説明

無線中継装置および無線中継方法

【課題】サーバおよび受信端末に機能追加をすることなく、サーバ−受信端末間の通信で使用可能な複数の無線アクセス回線を適時に切り替えて選択することにより、サーバ−受信端末間のデータ送受信を中断することなく安定したデータ送受信を実現することが可能な無線中継装置および無線中継方法を提供すること。
【解決手段】無線中継装置6は、複数の無線ネットワーク5−1,5−2にそれぞれ対応する複数の無線アクセス回線を同時に使用して受信端末7−サーバ1間の通信を中継する。無線中継装置6は、通信セッション毎にトラヒック量と通信状態を監視し、通信セッションのトラヒックがなくかつその通信セッションで使用されていた無線アクセス回線の通信状態が良好でないと判断した場合には、当該通信セッションを切断し、無線ネットワークの切替を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーバと受信端末との間の通信を中継する無線中継装置および無線中継方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のインターネットアクセスでは、プロトコルとしてTCP(Transmission Control Protocol)が頻繁に用いられている。TCPは、信頼性と効率の良い通信を実現するプロトコルであり、信頼性のある通信を実現するため確認応答の機能を有している。また、HTTP(HyperText Transfer Protocol)においてもトランスポート・プロトコルとして通常TCPを使用する。TCPによる通信では、データ送受信のため、TCPセッションをクライアントとサーバ間で確立し、TCPセッション確立後にデータ送受信を行う。また、データ送受信が完了した後も、確立されたTCPセッションを効率的に利用するために、TCPセッションは、一定期間維持され、次回通信に備えている。
【0003】
しかしながら、有線での通信に比べ無線通信の通信帯域は時間や環境に応じて変化し、一般に通信可能エリアと通信可能でないエリアが存在することから、一定期間維持されるTCPセッションを切り替えることが考えられ、例えば複数の無線アクセス回線を使用して通信を行うマルチホーミングが考えられている。なお、従来のマルチホーミングでは、複数の無線アクセス回線を同時には使用せず、最初は一の無線アクセス回線で通信を行い、その無線アクセス回線が使用できなくなった場合は、別の無線アクセス回線に切り替えている。
【0004】
また、特許文献1では、無線アクセス回線を切り替える従来技術として、例えば携帯電話網の圏外となった移動端末(携帯電話)が無線LANの圏内で無線アクセス回線の切替を判断すると、移動先のアクセス網(無線LAN)を介して移動前のセッション情報と新規IPアドレスをサーバに通知することで、セッションの継続を可能とする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−265354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
先に記載したとおり、データ送受信が終了した場合でも、一般的にセッションを効率的に利用するためにTCPセッションは一定期間維持され、クライアントからの新たなアクセス要求時に既に存在するTCPセッションを使用してデータの送受信が行なわれることになる。
【0007】
しかしながら、このような従来の技術では、ある無線アクセス回線で通信している通信セッションを維持したまま通信が困難なエリアにクライアントが移動した場合、クライアントからのアクセス要求により、当該通信セッションによりデータの送受信を行なうことになるが、当該エリアは通信が困難なエリアであるため通信の継続が困難になるという問題があった。
【0008】
また、ある無線アクセス回線内に複数の通信セッションが存在し、その中で優先度の高い通信のセッションと優先度の低い通信のセッションが存在していた場合に、優先度の低い通信のセッションに対してクライアントからのアクセス要求が行なわれると、優先度の高い通信の帯域を圧迫してしまうといった問題があった。
【0009】
また、上記特許文献1の技術では、通信セッションの切替を行う際に、クライアント(移動端末)はサーバに対して移動前のセッション情報および新規IPアドレスを通知し、クライアントとサーバはそれぞれ所定の機能に基づいて連携した処理を行うことで中断のない通信の継続を実現する。すなわち、特許文献1では、移動端末とサーバが連携して動作することによりセッションの切替が実現される。したがって、特許文献1の技術は、このような連携処理を行わない一般のサーバには適用されない。また、特許文献1では、複数の無線アクセス回線を同時に使用することは考えられていない。
【0010】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、サーバおよび受信端末に機能追加をすることなく、サーバ−受信端末間の通信で使用可能な複数の無線アクセス回線を適時に切り替えて選択することにより、サーバ−受信端末間のデータ送受信を中断することなく安定したデータ送受信を実現することが可能な無線中継装置および無線中継方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る無線中継装置は、複数の異なる無線ネットワークを経由してインターネット上のサーバと接続され、前記サーバにアクセスする受信端末と前記サーバとの間に介在して前記受信端末と前記サーバとの間の通信の中継を行い、かつ、前記受信端末とともに移動体内に設置された無線中継装置であって、前記受信端末およびその通信種別に応じて設定され、前記受信端末が前記サーバと通信をする際に、前記複数の無線ネットワークにそれぞれ対応する複数の無線アクセス回線のうちのいずれを使用して通信すべきかを規定した選択ポリシーテーブルを記憶する選択ポリシーデータベースと、前記受信端末からの通信セッションの確立要求に応じて、前記選択ポリシーテーブルを参照し、当該受信端末およびその通信種別に対応する無線アクセス回線を選択して通信セッションを確立し、前記受信端末から前記サーバへのパケットの送信を中継する第1の中継部と、既に確立され維持されている通信セッションに関するセッション情報を通信セッション毎に管理するセッション管理テーブルを記憶するセッションデータベースと、前記サーバから前記受信端末へのパケットの送信を中継する第2の中継部と、前記セッションデータベースにて管理された前記通信セッション毎に与えられた前記サーバから前記受信端末へのトラヒック情報に基づき、前記通信セッション毎のトラヒックの有無を判定し、