説明

無線タグ通信装置

【課題】過渡応答の影響を好適に抑制する無線タグ通信装置を提供する。
【解決手段】受信用アンテナ24から受信処理部としてのDSP16への受信信号の伝達を抑制し得る信号伝達調整部28、36と、少なくとも送信用アンテナ22から変調信号を含む送信信号が送信されている間はその受信用アンテナ24からDSP16への受信信号の伝達を抑制するように信号伝達調整部28、36を制御する信号伝達制御部46とを、備えたものであることから、送信側からの回り込み信号によって返信信号の先頭部分が潰れてしまうという不具合の発生を好適に防止でき、特に無線タグ14からの応答開始時において好適な通信を実現できる。すなわち、過渡応答の影響を好適に抑制する無線タグ通信装置12を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線にて情報の書き込みや読み出しができる無線タグとの間で通信を行う無線タグ通信装置に関し、特に、過渡応答の影響を抑制するための改良に関する。
【背景技術】
【0002】
所定の情報が記憶された小型の無線タグ(応答器)から所定の無線タグ通信装置(質問器)により非接触にて情報の読み出しを行うRFID(Radio Frequency Identification)システムが知られている。このRFIDシステムは、無線タグが汚れている場合や見えない位置に配置されている場合であっても無線タグ通信装置との通信によりその無線タグに記憶された情報を読み出すことが可能であることから、商品管理や検査工程等の様々な分野において実用が期待されている。
【0003】
上記無線タグ通信装置による無線タグとの通信において、過渡応答の影響により好適な通信が阻害されるという不具合があった。そこで、斯かる過渡応答の影響を抑制する技術が提案されている。例えば、特許文献1に記載されたデータキャリア用質問機がそれである。この技術によれば、擬似データキャリアにより信号波形を受信し、その受信された信号波形と送信データとから期待される所定の応答波形とを比較して、その比較結果の誤差分を修正するように送信コイルの駆動レベルにフィードバックをかけることにより、質問機からの信号の変換に伴う過渡応答の影響を減らして好適な通信が実現できるとされている。
【0004】
【特許文献1】特開2001−53642号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記無線タグ通信装置による無線タグとの通信における送信変調波の過渡応答の影響として、その無線タグ通信装置から送信される送信信号(質問波)の変調度が無線タグから返信される返信信号(応答波)の変調度に比べて大きく、過渡応答期間が無線タグからの返信信号の返信期間と重なることで、送信側からの回り込み信号によって返信信号の先頭部分が潰れてしまうという不具合があり、前述したような従来の技術では、斯かる不具合を解消できなかった。このため、過渡応答の影響を好適に抑制する無線タグ通信装置の開発が求められていた。
【0006】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、過渡応答の影響を好適に抑制する無線タグ通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
斯かる目的を達成するために、本発明の要旨とするところは、無線タグに向けて送信信号を送信用アンテナから送信する送信処理部と、その送信信号に応じて前記無線タグから返信される返信信号を受信用アンテナにより受信してその受信された受信信号の処理を行う受信処理部とを、備えた無線タグ通信装置であって、前記受信用アンテナから前記受信処理部への受信信号の伝達を抑制し得る信号伝達調整部と、少なくとも前記送信用アンテナから変調信号を含む送信信号が送信されている間は前記受信用アンテナから前記受信処理部への受信信号の伝達を抑制するように前記信号伝達調整部を制御する信号伝達制御部とを、備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
このようにすれば、前記受信用アンテナから前記受信処理部への受信信号の伝達を抑制し得る信号伝達調整部と、少なくとも前記送信用アンテナから変調信号を含む送信信号が送信されている間は前記受信用アンテナから前記受信処理部への受信信号の伝達を抑制するように前記信号伝達調整部を制御する信号伝達制御部とを、備えたものであることから、送信側からの回り込み信号によって返信信号の先頭部分が潰れてしまうという不具合の発生を好適に防止でき、特に無線タグからの応答開始時において好適な通信を実現できる。すなわち、過渡応答の影響を好適に抑制する無線タグ通信装置を提供することができる。
