説明

無線タグ、物品管理システムおよび物品管理方法

【課題】各国あるいは各地域といった各種のエリアで、それぞれの物品の管理のための通信を円滑に行うことのできる無線タグ、無線タグを使用した物品管理システムおよび物品管理方法を得ること。
【解決手段】物品101に取り付けられた無線タグ102は、たとえばGPS衛星109から電波を受信することで現在位置を取得する。無線タグ102内には各位置に対応した通信仕様のリストが格納されている。したがって、任意の地点の倉庫103にまで物品が移動してきたとき、その倉庫のリーダ・ライタ104の通信仕様を判別して通信を行うことで、必要な管理情報の受け渡しが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線タグ、無線タグを使用した物品管理システムおよび物品管理方法に係わり、特に異なった場所に移動して使用するのに好適な無線タグ、物品管理システムおよび物品管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線タグは無線を使用して所定の管理情報の通信を行うための半導体チップを使用したデバイスである。無線タグは、たとえば電車等の交通機関の乗降管理を行うカードとして広く使用されている。このようなカードを本明細書では、乗車管理カードと呼ぶことにする。
【0003】
ユーザは、電車を利用する場合、たとえばA駅の改札口で乗車管理カードを改札機の読み取り部にかざす。改札機には無線によって乗車管理カードの情報を読み取る「リーダ」と、必要な情報をこれに書き込む「ライタ」が用意されている。改札機は、乗車管理カードから乗車のために用意された金額等の所定の情報を読み取る。そして、乗車駅がA駅であることを示す情報が乗車管理カードに書き込まれる。ユーザがB駅で降車したとする。改札口の改札機を通過する際に、A駅で使用した乗車管理カードを改札機の読み取り部にかざす。すると、A駅から乗車したという情報が乗車管理カードから読み取られ、A駅とB駅を利用区間とする乗車区間の料金が、カードに蓄えられた残額から差し引かれる。乗車管理カードに割り当てられた金額の残高が一定額よりも低くなったときに自動的にクレジット決済する機能を付けることもできる。
【0004】
以上説明した乗車管理カードを使用する無線タグシステムでは、リーダとライタを併せたリーダ・ライタ機能を備えた改札機が現在位置あるいは乗降地に関する情報を管理している。また、その無線タグシステムで使用する通信仕様についてはリーダ・ライタ側を基準として定めている。ここで「通信仕様」とは、使用する無線による周波数、変調方式、復調方式等の仕様をいう。したがって、無線タグを使用したクレジットカードやホテルの会員カードといった他の「通信仕様」のカードを改札機にかざしても、改札機はこのカードとの間で管理情報の通信ができない。
【0005】
ところで、無線タグとリーダ・ライタの間の通信仕様は、国や地域によっても異なる場合がある。たとえば、現状では関東で使用される乗車管理カードを関西の改札機に持っていってもそのリーダ・ライタの通信仕様が異なるので、通信を行うことができない。
【0006】
電車やバスといった交通機関の乗車管理カード以外に使用される無線タグについても同様である。たとえば倉庫や店舗が商品に無線タグを付けて、これら商品の管理を行うものとする。倉庫や店舗の管理者は、国の一般的なまたは標準的な仕様を用いず、独自の仕様を設定して無線タグと通信を行うようにしている。
【0007】
たとえば、地域内食生活向上対策事業として提唱された地産地消の理念を基にして、限定した狭いエリアで移動する物があったとする。このような物を扱う倉庫や店舗の管理者は、独自の通信仕様を用いてこれらの物に付された無線タグを用いた物の管理が可能である。
【0008】
ところが、多くの物は国や地域といったエリアを越えて流通する。したがって、従来ではこれら広域を流通する物に無線タグを使用しても、目的とするエリアでこれをそのまま使用することができないという問題があった。この問題を解決するためには、該当するエリアまでその物が運ばれてきた時点で新たに無線タグを取り付けるか、その物の出発地点としてのエリアで、最終目的地のリーダ・ライタの通信仕様にあった無線タグを取り付ける必要があった。
【0009】
しかしながら、前者の方法を採ると、物が複数のエリアを移動する場合に、それぞれのエリアで無線タグを取り付けたり、取り換える必要がある。このため、手続きが煩雑になるだけでなく、価格の安い商品の場合には無線タグによる管理費の割合が高くなって、実用化できないという問題が生じた。
【0010】
また、後者の手法を採ると、物が複数のエリアを移動する場合に、最終目的地としてのエリアでのみその無線タグを使用した管理を行うことができる。したがって、たとえば最終目的地が日本の場合、日本に出荷する外国の空港や港で、あるいは現地の生産工場でその物を無線タグによって管理することができないという問題があった。
【0011】
そこで、無線タグを搬送対象となる個々の物品に貼付すると共に、情報処理装置を物品の搬送手段と一緒に移動させるようにして、この情報処理装置が取得した位置情報を管理サーバに通知する物品管理システムが本発明の関連技術として提案されている(たとえば特許文献1参照)。
【0012】
図14は、この関連技術による物品管理システムの概要を表わしたものである。物品管理システム800は、複数の物品からなる積み荷801の搬送手段の一例として、トラック802を使用している。トラック802には、所定個数の情報処理装置803が用意されている。積み荷801を構成する個々の物品には、図示しないがそれぞれに無線タグを貼付しており、情報処理装置803はこれらと通信が可能になっている。情報処理装置803はGPS(Global Positioning System)衛星804の複数から電波を受信して、現在位置を算出する機能を備えている。情報処理装置803は無線基地局805と無線で通信することができ、通信ネットワーク806を介して管理サーバ807と接続することができる。管理サーバ807は、複数の物品についての無線タグの情報を管理する。
【0013】
この関連技術の物品管理システム800では、情報処理装置803が複数の通信方式に対応できるように複数の通信カードを備えている。そして、GPS衛星804を基に得られた現在位置に応じて移動先の地域に対応した通信カードを選択する。これにより、地域を問わず無線タグと管理サーバ807間の適切な通信環境を確保することができ、国や地域を問わず、物品に貼り付けたタグと管理サーバ807間の良好なデータの送受信が可能になる。図14に示した例では、複数の物品からなる積み荷801の搬送手段としてトラック802を示したが、タンカや飛行機のような搬送手段であってもよい。
【特許文献1】特開2006−163611号公報(第0006段落、第0020段落、第0021段落、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
