無線中継システムにおける無線基地局
【課題】無線中継システムにおける再送処理の遅延を抑制する。
【解決手段】BS1が、自局よりも下位のRS2からMS3に至る経路の無線リンクにおいて新規データを送信するための無線リソースの第1の割当情報を生成し、過去の送信データに対する受信結果の下位のRS2又はMS3からの受信を待たずに、第1の割当情報と新規データとを下位のRS2又はMS3へ送信する。
【解決手段】BS1が、自局よりも下位のRS2からMS3に至る経路の無線リンクにおいて新規データを送信するための無線リソースの第1の割当情報を生成し、過去の送信データに対する受信結果の下位のRS2又はMS3からの受信を待たずに、第1の割当情報と新規データとを下位のRS2又はMS3へ送信する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線中継システムにおける無線基地局に関する。
【背景技術】
【0002】
IEEE802.16 WG(Working Group)では、無線基地局(BS:Base Station)に複数の無線端末(MS:Mobile Station)が接続可能なPoint-to-Multipoint(P−MP)型通信方式を規定している。IEEE802.16 WG(ワーキンググループ)では、主に固定通信用途向けのIEEE802.16d仕様(802.16-2004)と移動通信用途向けのIEEE802.16e仕様(IEEE802.16e-2005)の2種類を規定している(後記非特許文献1,2参照)。これらの仕様では、複数の物理層が規定されているが、直交周波数分割多重(OFDMやOFDMAなど)の技術が主に使用される。
【0003】
図19に、IEEE802.16d/e準拠のサービスイメージ(無線通信システム構成例)を示す。この図19に示すように、IEEE802.16d/e準拠のシステムでは、1台のBSに複数のMSが接続するポイントツーマルチポイント(P−MP)型接続を基本とする。
しかしながら、このようなBSとMSとがP−MPで接続するサービス形態では、サービスエリアがBSのカバーエリア(セル)に制限され、セルエッジでは通信レートが低くなる。
【0004】
そこで、IEEE802.16 WGでは、BSとMSとの間の通信を中継する無線中継局(Relay Station:RS)の検討を行なうタスクグループ(IEEE802.16j)を立ち上げ、検討を開始している。図20に、RSを導入した場合のシステム構成例を示す。この図20に示すように、BSがカバーできないエリアに存在するMSとの通信を、RSを介して行なうことにより、BSのサービスエリアを拡大することが可能である。
【0005】
一方、後記特許文献1に記載された技術では、RSを介した中継システムにおいて、BSがRSとMSとの間の通信のスケジューリングを決定する。RSは、BSからRSとMSとの間についてのスケジューリング情報〔無線フレームの構成に関する情報や無線リソースの割当情報(OFDM方式やOFDMA方式におけるDL/UL MAP)などが含まれる〕を受信し、そのスケジューリング情報に基づいて、RSとMSとの間の通信制御を実行する。この場合、スケジューリング処理をBSが集中的に実行するため、RSは簡易な構成にすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−74325号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】IEEE Std 802.16(TM)-2004
【非特許文献2】IEEE Std 802.16e(TM)-2005
【非特許文献3】Eugene Visotsky, et al.,“Proposal for Centralized HARQ Retransmission Scheduling”,IEEE C80216j-07_226,2007-03-05
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記特許文献1が示すように、BSがRSとの間の通信やRSとMSとの間の通信のスケジューリングを全て行なう場合、RSは、他のRSとの間およびRSとMSとの間の通信状況や無線状況などの情報をBSに逐次報告する必要がある。そして、BSは、RSから送信されてくる情報を基に、RS間およびRSとMSとの間のスケジューリングを行ない、それらのリンクに対するスケジューリング情報を生成する。
【0009】
ところで、無線通信において、データ伝送の信頼性を上げるために、HARQ(Hybrid Automatic Repeat reQuest)と呼ばれる技術が提案されている。HARQは、データが誤った場合のデータの再送に加え、データの誤り訂正を組み合わせた技術である。受信局は、HARQデータを受信したときに誤り訂正用の冗長ビットを用いて誤り訂正を行なう。誤りが訂正できなかった場合は、そのHARQデータをメモリに蓄積し、送信局からの再送を要請する。そして、再送されてくるデータとメモリに蓄積されているデータとを信号レベルで最大比合成を行ない、再度誤り訂正を行なうことにより、誤り訂正の効率を上げる。この技術により、効率的にデータ伝送の信頼性を上げることが可能である。
【0010】
ここで、HARQを図20に示すようなRSを導入したシステムに適用する場合、HARQデータの中継を行なっている途中でHARQデータに誤りが発生し、訂正できない場合、そのときに送信したRS、つまりHARQデータを正常に保持しているRSからHARQデータの再送を行なう方が、無線リソースを有効利用することができる。
しかしながら、BSがRSを介した通信区間の全リンクのスケジューリング情報を集中的に管理、生成することを前提とするシステムにおいては、前述のRSからHARQデータの再送を行なうためには、HARQデータに誤りが発生したリンクの情報をBSに通知し、BSは当該通知を受けてから、HARQデータの再送のためのスケジューリング情報を生成することになる。
【0011】
例えば図21に、2ホップシステムのダウンリンク(DL)のデータ伝送において、RSとMSとの間でHARQデータの誤りが発生し、RSからMSにHARQデータの再送を行なう場合の例を示す。なお、BSからRSを介したMSへの方向がダウンリンクであり、その逆方向がアップリンク(UL)である。
BSは、DL/UL MAPと、RSとMSとの間の無線リンク(RS−MS間DL)についてのスケジューリング(SCH)情報とをRS宛に送信するとともに(ステップA101,A102)、HARQデータ#1を当該RS宛に送信する(ステップA103)。
【0012】
ここで、前記スケジューリング情報には、送信データ(HARQデータ)の中継に関する情報、即ち、RSとMSとの間の無線リンク(無線フレーム)においてRS及びMSが通信に用いるべき領域(バーストと呼ばれる無線リソース)の割当情報、より詳細には、RSが当該HARQデータをMSへ送信するのに用いるべきDLバースト、当該HARQデータ#1を受信したMSがその受信結果(受信成功を示すACK及び受信失敗を示すNAK)をRSへ送信(返信)するのに用いるべきULバーストの割当情報が含まれる。
【0013】
また、前記DL/UL MAPには、BSとRSとの間の無線リンク(BS−RS間DL)においてスケジューリング情報及びHARQデータをそれぞれどの領域(DLバースト)にてRSに送信するかを示す情報や、HARQデータのRSでの受信結果(受信成功を示すACK及び受信失敗を示すNAK)をどの領域(UL ACK Channel領域)にてBSへ送信(返信)すべきかを示す情報が含まれる。なお、MSおよびRSからのACK/NAKは、UL ACK Channel Regionと呼ばれる特別な領域にて送信される。
【0014】
したがって、RSは、BSから受信したDL/UL MAPが示すDLバーストを受信処理することにより、BSからのスケジューリング情報及びHARQデータを受信することができ、また、MSから受信したHARQデータの受信結果を当該DL/UL MAPが示すUL ACK Channel領域にてBSへ送信することができ、さらには、受信したスケジューリング情報に基づいてMSとの間の通信(バースト割当)を制御することができるようになる。
【0015】
さて、RSは、前記のようにBSから受信したスケジューリング情報を基にRS−MS間についてのDL/UL MAP(HARQデータ#1をどのDLバーストにてMSへ送信するかを示す情報、HARQデータ#1の受信結果をMSがどのUL ACK Channel領域にて送信すべきかを示す情報)を生成してMS宛へ送信するとともに、BSから受信したHARQデータ#1を当該DL/UL MAPが示すDLバーストにてMSに送信する(ステップA104,A105)。また、RSは、BSからのHARQデータ#1を正常に受信(デコード)できたこと(受信成功)を示す情報(ACK)を、BSから受信した前記DL/UL MAPが示すUL ACK Channel領域にて、BSに送信する(ステップA107)。
【0016】
そして、MSでは、RSからの前記DL/UL MAPが示すDLバーストを受信処理することにより、HARQデータ#1を受信するが、当該HARQデータ#1に誤りが発生して正常に受信(デコード)できなかった場合(ステップA106)、MSは、その旨(受信失敗)を示す情報(NAK)を、RSから受信した前記DL/UL MAPが示すUL ACK Channel領域にて、BSに送信する(ステップA108)。
【0017】
このNAKはRSを介してBSへ中継され(ステップA109)、当該NAKを受信したBSは、RSからHARQデータ#1を再送させるためのDL/UL MAP及びスケジューリング情報を生成してRSに送信する(ステップA110,A111)。
RSは、BSから前記HARQデータ#1の再送のためのDL/UL MAPを受信して当該DL/UL MAPが示すDLバースト(スケジューリング情報)を受信すると、その受信スケジューリング情報を基にRS−MS間についてのDL/UL MAPを生成してMSに送信するとともに、HARQデータ#1を再送する(ステップA112,A113)。
【0018】
一方、図22に、2ホップシステムのULのデータ伝送において、MSとRSとの間でHARQデータに誤りが発生し、MSからHARQデータの再送を行なう場合の例を示す。
BSは、DL/UL MAPと、MSからの送信データ(HARQデータ)#1をRSにて中継するための情報として、RSとMSとの間の無線リンクについてのスケジューリング(SCH)情報とをRS宛に送信する(ステップB121,B122)。
【0019】
ここで、当該スケジューリング情報には、MSからの送信データ(HARQデータ)の中継に関する情報、即ち、RSとMSとの間の無線リンク(無線フレーム)においてRS及びMSが通信に用いるべきバーストの割当情報、より詳細には、MSがHARQデータをRSへ送信するのに用いるべきULバーストの割当情報が含まれる。また、DL/UL MAPには、BSとRSとの間の無線リンクにおいて当該スケジューリング情報をどの領域(DLバースト)にて送信するかを示す情報が含まれる。
【0020】
したがって、RSは、当該DL/UL MAPが示すDLバーストを受信処理することにより、前記スケジューリング情報を受信することができ、また、そのスケジューリング情報に基づいてMSとの間の通信(バースト割当)を制御することができるようになる。
即ち、RSは、このようにBSから受信したスケジューリング情報を基にRS−MS間についてのDL/UL MAP(MSはHARQデータ#1をどのULバーストを用いて送信すべきかを示す情報)を生成してMS宛へ送信する(ステップB123)。
【0021】
MSは、RSから当該DL/UL MAPを受信すると、そのDL/UL MAPが示すULバーストにてHARQデータ#1をBS宛に送信する(ステップB125)。
RSは、MSからHARQデータ#1を正常受信すれば、BSに対してHARQデータ#1の受信成功(ACK)を通知するが、HARQデータ#1に誤りが生じて正常受信できなければ(ステップB126)、BSに対してMSからのHARQデータ#1の受信失敗(NAK)を通知する(ステップB128)。
【0022】
なお、この間、BSは、RSがMSから受信したHARQデータ#1をBSへ中継(送信)するための領域(ULバースト)をDL/UL MAPにより割り当てるが(ステップB124,B127)、RSはMSからのHARQデータ#1を正常に受信していないため、当該領域にてHARQデータ#1を受信することはない。
BSは、RSから前記NAKを受信すると、MSからのHARQデータ#1の再送のためのスケジューリング情報を生成するとともに、当該スケジューリング情報をBS−RS間DLのどのDLバーストにて送信するかを示す情報(DL/UL MAP)を生成してRS宛に送信する(ステップB129,B130)。
【0023】
RSは、BSから受信したDL/UL MAPが示すDLバーストを受信処理してスケジューリング情報を取得すると、当該スケジューリング情報を基にRS−MS間ULについてのDL/UL MAPを生成してMS宛に送信することにより(ステップB131)、MSにHARQデータ#1の再送を要求する。そして、MSは、当該再送要求(DL/UL MAP)を受信すると、そのDL/UL MAPが示すULバーストにてHARQデータ#1の再送を行なう(ステップB132)。
【0024】
以上のように、従来技術においては、DLにおいてRSがMSにHARQデータの再送を行なう状況や、ULにおいてMSがRSにHARQデータの再送を行なう状況において、RSとMSとの間のHARQデータの送信結果を一旦BSに通知し、BSがこの通知を受けてからスケジューリング情報を生成してRSに通知することで、HARQデータの再送を行なわせるため、HARQデータの受信失敗が発生してからそのHARQデータの再送までに長時間を要し、BSとMSとの間のデータ伝送に大きな遅延が発生してしまうという課題がある。当該遅延は、BSとMSとの間の通信を中継するRS数が増えるほど当然に増加することになる。
【0025】
なお、前記非特許文献3では、BSが、RSおよびMSからの再送が要求される場合において、即時の再送が可能なように、再送の帯域を予め割り当てることが記述されているが、BSおよびRSにおける具体的な処理方法については記述されていない。
本発明は、前記課題に鑑み創案されたもので、その目的の一つは、BSとMSとの間の通信を1又は複数のRSが中継する無線中継システムにおける再送処理の遅延を抑制できるようにすることにある。
【0026】
なお、前記目的に限らず、後述する発明を実施するための最良の形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本発明の他の目的の一つとして位置付けることができる。
【課題を解決するための手段】
【0027】
(1)第1の案として、無線基地局から1又は複数の無線中継局を介して無線端末へデータを中継する無線中継システムにおける前記無線基地局であって、自局よりも下位の無線中継局から前記無線端末に至る経路の無線リンクにおいて新規データを送信するための無線リソースの第1の割当情報を生成する割当情報生成手段と、過去の送信データに対する受信結果の前記下位の無線中継局又は前記無線端末からの受信を待たずに、前記第1の割当情報と前記新規データとを前記下位の無線中継局又は前記無線端末へ送信する送信手段と、をそなえた、無線中継システムにおける無線基地局を用いることができる。
【0028】
(2)また、第2の案として、無線端末から1又は複数の無線中継局を介してデータを無線基地局へ送信する無線中継システムにおける前記無線基地局であって、自局から前記無線端末に至る経路の無線リンクにおいて前記無線端末からのデータを送信させるための無線リソースの第1の割当情報を生成する割当情報生成手段と、下位の無線中継局又は前記無線端末からのデータ受信の有無に関わらず、前記第1の割当情報を前記下位の無線中継局又は前記無線端末に送信する送信手段と、をそなえた、無線中継システムにおける無線基地局を用いることができる。
【発明の効果】
【0029】
前記本発明によれば、少なくとも以下に示すいずれかの効果ないし利点が得られる。
(1)無線基地局(BS)は、下位の無線中継局(RS)あるいは無線端末(MS)からのデータの受信結果を待たずに、新規データを送信することで、無線端末に対して連続したデータ送信を行なうことができる。
(2)また、BSからMSへの方向(ダウンリンク)の経路において、データに誤りが発生した場合でも、RSが、BSから受信する新規データの送信(中継)のための無線リソースの割当情報(第1の割当情報)を基に、過去に送信したデータの再送を行なうための無線リソースの割当情報(第2の割当情報)を生成して過去のデータを再送することができるので、RSあるいはMSから要求されているデータの再送に対して、即時に対応することが可能となる。したがって、BSとMSとの間のRS数によらず再送処理の遅延を抑制することが可能となる。
【0030】
(3)一方、ULにおいては、BSは、RS及びMSからのデータ受信の有無によらずに、RSに対してデータ送信のための無線リソースの割当情報(第1の割当情報)を送信するので、RSは、配下のRSあるいはMSからのデータ受信結果を基にデータの再送あるいは新規データの送信を要求することで、連続したデータ中継が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1実施形態に係る無線中継システムの構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す無線基地局(BS)の要部に着目した構成を示す機能ブロック図である。
【図3】図1に示す無線中継局(RS)の要部に着目した構成を示す機能ブロック図である。
【図4】図2に示すBSにおけるダウンリンク(DL)処理を説明すべく状態管理テーブルの一例を示す図である。
【図5】図3に示すRSにおけるダウンリンク(DL)処理を説明すべく状態管理テーブルの一例を示す図である。
【図6】図3に示すRSのDL処理におけるフラグ情報(AI_SN)の更新を説明すべくDL/UL MAPのフォーマットを示す図である。
【図7】図1に示す無線中継システムにおけるDLの再送処理(2ホップシステムの場合)を説明するシーケンス図である。
【図8】図2に示すBSにおけるアップリンク(UL)処理を説明すべく状態管理テーブルの一例を示す図である。
【図9】図3に示すRSにおけるUL処理を説明すべく状態管理テーブルの一例を示す図である。
【図10】図3に示すRSのDL処理におけるフラグ情報(AI_SN)の更新を説明すべくDL/UL MAPのフォーマットを示す図である。
【図11】図1に示す無線中継システムにおけるULの再送処理(2ホップシステムの場合)を説明するシーケンス図である。
【図12】図1に示す無線中継システムにおけるULの再送処理(2ホップシステムの場合)を説明するシーケンス図である。
【図13】図2に示すBSにおけるDL処理(3ホップシステムの場合)を説明すべく状態管理テーブルの一例を示す図である。
【図14】図3に示すRSにおけるDL処理(3ホップシステムの場合)を説明すべく状態管理テーブルの一例を示す図である。
【図15】図1に示す無線中継システムにおけるDLの再送処理(3ホップシステムの場合)を説明するシーケンス図である。
【図16】図2に示すBSにおけるUL処理(3ホップシステムの場合)を説明すべく状態管理テーブルの一例を示す図である。
【図17】図3に示すRSにおけるUL処理(3ホップシステムの場合)を説明すべく状態管理テーブルの一例を示す図である。
【図18】図1に示す無線中継システムにおけるULの再送処理(3ホップシステムの場合)を説明するシーケンス図である。
【図19】IEEE802.16d/e準拠の無線通信システム構成例を示す図である。