【0009】
ここで、好適には、前記受信処理部による処理に先立ち、前記受信用アンテナにより受信された受信信号の処理を行ってその受信処理部へ供給する第2の受信処理部を有し、前記信号伝達制御部は、その第2の受信処理部と前記受信処理部との間の信号伝達経路に備えられたものである。このようにすれば、前記第2の受信処理部として検波部等の構成を備えた無線タグ通信装置において、過渡応答の影響を好適に抑制することができる。
【0010】
また、好適には、前記無線タグから前記変調信号に基づく応答が開始されたか否かを判定するタイミング判定部を備え、前記信号伝達制御部は、そのタイミング判定部による判定が肯定される場合には、前記受信用アンテナから前記受信処理部への受信信号の伝達の抑制を解除するように前記信号伝達調整部を制御するものである。このようにすれば、前記無線タグからの応答開始後は前記受信信号の伝達の抑制が解除され、その無線タグとの間で好適な通信を実現できる。
【0011】
また、好適には、前記受信信号の伝達経路にその受信信号の直流成分を除去するためのコンデンサを備えたものである。このようにすれば、前記受信信号の直流成分を好適に除去することができ、前記無線タグとの間で好適な通信を実現できる。
【0012】
また、好適には、前記信号伝達調整部は、前記受信信号の伝達経路を接地することによりその受信信号の伝達を抑制するものである。このようにすれば、実用的な態様で前記受信信号の伝達を抑制することができる。
【0013】
また、好適には、前記信号伝達調整部は、前記受信信号の伝達経路を遮断することによりその受信信号の伝達を抑制するものである。このようにすれば、実用的な態様で前記受信信号の伝達を抑制することができる。
【0014】
また、好適には、前記信号伝達調整部は、前記コンデンサの両電極を短絡させることにより前記受信信号の伝達を抑制するものである。このようにすれば、実用的な態様で前記受信信号の伝達を抑制することができる。
【0015】
また、好適には、前記信号伝達調整部は、前記受信信号の伝達経路に可変減衰部を備え、その可変減衰部の減衰率を変化させることにより前記受信信号の伝達を抑制するものである。このようにすれば、実用的な態様で前記受信信号の伝達を抑制することができる。
【0016】
また、好適には、前記信号伝達調整部は、前記受信信号の伝達経路に可変増幅部を備え、その可変増幅部の増幅率を変化させることにより前記受信信号の伝達を抑制するものである。このようにすれば、実用的な態様で前記受信信号の伝達を抑制することができる。
【0017】
また、好適には、前記送信用アンテナと受信用アンテナとは、それぞれ個別に備えられたものである。このようにすれば、前記送信用アンテナと受信用アンテナとをそれぞれ個別に備えた無線タグ通信装置において、過渡応答の影響を好適に抑制することができる。
【0018】
また、好適には、前記送信信号を送信すると共に、その送信信号に応じて前記無線タグから返信される返信信号を受信する送受信用アンテナを備えたものである。このようにすれば、送受信共用のアンテナを備えた無線タグ通信装置において、過渡応答の影響を好適に抑制することができる。
【0019】
以下、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例】
【0020】
図1は、本発明が好適に適用される無線タグ通信システム10について説明する図である。この無線タグ通信システム10は、本発明の一実施例である無線タグ通信装置12と、その無線タグ通信装置12の通信対象である単数乃至は複数(図1では単数)の無線タグ14とから構成される所謂RFID(Radio Frequency Identification)システムであり、上記無線タグ通信装置12はそのRFIDシステムの質問器として、上記無線タグ14は応答器としてそれぞれ機能する。すなわち、上記無線タグ通信装置12から質問波F(送信信号)が上記無線タグ14に向けて送信されると、その質問波Fを受信した上記無線タグ14において所定のコマンド(送信データ)によりその質問波Fが変調され、応答波F(返信信号)として上記無線タグ通信装置12に向けて返信されることで、その無線タグ通信装置12と無線タグ14との間で情報の通信が行われる。この無線タグ通信システム10は、例えば、所定の通信領域内における物品の管理等に用いられるものであり、上記無線タグ14は、好適には、管理対象である物品に貼られる等してその物品と一体的に設けられている。