トラヒックがないと判定した通信セッションについては、さらに、前記無線アクセス回線毎にその通信状態が良好か否かの情報を与える通信状態情報に基づき、当該通信セッションで使用されている無線アクセス回線の通信状態が良好か否かを判定し、当該無線アクセス回線の通信状態が良好でない場合には、当該通信セッションの切断および当該無線アクセス回線から通信状態が良好な別の無線アクセス回線への切替を判断する切替判断部と、この切替判断部からの切替指示に応じて、前記第1の中継部を介して当該通信セッションを切断し、前記選択ポリシーテーブルにおいて当該通信セッションを通信に使用していた前記受信端末およびその通信種別に対応する無線アクセス回線の設定を前記通信状態が良好な別の無線アクセス回線へ変更する更新をする切替制御部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、サーバおよび受信端末に機能追加をすることなく、サーバ−受信端末間の通信で使用可能な複数の無線アクセス回線を適時に切り替えて選択することにより、サーバ−受信端末間のデータ送受信を中断することなく安定したデータ送受信を実現することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、実施の形態1の無線中継装置を含む無線通信システムの構成例を示す図である。
【図2】図2は、選択切替部の構成例を示す図である。
【図3】図3は、選択切替処理を示すシーケンス図である。
【図4】図4は、実施の形態1に係る無線中継装置による選択切替処理を説明するためのフローチャートである。
【図5−1】図5−1は、実施の形態1において図4に続く処理を示すフローチャートである。
【図5−2】図5−2は、実施の形態2において図4に続く処理を示すフローチャートである。
【図6−1】図6−1は、実施の形態3において図4に続く処理を示すフローチャートである。
【図6−2】図6−2は、実施の形態4において図4に続く処理を示すフローチャートである。
【図7】図7は、選択ポリシーDBに記憶されたテーブル(選択ポリシーテーブル)の一例を示す図である。
【図8】図8は、セッションDBに記憶されたテーブル(セッション管理テーブル)の一例を示す図である。
【図9】図9は、エリアDBに記憶されたテーブル(エリア管理テーブル)の一例を示す図である。
【図10】図10は、優先度DBに記憶されたテーブル(優先度管理テーブル)の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明に係る無線中継装置および無線中継方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0015】
実施の形態1.
図1は、本実施の形態の無線中継装置を含む無線通信システムの構成例を示す図である。無線通信システムは、サーバ1と、このサーバ1が接続されたIP(Internet Protocol)網(IPネットワーク)2と、IP網2に接続されたゲートウェイ(GATEWAY)3−1,3−2と、ゲートウェイ3−1,3−2にそれぞれ接続された無線システム4−1,4−2と、無線システム4−1,4−2がそれぞれ接続可能な無線ネットワーク5−1、5−2と、無線ネットワーク5−1、5−2にそれぞれ接続可能な無線中継装置6と、無線中継装置6に接続された受信端末7−1,7−2とを備える。また、無線中継装置6は、無線インターフェース6−1,6−2と、選択切替部6−3とを備える。
【0016】
受信端末7−1,7−2は、サーバ1との通信において、通信プロトコルとしてTCPを用いる。受信端末7−1,7−2からサーバ1へのTCPパケットの伝送経路について説明する。受信端末7−1,7−2は、TCPパケットを、無線中継装置6に送信する。無線中継装置6は、受信端末側からのTCPパケットを、無線インターフェース6−1,6−2を用いて、無線ネットワーク5−1,5−2を介して無線システム4−1,4−2に送信する。無線システム4−1,4−2は、受信したTCPパケットをゲートウェイ3−1,3−2、およびIP網2を介して、サーバ1に送信する。サーバ1から受信端末7−1,7−2へのTCPパケットの伝送経路は上記と逆である。すなわち、サーバ1は、TCPパケットを、IP網2、およびゲートウェイ3−1,3−2を介して、無線システム4−1,4−2に送信する。無線システム4−1,4−2は、受信したTCPパケットを、無線ネットワーク5−1,5−2を介して無線中継装置6に送信する。無線中継装置6は、サーバ側からのTCPパケットを、無線インターフェース6−1,6−2を用いて受信し、これを受信端末7−1,7−2に送信する。
【0017】
また、無線中継装置6は、例えば車または列車などの移動体内に設置することができる。受信端末7は、無線中継装置6に接続可能な例えば固定端末とすることができる。
【0018】
なお、サーバ1と受信端末7−1,7−2間の通信において、無線ネットワーク5−1,5−2のいずれを使用するのかは、受信端末7−1,7−2からの通信確立時の通信内容によりTCPセッション毎に決められ、通信データはその通信が完了するまで同じ無線ネットワークの通信経路を経由して伝送される。
【0019】
また、無線中継装置6は、サーバ1と受信端末7−1,7−2との通信を中継する装置である。無線中継装置6の選択切替部6−3は、受信端末7−1,7−2とサーバ1との通信をTCPセッション単位で監視し、通信に使用される無線ネットワーク5−1,5−2の切替が行われる場合には、サーバ1および受信端末7−1,7−2に対してTCP−RSTパケットを送信する。
【0020】
なお、図1では、一例として、サーバ1を1台としているが、複数台存在してもよい。また、受信端末7−1,7−2を2台としているが、1台であっても、3台以上存在してもよい。このような無線通信システムでは、無線ネットワーク5を用いてデータパケットを送受信するが、無線ネットワーク5は有線ネットワークと比較して伝送損失率が高く、帯域の変動が頻繁に発生し、通信可能なエリアが限定されており、伝送品質が低い。
【0021】
次に、無線中継装置6内の選択切替部6−3の構成について説明する。図2は、選択切替部6−3の構成例を示す図である。図2に示すように、選択切替部6−3は、中継部202,203と、優先度管理部204と、切替判断部205と、切替制御部206と、トラヒック監視部207と、優先度DB(データベース)208と、セッションDB209−1と、エリアDB209−2と、選択ポリシーDB210と、を備える。
【0022】