【図20】図19に示すシステムに無線中継局(RS)を導入した構成例を示す図である。
【図21】図20に示すシステムにおけるDLの再送処理を説明するシーケンス図である。
【図22】図20に示すシステムにおけるULの再送処理を説明するシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。ただし、以下に示す実施形態は、あくまでも本発明の要旨の理解を助けるための例示に過ぎず、以下に示す実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。即ち、各実施形態の変形(実施例を組み合わせる等)を行なうこともできる。
〔A〕第1実施形態の説明
図1は本発明の第1実施形態に係る無線中継システムの構成を示すブロック図で、この図1に示すシステムは、無線基地局(BS)1と、複数(ここでは2台)の無線中継局(RS)2〔2−1(#1),2−2(#2)〕と、複数(ここでは3台)の無線端末(MS)3〔3−1(#1),3−2(#2),3−3(#3)〕とをそなえて構成され、MS3は、BS1と直接あるいは1又は複数のRS2を介して通信することができるようになっている。即ち、この図1においては、MS3−1はBS1と直接通信でき、BS1のサービスエリア(無線エリア)の境界近傍に位置するMS3−2はRS2−1を介してBS1と通信でき、BS1のサービスエリア外に位置するMS3−3はRS2−1及び2−2を介してBS1と通信(マルチホップ接続)できる様子が示されている。
【0033】
また、当該無線中継システムは、WiMAX規格準拠の無線フレーム、即ち、OFDMあるいはOFDMAのフレームにより、BS1とMS3との間、BS1とRS2との間、RS2間、RS2とMS3との間の通信がそれぞれ行なわれることを前提とし、これらすべての区間の無線リンク(BS−MSリンク、BS−RSリンク、RS−RSリンク、RS−MSリンク)における通信をBS1が集中的に管理、制御するようになっている。
【0034】
即ち、BS1は、前記の各無線リンクに無線リソース(バーストと呼ばれる前記無線フレームの通信領域)を割り当てるためのスケジューリング情報を一括管理(生成)し、対象のRS2に必要なスケジューリング情報を送信することで、対象無線リンクにおける通信を制御するようになっている。
(BS構成)
図2は前記BS1の要部に着目した構成を示す機能ブロック図で、この図2に示すBS1は、例えば、受信アンテナ10、受信部11、送信部12、送信アンテナ13、HARQバッファ14及びBS制御部15をそなえて構成されている。
【0035】
ここで、受信アンテナ10は、RS2又はMS3からのRF信号(メッセージやデータなど)を受信するものであり、受信部11は、この受信アンテナ10で受信されたRF信号について所要の受信処理を施すものである。このため、当該受信部11は、例えば、無線(RF)受信機(Rx)111と信号処理部112とをそなえて構成され、RF受信機111は、受信アンテナ10で受信されたRF信号について、ベースバンド周波数への周波数変換(ダウンコンバート)やディジタル信号処理のためのディジタル信号へのAD(Analog to Digital)変換などを含む所要の無線受信処理を施すものであり、信号処理部112は、このRF受信機111により得られたベースバンドディジタル信号について、少なくとも復調処理や復号処理を含む所要のディジタル信号処理を施すものである。
【0036】
また、送信部12は、MS3宛のダウンリンク(DL)の送信信号を生成するもので、例えば、信号処理部121と無線(RF)送信機(Tx)122とをそなえて構成され、信号処理部121は、MS3へ送信すべき信号(メッセージやデータなど)の符号化(畳込み符号やターボ符号等の誤り訂正符号化)処理、所定フォーマットの送信フレーム(OFDMフレームやOFDMAフレーム)の生成処理、QPSKや16QAM等による変調処理などを含む所要のディジタル信号処理を行なうものであり、RF送信機122は、この信号処理部121により得られた送信信号(ディジタルベースバンド信号)について、アナログ信号へのDA(Digital to Analog)変換や送信RF信号への周波数変換(アップコンバート)などを含む所要の無線送信処理を施すものである。
【0037】
送信アンテナ13は、この送信部12にて得られた送信信号をRS2又はMS3に向けて空間に放射するものである。
HARQバッファ14は、MS3宛に送信したデータを後の再送に備えて、逐次、一時的にバッファしておくものであり、BS制御部15は、前述したように、BS1とMS3との間、BS1とRS2との間、RS2間、RS2とMS3との間の各無線リンクにおける通信を集中的に制御する機能を具備するもので、例えば、スケジューリング(SCH)情報生成部151と、DL/UL MAP生成部152と、BS状態管理部153とをそなえて構成される。
【0038】
ここで、スケジューリング情報生成部151は、BS1からMS3に至る各無線リンクにおけるスケジューリング情報を生成することができるものであり、DL/UL MAP生成部152は、次ホップ先ノードであるRS2又はMS3との間の無線リンクにおけるバースト割当情報を含むDL/UL MAPを生成することができるものである。
BS状態管理部153は、DLについては図4に示すような状態管理テーブルにより4つの状態S0,S1,S2,S3を管理し、ULについては図8に示すような状態管理テーブルにより3つの状態S0,S1,S2を管理するもので、BS制御部15は、当該状態に応じたDL及びULについての処理を実行するようになっている。なお、その詳細については後述する。
【0039】
(RS構成)
一方、前記RS2は、その要部の機能に着目すると、例えば図3に示すように、受信アンテナ20、受信部21、送信部22、送信アンテナ23、HARQバッファ24及びRS制御部25をそなえて構成される。
ここで、受信アンテナ20は、BS1又はMS3若しくは他のRS2からのRF信号を受信するものであり、受信部21は、この受信アンテナ20で受信されたRF信号について所要の受信処理を施すものである。
【0040】
このため、当該受信部21は、例えば、RF受信機(Rx)211と信号処理部212とをそなえて構成され、BS1におけるものと同様に、RF受信機211は、受信アンテナ20で受信されたRF信号について、ベースバンド周波数への周波数変換(ダウンコンバート)やディジタル信号処理のためのディジタル信号へのAD変換などを含む所要の無線受信処理を施すものである。
【0041】
信号処理部212は、このRF受信機211により得られたベースバンドディジタル信号について、少なくとも復調処理や復号処理を含む所要のディジタル信号処理を施すもので、当該信号処理後の信号はMS3へのリレーのために送信部22(信号処理部221)に入力されるようになっている。
また、送信部22は、MS3又はBS1若しくは他のRS2宛の送信信号を生成するもので、例えば、信号処理部221とRF送信機(Tx)222とをそなえて構成され、信号処理部221は、MS3又はBS1へ送信すべき信号(メッセージやデータなど)の符号化(畳込み符号やターボ符号等の誤り訂正符号化)処理、所定フォーマットの送信フレーム(OFDMフレームやOFDMAフレーム)の生成処理、QPSKや16QAM等による変調処理などを含む所要のディジタル信号処理を行なうものであり、RF送信機222は、この信号処理部221により得られた送信信号(ディジタルベースバンド信号)について、アナログ信号へのDA(Digital to Analog)変換や送信RF信号への周波数変換(アップコンバート)などを含む所要の無線送信処理を施すものである。
【0042】
送信アンテナ23は、この送信部22にて得られた送信信号をMS3又はBS1若しくは他のRS2に向けて空間に放射するものである。
HARQバッファ24は、MS3又はBS1若しくは他のRS2に送信したデータを後の再送に備えて、逐次、一時的に保持しておくものである。ただし、当該HARQバッファ24には、後述するように、RS制御部25の制御の下、BS1又はMS3若しくは他のRS2から受信した新規のデータ(次ホップ先ノードに未送信のデータ)も格納されるようになっている。
【0043】
そして、RS制御部25は、BS1から直接あるいは上位のRS2を介して受信したスケジューリング情報に基づいて自局2とMS3又は下位のRS2との間の無線リンクにおける通信(バースト割当、データ送受信処理)を制御する機能を具備するもので、例えば、スケジューリング(SCH)情報生成部251と、DL/UL MAP生成部252と、RS状態管理部253と、受信結果(応答:ACK/NAK)生成部254とをそなえて構成される。
【0044】
ここで、スケジューリング情報生成部251は、MS3宛のデータの次ホップ先ノードが他のRS2である場合に、BS1から直接あるいは上位のRS2を介して受信されたスケジューリング情報を基に次ホップ先ノードである下位のRS2に送信すべきスケジューリング情報を生成するためのものである。なお、上位のRS2とはBS1に近い側のRS2を意味し、下位(配下)のRS2とはMS3に近い側のRS2を意味する。
【0045】
また、DL/UL MAP生成部252は、BS1から直接あるいは上位のRS2を介して受信されたスケジューリング情報を基に次ホップ先ノードであるMS3又は他のRS2との間の無線リンクにおけるバースト割当情報を含むDL/UL MAPを生成することができるものであり、受信結果(応答)生成部254は、BS1宛に送信(応答)すべき受信結果情報(ACK又はNAK)を生成することができるものである。
【0046】
そして、RS状態管理部253は、DLについては図5に示すような状態管理テーブルにより5つの状態S0,S1,S2,S3,S4を管理し、ULについては図9に示すような状態管理テーブルにより2つの状態S0,S1を管理するもので、RS制御部25は、当該状態に応じたDL及びULについての処理を実行するようになっている。なお、その詳細については後述する。
【0047】
(BS1及びRS2の基本動作)
上述のごとく構成された本例におけるBS1及びRS2の基本的な動作(DL処理及びUL処理)について説明すると、以下のとおりである。
(DL処理)
(1)OLE_LINK3DLに関して、RS2は、BSOLE_LINK31又は上位のRS2から、自局2と下位のRS2との間、あるいは自局2とMS3との間のスケジューリング情報(第1の割当情報)と、新規HARQデータとを受信すると、その時点で下位のRS2あるいはMS3に対する過去(前回)のHARQデータの送信が完了していた場合は、受信した新規HARQデータを次ホップ先ノードである下位のRS2又はMS3へ送信(中継)するためのDL/UL MAP(第2の割当情報)を生成して次ホップ先ノードへ送信するとともに、当該新規HARQデータを次ホップ先ノードへ送信する。
【0048】
(2)一方、過去のHARQデータの送信が失敗していた場合は、受信した新規HARQデータは自局2のHARQバッファ24にバッファし、当該過去のHARQデータの再送を行なう。その際、BS1又は上位のRS2から受信した新規HARQデータの送信のためのスケジューリング情報(第1の割当情報)を基に、過去のHARQデータの再送のためのDL/UL MAP(第2の割当情報)を生成して送信する。
【0049】
(3)また、RS2からのバッファしているHARQデータの送信は、BS1あるいは上位のRS2から送信されてくるスケジューリング情報(スケジューリング情報には、HARQデータの送信の情報が記述されている)からHARQデータの送信のためのDL/UL MAPを生成し、その送信とともに、バッファしているHARQデータを送信する。
(4)さらに、RS2は、BS1あるいは上位のRS2からHARQデータと、そのHARQデータの送信(中継)に関するスケジューリング情報とを受信した時に、HARQデータに誤りがある場合は、次ホップ先ノードである下位のRS2あるいはMS3に対して、前回送信したHARQデータを再送する。つまり、次ホップ先ノードから前回のHARQデータに対する応答がACK(受信成功)であった場合でも、NACK(受信失敗)であった場合でも、前回のHARQデータを送信するようにDL/UL MAPを生成して送信する。あるいは、この状況において、配下のRS2あるいはMS3から1つ前のHARQデータに対する応答がACK(受信成功)であった場合は、HARQデータは送信しないことも可能である。
【0050】
(5)ところで、RS2は、BS1あるいは上位のRS2からスケジューリング情報を受信して、当該スケジューリング情報に含まれるHARQデータの送信(中継)に関する情報を基にDL/UL MAPを生成する際に、新規送信か再送かを表すフラグ情報(図6により後述するAI_SNの値)を操作(更新)する。つまり、RS2は、新規あるいは再送のHARQデータの送信に合わせて、DL/UL MAPにおけるHARQデータ送信のフラグ情報を更新する。
【0051】
(6)一方、DLに関して、BS1は、下位のRS2あるいはMS3からのHARQデータの受信結果(ACK又はNAK)の受信を待たずに、新規HARQデータの送信と、そのHARQデータを中継するためのスケジューリング情報の送信とを実行する。
(7)また、BS1は、下位のRS2あるいはMS3からの受信結果を受信し、いずれかの区間でHARQデータの伝送に失敗していた場合は、その区間でHARQデータを再送するためのスケジューリング情報を生成して、RS2に送信する。また、この際、新規HARQデータの送信は行なってもよいし停止してもよい。
【0052】
(UL処理)
(8)一方、ULに関して、RS2は、BS1又は上位のRS2から受信する、下位のRS2あるいはMS3からのHARQデータの送信(中継)のためのスケジューリング情報を基に下位のRS2あるいはMS3へのDL/UL MAPを生成する。このとき、過去(1つ前)に受信したHARQデータの受信状況によって、下位のRS2あるいはMS3に、再送を行なわせるか新規HARQデータの送信を行なわせるかを決定する。即ち、1つ前のHARQデータの受信が成功していれば、新規HARQデータを送信させ、1つ前のHARQデータの受信に失敗していれば、そのHARQデータの再送を行なわせる。
【0053】
(9)ところで、RS2は、下位のRS2あるいはMS3からHARQデータを受信したときに、受信した結果を上位のRS2あるいはBS1に送信する。これは、BS1あるいは上位のRS2は、下位のRS2の受信結果を認識せずに次の新規HARQデータの送信のための割り当てを行なうため、RS2にて受信に失敗していた場合に、上位のRS2あるいはBS1に対して、HARQデータの受信を行なわないように通知するためである。
【0054】
(10)さらに、RS2は、下位のRS2あるいはMS3からHARQデータを正常に受信したが、上位のRS2あるいはBS1からは、その1つ前のHARQデータの再送を要求された場合は、受信したHARQデータをHARQバッファ24にバッファし、上位のRS2あるいはBS1に対して、1つ前のHARQデータの再送を行なう。
(11)また、RS2にて、配下のRS2あるいはMS3からのHARQデータをバッファしている状態において、上位のRS2あるいはBS1から、1つ前のHARQデータの再送を要求された場合は、配下のRS2あるいはMS3に対しては、バッファしているHARQデータの再送を要求する。この処理を行なうことにより、配下のRS2あるいはMS3から新規HARQデータの送信あるいは中継を抑制して、RS2のHARQバッファ24のバッファ溢れを防止することが可能である。
【0055】
(12)ところで、RS2において、配下のRS2あるいはMS3に対する、新規HARQデータの送信あるいは1つ前のHARQデータの再送は、配下のRS2あるいはMS3に送信するDL/UL MAPにおけるHARQデータの新規送信もしくは再送を示すフラグ情報(図10により後述するAI_SNの値)を更新することによって行なう。
(13)ここで、このDL/UL MAPの生成は、BS1から直接または上位のRS2を介して受信するスケジューリング情報を基に行なう。
【0056】
(14)また、ULに関して、BS1は、下位のRS2とMS3に対して、連続したHARQデータの送信を行なわせるために、HARQデータの送信のためのスケジューリング情報を連続して送信する。これにより、RS2が配下のRS2あるいはMS3からのHARQデータの受信結果や、上位ノードからのHARQデータの中継要求を基に、新規HARQデータの送信あるいはHARQデータの再送を制御することで、連続したHARQデータの送信を行なわせることが可能になる。
【0057】
以上のとおり、DLに関して、BS1は、下位のRS2あるいはMS3からのHARQデータの受信結果の応答を待たずに、新規HARQデータを送信することで、マルチホップに関係なく、MS3に対して、連続したHARQデータの送信を行なうことが可能になる。
また、DLの経路において、HARQデータに誤りが発生した場合でも、RS2が、BS1から受信する新規HARQデータの中継のためのスケジューリング情報を基に1つ前のHARQデータの再送を行なうようにDL/UL MAPを生成(更新)し、前のHARQデータを再送することで、配下のRS2あるいはMS3から要求されているHARQデータの再送に対して、即時に対応することが可能となる。
【0058】
一方、ULに関しては、BS1は、随時、配下のRS2およびMS3に対してHARQデータを送信させるためのスケジューリング情報を送信し、RS2は、配下のRS2あるいはMS3からのHARQデータの受信結果からHARQデータの再送あるいは新規HARQデータの送信を要求することで、連続したHARQデータの中継が可能となる。
(DL処理の詳細例)
次に、BS1とMS3との間の通信を1台のRS2が中継する場合(2ホップシステム)のDL処理の詳細について、図4〜図7を用いて説明する。
【0059】
(BS1での処理)
図4は、RS2に対してHARQデータの送信機会が与えられたときのBS1(BS制御部15)における処理動作例を示している。
BS1では、RS2及びMS3におけるHARQデータの受信状況(ACK及びNAK)を把握、管理し、その状況を基に次の新規HARQデータの送信や当該HARQデータの送信(中継)に関する情報を含むスケジューリング情報の送信を決定する。
【0060】
即ち、本例におけるBS1(BS制御部15)は、RS2から受信した1つ前のHARQデータに対する受信結果(以下、応答ともいう)と、MS3からRS2を介して受信した2つ前のHARQデータに対する受信結果とに基づいて、以下の状態S0,S1,S2,S3をBS状態管理部153(状態管理テーブル)にて管理し、その状態に応じた処理を行なう。
【0061】
(状態S0)RS2からの1つ前のHARQデータに対する応答がACK(受信成功)であり、MS3からの2つ前のHARQデータに対する応答がACK(受信成功)の場合は、BS1は新しいHARQデータの送信とともに、そのHARQデータの中継に関する情報を含むスケジューリング情報をRS2に送信する。
(状態S1)RS2からの1つ前のHARQデータに対する応答がACK(受信成功)であり、MS3からの2つ前のHARQデータに対する応答がNACK(再送要求)の場合は、RS2にて1つ前のHARQデータがHARQバッファ24にバッファされている状況であるため、BS1は、そのバッファされているHARQデータをRS2からMS3に送信させるためのスケジューリング情報をRS2に送信する。このとき、新規HARQデータの送信は行なわない。
【0062】
(状態S2)一方、RS2からの1つ前のHARQデータに対する応答がNACK(再送要求)であり、MS3からの2つ前のHARQデータに対する応答がACK(受信成功)の場合、BS1は、RS2に対して1つ前のHARQデータの再送を行なう。このとき、そのHARQデータの中継に関するスケジューリング情報も送信する。
