説明

無滴性付与組成物

【課題】無滴性付与組成物とそれを含有する無滴性、透明性、防塵性及び耐ベタつき性に優れた樹脂組成物、特に農業用樹脂フィルムを提供すること。
【解決手段】(A)ソルビトール1モルに対し、飽和脂肪酸1〜3モルを反応させた脂肪酸エステルであって、ガスクロマトグラフィー測定による1,4−ソルビタン脂肪酸エステル由来のピーク面積の割合が30〜50%である脂肪酸エステル1モルに対し、プロピレンオキサイドを0.1〜1.0モル反応させることによって得られる、融点が40℃以上の非イオン界面活性剤30〜60質量%、(B1)融点30℃以下の脂肪酸ジエタノールアミド等10〜40質量%及び(C1)融点40℃以上の脂肪酸ジエタノールアミド等30〜60質量%とからなる無滴性付与組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無滴性付与組成物及びそれを含有する樹脂組成物と農業用樹脂フィルムに関するものであり、更に詳しくは低温時の無滴性、高温での無滴持続性、製膜時の透明性、保管時の透明性、防塵性及び耐ベタつき性に優れた無滴性付与組成物及びそれを含有する樹脂組成物と農業用樹脂フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来野菜類を栽培するに当たりポリエチレンや塩化ビニルといった樹脂フィルムを被覆材として使用することによって気温の低い時期でも栽培を可能にする方法が採られている。この場合使用する樹脂フィルムは太陽光線を常時透過させる必要があることから樹脂フィルム表面に水分による曇りの発生を防止するためにあらかじめ無滴性付与剤を練り込む方法が採られている。この無滴性付与剤としては、ポリエチレングリコール、グリセリン、ソルビタン、ソルビトール等の高級脂肪酸エステル、及びこれらの高級脂肪酸エステルにエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドを付加した非イオン界面活性剤が用いられてきた。
【0003】
例えば、特許文献1には、無滴性付与剤としてソルビタン脂肪酸エステルにエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドを付加させた化合物が提案されている。又、特許文献2には、アルキルジ(ポリオキシアルキレン)アミンのエステル化合物Aと融点35℃以下の化合物Bが防曇剤として用いられている。又、特許文献3にはアルキルジエタノールアミドとソルビタン(又はソルビトール)の脂肪酸エステルのエチレンオキサイド付加物からなる防曇剤混合成分が用いられている。特許文献4には、ジグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを混合した防曇性付与剤と帯電防止剤組成物としてアルキルジエタノールアミン、脂肪酸ジエタノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン脂肪酸エステル等を配合した配合物が防曇剤として用いられている。
【0004】
しかしながら、これらの従来技術では防曇剤のブリードアウト過多に起因するベタつきや、夏場に無滴性が十分に持続しないといった問題があり、この点を改良しようとすると低温下での無滴性等が損なわれてしまうため、これらの諸性能の全てにおいてバランスのとれた農業用樹脂フィルムは未だに得られていないのが現状である。
【特許文献1】特開昭57−3847号公報(第1−5頁)
【特許文献2】特開平11−263887号公報(第1−15頁)
【特許文献3】特許3868893号公報(第1−20頁)
【特許文献4】特開2006−161012号公報(第1−8頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は農業用無滴性樹脂フィルムに要求される、冬場(低温時)の無滴性(低温濡れ性)、夏場(高温時)の無滴性の持続性(高温持続性)、展張直後の無滴性(初期濡れ性)、製膜時の透明性(透明性)、保管後の透明性(経時透明性)、防塵性及び耐ベタつき性のすべてを満足する無滴性付与剤と農業用無滴性樹脂フィルムを提供することである。
【0006】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究した結果、ソルビトール若しくはその脂肪酸エステルの分子内脱水により生成する1,4−ソルビタン脂肪酸エステルの割合が特定量である融点40℃以上のポリオキシプロピレンソルビトール系脂肪酸エステル、融点30℃以下の脂肪酸ジエタノールアミド又は特定のポリオキシエチレンアルキル(又はアルケニル)アミン、融点40℃以上の脂肪酸ジエタノールアミド又は特定のアミンエステル化合物からなる無滴性付与組成物を農業用樹脂フィルムに対して使用したところ、得られた樹脂フィルムは前述の無滴性、透明性、防塵性及び耐ベタつき性に優れることを見出し、本発明を完成させたものである。