中継部202は、受信端末7からのTCPセッション確立要求に応じて、どの無線アクセス回線を使用するのかを選択ポリシーDB210に記憶された設定情報を参照して決定し、TCPセッションの確立を行う。ここで、受信端末7−サーバ1間の通信において、無線ネットワーク5−1を経由する通信経路を無線アクセス回線A1とし、無線ネットワーク5−2を経由する通信経路を無線アクセス回線A2とする。中継部202は、TCPセッションの管理のために切替判断部205にTCPセッションの確立または切断を通知する。なお、以下では、TCPセッションを通信セッションまたは単にセッションともいう。
【0023】
中継部202は、受信端末7から送信されたTCPパケットを無線アクセス回線A1またはA2を経由してサーバ1に送信する。また、中継部202は、切替制御部206から送信されたTCPパケット(TCP−RSTパケット)を無線アクセス回線A1またはA2を経由してサーバ1に送信する。
【0024】
中継部203は、サーバ1から送信された受信端末7宛のTCPパケットを、受信端末7に送信する。また、中継部203は、サーバ1側から送信されたTCPパケットが、自分宛の通信エリア情報であれば、これを制御情報として切替判断部205に通知し、切替判断部205はこの通信エリア情報をエリアDB209−2に格納する。本実施の形態では、通信エリア情報は例えば無線中継装置6外から提供される。
【0025】
トラヒック監視部207は、例えば中継部203内に設けられて、TCPセッション毎にトラヒック量を監視し、通信の有無および通信帯域を計算する。すなわち、トラヒック監視部207は、サーバ1側から受信したTCPパケットを解析し、一定期間のトラヒック量をもとに単位時間当たりのトラヒック量として通信帯域を計算する。トラヒック監視部207は、トラヒック量(トラヒック情報)を切替判断部205に通知する。
【0026】
優先度管理部204は、ユーザの設定またはデフォルトの設定に基づき、TCPパケットの優先度を管理し、この優先度情報を優先度DB208に格納している。
【0027】
切替判断部205は、中継部202により通知されたセッションの確立およびセッションの切断の情報を基に、通信に使用されているセッションの管理を行う。具体的には、切替判断部205は、確立されたセッションの情報をセッション管理テーブルとしてセッションDB209−1に格納している。後述するように、セッション管理テーブルには、セッション毎の優先度も設定されている。切替判断部205は、優先度DB208の設定情報に基づきセッションDB209−1のセッション管理テーブルの更新を行う。また、切替判断部205は、トラヒック監視部207からのトラヒック量、セッションDB209−1に記憶されたセッション情報、およびエリアDB209−2に記憶された通信エリア情報に基づき、セッションの切断および無線アクセス回線の切替判断を行う。そして、切替判断部205は、セッションの切断および無線アクセス回線の切替を行う場合は、その旨を切替制御部206に通知する。
【0028】
切替制御部206は、セッションの切断を行なう際には、中継部202,203にそれぞれTCP−RSTパケットを送信する。中継部202は切替制御部206からのTCP−RSTパケットをサーバ1に送信し、中継部203は切替制御部206からのTCP−RSTパケットを受信端末7に送信する。また、切替制御部206は、次にセッションが確立する際には切断されたセッションで使用されていた無線アクセス回線とは別の無線アクセス回線が選択されるように選択ポリシーDB210の設定情報を更新することで無線アクセス回線の選択切替処理を行う。
【0029】
図3は、選択切替処理を示すシーケンス図である。図3は、上記図2での説明をシーケンス図にしたものであり、通信開始のT1では、選択ポリシーDB210での無線アクセス回線の選択設定が無線アクセス回線A1であり、かつ、受信端末7からのTCPセッションの確立要求が2つであった場合の例である。なお、TCPセッションの確立要求が一つまたは3つ以上存在していてもよい。
【0030】
中継部202は、受信端末7からのTCPセッションの一つ目の確立要求により、選択ポリシーDB210の設定情報に従い無線アクセス回線A1を選択した後、TCPセッションの確立を行う(S1−1〜S1−3)。つづいて、当該セッションにより、サーバ1と受信端末7間で無線アクセス回線A1を介してデータ送受信が行われる(S2)。中継部202は、受信端末7からのTCPセッションの二つ目の確立要求により、選択ポリシーDB210の設定情報に従い無線アクセス回線A1を選択した後、TCPセッションの確立を行う(S3−1〜S3−3)。つづいて、当該セッションにより、サーバ1と受信端末7間で無線アクセス回線A1を介してデータ送受信が行われる(S4)。S5では、データ送受信完了後、無線アクセス回線A1が選択された状態で、セッションが確立され維持されていることを示している。
【0031】
トラヒック監視部207は、中継部203より取得したTCPパケットによりTCPセッション単位でトラヒックを監視し、セッション毎のトラヒック量を算出し、一定時間内のトラヒック量により通信帯域を推定する(S6)。例えば1秒あたりのトラヒック量が0.5Mbyteであれば、通信帯域は4.0Mbpsとなる。
【0032】
切替判断部205は、トラヒック監視部207からのトラヒック量、セッションDB209−1に記憶されたセッション情報、およびエリアDB209に記憶された通信エリア情報に基づき、無線アクセス回線の切替判定を実施する(S7)。その結果、切替判断部205は、切替と判断した場合には、切替制御部206にその旨の通知を行う。
【0033】
切替制御部206は、サーバ1、受信端末7に対して中継部202,203経由でTCP−RSTパケットを送信しTCPリセットを指示することで、セッションの切断を行なう(S7)。これにより、T2では、TCPリセットが実施される(S8−1〜S8−3)。さらに、切替制御部206は、次回セッション確立時に、無線アクセス回線A1とは別の無線アクセス回線A2を使用するよう、選択ポリシーDB210の更新を行う(S9)。S10では、TCPセッションの確立要求時に、選択される無線アクセス回線が無線アクセス回線A2に切替えられた状態にあることを示している。そして、中継部202は、受信端末7からのTCPセッションの確立要求により、選択ポリシーDB210の設定情報に従い無線アクセス回線A2を選択した後、TCPセッションの確立を行う(S11−1〜S11−3)。つづいて、当該セッションにより、サーバ1と受信端末7間で無線アクセス回線A2を介してデータ送受信が行われる(S12)。
【0034】