(状態S3)RS2からの1つ前のHARQデータに対する応答がNACK(再送要求)であり、MS3からの2つ前のHARQデータに対する応答がNACK(再送要求)の場合も状態S2と同じ処理を行なう。
【0063】
(RS2での処理)
一方、図5は、BS1からスケジューリング情報を受信、あるいはスケジューリング情報及びHARQデータを受信したときのRS2(RS制御部25)におけるMS3に対する処理動作例を示している。
即ち、RS2では、MS3からの1つ前のHARQデータに対する応答と、自局2のHARQバッファ24内のHARQデータの有無及びBS1からのHARQデータの受信状況とに基づいて、5つの状態S0,S1,S2,S3,S4をRS状態管理部253(状態管理テーブル)にて管理し、これらの状態に応じた処理(MS3に送信するHARQデータの決定やDL/UL MAPに設定するAI_SNの更新)を行なう。
【0064】
また、図6に、RS2からMS3に送信するDL/UL MAPの一例を示す。
DL/UL MAPには、無線フレームにおけるHARQデータの送信情報であるHARQ DL MAP IE(Information Element)が含まれる。このHARQ DL MAP IEの中には、MS3の識別情報(RCID_IE)やHARQデータのチャネル番号を示す情報(ACID),新規送信か再送かを示す情報(AI_SN)などを含むDL HARQ xxx sub-burst IEが含まれている。なお、xxxには、例えば、Chase,IR CTCなどのHARQのパターンが記述される。
【0065】
RS2は、BS1からスケジューリング情報を受信し、DL/UL MAPを生成する場合、MS3のHARQデータの受信状況に応じて、HARQデータに関するIEの情報を更新する。具体的には、HARQデータの新規送信か再送かを示すフラグ情報(AI_SN)を更新する。このAI_SNのとり得る値は、“0”か“1”であり、前のHARQデータの送信時と同じ値である場合は再送を示し、異なる値の場合は新規HARQデータの送信を示す。
【0066】
例えば、図5における状態S0の場合はMS3に対してHARQデータの送信を行なっていない状況であり、RS2は、BS1から新規HARQデータを正常受信した場合に、そのHARQデータをMS3に中継するが、このとき、RS2からMS3に送信するDL/UL MAPにおけるAI_SNは、BS1から受信したスケジューリング情報に設定されている値と一致させる(AI_SN反転なし)。
【0067】
一方、状態S0において、RS2がBS1からのHARQデータの受信に失敗した場合、RS2は、HARQデータの中継は行なわない。AI_SNは、スケジューリング情報とは異なる値にする(AI_SN反転あり)。このとき、MS3は、正常にHARQデータを受信できないため、RS2に対してNAK(再送要求)を通知することになる。そして、RS2は、その後にBS1から正常に受信したHARQデータをMS3に中継する際に、RS2からMS3に送信するDL/UL MAPにおけるAI_SNをスケジューリング情報と一致したAI_SN値に設定する。この場合、MS3は、それより前のHARQデータを破棄し、新規HARQデータの受信を行なう。
【0068】
また、状態S1は、先に送信したHARQデータに対するMS3からの応答がACK(受信成功)で、RS2のHARQバッファ24には、HARQデータが格納されていない状態であり、この状態において、BS1からHARQデータを正常受信した場合には、RS2は、MS3に受信HARQデータを中継する。このとき、RS2からMS3に送信するDL/UL MAPのAI_SNは、BS1から受信したスケジューリング情報に設定されている値と異なる値に設定する(AI_SN反転あり)。
【0069】
一方、BS1からのHARQデータの受信に失敗した場合には、RS2は、MS3に送信するDL/UL MAPのAI_SNを、前に送信したDL/UL MAPのAI_SNと同じ値に設定し(AI_SN反転なし)、前のHARQデータの送信(再送)を行なう(あるいは、HARQデータの送信は行なわない)。MS3は、このDL/UL MAPを参照することにより、前のHARQデータの再送と判断するが、そのHARQデータは既に受信済みであるため、RS2に対して、ACK(受信成功)を送信する。
【0070】
さらに、状態S2は、先に送信したHARQデータに対するMS3からの応答がNAK(再送要求)であり、RS2のHARQバッファ24には、HARQデータが格納されていない状態であり、この状態において、BS1からのHARQデータを正常に受信した場合、RS2は、そのHARQデータをHARQバッファ24に格納し、MS3に送信するDL/UL MAPのAI_SNを前に送信したDL/UL MAPのAI_SNと同じ値に設定する(AI_SNの反転なし)。そして、RS2は、MS3に前のHARQデータを再送する。一方、BS1からのHARQデータの受信に失敗した場合も、DL/UL MAPのAI_SNの値はそのままに、MS3に前のHARQデータを再送する。ただし、BS1からのHARQデータはHARQバッファ24に格納しない。
【0071】
また、状態S3及び状態S4は、RS2のHARQバッファ24にBS1からのHARQデータが格納されている状態であり、このときRS2は、BS1からHARQデータの再送を記述したスケジューリング情報のみを受信する。
そして、状態S3は、先に送信したHARQデータに対するMS3からの応答がACK(受信成功)の場合であるので、HARQバッファ24にバッファされているHARQデータをMS3に送信する。このとき、DL/UL MAPのAI_SNは反転する。一方、状態S4は、先に送信したHARQデータに対するMS3からの応答がNACK(再送要求)の場合であるので、MS3に前のHARQデータを再送する。この場合のDL/UL MAPのAI_SNは前回送信時のAI_SNと同じ値に設定する(AI_SN反転なし)。
【0072】
(2ホップシステムにおけるDLの再送制御シーケンス)
次に、上述したBS1及びRS2の動作(DL処理)を前提として、BS1とMS3との間の通信を1台のRS2が中継する場合のDLの再送処理について、図7に示すシーケンス図を参照しながら説明する。この図7は、RS2からMS3へのHARQデータの伝送に誤りが生じて、RS2からMS3へ再送を行なう場合の処理について示している。
【0073】
BS1は、RS2とMS3との間の無線リンクにおいてHARQデータ#1を送信(中継)するためのスケジューリング(SCH)情報を、DL/UL MAPで指定するDLバーストにてRS2に送信するとともに(ステップA1,A2)、HARQデータ#1を当該DL/UL MAPで指定するDLバーストにてRS2宛に送信する(ステップA3)。
ここで、前記スケジューリング情報には、送信データ(HARQデータ)の中継に関する情報、即ち、RS2とMS3との間の無線リンク(無線フレーム)においてBS1及びRS2が通信に用いるべき領域(バースト)の割当情報が少なくとも含まれる。
【0074】
また、前記DL/UL MAPには、BS1とRS2との間の無線リンク(無線フレーム)においてスケジューリング情報及びHARQデータをそれぞれどの領域(DLバースト)にて送信するかを示す情報が少なくとも含まれる。
したがって、RS2は、BS1から受信したDL/UL MAPが示すDLバーストの受信処理をすることにより、BS1からのスケジューリング情報及びHARQデータを受信することができ、また、受信したスケジューリング情報に基づいてMS3との間の通信(バースト割当、つまりはMS3へのDL/UL MAPの生成)を制御することができるようになる。
【0075】
さて、RS2は、BS1から受信した前記DL/UL MAPに基づいて、BS1からHARQデータを受信するとともに、RS2とMS3との間におけるスケジューリング情報を取得すると、当該スケジューリング情報を基にRS2−MS3間についてのDL/UL MAPを生成してMS3へ送信するとともに、BS1から受信したHARQデータ#1を当該DL/UL MAPが示すDLバーストにてMS3に送信する(ステップA4,A5)。また、RS2は、BS1からのHARQデータ#1を正常に受信(デコード)できたこと(受信成功)を示す情報(ACK)を、HARQデータ#1の送信元であるBS1に送信する(ステップA7)。
【0076】
MS3は、RS2から受信したDL/UL MAPが示すDLバーストを受信処理することにより、HARQデータ#1を受信するが、当該HARQデータ#1に訂正可能な範囲を超える誤りが発生して正常に受信(デコード)できなかった場合(ステップA6)、MS3は、その旨(受信失敗)を示す情報(NAK)をBS1宛に送信する(ステップA8)。
一方、BS1は、HARQデータ#1をRS2へ送信した後、RS2からの前記ACK(受信完了)を受信すると、次のHARQデータ(新規データ)#2の送信を行なう。即ち、BS1は、先のHARQデータ#1の送信と同様に、そのHARQデータ#2を中継するためのスケジューリング情報と、当該スケジューリング情報のバースト割当情報(DL/UL MAP)とを生成し、これらとHARQデータ#2とをRS2へ送信する(ステップA9,A10,A11)。ここで、BS1は、MS3からのHARQデータ#1に対する応答(ACK又はNAK)の受信を待たずに送信を行なう。
【0077】
RS2は、BS1から受信したDL/UL MAPに基づいて新規HARQデータ#2についてのスケジューリング情報と当該HARQデータ#2とを受信するとともに、MS3から送信された前記HARQデータ#1に対するNAK(再送要求)を受信すると、BS1から受信したHARQデータ#2をMS3に中継する代わりに、1つ前のHARQデータ#1をMS3に送信(再送)し、BS1から新たに受信したHARQデータ#2はHARQバッファ24にバッファする。
【0078】
このとき、RS2は、BS1から受信したスケジューリング情報を基にMS3宛のDL/UL MAPを生成するが、その際、HARQデータ#2の新規送信のための情報ではなく、HARQデータ#1の再送のための情報に更新(前記フラグ情報であるAI_SNの更新)した上で、当該DL/UL MAPと1つ前のHARQデータ#1とをMS3に送信する(ステップA13,A14)。これにより、HARQデータ#1の再送を迅速に行なうことが可能になる。
【0079】
MS3は、RS2から受信したDL/UL MAPが示すDLバーストを受信処理することにより、HARQデータ#1を再受信し、正常に受信(デコード)できれば、その旨(ACK)をRS2に送信する(ステップA16)。
この間、RS2では、前記ステップA8においてMS3から受信したHARQデータ#1に対するNAKをBS1に送信(中継)し(ステップA12)、また、BS1から受信した新規HARQデータ#2の受信結果(本例ではACK)をBS1に送信(応答)している(ステップA15)。
【0080】
一方、BS1は、RS2からHARQデータ#1に対するMS3での受信結果(NAK)を受信すると、新規HARQデータ#3の送信は行なわずに、1つ前のHARQデータ#2の中継のためのスケジューリング情報と、当該スケジューリング情報のRS2との間の無線リンクにおけるバースト割当情報(DL/UL MAP)とを生成してRS2にそれぞれ送信する(ステップA17,A18)。
【0081】
RS2は、これらのDL/UL MAPとスケジューリング情報とを受信するが、この時点で、前記ステップA16においてMS3が送信したHARQデータ#1に対する受信結果(ACK)を既に受信しているため、当該ACKをBS1に送信(中継)するとともに(ステップA19)、BS1から受信したスケジューリング情報を基にHARQデータ#2のためのDL/UL MAPを生成し、当該DL/UL MAPが示すDLバーストにてHARQバッファ24にバッファしていたHARQデータ#2をMS3に送信する(ステップA20、A21)。
【0082】
なお、前記ステップA16においてMS3が送信したHARQデータ#1に対する受信結果が再度NAKであった場合、RS2は、前記ステップS13及びS14と同様にして、HARQデータ#2のためのDL/UL MAPをHARQデータ#1のためのDL/UL MAPに更新した上で、当該DL/UL MAPとHARQデータ#1とをMS3に送信することになる。
(UL処理の詳細例)
次に、BS1とMS3との間の通信を1台のRS2が中継する場合(2ホップシステム)のUL処理の詳細について、図8〜図12を用いて説明する。
【0083】
(BS1での処理)
図8は、BS1(BS制御部15)のRS2に対する処理動作例を示している。
即ち、BS1は、逐次、RS2に対して、MS3にHARQデータを送信させるためのスケジューリング情報を送信する。これは、RS2での受信状況やBS1での受信状況には関係なく、RS2に対してスケジューリング情報を送信する。
【0084】
また、RS2に対しては、1つ前のHARQデータを正常受信した場合は、RS2から新規HARQデータの中継を要求するが(状態S0)、1つ前のHARQデータがRS2にて正常受信できていない場合やBS1で受信に失敗した場合は、RS2に対して当該HARQデータの再送を要求する(状態S1、S2)。
(RS2での処理)
図9は、RS2(RS制御部25)におけるMS3に対する処理動作例を示している。
【0085】
即ち、RS2は、MS3からのHARQデータの受信状況及びBS1へ中継したHARQデータに対するBS1からの再送要求の受信状況に応じて、MS3に対する処理を決定する(RS状態管理部253で管理している2つの状態S0及びS1に応じた処理を実行する)。
また、図10に、RS2からMS3に送信するDL/UL MAPの一例を示す。
【0086】
当該DL/UL MAPには、無線フレームにおけるULのHARQデータの送信要求情報であるHARQ UL MAP IEが含まれる。このHARQ UL MAP IEの中には、MS3の識別情報(RCID_ID)やHARQデータのチャネル番号を示す情報(ACID),新規送信か再送かを示す情報(AI_SN)などを含むDL HARQ xxx sub-burstが含まれている。なお、xxxには、例えば、Chase, IR CTCなどのHARQの方法が記述される。
【0087】
RS2は、BS1からスケジューリング情報を受信してDL/UL MAPを生成する場合、MS3からのHARQデータの受信状況に応じて、HARQデータに関するIEの情報を更新する。具体的には、HARQデータの新規送信か再送かを示すAI_SNの値を更新する。AI_SNのとり得る値は、“0”か“1”であり、HARQデータの受信に成功し、新規のHARQデータを送信させる場合は、前とは異なる値にし、HARQデータの受信に失敗して、再送を行なわせる場合は、前と同じ値に設定する。
【0088】
したがって、RS2は、MS3からHARQデータを正常受信している状態S0において、BS1から新規HARQデータの中継を要求された場合は、MS3に対して、新規HARQデータの送信を要求する(AI_SN反転あり)。一方、BS1から1つ前のHARQデータの再送を要求された場合は、MS3に対しては、既に正常受信しているが、1つ前のHARQデータの再送を要求する。これは、RS2のHARQバッファ24でのHARQデータのバッファ溢れを制限するためである。
【0089】
これに対し、RS2が、MS3からのHARQデータの受信に失敗している状態S1では、RS2は、MS3に対しては常にHARQデータの再送を要求する(AI_SN反転なし)。なお、RS2からBS1への処理については、BS1からの要求どおりに行なう。つまり、BS1から再送を要求された場合は、HARQデータの再送を行ない、新規送信を要求された場合は、新規HARQデータを中継する。ここで、BS1に対して送信するHARQデータがない場合、つまりはRS2において、MS3からのHARQデータの受信に失敗している場合は、HARQデータの送信を行なわずに、MS3からのHARQデータ受信失敗をBS1に通知する。
【0090】
(2ホップシステムにおけるULの再送制御シーケンス)
次に、上述したBS1及びRS2の動作(UL処理)を前提として、BS1とMS3との間の通信を1台のRS2が中継する場合のULの再送処理について、図11及び図12に示すシーケンス図を参照しながら説明する。なお、図11は、RS2とMS3との間のHARQデータの伝送に誤りが生じて、MS3から再送を行なう場合の処理について示しており、図12は、RS2とBS1との間でHARQデータに誤りが生じ、RS2から再送を行なう場合の処理について示している。
【0091】
(RS2とMS3との間の伝送に誤りが発生した場合)
図11に示すように、BS1は、DL/UL MAPと、MS3からの送信データ(HARQデータ)#1をRS2にて中継するための情報として、RS2とMS3との間の無線リンクについてのスケジューリング(SCH)情報とをRS2に送信する(ステップB1,B2)。
【0092】
ここで、当該スケジューリング情報には、MS3からの送信データ(HARQデータ)の中継に関する情報、即ち、RS2とMS3との間の無線リンク(無線フレーム)においてRS2及びMS3が通信に用いるべきバーストの割当情報、より詳細には、MS3がHARQデータをRS2へ送信するのに用いるべきULバーストの割当情報が少なくとも含まれる。また、前記DL/UL MAPには、BS1とRS2との間の無線リンクにおいて当該スケジューリング情報をどの領域(DLバースト)にて送信するかを示す情報が少なくとも含まれている。
【0093】
したがって、RS2は、当該DL/UL MAPが示すDLバーストを受信処理することにより、前記スケジューリング情報を受信することができ、また、受信したスケジューリング情報に基づいてMS3との通信(ULバースト割当)を制御することができるようになる。
即ち、RS2は、BS1から受信したスケジューリング情報を基に、MS3との間の無線リンクにおいてHARQデータを送信させるためのDL/UL MAP(MS3はHARQデータ#1をどのULバーストを用いて送信すべきかを示す情報)を生成してMS3へ送信する(ステップB3)。
【0094】
MS3は、RS2から当該DL/UL MAPを受信すると、そのDL/UL MAPで割り当てられたULバーストにてHARQデータ#1をRS2に送信する(ステップB5)。
その一方で、BS1は、この間、DL/UL MAPによりRS2がHARQデータ#1をBS1へ中継するための領域(ULバースト)をRS2に割り当ててHARQデータ#1の中継(送信)を要求する(ステップB4)。
【0095】
RS2は、MS3からHARQデータ#1を受信すると、誤り訂正復号を行なう。その結果、正しく復号できれば、RS2は、BS1に対してHARQデータ#1の受信成功(ACK)を通知するが、HARQデータ#1に訂正可能な範囲を超える誤りが生じていて正常受信できなければ(ステップB6)、BS1に対して、MS3からのHARQデータ#1の受信に失敗した旨の情報(NAK)を通知する(ステップB9)。
【0096】
一方、BS1は、この間、RS2におけるHARQデータ#1の受信結果(ACK又はNAK)の受信を待たずに、スケジューリング情報の次の送信機会において、HARQデータ#2の送信のためのスケジューリング情報と、当該スケジューリング情報のバースト割当情報(DL/UL MAP)とを生成してRS2に送信する(ステップB7,B8)。
RS2は、当該DL/UL MAPにより割り当てられたDLバースト(スケジューリング情報)を受信すると、本来は、そのスケジューリング情報を基にHARQデータ#2の送信のためのDL/UL MAPを生成して送信すべきところ、HARQデータ#1の受信に失敗しているため、新規HARQデータ#2の送信を要求する代わりに、過去(1つ前)のHARQデータ#1の再送を要求する。
【0097】