【0007】
即ち本発明は、(A)ソルビトール1モルに対し、飽和脂肪酸1〜3モルを反応させた脂肪酸エステルであって、ガスクロマトグラフィー測定による1,4−ソルビタン脂肪酸エステル由来のピーク面積の割合が30〜50%である脂肪酸エステル1モルに対し、プロピレンオキサイドを0.1〜1.0モル反応させることによって得られる、融点が40℃以上の非イオン界面活性剤30〜60質量%、(B1)融点30℃以下の脂肪酸ジエタノールアミド、又は(B2)アルキルアミン若しくはアルケニルアミン1モルに対し、エチレンオキサイドを2〜3モル付加させて得られる融点30℃以下のポリオキシエチレンアルキルアミン、若しくはポリオキシエチレンアルケニルアミン10〜40質量%及び(C1)融点40℃以上の脂肪酸ジエタノールアミド、又は(C2)アルキルアミン1モルに対し、エチレンオキサイドを2〜3モル付加させて得られるポリオキシエチレンアルキルアミン1モルと飽和脂肪酸を1〜2モル反応させて得られる融点40℃以上のアミンエステル化合物30〜60質量%とからなる無滴性付与組成物に関するものである。
【0008】
本発明はまた、前記無滴性付与組成物を0.1〜5.0質量%含有することを特徴とする樹脂組成物にも関するものである。
【0009】
本発明はまた、前記樹脂組成物からなる農業用樹脂フィルムにも関するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係わる組成物を使用すると、得られた農業用樹脂フィルムは低温濡れ性、高温持続性、初期濡れ性、透明性、防塵性及び耐ベタつき性に優れることが判った。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下本発明を詳細に説明する。
【0012】
本発明に使用される(A)非イオン界面活性剤は、ソルビトール1モルに対し、飽和脂肪酸1〜3モル、好ましくは1〜2モル反応させた脂肪酸エステルであって、ガスクロマトグラフィー測定による1,4−ソルビタン脂肪酸エステル由来のピーク面積の割合が30〜50%、好ましくは40〜45%である脂肪酸エステル1モルに対し、プロピレンオキサイドを0.1〜1.0モル反応させることによって得られるものである。ここで、脂肪酸エステル中の1,4−ソルビタン脂肪酸エステルの量を前記範囲内としたものを使用するのは、防曇剤として本来的に求められる無滴性等を維持しつつ、防塵性等を確保するためである。(A)非イオン界面活性剤の製造方法は公知の方法でよく、例えばソルビトールに飽和脂肪酸をアルカリ触媒の存在下、脱水反応を行って得られたソルビトール系脂肪酸エステルに対し、アルカリ触媒存在下加圧条件でプロピレンオキサイドを付加させることにより得られるものである。
【0013】
また、前記(A)非イオン界面活性剤は融点が40℃以上のものである。融点が40℃に満たないと、これを使用した農業用樹脂フィルムの高温持続性、耐ベタつき性を損なうからである。具体的には、ポリオキシプロピレン(0.1〜1.0モル)ソルビトール(又はソルビタン)ステアリン酸(1〜3モル)エステル、ポリオキシプロピレン(0.1〜1.0モル)ソルビトール(又はソルビタン)パルミチン酸(1〜3モル)エステル、ポリオキシプロピレン(0.1〜1.0モル)ソルビトール(又はソルビタン)ベヘニン酸(1〜3モル)エステル等が挙げられ、これらの2種以上を混合して使用してもよい。
【0014】
本発明の無滴性付与組成物における(A)成分の比率は、30〜60質量%であるが、好ましくは35〜50質量%である。30質量%より少ないと高温持続性、耐ベタつき性を損ない、逆に60質量%を超えると低温濡れ性、初期濡れ性、透明性、防塵性を損なうからである。
【0015】
本発明に使用される(B1)成分の融点30℃以下の脂肪酸ジエタノールアミドとしては、ヘキサン酸ジエタノールアミド、ヘプタン酸ジエタノールアミド、オクタン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド等が挙げられ、更に牛脂脂肪酸ジエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、パーム油脂肪酸ジエタノールアミド、大豆油脂肪酸ジエタノールアミド等の混合脂肪酸も挙げられる。これらの中ではオレイン酸ジエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミドが好ましい。また、これらの2種以上を混合して使用してもよい。