図14に示した物品管理システム800では、国や地域によって無線タグの通信仕様が異なることの問題を情報処理装置803による通信カードの切り替えによって解決している。しかしながら、この関連技術では、情報処理装置803を使用することで次のような問題が発生した。
【0015】
まず、積み荷801を構成する物品について、途中でこれらの一部の積み下ろし等の積み替えや、物品同士の場所の移動があると、情報処理装置803による個々の物品の管理が複雑になる。これは、複数の物品について集合管理が行われるからである。
【0016】
次に、情報処理装置803に負荷が集中する可能性がある。また、このような特別の情報処理装置803を1つの移動手段に所定台数ずつ用意することになって、物品管理システム800全体のコストアップにつながるという問題もあった。
【0017】
そこで本発明の目的は、各国あるいは各地域といった各種のエリアで、それぞれの物品の管理のための通信を円滑に行うことのできる無線タグ、無線タグを使用した物品管理システムおよび物品管理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明では、(イ)電波の受信により現在位置を演算する現在位置演算手段と、(ロ)予め定めた複数のエリアにおける通信仕様を定めたエリア・通信仕様記憶手段と、(ハ)このエリア・通信仕様記憶手段から前記現在位置演算手段によって演算した位置に対応するエリアの通信仕様を検索する通信仕様検索手段と、(ニ)この通信仕様検索手段で検索した通信仕様で管理対象の物品に関する所定の管理情報の通信を行う通信手段とを無線タグに具備させる。
【0019】
また、本発明では、(イ)複数の地点を移動の対象とする物品と、(ロ)前記物品に取り付けられ、電波の受信により現在位置を演算する現在位置演算手段と、予め定めた複数のエリアにおける通信仕様を定めたエリア・通信仕様記憶手段と、このエリア・通信仕様記憶手段から前記現在位置演算手段によって演算した位置に対応するエリアの通信仕様を検索する通信仕様検索手段と、この通信仕様検索手段で検索した通信仕様で管理対象の前記物品に関する通信を行う通信手段とを具備する無線タグと、(ハ)前記複数の地点にそれぞれ設けられ、前記エリア・通信仕様記憶手段に記憶された通信仕様に沿って前記無線タグと前記物品の管理に関する情報の通信を行う地点別通信手段とを物品管理システムに具備させる。
【0020】
更に本発明では、(イ)物品に取り付けられた無線タグに組み込まれた現在位置演算手段を用いて現在位置を取得する現在位置取得ステップと、(ロ)予め定めた複数のエリアにおける通信仕様を定めたエリア・通信仕様記憶手段を用いて、前記現在位置取得ステップで取得した現在位置に対応するエリアにおける通信仕様を選択する通信仕様選択ステップと、(ハ)この通信仕様選択ステップで選択した通信仕様で前記現在位置における物品の管理を行う管理装置と通信を開始する現在位置対応通信開始ステップとを物品管理方法に具備させる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように本発明によれば、無線タグ自体が電波の受信により現在位置を演算するので、エリア・通信仕様記憶手段を用いることで、それぞれのエリアに適合した通信仕様で通信を行うことができる。これにより、国や地域といった異なったエリアを無線タグが取り付けられた物品が移動しても、各地で物品の管理のための通信を円滑に行うことが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
次に本発明を一実施の形態と共に説明する。
【0023】
図1は、本発明の一実施の形態における物品管理システムの要部を表わしたものである。この実施の形態の物品管理システム100では、物品101に無線タグ102が取り付けられている。物品101を搬出したり搬入する倉庫103には、無線タグ102から管理情報を読み取ったり書き込むリーダ・ライタ104と、これと接続されて入出庫の管理を行う入出庫管理コンピュータ105が配置されている。入出庫管理コンピュータ105は、図示しない他の倉庫の入出庫管理コンピュータとデータの交換を行うために通信ネットワーク108に接続されている。無線タグ102は、リーダ・ライタ104と通信を行うだけでなく、GPS衛星109の複数から電波を受信して、現在位置を把握できるようになっている。
【0024】
図2は、本実施の形態の物品管理システムにおける通信ネットワークと各倉庫や販売店の関係を示したものである。通信ネットワーク108には、図1に示した倉庫103と同一構成の第1〜第Mの倉庫1031〜103Mと、第1〜第Kの販売店103M+1〜103M+Kが接続されている。第1〜第Mの倉庫1031〜103Mおよび第1〜第Kの販売店103M+1〜103M+Kは、同一国内の異なった地域に配置されているものであってもよいし、その一部または全部が互いに異なった国に配置されているものであってもよい。通信ネットワーク108には、これ以外に工場等の物品1011、1012、……を取り扱う他の設備が接続されていているが、図示は省略する。
【0025】
各物品1011、1012、……は、それぞれが無線タグ1021、1022、……を取り付けている。トラック111または図示しない船舶等の所望の搬送手段は、これらの物品1011、1012、……を所望の個数ずつ、一例としては、第1〜第Mの倉庫1031〜103Mおよび第1〜第Kの販売店103M+1〜103M+Kのうちの任意のものの間で搬送するようになっている。
【0026】
図3は、本実施の形態で使用される無線タグの構成を表わしたものである。図1および図2と共に説明する。なお、特に各物品1011、1012、……を個別に指定しないで説明を行う場合には、これらについて図1に記したように「添え字を付けない符号」を使用することにする。
【0027】
無線タグ102は、図示しないCPU(Central Processing Unit)と制御プログラムを格納したROM(Read Only Memory)を備えた制御部121を有している。制御部121は、各種データを記憶する記憶部122、図1に示したGPS衛星109から電波を受信して現在位置の位置情報を演算するGPS部123、図1に示したリーダ・ライタ104との通信用に信号の変復調を行う変調・復調部124および所定の周波数の発振を行う発振部125と接続されており、これらの制御を行うようになっている。発振部125の発振出力126は変調・復調部124に供給されるようになっている。また、変調・復調部124には電波の送受信のためのアンテナ127が付属している。更に本実施の形態の無線タグ102は能動型のために電池128を内蔵しており、各部に電源を供給する。
【0028】
この無線タグ102の記憶部122は、物品101の管理を行うための管理情報を記憶する管理情報記憶領域131と、各場所に対応した通信仕様を記録した位置領域対応通信仕様リスト132が格納されている。以上のような構成の無線タグ102は、電池128を除いて1つの半導体チップとして構成されている。
【0029】