即ち、BS1からの新規HARQデータ#2の送信のためのスケジューリング情報を基に過去(1つ前)のHARQデータ#1の再送を要求するDL/UL MAPを生成し、当該DL/UL MAPをMS3に送信する(ステップB10)。これにより、MS3は、当該DL/UL MAPにより指定されたULバーストにて、HARQデータ#1をRS2に再送する(ステップB12)。
【0098】
なお、その間、BS1は、RS2がMS3からのHARQデータ#1の受信に失敗したことを前記NAKの受信(ステップB9)により認識しているため、新規HARQデータ#2ではなく1つ前のHARQデータ#1の中継をDL/UL MAPによりRS2に要求し(ステップB11)、新規HARQデータ#2の送信のためのDL/UL MAPにより割り当てた受信領域(ULバースト)についての受信処理は行なわない。
【0099】
そして、RS2は、MS3から再送されたHARQデータ#1を受信すると、当該HARQデータの誤り訂正復号を行なう。その結果、正しく復号できれば、RS2は、BS1に対して、HARQデータ#1を送信(中継)するとともに、受信成功(ACK)を通知する(ステップB15,B16)。なお、MS3から受信したHARQデータ#1を再度正常受信できなかった場合は、前記ステップB9と同様に、RS2は、BS1に対してNAKを通知することになる。
【0100】
その一方で、この間、BS1は、RS2からのHARQデータ、その受信結果(ACK又はNAK)の受信を待たずに、スケジューリング情報の次の送信機会(周期)において、スケジューリング情報を生成してDL/UL MAPで指定するDLバーストにてRS2に送信するが、その際、RS2がHARQデータ#1の受信に失敗していることを認識しているので、新規HARQデータ#3の送信ではなく1つ前のHARQデータ#2の再送のためのスケジューリング情報をDL/UL MAPで指定するDLバーストにて送信する(ステップB
13,B14)。
【0101】
RS2は、当該DL/UL MAPにより指定されたDLバーストにて受信したスケジューリング情報を基に、1つ前のHARQデータ#2の送信を要求するDL/UL MAPを生成し、これをMS3に送信する(ステップB17)。これにより、MS3は、当該DL/UL MAPにより指定されたULバーストにて、HARQデータ#2をRS2に再送することになる。
このように、BS1が、RS2からのHARQデータの中継(受信結果の通知)を待たずに、次のHARQデータ送信のためのスケジューリング情報を周期的な送信機会(図11では3フレーム毎の送信機会)において連続的にRS2に送信することにより(前記ステップB2,B8,B14参照)、MS3は、当該周期に応じて連続的にRS2からDL/UL MAPを受信することができ、HARQデータを連続して送信することが可能になる。
【0102】
また、MS3とRS2との間でHARQデータの伝送に誤りが生じた場合は、RS2にて、BS1から受信される、新規HARQデータの送信(中継)のためのスケジューリング情報を基に、前のHARQデータの再送のためのDL/UL MAPを生成するので(前記ステップB10参照)、MS3は、前記伝送誤りの有無に関わらずDL/UL MAPを前記周期でRS2から受信することができ、その受信周期で即時にHARQデータの再送を行なうことが可能となる。
【0103】
(BS1とRS2との間の伝送に誤りが発生した場合)
図12に示すように、RS2は、MS3からHARQデータ#1を正常に受信し、BS1にHARQデータ#1の中継を行なう。一方、BS1は、MS3からの新規HARQデータ#2の送信のためのスケジューリング情報をDL/UL MAPで指定する領域(DLバースト)にてRS2に送信し(ステップB21,B22)、その後にRS2からHARQデータ#1を受信するとともに(ステップB23)、MS3が送信したHARQデータ#1のRS2での受信結果(ACK)を受信する(ステップB25)。
【0104】
BS1は、RS2から受信したHARQデータ#1を誤り訂正復号するが、訂正可能な範囲を超える誤りが生じていて正常にデコードできなければ(ステップB24)、HARQデータ#1の再送を要求するDL/UL MAPを生成してRS2に送信する(ステップB27)。
一方、BS1から新規HARQデータ#2を送信するためのスケジューリング情報を受信したRS2は、当該スケジューリング情報を基にMS3がHARQデータ#2を送信するためのバースト割当情報(DL/UL MAP)を生成し、MS3に送信する(ステップB26)。MS3は、当該DL/UL MAPを受信すると、HARQデータ#2をそのDL/UL MAPで指定されたULバーストにてHARQデータ#2をRS2に送信する(ステップB28)。
【0105】
RS2は、当該HARQデータ#2を受信するが、BS1から1つ前のHARQデータ#1の再送要求を受信しているため、BS1に対して、HARQデータ#2を送信する代わりに、1つ前のHARQデータ#1を再送する(ステップB31)。また、RS2は、MS3が送信したHARQデータ#1のRS2での受信結果(ACK)もBS1に送信する(ステップB32)。
【0106】
その一方で、BS1は、RS2からのHARQデータの受信、HARQデータのRS2での受信結果の受信を待たずに、スケジューリング情報の次の送信機会(周期)で、DL/UL MAP及びスケジューリング情報をRS2に送信する。ただし、このときBS1は、HARQデータ#1を正常に受信できていないため、新規HARQデータ#3ではなく1つ前のHARQデータ#2の送信のためのスケジューリング情報を生成してDL/UL MAPで指定する領域(DLバースト)にてRS2に送信する(ステップB29,B30)。
【0107】
そして、HARQデータ#2のための前記スケジューリング情報を受信(ステップS30)したRS2は、当該スケジューリング情報を基にHARQデータ#2の送信領域(ULバースト)を割り当てるバースト割当情報(DL/UL MAP)を生成してMS3に送信し(ステップB33)、MS3からHARQデータ#2を当該ULバーストにて受信する(ステップB35)。
【0108】
このとき、RS2は、前記ステップS28においてHARQデータ#2を既に正常受信しているが、MS3に新規HARQデータ#3を送信させると、HARQバッファ24のバッファ溢れが発生する可能性があるため、1つ前のHARQデータ#2を再送させることで、これを防いでいる。
そして、BS1は、HAQRデータ#2の送信(中継)をDL/UL MAPによりRS2に要求し(ステップB34)、RS2は、BS1に対して、MS3から受信したHARQデータ#2を送信するとともに(ステップB38)、当該HARQデータ#2の受信結果(ACK)を送信する(ステップB39)。
【0109】
その一方で、BS1は、RS2からのHARQデータ#2、その受信結果の受信を待たずに、次の送信機会(周期)において、MS3からの新規HARQデータ#3の送信のためのスケジューリング情報をDL/UL MAPで指定する領域(DLバースト)にてRS2に送信し(ステップB36,B37)、RS2は、当該スケジューリング情報を基にHARQデータ#3の送信領域(ULバースト)の割当情報(DL/UL MAP)を生成してMS3に送信する(ステップB40)。これにより、MS3は、当該DL/UL MAPで指定されたULバーストにて新規HARQデータ#3をRS2に送信する。
【0110】
このように、BS1とRS2との間でULのHARQデータの伝送に誤りが生じた場合においても、BS1は、RS2へ送信するDL/UL MAPをHARQデータの受信結果に応じて更新(変更)してRS2へ送信するので、MS3は、DL/UL MAPを前記周期に応じてRS2から連続的に受信することができ、その受信周期で即時にHARQデータの再送を行なうことが可能となる。
【0111】
〔B〕第2実施形態の説明
次に、以下の第2実施形態では、BS1からMS3(図1の場合はMS3−3)へ送信されるHARQデータを複数台(例えば2台)のRS2−1(#1)及び2−2(#2)が中継する場合の処理(DL処理及びUL処理)について説明する。
(DL処理の詳細例)
まず、BS1とMS3との間の通信を2台のRS2(#1,#2)が中継する場合(3ホップシステム)のDL処理の詳細について、図13〜図15を用いて説明する。
【0112】
(BS1での処理)
図13は、RS2に対してHARQデータの送信機会が与えられたときのBS1(BS制御部15)における処理動作例を示している。
この図13に示すように、BS1(BS制御部15)は、8つの状態S0〜S7をBS状態管理部153(状態管理テーブル)にて管理し、当該状態S0〜S7に応じたDL処理を実行する。即ち、BS1は、RS2及びMS3におけるHARQデータの受信状況(つまりは、RS2及びMS3から受信したHARQデータに対する応答の状況)を把握し、その状況から次の処理(新規HARQデータの送信や、HARQデータの送信および中継のためのスケジューリング情報の送信)を決定する。
【0113】
ここで、BS1は、BS1との通信に複数のRS2を介するRS2およびMS3からのHARQデータに対する応答受信に遅延が生じるため、次の処理の際に参照する各RS2及びMS3の応答結果の対象は異なる。
即ち、図13に示すように、HARQデータ#n+1を送信する契機を与えられたときに参照するHARQデータの応答は、RS#1に対しては1つ前のHARQデータ#nに対する応答、RS#2に対しては2つ前のHARQデータ#n−1、MS#3に対しては3つ前のHARQデータ#n−2に対する応答を確認する。
【0114】
ここで、BS1は、新規HARQデータ#n+1の送信機会を与えられたときに、各RS#1,#2,MS#3のHARQデータ伝送に対する応答を参照し、全てがACK(受信完了)の場合に限り、当該HARQデータ#n+1の伝送を行なう。一方、RS#1,#2間及びRS#2とMS#3との間においてHARQデータの伝送に失敗している場合は、失敗している区間に対して再送を行なうようにスケジューリング情報を生成し、各RS#1,#2に送信する。BS1とRS#1との間でHARQデータの伝送に失敗している場合においては、BS1からHARQデータの再送を行なう。
【0115】
(RS2での処理)
一方、図14は、BS1からスケジューリング情報を受信、あるいはスケジューリング情報及びHARQデータを受信したときのRS2(RS制御部25)のMS3に対する処理動作例を示している。
この図14に示すように、RS2は、基本的に第1の形態と同様の処理を行なう。ここで、HARQデータの送信先がRS2(#2)の場合は、次のRS#2からの応答の結果を確認して処理を行なう。
(3ホップシステムにおけるDLの再送制御シーケンス)
上述したBS1及びRS2の動作(DL処理)を前提として、BS1とMS3との間の通信を2台のRS#1,#2が中継する場合のDLの再送処理のシーケンスを図15に示す。この図15は、RS#2からMS#3へのHARQデータの伝送に誤りが生じて、RS#2からMS#3へ再送を行なう場合の処理シーケンス(ステップA31〜A63)について示している。
【0116】
ここで、本例の要旨である処理に着目して説明すると、BS1は、第1実施形態のDL処理と同様に、MS#3からのHARQデータ伝送に対する応答を受信する前に、新規HARQデータの伝送を開始する(ステップA45〜A47,A59〜A61)。
MS#3は、RS#2からのHARQデータ#1の受信に失敗し(ステップA41)、RS#2に対してNAK(再送要求)を送信する(ステップA42)。
【0117】
この間、BS1は、RS#1に対して、新規HARQデータ#2の送信を行なっており(ステップA45〜A47)、RS#1は、RS#2に対して当該新規データ#2の中継を行なっている(ステップA50〜A52)。
RS#2は、MS#3からNAK(再送要求)を受信したときに(ステップA42)、MS#3に対して、RS#1から受信した新規HARQデータ♯2をMS#3に送信する代わりに、1つ前のHARQデータ#1の再送を行なう(ステップA55,A56)。そして、RS#2は、RS#1から受信した新規HARQデータ#2をHARQバッファ24にバッファする。
【0118】
その間に、BS1は、HARQデータ♯1に対するMS#3のNAK(再送要求)を受信する(ステップA43,A44)。ここで、BS1は、新規のHARQデータ♯4の送信機会を与えられたときに、RS#1のHARQデータ#3の受信状況、RS#2のHARQデータ#2の受信状況、MS3のHARQデータ#1の受信状況を確認し、HARQデータ#4を送信するか否かを判断する。
【0119】
本例の場合、BS1は、RS#2において、HARQバッファ24にバッファされているHARQデータが存在することを認識し、フレーム#n+9におけるHARQデータ#4の送信機会において、HARQデータ#4の伝送を停止し、RS#2とMS#3との間におけるHARQデータ#3の伝送のためのスケジューリング情報を送信する(ステップA59〜A61)。そのスケジューリング情報を受信(ステップA62,A63)したRS#2は、HARQバッファ24にバッファしていたHARQデータ#2を送信する。
【0120】
(UL処理の詳細例)
次に、BS1とMS3との間の通信を2台のRS2(#1,#2)が中継する場合(3ホップシステム)のUL処理の詳細について、図16〜図18を用いて説明する。
(BS1での処理)
図16は、BS1(BS制御部15)のRS2に対する処理動作例を示している。
【0121】
この図16に示すように、BS1(BS制御部15)は、第1実施形態におけるBS1のUL処理と同様に、3つの状態S0,S1,S2をBS状態管理部153(状態管理テーブル)にて管理し、当該状態に応じた処理を行なう。即ち、この場合のBS1は、RS#1,#2間及びRS#2とMS#3との間の誤り発生の状況に関係なく、周期的にHARQデータ送信のための割り当てを行なう。
【0122】
(RS2での処理)
一方、RS2(RS制御部25)は、例えば図17に示すように、MS3からのHARQデータの受信状況(OK又はNG)と、BS1からの1つ前のHARQデータの再送要求の受信状況とに応じた2つの状態S0,S1をRS状態管理部253(状態管理テーブル)にて管理し、その状態S0,S1に応じた処理を実行する。
【0123】
即ち、RS2は、周期的に割り当てられる次のRS2あるいはMS3に対するHARQデータの送信の割り当てに対して、1つ前のHARQデータ受信状況を加味して、DL/UL MAPを生成する。例えば、1つ前のHARQデータ受信の際に誤りが発生した場合は、生成するDL/UL MAPのAI_SNを1つ前のDL/UL MAPのAI_SNと同じ値にして、下位ノードに再送を要求する。一方、1つ前のHARQデータの受信が成功している場合は、生成するDL/UL MAPのAI_SNを1つ前のDL/UL MAPのAI_SNを反転させた値にして、下位ノードに新規HARQデータの送信を要求する。
【0124】
(3ホップシステムにおけるULの再送制御シーケンス)
次に、上述したBS1及びRS2の動作(UL処理)を前提として、BS1とMS3との間の通信を2台のRS#1,#2が中継する場合のULの再送処理のシーケンスを図18に示す。この図18は、RS#2とMS#3との間のHARQデータの伝送に誤りが生じて、MS#3から再送を行なう場合の処理(ステップB41〜B67)について示している。
【0125】
ここで、本例の要旨である処理に着目して説明すると、RS#2は、上位のRS#1から受信したスケジューリング情報を基にMS3からのHARQデータの送信を要求するDL/UL MAPを生成してMS#3に送信し、これにより、MS#3からHARQデータを受信した場合(ステップB41〜B44)、そのHARQデータをデコードし、デコード結果(図18ではNAK)をBS1に通知する(ステップB45,B54,B55)。
【0126】
BS1は、MS3及びRS2へのリソース割当に余裕がある場合は、HARQデータの送信の割り当てをほぼ等間隔で行なう(ステップB46〜B49、B60,B61,B63,B64)。
RS2は、BS1あるいは上位のRS2から受信したスケジューリング情報を基に下位の無線リンクにおいてMS#3がHARQデータを送信するためのDL/UL MAPを生成、送信する(ステップB50、B52,B53,B62,B65,B66)。
【0127】
BS1は、スケジューリング情報の生成にあたっては、新規HARQデータの送信を想定する。RS2は、隣接RS2あるいはMS3からのHARQデータの送信に対して、1つ前のHARQデータの送信の際に誤りが発生している場合(ステップB45)は、HARQデータの再送を行なうために、上位側から周期的に受信するスケジューリング情報を基にDL/UL MAPを更新する(1つ前のHARQデータの送信を要求する)。
【0128】
(補足)
なお、上述した2ホップシステムと3ホップシステムのそれぞれにおけるBS1及びRS2での処理は、基本的に同様であるが、以下の点で異なる。
(DL)
BS1:ホップ数が増えるにつれてHARQデータに対する応答を参照する数が増える。
【0129】
RS1:ホップ数が増えるにつれてHARQデータをバッファする最大数が増える。
(UL)
RS2:ホップ数が増えるにつれてHARQデータをバッファする最大数が増える。
【産業上の利用可能性】
【0130】
以上詳述したように、本発明によれば、無線中継システムにおける再送処理の遅延を抑制することができるので、無線通信技術分野において極めて有用であると考えられる。
【符号の説明】
【0131】
1 無線基地局(BS:Base Station)
10 受信アンテナ
11 受信部
111 無線(RF)受信機(Rx)
112 信号処理部
12 送信部
121 信号処理部
122 RF送信機(Tx)
13 送信アンテナ
14 HARQバッファ
15 BS制御部
151 スケジューリング(SCH)情報生成部
152 DL/UL MAP生成部
153 BS状態管理部
2(2−1,2−2) 無線中継局(RS:Relay Station)
20 受信アンテナ
21 受信部
211 RF受信機(Rx)
212 信号処理部
22 送信部
221 信号処理部
222 RF送信機(Tx)
23 送信アンテナ
24 HARQバッファ
25 RS制御部
251 スケジューリング(SCH)情報生成部
252 DL/UL MAP生成部
253 RS状態管理部
254 受信結果(応答:ACK/NAK)生成部
3(3−1,3−2,3−3) 無線端末(MS:Mobile Station)
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線中継システムにおける無線基地局に関する。
【背景技術】
【0002】
IEEE802.16 WG(Working Group)では、無線基地局(BS:Base Station)に複数の無線端末(MS:Mobile Station)が接続可能なPoint-to-Multipoint(P−MP)型通信方式を規定している。IEEE802.16 WG(ワーキンググループ)では、主に固定通信用途向けのIEEE802.16d仕様(802.16-2004)と移動通信用途向けのIEEE802.16e仕様(IEEE802.16e-2005)の2種類を規定している(後記非特許文献1,2参照)。これらの仕様では、複数の物理層が規定されているが、直交周波数分割多重(OFDMやOFDMAなど)の技術が主に使用される。
【0003】
図19に、IEEE802.16d/e準拠のサービスイメージ(無線通信システム構成例)を示す。この図19に示すように、IEEE802.16d/e準拠のシステムでは、1台のBSに複数のMSが接続するポイントツーマルチポイント(P−MP)型接続を基本とする。
しかしながら、このようなBSとMSとがP−MPで接続するサービス形態では、サービスエリアがBSのカバーエリア(セル)に制限され、セルエッジでは通信レートが低くなる。