図4は、本実施の形態に係る無線中継装置6による選択切替処理を説明するためのフローチャートであり、図5−1は、本実施の形態において図4に続く処理を示すフローチャートである。図4に示すように、まず、中継部202は、受信端末7(クライアント)からの通信開始要求により、受信端末7との間でTCPセッションを確立する(S41)。その際、中継部202は、受信端末7から受信したTCPパケットのヘッダ領域から宛先および送信元IPアドレスならびに宛先および送信元ポート番号等の通信情報を取得する。
【0035】
次に、中継部202は、選択ポリシーDB210に記憶された設定情報に従い、複数ある無線アクセス回線A1,A2のうちから一本の回線を選択し、サーバ1との間でTCPセッションを確立し、その後、受信端末7―サーバ1間の通信が実施される(S42)。また、中継部202は、セッションの確立を切替判断部205に通知し、確立したセッションに関するIPアドレスおよびポート番号等の情報を切替判断部205に送信する。ここで、図7は、選択ポリシーDB210に記憶されたテーブル(選択ポリシーテーブル)の一例を示す図である。この選択ポリシーテーブルでは、受信端末7(クライアント)のIPアドレス、宛先ポート番号、および通信の種類に対して、選択される無線アクセス回線が設定されている。例えば、「クライアントIPアドレス」=「AA.BB.CC.DD」、「宛先ポート番号」=「80」、「通信の種類」=「Webアクセス」に対しては、無線アクセス回線A1が設定されている。すなわち、選択ポリシーテーブルは、受信端末7を特定する情報(「クライアントIPアドレス」)およびその通信種別(「宛先ポート番号」、「通信の種類」等)毎に、選択すべき無線アクセス回線を設定する。中継部202は、TCPセッション確立時に、受信端末7から受信したTCPパケットに含まれるクライアントIPアドレスおよび宛先ポート番号等の情報をもとに、選択ポリシーテーブルを参照し、当該受信端末7とその通信種別に対応する無線アクセス回線を選択することで、セッションを確立する。また、後述するように、切替制御部206は、切替実施時には本テーブルの「選択無線アクセス回線」の項を書き換えることで無線アクセス回線の切替を行なう。なお、図7に示す例には記載していないが、選択ポリシーテーブルに、宛先IPアドレス、送信元ポート番号等を含めても良い。
【0036】
次に、切替判断部205は、確立したTCPセッションの情報(クライアントIPアドレス、送信元ポート番号、宛先ポート番号、通信の種類、ならびに、クライアントIPアドレスおよび送信元ポート番号により判定した優先度等)をセッションDBに格納することでセッションの管理を行う(S43)。ここで、図8は、セッションDB209−1に記憶されたテーブル(セッション管理テーブル)の一例を示す図である。図8に示すように、セッション管理テーブルでは、セッション一本単位で管理可能な構成とし、セッションを識別する管理番号毎に、クライアントIPアドレス、送信元ポート番号、および優先度等を一意に管理する構成とする。ここで、優先度は、優先度DB208にて設定された情報である。例えば、「管理番号」=「1」に対しては、「クライアントIPアドレス」=「AA.BB.CC.DD」、「送信元ポート番号」=「1600」および「優先度」=「優先」であり、「優先」は「非優先」と比較して高優先であることを意味する。なお、図8のセッション管理テーブルでは、「宛先ポート番号」および「通信の種類」の項目を省略している。すなわち、管理番号毎に、例えば、クライアントIPアドレス、送信元ポート番号、宛先ポート番号、通信の種類および優先度等を一意に管理する構成とすることができる。また、図10は、優先度DB208に記憶されたテーブル(優先度管理テーブル)の一例を示す図である。優先度管理テーブルは、ユーザによりまたはデフォルトで設定され、クランアント(送信元)IPアドレスと宛先ポート番号とに対して優先度を設定する。なお、図示例では、優先度は「優先」または「非優先」のいずれかに設定されているが、三つ以上の優先クラスを設定することもできる。優先度管理テーブルは、セッション毎の優先度を決めるためのテーブルである。切替判断部205は、中継部202からTCPセッションの確立情報を得ると、優先度管理部204を介して優先度管理テーブルを参照し、当該セッションのクライアントIPアドレスおよび宛先ポート番号に対応する優先度情報を取得し、これをクライアントIPアドレスおよび送信元ポート番号と合わせてセッション管理テーブルで管理する。また、切替判断部205は、中継部202によりTCPセッションの切断情報が通知されると、切断するセッションの情報をセッション管理テーブルから削除する更新を行う。次に、切替判断部205は、切替判断処理を開始する(S44)。
【0037】
つづいて、図5−1に示すように、中継部202,203は、クライアント(受信端末7)−サーバ1間の通信を中継し、トラヒック監視部207は、セッション毎にトラヒック監視を行なうことでクライアント(受信端末7)−サーバ1間のトラヒック量を測定し、取得したセッション毎のトラヒック量を切替判断部205に通知する(S45)。
【0038】
切替判断部205は、セッション毎のトラヒック量を管理するとともに、トラヒック量に基づいてセッション毎のトラヒックの有無の判定を行なう(S46)。ここで、セッション毎とは正確にはセッション管理テーブルで管理されているセッション毎である。切替判断部205は、トラヒックがあると判定した場合には(S46,Yes)、S47以下の処理を行うことなく、そのセッションについて引き続き監視を続ける。
【0039】
切替判断部205は、トラヒックがないと判定した場合には(S46,No)、通信が完了しているセッションであると判定し、さらに、エリアDB209−2を参照し、当該セッションで使用されている無線アクセス回線が圏内にあって安定して使用できる状態(良好な通信状態が確保される状態)にあるのか、または、圏内ではあるがエリア端にあり安定して使用できない状態にあるのかを判定する(S47)。すなわち、切替判断部205は、当該セッションが使用している無線アクセス回線について、通信エリアがエリア端であるかを判定する(S47)。なお、無線アクセス回線を使用した通信の通信状態は、無線中継装置6の位置に応じて決まる。そして、切替判断部205は、当該無線アクセス回線がエリア端ではなく、無線アクセス回線を安定して使用できる状態にあれば(S47,No)、S48以下の処理を行うことなく、引き続き監視を続ける。ここで、エリアDB209−2に格納された通信エリア情報の例について説明する。図9は、エリアDB209−2に記憶されたテーブル(エリア管理テーブル)の一例を示す図である。図9に示すように、エリア管理テーブルは、無線アクセス回線毎のエリア情報を管理している。圏内は、無線中継装置6の位置が通信圏内にあり、したがって無線アクセス回線も通信圏内にあり、その無線アクセス回線は安定して使用できる状態であることを意味する。圏内(エリア端)は、無線中継装置6の位置が通信圏内ではあるが通信圏外に近いエリア端にあり、したがって無線アクセス回線もエリア端にあり、無線アクセス回線は安定して使用できる状態にないことを意味する。なお、本実施の形態では、少なくとも一の無線アクセス回線は安定して使用できる状態にあるとする。