図4は、管理情報記憶領域に格納された管理情報に関する項目を示したものである。無線タグの管理情報記憶領域131に格納された管理情報は、(a)無線タグの識別番号、(b)図1に示した物品101としての商品名、(c)物品101自体の識別番号、(d)物品101の出庫場所、(e)物品101の出庫日時、(f)物品101の入庫場所、および(g)物品101の入庫日時から構成されている。これらの管理情報は、英数字から構成されている。管理情報記憶領域131に格納された管理情報は、たとえば図2に示す第1〜第Mの倉庫1031〜103Mにそれぞれ配置されたリーダ・ライタ104(図1)によってアンテナ127(図3)を介して無線で読み出したり、書き込みを行うことが可能である。
【0030】
図5は、位置領域対応通信仕様リストの一例を示したものである。位置領域対応通信仕様リスト132は、図2に示した第1〜第Mの倉庫1031〜103M等のそれぞれのエリアを示した「位置領域」と、これらの「位置領域」に対応する「通信仕様」から構成されている。
【0031】
このうち「位置領域」は、更に日本、アメリカ合衆国等の「国名」とその「国名」で表わされた国における「地域」と、その「地域」を地表の座標で特定するための「位置座標情報」から構成されている。たとえば、「AAA」国の「第1の倉庫1031」は、緯度および経度を、地表の所定の基準点を原点とする(X,Y)座標で表わすとすると、(eee,fff)から(ggg,hhh)の矩形範囲に存在している。該当する具体的な場所が屋内である場合にも、GPS衛星109(図1)から電波を受信する屋外の同一位置の座標で表わされる。このとき、屋内と屋外の座標の対応付けを行うため、屋内には適所にそれぞれの座標位置を示す情報を発信する何らかの発信手段が備えられる。「位置座標情報」は、緯度および経度で表わされる必要はなく、任意のスケールの座標値として表示するようにしてもよい。
【0032】
「通信仕様」は、「仕様基準」と、「無線タグの発振周波数」、「リーダ・ライタの発振周波数」、「無線タグの変調方式またはリーダ・ライタの復調方式」、および「無線タグの復調方式またはリーダ・ライタの変調方式」に分類されて規定されている。たとえば前記した位置領域が「第1の倉庫1031」の場合には、無線タグの発振周波数」が426Mhzで、「リーダ・ライタの発振周波数」も426Mhzとなっている。また、「無線タグの変調方式またはリーダ・ライタの復調方式」は、PSK(Phase Shift Keying)であり、「無線タグの復調方式またはリーダ・ライタの変調方式」はSSB−ASK(Single side band amplitude shift keying)となっている。
【0033】
無線タグ102は、GPS部123によって得られた現在地の位置情報を基にして、たとえば第1の倉庫1031に位置していると判別したとする。この場合、無線タグ102は、位置領域対応通信仕様リストを参照して、該当する位置領域のリーダ・ライタ104に適合する通信仕様を選択することになる。
【0034】
無線タグ102による現在位置の取得は、たとえば数秒置きに間欠的に行う。ただし、電力消費を低減するためには、A地点からB地点に向けて出発する際に、B地点に到達するまでの最短時間をA地点側で無線タグ102にインプットするようにしてもよい。これにより、無線タグ102はこの最短時間が経過するまで図示しないタイマ回路をセットすることで、GPS部123やこれに関連する回路部分の動作を停止してこれらの電力の消耗を防ぐことができる。タイマ回路は、図3に示した制御部121が発振部125から供給を受けるクロック信号を分周することで実現することができる。
【0035】
図6は、無線タグ側が位置領域対応通信仕様リストを使用して行うエリア別の通信制御の様子を表わしたものである。図1〜図3と共に説明する。
【0036】
物品1011に代表される物品101に取り付けられた無線タグ102は、そのGPS部123がGPS衛星109の複数から電波を受信して、現在位置を算出し、これが位置領域対応通信仕様リスト132の「国名」に示す一国の位置座標情報のいずれかに該当するかをチェックする(ステップS201)。一国の位置座標情報のいずれかに該当していれば(Y)、算出した現在位置が、その国における位置領域対応通信仕様リスト132に掲げられた各地域の位置座標情報のいずれにも該当しないかを判別する(ステップS202)。いずれの地域の位置座標情報にも該当しなければ(Y)、通信仕様をその国の一般的または標準の無線タグ102における発振周波数、無線タグ102の変調方式(リーダ・ライタ104の復調方式)、無線タグ102の復調方式(リーダ・ライタ104の変調方式)に設定する。そして、無線タグ102が倉庫103等に配置された該当するリーダ・ライタ104と通信を行うことになる(ステップS203)。
【0037】
たとえば、無線タグ102がGPS衛星109より取得した位置情報が、国名AAAの一般的または標準の位置座標情報内に属していて、国名AAAの地域の第1の倉庫1031、第1の販売店、第2の販売店のいずれの位置座標情報内にも属していなかったとする。この場合には、国名AAAに対応した一般的または標準の、無線タグ102の発振周波数である426Mhzに発振周波数が決定される。また、無線タグ102の変調方式がASK(Amplitude Shift Keying)に決定され、無線タグ102の復調方式がDSB−ASK(Double Side Band‐Amplitude Shift Keying)に決定される。
【0038】
一方、無線タグ102側で算出した現在位置が、その国における位置領域対応通信仕様リスト132に掲げられた各地域の位置座標情報のいずれかに該当した場合には(ステップS202:N)、その該当した地域の通信仕様が無線タグ102とリーダ・ライタ104の通信のために決定される(ステップS204)。たとえば、無線タグ102が国名AAAの地表上で、かつ第1の倉庫1031のリーダ・ライタ104およびアンテナで通信可能な地表または室内の領域に存在すると判別されたとする。この場合には、第1の倉庫1031に対応した無線タグ102の発振周波数である426Mhzに発振周波数が決定される。また、無線タグ102の変調方式はPSKに決定され、無線タグ102の復調方式はSSB−ASKに決定される。
【0039】
以上のステップS203あるいはステップS204によって、通信仕様による発振周波数が決定されると、無線タグ102の発振部125は、制御部121の指示により決定された周波数で発振する(ステップS205)。また、同じく制御部121の指示により変調・復調部124が決定された変調・復調方式で、データ信号の変調または復調を行う(ステップS206)。これにより、アンテナ127は、変調されたデータ信号の送信または受信を行うことになる。
【0040】
このような物品管理システム100で、移動元の国名AAAの国に位置する物品倉庫である第1の倉庫1031から、無線タグ102が付与された物品が出庫され、移動先の国名BBBの国に位置する第Kの販売店103M+Kに無線タグ102が付与された物品が入庫されるものとする。この例について具体的に説明する。