【0016】
本発明に使用される(B2)成分のアルキルアミン若しくはアルケニルアミン1モルに対し、エチレンオキサイドを2〜3モル付加させて得られる融点30℃以下のポリオキシエチレンアルキルアミン、若しくはポリオキシエチレンアルケニルアミンとしては、ポリオキシエチレン(2〜3モル)オクチルアミン、ポリオキシエチレン(2〜3モル)ラウリルアミン、ポリオキシエチレン(2〜3モル)オレイルアミン等が挙げられ、更にポリオキシエチレン(2〜3モル)ヤシ油アルキルアミン、ポリオキシエチレン(2〜3モル)牛脂アルキルアミン等の混合脂肪族アミン等も挙げられる。これらの中ではポリオキシエチレン(2モル)ラウリルアミン、ポリオキシエチレン(2モル)ヤシ油アルキルアミン、ポリオキシエチレン(2.5モル)牛脂アルキルアミンが好ましい。また、これらの2種以上を混合して使用してもよい。
【0017】
本発明に使用される(B1)ないし(B2)成分の融点を30℃以下としているのは、融点が30℃を超えると、これを使用した農業用樹脂フィルムの低温濡れ性、初期濡れ性、透明性、防塵性を損なうからである。
【0018】
本発明の無滴性付与組成物における(B1)ないし(B2)成分の比率は10〜40質量%であるが、好ましくは15〜30質量%である。10質量%より少ないと低温濡れ性、初期濡れ性、透明性、防塵性を損ない、逆に40質量%を超えると高温持続性、耐ベタつき性を損なうからである。
【0019】
本発明に使用される(C1)成分の融点40℃以上の脂肪酸ジエタノールアミドとしては、ラウリン酸ジエタノールアミド、ミリスチン酸ジエタノールアミド、パルミチン酸ジエタノールアミド、ステアリン酸ジエタノールアミド、ベヘニン酸ジエタノールアミド等が挙げられ、これらの中ではパルミチン酸ジエタノールアミド、ステアリン酸ジエタノールアミドが好ましい。また、これらの2種以上を混合して使用してもよい。
【0020】
本発明に使用される(C2)成分のアルキルアミン1モルに対し、エチレンオキサイドを2〜3モル付加させて得られたポリオキシエチレンアルキルアミン1モルと飽和脂肪酸を1〜2モル反応させて得られる融点40℃以上のアミンエステル化合物としては、ポリオキシエチレン(2〜3モル)パルミチルアミンステアリン酸(1〜2モル)エステル、ポリオキシエチレン(2〜3モル)ステアリルアミンステアリン酸(1〜2モル)エステル、ポリオキシエチレン(2〜3モル)ステアリルアミンパルミチン酸(1〜2モル)エステル、ポリオキシエチレン(2〜3モル)パルミチルアミンベヘニン酸(1〜2モル)エステル、ポリオキシエチレン(2〜3モル)ステアリルアミンベヘニン酸(1〜2モル)エステル等が挙げられる。これらの中ではポリオキシエチレン(2〜3モル)ステアリルアミンステアリン酸(1〜2モル)エステル、ポリオキシエチレン(2〜3モル)ステアリルアミンパルミチン酸(1〜2モル)エステルが好ましい。また、これらの2種以上を混合して使用してもよい。
【0021】
本発明に使用される(C)成分の融点を40℃以上としているのは、融点が40℃に満たないと、これを使用した農業用樹脂フィルムの高温持続性、耐ベタつき性を損なうからである。
【0022】
本発明の無滴性組成物における(C)成分の比率は30〜60質量%であるが、好ましくは35〜50質量%である。比率が30質量%より少ないと高温持続性、防塵性、耐ベタつき性を損ない、逆に60質量%を超えると低温濡れ性、初期濡れ性、透明性を損なうからである。
【0023】
かくして得られた無滴性付与組成物の樹脂に対する含有量は、0.1〜5.0質量%が好ましいが、1.0〜3.0質量%であればより好ましい。含有量が少なすぎると所望の効果は得られず、多すぎると透明性、ベタつき性を損なうからである。
【0024】
本発明に用いる樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン等のオレフィン単独重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体、エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体等のオレフィンの共重合
体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体等のオレフィンと極性ビニル化合物との共重合体、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、アイオノマー樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、フェノール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂等を例示することが出来るが、特にポリオレフィン系樹脂に有用である。