【0021】
図2は、上記無線タグ通信装置12の構成を説明する図である。この図2に示すように、本実施例の無線タグ通信装置12は、上記無線タグ14に対する情報の読み書きや、その無線タグ14の方向検知等を実行するためにその無線タグ14との間で情報の通信を行うものであり、送信データをディジタル信号として出力したり、上記無線タグ14からの返信信号を復調する等のディジタル信号処理を実行するDSP(Digital Signal Processor)16と、上記送信信号の搬送波を発生させる搬送波発生部18と、その搬送波発生部18から出力される搬送波に上記DSP16から供給される送信データを乗せて出力する送信アンプ20と、その送信アンプ20から供給される信号を質問波Fとして送信するための送信用アンテナ22と、前記無線タグ14からの応答波Fを受信するための受信用アンテナ24と、上記搬送波発生部18から供給される搬送波に基づいて上記受信用アンテナ24により受信された受信信号のホモダイン検波を行うホモダイン検波部26と、そのホモダイン検波部26から出力されるI相信号(同相成分)の伝達を抑制し得るI相信号伝達調整部28と、そのI相信号伝達調整部28から出力される信号のうち所定の周波数帯域の信号のみを通過させるI相バンドパスフィルタ30と、そのI相バンドパスフィルタ30から供給される信号を増幅させるI相増幅部32と、そのI相増幅部32から供給される信号をディジタル信号に変換して上記DSP16へ供給するI相A/D変換部34と、上記ホモダイン検波部26から出力されるQ相信号(直交成分)の伝達を抑制し得るQ相信号伝達調整部36と、そのQ相信号伝達調整部36から出力される信号のうち所定の周波数帯域の信号のみを通過させるQ相バンドパスフィルタ38と、そのQ相バンドパスフィルタ38から供給される信号を増幅させるQ相増幅部40と、そのQ相増幅部40から供給される信号をディジタル信号に変換して上記DSP16へ供給するQ相A/D変換部42とを、備えて構成されている。ここで、上記搬送波発生部18及び送信アンプ20が送信処理部に、上記ホモダイン検波部26が第2の受信処理部にそれぞれ相当する。
【0022】
前記DSP16は、中央演算処理装置であるCPU、読出専用メモリであるROM、及び随時書込読出メモリであるRAM等を備え、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行う所謂マイクロコンピュータシステムであり、送信データ生成部44、信号伝達制御部46、及びタイミング判定部48を機能的に備えている。これらの制御機能については後述する。
【0023】
図3は、前記I相信号伝達調整部28及びQ相信号伝達調整部36に共通の構成を説明する図である。以下、前記I相信号伝達調整部28及びQ相信号伝達調整部36を特に区別しない場合には、単に信号伝達調整部28、36と称する。この図3に示すように、斯かる信号伝達調整部28、36は、例えば、前記ホモダイン検波部26からI相バンドパスフィルタ30又はQ相バンドパスフィルタ38(以下、特に区別しない場合にはバンドパスフィルタ30、38と称する)への信号伝達経路に信号の直流成分を除去するためのコンデンサ50を備えると共に、そのコンデンサ50とバンドパスフィルタ30、38との間の信号伝達経路を直接的又は抵抗を介する等して間接的に接地することにより信号の伝達を抑制するための開閉部52を備えて構成されている。この信号伝達調整部28、36は、後述する信号伝達制御部46からの指令に基づく上記開閉器52の開閉制御によって前記ホモダイン検波部26からバンドパスフィルタ30、38への信号伝達の抑制乃至は抑制の解除を行う。すなわち、上記開閉部52が接続される(閉とされる)ことで前記コンデンサ50とバンドパスフィルタ30、38との間の信号伝達経路が接地されてその信号伝達経路における信号の伝達が抑制される一方、上記開閉部52が開放される(開とされる)ことで前記コンデンサ50からバンドパスフィルタ30、38への信号伝達の抑制が解除される。また、前記バンドパスフィルタ30、38は、例えば図3に示すように、コイル54及びコンデンサ56を備えて構成されている。
【0024】