【0041】
図7は、通信ネットワークに接続された第1の倉庫と第Kの販売店の関係を示したものである。図1〜図6と共に説明する。
【0042】
第1の倉庫1031の出庫エリア1411に存在するそれぞれの物品1011、1012、……には無線タグ1021、1022、……が個別に付与されている。無線タグ1021、1022、……には、予め物品1011、1012、……が移動する可能性がある国または地域の、位置領域対応通信仕様リスト132に示す情報が記憶されている。また無線タグ1021、1022、……には、物品1011、1012、……の管理情報のうち、図4に示す無線タグの識別番号、商品名、物品の識別番号が予め記憶されている。
【0043】
第1の倉庫1031の出庫エリア1411には、アンテナ1421が配置されており、リーダ・ライタ1041と接続されている。アンテナ1421の通信可能領域は、出庫エリア1411の全域である。リーダ・ライタ1041は、予め定められた第1の倉庫1031の通信仕様である周波数が426Mhz、変調方式がSSB−ASK、復調方式がPSKで、無線タグ1021、1022、……と通信を行う。図7の状態とは異なるが、物品1011、1012、……が出庫エリア1411にまだ運ばれておらず、第1の倉庫1031の出庫エリア1411以外の領域に初期的に存在しているものとする。この初期状態でリーダ・ライタ1041は物品1011、1012、……の検出を行っていない。
【0044】
物品1011を例に採って具体的に説明する。物品1011に付与された無線タグ1021のGPS部123は、この初期状態で間欠的に位置情報を取得している。無線タグ102の制御部121は、取得した位置情報から位置領域対応通信仕様リスト132の位置座標情報を参照して、物品1011に付与された無線タグ1021が存在する国名または地域を認識する(ステップS201またはステップS202)。取得した位置情報は、位置領域対応通信仕様リスト132の位置座標情報(X,Y)で(eee,fff)から(ggg,hhh)内にある。これにより無線タグ1021は、物品1011が、国名AAAの国の第1の倉庫1031に存在していると認識する。無線タグ1021は、位置領域対応通信仕様リスト132から国名AAAの国の第1の倉庫1031に対応した通信仕様(無線タグ102の発振周波数:426Mhz、無線タグ102の変調方式:PSK、無線タグ102の復調方式:SSB−ASK)を選択し、発振部125および変調・復調部124は選択した通信仕様で動作を開始する(ステップS205、ステップS206)。
【0045】
この後の所定の時点で、物品1011が第1の倉庫1031の出庫エリア1411以外の領域から出庫のために、出庫エリア1411に搬送されたとする。リーダ・ライタ1041は、出庫エリア1411に存在する物の管理を行うために、入出庫管理コンピュータ1051の指示により、第1の倉庫1031の通信仕様で問い合わせ信号をアンテナ1421から繰り返し発信している。そこで、物品1011が出庫エリア1411に搬送されると、無線タグ1021は、リーダ・ライタ1041から第1の倉庫1031の通信仕様で問い合わせ信号を受信することになる。
【0046】
図8は、出庫時に問い合わせ信号を受信した際の無線タグの処理を表わしたものである。図1、図2、図4および図7と共に説明する。
【0047】
物品1011に取り付けられた無線タグ1021は、問い合わせ信号を受信すると(ステップS221:Y)、これに対して既に応答済みであるかを判別する(ステップS222)。問い合わせ信号は繰り返し送信されてくるので、これに一度だけ応答すれば足りるからである。応答済みであれば(Y)、処理を終了する(エンド)。
【0048】
無線タグ1021にとってその第1の倉庫1031における問い合わせ信号の受信が最初のものである場合には(ステップS222:N)、記憶部122の管理情報記憶領域131から管理情報(無線タグ1021の識別番号、商品名、物品の識別番号)を読み出す(ステップS223)。そして、対応する国名AAAの国の第1の倉庫1031のリーダ・ライタ1041に対して、位置領域対応通信仕様リスト132を参照した結果としての対応する通信仕様で管理情報を送信する(ステップS224)。そして、第1の倉庫1031側からのこれに対する応答信号の受信を待機することになる(ステップS225)。
【0049】
図9は、出庫時における無線タグに対する倉庫側の信号処理の様子を表わしたものである。図1、図2、図3および図7と共に説明する。
【0050】
すでに説明したように第1の倉庫1031の入出庫管理コンピュータ1051は、リーダ・ライタ1041を通じて問い合わせ信号を送信する(ステップS241)。具体的には、出庫場所および出庫日時を送信し、管理情報として記憶部122に書き込むように、無線タグ1021に要求する。そして、これに対する管理情報の受信が比較的短い時間t1を経過しても行われない場合には(ステップS242:N、ステップS243:Y)、再び問い合わせ信号の送信を繰り返す(ステップS241)。
【0051】
ステップS242でたとえば無線タグ1021から管理情報が送られてきたら(Y)、その管理情報としての出庫場所および出庫日時を入出庫管理コンピュータ1051に送信する(ステップS244)。入出庫管理コンピュータ1051は、この管理情報を受け取った日時を図示しない時計機構から入手し、この日時を表わした情報と共に管理情報としての出庫場所および出庫日時を図示しない記憶領域に記憶する(ステップS245)。このとき受信した管理情報には、無線タグ1021の識別番号、商品名および物品1011の識別番号が含まれているが、更に出庫先に移動するための自動車等の輸送手段に関する情報が含まれている場合がある。たとえば無線タグ1021側で、図8のステップS221で示した問い合わせ信号の受信動作やGPS衛星109(図1)からの受信動作を一時的に中断して、電池128の電力消費を抑える場合に、この情報が送られてくる。
【0052】
この情報が送られてきた場合には(ステップS246:Y)、第1の倉庫1031の入出庫管理コンピュータ1051は、過去の輸送時間等の資料を基にして、出庫先に到達する最短時間を算出する(ステップS247)。そして、この算出結果としての最短時間を含めた形で応答信号を作成してこれを該当する無線タグ1021に送信する(ステップS248)。
【0053】
これに対して、ステップS246で出庫先と輸送手段が判明しなかった場合には(N)、出庫先に到達する最短時間を算出できない。そこで、この場合には、単純に応答信号のみを該当する無線タグ1021に送信する(ステップS249)。
【0054】
図8に戻って説明を続ける。第1の倉庫1031から応答信号を受信したら(ステップS225:Y)、これに出庫先に到達する最短時間が含まれているかチェックする(ステップS226)。含まれていない場合には(N)、そのまま処理を終了する(エンド)。出庫先に到達する最短時間が含まれている場合(ステップS226:Y)、無線タグ1021はその最短時間をタイマ回路にセットする(ステップS227)。そして、現在時刻にその最短時間を足した日時まで問い合わせ信号の受信を停止することになる(ステップS228)。そして、無線タグ1021が取り付けられた物品1011は、車両、船舶等の輸送手段により、国名BBBの国の第Kの販売店103M+Kの入庫エリア151M+Kに搬送される。
