説明

無線制御装置、無線端末装置、無線通信システム、無線制御装置および無線端末装置の制御プログラムおよび集積回路

【課題】移動局装置がマルチアンテナを使用する場合において、移動局装置からの送信信号に対するクリッピングにより、周波数利用効率改善を実現する。
【解決手段】周波数領域の一部のスペクトルを送信しないクリッピング処理を行なってデータを送受信する無線通信システムに適用される無線制御装置であって、通信相手である無線端末装置との間の伝搬路情報に基づいて、前記クリッピング処理を行なう周波数領域を示すクリッピング情報を生成すると共に、前記無線端末装置に対する周波数割り当てを決定して周波数割り当て情報を生成し、前記クリッピング情報および前記周波数割り当て情報を前記無線端末装置に対して通知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチアンテナ使用時のスペクトルクリッピング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
第3.9世代の携帯電話の無線通信システムであるLTE(Long Term Evolution)システムの標準化がほぼ完了し、最近ではLTEシステムをより発展させたLTE-A(LTE-Advanced)が、第4世代の無線通信システム(IMT-Aなどとも称する。)の候補の一つとして標準化が行なわれている。一般的に、移動通信システムの上り回線(移動局から基地局への通信)では、移動局が送信局となるため、限られた送信電力で増幅器の電力利用効率を高く維持でき、ピーク電力の低いシングルキャリア方式(LTEではSC-FDMA(Single Carrier Frequency Division Multiple Access)方式が採用されている)が有効とされている。なお、SC-FDMAはDFT-S-OFDM(Discrete Fourier Transform Spread Orthogonal Frequency Division Multiplexing)やDFT-precoded OFDMなどとも呼ばれる。
【0003】
LTE-Aでは、さらに周波数利用効率を改善させるために、送信電力に余裕のある端末については、SC-FDMAスペクトルを複数のサブキャリアから構成されるクラスタに分割し、各クラスタを周波数軸の任意の周波数に配置するClustered DFT-S-OFDM(ダイナミックスペクトル制御(DSC:Dynamic Spectrum Control)、SC-ASA(Single Carrier Adaptive Spectrum Allocation)などとも称される。)と呼ばれるアクセス方式を新たにサポートすることが決定されている。さらに、受信処理においてターボ等化を行なうことを前提に、各移動局装置からの周波数信号に対してクリッピングを含むスペクトル整形を施すことで、周波数利用効率を改善させる手法が提案されている(例えば、非特許文献1)。
【0004】
図15は、非特許文献1で開示されたスペクトルクリッピングの概念を示す図である。元のシングルキャリアスペクトル1に対して、一部の周波数信号をクリッピング(削除)し、送信信号3を生成する。このとき、クリッピングされる周波数信号は伝搬路特性に応じて施す。これを受信した受信信号5は、当然、送信側でクリップした周波数信号は欠落したまま受信される。その後、信号がクリッピングされた周波数の伝搬路利得がゼロであると見做してターボ等化で検出すると、推定信号7のように周波数信号を再生することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】A. Okada, S. Ibi, S. Sampei, “Spectrum Shaping Technique Combined with SC/MMSE Turbo Equalizer for High Spectral Efficient Broadband Wireless Access Systems,” ICSPCS2007, Gold Coast, Australia, Dec. 2007.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、送受信アンテナを複数具備するマルチアンテナ技術(MIMO(Multiple-Input Multiple-Output)技術など)にクリッピングを適用する方法は開示されていない。