図4は、前記信号伝達調整部28、36の他の態様を説明する図である。この図4に示すように、前記信号伝達調整部28、36は、信号伝達経路に上記コンデンサ50を備えると共に、そのコンデンサ50とバンドパスフィルタ30、38との間の信号伝達経路を遮断することにより信号の伝達を抑制するための開閉部58を備えて構成されたものであってもよい。斯かる信号伝達調整部28、36では、後述する信号伝達制御部46からの指令に応じて上記開閉部58が開放される(開とされる)ことで前記コンデンサ50とバンドパスフィルタ30、38との間の信号伝達経路が遮断されてその信号伝達経路における信号の伝達が抑制される一方、上記開閉部58が接続される(閉とされる)ことで前記コンデンサ50からバンドパスフィルタ30、38への信号伝達の抑制が解除される。
【0025】
図5は、前記信号伝達調整部28、36の更に別の態様を説明する図である。この図5に示すように、前記信号伝達調整部28、36は、信号伝達経路に上記コンデンサ50を備えると共に、そのコンデンサ50の両電極を直接的又は間接的に短絡させることにより信号の伝達を抑制するための開閉部60及び抵抗62を備えて構成されたものであってもよい。斯かる信号伝達調整部28、36では、後述する信号伝達制御部46からの指令に応じて上記開閉部60が接続される(閉とされる)ことで前記コンデンサ50の両電極が短絡させられて信号伝達経路における信号の伝達が抑制される一方、上記開閉部60が開放される(開とされる)ことで前記コンデンサ50からバンドパスフィルタ30、38への信号伝達の抑制が解除される。
【0026】
図6は、前記無線タグ14に備えられた無線タグ回路素子64の構成を説明する図である。この図6に示すように、上記無線タグ回路素子64は、前記無線タグ通信装置12との間で信号の送受信を行うためのアンテナ部66と、そのアンテナ部66により受信された信号を処理するためのIC回路部68とを、備えて構成されている。そのIC回路部68は、上記アンテナ部66により受信された前記無線タグ通信装置12からの質問波Fを整流する整流部70と、その整流部70により整流された質問波Fのエネルギを蓄積するための電源部72と、上記アンテナ部66により受信された搬送波からクロック信号を抽出して制御部80に供給するクロック抽出部74と、所定の情報信号を記憶し得る情報記憶部として機能するメモリ部76と、上記アンテナ部66に接続されて信号の変調及び復調を行う変復調部78と、上記整流部70、クロック抽出部74、及び変復調部78等を介して上記無線タグ回路素子64の作動を制御するための制御部80とを、機能的に含んでいる。この制御部80は、前記無線タグ通信装置12と通信を行うことにより上記メモリ部76に上記所定の情報を記憶する制御や、上記アンテナ部66により受信された質問波Fを上記変復調部78において上記メモリ部76に記憶された情報信号に基づいて変調したうえで応答波Fとして上記アンテナ部66から反射返信する制御等の基本的な制御を実行する。
【0027】
図2に戻って、前記無線タグ通信装置12のDSP16に備えられた送信データ生成部44は、前記送信アンプ20における変調信号としての送信データを生成してその送信アンプ20へ供給する。この送信データとは、例えば所定のコマンドビット列等であり、前記送信アンプ20は、この送信データ生成部44から供給される送信データを前記搬送波発生部18から供給される搬送波に乗せて前記送信用アンテナ22から前記無線タグ14へ向けて送信する。
【0028】
前記信号伝達制御部46は、前記I相信号伝達調整部28及びQ相信号伝達調整部36を介して前記受信用アンテナ24から受信処理部としての前記DSP16への受信信号の伝達を制御する。具体的には、少なくとも前記送信用アンテナ22から変調信号(送信データ)を含む送信信号が送信されている間、換言すれば、前記送信用アンテナ22から前記送信アンプ20へ送信データが供給されている間は、前記受信用アンテナ24から前記DSP16への受信信号の伝達を抑制するように前記I相信号伝達調整部28及びQ相信号伝達調整部36を制御する。
【0029】
前記タイミング判定部48は、前記送信用アンテナ22から送信された送信信号に応じて、前記無線タグ14から前記変調信号(送信データ)に基づく応答が開始されたか否かを判定する。前記無線タグ14が送信信号を受信してからその送信信号に含まれる送信データに基づく応答を開始するまでの時間は予めわかっているため、前記タイミング判定部48は、好適には、前記送信用アンテナ22から前記変調信号を含む送信信号を送信してから予め定められた所定時間が経過したか否かに基づいて、前記無線タグ14からその変調信号に基づく応答が開始されたか否かを判定する。
【0030】