【0040】
切替判断部205は、S47での判定の結果、当該無線アクセス回線を安定して使用できる状態ではない(すなわち、エリア端)と判断した場合(S47,Yes)、切替制御部206に、該当するセッションの管理番号を通知し、そのセッションについて切断の実施および無線アクセス回線の切替の実施を通知する(S48)。
【0041】
切替制御部206は、通知された管理番号のセッションについて、中継部202,203を介して、TCP−RSTパケットをサーバ1および受信端末7の双方に送信し、TCPリセットして当該セッションを切断し、さらに、選択ポリシーDB210の選択ポリシーテーブルにおいて当該セッションを通信に使用していた受信端末7およびその通信種別に対する「選択無線アクセス回線」の設定を無線アクセス回線A1から通信状態が良好な別の無線アクセス回線に変更する更新をする(S49)。切替判断部205は、当該セッションをセッションDB209−1の管理対象より削除する(S49)。なお、本実施の形態では、切替制御部206は、セッション管理テーブルから該当するセッションを削除した後、選択ポリシーテーブルにおいて当該セッションを通信に使用していた受信端末7およびその通信種別に対する「選択無線アクセス回線」の設定を変更する更新をするが、切断されるセッションの無線アクセス回線と同じ無線アクセス回線の設定がされているところをすべて同様に変更することもできる。
【0042】
以上説明したように、本実施の形態では、複数の無線アクセス回線を同時に使用し、受信端末7側に設けられた無線中継装置6にのみ無線アクセス回線の選択切替機能を付与する構成において、トラヒック監視部207ではセッション毎のトラヒック量を監視し、制御判断部205では、セッション管理テーブルにて管理されたセッション毎にトラヒックの有無を判定し、トラヒックが無いセッションに対しては、エリアDB209−2のエリア管理テーブルを参照して、当該セッションで使用している無線アクセス回線の通信状態を確認し、当該無線アクセス回線がエリア端にあり安定して使用できる状態にない場合には、切替制御部206により、当該セッションを切断(リセット)するとともに、次のセッション確立時にはエリア端にはない別の無線アクセス回線を選択して通信ができるように選択ポリシーDBの該当箇所の無線アクセス回線の設定を変更することで無線アクセス回線の切替を実施するようにしている。
【0043】
したがって、本実施の形態によれば、切断前のセッションと同一の受信端末7から同一の通信種別のアクセスに応じてセッションを確立する際に、エリア端にはない別の無線アクセス回線を選択して受信端末7−サーバ1間の通信が行われるので、安定したデータの送受信が可能となる。これに対して、従来の技術では、通信セッションを維持したままその無線アクセス回線では安定して通信をすることができないエリアに遷移した場合、クライアントが当該セッションにアクセスしたときに、クライアント(受信端末7)−サーバ1間のデータの送受信が困難になるという問題があった。本実施の形態は、このような問題を解消するものである。
【0044】
以上のように、本実施の形態によれば、サーバ1および受信端末に選択切替機能を追加をすることなく、サーバ−受信端末間の通信で使用可能な複数の無線アクセス回線を適時に切り替えて選択することにより、サーバ−受信端末間のデータ送受信を中断することなく安定したデータ送受信を実現することができる。
【0045】
実施の形態2.
実施の形態1では、図5−1のS46にてトラヒックの有無を判定し、トラヒックがない場合には通信が完了していると判断した。ここで、トラヒックがない場合とは、例えば中継部203にてサーバ1から一定期間パケットが受信されない場合である。本実施の形態では、図5−1のS46の判定処理の代わりに、サーバ1から受信端末7へ送信されるパケットの例えばヘッダに記載された送信データの通信サイズを表す通信Length情報を取得し、この通信Lengthをトラヒック量と比較することにより、通信Length以上のデータの受信が行なわれたか否かを判定して通信完了を判断する。なお、本実施の形態の構成は実施の形態1と同様であり、図1および図2を用いて説明したとおりである。
【0046】
本実施の形態に係る無線中継装置6による選択切替処理を説明する。なお、図4のS41〜S44までの処理は、本実施の形態でも同様であるので説明を省略する。S44以降の処理は、図5−2に示す処理に従う。図5−2は、本実施の形態において図4に続く処理を示すフローチャートである。
【0047】
図5−2において、S45−1では、中継部202,203は、クライアント(受信端末7)−サーバ1間の通信を中継し、トラヒック監視部207は、セッション毎にトラヒック監視を行なうことでクライアント(受信端末7)−サーバ1間のトラヒック量、および例えばTCPパケットのヘッダ領域から通信サイズ情報(通信Length情報)を取得し、取得したトラヒック量および通信Length情報を切替判断部205に通知する。
【0048】
つづいて、切替判断部205は、セッション毎にトラヒック量を管理するとともに、セッション毎に、受信したトラヒック量の総和(受信トラヒック量)を算出し、セッション毎に受信トラヒック量と通信Lengthとを比較する(S46−1)。切替判断部205は、比較の結果、受信トラヒック量<通信Lengthである場合には(S46−1,Yes)、当該セッションは通信中と判断し、S47以下の処理を行うことなく、引き続き監視を続ける。
【0049】
一方、切替判断部205は、比較の結果、受信トラヒック量<通信Lengthでない場合(S46−1,No)、当該セッションは通信完了と判断し(すなわち、トラヒックがないと判断し)、S47以下の処理を行う。なお、図5−2において、S47〜S49の各処理は図5−1の場合と同様であるので、同一の処理には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0050】
本実施の形態によれば、トラヒックの有無をより正確に判断することができ、実施の形態1と同様の効果を奏する。なお、本実施の形態のその他の動作等については実施の形態1と同様である。
【0051】
実施の形態3.