よって、マルチアンテナ使用時においては、移動局装置からの送信信号に対してクリッピングを含むスペクトル整形を施すことによる周波数利用効率改善を行なうことができなかった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、移動局装置がマルチアンテナを使用する場合において、移動局装置からの送信信号に対するクリッピングにより、周波数利用効率改善を行なうことができる無線制御装置、無線端末装置、無線通信システム、無線制御装置および無線端末装置の制御プログラムおよび集積回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記の目的を達成するために、本発明は、以下のような手段を講じた。すなわち、本発明の無線制御装置は、周波数領域の一部のスペクトルを送信しないクリッピング処理を行なってデータを送受信する無線通信システムに適用される無線制御装置であって、通信相手である無線端末装置との間の伝搬路情報に基づいて、前記クリッピング処理を行なう周波数領域を示すクリッピング情報を生成すると共に、前記無線端末装置に対する周波数割り当てを決定して周波数割り当て情報を生成し、前記クリッピング情報および前記周波数割り当て情報を前記無線端末装置に対して通知することを特徴としている。
【0009】
このように、無線制御装置は、クリッピング処理を行なう周波数領域を示すクリッピング情報を生成すると共に、無線端末装置に対する周波数割り当てを決定して周波数割り当て情報を生成し、クリッピング情報および周波数割り当て情報を無線端末装置に対して通知するので、無線端末装置がマルチアンテナを使用する場合において、無線端末装置からの送信信号に対するクリッピングが可能となり、周波数利用効率改善を行なうことができる。
【0010】
(2)また、本発明の無線制御装置において、前記無線端末装置が複数の送信アンテナを備える場合、前記各送信アンテナにおけるクリッピング情報をそれぞれ独立に決定することを特徴としている。
【0011】
このように、無線制御装置は、各送信アンテナにおけるクリッピング情報をそれぞれ独立に決定するので、送信アンテナ毎に共通に決定する方法に比べ、欠落する情報をなくすことができ、検出精度を高めることが可能である。これにより高い伝送特性を得ることができる。
【0012】
(3)また、本発明の無線制御装置において、前記クリッピング情報は、クリッピング処理をする周波数領域とクリッピング処理をしない周波数領域との割合を示すクリッピング率を示す情報、またはクリッピング処理を行なう周波数位置を示す情報の少なくとも一方を含むことを特徴としている。
【0013】
このように、クリッピング情報が、クリッピング処理をする周波数領域とクリッピング処理をしない周波数領域との割合を示すクリッピング率を示す情報、またはクリッピング処理を行なう周波数位置を示す情報の少なくとも一方を含むので、無線制御装置は、柔軟に制御することが可能となる。
【0014】
(4)また、本発明の無線制御装置において、前記各送信アンテナにおけるクリッピング情報は、前記各アンテナに対応する伝搬路のゲインに基づいて決定されることを特徴としている。
【0015】
このように、各送信アンテナにおけるクリッピング情報は、各アンテナに対応する伝搬路のゲインに基づいて決定されるので、無線制御装置は、送信ダイバーシチゲイン(あるいはビームフォーミングゲイン)や通信路容量から決定する方法に比べ、欠落する情報をなくすことができ、検出精度を高めることが可能である。これにより高い伝送特性を得ることができる。
【0016】
(5)また、本発明の無線制御装置において、前記各送信アンテナにおける伝搬路のゲインは、他の送信アンテナで送信される周波数領域の信号について、前記クリッピング処理が行なわれるか否かの判断結果に基づいて補正されることを特徴としている。
【0017】
このように、各送信アンテナにおける伝搬路のゲインは、他の送信アンテナで送信される周波数領域の信号について、クリッピング処理が行なわれるか否かの判断結果に基づいて補正されるので、無線制御装置は、欠落する情報をなくすことができ、検出精度を高めることが可能である。これにより高い伝送特性を得ることができる。
【0018】
(6)また、本発明の無線制御装置において、前記無線端末装置が複数の送信アンテナを備える場合、前記各送信アンテナにおける共通のクリッピング情報を決定することを特徴としている。
【0019】