【0025】
本発明の無滴性付与組成物は樹脂フィルムを製造する際、従来使用されていた無滴剤や公知の安定剤や可塑剤と併用でき、又無滴防霧性を得るため公知のフッソ系、シリコーン系防霧剤と併用することも可能である。公知のフッソ系防霧剤としては、従来から使用されているフッソ系界面活性剤或いは共重合オリゴマーを使用することができ、単独或いは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
本発明の無滴性付与組成物は、前記3成分の相乗効果により、冬場(低温時)の無滴性(低温濡れ性)、夏場(高温時)の無滴性の持続性(高温持続性)、展張直後の無滴性(初期濡れ性)、製膜時の透明性(透明性)、保管後の透明性(経時透明性)、防塵性及び耐ベタつき性のバランスをとることが可能になった。
【0027】
なお、本発明の農業用樹脂フィルムは単層で使用しても2種以上の樹脂を積層で使用しても良い。
【実施例】
【0028】
次に本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はその趣旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0029】
<ポリオキシプロピレンソルビトール系脂肪酸エステルの合成例>
ステンレス製オートクレーブに工業用ソルビトール1.0モル、ステアリン酸1.0モルを仕込み、Nガスを導入しつつ塩基性触媒下220〜250℃に昇温し5時間エステル化反応を行いソルビトール系ステアリン酸エステルを合成した。得られたソルビトール系ステアリン酸エステルを少量サンプリングし、下記の方法にて加水分解後親水基組成をガスクロマトグラフ分析により、1,4−ソルビタン含有量が45%であることを確認した。この後、N置換を行いプロピレンオキサイド0.5モルを140℃、3時間を要して付加し、これをリン酸中和して黄褐色固体状のポリオキシプロピレン(0.5モル)ソルビトール系ステアリン酸(1.0モル)エステル(A−1)を得た。本合成物(A−1)を後記のテストに供する。これと同様に、本発明化合物ポリオキシプロピレンソルビトール系脂肪酸エステル(A−2)、(A−3)及び比較化合物(A’−1)〜(A’−3)の合成を表1の如く行った。得られた本発明化合物(A−2)、(A−3)及び比較化合物(A’−1)〜(A’−3)についても後記のテストに供する。
【0030】
【表1】

【0031】
<1,4−ソルビタンの割合の算出方法>
ソルビトール系脂肪酸エステルを少量サンプリングし、濃硫酸により親水基部位と疎水
基部位とに加水分解後、親水基組成を以下のガスクロマトグラフ条件にて定量測定した。
使用装置:島津製作所(株)製 GC−14B
使用カラム:Silicone SE−30 10% Chromosorb WAW (SUS 3Φ×2m)
検出器温度:325℃
カラム温度:150〜280℃(昇温速度 10℃/min)
測定したガスクロマトグラフのピーク面積より、1,4−ソルビタン成分の比率を算出した。
【0032】
<融点測定法>
本発明化合物(A−1)〜(A−3)及び比較化合物(A’−1)〜(A’−3)の融点をDSC法(DSC6220:セイコーインスツルメンツ(株)製)にて測定した。また、後記化合物の融点も本測定法にて実施した。
【0033】
<ポリオキシエチレンアルキル(又はアルケニル)アミンの合成例>
ステンレス製オートクレーブにラウリルアミンを1モル仕込み、N置換を行いエチレンオキサイド2.0モルを155℃、2時間を要して付加し、ラウリルジエタノールアミン(B2−1)を得た。本発明化合物(B2−1)を後記のテストに供する。これと同様に、融点30℃以下のポリオキシエチレンアルキル(又はアルケニル)アミン(B2−2)、(B2−3)及び比較化合物(B2’−1)、(B2’−2)の合成を表2の如く行った。得られた本発明化合物(B2−2)、(B2−3)及び比較化合物(B2’−1)、(B2’−2)についても後記のテストに供する。
【0034】
【表2】

【0035】
<ポリオキシエチレンアルキルアミン脂肪酸エステルの合成例>
ステンレス製オートクレーブにステアリルアミンを1モル仕込み、N置換を行いエチレンオキサイド2.0モルを155℃、2時間を要して付加し、ステアリルジエタノールアミンを合成した。この後、ステアリン酸1.0モルを仕込み、Nガスを導入しつつ160℃に昇温し5時間エステル化反応を行いポリオキシエチレン(2)ステアリルアミンステアリン酸エステル(C2−1)を合成した。本発明化合物(C2−1)を後記のテストに供する。これと同様に、融点40℃以上のアミンエステル化合物(C2−1)、(C2−3)及び比較化合物(C2’−1)、(C2’−2)の合成を表3の如く行った。得られた(C2−2)、(C2−3)及び(C2’−1)、(C2’−2)についても後記のテストに供する。