【0004】
そこで、IEEE802.16 WGでは、BSとMSとの間の通信を中継する無線中継局(Relay Station:RS)の検討を行なうタスクグループ(IEEE802.16j)を立ち上げ、検討を開始している。図20に、RSを導入した場合のシステム構成例を示す。この図20に示すように、BSがカバーできないエリアに存在するMSとの通信を、RSを介して行なうことにより、BSのサービスエリアを拡大することが可能である。
【0005】
一方、後記特許文献1に記載された技術では、RSを介した中継システムにおいて、BSがRSとMSとの間の通信のスケジューリングを決定する。RSは、BSからRSとMSとの間についてのスケジューリング情報〔無線フレームの構成に関する情報や無線リソースの割当情報(OFDM方式やOFDMA方式におけるDL/UL MAP)などが含まれる〕を受信し、そのスケジューリング情報に基づいて、RSとMSとの間の通信制御を実行する。この場合、スケジューリング処理をBSが集中的に実行するため、RSは簡易な構成にすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−74325号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】IEEE Std 802.16(TM)-2004
【非特許文献2】IEEE Std 802.16e(TM)-2005
【非特許文献3】Eugene Visotsky, et al.,“Proposal for Centralized HARQ Retransmission Scheduling”,IEEE C80216j-07_226,2007-03-05
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記特許文献1が示すように、BSがRSとの間の通信やRSとMSとの間の通信のスケジューリングを全て行なう場合、RSは、他のRSとの間およびRSとMSとの間の通信状況や無線状況などの情報をBSに逐次報告する必要がある。そして、BSは、RSから送信されてくる情報を基に、RS間およびRSとMSとの間のスケジューリングを行ない、それらのリンクに対するスケジューリング情報を生成する。
【0009】
ところで、無線通信において、データ伝送の信頼性を上げるために、HARQ(Hybrid Automatic Repeat reQuest)と呼ばれる技術が提案されている。HARQは、データが誤った場合のデータの再送に加え、データの誤り訂正を組み合わせた技術である。受信局は、HARQデータを受信したときに誤り訂正用の冗長ビットを用いて誤り訂正を行なう。誤りが訂正できなかった場合は、そのHARQデータをメモリに蓄積し、送信局からの再送を要請する。そして、再送されてくるデータとメモリに蓄積されているデータとを信号レベルで最大比合成を行ない、再度誤り訂正を行なうことにより、誤り訂正の効率を上げる。この技術により、効率的にデータ伝送の信頼性を上げることが可能である。
【0010】
ここで、HARQを図20に示すようなRSを導入したシステムに適用する場合、HARQデータの中継を行なっている途中でHARQデータに誤りが発生し、訂正できない場合、そのときに送信したRS、つまりHARQデータを正常に保持しているRSからHARQデータの再送を行なう方が、無線リソースを有効利用することができる。
しかしながら、BSがRSを介した通信区間の全リンクのスケジューリング情報を集中的に管理、生成することを前提とするシステムにおいては、前述のRSからHARQデータの再送を行なうためには、HARQデータに誤りが発生したリンクの情報をBSに通知し、BSは当該通知を受けてから、HARQデータの再送のためのスケジューリング情報を生成することになる。
【0011】
例えば図21に、2ホップシステムのダウンリンク(DL)のデータ伝送において、RSとMSとの間でHARQデータの誤りが発生し、RSからMSにHARQデータの再送を行なう場合の例を示す。なお、BSからRSを介したMSへの方向がダウンリンクであり、その逆方向がアップリンク(UL)である。
BSは、DL/UL MAPと、RSとMSとの間の無線リンク(RS−MS間DL)についてのスケジューリング(SCH)情報とをRS宛に送信するとともに(ステップA101,A102)、HARQデータ#1を当該RS宛に送信する(ステップA103)。
【0012】
ここで、前記スケジューリング情報には、送信データ(HARQデータ)の中継に関する情報、即ち、RSとMSとの間の無線リンク(無線フレーム)においてRS及びMSが通信に用いるべき領域(バーストと呼ばれる無線リソース)の割当情報、より詳細には、RSが当該HARQデータをMSへ送信するのに用いるべきDLバースト、当該HARQデータ#1を受信したMSがその受信結果(受信成功を示すACK及び受信失敗を示すNAK)をRSへ送信(返信)するのに用いるべきULバーストの割当情報が含まれる。
【0013】
また、前記DL/UL MAPには、BSとRSとの間の無線リンク(BS−RS間DL)においてスケジューリング情報及びHARQデータをそれぞれどの領域(DLバースト)にてRSに送信するかを示す情報や、HARQデータのRSでの受信結果(受信成功を示すACK及び受信失敗を示すNAK)をどの領域(UL ACK Channel領域)にてBSへ送信(返信)すべきかを示す情報が含まれる。なお、MSおよびRSからのACK/NAKは、UL ACK Channel Regionと呼ばれる特別な領域にて送信される。
【0014】
したがって、RSは、BSから受信したDL/UL MAPが示すDLバーストを受信処理することにより、BSからのスケジューリング情報及びHARQデータを受信することができ、また、MSから受信したHARQデータの受信結果を当該DL/UL MAPが示すUL ACK Channel領域にてBSへ送信することができ、さらには、受信したスケジューリング情報に基づいてMSとの間の通信(バースト割当)を制御することができるようになる。
【0015】
さて、RSは、前記のようにBSから受信したスケジューリング情報を基にRS−MS間についてのDL/UL MAP(HARQデータ#1をどのDLバーストにてMSへ送信するかを示す情報、HARQデータ#1の受信結果をMSがどのUL ACK Channel領域にて送信すべきかを示す情報)を生成してMS宛へ送信するとともに、BSから受信したHARQデータ#1を当該DL/UL MAPが示すDLバーストにてMSに送信する(ステップA104,A105)。また、RSは、BSからのHARQデータ#1を正常に受信(デコード)できたこと(受信成功)を示す情報(ACK)を、BSから受信した前記DL/UL MAPが示すUL ACK Channel領域にて、BSに送信する(ステップA107)。
【0016】
そして、MSでは、RSからの前記DL/UL MAPが示すDLバーストを受信処理することにより、HARQデータ#1を受信するが、当該HARQデータ#1に誤りが発生して正常に受信(デコード)できなかった場合(ステップA106)、MSは、その旨(受信失敗)を示す情報(NAK)を、RSから受信した前記DL/UL MAPが示すUL ACK Channel領域にて、BSに送信する(ステップA108)。
【0017】
このNAKはRSを介してBSへ中継され(ステップA109)、当該NAKを受信したBSは、RSからHARQデータ#1を再送させるためのDL/UL MAP及びスケジューリング情報を生成してRSに送信する(ステップA110,A111)。
RSは、BSから前記HARQデータ#1の再送のためのDL/UL MAPを受信して当該DL/UL MAPが示すDLバースト(スケジューリング情報)を受信すると、その受信スケジューリング情報を基にRS−MS間についてのDL/UL MAPを生成してMSに送信するとともに、HARQデータ#1を再送する(ステップA112,A113)。
【0018】
一方、図22に、2ホップシステムのULのデータ伝送において、MSとRSとの間でHARQデータに誤りが発生し、MSからHARQデータの再送を行なう場合の例を示す。
BSは、DL/UL MAPと、MSからの送信データ(HARQデータ)#1をRSにて中継するための情報として、RSとMSとの間の無線リンクについてのスケジューリング(SCH)情報とをRS宛に送信する(ステップB121,B122)。
【0019】
ここで、当該スケジューリング情報には、MSからの送信データ(HARQデータ)の中継に関する情報、即ち、RSとMSとの間の無線リンク(無線フレーム)においてRS及びMSが通信に用いるべきバーストの割当情報、より詳細には、MSがHARQデータをRSへ送信するのに用いるべきULバーストの割当情報が含まれる。また、DL/UL MAPには、BSとRSとの間の無線リンクにおいて当該スケジューリング情報をどの領域(DLバースト)にて送信するかを示す情報が含まれる。
【0020】
したがって、RSは、当該DL/UL MAPが示すDLバーストを受信処理することにより、前記スケジューリング情報を受信することができ、また、そのスケジューリング情報に基づいてMSとの間の通信(バースト割当)を制御することができるようになる。
即ち、RSは、このようにBSから受信したスケジューリング情報を基にRS−MS間についてのDL/UL MAP(MSはHARQデータ#1をどのULバーストを用いて送信すべきかを示す情報)を生成してMS宛へ送信する(ステップB123)。
【0021】
MSは、RSから当該DL/UL MAPを受信すると、そのDL/UL MAPが示すULバーストにてHARQデータ#1をBS宛に送信する(ステップB125)。
RSは、MSからHARQデータ#1を正常受信すれば、BSに対してHARQデータ#1の受信成功(ACK)を通知するが、HARQデータ#1に誤りが生じて正常受信できなければ(ステップB126)、BSに対してMSからのHARQデータ#1の受信失敗(NAK)を通知する(ステップB128)。
【0022】
なお、この間、BSは、RSがMSから受信したHARQデータ#1をBSへ中継(送信)するための領域(ULバースト)をDL/UL MAPにより割り当てるが(ステップB124,B127)、RSはMSからのHARQデータ#1を正常に受信していないため、当該領域にてHARQデータ#1を受信することはない。
BSは、RSから前記NAKを受信すると、MSからのHARQデータ#1の再送のためのスケジューリング情報を生成するとともに、当該スケジューリング情報をBS−RS間DLのどのDLバーストにて送信するかを示す情報(DL/UL MAP)を生成してRS宛に送信する(ステップB129,B130)。
【0023】
RSは、BSから受信したDL/UL MAPが示すDLバーストを受信処理してスケジューリング情報を取得すると、当該スケジューリング情報を基にRS−MS間ULについてのDL/UL MAPを生成してMS宛に送信することにより(ステップB131)、MSにHARQデータ#1の再送を要求する。そして、MSは、当該再送要求(DL/UL MAP)を受信すると、そのDL/UL MAPが示すULバーストにてHARQデータ#1の再送を行なう(ステップB132)。
【0024】
以上のように、従来技術においては、DLにおいてRSがMSにHARQデータの再送を行なう状況や、ULにおいてMSがRSにHARQデータの再送を行なう状況において、RSとMSとの間のHARQデータの送信結果を一旦BSに通知し、BSがこの通知を受けてからスケジューリング情報を生成してRSに通知することで、HARQデータの再送を行なわせるため、HARQデータの受信失敗が発生してからそのHARQデータの再送までに長時間を要し、BSとMSとの間のデータ伝送に大きな遅延が発生してしまうという課題がある。当該遅延は、BSとMSとの間の通信を中継するRS数が増えるほど当然に増加することになる。
【0025】
なお、前記非特許文献3では、BSが、RSおよびMSからの再送が要求される場合において、即時の再送が可能なように、再送の帯域を予め割り当てることが記述されているが、BSおよびRSにおける具体的な処理方法については記述されていない。
本発明は、前記課題に鑑み創案されたもので、その目的の一つは、BSとMSとの間の通信を1又は複数のRSが中継する無線中継システムにおける再送処理の遅延を抑制できるようにすることにある。
【0026】
なお、前記目的に限らず、後述する発明を実施するための最良の形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本発明の他の目的の一つとして位置付けることができる。
【課題を解決するための手段】
【0027】
(1)第1の案として、無線基地局から1又は複数の無線中継局を介して無線端末へデータを中継する無線中継システムにおける前記無線基地局であって、自局よりも下位の無線中継局から前記無線端末に至る経路の無線リンクにおいて新規データを送信するための無線リソースの第1の割当情報を生成する割当情報生成手段と、過去の送信データに対する受信結果の前記下位の無線中継局又は前記無線端末からの受信を待たずに、前記第1の割当情報と前記新規データとを前記下位の無線中継局又は前記無線端末へ送信する送信手段と、をそなえた、無線中継システムにおける無線基地局を用いることができる。
【0028】
(2)また、第2の案として、無線端末から1又は複数の無線中継局を介してデータを無線基地局へ送信する無線中継システムにおける前記無線基地局であって、自局から前記無線端末に至る経路の無線リンクにおいて前記無線端末からのデータを送信させるための無線リソースの第1の割当情報を生成する割当情報生成手段と、下位の無線中継局又は前記無線端末からのデータ受信の有無に関わらず、前記第1の割当情報を前記下位の無線中継局又は前記無線端末に送信する送信手段と、をそなえた、無線中継システムにおける無線基地局を用いることができる。
【発明の効果】
【0029】
前記本発明によれば、少なくとも以下に示すいずれかの効果ないし利点が得られる。
(1)無線基地局(BS)は、下位の無線中継局(RS)あるいは無線端末(MS)からのデータの受信結果を待たずに、新規データを送信することで、無線端末に対して連続したデータ送信を行なうことができる。
(2)また、BSからMSへの方向(ダウンリンク)の経路において、データに誤りが発生した場合でも、RSが、BSから受信する新規データの送信(中継)のための無線リソースの割当情報(第1の割当情報)を基に、過去に送信したデータの再送を行なうための無線リソースの割当情報(第2の割当情報)を生成して過去のデータを再送することができるので、RSあるいはMSから要求されているデータの再送に対して、即時に対応することが可能となる。したがって、BSとMSとの間のRS数によらず再送処理の遅延を抑制することが可能となる。
【0030】
(3)一方、ULにおいては、BSは、RS及びMSからのデータ受信の有無によらずに、RSに対してデータ送信のための無線リソースの割当情報(第1の割当情報)を送信するので、RSは、配下のRSあるいはMSからのデータ受信結果を基にデータの再送あるいは新規データの送信を要求することで、連続したデータ中継が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1実施形態に係る無線中継システムの構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す無線基地局(BS)の要部に着目した構成を示す機能ブロック図である。
【図3】図1に示す無線中継局(RS)の要部に着目した構成を示す機能ブロック図である。
【図4】図2に示すBSにおけるダウンリンク(DL)処理を説明すべく状態管理テーブルの一例を示す図である。
【図5】図3に示すRSにおけるダウンリンク(DL)処理を説明すべく状態管理テーブルの一例を示す図である。
【図6】図3に示すRSのDL処理におけるフラグ情報(AI_SN)の更新を説明すべくDL/UL MAPのフォーマットを示す図である。
【図7】図1に示す無線中継システムにおけるDLの再送処理(2ホップシステムの場合)を説明するシーケンス図である。
【図8】図2に示すBSにおけるアップリンク(UL)処理を説明すべく状態管理テーブルの一例を示す図である。
【図9】図3に示すRSにおけるUL処理を説明すべく状態管理テーブルの一例を示す図である。
【図10】図3に示すRSのDL処理におけるフラグ情報(AI_SN)の更新を説明すべくDL/UL MAPのフォーマットを示す図である。
【図11】図1に示す無線中継システムにおけるULの再送処理(2ホップシステムの場合)を説明するシーケンス図である。
【図12】図1に示す無線中継システムにおけるULの再送処理(2ホップシステムの場合)を説明するシーケンス図である。
【図13】図2に示すBSにおけるDL処理(3ホップシステムの場合)を説明すべく状態管理テーブルの一例を示す図である。
【図14】図3に示すRSにおけるDL処理(3ホップシステムの場合)を説明すべく状態管理テーブルの一例を示す図である。
【図15】図1に示す無線中継システムにおけるDLの再送処理(3ホップシステムの場合)を説明するシーケンス図である。
【図16】図2に示すBSにおけるUL処理(3ホップシステムの場合)を説明すべく状態管理テーブルの一例を示す図である。
【図17】図3に示すRSにおけるUL処理(3ホップシステムの場合)を説明すべく状態管理テーブルの一例を示す図である。
【図18】図1に示す無線中継システムにおけるULの再送処理(3ホップシステムの場合)を説明するシーケンス図である。
【図19】IEEE802.16d/e準拠の無線通信システム構成例を示す図である。
【図20】図19に示すシステムに無線中継局(RS)を導入した構成例を示す図である。
【図21】図20に示すシステムにおけるDLの再送処理を説明するシーケンス図である。
【図22】図20に示すシステムにおけるULの再送処理を説明するシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。ただし、以下に示す実施形態は、あくまでも本発明の要旨の理解を助けるための例示に過ぎず、以下に示す実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。即ち、各実施形態の変形(実施例を組み合わせる等)を行なうこともできる。
〔A〕第1実施形態の説明
図1は本発明の第1実施形態に係る無線中継システムの構成を示すブロック図で、この図1に示すシステムは、無線基地局(BS)1と、複数(ここでは2台)の無線中継局(RS)2〔2−1(#1),2−2(#2)〕と、複数(ここでは3台)の無線端末(MS)3〔3−1(#1),3−2(#2),3−3(#3)〕とをそなえて構成され、MS3は、BS1と直接あるいは1又は複数のRS2を介して通信することができるようになっている。即ち、この図1においては、MS3−1はBS1と直接通信でき、BS1のサービスエリア(無線エリア)の境界近傍に位置するMS3−2はRS2−1を介してBS1と通信でき、BS1のサービスエリア外に位置するMS3−3はRS2−1及び2−2を介してBS1と通信(マルチホップ接続)できる様子が示されている。
【0033】
また、当該無線中継システムは、WiMAX規格準拠の無線フレーム、即ち、OFDMあるいはOFDMAのフレームにより、BS1とMS3との間、BS1とRS2との間、RS2間、RS2とMS3との間の通信がそれぞれ行なわれることを前提とし、これらすべての区間の無線リンク(BS−MSリンク、BS−RSリンク、RS−RSリンク、RS−MSリンク)における通信をBS1が集中的に管理、制御するようになっている。
【0034】
即ち、BS1は、前記の各無線リンクに無線リソース(バーストと呼ばれる前記無線フレームの通信領域)を割り当てるためのスケジューリング情報を一括管理(生成)し、対象のRS2に必要なスケジューリング情報を送信することで、対象無線リンクにおける通信を制御するようになっている。
