説明

無線タグ検出システム、無線タグ検出装置及び通過検出システム

【課題】ループアンテナが検出する無線タグを簡単に制限可能にする。
【解決手段】固定設置されたループアンテナ6と、利用者Xに設けられた無線タグ20が発する電波を前記ループアンテナ6を介して受信する通信制御装置8と、前記ループアンテナ6から離間して配置され、電波を発するダミー無線タグ10とを有し、前記通信制御装置8は、前記ダミー無線タグ10が発する電波の受信信号強度Eth1、Eth2を超える受信信号強度Eの電波を発している無線タグ20を検出するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFID(Radio Frequency Identification)タグ等の無線タグを検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、施設や建物への出入りの際に、人や物品が有するRFIDタグを、これら施設や建物の出入口に設置されたアンテナにて検出することによって、人や物品の出入りの管理を行う技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
このような技術は、RFIDタグが内蔵されたIDカードを、出入口に設置されたアンテナにて検出することでIDカードを所持する利用者の入退室を管理する入退室管理システムなどに応用可能である。
【特許文献1】特開2006−10532号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、出入口を並設し、入口及び出口のそれぞれにループアンテナを設置してIDカードを検出するようにした場合には、次のような問題がある。
すなわち、入口及び出口が近接すると、入口及び出口のそれぞれのループアンテナの通信可能領域に重複(オーバーラップ)が生じるため、入口及び出口のいずれかを利用者が通過したときに、両方のゲードがIDカードを検出することになり、どちらを利用者が通過したかが判断不能になる。このため、入口及び出口を近接して配置することができず、出入口の設置に制約が生じるといった、問題がある。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、ループアンテナが検出する無線タグを簡単に制限することができる無線タグ検出システム、無線タグ検出装置及び通過検出システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために、本発明は、固定設置されたループアンテナと、移動物体に設けられた無線タグが発する電波を前記ループアンテナを介して受信する受信装置と、前記ループアンテナから離間して配置され、電波を発する固定発信装置とを有し、前記受信装置は、前記固定発信装置が発する電波の受信信号強度を超える受信信号強度の電波を発している無線タグを検出することを特徴とする無線タグ検出システムを提供する。
【0005】
本発明によれば、受信装置は、固定発信装置が発する電波の受信信号強度を超える受信信号強度の電波を発している無線タグを検出するため、ループアンテナが検出可能な無線タグまでの距離が、実際の通信可能距離よりも簡単に狭められ、ループアンテナに近づいた無線タグのみを検出することが可能になる。
特に、検出可能な無線タグまでの距離は、固定発信装置とループアンテナとの間の離間距離や固定発信装置の送信出力を可変させることで簡単に調整することができる。
【0006】
また、本発明は、上記の無線タグ検出システムにおいて、前記受信装置は、前記無線タグの電波と前記固定発信装置の電波とが混信した場合、或いは、複数の前記無線タグのそれぞれの電波が混信した場合に、前記移動物体の移動を指示することを特徴とする。
本発明によれば、混信が生じた場合には、移動物体に対して移動が指示されるため、電波の混信を速やかに解消することができる。
【0007】
また、本発明は、上記の無線タグ検出システムにおいて、前記受信装置は、前記混信発生時の受信信号強度の最大値を、前記固定発信装置が発する電波の受信信号強度と比較し、前記無線タグの電波と前記固定発信装置の電波の混信であるか、或いは、複数の前記無線タグのそれぞれの電波の混信であるかを判定することを特徴とする。
本発明によれば、混信発生時の受信信号強度の最大値を、固定発信装置が発する電波の受信信号強度と比較することで、混信が、無線タグと固定発信装置との間で発生しているのか、無線タグ同士で発生しているのかを簡単に識別することができる。