ここで、前記信号伝達制御部46は、好適には、前記タイミング判定部48による判定が否定されるうちは、前記受信用アンテナ24から前記DSP16への受信信号の伝達を抑制するように前記I相信号伝達調整部28及びQ相信号伝達調整部36を制御する一方、前記タイミング判定部48による判定が肯定される場合には、前記受信用アンテナ24から前記DSP16への受信信号の伝達の抑制を解除するように前記I相信号伝達調整部28及びQ相信号伝達調整部36を制御する。
【0031】
図7は、前記無線タグ通信装置12のDSP16による無線タグ通信制御の要部を説明するフローチャートであり、所定の周期で繰り返し実行されるものである。
【0032】
先ず、ステップ(以下、ステップを省略する)S1において、前記信号伝達調整部28、36が前記受信用アンテナ24から前記DSP16への受信信号の伝達を抑制する状態とされ、受信信号の伝達抑制が開始される。次に、S2において、前記送信データ生成部44から前記送信アンプ20へ送信データ(コマンド)が供給され、前記送信用アンテナ22から前記無線タグ14へ向けての送信信号の送信が開始される。次に、S3において、前記無線タグ14へ向けてのコマンド送信すなわち送信データを含む送信信号の送信が終了したか否かが判断される。このS3の判断が否定されるうちは、S3の判断が繰り返されることにより待機させられるが、S3の判断が肯定される場合には、S4において、前記信号伝達調整部28、36が前記受信用アンテナ24から前記DSP16への受信信号の伝達を抑制しない状態とされ、受信信号の伝達抑制が解除される。次に、S5において、前記無線タグ14からの返信信号が前記受信用アンテナ24により受信され、前記ホモダイン検波部26によりその受信信号の検波が行われると共に、前記DSP16においてその受信信号のデータ解釈が行われた後、本ルーチンが終了させられる。以上の制御において、S1及びS4が前記信号伝達制御部46の動作に対応する。
【0033】
図8は、前記無線タグ通信装置12のDSP16による無線タグ通信制御の他の一例の要部を説明するフローチャートであり、所定の周期で繰り返し実行されるものである。なお、この制御において、上述した図7の制御と共通のステップについては同一の符号を付してその説明を省略する。この制御では、上述したS2の処理に続いて、前記タイミング判定部48の動作に対応するS6において、前記無線タグ14から前記変調信号に基づく応答が開始されたか否かが判断される。このS6の判断が否定されるうちは、S6の判断が繰り返されることにより待機させられるが、S6の判断が肯定される場合には、上述したS4以下の処理が実行される。なお、S6における待機時間は、前記無線タグ14の応答データを全て確実に受信するために、送信信号を送信開始時から前記無線タグ14が送信信号に含まれる送信データに基づく応答を開始するまでの時間より短くする必要がある。
【0034】
このように、本実施例によれば、前記受信用アンテナ24から受信処理部としてのDSP16への受信信号の伝達を抑制し得る信号伝達調整部28、36と、少なくとも前記送信用アンテナ22から変調信号を含む送信信号が送信されている間は前記受信用アンテナ24から前記DSP16への受信信号の伝達を抑制するように前記信号伝達調整部28、36を制御する信号伝達制御部46(S1及びS4)とを、備えたものであることから、送信側からの回り込み信号によって返信信号の先頭部分が潰れてしまうという不具合の発生を好適に防止でき、特に無線タグ14からの応答開始時において好適な通信を実現できる。すなわち、過渡応答の影響を好適に抑制する無線タグ通信装置12を提供することができる。
【0035】
また、前記DSP16による処理に先立ち、前記受信用アンテナ24により受信された受信信号の処理を行ってそのDSP16へ供給する第2の受信処理部としてのホモダイン検波部26を有し、前記信号伝達制御部46は、そのホモダイン検波部26と前記DSP16との間の信号伝達経路に備えられたものであるため、前記第2の受信処理部としてホモダイン検波部26等の構成を備えた無線タグ通信装置12において、過渡応答の影響を好適に抑制することができる。
【0036】
また、前記無線タグ14から前記変調信号に基づく応答が開始されたか否かを判定するタイミング判定部48(S6)を備え、前記信号伝達制御部28、36は、そのタイミング判定部48による判定が肯定される場合には、前記受信用アンテナ24から前記DSP16への受信信号の伝達の抑制を解除するように前記信号伝達調整部28、36を制御するものであるため、前記無線タグ14からの応答開始後は前記受信信号の伝達の抑制が解除され、その無線タグ14との間で好適な通信を実現できる。