【0055】
図10は、無線タグにおけるカウンタ回路がセットされている場合のこの回路の処理の様子を表わしたものである。図3に示した制御部121はカウンタ回路がセットされているかどうかをチェックして(ステップS271)、セットされていなければ(N)、そのまま処理を終了する(エンド)。
【0056】
カウンタ回路がセットされている場合には(ステップS271:Y)、そのカウント値が「0」にまで減少していないかどうかを調べ(ステップS272)、まだ「0」よりも大きな値となっている場合には(Y)、前記したクロック信号を基にしてカウントダウンを行う(ステップS273)。そして、再びステップS272の処理に戻る。このようにして時間が経過するに従ってカウンタ回路のカウント値が減少していく。
【0057】
第1の倉庫1031から第Kの販売店103M+Kに向けて出庫する時点で出庫先に到達する最短時間に対応するカウント値をセットされたカウンタ回路のカウント値が「0」になると(ステップS272:N)、無線タグ1021はGPS部123に電池128による電源の供給を再開してGPS衛星109(図1)からの受信動作を再開する(ステップS274)。また、変調・復調部124にも電源が供給されて、問い合わせ信号の受信動作も再開することになる(ステップS275)。
【0058】
このようにして無線タグ1021はこれが取り付けられた物品1011が第Kの販売店103M+Kの入庫エリア151M+Kに到達する前に現在位置の確認を行える状態となり、この例では国名BBBの国で通信を行える状態となる。また、第Kの販売店103M+Kのエリアとして(X,Y)座標が、(qqq,rrr)から(sss,ttt)の矩形範囲の内部に到達した時点で第Kの販売店103M+Kの領域に入ったことを認識し、無線タグ1021はその通信仕様(周波数:433Mhz、変調方式:PSK、復調方式:DSB−ASK)に切り替わる。
【0059】
ところで、第Kの販売店103M+Kの入庫エリア151M+Kには、アンテナ152M+Kと、これに接続したリーダ・ライタ104M+Kが設置されている。リーダ・ライタ104M+Kは入出庫管理コンピュータ105M+Kに接続されている。また、第1の倉庫1031の入出庫管理コンピュータ1051は、通信ネットワーク108を介して第Kの販売店103M+Kの入出庫管理コンピュータ105M+Kに接続されている。
【0060】
第Kの販売店103M+Kの入庫エリア151M+Kでは、アンテナ152M+Kによって、たとえば物品1011に取り付けられた無線タグ1021と通信が可能である。アンテナ152M+Kの通信可能領域は、入庫エリア151M+Kの全域である。このため、第Kの販売店103M+Kの入庫エリア151M+Kに無線タグ1021が搬入されてくると、リーダ・ライタ104M+Kは、予め定められた第Kの販売店103M+Kの通信仕様(周波数:433Mhz、変調方式:DSB−ASK、復調方式:PSK)で、無線タグ1021と通信を行う。
【0061】
図11は、入庫時に問い合わせ信号を受信した際の無線タグの処理を表わしたものである。図1、図2、図3、図4および図7と共に説明する。
【0062】
無線タグ102は、入庫エリア151M+Kで問い合わせ信号を受信すると(ステップS291:Y)、これに対して既に応答済みであるかを判別する(ステップS292)。問い合わせ信号は繰り返し送信されてくるので、これに一度だけ応答すれば足りるからである。応答済みであれば(Y)、処理を終了する(エンド)。
【0063】
無線タグ1021にとってその第Kの販売店103M+Kにおける問い合わせ信号の受信が最初のものである場合には(ステップS292:N)、記憶部122の管理情報記憶領域131から管理情報(無線タグ102の識別番号、商品名、物品の識別番号)を読み出す(ステップS293)。そして、対応する国名BBBの国の第Kの販売店103M+Kのリーダ・ライタ104M+Kに対して、位置領域対応通信仕様リスト132を参照した結果としての対応する通信仕様で管理情報を送信する(ステップS294)。このとき無線タグ1021は、第1の倉庫1031の出庫エリア1411で記憶部122に記憶した管理情報(出庫場所、出庫日時)を読み出してこれらも管理情報として同様に送信する。そして、第Kの販売店103M+K側からのこれに対する応答信号の受信を待機することになる(ステップS295)。
【0064】
図12は、入庫時における無線タグに対する第Kの販売店側の信号処理の様子を表わしたものである。図1、図2、図3および図7と共に説明する。
【0065】
すでに説明したように第Kの販売店103M+Kの入出庫管理コンピュータ105M+Kは、リーダ・ライタ104M+Kを通じて問い合わせ信号を送信する(ステップS301)。具体的には、入庫場所および入庫日時を送信し、管理情報として記憶部122に書き込むように、無線タグ1021に要求する。そして、これに対する管理情報の受信が比較的短い時間t2を経過しても行われない場合には(ステップS302:N、ステップS303:Y)、再び問い合わせ信号の送信を繰り返す(ステップS301)。
【0066】
ステップS302でたとえば無線タグ1021から管理情報が送られてきたら(Y)、その管理情報としての入庫場所および入庫日時を入出庫管理コンピュータ105M+Kに送信する(ステップS304)。入出庫管理コンピュータ105M+Kは、この管理情報を受け取った日時を図示しない時計機構から入手し、この日時を表わした情報と共に管理情報としての入庫場所および入庫日時を図示しない記憶領域に記憶する(ステップS305)。このとき受信した管理情報には、無線タグ1021の識別番号、商品名、物品1011の識別番号が含まれている。
【0067】
入出庫管理コンピュータ105M+Kは、記憶領域に記憶した入庫場所および入庫日時を組み込んだ応答信号を作成して、これを該当する無線タグ1021に送信する(ステップS306)。
【0068】
図11に戻って説明を続ける。無線タグ1021は、第Kの販売店103M+Kから応答信号を受信したら(ステップS295:Y)、この応答信号に含まれている入庫場所および入庫日時を管理情報として記憶部122に記憶して(ステップS296)、一連の処理を終了する(エンド)。このとき、無線タグ1021はGPS部123および変調・復調部124等の回路部分への電力供給を停止してもよいことは当然である。
【0069】
以上説明した無線タグ1021の移動は、これが取り付けられた物品1011の移動前の出庫の場所と移動後の入庫の場所が共に図5に示した位置領域対応通信仕様リスト132に掲載されている場所(地域)となっている。次に、この位置領域対応通信仕様リスト132に掲載されていない場所(地域)同士の物品1013の移動の例を挙げる。