【0008】
また、本発明は、上記の無線タグ検出システムにおいて、前記受信装置は、前記固定発信装置の電波の発信を停止する停止手段を備えることを特徴とする。
本発明によれば、固定発信装置の電波発信を停止することで、ループアンテナの通信可能距離内に存在する全ての無線タグを検出可能にすることができる。
【0009】
また上記目的を達成するために、本発明は、固定設置されたループアンテナを介して、移動物体に設けられた無線タグが発する電波を受信し、前記無線タグを検出する無線タグ検出装置において、前記ループアンテナを介して受信した電波の受信信号強度を検出する受信信号強度検出手段を有し、前記受信信号強度検出手段は、前記ループアンテナから離間して配置された固定発信装置が発する電波の受信信号強度を超える受信信号強度の電波を発する無線タグを検出することを備えることを特徴とする。
【0010】
また上記目的を達成するために、本発明は、移動物体の通過検出点に固定設置されたループアンテナと、前記移動物体に設けられた無線タグが発する電波を前記ループアンテナを介して受信する受信装置と、前記ループアンテナから離間して配置され、電波を発する固定発信装置とを有し、前記受信装置は、前記固定発信装置が発する電波の受信信号強度を超える受信信号強度の電波を発している無線タグを検出して前記移動物体の通過を検出することを特徴とする通過検出システムを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。本実施形態では、クリーンルーム等の部屋への利用者の入退室を管理する入退室管理システムに本発明を適用した場合を説明する。
図1は、本実施形態に係る入退室管理システム1の構成を模式的に示す図であり、図2は、入退室管理システム1の入室側を模式的に示す図である。
管理対象の部屋には、利用者Xが入退室する際に通過する通過点としての入口扉2A及び出口扉2Bが並設され、それぞれの間が仕切り3で仕切られており、入退室管理システム1は、これら入口扉2A或いは出口扉2Bを通過した利用者Xを特定して、その利用者Xの入室或いは退室を管理する。
具体的には、入退室管理システム1は、利用者Xが所持する非接触無線通信機能を備えたIDカード4と、入口扉2A及び出口扉2Bの各々に設けられたループアンテナ6と、ループアンテナ6ごとに設けられ当該ループアンテナ6を介してIDカード4に記録された利用者IDを無線により読み取る通信制御装置8と、入口扉2A及び出口扉2Bの各々に対して設けられたダミー無線タグ10と、各通信制御装置8に設けられた音声合成出力装置12と、利用者IDに基づいて利用者Xの入退室を管理する入退室管理装置14とを備えている。
【0012】
図3は、IDカード4の機能的構成を示すブロック図である。
IDカード4は、その表面に利用者の氏名や所属、写真等が記載されて利用者Xの身元を示す役割を担うと共に、その内部には、図2に示すように、ループアンテナ6を介して通信制御装置8との間で長波による非接触型無線通信機能を実現する無線タグ20が内蔵されている。
無線タグ20は、利用者Xの識別情報たる利用者IDを格納するメモリ22と、長波による無線通信用のRF部24と、これらを制御する制御部26と、入口扉2A及び出口扉2Bの各々のループアンテナ6から放射された電波を受信するアンテナ28とを備え、入口扉2A及び出口扉2Bのループアンテナ6が放射する電波を受信した場合に、その電波の受信に応答して利用者IDを送信する。
なお、無線タグ20は、ループアンテナ6からの電波を受信することで電磁誘導により電力を生成して通信可能となり応答を返す、いわゆるパッシブ型として構成することも、また、電池を内蔵し電波の受信にかかわらず任意のタイミングで無線タグ20から通信を開始する、いわゆるアクティブ型として構成することも可能である。
【0013】
ループアンテナ6は、図1及び図2に示すように、入口扉2A及び出口扉2Bの各々に埋め込まれ、これら入口扉2A及び出口扉2Bのそれぞれに固定的に設置されている。これらのループアンテナ6は、無指向性で数メートル(例えば約5メートル)の通信可能距離を有するものであり、入口扉2A及び出口扉2Bの各々の面内でエレメントが巻き回されるように配置されている。これにより、利用者Xが入口扉2A或いは出口扉2Bに正対した際には、この利用者Xが所持するIDカード4と、ループアンテナ6が略対向するため、IDカード4が発する電波に対するループアンテナ6の感度の向上が図られることとなる。