実施の形態1、2では、通信セッションを維持したままの状態で、無線中継装置6の移動に伴い、そのセッションで使用されている無線アクセス回線が安定して通信をすることができないエリアに遷移した場合、クライアントが当該セッションにアクセスしたときには、クライアント(受信端末7)−サーバ1間のデータの送受信が困難になるという問題の解消法を示した。
【0052】
ところで、無線アクセス回線内に複数の通信セッションが存在し、その中で優先度の高い通信のセッションと優先度の低い通信のセッションが存在していた場合、優先度の低い通信のセッションに対してクライアント(受信端末7)からのアクセス要求が行なわれると、優先度の高い通信の帯域を圧迫してしまうという問題がある。そこで、本実施の形態では、このよう問題の解消法について説明する。なお、本実施の形態の構成は、実施の形態1と同様であり、図1および図2を用いて説明したとおりである。
【0053】
本実施の形態に係る無線中継装置6による選択切替処理を説明する。なお、図4のS41〜S44までの処理は、本実施の形態でも同様であるので説明を省略する。S44以降の処理は、図6−1に示す処理に従う。図6−1は、本実施の形態において図4に続く処理を示すフローチャートである。
【0054】
図6−1に示すように、中継部202,203は、クライアント(受信端末7)−サーバ1間の通信を中継し、トラヒック監視部207は、セッション毎にトラヒック監視を行なうことでクライアント(受信端末7)−サーバ1間のトラヒック量を測定し、取得したセッション毎のトラヒック量を切替判断部205に通知する(S51)。
【0055】
切替判断部205は、セッション毎のトラヒック量を管理するとともに、トラヒック量に基づいてセッション毎のトラヒックの有無の判定を行なう(S52)。切替判断部205は、トラヒックがあると判定した場合は(S52,Yes)、S53−1以下の処理を行うことなく、引き続き監視を続ける。
【0056】
一方、切替判断部205は、トラヒックがないと判定した場合(S52,No)、当該トラヒックがないと判定したセッション、つまり通信の完了している当該セッション以外の他のセッションでかつ該セッションと同じ無線アクセス回線を使用しているものに対し、セッション毎に通信帯域を計算する(S53)。この計算(推定)方法は、実施の形態1で説明したとおりである。
【0057】
次に、切替判断部205は、セッション管理テーブルを参照し、通信帯域を計算したセッションの中で、優先度の高いセッションが存在する場合には(すなわち、「優先」が付与されたセッション(図8参照)。)、その優先度の高いセッションのトラヒック(優先トラヒック)の通信帯域を、所定の規定帯域(設定変更可能な固定値であり、ここではC(kbps)とする。)と比較する(S54)。なお、優先度の高いセッションが存在する複数存在する場合には、通信帯域は優先トラヒックについて加算されたもの(総和)である。そして、切替判断部205は、優先トラヒックの通信帯域が規定帯域Cよりも大きい場合は(S54,Yes)、新たに優先度の低いトラヒックの通信が開始されると、現在通信中の優先トラヒックの通信を圧迫してしまうと判断し、S55以下の処理を継続する。一方、切替判断部205は、優先トラヒックの通信帯域が規定帯域C以下である場合は(S54,No)、新たに優先度の低いトラヒックの通信が開始されても、現在通信中の優先トラヒックの通信を圧迫してしまうと可能性は低いと判断し、S55以下の処理を行うことなく、引き続き監視を続ける。
【0058】
つづいて、切替判断部205は、優先トラヒックの通信帯域>規定帯域Cである場合(S54,Yes)において、当該セッションの管理番号を切替制御部206に通知し、その管理番号のセッションについて切断の実施および無線アクセス回線の切替の実施を通知する(S55)。なお、この処理は、S52にてトラヒックがないと判定された当該セッション(通信が完了している当該セッション)の優先度が低い場合、すなわち優先度が「非優先」(図8参照)のセッションに該当する場合に行われる。したがって、S53〜S56の処理は、トラヒックがないと判定された当該セッションよりも優先度の高いセッションの存在を前提にしている。以上の処理は、セッション毎に行われる。
【0059】
切替制御部206は、通知された管理番号のセッションについて、中継部202,203を介して、TCP−RSTパケットをサーバ1および受信端末7の双方に送信し、TCPリセットして当該セッションを切断し、さらに、選択ポリシーDB210の選択ポリシーテーブルにおいて当該セッションを通信に使用していた受信端末7およびその通信種別に対する「選択無線アクセス回線」の設定を当該無線アクセス回線から別の無線アクセス回線に変更する更新をする(S56)。この際、切替先の無線アクセス回線の通信状態が良好なことが望ましいが、これについては実施の形態4で説明する。切替判断部205は、当該セッションをセッションDB209−1の管理対象より削除する(S56)。
【0060】
以上のような処理を実施することにより、無線アクセス回線内に複数の通信セッションが存在し、その中で優先度の高い通信のセッションと優先度の低い通信のセッションが存在していた場合において、優先度の低いセッションに対してクライアントからのアクセス要求が行なわれた場合でも、優先度の高い通信に影響を及ぼすことがない。
【0061】
なお、本実施の形態のその他の動作等は、実施の形態1,2と同様である。また、本実施の形態と、実施の形態1または2を組み合わせることもできる。本実施の形態のその他の効果は、実施の形態1,2と同様である。
【0062】
実施の形態4.