【0070】
図13は、位置領域対応通信仕様リストに掲載されていない場所(地域)同士での物品の移動を説明するためのものである。図1〜図6と共に説明する。ここでは、国名AAAの国における第Pの工場103Pから国名BBBの国における第Lの販売店103Lに向けて物品1013が移動する場合を説明する。
【0071】
第Pの工場103Pの出庫エリア141Pに存在するそれぞれの物品1013、1014、……には無線タグ1023、1024、……が個別に取り付けられている。無線タグ1023、1024、……には、物品1013、1014、……の管理情報のうち、図4に示す無線タグの識別番号、商品名および物品の識別番号が予め記憶されている。
【0072】
第Pの工場103Pの出庫エリア141Pには、アンテナ142Pが配置されており、リーダ・ライタ104Pと接続されている。アンテナ142Pの通信可能領域は、出庫エリア141Pの全域である。リーダ・ライタ104Pは、第Pの工場103Pが位置領域対応通信仕様リスト132に掲載されていないので、国名AAAの国における一般的あるいは標準的な仕様基準で通信を行うようになっている。すなわち、リーダ・ライタ104Pは、周波数が426Mhz、変調方式がDSB−ASK、復調方式がASKで、無線タグ1023、1024、……と通信を行うことになる。図7の状態とは異なるが、物品1013、1014、……が出庫エリア141Pにまだ運ばれておらず、第Pの工場103Pの出庫エリア141P以外の領域に初期的に存在しているものとする。この初期状態でリーダ・ライタ104Pは物品1013、1014、……の検出を行っていない。
【0073】
この例の場合には物品1013を例に採って具体的に説明する。物品1013に付与された無線タグ1023のGPS部123は、この初期状態で間欠的に位置情報を取得している。無線タグ1023の制御部121は、取得した位置情報から位置領域対応通信仕様リスト132の位置座標情報を参照する。この結果、国名AAAの国が現在地であることを判別するが(ステップS201:Y)、「地域」レベルでの参照ができない(ステップS202:Y)。そこで、無線タグ1023は、国名AAAの国における一般的あるいは標準的な仕様基準の選択を決定する(ステップS203)。これは、位置領域対応通信仕様リスト132より、周波数が426Mhz、変調方式がDSB−ASK、復調方式がASKという通信仕様になる。そこで、この決定した通信仕様で発振部125および変調・復調部124が動作を開始する(ステップS205、ステップS206)。
【0074】
この後の所定の時点で、物品1013が第Pの工場103Pの出庫エリア141P以外の領域から出庫エリア141Pに搬送されたとする。リーダ・ライタ104Pは、出庫エリア141Pに存在する物の管理を行うために、入出庫管理コンピュータ105Pの指示により、国名AAAの国における一般的あるいは標準的な仕様基準で問い合わせ信号をアンテナ142Pから繰り返し発信している。そこで、物品1013が出庫エリア141Pに搬送されると、無線タグ1023は、リーダ・ライタ104Pからこの国名AAAの国における一般的あるいは標準的な仕様基準で問い合わせ信号を受信することになる。
【0075】
次に、図8を中心として図1、図2、図3、図4および図13と共に出庫の際の無線タグ1023の処理を説明する。
【0076】
物品1013に取り付けられた無線タグ1023は、問い合わせ信号を受信すると(ステップS221:Y)、これに対して既に応答済みであるかを判別する(ステップS222)。問い合わせ信号は繰り返し送信されてくるので、これに一度だけ応答すれば足りるからである。応答済みであれば(Y)、処理を終了する(エンド)。
【0077】
無線タグ1023にとってその第Pの工場103Pにおける問い合わせ信号の受信が最初のものである場合には(ステップS222:N)、記憶部122の管理情報記憶領域131から管理情報(無線タグ1023の識別番号、商品名、物品の識別番号)を読み出す(ステップS223)。そして、対応する国名AAAの国の第Pの工場103Pのリーダ・ライタ104Pに対して、国名AAAの国における一般的あるいは標準的な仕様基準で管理情報を送信する(ステップS224)。そして、これ以後は第Pの工場103P側からのこれに対する応答信号の受信を待機することになる(ステップS225)。
【0078】
次に、図9を中心として図1、図2、図3および図13と共に、出庫時における無線タグに対する工場側の信号処理を説明する。
【0079】
すでに説明したように第Pの工場103Pの入出庫管理コンピュータ105Pは、リーダ・ライタ104Pを通じて問い合わせ信号を送信する(ステップS241)。具体的には、出庫場所および出庫日時を送信し、管理情報として記憶部122に書き込むように、無線タグ1023に要求する。そして、これに対する管理情報の受信が比較的短い時間t1を経過しても行われない場合には(ステップS242:N、ステップS243:Y)、再び問い合わせ信号の送信を繰り返す(ステップS241)。
【0080】
ステップS242でたとえば無線タグ1023から管理情報が送られてきたら(Y)、その管理情報としての出庫場所および出庫日時を入出庫管理コンピュータ105Pに送信する(ステップS244)。入出庫管理コンピュータ105Pは、この管理情報を受け取った日時を図示しない時計機構から入手し、この日時を表わした情報と共に管理情報としての出庫場所および出庫日時を図示しない記憶領域に記憶する(ステップS245)。このとき受信した管理情報には、無線タグ1023の識別番号、商品名および物品1013の識別番号が含まれているが、更に出庫先に移動するための自動車等の輸送手段に関する情報が含まれている場合がある。たとえば無線タグ1023側で、図8のステップS221で示した問い合わせ信号の受信動作やGPS衛星109(図1)からの受信動作を一時的に中断して、電池128の電力消費を抑える場合に、この情報が送られてくる。
【0081】
この情報が送られてきた場合には(ステップS246:Y)、第Pの工場103Pの入出庫管理コンピュータ105Pは、過去の輸送時間等の資料を基にして、出庫先に到達する最短時間を算出する(ステップS247)。そして、この算出結果としての最短時間を含めた形で応答信号を作成してこれを該当する無線タグ1023に送信する(ステップS248)。
【0082】
これに対して、ステップS246で出庫先と輸送手段が判明しなかった場合には(N)、出庫先に到達する最短時間を算出できない。そこで、この場合には、単純に応答信号のみを該当する無線タグ1023に送信する(ステップS249)。
【0083】
図8に戻って説明を続ける。第Pの工場103Pから応答信号を受信したら(ステップS225:Y)、これに出庫先に到達する最短時間が含まれているかチェックする(ステップS226)。含まれていない場合には(N)、そのまま処理を終了する(エンド)。出庫先に到達する最短時間が含まれている場合(ステップS226:Y)、無線タグ1023はその最短時間をタイマ回路にセットする(ステップS227)。そして、現在時刻にその最短時間を足した日時まで問い合わせ信号の受信を停止することになる(ステップS228)。そして、無線タグ1023が取り付けられた物品1013は、車両、船舶等の輸送手段により、国名BBBの国の第Lの販売店103L入庫エリア151Lに搬送される。