また、入口扉2A及び出口扉2Bが近接して設けられている場合には、各ループアンテナ6の通信可能領域にオーバーラップ(重複)が生じることとなる。
【0014】
図4は、ダミー無線タグ10の機能的構成を示すブロック図である。
ダミー無線タグ10は、通信制御装置8の制御の下、長波による非接触型無線通信機能により、自身の識別情報たるダミーIDを送信するものであり、このダミーIDを格納するメモリ30と、長波による無線通信用のRF部32と、これらを制御する制御部34と、アンテナ36と、AC電源からの電力を直流変換するAC電源変換部38とを有し、電力が供給されている間は、入口扉2A又は出口扉2Bのループアンテナ6が放射する電波を受信した場合に、その電波の受信に応答してダミーIDを所定強度の電波で送信する。
【0015】
図1に示すように、入口扉2Aに対向して設けられたダミー無線タグ10は、入口扉2Aのループアンテナ6で強度Eth1の受信信号強度が得られるように、入口扉2Aから室内に向かって離間距離R1だけ離間した位置に固定的に配置されている。また、出口扉2Bに対向して設けられたダミー無線タグ10も同様に、出口扉2Bのループアンテナ6で強度Eth2の受信信号強度が得られるように、出口扉2Bから室内に向かって離間距離R2だけ離間した位置に固定的に配置されている。
【0016】
このとき、入口扉2Aに対向して配置されたダミー無線タグ10から出口扉2Bまでの距離、及び、出口扉2Bに対向して配置されたダミー無線タグ10から入口扉2Aまでの距離は、それぞれ上記離間距離R1、R2よりも長くなっている。
したがって、入口扉2Aのループアンテナ6においては、この入口扉2Aに対向したダミー無線タグ10の受信信号強度が、出口扉2Bに対向するダミー無線タグ10の受信信号強度よりも強くなるため、入口扉2Aに対向するダミー無線タグ10が優先的に検出される。また、これと同様に、出口扉2Bのループアンテナ6においても、この出口扉2Bに対向するダミー無線タグ10が優先的に検出されることとなる。
【0017】
図5は、通信制御装置8の機能的構成を示すブロック図である。
通信制御装置8は、ループアンテナ6を介してIDカード4に記録された利用者IDを無線により読み取り、有線LAN或いは無線LAN等の通信ネットワーク9を介して入退室管理装置14に出力するものである。
より具体的には、通信制御装置8は、図5に示すように、制御部40と、無線通信部42と、ネットワークインタフェース(I/F)44と、電源供給制御部46と、ガイド音声データ出力部48とを有している。
制御部40は、各部を中枢的に制御するものであり、プログラム実行手段としてのCPUや、このCPUのワークエリアとして用いられるRAM、各種プログラムを格納するROM等を備えて構成されている。
【0018】
無線通信部42は、ループアンテナ6を介して無線タグ20及びダミー無線タグ10との間で長波による無線通信を行うものである。具体的には、図示を省略する無線通信用のRF回路やベースバンド回路を有し、制御部40の制御の下、例えば1秒に5回程度の一定時間ごとに、ループアンテナ6に流れる電流を変化させて磁界の変化を生じさせることで無線タグ20及びダミー無線タグ10と電磁的通信を行うための電波を放射する。この電波の放射により、ダミー無線タグ10から送信されたダミーIDが無線通信部42によって受信され、また、通信可能領域内にIDカード4が存在する場合には、そのIDカード4の無線タグ20から利用者IDが送信され、無線通信部42によって受信される。
【0019】
さらに、無線通信部42は、無線タグ20及びダミー無線タグ10のそれぞれが発する電波を受信したときの受信信号強度Eを検出する受信電界強度検出回路50を有し、ダミー無線タグ10、及び、1或いは複数の無線タグ20から同時に電波を受信した場合には、受信信号強度Eが最も大きい電波を受信し、その受信によって得られたダミーID又は利用者IDを制御部40に出力する。
さらに詳述すると、無線タグ20の受信信号強度Etはループアンテナ6から無線タグ20の距離に比例して大きくなり、ダミー無線タグ10の受信信号強度Eth1、Eth2が雑音とみなせるほど無線タグ20の受信信号強度Eが大きくなった場合(例えばダミー無線タグ10の受信信号強度Edの約10倍)に、無線通信部42によって無線タグ20の電波が受信可能になる。またこれとは逆に、ダミー無線タグ10の受信信号強度Eth1、Eth2に比べて無線タグ20の受信信号強度Eが雑音とみなせるほど小さい間は、ダミー無線タグ10が受信され続けることになる。