このように、無線制御装置は、無線端末装置が複数の送信アンテナを備える場合、各送信アンテナにおける共通のクリッピング情報を決定するので、無線端末装置がマルチアンテナを使用する場合において、無線端末装置からの送信信号に対するクリッピングが可能となり、周波数利用効率改善を行なうことができる。
【0020】
(7)また、本発明の無線制御装置において、前記クリッピング情報は、クリッピング処理をする周波数領域とクリッピング処理をしない周波数領域との割合を示すクリッピング率を示す情報、またはクリッピング処理を行なう周波数位置を示す情報の少なくとも一方を含むことを特徴としている。
【0021】
このように、クリッピング情報が、クリッピング処理をする周波数領域とクリッピング処理をしない周波数領域との割合を示すクリッピング率を示す情報、またはクリッピング処理を行なう周波数位置を示す情報の少なくとも一方を含むので、無線制御装置は、柔軟に制御することが可能となる。
【0022】
(8)また、本発明の無線制御装置において、前記クリッピング情報は、前記無線端末装置の通信路容量に基づいて決定されることを特徴としている。
【0023】
このように、クリッピング情報が、無線端末装置の通信路容量に基づいて決定されるので、無線制御装置は、無線端末装置がマルチアンテナを使用する場合において、無線端末装置からの送信信号に対するクリッピングが可能となり、周波数利用効率改善を行なうことができる。
【0024】
(9)また、本発明の無線端末装置は、周波数領域の一部のスペクトルを送信しないクリッピング処理を行なってデータを送受信する無線通信システムに適用される無線端末装置であって、通信相手である無線制御装置から、クリッピング処理を行なう周波数領域を示すクリッピング情報および周波数割り当てを示す周波数割り当て情報を受信し、前記受信したクリッピング情報および周波数割り当て情報に基づいて、周波数領域に対してクリッピング処理を行ない、前記クリッピング処理を行なった周波数信号を時間領域の信号に変換して、前記無線制御装置に対して送信することを特徴としている。
【0025】
このように、無線端末装置が、受信したクリッピング情報および周波数割り当て情報に基づいて、周波数領域に対してクリッピング処理を行なうので、無線制御装置は、無線端末装置がマルチアンテナを使用する場合において、無線端末装置からの送信信号に対するクリッピングが可能となり、周波数利用効率改善を行なうことができる。
【0026】
(10)また、本発明の無線通信システムは、上記(1)から(8)のいずれかに記載の無線制御装置と、上記(9)記載の無線端末装置と、から構成されることを特徴としている。
【0027】
このように、無線通信システムが、上記(1)から(8)のいずれかに記載の無線制御装置と、上記(9)記載の無線端末装置と、から構成されるので、無線端末装置がマルチアンテナを使用する場合において、無線端末装置からの送信信号に対するクリッピングが可能となり、周波数利用効率改善を行なうことができる。
【0028】
(11)また、本発明の無線制御装置の制御プログラムは、周波数領域の一部のスペクトルを送信しないクリッピング処理を行なってデータを送受信する無線通信システムに適用される無線制御装置の制御プログラムであって、通信相手である無線端末装置との間の伝搬路情報に基づいて、前記クリッピング処理を行なう周波数領域を示すクリッピング情報を生成する処理と、前記無線端末装置に対する周波数割り当てを決定して周波数割り当て情報を生成する処理と、前記クリッピング情報および前記周波数割り当て情報を前記無線端末装置に対して通知する処理と、の一連の処理を、コンピュータに読み取り可能および実行可能にコマンド化したことを特徴としている。
【0029】
このように、無線制御装置は、クリッピング情報および周波数割り当て情報を無線端末装置に対して通知するので、無線端末装置がマルチアンテナを使用する場合において、無線端末装置からの送信信号に対するクリッピングが可能となり、周波数利用効率改善を行なうことができる。
【0030】
(12)また、本発明の無線端末装置の制御プログラムは、周波数領域の一部のスペクトルを送信しないクリッピング処理を行なってデータを送受信する無線通信システムに適用される無線端末装置の制御プログラムであって、通信相手である無線制御装置から、クリッピング処理を行なう周波数領域を示すクリッピング情報および周波数割り当てを示す周波数割り当て情報を受信する処理と、前記受信したクリッピング情報および周波数割り当て情報に基づいて、周波数領域に対してクリッピング処理を行なう処理と、前記クリッピング処理を行なった周波数信号を時間領域の信号に変換して、前記無線制御装置に対して送信する処理と、の一連の処理を、コンピュータに読み取り可能および実行可能にコマンド化したことを特徴としている。