【0084】
無線タグ1023におけるカウンタ回路の処理の様子は図10で無線タグ1021について示したと同様である。そこで、これについての説明は省略する。
【0085】
このようにして無線タグ1023はこれが取り付けられた物品1013が第Lの販売店103Lの入庫エリア151L(図13)に到達する前に現在位置の確認を行える状態となる。この例では位置座標情報を示す(X,Y)座標が、(iii,jjj)から(kkk,lll)の矩形範囲の内部に到達した時点で国名BBBの国であることが認識されて、無線タグ1023はその国における一般的あるいは標準の通信仕様(周波数:433Mhz、変調方式:ASK、復調方式:DSB−ASK)に切り替わる。
【0086】
ところで、図13に示したように、第Lの販売店103Lの入庫エリア151Lには、アンテナ152Lと、これに接続したリーダ・ライタ104Lが設置されている。リーダ・ライタ104Lは入出庫管理コンピュータ105Lに接続されている。また、第Lの販売店103Lの入出庫管理コンピュータ105Lは、通信ネットワーク108を介して第Pの工場103Pの入出庫管理コンピュータ105Pに接続されている。
【0087】
第Lの販売店103Lの入庫エリア151Lでは、アンテナ152Lによって、たとえば物品1013に取り付けられた無線タグ1023と通信が可能である。アンテナ152Lの通信可能領域は、入庫エリア151Lの全域である。このため、第Lの販売店103Lの入庫エリア151Lに無線タグ1023が搬入されてくると、リーダ・ライタ104Lは、位置領域対応通信仕様リスト132に第Lの販売店103Lが登録されていないことにより、国名BBBの国における一般的あるいは標準の通信仕様(周波数:433Mhz、変調方式:DSB−ASK、復調方式:ASK)で、無線タグ1023と通信を行う。
【0088】
次に図11を中心として、図1、図2、図3、図4および図13と共に入庫時に問い合わせ信号を受信した際の無線タグの処理を説明する。
【0089】
無線タグ1023は、入庫エリア151Lで問い合わせ信号を受信すると(ステップS291:Y)、これに対して既に応答済みであるかを判別する(ステップS292)。問い合わせ信号は繰り返し送信されてくるので、これに一度だけ応答すれば足りるからである。応答済みであれば(Y)、処理を終了する(エンド)。
【0090】
無線タグ1023にとってその第Lの販売店103Lにおける問い合わせ信号の受信が最初のものである場合には(ステップS292:N)、記憶部122の管理情報記憶領域131から管理情報(無線タグ1023の識別番号、商品名、物品の識別番号)を読み出す(ステップS293)。そして、対応する国名BBBの国の第Lの販売店103Lのリーダ・ライタ104Lに対して、位置領域対応通信仕様リスト132を参照した結果、「地域」が特定されないので、その国における一般的あるいは標準の通信仕様を対応した通信仕様として管理情報を送信する(ステップS294)。このとき無線タグ1023は、第Pの工場103Pの出庫エリア141Pで記憶部122に記憶した管理情報(出庫場所、出庫日時)を読み出してこれらも管理情報として同様に送信する。そして、第Lの販売店103L側からのこれに対する応答信号の受信を待機することになる(ステップS295)。
【0091】
次に図12を中心として図1、図2、図3および図13と共に入庫時における無線タグに対する第Kの販売店側の信号処理の様子を説明する。
【0092】
すでに説明したように第Lの販売店103Lの入出庫管理コンピュータ105Lは、リーダ・ライタ104Lを通じて問い合わせ信号を送信する(ステップS301)。具体的には、入庫場所および入庫日時を送信し、管理情報として記憶部122に書き込むように、無線タグ1023に要求する。そして、これに対する管理情報の受信が比較的短い時間t2を経過しても行われない場合には(ステップS302:N、ステップS303:Y)、再び問い合わせ信号の送信を繰り返す(ステップS301)。
【0093】
ステップS302でたとえば無線タグ1023から管理情報が送られてきたら(Y)、その管理情報としての入庫場所および入庫日時を入出庫管理コンピュータ105Lに送信する(ステップS304)。入出庫管理コンピュータ105Lは、この管理情報を受け取った日時を図示しない時計機構から入手し、この日時を表わした情報と共に管理情報としての入庫場所および入庫日時を図示しない記憶領域に記憶する(ステップS305)。このとき受信した管理情報には、無線タグ1023の識別番号、商品名、物品1013の識別番号が含まれている。
【0094】
入出庫管理コンピュータ105Lは、記憶領域に記憶した入庫場所および入庫日時を組み込んだ応答信号を作成して、これを該当する無線タグ1023に送信する(ステップS306)。
【0095】
図11に戻って説明を続ける。無線タグ1023は、第Lの販売店103Lから応答信号を受信したら(ステップS295:Y)、この応答信号に含まれている入庫場所および入庫日時を管理情報として記憶部122に記憶して(ステップS296)、一連の処理を終了する(エンド)。このとき、無線タグ1023はGPS部123、変調・復調部124等の回路部分への電力供給を停止してもよいことは当然である。
【0096】
このように図13に示した例のように、本実施の形態では位置領域対応通信仕様リスト132に掲載されていない場所(地域)から物品が搬出されたり、位置領域対応通信仕様リスト132に掲載されていない場所(地域)に物品が搬入される場合、それらの場所としての国または地域で一般的あるいは標準的な仕様基準に基づいて通信が行われる。したがって、位置領域対応通信仕様リスト132に掲載していない販売店や工場のように物品の移動の管理について通信の独自仕様を持たない場所(地域)でも物品の管理が可能である。
【0097】
また、このような場所が独自の通信仕様で物品の管理を開始した当初で、その通信仕様が位置領域対応通信仕様リスト132に掲載されるまでの過渡期においては、国または地域で一般的あるいは標準的な仕様基準と独自の通信仕様を交互に切り替えて通信を行ったり、これら2つの通信仕様のリーダ・ライタ104を用意しておくことで、無線タグ102との通信を確保することができる。
【0098】
なお、本発明の実施の形態で無線タグは、GPS衛星から電波を受信して現在位置を特定したが、これに限るものではない。たとえば、最寄りの無線基地局と通信して、その無線基地局の位置情報を取得して、これを無線タグの位置情報としてもよい。また、近傍の複数の無線基地局と通信してこれら無線基地局の位置情報とそれぞれの電波の強さを基にして、無線タグの現在位置を演算するようにしてもよい。
【0099】