また、無線タグ20の受信信号強度Eとダミー無線タグ10の受信信号強度Eth1、Eth2が近い値となっている場合(例えばEとEth1、Eth2の差が10倍以内)には、無線タグ20及びダミー無線タグ10との間で混信が生じ、ダミーID又は利用者IDを復号できない状況が発生する。このような混信が生じた場合には、無線通信部42は、利用者ID又はダミーIDに代えて混信発生を示す信号を制御部40に出力する。
【0020】
ネットワークI/F44は、有線LAN或いは無線LAN等の通信ネットワーク9に接続されるものである。この通信ネットワーク9には、図1に示すように、入退室管理装置14が接続されており、無線通信部42によって受信された利用者ID又はダミーIDが、制御部40の制御の下、通信ネットワーク9を介して入退室管理装置14に送信される。
電源供給制御部46は、制御部40の制御の下、ダミー無線タグ10へのAC電源の供給をオン/オフするものである。ダミー無線タグ10へのAC電源の供給が継続している間は、上述したように、ループアンテナ6から一定時間ごとに電波を送信することで、その都度、ダミー無線タグ10からダミーIDが送信され、無線通信部42によって受信信号強度Eth1又はEth2で受信される。また、ダミー無線タグ10へのAC電源の供給が停止(遮断)されると、ダミー無線タグ10からのダミーIDの送信も停止する。
【0021】
ガイド音声データ出力部48は、制御部40の制御の下、利用者ID及びダミーIDの受信状況に応じて、周囲の利用者Xに対し、立ち位置等の指示を与えるためのガイド音声の音声データ生成し、音声合成出力装置12に出力するものである。
具体的には、ガイド音声データ出力部48は、音声データ格納部52と、接続インタフェース(I/F)54とを有している。
音声データ格納部52は、上記ガイド音声に供される複数の音声データを予め格納するものであり、接続I/F54は、音声合成出力装置12との接続インタフェースである。
【0022】
音声データとしては、例えば次のようなものが予め用意されている。
すなわち、受信信号強度Eは、ループアンテナ6からの距離が近いほど強くなるため、無線タグ20とダミー無線タグ10との間で上記の混信発生が検出された場合には、利用者Xが扉に近づくことで混信から脱することができる。そこで本実施形態では、「もう少し扉に近づいてください。」という主旨の音声データを予め音声データ格納部52に格納し、混信発生時には、この音声データが接続I/F54を介して音声合成出力装置12に出力される。
【0023】
また例えば、複数の利用者Xがループアンテナ6の近傍に同時に存在する場合でも、複数の無線タグ20のそれぞれの受信信号強度Eが近い値となり混信が発生する可能性がある。複数の無線タグ20が同時に存在することによって発生した混信と、無線タグ20及びダミー無線タグ10との間の混信とは、そのとき最大の受信信号強度Eが、ダミー無線タグ10の受信信号強度Eth1又はEth2に近いか否かによって識別される。すなわち、混信発生時に最大の受信信号強度Eが、受信信号強度Eth1又はEth2よりも大きい場合(例えばEth1、Eth2の10倍以上の場合)には、複数の無線タグ20が同時に存在することによって発生した混信と判断される。この場合には、各利用者Xとループアンテナ6との距離が相違すれば良いため、音声データ格納部52に、「一人ずつ扉に近づいてください。」という主旨の音声データを予め格納しておき、この音声データを接続I/F54を介して音声合成出力装置12に出力する。
音声合成出力装置12は、図示を省略するデコーダ回路、アンプ回路及びスピーカ装置を有し、通信制御装置8から出力された音声データに基づいて、ガイド音声を再生する。
【0024】
本実施形態では、制御部40は、通過検出部56と、混信処理部58とを備えている。
通過検出部56は、無線通信部42からの入力に基づいて、利用者Xの扉の通過を検出するものであり、利用者ID検出部60と、装置ID付与部62とを備えている。
利用者ID検出部60は、無線通信部42から利用者IDが入力された場合に、これを検出し、装置ID付与部62に出力する。装置ID付与部62は、利用者ID検出部60から入力された利用者IDに対して、自装置を一意に特定可能な装置IDを付与し、ネットワークI/F44を介して入退室管理装置14に送信する。
これにより、入退室管理装置14においては、利用者IDに付与されている装置IDを参照することで、入口扉2A又は出口扉2Bのどちらの扉を利用者Xが通過したかが判定可能となる。
【0025】