【0031】
このように、無線端末装置が、受信したクリッピング情報および周波数割り当て情報に基づいて、周波数領域に対してクリッピング処理を行なうので、無線制御装置は、無線端末装置がマルチアンテナを使用する場合において、無線端末装置からの送信信号に対するクリッピングが可能となり、周波数利用効率改善を行なうことができる。
【0032】
(13)また、本発明の集積回路は、無線制御装置に実装されることにより、前記無線制御装置に複数の機能を発揮させる集積回路であって、通信相手である無線端末装置との間の伝搬路情報に基づいて、前記クリッピング処理を行なう周波数領域を示すクリッピング情報を生成する機能と、前記無線端末装置に対する周波数割り当てを決定して周波数割り当て情報を生成する機能と、前記クリッピング情報および前記周波数割り当て情報を前記無線端末装置に対して通知する機能と、の一連の機能を、前記無線制御装置に発揮させることを特徴としている。
【0033】
このように、無線制御装置は、クリッピング情報および周波数割り当て情報を無線端末装置に対して通知するので、第1の通信装置がマルチアンテナを使用する場合において、第1の通信装置からの送信信号に対するクリッピングが可能となり、周波数利用効率改善を行なうことができる。
【0034】
(14)また、本発明の集積回路は、無線端末装置に実装されることにより、前記無線端末装置に複数の機能を発揮させる集積回路であって、通信相手である無線制御装置から、クリッピング処理を行なう周波数領域を示すクリッピング情報および周波数割り当てを示す周波数割り当て情報を受信する機能と、前記受信したクリッピング情報および周波数割り当て情報に基づいて、周波数領域に対してクリッピング処理を行なう機能と、前記クリッピング処理を行なった周波数信号を時間領域の信号に変換して、前記無線制御装置に対して送信する機能と、の一連の機能を、前記無線端末装置に発揮させることを特徴としている。
【0035】
このように、受信したクリッピング情報および周波数割り当て情報に基づいて、周波数領域に対してクリッピング処理を行なうので、無線制御装置は、無線端末装置がマルチアンテナを使用する場合において、無線端末装置からの送信信号に対するクリッピングが可能となり、周波数利用効率改善を行なうことができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明により、マルチアンテナ技術にスペクトル整形を適用することができる。これにより、基地局装置は、移動局装置がマルチアンテナを使用する場合において、移動局装置からの送信信号に対するクリッピングにより、周波数利用効率改善を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の第1の実施形態において、マルチアンテナ技術をスペクトルクリッピング技術に適用する場合の概念を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る移動局装置の基本構成の一例を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る基地局装置の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る制御部313の一例を示すブロック図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る移動局装置の一例を示すブロック図である。
【図6】LTE-Aでのプレコーディング行列を示す表である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る制御部313の一例を示すブロック図である。
【図8】本発明の第3の実施形態において、MIMOにおける各送信アンテナの周波数信号の概念の一例を示す図である。
【図9】本発明の第3の実施形態に係る移動局装置の一例を示すブロック図である。
【図10】本発明の第3の実施形態に係る基地局装置の一例を示すブロック図である。
【図11】本発明の第3の実施形態に係る制御部913の構成例を示すブロック図である。
【図12A】本発明の第4の実施形態において、各送信アンテナからの信号が独立に設定されている場合を示す図である。
【図12B】本発明の第4の実施形態において、どの周波数においても少なくとも一方のアンテナからの信号が割り当てられている場合を示す図である。