実施の形態3では、セッション毎の優先度によりセッションの切替を行う場合について説明したが、本実施の形態では、複数ある無線アクセス回線のそれぞれの通信帯域使用量の状態に基づいてセッションの切替判断を行なう場合について説明する。なお、本実施の形態の構成は、実施の形態3と同様である。
【0063】
本実施の形態に係る無線中継装置6による選択切替処理を説明する。なお、図4のS41〜S44までの処理は、本実施の形態でも同様であるので説明を省略する。S44以降の処理は、図6−2に示す処理に従う。図6−2は、本実施の形態において図4に続く処理を示すフローチャートである。
【0064】
図6−2において、S51,S52の各処理は、図6−1と同様であるので同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。次に、S53−1では、切替判断部205は、セッションDB209−1にて管理しているTCPセッション毎に、一定時間内のトラヒック量を算出することにより通信帯域を推定し、さらに、セッション毎にどの無線アクセス回線を使用しているのかを判定し、同じ無線アクセス回線の通信帯域を加算することにより、無線アクセス回線毎の通信帯域使用量を推定する。
【0065】
次に、切替判断部205は、例えば無線アクセス回線A2(切替先)の通信帯域使用量が、所定のレベル(ここでは、設定変更可能な固定値E(kbps)とする)より小さく、かつ、無線アクセス回線A1(切替元)の通信帯域使用量が、所定のレベル(ここでは、設定変更可能な固定値F(kbps)とする)より大きい場合(S54−1,Yes)、切替元の無線アクセス回線A1の通信帯域には余裕が少ないが、切替先の無線アクセス回線A2通信帯域には余裕があり、切替を実施しても切替先の通信を圧迫しないと判断して、切替処理を継続(すなわち、S55以降の処理を実施)する。なお、S55,S56の各処理は、図6−1と同様であるので同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。また、切替判断部205は、それ以外の場合(S54−1,No)は、切替先の無線アクセス回線A2の通信帯域に余裕が少なく、または、切替元の無線アクセス回線A1の通信帯域には余裕があるので、切替処理を行わない。
【0066】
本実施の形態によれば、切替先の無線アクセス回線A2と切替元の無線アクセス回線A1のそれぞれの通信帯域使用量を考慮して切替を行うようにしているので、切替先の通信に及ぼす影響を低減することができる。なお、本実施の形態のその他の効果は、実施の形態3と同様である。また、本実施の形態と、実施の形態3を組み合わせることもできる。例えば、実施の形態3で切替判断部205が切替を判断した場合において、切替先の無線アクセス回線を選択する際に本実施の形態を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
以上のように、本発明は、サーバと受信端末との間の通信を中継する無線中継装置および無線中継方法に有用である。
【符号の説明】
【0068】
1 サーバ
3 ゲートウェイ
4 無線システム
5−1,5−2 無線ネットワーク
6 無線中継装置
6−1,6−2 無線インターフェース
6−3 選択切替部
7 受信端末
202,203 中継部
204 優先度管理部
205 切替判断部
206 切替制御部
207 トラヒック監視部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の異なる無線ネットワークを経由してインターネット上のサーバと接続され、前記サーバにアクセスする受信端末と前記サーバとの間に介在して前記受信端末と前記サーバとの間の通信の中継を行い、かつ、前記受信端末とともに移動体内に設置された無線中継装置であって、
前記受信端末およびその通信種別に応じて設定され、前記受信端末が前記サーバと通信をする際に、前記複数の無線ネットワークにそれぞれ対応する複数の無線アクセス回線のうちのいずれを使用して通信すべきかを規定した選択ポリシーテーブルを記憶する選択ポリシーデータベースと、
前記受信端末からの通信セッションの確立要求に応じて、前記選択ポリシーテーブルを参照し、当該受信端末およびその通信種別に対応する無線アクセス回線を選択して通信セッションを確立し、前記受信端末から前記サーバへのパケットの送信を中継する第1の中継部と、
既に確立され維持されている通信セッションに関するセッション情報を通信セッション毎に管理するセッション管理テーブルを記憶するセッションデータベースと、
前記サーバから前記受信端末へのパケットの送信を中継する第2の中継部と、
前記セッションデータベースにて管理された前記通信セッション毎に与えられた前記サーバから前記受信端末へのトラヒック情報に基づき、前記通信セッション毎のトラヒックの有無を判定し、トラヒックがないと判定した通信セッションについては、さらに、前記無線アクセス回線毎にその通信状態が良好か否かの情報を与える通信状態情報に基づき、当該通信セッションで使用されている無線アクセス回線の通信状態が良好か否かを判定し、当該無線アクセス回線の通信状態が良好でない場合には、当該通信セッションの切断および当該無線アクセス回線から通信状態が良好な別の無線アクセス回線への切替を判断する切替判断部と、
この切替判断部からの切替指示に応じて、前記第1の中継部を介して当該通信セッションを切断し、前記選択ポリシーテーブルにおいて当該通信セッションを通信に使用していた前記受信端末およびその通信種別に対応する無線アクセス回線の設定を前記通信状態が良好な別の無線アクセス回線へ変更する更新をする切替制御部と、
を備えることを特徴とする無線中継装置。
【請求項2】
前記切替判断部は、前記第1の中継部から通知された前記通信セッションの確立情報または削除情報に基づき、前記セッション管理テーブルの内容を追加または削除する更新をすることを特徴とする請求項1に記載の無線中継装置。
【請求項3】
前記無線アクセス回線毎の通信状態情報として前記各無線アクセス回線が通信圏内にありその通信状態が良好であるかまたは通信圏内ではあるがエリア端にあってその通信状態が良好ではないかの通信エリア情報を管理するエリア管理テーブルを記憶するエリアデータベースを備えることを特徴とする請求項1または2に記載の無線中継装置。
【請求項4】