上記混信処理部58は、混信発生時の対策処理を実行するものであり、混信種別判定部64と、音声データ選択部66とを備えて構成されている。
混信種別判定部64は、混信発生を示す信号が無線通信部42から入力された場合に、そのときの受信信号強度Eの最大値に基づいて、無線タグ20とダミー無線タグ10との間での混信か、又は、複数の無線タグ20間での混信かを判定し、判定結果を、音声データ選択部66に出力する。
音声データ選択部66は、混信種別判定部64の判定結果に基づいて、音声データ格納部52に格納されている音声データのうち、混信の解消に適した指示を周囲の利用者Xに与える音声データを選択し、この音声データの出力をガイド音声データ出力部48に指示する。
【0026】
なお、通信制御装置8は、電源供給制御部46によってダミー無線タグ10へのAC電源の供給を停止することで、ループアンテナ6の通信可能範囲に存在する全ての無線タグ20を検出可能になされている。具体的には、通信制御装置8は、ダミー無線タグ10へのAC電源の供給を停止してダミーIDの送出を停止した後、最も受信信号強度Eの高い無線タグ20を検出し、そして、この無線タグ20に対して利用者IDの送信を禁止する指令を送信して電波の送出を停止させた後、再度、受信信号強度Eの高い無線タグ20の検出を行う、といった処理を、無線タグ20が検出されなくなるまで繰り返し実行する。これにより、ループアンテナ6の通信可能範囲に存在する全ての無線タグ20が順番に検出されることとなる。
【0027】
図6は、入退室管理装置14の機能的構成を示すブロック図である。
入退室管理装置14は、入口扉2A及び出口扉2Bのそれぞれに設けられた通信制御装置8から送信された利用者ID及び装置IDに基づいて、入出或いは退室した利用者Xを管理するものである。
具体的には、入退室管理装置14は、制御部70と、ネットワークI/F72と、データベース部74とを有している。
制御部70は、自装置の各部を中枢的に制御するものであり、プログラム実行手段としてのCPU、このCPUのワークエリアとして機能するRAM、各種プログラムや設定データを格納するROM等を有している。
ネットワークI/F72は、通信ネットワーク9に接続され、この通信ネットワーク9を介して通信制御装置8のそれぞれから利用者ID及び装置IDを受信し、制御部70に出力する。
【0028】
制御部70は、入退室特定部80と、データベースアクセス部82とを有している。入退室特定部80は、装置IDと、この装置IDが付された通信制御装置8が設置されている扉との対応関係に基づいて、利用者Xが入口扉2A及び出口扉2Bのどちらの扉を通過したかを特定し、特定結果を利用者IDと共にデータベースアクセス部82に出力する。
データベースアクセス部82は、利用者Xの入退室記録をデータベース部74に記録するものである。
【0029】
データベース部74は、入室記録データベース84Aと、退室記録データベース84Bとを備えている。
入室記録データベース84Aは、入口扉2Aを通過した利用者Xの利用者IDが通過日時と共に制御部70によって記録されるものであり、退室記録データベース84Bは、出口扉2Bを通過した利用者Xの利用者IDが通過日時と共に制御部70によって記録されるものである。したがって、これらの入室記録データベース84A及び退室記録データベース84Bの記録に基づいて、現時点で室内に居る利用者Xや、その利用者Xの滞在時間などが管理可能となる。
【0030】
次いで、本実施形態の動作について説明する。
IDカード4を所持した利用者Xが入口扉2A或いは出口扉2Bに近づいた場合、通信制御装置8のそれぞれが実行する利用者検出処理により、利用者Xが検出される。
この利用者検出処理について詳述すると、図7に示すように、通信制御装置8は、一定時間ごとにループアンテナ6に電流を流し、通信可能範囲に存在する全ての無線タグ20及びダミー無線タグ10に対してIDの応答を呼びかけるための信号を送出し、各無線タグ20及びダミー無線タグ10からの応答としての電波を受信する(ステップS1)。
【0031】
次いで、通信制御装置8は、ステップS1の受信結果に基づいて、混信が発生しているか否かを判定する(ステップS2)。すなわち、通信制御装置8は、受信信号から利用者ID又はダミーIDを復号できるか否かを判断し、復号できない場合には、混信が発生していると判断する(ステップS2:YES)。そして、混信が発生している場合には、そのときの電波の受信信号強度Eの最大値に基づいて、無線タグ20とダミー無線タグ10との間での混信か、又は、複数の無線タグ20間での混信かの混信種別を判定し(ステップS3)、その混信種別に基づいて、混信を解消するのに有効なガイド音声を音声合成出力装置12から周囲の利用者Xに対して出力する(ステップS4)。