(BS構成)
図2は前記BS1の要部に着目した構成を示す機能ブロック図で、この図2に示すBS1は、例えば、受信アンテナ10、受信部11、送信部12、送信アンテナ13、HARQバッファ14及びBS制御部15をそなえて構成されている。
【0035】
ここで、受信アンテナ10は、RS2又はMS3からのRF信号(メッセージやデータなど)を受信するものであり、受信部11は、この受信アンテナ10で受信されたRF信号について所要の受信処理を施すものである。このため、当該受信部11は、例えば、無線(RF)受信機(Rx)111と信号処理部112とをそなえて構成され、RF受信機111は、受信アンテナ10で受信されたRF信号について、ベースバンド周波数への周波数変換(ダウンコンバート)やディジタル信号処理のためのディジタル信号へのAD(Analog to Digital)変換などを含む所要の無線受信処理を施すものであり、信号処理部112は、このRF受信機111により得られたベースバンドディジタル信号について、少なくとも復調処理や復号処理を含む所要のディジタル信号処理を施すものである。
【0036】
また、送信部12は、MS3宛のダウンリンク(DL)の送信信号を生成するもので、例えば、信号処理部121と無線(RF)送信機(Tx)122とをそなえて構成され、信号処理部121は、MS3へ送信すべき信号(メッセージやデータなど)の符号化(畳込み符号やターボ符号等の誤り訂正符号化)処理、所定フォーマットの送信フレーム(OFDMフレームやOFDMAフレーム)の生成処理、QPSKや16QAM等による変調処理などを含む所要のディジタル信号処理を行なうものであり、RF送信機122は、この信号処理部121により得られた送信信号(ディジタルベースバンド信号)について、アナログ信号へのDA(Digital to Analog)変換や送信RF信号への周波数変換(アップコンバート)などを含む所要の無線送信処理を施すものである。
【0037】
送信アンテナ13は、この送信部12にて得られた送信信号をRS2又はMS3に向けて空間に放射するものである。
HARQバッファ14は、MS3宛に送信したデータを後の再送に備えて、逐次、一時的にバッファしておくものであり、BS制御部15は、前述したように、BS1とMS3との間、BS1とRS2との間、RS2間、RS2とMS3との間の各無線リンクにおける通信を集中的に制御する機能を具備するもので、例えば、スケジューリング(SCH)情報生成部151と、DL/UL MAP生成部152と、BS状態管理部153とをそなえて構成される。
【0038】
ここで、スケジューリング情報生成部151は、BS1からMS3に至る各無線リンクにおけるスケジューリング情報を生成することができるものであり、DL/UL MAP生成部152は、次ホップ先ノードであるRS2又はMS3との間の無線リンクにおけるバースト割当情報を含むDL/UL MAPを生成することができるものである。
BS状態管理部153は、DLについては図4に示すような状態管理テーブルにより4つの状態S0,S1,S2,S3を管理し、ULについては図8に示すような状態管理テーブルにより3つの状態S0,S1,S2を管理するもので、BS制御部15は、当該状態に応じたDL及びULについての処理を実行するようになっている。なお、その詳細については後述する。
【0039】
(RS構成)
一方、前記RS2は、その要部の機能に着目すると、例えば図3に示すように、受信アンテナ20、受信部21、送信部22、送信アンテナ23、HARQバッファ24及びRS制御部25をそなえて構成される。
ここで、受信アンテナ20は、BS1又はMS3若しくは他のRS2からのRF信号を受信するものであり、受信部21は、この受信アンテナ20で受信されたRF信号について所要の受信処理を施すものである。
【0040】
このため、当該受信部21は、例えば、RF受信機(Rx)211と信号処理部212とをそなえて構成され、BS1におけるものと同様に、RF受信機211は、受信アンテナ20で受信されたRF信号について、ベースバンド周波数への周波数変換(ダウンコンバート)やディジタル信号処理のためのディジタル信号へのAD変換などを含む所要の無線受信処理を施すものである。
【0041】
信号処理部212は、このRF受信機211により得られたベースバンドディジタル信号について、少なくとも復調処理や復号処理を含む所要のディジタル信号処理を施すもので、当該信号処理後の信号はMS3へのリレーのために送信部22(信号処理部221)に入力されるようになっている。
また、送信部22は、MS3又はBS1若しくは他のRS2宛の送信信号を生成するもので、例えば、信号処理部221とRF送信機(Tx)222とをそなえて構成され、信号処理部221は、MS3又はBS1へ送信すべき信号(メッセージやデータなど)の符号化(畳込み符号やターボ符号等の誤り訂正符号化)処理、所定フォーマットの送信フレーム(OFDMフレームやOFDMAフレーム)の生成処理、QPSKや16QAM等による変調処理などを含む所要のディジタル信号処理を行なうものであり、RF送信機222は、この信号処理部221により得られた送信信号(ディジタルベースバンド信号)について、アナログ信号へのDA(Digital to Analog)変換や送信RF信号への周波数変換(アップコンバート)などを含む所要の無線送信処理を施すものである。
【0042】
送信アンテナ23は、この送信部22にて得られた送信信号をMS3又はBS1若しくは他のRS2に向けて空間に放射するものである。
HARQバッファ24は、MS3又はBS1若しくは他のRS2に送信したデータを後の再送に備えて、逐次、一時的に保持しておくものである。ただし、当該HARQバッファ24には、後述するように、RS制御部25の制御の下、BS1又はMS3若しくは他のRS2から受信した新規のデータ(次ホップ先ノードに未送信のデータ)も格納されるようになっている。
【0043】
そして、RS制御部25は、BS1から直接あるいは上位のRS2を介して受信したスケジューリング情報に基づいて自局2とMS3又は下位のRS2との間の無線リンクにおける通信(バースト割当、データ送受信処理)を制御する機能を具備するもので、例えば、スケジューリング(SCH)情報生成部251と、DL/UL MAP生成部252と、RS状態管理部253と、受信結果(応答:ACK/NAK)生成部254とをそなえて構成される。
【0044】
ここで、スケジューリング情報生成部251は、MS3宛のデータの次ホップ先ノードが他のRS2である場合に、BS1から直接あるいは上位のRS2を介して受信されたスケジューリング情報を基に次ホップ先ノードである下位のRS2に送信すべきスケジューリング情報を生成するためのものである。なお、上位のRS2とはBS1に近い側のRS2を意味し、下位(配下)のRS2とはMS3に近い側のRS2を意味する。
【0045】
また、DL/UL MAP生成部252は、BS1から直接あるいは上位のRS2を介して受信されたスケジューリング情報を基に次ホップ先ノードであるMS3又は他のRS2との間の無線リンクにおけるバースト割当情報を含むDL/UL MAPを生成することができるものであり、受信結果(応答)生成部254は、BS1宛に送信(応答)すべき受信結果情報(ACK又はNAK)を生成することができるものである。
【0046】
そして、RS状態管理部253は、DLについては図5に示すような状態管理テーブルにより5つの状態S0,S1,S2,S3,S4を管理し、ULについては図9に示すような状態管理テーブルにより2つの状態S0,S1を管理するもので、RS制御部25は、当該状態に応じたDL及びULについての処理を実行するようになっている。なお、その詳細については後述する。
【0047】
(BS1及びRS2の基本動作)
上述のごとく構成された本例におけるBS1及びRS2の基本的な動作(DL処理及びUL処理)について説明すると、以下のとおりである。
(DL処理)
(1)OLE_LINK3DLに関して、RS2は、BSOLE_LINK31又は上位のRS2から、自局2と下位のRS2との間、あるいは自局2とMS3との間のスケジューリング情報(第1の割当情報)と、新規HARQデータとを受信すると、その時点で下位のRS2あるいはMS3に対する過去(前回)のHARQデータの送信が完了していた場合は、受信した新規HARQデータを次ホップ先ノードである下位のRS2又はMS3へ送信(中継)するためのDL/UL MAP(第2の割当情報)を生成して次ホップ先ノードへ送信するとともに、当該新規HARQデータを次ホップ先ノードへ送信する。
【0048】
(2)一方、過去のHARQデータの送信が失敗していた場合は、受信した新規HARQデータは自局2のHARQバッファ24にバッファし、当該過去のHARQデータの再送を行なう。その際、BS1又は上位のRS2から受信した新規HARQデータの送信のためのスケジューリング情報(第1の割当情報)を基に、過去のHARQデータの再送のためのDL/UL MAP(第2の割当情報)を生成して送信する。
【0049】
(3)また、RS2からのバッファしているHARQデータの送信は、BS1あるいは上位のRS2から送信されてくるスケジューリング情報(スケジューリング情報には、HARQデータの送信の情報が記述されている)からHARQデータの送信のためのDL/UL MAPを生成し、その送信とともに、バッファしているHARQデータを送信する。
(4)さらに、RS2は、BS1あるいは上位のRS2からHARQデータと、そのHARQデータの送信(中継)に関するスケジューリング情報とを受信した時に、HARQデータに誤りがある場合は、次ホップ先ノードである下位のRS2あるいはMS3に対して、前回送信したHARQデータを再送する。つまり、次ホップ先ノードから前回のHARQデータに対する応答がACK(受信成功)であった場合でも、NACK(受信失敗)であった場合でも、前回のHARQデータを送信するようにDL/UL MAPを生成して送信する。あるいは、この状況において、配下のRS2あるいはMS3から1つ前のHARQデータに対する応答がACK(受信成功)であった場合は、HARQデータは送信しないことも可能である。
【0050】
(5)ところで、RS2は、BS1あるいは上位のRS2からスケジューリング情報を受信して、当該スケジューリング情報に含まれるHARQデータの送信(中継)に関する情報を基にDL/UL MAPを生成する際に、新規送信か再送かを表すフラグ情報(図6により後述するAI_SNの値)を操作(更新)する。つまり、RS2は、新規あるいは再送のHARQデータの送信に合わせて、DL/UL MAPにおけるHARQデータ送信のフラグ情報を更新する。
【0051】
(6)一方、DLに関して、BS1は、下位のRS2あるいはMS3からのHARQデータの受信結果(ACK又はNAK)の受信を待たずに、新規HARQデータの送信と、そのHARQデータを中継するためのスケジューリング情報の送信とを実行する。
(7)また、BS1は、下位のRS2あるいはMS3からの受信結果を受信し、いずれかの区間でHARQデータの伝送に失敗していた場合は、その区間でHARQデータを再送するためのスケジューリング情報を生成して、RS2に送信する。また、この際、新規HARQデータの送信は行なってもよいし停止してもよい。
【0052】
(UL処理)
(8)一方、ULに関して、RS2は、BS1又は上位のRS2から受信する、下位のRS2あるいはMS3からのHARQデータの送信(中継)のためのスケジューリング情報を基に下位のRS2あるいはMS3へのDL/UL MAPを生成する。このとき、過去(1つ前)に受信したHARQデータの受信状況によって、下位のRS2あるいはMS3に、再送を行なわせるか新規HARQデータの送信を行なわせるかを決定する。即ち、1つ前のHARQデータの受信が成功していれば、新規HARQデータを送信させ、1つ前のHARQデータの受信に失敗していれば、そのHARQデータの再送を行なわせる。
【0053】
(9)ところで、RS2は、下位のRS2あるいはMS3からHARQデータを受信したときに、受信した結果を上位のRS2あるいはBS1に送信する。これは、BS1あるいは上位のRS2は、下位のRS2の受信結果を認識せずに次の新規HARQデータの送信のための割り当てを行なうため、RS2にて受信に失敗していた場合に、上位のRS2あるいはBS1に対して、HARQデータの受信を行なわないように通知するためである。
【0054】
(10)さらに、RS2は、下位のRS2あるいはMS3からHARQデータを正常に受信したが、上位のRS2あるいはBS1からは、その1つ前のHARQデータの再送を要求された場合は、受信したHARQデータをHARQバッファ24にバッファし、上位のRS2あるいはBS1に対して、1つ前のHARQデータの再送を行なう。
(11)また、RS2にて、配下のRS2あるいはMS3からのHARQデータをバッファしている状態において、上位のRS2あるいはBS1から、1つ前のHARQデータの再送を要求された場合は、配下のRS2あるいはMS3に対しては、バッファしているHARQデータの再送を要求する。この処理を行なうことにより、配下のRS2あるいはMS3から新規HARQデータの送信あるいは中継を抑制して、RS2のHARQバッファ24のバッファ溢れを防止することが可能である。
【0055】
(12)ところで、RS2において、配下のRS2あるいはMS3に対する、新規HARQデータの送信あるいは1つ前のHARQデータの再送は、配下のRS2あるいはMS3に送信するDL/UL MAPにおけるHARQデータの新規送信もしくは再送を示すフラグ情報(図10により後述するAI_SNの値)を更新することによって行なう。
(13)ここで、このDL/UL MAPの生成は、BS1から直接または上位のRS2を介して受信するスケジューリング情報を基に行なう。
【0056】
(14)また、ULに関して、BS1は、下位のRS2とMS3に対して、連続したHARQデータの送信を行なわせるために、HARQデータの送信のためのスケジューリング情報を連続して送信する。これにより、RS2が配下のRS2あるいはMS3からのHARQデータの受信結果や、上位ノードからのHARQデータの中継要求を基に、新規HARQデータの送信あるいはHARQデータの再送を制御することで、連続したHARQデータの送信を行なわせることが可能になる。
【0057】
以上のとおり、DLに関して、BS1は、下位のRS2あるいはMS3からのHARQデータの受信結果の応答を待たずに、新規HARQデータを送信することで、マルチホップに関係なく、MS3に対して、連続したHARQデータの送信を行なうことが可能になる。
また、DLの経路において、HARQデータに誤りが発生した場合でも、RS2が、BS1から受信する新規HARQデータの中継のためのスケジューリング情報を基に1つ前のHARQデータの再送を行なうようにDL/UL MAPを生成(更新)し、前のHARQデータを再送することで、配下のRS2あるいはMS3から要求されているHARQデータの再送に対して、即時に対応することが可能となる。
【0058】
一方、ULに関しては、BS1は、随時、配下のRS2およびMS3に対してHARQデータを送信させるためのスケジューリング情報を送信し、RS2は、配下のRS2あるいはMS3からのHARQデータの受信結果からHARQデータの再送あるいは新規HARQデータの送信を要求することで、連続したHARQデータの中継が可能となる。
(DL処理の詳細例)
次に、BS1とMS3との間の通信を1台のRS2が中継する場合(2ホップシステム)のDL処理の詳細について、図4〜図7を用いて説明する。
【0059】
(BS1での処理)
図4は、RS2に対してHARQデータの送信機会が与えられたときのBS1(BS制御部15)における処理動作例を示している。
BS1では、RS2及びMS3におけるHARQデータの受信状況(ACK及びNAK)を把握、管理し、その状況を基に次の新規HARQデータの送信や当該HARQデータの送信(中継)に関する情報を含むスケジューリング情報の送信を決定する。
【0060】
即ち、本例におけるBS1(BS制御部15)は、RS2から受信した1つ前のHARQデータに対する受信結果(以下、応答ともいう)と、MS3からRS2を介して受信した2つ前のHARQデータに対する受信結果とに基づいて、以下の状態S0,S1,S2,S3をBS状態管理部153(状態管理テーブル)にて管理し、その状態に応じた処理を行なう。
【0061】
(状態S0)RS2からの1つ前のHARQデータに対する応答がACK(受信成功)であり、MS3からの2つ前のHARQデータに対する応答がACK(受信成功)の場合は、BS1は新しいHARQデータの送信とともに、そのHARQデータの中継に関する情報を含むスケジューリング情報をRS2に送信する。
(状態S1)RS2からの1つ前のHARQデータに対する応答がACK(受信成功)であり、MS3からの2つ前のHARQデータに対する応答がNACK(再送要求)の場合は、RS2にて1つ前のHARQデータがHARQバッファ24にバッファされている状況であるため、BS1は、そのバッファされているHARQデータをRS2からMS3に送信させるためのスケジューリング情報をRS2に送信する。このとき、新規HARQデータの送信は行なわない。
【0062】
(状態S2)一方、RS2からの1つ前のHARQデータに対する応答がNACK(再送要求)であり、MS3からの2つ前のHARQデータに対する応答がACK(受信成功)の場合、BS1は、RS2に対して1つ前のHARQデータの再送を行なう。このとき、そのHARQデータの中継に関するスケジューリング情報も送信する。
(状態S3)RS2からの1つ前のHARQデータに対する応答がNACK(再送要求)であり、MS3からの2つ前のHARQデータに対する応答がNACK(再送要求)の場合も状態S2と同じ処理を行なう。
【0063】
(RS2での処理)
一方、図5は、BS1からスケジューリング情報を受信、あるいはスケジューリング情報及びHARQデータを受信したときのRS2(RS制御部25)におけるMS3に対する処理動作例を示している。
即ち、RS2では、MS3からの1つ前のHARQデータに対する応答と、自局2のHARQバッファ24内のHARQデータの有無及びBS1からのHARQデータの受信状況とに基づいて、5つの状態S0,S1,S2,S3,S4をRS状態管理部253(状態管理テーブル)にて管理し、これらの状態に応じた処理(MS3に送信するHARQデータの決定やDL/UL MAPに設定するAI_SNの更新)を行なう。
【0064】
また、図6に、RS2からMS3に送信するDL/UL MAPの一例を示す。
DL/UL MAPには、無線フレームにおけるHARQデータの送信情報であるHARQ DL MAP IE(Information Element)が含まれる。このHARQ DL MAP IEの中には、MS3の識別情報(RCID_IE)やHARQデータのチャネル番号を示す情報(ACID),新規送信か再送かを示す情報(AI_SN)などを含むDL HARQ xxx sub-burst IEが含まれている。なお、xxxには、例えば、Chase,IR CTCなどのHARQのパターンが記述される。
【0065】
RS2は、BS1からスケジューリング情報を受信し、DL/UL MAPを生成する場合、MS3のHARQデータの受信状況に応じて、HARQデータに関するIEの情報を更新する。具体的には、HARQデータの新規送信か再送かを示すフラグ情報(AI_SN)を更新する。このAI_SNのとり得る値は、“0”か“1”であり、前のHARQデータの送信時と同じ値である場合は再送を示し、異なる値の場合は新規HARQデータの送信を示す。
【0066】
