組成物がはけ塗、噴霧又は浸漬により前記表面に適用される、請求項27記載の方法。
【請求項29】
水中表面を有する物品であって、前記表面の少なくとも一部が請求項18から23のいずれかに記載の組成物で被覆されていることを特徴とする前記物品。
【請求項30】
船郭又は魚網の形態の請求項29記載の物品。
【請求項31】
アンチファウリング剤としての請求項18のii)a)〜f)にリストされた化合物のいずれか、及びこれらの混合物からなる群から選ばれた化合物の使用。
【請求項32】
水性環境に暴露された表面を前記水性環境中に存在する汚損生物から保護するための、請求項18のii)a)〜f)にリストされた化合物のいずれか、及びこれらの混合物からなる群から選ばれた化合物の使用。
【請求項33】
水性環境に暴露された表面を前記水性環境中に存在する汚損生物から保護するための船用塗料組成物を製造するための、請求項18のii)a)〜f)にリストされた化合物のいずれか、及びこれらの混合物からなる群から選ばれた化合物の使用。
【請求項34】
(a)メントール、(b)イソプレゴール又は(c)メントールとイソプレゴールの混合物のアンチファウリング効果を相乗的に増進するための、請求項18のii)a)〜f)にリストされた化合物のいずれか、及びこれらの混合物からなる群から選ばれた化合物の使用。
【請求項35】
化合物がl-メンチルラクテート、メントングリセリンアセタール、N-エチル-p-メンタン-3-カルボキサミド、2-イソプロピル-N-2,3-トリメチルブタンアミド、メンチルメトキシアセテート、メンチル3,6-ジオキサヘプタノエート、及びこれらの混合物からなる群から選ばれる、請求項31から34のいずれかに記載の使用。
【請求項36】
a)請求項18のii)a)〜f)にリストされた化合物からなる群から選ばれた一種以上の化合物、
b)フィルム形成剤、
c)必要により、一種以上の典型的な添加剤、及び
d)必要により、メントール及び/又はイソプレゴール
を含む船用塗料組成物であって、
その船用塗料が基材に適用され、その後にその基材が海水に暴露される場合に、成分a)及び存在する場合のd)の合計量が汚損生物を抑制又は防止するのに有効であることを特徴とする船用塗料組成物。

【公表番号】特表2006−522845(P2006−522845A)
【公表日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−505042(P2006−505042)
【出願日】平成16年4月7日(2004.4.7)
【国際出願番号】PCT/EP2004/003710
【国際公開番号】WO2004/090052
【国際公開日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(591278585)ジムリス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディットゲゼルシャフト  (14)
【Fターム(参考)】