【図12C】本発明の第4の実施形態において、クリッピング率を制限し、かつ少なくとも一方の周波数に信号を割り当てるよう制御した場合を示す図である。
【図13】本発明の第4の実施形態に係る制御部313の構成の一例を示すブロック図である。
【図14】本発明の第4の実施形態に係る制御部313の構成の一例を示すブロック図である。
【図15】非特許文献1で開示されたスペクトルクリッピングの概念を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態では、スペクトル整形に含まれるクリッピング処理を対象にしており、送信される周波数信号(クリッピングされていない周波数信号)への電力配分に関しては特に記載しないが、電力配分を行なう処理を含むスペクトル整形をした場合も本発明に含まれる。
【0039】
[第1の実施形態](2x1送信ダイバーシチ)
本実施形態は、クリッピングする周波数を送信に使用する送信アンテナ毎に共通に決定する方法について述べる。
【0040】
図1は、本発明の第1の実施形態において、マルチアンテナ技術をスペクトルクリッピング技術に適用する場合の概念を示す図である。図1では、移動局装置に割り当てられた離散周波数(サブキャリア)が6ポイントであり、それぞれ、低い周波数からC1、C2、C3、C4、C5、C6であるものとする。移動局装置は、第1の送信アンテナから周波数領域の送信信号101-1、第2の送信アンテナから周波数領域の送信信号101-2を送信する。ここでは、同図に示されるように、各送信アンテナで同一のクリッピングを施すものとする。ここでは、信号が割り当てられたスペクトルがC1、C2、C3、C4、C6であり、C5はクリッピングされている。また、各送信アンテナに配置された信号は同一のものである。送信に使用するアンテナ数を2、基地局装置で受信に使用するアンテナ数を1とすると、k番目の離散周波数における受信信号は、次式(1)で表される。
【数1】

【0041】
式(1)において、S(k)は、k番目の離散周波数における複素数で表される送信信号、R(k)はk番目の離散周波数における複素数で表される受信信号、H(k)は、移動局装置の第1のアンテナから基地局装置のアンテナの間の複素数で表される伝搬路特性、H(k)は、移動局装置の第1のアンテナから基地局装置のアンテナの間の複素数で表される伝搬路特性、η(k)は隣接セルからの干渉なども含む複素数で表される雑音である。また、1/√2は、全送信アンテナからの送信電力の合計が一定となるよう正規化するための値である。式(1)から、この場合、送信信号に対する等価的な伝搬路特性は、H(k)+H(k)である。したがって、この等価的な伝搬路特性を用いてクリッピング情報と周波数割当情報を決定する。式(1)のように受信信号が表される場合、送信信号の電力利得G(k)は式(2)で表される。
【数2】

【0042】
式(2)に基づいて、伝送するクリッピング情報を決定する。まず、システム帯域に含まれるすべての離散周波数で式(2)を算出する。その後、式(2)で表される周波数割当とクリッピング率を決定する。例えば、周波数割当については、複数の移動局装置でシステム帯域全体を共有する際に一般的に利用されるプロポーショナルフェアネス(PF:Proportional Fairness)や、Max CIR(Carrier to Interference power Ratio、Max SINRやMax SNRなどと表記されてもよい)、ラウンドロビン(RR:Round Robin)などの割当を用いてよい。
【0043】
また、クリッピング率については、割り当てられた周波数の中から、式(2)の値がある閾値以下の場合に割り当てないなどといった方法や、システムで予め定義されたクリッピング率、または変調方式と符号化率の組み合わせ(MCS:Modulation and Coding Schemeなどと呼ばれることもある)に基づいて暗黙的にクリッピング率を定義している場合には、予め定義されたクリッピング率を用いてもよい。例えば、符号化率1/2のQPSKの場合、クリッピング率が20%と定義されていたとする。まず、PFなどの割当法で移動局装置の割当周波数を決定した後、割り当てられた周波数でさらに式(2)を小さい順に20%だけ割当周波数から外し、最終的な割当周波数として決定する。また、クリッピングする周波数位置などを用いてもよい。また、非特許文献1に開示されている注水定理を用いる方法の場合には、送信電力の配分に関する情報をさらに通知してもよく、これは本発明に開示された如何なる実施形態でも同様である。