【0036】
【表3】

【0037】
【表4】

【0038】
<評価フィルムの作製>
実施例1〜9、比較例1〜5
エチレン−酢酸ビニル共重合体(MFR=1.5g/10min、VA=10)100質量部に表4に示した無滴性付与組成物1〜7、比較組成物1〜7を表5に示した添加量で配合し、溶解混合した。この樹脂をインフレーション製膜機より押し出し、厚さ50μmのインフレーションフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表5に表す。
【0039】
<無滴性の評価>
フィルムの無滴性評価は、下記の方法によって行い、表5の結果を得た。
1.低温濡れ性:上部傾斜箱にフィルムを張り、外気温: 5℃、水温:15℃、傾斜角
10度で12時間後までのフィルム濡れ状態を評価。
2.高温持続性:上部傾斜箱にフィルムを張り、外気温:20℃、水温:50℃、傾斜角 10度で1ヵ月後までのフィルム濡れ状態を評価。
・評価基準
◎:一面に均一に濡れ透明
○:ほぼ一面に均一に濡れ透明
△:一部透明部分もあるが全体に不透明
×:完全に不透明
3.初期濡れ性:上記1、2での6時間後までの濡れ状態を総合的に評価。
・評価基準 1劣 < 5優
【0040】
<透明性の評価>
各フィルムの製膜時及び6ヶ月保管後の透明性を目視判定し、表5の結果を得た。
・評価基準
◎:無添加のフィルムと同様で、表面が透明で白色粉状が認められない状態
○:表面がほぼ透明で白色粉状が認められない状態
△:白色粉状が析出している状態
×:白色の薄膜が表面を覆っている状態
【0041】
<防塵性の評価>
各フィルムを室外にて保管し、6ヶ月後の塵、埃の付着状態を目視判定し、表5の結果を得た。
・評価基準
◎:未使用品とほとんど変わらず、表面に塵、埃が認められない状態。
○:表面に若干の塵、埃が認められるが、透明性は阻害していない状態。
△:明らかな塵、埃が認められ、若干透明性を阻害している状態。
×:塵、埃が非常に多く、透明性を阻害している状態。
【0042】
<耐ベタつき性の評価>
各フィルム表面上の耐ベタつき性を触手により評価した。
・評価基準
○:無添加フィルムと同様でフィルムが全くベタつかない。
△:フィルムが若干ベタついているが、使用には問題ない。
×:使用不可能な程フィルムがベタついている。
【0043】
【表5】

【0044】
表5に示すように、本発明による無滴性付与組成物1〜7は、添加したフィルムの低温濡れ性、高温持続性、初期濡れ性、透明性、防塵性及び耐ベタつき性において非常に優れている性能を発揮することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ソルビトール1モルに対し、飽和脂肪酸1〜3モルを反応させた脂肪酸エステルであって、ガスクロマトグラフィー測定による1,4−ソルビタン脂肪酸エステル由来のピーク面積の割合が30〜50%である脂肪酸エステル1モルに対し、プロピレンオキサイドを0.1〜1.0モル反応させることによって得られる、融点が40℃以上の非イオン界面活性剤30〜60質量%、(B1)融点30℃以下の脂肪酸ジエタノールアミド、又は(B2)アルキルアミン若しくはアルケニルアミン1モルに対し、エチレンオキサイドを2〜3モル付加させて得られる融点30℃以下のポリオキシエチレンアルキルアミン、若しくはポリオキシエチレンアルケニルアミン10〜40質量%及び(C1)融点40℃以上の脂肪酸ジエタノールアミド、又は(C2)アルキルアミン1モルに対し、エチレンオキサイドを2〜3モル付加させて得られるポリオキシエチレンアルキルアミン1モルと飽和脂肪酸を1〜2モル反応させて得られる融点40℃以上のアミンエステル化合物30〜60質量%とからなる無滴性付与組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の無滴性付与組成物を0.1〜5.0質量%含有することを特徴とする樹脂組成物。
【請求項3】
請求項2に記載の樹脂組成物からなる農業用樹脂フィルム。

【公開番号】特開2009−51881(P2009−51881A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−217710(P2007−217710)
【出願日】平成19年8月24日(2007.8.24)
【出願人】(000221797)東邦化学工業株式会社 (188)
【Fターム(参考)】