例えば、図5における状態S0の場合はMS3に対してHARQデータの送信を行なっていない状況であり、RS2は、BS1から新規HARQデータを正常受信した場合に、そのHARQデータをMS3に中継するが、このとき、RS2からMS3に送信するDL/UL MAPにおけるAI_SNは、BS1から受信したスケジューリング情報に設定されている値と一致させる(AI_SN反転なし)。
【0067】
一方、状態S0において、RS2がBS1からのHARQデータの受信に失敗した場合、RS2は、HARQデータの中継は行なわない。AI_SNは、スケジューリング情報とは異なる値にする(AI_SN反転あり)。このとき、MS3は、正常にHARQデータを受信できないため、RS2に対してNAK(再送要求)を通知することになる。そして、RS2は、その後にBS1から正常に受信したHARQデータをMS3に中継する際に、RS2からMS3に送信するDL/UL MAPにおけるAI_SNをスケジューリング情報と一致したAI_SN値に設定する。この場合、MS3は、それより前のHARQデータを破棄し、新規HARQデータの受信を行なう。
【0068】
また、状態S1は、先に送信したHARQデータに対するMS3からの応答がACK(受信成功)で、RS2のHARQバッファ24には、HARQデータが格納されていない状態であり、この状態において、BS1からHARQデータを正常受信した場合には、RS2は、MS3に受信HARQデータを中継する。このとき、RS2からMS3に送信するDL/UL MAPのAI_SNは、BS1から受信したスケジューリング情報に設定されている値と異なる値に設定する(AI_SN反転あり)。
【0069】
一方、BS1からのHARQデータの受信に失敗した場合には、RS2は、MS3に送信するDL/UL MAPのAI_SNを、前に送信したDL/UL MAPのAI_SNと同じ値に設定し(AI_SN反転なし)、前のHARQデータの送信(再送)を行なう(あるいは、HARQデータの送信は行なわない)。MS3は、このDL/UL MAPを参照することにより、前のHARQデータの再送と判断するが、そのHARQデータは既に受信済みであるため、RS2に対して、ACK(受信成功)を送信する。
【0070】
さらに、状態S2は、先に送信したHARQデータに対するMS3からの応答がNAK(再送要求)であり、RS2のHARQバッファ24には、HARQデータが格納されていない状態であり、この状態において、BS1からのHARQデータを正常に受信した場合、RS2は、そのHARQデータをHARQバッファ24に格納し、MS3に送信するDL/UL MAPのAI_SNを前に送信したDL/UL MAPのAI_SNと同じ値に設定する(AI_SNの反転なし)。そして、RS2は、MS3に前のHARQデータを再送する。一方、BS1からのHARQデータの受信に失敗した場合も、DL/UL MAPのAI_SNの値はそのままに、MS3に前のHARQデータを再送する。ただし、BS1からのHARQデータはHARQバッファ24に格納しない。
【0071】
また、状態S3及び状態S4は、RS2のHARQバッファ24にBS1からのHARQデータが格納されている状態であり、このときRS2は、BS1からHARQデータの再送を記述したスケジューリング情報のみを受信する。
そして、状態S3は、先に送信したHARQデータに対するMS3からの応答がACK(受信成功)の場合であるので、HARQバッファ24にバッファされているHARQデータをMS3に送信する。このとき、DL/UL MAPのAI_SNは反転する。一方、状態S4は、先に送信したHARQデータに対するMS3からの応答がNACK(再送要求)の場合であるので、MS3に前のHARQデータを再送する。この場合のDL/UL MAPのAI_SNは前回送信時のAI_SNと同じ値に設定する(AI_SN反転なし)。
【0072】
(2ホップシステムにおけるDLの再送制御シーケンス)
次に、上述したBS1及びRS2の動作(DL処理)を前提として、BS1とMS3との間の通信を1台のRS2が中継する場合のDLの再送処理について、図7に示すシーケンス図を参照しながら説明する。この図7は、RS2からMS3へのHARQデータの伝送に誤りが生じて、RS2からMS3へ再送を行なう場合の処理について示している。
【0073】
BS1は、RS2とMS3との間の無線リンクにおいてHARQデータ#1を送信(中継)するためのスケジューリング(SCH)情報を、DL/UL MAPで指定するDLバーストにてRS2に送信するとともに(ステップA1,A2)、HARQデータ#1を当該DL/UL MAPで指定するDLバーストにてRS2宛に送信する(ステップA3)。
ここで、前記スケジューリング情報には、送信データ(HARQデータ)の中継に関する情報、即ち、RS2とMS3との間の無線リンク(無線フレーム)においてBS1及びRS2が通信に用いるべき領域(バースト)の割当情報が少なくとも含まれる。
【0074】
また、前記DL/UL MAPには、BS1とRS2との間の無線リンク(無線フレーム)においてスケジューリング情報及びHARQデータをそれぞれどの領域(DLバースト)にて送信するかを示す情報が少なくとも含まれる。
したがって、RS2は、BS1から受信したDL/UL MAPが示すDLバーストの受信処理をすることにより、BS1からのスケジューリング情報及びHARQデータを受信することができ、また、受信したスケジューリング情報に基づいてMS3との間の通信(バースト割当、つまりはMS3へのDL/UL MAPの生成)を制御することができるようになる。
【0075】
さて、RS2は、BS1から受信した前記DL/UL MAPに基づいて、BS1からHARQデータを受信するとともに、RS2とMS3との間におけるスケジューリング情報を取得すると、当該スケジューリング情報を基にRS2−MS3間についてのDL/UL MAPを生成してMS3へ送信するとともに、BS1から受信したHARQデータ#1を当該DL/UL MAPが示すDLバーストにてMS3に送信する(ステップA4,A5)。また、RS2は、BS1からのHARQデータ#1を正常に受信(デコード)できたこと(受信成功)を示す情報(ACK)を、HARQデータ#1の送信元であるBS1に送信する(ステップA7)。
【0076】
MS3は、RS2から受信したDL/UL MAPが示すDLバーストを受信処理することにより、HARQデータ#1を受信するが、当該HARQデータ#1に訂正可能な範囲を超える誤りが発生して正常に受信(デコード)できなかった場合(ステップA6)、MS3は、その旨(受信失敗)を示す情報(NAK)をBS1宛に送信する(ステップA8)。
一方、BS1は、HARQデータ#1をRS2へ送信した後、RS2からの前記ACK(受信完了)を受信すると、次のHARQデータ(新規データ)#2の送信を行なう。即ち、BS1は、先のHARQデータ#1の送信と同様に、そのHARQデータ#2を中継するためのスケジューリング情報と、当該スケジューリング情報のバースト割当情報(DL/UL MAP)とを生成し、これらとHARQデータ#2とをRS2へ送信する(ステップA9,A10,A11)。ここで、BS1は、MS3からのHARQデータ#1に対する応答(ACK又はNAK)の受信を待たずに送信を行なう。
【0077】
RS2は、BS1から受信したDL/UL MAPに基づいて新規HARQデータ#2についてのスケジューリング情報と当該HARQデータ#2とを受信するとともに、MS3から送信された前記HARQデータ#1に対するNAK(再送要求)を受信すると、BS1から受信したHARQデータ#2をMS3に中継する代わりに、1つ前のHARQデータ#1をMS3に送信(再送)し、BS1から新たに受信したHARQデータ#2はHARQバッファ24にバッファする。
【0078】
このとき、RS2は、BS1から受信したスケジューリング情報を基にMS3宛のDL/UL MAPを生成するが、その際、HARQデータ#2の新規送信のための情報ではなく、HARQデータ#1の再送のための情報に更新(前記フラグ情報であるAI_SNの更新)した上で、当該DL/UL MAPと1つ前のHARQデータ#1とをMS3に送信する(ステップA13,A14)。これにより、HARQデータ#1の再送を迅速に行なうことが可能になる。
【0079】
MS3は、RS2から受信したDL/UL MAPが示すDLバーストを受信処理することにより、HARQデータ#1を再受信し、正常に受信(デコード)できれば、その旨(ACK)をRS2に送信する(ステップA16)。
この間、RS2では、前記ステップA8においてMS3から受信したHARQデータ#1に対するNAKをBS1に送信(中継)し(ステップA12)、また、BS1から受信した新規HARQデータ#2の受信結果(本例ではACK)をBS1に送信(応答)している(ステップA15)。
【0080】
一方、BS1は、RS2からHARQデータ#1に対するMS3での受信結果(NAK)を受信すると、新規HARQデータ#3の送信は行なわずに、1つ前のHARQデータ#2の中継のためのスケジューリング情報と、当該スケジューリング情報のRS2との間の無線リンクにおけるバースト割当情報(DL/UL MAP)とを生成してRS2にそれぞれ送信する(ステップA17,A18)。
【0081】
RS2は、これらのDL/UL MAPとスケジューリング情報とを受信するが、この時点で、前記ステップA16においてMS3が送信したHARQデータ#1に対する受信結果(ACK)を既に受信しているため、当該ACKをBS1に送信(中継)するとともに(ステップA19)、BS1から受信したスケジューリング情報を基にHARQデータ#2のためのDL/UL MAPを生成し、当該DL/UL MAPが示すDLバーストにてHARQバッファ24にバッファしていたHARQデータ#2をMS3に送信する(ステップA20、A21)。
【0082】
なお、前記ステップA16においてMS3が送信したHARQデータ#1に対する受信結果が再度NAKであった場合、RS2は、前記ステップS13及びS14と同様にして、HARQデータ#2のためのDL/UL MAPをHARQデータ#1のためのDL/UL MAPに更新した上で、当該DL/UL MAPとHARQデータ#1とをMS3に送信することになる。
(UL処理の詳細例)
次に、BS1とMS3との間の通信を1台のRS2が中継する場合(2ホップシステム)のUL処理の詳細について、図8〜図12を用いて説明する。
【0083】
(BS1での処理)
図8は、BS1(BS制御部15)のRS2に対する処理動作例を示している。
即ち、BS1は、逐次、RS2に対して、MS3にHARQデータを送信させるためのスケジューリング情報を送信する。これは、RS2での受信状況やBS1での受信状況には関係なく、RS2に対してスケジューリング情報を送信する。
【0084】
また、RS2に対しては、1つ前のHARQデータを正常受信した場合は、RS2から新規HARQデータの中継を要求するが(状態S0)、1つ前のHARQデータがRS2にて正常受信できていない場合やBS1で受信に失敗した場合は、RS2に対して当該HARQデータの再送を要求する(状態S1、S2)。
(RS2での処理)
図9は、RS2(RS制御部25)におけるMS3に対する処理動作例を示している。
【0085】
即ち、RS2は、MS3からのHARQデータの受信状況及びBS1へ中継したHARQデータに対するBS1からの再送要求の受信状況に応じて、MS3に対する処理を決定する(RS状態管理部253で管理している2つの状態S0及びS1に応じた処理を実行する)。
また、図10に、RS2からMS3に送信するDL/UL MAPの一例を示す。
【0086】
当該DL/UL MAPには、無線フレームにおけるULのHARQデータの送信要求情報であるHARQ UL MAP IEが含まれる。このHARQ UL MAP IEの中には、MS3の識別情報(RCID_ID)やHARQデータのチャネル番号を示す情報(ACID),新規送信か再送かを示す情報(AI_SN)などを含むDL HARQ xxx sub-burstが含まれている。なお、xxxには、例えば、Chase, IR CTCなどのHARQの方法が記述される。
【0087】
RS2は、BS1からスケジューリング情報を受信してDL/UL MAPを生成する場合、MS3からのHARQデータの受信状況に応じて、HARQデータに関するIEの情報を更新する。具体的には、HARQデータの新規送信か再送かを示すAI_SNの値を更新する。AI_SNのとり得る値は、“0”か“1”であり、HARQデータの受信に成功し、新規のHARQデータを送信させる場合は、前とは異なる値にし、HARQデータの受信に失敗して、再送を行なわせる場合は、前と同じ値に設定する。
【0088】
したがって、RS2は、MS3からHARQデータを正常受信している状態S0において、BS1から新規HARQデータの中継を要求された場合は、MS3に対して、新規HARQデータの送信を要求する(AI_SN反転あり)。一方、BS1から1つ前のHARQデータの再送を要求された場合は、MS3に対しては、既に正常受信しているが、1つ前のHARQデータの再送を要求する。これは、RS2のHARQバッファ24でのHARQデータのバッファ溢れを制限するためである。
【0089】
これに対し、RS2が、MS3からのHARQデータの受信に失敗している状態S1では、RS2は、MS3に対しては常にHARQデータの再送を要求する(AI_SN反転なし)。なお、RS2からBS1への処理については、BS1からの要求どおりに行なう。つまり、BS1から再送を要求された場合は、HARQデータの再送を行ない、新規送信を要求された場合は、新規HARQデータを中継する。ここで、BS1に対して送信するHARQデータがない場合、つまりはRS2において、MS3からのHARQデータの受信に失敗している場合は、HARQデータの送信を行なわずに、MS3からのHARQデータ受信失敗をBS1に通知する。
【0090】
(2ホップシステムにおけるULの再送制御シーケンス)
次に、上述したBS1及びRS2の動作(UL処理)を前提として、BS1とMS3との間の通信を1台のRS2が中継する場合のULの再送処理について、図11及び図12に示すシーケンス図を参照しながら説明する。なお、図11は、RS2とMS3との間のHARQデータの伝送に誤りが生じて、MS3から再送を行なう場合の処理について示しており、図12は、RS2とBS1との間でHARQデータに誤りが生じ、RS2から再送を行なう場合の処理について示している。
【0091】
(RS2とMS3との間の伝送に誤りが発生した場合)
図11に示すように、BS1は、DL/UL MAPと、MS3からの送信データ(HARQデータ)#1をRS2にて中継するための情報として、RS2とMS3との間の無線リンクについてのスケジューリング(SCH)情報とをRS2に送信する(ステップB1,B2)。
【0092】
ここで、当該スケジューリング情報には、MS3からの送信データ(HARQデータ)の中継に関する情報、即ち、RS2とMS3との間の無線リンク(無線フレーム)においてRS2及びMS3が通信に用いるべきバーストの割当情報、より詳細には、MS3がHARQデータをRS2へ送信するのに用いるべきULバーストの割当情報が少なくとも含まれる。また、前記DL/UL MAPには、BS1とRS2との間の無線リンクにおいて当該スケジューリング情報をどの領域(DLバースト)にて送信するかを示す情報が少なくとも含まれている。
【0093】
したがって、RS2は、当該DL/UL MAPが示すDLバーストを受信処理することにより、前記スケジューリング情報を受信することができ、また、受信したスケジューリング情報に基づいてMS3との通信(ULバースト割当)を制御することができるようになる。
即ち、RS2は、BS1から受信したスケジューリング情報を基に、MS3との間の無線リンクにおいてHARQデータを送信させるためのDL/UL MAP(MS3はHARQデータ#1をどのULバーストを用いて送信すべきかを示す情報)を生成してMS3へ送信する(ステップB3)。
【0094】
MS3は、RS2から当該DL/UL MAPを受信すると、そのDL/UL MAPで割り当てられたULバーストにてHARQデータ#1をRS2に送信する(ステップB5)。
その一方で、BS1は、この間、DL/UL MAPによりRS2がHARQデータ#1をBS1へ中継するための領域(ULバースト)をRS2に割り当ててHARQデータ#1の中継(送信)を要求する(ステップB4)。
【0095】
RS2は、MS3からHARQデータ#1を受信すると、誤り訂正復号を行なう。その結果、正しく復号できれば、RS2は、BS1に対してHARQデータ#1の受信成功(ACK)を通知するが、HARQデータ#1に訂正可能な範囲を超える誤りが生じていて正常受信できなければ(ステップB6)、BS1に対して、MS3からのHARQデータ#1の受信に失敗した旨の情報(NAK)を通知する(ステップB9)。
【0096】
一方、BS1は、この間、RS2におけるHARQデータ#1の受信結果(ACK又はNAK)の受信を待たずに、スケジューリング情報の次の送信機会において、HARQデータ#2の送信のためのスケジューリング情報と、当該スケジューリング情報のバースト割当情報(DL/UL MAP)とを生成してRS2に送信する(ステップB7,B8)。
RS2は、当該DL/UL MAPにより割り当てられたDLバースト(スケジューリング情報)を受信すると、本来は、そのスケジューリング情報を基にHARQデータ#2の送信のためのDL/UL MAPを生成して送信すべきところ、HARQデータ#1の受信に失敗しているため、新規HARQデータ#2の送信を要求する代わりに、過去(1つ前)のHARQデータ#1の再送を要求する。
【0097】
即ち、BS1からの新規HARQデータ#2の送信のためのスケジューリング情報を基に過去(1つ前)のHARQデータ#1の再送を要求するDL/UL MAPを生成し、当該DL/UL MAPをMS3に送信する(ステップB10)。これにより、MS3は、当該DL/UL MAPにより指定されたULバーストにて、HARQデータ#1をRS2に再送する(ステップB12)。
【0098】
なお、その間、BS1は、RS2がMS3からのHARQデータ#1の受信に失敗したことを前記NAKの受信(ステップB9)により認識しているため、新規HARQデータ#2ではなく1つ前のHARQデータ#1の中継をDL/UL MAPによりRS2に要求し(ステップB11)、新規HARQデータ#2の送信のためのDL/UL MAPにより割り当てた受信領域(ULバースト)についての受信処理は行なわない。
【0099】
そして、RS2は、MS3から再送されたHARQデータ#1を受信すると、当該HARQデータの誤り訂正復号を行なう。その結果、正しく復号できれば、RS2は、BS1に対して、HARQデータ#1を送信(中継)するとともに、受信成功(ACK)を通知する(ステップB15,B16)。なお、MS3から受信したHARQデータ#1を再度正常受信できなかった場合は、前記ステップB9と同様に、RS2は、BS1に対してNAKを通知することになる。
【0100】
その一方で、この間、BS1は、RS2からのHARQデータ、その受信結果(ACK又はNAK)の受信を待たずに、スケジューリング情報の次の送信機会(周期)において、スケジューリング情報を生成してDL/UL MAPで指定するDLバーストにてRS2に送信するが、その際、RS2がHARQデータ#1の受信に失敗していることを認識しているので、新規HARQデータ#3の送信ではなく1つ前のHARQデータ#2の再送のためのスケジューリング情報をDL/UL MAPで指定するDLバーストにて送信する(ステップB
13,B14)。
【0101】
RS2は、当該DL/UL MAPにより指定されたDLバーストにて受信したスケジューリング情報を基に、1つ前のHARQデータ#2の送信を要求するDL/UL MAPを生成し、これをMS3に送信する(ステップB17)。これにより、MS3は、当該DL/UL MAPにより指定されたULバーストにて、HARQデータ#2をRS2に再送することになる。