【0044】
図2は、本発明の第1の実施形態に係る移動局装置の基本構成の一例を示すブロック図である。ここでは、移動局装置の送受信アンテナ数を2として説明する。勿論、移動局装置の送受信アンテナ数は限定されない。また、ここでは、空間的に送信されるストリーム数を1として説明する。まず、移動局装置は基地局装置から下り回線で通知された制御信号をアンテナ201-1、201-2(アンテナ201-1、201-2を合わせてアンテナ201と表す。)で受信し、無線受信部203-1、203-2により、ベースバンド信号にダウンコンバートし、A/D(Analog to Digital)変換する。得られたディジタル信号は、合成部205により最大比合成などの受信信号の合成が行なわれる。次に、合成された受信信号は制御信号検出部207により、参照信号の系列に関する情報、クリッピング率に関する情報、周波数割当情報などを検出する。
【0045】
送信する情報ビット列は、データ信号生成部209により、送信するデータの周波数信号を生成する。データ信号生成部209では、情報ビット列が誤り訂正符号化され、QPSK(Quaternary Phase Shift Keying)や16QAM(16-ary Quadrature Amplitude Modulation)などの変調シンボルが生成され、DFT(Discrete Fourier Transform)により周波数信号に変換される。次に、参照信号に関する情報に基づいて参照信号生成部211により各送信アンテナ伝搬路推定用の参照信号(RS:Reference Signal)が生成され、参照信号多重部213においてデータ信号と多重される。レイヤマッピング部215において各アンテナ201に信号を割り当てる。このとき、空間多重される信号数(ランク数)が1であれば、そのまま各アンテナ201にコピーされ、ランク数が2であれば、各アンテナ201にS/P(Serial to Parallel)変換やブロックインターリーブなどの方法を用いて異なる送信信号が割り当てられる。本実施形態では、同一の信号を2つのアンテナ201から送信することを想定するため、ランク1で伝送されるものとする。
【0046】
次に、スペクトルクリッピング部217-1、217-2において、通知された各アンテナ201のクリッピング情報に応じて、周波数信号の一部をクリップ(削除)する。なお、このクリッピング情報は、クリッピングする周波数位置情報でもよいし、クリッピング率(例えば、10%など)でもよい。また、通知の際に、変調方式と符号化率の組み合わせ(MCS:Modulation and Coding Schemes)とクリッピング率を1対1に対応付けることで暗黙的に通知してもよい。この場合、通知されたクリッピング情報は、MCSから判断することができる。その後、各アンテナ201でクリッピングが施された周波数信号は、周波数割当部219-1、219-2において通知された周波数割当情報に基づいて周波数に配置される。次に、サウンディング参照信号多重部221-1、221-2により各アンテナ201からアンテナ301への伝搬路特性を把握するためのサウンディング参照信号が多重され、IFFT(Inverse Fast Fourier Transform)部223-1、223-2において時間領域の信号に変換される。時間領域に変換された送信信号はCP(Cyclic Prefix)挿入部225-1、225-2においてCPを挿入され、無線送信部227-1、227-2においてD/A(Digital to Analog)変換され、無線周波数にアップコンバートされ、アンテナ201-1、201-2から送信される。
【0047】
図3は、本発明の第1の実施形態に係る基地局装置の構成を示すブロック図である。ここでは、アンテナ数を1本とした場合を一例として示している。アンテナ301で受信した受信信号は、無線受信部303で受信され、CP除去部305で受信信号からCPが除去される。受信信号はFFT部307により周波数信号に変換される。周波数信号に変換された受信信号は、まずサウンディング参照信号分離部309においてサウンディング参照信号が分離される。分離されたサウンディング参照信号は、チャネルサウンディング部311において各アンテナ201からアンテナ301までの受信状態(例えば、受信SINRなど)を推定し、推定された受信状態、推定された伝搬路特性は制御部313に入力される。制御部313では、各アンテナ201のクリッピング情報や周波数割当を決定する。決定された制御情報は、制御信号生成部315により制御信号に変換され、無線送信部317によりD/A変換、アップコンバージョンが施され、アンテナ301から送信される。