また、実施の形態では、2点間を物品が移動する場合を説明したが、中継地点を含めて3点以上の地点を物品が移動する場合にも本発明を同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明の一実施の形態における物品管理システムの要部を表わしたシステム構成図である。
【図2】本実施の形態の物品管理システムにおける通信ネットワークと各倉庫や販売店の関係を示した説明図である。
【図3】本実施の形態で使用される無線タグの構成を表わしたブロック図である。
【図4】本実施の形態の管理情報記憶領域に格納された管理情報に関する項目を示した説明図である。
【図5】本実施の形態における位置領域対応通信仕様リストの一例を示した説明図である。
【図6】本実施の形態で無線タグ側が行うエリア別の通信制御の流れ図である。
【図7】本実施の形態で通信ネットワークに接続された第1の倉庫と第Kの販売店の配置を示したブロック図である。
【図8】本実施の形態で出庫時に問い合わせ信号を受信した際の無線タグの処理を表わした流れ図である。
【図9】本実施の形態で出庫時における無線タグに対する倉庫側の信号処理の様子を表わした流れ図である。
【図10】本実施の形態で無線タグにおけるカウンタ回路の処理の様子を表わした流れ図である。
【図11】本実施の形態で入庫時に問い合わせ信号を受信した際の無線タグの処理を表わした流れ図である。
【図12】本実施の形態で入庫時における無線タグに対する第Kの販売店側の信号処理の様子を表わした流れ図である。
【図13】本実施の形態で通信ネットワークに接続された第Pの工場と第Lの販売店の配置を示したブロック図である。
【図14】本発明の関連技術による物品管理システムの概要を表わしたシステム構成図である。
【符号の説明】
【0101】
100 物品管理システム
101 物品
102 無線タグ
1031〜103M 倉庫
103M+1〜103M+K 販売店
104 リーダ・ライタ
105 入出庫管理コンピュータ
108 通信ネットワーク
109 GPS衛星
111 トラック
121 制御部
122 記憶部
123 GPS部
124 変調・復調部
125 発振部
127、142、152 アンテナ
128 電池
131 管理情報記憶領域
132 位置領域対応通信仕様リスト
141 出庫エリア
151 入庫エリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波の受信により現在位置を演算する現在位置演算手段と、
予め定めた複数のエリアにおける通信仕様を定めたエリア・通信仕様記憶手段と、
このエリア・通信仕様記憶手段から前記現在位置演算手段によって演算した位置に対応するエリアの通信仕様を検索する通信仕様検索手段と、
この通信仕様検索手段で検索した通信仕様で管理対象の物品に関する所定の管理情報の通信を行う通信手段
とを具備することを特徴とする無線タグ。
【請求項2】
前記現在位置演算手段は、GPS(Global Positioning System)衛星から電波を受信するGPS受信部と、このGPS受信部の受信した電波を基にして現在位置を演算する現在位置演算手段とを具備することを特徴とする請求項1記載の無線タグ。
【請求項3】
前記現在位置演算手段は、最寄りの無線局からその無線局の位置情報を無線で取得することを特徴とする請求項1記載の無線タグ。
【請求項4】
前記現在位置演算手段は、複数の無線局からそれぞれの無線局の位置情報を個別に取得する位置情報取得手段と、前記複数の無線局からの電波の受信強度を測定する受信強度測定手段と、前記位置情報取得手段で取得した複数の無線局の位置情報と前記受信強度測定手段の測定した受信強度から無線タグの現在位置を演算することを特徴とする請求項1記載の無線タグ。
【請求項5】
前記エリア・通信仕様記憶手段は、特定エリアにおける具体的な通信仕様と、前記特定エリアを含むこれよりも広いエリアとしての広域エリアにおける一般的な通信仕様とを記憶しており、前記通信仕様検索手段は特定エリアを広域エリアよりも優先して検索する手段であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の無線タグ。
【請求項6】
前記通信仕様は、通信に利用する信号の周波数、信号の変調方式および復調方式であることを特徴とする請求項1または請求項5記載の無線タグ。
【請求項7】
複数の地点を移動の対象とする物品と、
前記物品に取り付けられ、電波の受信により現在位置を演算する現在位置演算手段と、予め定めた複数のエリアにおける通信仕様を定めたエリア・通信仕様記憶手段と、このエリア・通信仕様記憶手段から前記現在位置演算手段によって演算した位置に対応するエリアの通信仕様を検索する通信仕様検索手段と、この通信仕様検索手段で検索した通信仕様で管理対象の前記物品に関する通信を行う通信手段とを具備する無線タグと、
前記複数の地点にそれぞれ設けられ、前記エリア・通信仕様記憶手段に記憶された通信仕様に沿って前記無線タグと前記物品の管理に関する情報の通信を行う地点別通信手段
とを具備することを特徴とする物品管理システム。
【請求項8】
前記現在位置演算手段は、GPS(Global Positioning System)衛星から電波を受信するGPS受信部と、このGPS受信部の受信した電波を基にして現在位置を演算する現在位置演算手段とを具備することを特徴とする請求項7記載の物品管理システム。
【請求項9】
前記地点別通信手段は、無線タグごとに移動元から移動先までの移動に要する最短時間を通知する最短時間通知手段を備え、前記無線タグは前記移動元から移動を開始した後、最短時間通知手段から通知を受けた最短時間の間、前記現在位置演算手段の演算を省電力のために一時停止する演算一時停止手段を具備することを特徴とする請求項8記載の物品管理システム。
【請求項10】
前記地点別通信手段は、前記無線タグから前記物品の管理に関する情報を読み出すと共にこの無線タグに管理に必要な情報を書き込むリーダ・ライタであることを特徴とする請求項8記載の物品管理システム。
【請求項11】
物品に取り付けられた無線タグに組み込まれた現在位置演算手段を用いて現在位置を取得する現在位置取得ステップと、
予め定めた複数のエリアにおける通信仕様を定めたエリア・通信仕様記憶手段を用いて、前記現在位置取得ステップで取得した現在位置に対応するエリアにおける通信仕様を選択する通信仕様選択ステップと、
この通信仕様選択ステップで選択した通信仕様で前記現在位置における物品の管理を行う管理装置と通信を開始する現在位置対応通信開始ステップ
とを具備することを特徴とする物品管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−20605(P2010−20605A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−181523(P2008−181523)
【出願日】平成20年7月11日(2008.7.11)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】