前記サーバから前記受信端末へ送信されるパケットを前記第2の中継部で中継する際に、当該パケットを解析し前記通信セッション毎のトラヒック量を前記トラヒック情報として取得するトラヒック監視部を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の無線中継装置。
【請求項5】
前記トラヒック監視部は、前記サーバから前記受信端末へ送信されるパケットを前記第2の中継部で中継する際に、当該パケットを解析し前記通信セッション毎のトラヒック量および通信サイズを表す通信Length情報を取得し、
前記切替判断部は、前記セッション毎の受信したトラヒック量の総和を算出した後、前記セッション毎に前記トラヒック量の総和と前記通信Lengthとを比較し、前記トラヒック量の総和が前記通信Length以上であれば、当該通信セッションのトラヒックはないと判断することを特徴とする請求項4に記載の無線中継装置。
【請求項6】
前記セッション管理テーブルには、管理する通信セッション毎に通信の優先度を表す優先度情報が含まれており、
前記切替判断部は、前記トラヒック情報に基づき、前記通信セッション毎のトラヒックの有無を判定し、前記トラヒックがないと判定した通信セッションについては、前記セッション管理テーブルの優先度情報を参照し、当該通信セッションと同じ無線アクセス回線を使用しかつ当該通信セッションの優先度よりも高優先の通信セッションが存在する場合には、前記トラヒック情報に基づき前記高優先の通信セッションのトラヒックが一定以上あるか否かを判定し、そのトラヒックが一定以上あるときには、当該通信セッションの切断および当該無線アクセス回線から別の無線アクセス回線への切替を判断し、前記切替制御部へ切替指示をすることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の無線中継装置。
【請求項7】
前記受信端末のIPアドレスおよび通信種別に対して優先度が設定された優先度管理テーブルを記憶する優先度データベースと、
前記優先度管理テーブルの設定管理を行う優先度管理部と、
を備え、
前記切替判断部は、前記通信セッションの確立時に前記第1の中継部から通知される前記受信端末のIPアドレスおよび通信識別情報をもとに、前記優先度管理テーブルを参照して、当該通信セッションに関するセッション情報として、当該受信端末のIPアドレス、当該通信識別情報、ならびに当該IPアドレスおよび当該通信識別情報に対応する優先度情報を前記セッション管理テーブルに追加することを特徴とする請求項6に記載の無線中継装置。
【請求項8】
前記サーバから前記受信端末へ送信されるパケットを前記第2の中継部で中継する際に、当該パケットを解析し前記通信セッション毎のトラヒック量を前記トラヒック情報として取得するトラヒック監視部を備え、
前記切替判断部は、前記トラヒック量に基づき、前記高優先の通信セッションの通信帯域の総和と所定の規定帯域とを比較し、当該通信帯域の総和が前記規定帯域よりも大きいときには、当該通信セッションの切断および当該無線アクセス回線から別の無線アクセス回線への切替を判断することを特徴とする請求項6または7に記載の無線中継装置。
【請求項9】
前記サーバから前記受信端末へ送信されるパケットを前記第2の中継部で中継する際に、当該パケットを解析し前記通信セッション毎のトラヒック量を前記トラヒック情報として取得するトラヒック監視部を備え、
前記切替判断部は、前記トラヒック情報に基づき、前記通信セッション毎のトラヒックの有無を判定し、前記トラヒックがないと判定した通信セッションについては、前記トラヒック情報に基づいて前記無線アクセス回線毎の通信帯域使用量を算出し、当該通信セッションに使用されている無線アクセス通信回線の通信帯域使用量が第1の所定量より大きく、かつ、当該通信セッションに使用されている無線アクセス通信回線とは別の無線アクセス通信回線の通信帯域使用量が第2の所定量よりも小さい場合には、当該通信セッションの切断および当該無線アクセス回線から前記別の無線アクセス回線への切替を判断し、前記切替制御部へ切替指示をすることを特徴とする請求項1に記載の無線中継装置。
【請求項10】
複数の異なる無線ネットワークを経由してインターネット上のサーバと接続され、前記サーバにアクセスする受信端末と前記サーバとの間に介在して前記受信端末と前記サーバとの間の通信の中継を行い、かつ、前記受信端末とともに移動体内に設置された無線中継装置の無線中継方法であって、
前記無線中継装置の切替判断部が、前記受信端末からの通信セッションの確立要求に応じて既に確立され維持されている通信セッション毎に与えられた前記サーバから前記受信端末へのトラヒック情報に基づき、前記通信セッション毎のトラヒックの有無を判定するステップと、
前記切替判断部が、前記トラヒックがないと判定した通信セッションについては、前記各無線ネットワークに対応する無線アクセス回線毎にその通信状態が良好か否かの情報を与える通信状態情報に基づき、当該通信セッションで使用されている無線アクセス回線の通信状態が良好か否かを判定するステップと、
前記切替判断部が、当該無線アクセス回線の通信状態が良好でない場合には、当該通信セッションの切断および当該無線アクセス回線から通信状態が良好な別の無線アクセス回線への切替を判断するするステップと、
前記無線中継装置の切替制御部が、前記切替判断部からの切替指示に応じて、前記通信セッションを切断するステップと、
前記切替制御部が、前記受信端末およびその通信種別に応じて設定され前記受信端末が前記サーバと通信をする際に前記複数の無線アクセス回線のうちのいずれを使用して通信すべきかを規定した選択ポリシーテーブルにおいて、前記通信セッションを通信に使用していた前記受信端末およびその通信種別に対応する無線アクセス回線の設定を前記通信状態が良好な別の無線アクセス回線へ変更する更新をするステップと、
を含むことを特徴とする無線中継方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−134753(P2012−134753A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−284801(P2010−284801)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】