【0032】
また、混信が発生していない場合(ステップS2:No)、通信制御装置8は、ステップS1の受信の結果、利用者IDが検出されたか否かを判断する(ステップS5)。
詳述すると、通信制御装置8においては、図8に示すように、ダミーIDが所定の受信信号強度Eth1又はEth2で定常的に検出されている。ここで、扉からIDカード4までの離間距離Rがダミー無線タグ10の離間距離R1又はR2よりも長いなどして、利用者IDの受信信号強度EがダミーIDの受信信号強度Eth1又はEth2よりも雑音とみなせる程度に小さい間(例えばEがEth1、Eth2の10分の1程度の間)は、利用者IDは検出されない。
一方、扉からIDカード4までの離間距離Rがダミー無線タグ10の離間距離R1又はR2よりも短くなるなどして、ミーIDの受信信号強度Eth1又はEth2が雑音とみなせる程度に利用者IDの受信信号強度Eが大きくなった場合(例えばEがEth1、Eth2の10倍程度になった場合)には、これら利用者IDが検出されることとなる。
なお、図8に示す利用者検出範囲は、あくまで一例であって、同図に示す利用者検出範囲とダミー無線タグ10の離間距離R1、R2の関係は、無線タグ10の電波の送信強度や、ループアンテナ6の受信感度、雑音とみなす受信信号強度Eの閾値等に応じて変化する。
【0033】
すなわち、利用者Xがダミー無線タグ10よりも入口扉2A又は出口扉2Bから遠くに居る場合、すなわち、入口扉2A又は出口扉2Bを通過し得ると判定可能な程度に近づいてない場合には利用者IDが検出されず(ステップS5:No)、利用者Xがダミー無線タグ10よりも入口扉2A又は出口扉2Bに近づいて、入口扉2A又は出口扉2Bを通過し得ると判定可能な場合に利用者IDが検出されることとなる(ステップS5:Yes)。
そして、通信制御装置8は、図7に示すように、利用者IDが検出された場合には(ステップS5:Yes)、この利用者IDを装置IDと共に入退室管理装置14に送信し(ステップS6)、利用者Xの通過を通知する。
【0034】
このように、本実施形態によれば、ダミー無線タグ10をループアンテナ6から離間して配置し、通信制御装置8がダミー無線タグ10の電波の受信信号強度Eth1又はEth2を超える受信信号強度Eの電波を発している無線タグ20を検出する構成としたため、ループアンテナ6が検出可能な無線タグ20までの距離が、ループアンテナ6の実際の通信可能距離よりも簡単に狭められ、ループアンテナ6に近づいた無線タグ20のみを検出可能にすることができる。
また、ループアンテナ6の通信可能距離内に無線タグ20が存在しない場合には、ダミー無線タグ10が常に検出されることとなるから、ループアンテナ6の周囲の電磁ノイズによって誤受信が発生することが無い。
さらに、検出可能にする無線タグ20までの距離を、ダミー無線タグ10とループアンテナ6との間の離間距離Rやダミー無線タグ10の送信出力を可変させることで簡単に調整することができる。
【0035】
また、本実施形態によれば、通信制御装置8は、無線タグ20の電波とダミー無線タグ10の電波とが混信した場合、或いは、複数の無線タグ20のそれぞれの電波が混信した場合に、利用者Xの移動を指示するガイド音声を出力するため、混信が生じた場合には、利用者Xを移動させて、電波の混信を速やかに解消することができる。
【0036】
また、本実施形態によれば、混信発生時の受信信号強度Eの最大値を、ダミー無線タグ10が発する電波の受信信号強度Eth1又はEth2と比較することで、その混信が、無線タグ20とダミー無線タグ10との間で発生しているのか、無線タグ20同士で発生しているのかを簡単に識別することができる。
【0037】
また、本実施形態によれば、通信制御装置8は、ダミー無線タグ10に供給するAC電源をオン/オフすることで、電波の発信を制御可能にしたため、ダミー無線タグ10の電波発信を停止することで、ループアンテナ6の通信可能距離内に存在する全ての無線タグ20を検出可能にすることができる。
【0038】
なお、上述した実施の形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の範囲内で任意に変形および応用が可能である。