【0037】
また、前記信号伝達調整部28、36は、前記受信信号の伝達経路にその受信信号の直流成分を除去するためのコンデンサ50を備えたものであるため、前記受信信号の直流成分を好適に除去することができ、前記無線タグ14との間で好適な通信を実現できる。
【0038】
また、前記信号伝達調整部28、36は、前記受信信号の伝達経路を接地することによりその受信信号の伝達を抑制するものであるため、実用的な態様で前記受信信号の伝達を抑制することができる。
【0039】
また、前記信号伝達調整部28、36は、前記受信信号の伝達経路を遮断することによりその受信信号の伝達を抑制するものであるため、実用的な態様で前記受信信号の伝達を抑制することができる。
【0040】
また、前記信号伝達調整部28、36は、前記コンデンサ50の両電極を短絡させることにより前記受信信号の伝達を抑制するものであるため、実用的な態様で前記受信信号の伝達を抑制することができる。
【0041】
また、前記送信用アンテナ22と受信用アンテナ24とは、それぞれ個別に備えられたものであるため、それら送信用アンテナ22と受信用アンテナ24とをそれぞれ個別に備えた無線タグ通信装置12において、過渡応答の影響を好適に抑制することができる。
【0042】
続いて、本発明の他の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の説明において、実施例相互に共通する部分については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0043】
図9は、本発明の他の実施例である無線タグ通信装置82の構成を説明する図である。この図9に示すように、本実施例の無線タグ通信装置82は、前記受信用アンテナ24とホモダイン検波部26との間の信号伝達経路に、その受信用アンテナ24からホモダイン検波部26への受信信号の伝達を抑制し得る信号伝達調整部84を備えて構成されている。また、本実施例の無線タグ通信装置82のDSP16に備えられた信号伝達制御部46は、その信号伝達調整部84を介して前記受信用アンテナ24から受信処理部としての前記ホモダイン検波部26の下流側の回路、すなわち前記I相バンドパスフィルタ30、I相増幅部32、I相A/D変換部34、Q相バンドパスフィルタ38、Q相増幅部40、Q相A/D変換部42、乃至はDSP16等の受信回路への受信信号の伝達を制御する。
【0044】
図10は、上記信号伝達調整部84の構成を例示する図である。この図10に示すように、上記信号伝達調整部84は、零に近い増幅率を有する増幅部86を備えると共に、その増幅部86を経由する回路と経由しない回路とを切り替える第1開閉部88及び第2開閉部90を備えて構成されている。斯かる信号伝達調整部84では、前記信号伝達制御部46からの指令に応じて上記第1開閉部88及び第2開閉部90が何れも図10に示す端子aに接続されて上記増幅部86を経由する回路が成立させられることで前記受信用アンテナ24とホモダイン検波部26との間の信号伝達経路における信号の伝達が抑制される一方、上記第1開閉部88及び第2開閉部90が何れも図10に示す端子bに接続されて上記増幅部86を経由しない回路が成立させられることで前記受信用アンテナ24からホモダイン検波部26への信号伝達の抑制が解除される。
【0045】
図11は、前記信号伝達調整部84の他の構成を例示する図である。この図11に示すように、前記信号伝達調整部84は、前記受信信号の伝達経路に可変減衰部92を備え、その可変減衰部92の減衰率を変化させることにより前記受信信号の伝達を抑制するものであってもよい。斯かる信号伝達調整部84では、前記信号伝達制御部46からの指令に応じて上記可変減衰部92における減衰率が高められることで前記受信用アンテナ24とホモダイン検波部26との間の信号伝達経路における信号の伝達が抑制される一方、その可変減衰部92における減衰率が低下させられることで前記受信用アンテナ24からホモダイン検波部26への信号の伝達抑制が解除される。また、ここでは信号伝達経路に可変減衰部92を備えた構成を例示しているが、この可変減衰部92の代替として可変増幅部を備え、その可変増幅部の増幅率を零に近づけることにより信号伝達経路における信号の伝達を抑制する態様も考えられる。斯かる構成によれば、前記信号伝達調整部84は、前記受信信号の伝達経路に可変減衰部(可変増幅部)92を備え、その可変減衰部92の減衰率(増幅率)を変化させることにより前記受信信号の伝達を抑制するものであるため、実用的な態様で前記受信信号の伝達を抑制することができる。