このように、BS1が、RS2からのHARQデータの中継(受信結果の通知)を待たずに、次のHARQデータ送信のためのスケジューリング情報を周期的な送信機会(図11では3フレーム毎の送信機会)において連続的にRS2に送信することにより(前記ステップB2,B8,B14参照)、MS3は、当該周期に応じて連続的にRS2からDL/UL MAPを受信することができ、HARQデータを連続して送信することが可能になる。
【0102】
また、MS3とRS2との間でHARQデータの伝送に誤りが生じた場合は、RS2にて、BS1から受信される、新規HARQデータの送信(中継)のためのスケジューリング情報を基に、前のHARQデータの再送のためのDL/UL MAPを生成するので(前記ステップB10参照)、MS3は、前記伝送誤りの有無に関わらずDL/UL MAPを前記周期でRS2から受信することができ、その受信周期で即時にHARQデータの再送を行なうことが可能となる。
【0103】
(BS1とRS2との間の伝送に誤りが発生した場合)
図12に示すように、RS2は、MS3からHARQデータ#1を正常に受信し、BS1にHARQデータ#1の中継を行なう。一方、BS1は、MS3からの新規HARQデータ#2の送信のためのスケジューリング情報をDL/UL MAPで指定する領域(DLバースト)にてRS2に送信し(ステップB21,B22)、その後にRS2からHARQデータ#1を受信するとともに(ステップB23)、MS3が送信したHARQデータ#1のRS2での受信結果(ACK)を受信する(ステップB25)。
【0104】
BS1は、RS2から受信したHARQデータ#1を誤り訂正復号するが、訂正可能な範囲を超える誤りが生じていて正常にデコードできなければ(ステップB24)、HARQデータ#1の再送を要求するDL/UL MAPを生成してRS2に送信する(ステップB27)。
一方、BS1から新規HARQデータ#2を送信するためのスケジューリング情報を受信したRS2は、当該スケジューリング情報を基にMS3がHARQデータ#2を送信するためのバースト割当情報(DL/UL MAP)を生成し、MS3に送信する(ステップB26)。MS3は、当該DL/UL MAPを受信すると、HARQデータ#2をそのDL/UL MAPで指定されたULバーストにてHARQデータ#2をRS2に送信する(ステップB28)。
【0105】
RS2は、当該HARQデータ#2を受信するが、BS1から1つ前のHARQデータ#1の再送要求を受信しているため、BS1に対して、HARQデータ#2を送信する代わりに、1つ前のHARQデータ#1を再送する(ステップB31)。また、RS2は、MS3が送信したHARQデータ#1のRS2での受信結果(ACK)もBS1に送信する(ステップB32)。
【0106】
その一方で、BS1は、RS2からのHARQデータの受信、HARQデータのRS2での受信結果の受信を待たずに、スケジューリング情報の次の送信機会(周期)で、DL/UL MAP及びスケジューリング情報をRS2に送信する。ただし、このときBS1は、HARQデータ#1を正常に受信できていないため、新規HARQデータ#3ではなく1つ前のHARQデータ#2の送信のためのスケジューリング情報を生成してDL/UL MAPで指定する領域(DLバースト)にてRS2に送信する(ステップB29,B30)。
【0107】
そして、HARQデータ#2のための前記スケジューリング情報を受信(ステップS30)したRS2は、当該スケジューリング情報を基にHARQデータ#2の送信領域(ULバースト)を割り当てるバースト割当情報(DL/UL MAP)を生成してMS3に送信し(ステップB33)、MS3からHARQデータ#2を当該ULバーストにて受信する(ステップB35)。
【0108】
このとき、RS2は、前記ステップS28においてHARQデータ#2を既に正常受信しているが、MS3に新規HARQデータ#3を送信させると、HARQバッファ24のバッファ溢れが発生する可能性があるため、1つ前のHARQデータ#2を再送させることで、これを防いでいる。
そして、BS1は、HAQRデータ#2の送信(中継)をDL/UL MAPによりRS2に要求し(ステップB34)、RS2は、BS1に対して、MS3から受信したHARQデータ#2を送信するとともに(ステップB38)、当該HARQデータ#2の受信結果(ACK)を送信する(ステップB39)。
【0109】
その一方で、BS1は、RS2からのHARQデータ#2、その受信結果の受信を待たずに、次の送信機会(周期)において、MS3からの新規HARQデータ#3の送信のためのスケジューリング情報をDL/UL MAPで指定する領域(DLバースト)にてRS2に送信し(ステップB36,B37)、RS2は、当該スケジューリング情報を基にHARQデータ#3の送信領域(ULバースト)の割当情報(DL/UL MAP)を生成してMS3に送信する(ステップB40)。これにより、MS3は、当該DL/UL MAPで指定されたULバーストにて新規HARQデータ#3をRS2に送信する。
【0110】
このように、BS1とRS2との間でULのHARQデータの伝送に誤りが生じた場合においても、BS1は、RS2へ送信するDL/UL MAPをHARQデータの受信結果に応じて更新(変更)してRS2へ送信するので、MS3は、DL/UL MAPを前記周期に応じてRS2から連続的に受信することができ、その受信周期で即時にHARQデータの再送を行なうことが可能となる。
【0111】
〔B〕第2実施形態の説明
次に、以下の第2実施形態では、BS1からMS3(図1の場合はMS3−3)へ送信されるHARQデータを複数台(例えば2台)のRS2−1(#1)及び2−2(#2)が中継する場合の処理(DL処理及びUL処理)について説明する。
(DL処理の詳細例)
まず、BS1とMS3との間の通信を2台のRS2(#1,#2)が中継する場合(3ホップシステム)のDL処理の詳細について、図13〜図15を用いて説明する。
【0112】
(BS1での処理)
図13は、RS2に対してHARQデータの送信機会が与えられたときのBS1(BS制御部15)における処理動作例を示している。
この図13に示すように、BS1(BS制御部15)は、8つの状態S0〜S7をBS状態管理部153(状態管理テーブル)にて管理し、当該状態S0〜S7に応じたDL処理を実行する。即ち、BS1は、RS2及びMS3におけるHARQデータの受信状況(つまりは、RS2及びMS3から受信したHARQデータに対する応答の状況)を把握し、その状況から次の処理(新規HARQデータの送信や、HARQデータの送信および中継のためのスケジューリング情報の送信)を決定する。
【0113】
ここで、BS1は、BS1との通信に複数のRS2を介するRS2およびMS3からのHARQデータに対する応答受信に遅延が生じるため、次の処理の際に参照する各RS2及びMS3の応答結果の対象は異なる。
即ち、図13に示すように、HARQデータ#n+1を送信する契機を与えられたときに参照するHARQデータの応答は、RS#1に対しては1つ前のHARQデータ#nに対する応答、RS#2に対しては2つ前のHARQデータ#n−1、MS#3に対しては3つ前のHARQデータ#n−2に対する応答を確認する。
【0114】
ここで、BS1は、新規HARQデータ#n+1の送信機会を与えられたときに、各RS#1,#2,MS#3のHARQデータ伝送に対する応答を参照し、全てがACK(受信完了)の場合に限り、当該HARQデータ#n+1の伝送を行なう。一方、RS#1,#2間及びRS#2とMS#3との間においてHARQデータの伝送に失敗している場合は、失敗している区間に対して再送を行なうようにスケジューリング情報を生成し、各RS#1,#2に送信する。BS1とRS#1との間でHARQデータの伝送に失敗している場合においては、BS1からHARQデータの再送を行なう。
【0115】
(RS2での処理)
一方、図14は、BS1からスケジューリング情報を受信、あるいはスケジューリング情報及びHARQデータを受信したときのRS2(RS制御部25)のMS3に対する処理動作例を示している。
この図14に示すように、RS2は、基本的に第1の形態と同様の処理を行なう。ここで、HARQデータの送信先がRS2(#2)の場合は、次のRS#2からの応答の結果を確認して処理を行なう。
(3ホップシステムにおけるDLの再送制御シーケンス)
上述したBS1及びRS2の動作(DL処理)を前提として、BS1とMS3との間の通信を2台のRS#1,#2が中継する場合のDLの再送処理のシーケンスを図15に示す。この図15は、RS#2からMS#3へのHARQデータの伝送に誤りが生じて、RS#2からMS#3へ再送を行なう場合の処理シーケンス(ステップA31〜A63)について示している。
【0116】
ここで、本例の要旨である処理に着目して説明すると、BS1は、第1実施形態のDL処理と同様に、MS#3からのHARQデータ伝送に対する応答を受信する前に、新規HARQデータの伝送を開始する(ステップA45〜A47,A59〜A61)。
MS#3は、RS#2からのHARQデータ#1の受信に失敗し(ステップA41)、RS#2に対してNAK(再送要求)を送信する(ステップA42)。
【0117】
この間、BS1は、RS#1に対して、新規HARQデータ#2の送信を行なっており(ステップA45〜A47)、RS#1は、RS#2に対して当該新規データ#2の中継を行なっている(ステップA50〜A52)。
RS#2は、MS#3からNAK(再送要求)を受信したときに(ステップA42)、MS#3に対して、RS#1から受信した新規HARQデータ♯2をMS#3に送信する代わりに、1つ前のHARQデータ#1の再送を行なう(ステップA55,A56)。そして、RS#2は、RS#1から受信した新規HARQデータ#2をHARQバッファ24にバッファする。
【0118】
その間に、BS1は、HARQデータ♯1に対するMS#3のNAK(再送要求)を受信する(ステップA43,A44)。ここで、BS1は、新規のHARQデータ♯4の送信機会を与えられたときに、RS#1のHARQデータ#3の受信状況、RS#2のHARQデータ#2の受信状況、MS3のHARQデータ#1の受信状況を確認し、HARQデータ#4を送信するか否かを判断する。
【0119】
本例の場合、BS1は、RS#2において、HARQバッファ24にバッファされているHARQデータが存在することを認識し、フレーム#n+9におけるHARQデータ#4の送信機会において、HARQデータ#4の伝送を停止し、RS#2とMS#3との間におけるHARQデータ#3の伝送のためのスケジューリング情報を送信する(ステップA59〜A61)。そのスケジューリング情報を受信(ステップA62,A63)したRS#2は、HARQバッファ24にバッファしていたHARQデータ#2を送信する。
【0120】
(UL処理の詳細例)
次に、BS1とMS3との間の通信を2台のRS2(#1,#2)が中継する場合(3ホップシステム)のUL処理の詳細について、図16〜図18を用いて説明する。
(BS1での処理)
図16は、BS1(BS制御部15)のRS2に対する処理動作例を示している。
【0121】
この図16に示すように、BS1(BS制御部15)は、第1実施形態におけるBS1のUL処理と同様に、3つの状態S0,S1,S2をBS状態管理部153(状態管理テーブル)にて管理し、当該状態に応じた処理を行なう。即ち、この場合のBS1は、RS#1,#2間及びRS#2とMS#3との間の誤り発生の状況に関係なく、周期的にHARQデータ送信のための割り当てを行なう。
【0122】
(RS2での処理)
一方、RS2(RS制御部25)は、例えば図17に示すように、MS3からのHARQデータの受信状況(OK又はNG)と、BS1からの1つ前のHARQデータの再送要求の受信状況とに応じた2つの状態S0,S1をRS状態管理部253(状態管理テーブル)にて管理し、その状態S0,S1に応じた処理を実行する。
【0123】
即ち、RS2は、周期的に割り当てられる次のRS2あるいはMS3に対するHARQデータの送信の割り当てに対して、1つ前のHARQデータ受信状況を加味して、DL/UL MAPを生成する。例えば、1つ前のHARQデータ受信の際に誤りが発生した場合は、生成するDL/UL MAPのAI_SNを1つ前のDL/UL MAPのAI_SNと同じ値にして、下位ノードに再送を要求する。一方、1つ前のHARQデータの受信が成功している場合は、生成するDL/UL MAPのAI_SNを1つ前のDL/UL MAPのAI_SNを反転させた値にして、下位ノードに新規HARQデータの送信を要求する。
【0124】
(3ホップシステムにおけるULの再送制御シーケンス)
次に、上述したBS1及びRS2の動作(UL処理)を前提として、BS1とMS3との間の通信を2台のRS#1,#2が中継する場合のULの再送処理のシーケンスを図18に示す。この図18は、RS#2とMS#3との間のHARQデータの伝送に誤りが生じて、MS#3から再送を行なう場合の処理(ステップB41〜B67)について示している。
【0125】
ここで、本例の要旨である処理に着目して説明すると、RS#2は、上位のRS#1から受信したスケジューリング情報を基にMS3からのHARQデータの送信を要求するDL/UL MAPを生成してMS#3に送信し、これにより、MS#3からHARQデータを受信した場合(ステップB41〜B44)、そのHARQデータをデコードし、デコード結果(図18ではNAK)をBS1に通知する(ステップB45,B54,B55)。
【0126】
BS1は、MS3及びRS2へのリソース割当に余裕がある場合は、HARQデータの送信の割り当てをほぼ等間隔で行なう(ステップB46〜B49、B60,B61,B63,B64)。
RS2は、BS1あるいは上位のRS2から受信したスケジューリング情報を基に下位の無線リンクにおいてMS#3がHARQデータを送信するためのDL/UL MAPを生成、送信する(ステップB50、B52,B53,B62,B65,B66)。
【0127】
BS1は、スケジューリング情報の生成にあたっては、新規HARQデータの送信を想定する。RS2は、隣接RS2あるいはMS3からのHARQデータの送信に対して、1つ前のHARQデータの送信の際に誤りが発生している場合(ステップB45)は、HARQデータの再送を行なうために、上位側から周期的に受信するスケジューリング情報を基にDL/UL MAPを更新する(1つ前のHARQデータの送信を要求する)。
【0128】
(補足)
なお、上述した2ホップシステムと3ホップシステムのそれぞれにおけるBS1及びRS2での処理は、基本的に同様であるが、以下の点で異なる。
(DL)
BS1:ホップ数が増えるにつれてHARQデータに対する応答を参照する数が増える。
【0129】
RS1:ホップ数が増えるにつれてHARQデータをバッファする最大数が増える。
(UL)
RS2:ホップ数が増えるにつれてHARQデータをバッファする最大数が増える。
【産業上の利用可能性】
【0130】
以上詳述したように、本発明によれば、無線中継システムにおける再送処理の遅延を抑制することができるので、無線通信技術分野において極めて有用であると考えられる。
【符号の説明】
【0131】
1 無線基地局(BS:Base Station)
10 受信アンテナ
11 受信部
111 無線(RF)受信機(Rx)
112 信号処理部
12 送信部
121 信号処理部
122 RF送信機(Tx)
13 送信アンテナ
14 HARQバッファ
15 BS制御部
151 スケジューリング(SCH)情報生成部
152 DL/UL MAP生成部
153 BS状態管理部
2(2−1,2−2) 無線中継局(RS:Relay Station)
20 受信アンテナ
21 受信部
211 RF受信機(Rx)
212 信号処理部
22 送信部
221 信号処理部
222 RF送信機(Tx)
23 送信アンテナ
24 HARQバッファ
25 RS制御部
251 スケジューリング(SCH)情報生成部
252 DL/UL MAP生成部
253 RS状態管理部
254 受信結果(応答:ACK/NAK)生成部
3(3−1,3−2,3−3) 無線端末(MS:Mobile Station)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線基地局から1又は複数の無線中継局を介して無線端末へデータを中継する無線中継システムにおける前記無線基地局であって、
自局よりも下位の無線中継局から前記無線端末に至る経路の無線リンクにおいて新規データを送信するための無線リソースの第1の割当情報を生成する割当情報生成手段と、
過去の送信データに対する受信結果の前記下位の無線中継局又は前記無線端末からの受信を待たずに、前記第1の割当情報と前記新規データとを前記下位の無線中継局又は前記無線端末へ送信する送信手段と、
をそなえたことを特徴とする、無線中継システムにおける無線基地局。
【請求項2】
無線端末から1又は複数の無線中継局を介してデータを無線基地局へ送信する無線中継システムにおける前記無線基地局であって、
自局から前記無線端末に至る経路の無線リンクにおいて前記無線端末からのデータを送信させるための無線リソースの第1の割当情報を生成する割当情報生成手段と、
下位の無線中継局又は前記無線端末からのデータ受信の有無に関わらず、前記第1の割当情報を前記下位の無線中継局又は前記無線端末に送信する送信手段と、
をそなえたことを特徴とする、無線中継システムにおける無線基地局。
【請求項1】
無線基地局から1又は複数の無線中継局を介して無線端末へデータを中継する無線中継システムにおける前記無線基地局であって、
自局よりも下位の無線中継局から前記無線端末に至る経路の無線リンクにおいて新規データを送信するための無線リソースの第1の割当情報を生成する割当情報生成手段と、
過去の送信データに対する受信結果の前記下位の無線中継局又は前記無線端末からの受信を待たずに、前記第1の割当情報と前記新規データとを前記下位の無線中継局又は前記無線端末へ送信する送信手段と、
をそなえたことを特徴とする、無線中継システムにおける無線基地局。
【請求項2】
無線端末から1又は複数の無線中継局を介してデータを無線基地局へ送信する無線中継システムにおける前記無線基地局であって、
自局から前記無線端末に至る経路の無線リンクにおいて前記無線端末からのデータを送信させるための無線リソースの第1の割当情報を生成する割当情報生成手段と、
下位の無線中継局又は前記無線端末からのデータ受信の有無に関わらず、前記第1の割当情報を前記下位の無線中継局又は前記無線端末に送信する送信手段と、
をそなえたことを特徴とする、無線中継システムにおける無線基地局。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2012−16067(P2012−16067A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230244(P2011−230244)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【分割の表示】特願2009−510710(P2009−510710)の分割
【原出願日】平成19年4月18日(2007.4.18)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【分割の表示】特願2009−510710(P2009−510710)の分割
【原出願日】平成19年4月18日(2007.4.18)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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