例えば、上述した実施形態では、本発明を入退室管理システム1に適用した場合を例示したが、これに限らず、駅の構内への自動改札システムにも応用することが可能である。特に、本発明によれば、ループアンテナ6が設けられ入口扉2A又は出口扉2B等の通過点を無線タグ20が通過するだけで、その通過が検知されるため、例えば従来のICカードを利用した自動改札システムと比較して、本発明が適用された自動改札システムにおいては、利用者Xがカード読取部にICカードを近接させるなどの操作が不要となり、利便性の高い自動改札システムが実現される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施形態に係る入退室管理システムの構成を示す図。
【図2】入口扉の構成を模式的に示す図。
【図3】IDカードの機能的構成を示すブロック図。
【図4】ダミー無線タグの機能的構成を示すブロック図。
【図5】通信制御装置の機能的構成を示すブロック図。
【図6】入退室管理装置の機能的構成を示すブロック図。
【図7】利用者検出処理のフローチャート。
【図8】ダミー無線タグによる検出範囲の制限を示す図。
【符号の説明】
【0040】
1…入退室管理システム(無線タグ検出システム、通過検出システム)、4…IDカード、6…ループアンテナ、8…通信制御装置(受信装置)、10…ダミー無線タグ(固定発信装置)、12…音声合成出力装置、20…無線タグ、40…制御部、42…無線通信部、46…電源供給制御部(停止手段)、48…ガイド音声データ出力部、50…受信電界強度検出回路、56…通過検出部、58…混信処理部、E、Eth1、Eht2…受信信号強度、R…離間距離、X…利用者(移動物体)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定設置されたループアンテナと、
移動物体に設けられた無線タグが発する電波を前記ループアンテナを介して受信する受信装置と、
前記ループアンテナから離間して配置され、電波を発する固定発信装置とを有し、
前記受信装置は、前記固定発信装置が発する電波の受信信号強度を超える受信信号強度の電波を発している無線タグを検出する
ことを特徴とする無線タグ検出システム。
【請求項2】
請求項1に記載の無線タグ検出システムにおいて、
前記受信装置は、
前記無線タグの電波と前記固定発信装置の電波とが混信した場合、或いは、複数の前記無線タグのそれぞれの電波が混信した場合に、前記移動物体の移動を指示する
ことを特徴とする無線タグ検出システム。
【請求項3】
請求項2に記載の無線タグ検出システムにおいて、
前記受信装置は、
前記混信発生時の受信信号強度の最大値を、前記固定発信装置が発する電波の受信信号強度と比較し、前記無線タグの電波と前記固定発信装置の電波の混信であるか、或いは、複数の前記無線タグのそれぞれの電波の混信であるかを判定する
ことを特徴とする無線タグ検出システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の無線タグ検出システムにおいて、
前記受信装置は、前記固定発信装置の電波の発信を停止する停止手段を備える
ことを特徴とする無線タグ検出システム。
【請求項5】
固定設置されたループアンテナを介して、移動物体に設けられた無線タグが発する電波を受信し、前記無線タグを検出する無線タグ検出装置において、
前記ループアンテナを介して受信した電波の受信信号強度を検出する受信信号強度検出手段を有し、
前記受信信号強度検出手段は、前記ループアンテナから離間して配置された固定発信装置が発する電波の受信信号強度を超える受信信号強度の電波を発する無線タグを検出する
ことを備えることを特徴とする無線タグ検出装置。
【請求項6】
移動物体の通過検出点に固定設置されたループアンテナと、
前記移動物体に設けられた無線タグが発する電波を前記ループアンテナを介して受信する受信装置と、
前記ループアンテナから離間して配置され、電波を発する固定発信装置とを有し、
前記受信装置は、前記固定発信装置が発する電波の受信信号強度を超える受信信号強度の電波を発している無線タグを検出して前記移動物体の通過を検出する
ことを特徴とする通過検出システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−110087(P2009−110087A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−279171(P2007−279171)
【出願日】平成19年10月26日(2007.10.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】