【0046】
図12は、前記信号伝達調整部84の更に別の構成を例示する図である。この図12に示すように、前記信号伝達調整部84は、前記受信用アンテナ24とホモダイン検波部26との間の信号伝達経路を抵抗96を介して間接的に接地することにより信号の伝達を抑制するための開閉部94を備えて構成されたものであってもよい。斯かる信号伝達調整部84では、前記信号伝達制御部46からの指令に応じて上記開閉部94が接続される(閉とされる)ことで前記受信用アンテナ24とホモダイン検波部26との間の信号伝達経路が接地されてその信号伝達経路における信号の伝達が抑制される一方、上記開閉部94が開放される(開とされる)ことで前記受信用アンテナ24からホモダイン検波部26への信号伝達の抑制が解除される。なお、前記ホモダイン検波部26と開閉部94の間での多重反射を抑えることができるため、前記抵抗96を受信アンテナ24とホモダイン検波部26を結ぶ伝送線路の特性インピーダンスと等しくするのが望ましい。
【0047】
図13は、本発明の更に別の実施例である無線タグ通信装置98の構成を説明する図である。この図13に示すように、本実施例の無線タグ通信装置98は、前記送信信号を送信すると共に、その送信信号に応じて前記無線タグ14から返信される返信信号を受信する送受信用アンテナ100と、前記送信アンプ20から出力される送信信号をその送受信用アンテナ100へ供給すると共に、その送受信用アンテナ100により受信された受信信号を前記ホモダイン検波部26へ供給する送受信分離部102とを、備えて構成されている。斯かる構成では、送受信共用のアンテナ100を備えた無線タグ通信装置98において、過渡応答の影響を好適に抑制することができる。
【0048】
以上、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、更に別の態様においても実施される。
【0049】
例えば、前述の実施例において、前記信号伝達制御部46及びタイミング判定部48等は、前記DSP16の制御機能として備えられたものであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばそれら制御機能を有する制御装置がそれぞれ個別に備えられたものであってもよい。また、それら制御機能による制御はディジタル信号処理であると、アナログ信号処理であるとを問わない。
【0050】
また、前述の実施例では、(a)前記ホモダイン検波部26とDSP16との間の信号伝達経路に信号伝達調整部28、36が設けられた例と、(b)前記受信用アンテナ24とホモダイン検波部26との間の信号伝達経路に信号伝達調整部84が設けられた例とについて説明したが、送信側からの回り込み信号によって返信信号の先頭部分が潰れないようにするという本発明の効果を奏する限りにおいて、信号伝達調整部は受信回路のどの位置に設けられてもよい。
【0051】
また、前述の実施例では、検波回路としてホモダイン検波部26を用いたが、ヘテロダイン検波など他の回路構成を備えた装置でも同等の効果を得られるため、他の回路構成を備えた無線タグ通信装置にも本発明は好適に適用されるものであることは言うまでもない。
【0052】
また、前述の実施例では、説明の簡略化のために特に言及していないが、送信側からの回り込み信号を抑制するためのキャンセル回路等を備えた無線タグ通信装置にも本発明は好適に適用されるものであることは言うまでもない。
【0053】
その他、一々例示はしないが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が加えられて実施されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明が好適に適用される無線タグ通信システムについて説明する図である。
【図2】本発明の一実施例である無線タグ通信装置の構成を説明する図である。
【図3】図2の無線タグ通信装置に備えられた信号伝達調整部の構成の一例を説明する図である。
【図4】図2の無線タグ通信装置に備えられた信号伝達調整部の構成の他の例を説明する図である。
【図5】図2の無線タグ通信装置に備えられた信号伝達調整部の構成の更に別の例を説明する図である。
【図6】図2の無線タグ通信装置の通信対象である無線タグに備えられた無線タグ回路素子の構成を説明する図である。
【図7】図2の無線タグ通信装置のDSPによる無線タグ通信制御の要部を説明するフローチャートである。
【図8】図2の無線タグ通信装置のDSPによる無線タグ通信制御の他の一例の要部を説明するフローチャートである。
【図9】本発明の他の実施例である無線タグ通信装置の構成を説明する図である。
【図10】図9の無線タグ通信装置に備えられた信号伝達調整部の構成の一例を説明する図である。
【図11】図9の無線タグ通信装置に備えられた信号伝達調整部の構成の他の例を説明する図である。
【図12】図9の無線タグ通信装置に備えられた信号伝達調整部の構成の更に別の例を説明する図である。
【図13】本発明の更に別の実施例である無線タグ通信装置の構成を説明する図である。
【符号の説明】
【0055】
12、82、98:無線タグ通信装置
14:無線タグ
16:DSP(受信処理部)
22:送信用アンテナ
24:受信用アンテナ
26:ホモダイン検波部(第2の受信処理部)
28:I相信号伝達調整部
36:Q相信号伝達調整部
46:信号伝達制御部
48:タイミング判定部
50:コンデンサ
84:信号伝達調整部
92:可変減衰部
100:送受信用アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線タグに向けて送信信号を送信用アンテナから送信する送信処理部と、該送信信号に応じて前記無線タグから返信される返信信号を受信用アンテナにより受信してその受信された受信信号の処理を行う受信処理部とを、備えた無線タグ通信装置であって、
前記受信用アンテナから前記受信処理部への受信信号の伝達を抑制し得る信号伝達調整部と、
少なくとも前記送信用アンテナから変調信号を含む送信信号が送信されている間は前記受信用アンテナから前記受信処理部への受信信号の伝達を抑制するように前記信号伝達調整部を制御する信号伝達制御部と
を、備えたものであることを特徴とする無線タグ通信装置。
【請求項2】
前記受信処理部による処理に先立ち、前記受信用アンテナにより受信された受信信号の処理を行って該受信処理部へ供給する第2の受信処理部を有し、前記信号伝達制御部は、該第2の受信処理部と前記受信処理部との間の信号伝達経路に備えられたものである請求項1の無線タグ通信装置。
【請求項3】
前記無線タグから前記変調信号に基づく応答が開始されたか否かを判定するタイミング判定部を備え、前記信号伝達制御部は、該タイミング判定部による判定が肯定される場合には、前記受信用アンテナから前記受信処理部への受信信号の伝達の抑制を解除するように前記信号伝達調整部を制御するものである請求項1又は2の無線タグ通信装置。
【請求項4】
前記受信信号の伝達経路に該受信信号の直流成分を除去するためのコンデンサを備えたものである請求項1から3の何れかの無線タグ通信装置。
【請求項5】
前記信号伝達調整部は、前記受信信号の伝達経路を接地することにより該受信信号の伝達を抑制するものである請求項1から4の何れかの無線タグ通信装置。
【請求項6】
前記信号伝達調整部は、前記受信信号の伝達経路を遮断することにより該受信信号の伝達を抑制するものである請求項1から4の何れかの無線タグ通信装置。
【請求項7】
前記信号伝達調整部は、前記コンデンサの両電極を短絡させることにより前記受信信号の伝達を抑制するものである請求項4の無線タグ通信装置。
【請求項8】
前記信号伝達調整部は、前記受信信号の伝達経路に可変減衰部を備え、該可変減衰部の減衰率を変化させることにより前記受信信号の伝達を抑制するものである請求項1から4の何れかの無線タグ通信装置。
【請求項9】
前記信号伝達調整部は、前記受信信号の伝達経路に可変増幅部を備え、該可変増幅部の増幅率を変化させることにより前記受信信号の伝達を抑制するものである請求項1から4の何れかの無線タグ通信装置。
【請求項10】
前記送信用アンテナと受信用アンテナとは、それぞれ個別に備えられたものである請求項1から9の何れかの無線タグ通信装置。
【請求項11】
前記送信信号を送信すると共に、該送信信号に応じて前記無線タグから返信される返信信号を受信する送受信用アンテナを備えたものである請求項1から9の何れかの無線タグ通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−85709(P2008−85709A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−263924(P2006−263924)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】