【0048】
次に、サウンディング参照信号を分離された受信信号は、参照信号分離部319により、受信信号から参照信号が除去される。除去された参照信号は、伝搬路特性・雑音電力推定部321により各アンテナ201からの伝搬路特性および隣接セルからの干渉を含む雑音電力が推定される。その後、伝搬路特性・雑音電力推定部321により推定された伝搬路特性は、ゼロ挿入部323により移動局装置側でクリッピングされた周波数にゼロを挿入することで等価伝搬路を算出する。得られた等価伝搬路は、等化部325および受信信号レプリカ生成部327に入力される。
【0049】
次に、参照信号分離部319から出力された受信信号は、信号キャンセル部329において、受信信号レプリカ生成部327から入力された受信信号レプリカをキャンセルする。ただし、繰り返し1回目では何もキャンセルされない。次に、等化部325において受信信号を等化し、周波数デマッピング部331により割り当てていた周波数から希望信号を周波数領域で抽出する。その後、IDFT(Inverse Discrete Fourier Transform)部333により時間信号に変換し、復調部335により対数尤度比(LLR:Log Likelihood Ratio)を得る。そして、復号部337において誤り訂正処理が行なわれる。このとき、復号部337は、情報ビットのLLRと、符号ビットのLLRを出力する。
【0050】
符号ビットのLLRは、送信信号レプリカ生成部339に入力され、送信信号のソフトレプリカ(軟推定)が生成される。その後、DFT部341に入力され、軟推定は周波数信号に変換される。この例では2本のアンテナ201で送信して1本のアンテナ301で受信するので、2つの同一の(コピーされた)ソフトレプリカが出力される。そして、DFT部341により周波数領域のソフトレプリカに変換され、受信信号レプリカ生成部327においてゼロ挿入部323から出力された等価伝搬路を乗算することで用いて受信信号レプリカが算出される。それを信号キャンセル部329に入力し、上述の処理を繰り返す。これを任意の回数繰り返し、復号部337から出力された情報ビットのLLRを硬判定することで復号ビット列が得られる。次に、制御部313について説明する。
【0051】
図4は、本発明の第1の実施形態に係る制御部313の一例を示すブロック図である。制御部では、推定された伝搬路特性から式(2)によりスケジューリング部401により周波数割当を決定する。その後、クリッピング情報決定部403によりアンテナ201毎にクリッピング情報を生成し、周波数割当決定部405で最終的な周波数割当を決定する。このように得られたクリッピング情報と周波数割当を制御情報生成部407により制御情報を生成し、制御信号生成部315に入力する。制御信号生成部315では、システムに応じて設定された方法により多重・変調などの制御信号の生成が行なわれ、無線送信部317に入力される。このように、本実施形態では、マルチアンテナに適用する場合の複合された等価伝搬路に基づいてクリッピング情報や周波数割当を決定することで、クリッピングをマルチアンテナ技術にも適用できる。
【0052】
[第2の実施形態](プレコーディングをする場合)
本実施形態では、プレコーディングと呼ばれるビームフォーミングが適用される場合の例について説明する。
【0053】
図5は、本発明の第2の実施形態に係る移動局装置の一例を示すブロック図である。図2と比較して、レイヤマッピング部215がプレコーディング部501に変更されている。プレコーディング部501において予め定義されたプレコーディング行列が乗算される。
【0054】
図6は、LTE-Aでのプレコーディング行列を示す表である。ここでは、送信アンテナ数が2の場合を一例として示している。Number of layers υがレイヤ数であり、1の場合は、2本のアンテナ201を用いて1ストリーム、2の場合は2ストリームの信号を送信する。Codebook indexは、移動局装置にどの行列を使用するかを通知する際のインデックスである。ここでは、ランク2は後述する実施形態で説明するので、ここではランク1のプレコーディング行列を使用するものとして説明する。ランク1では、1ストリームの送信信号に対して図6で表されるプレコーディング行列wを乗算して送信するため、k番目の周波数における受信信号は、式(3)のように表される。
【数3】

【0055】
式(3)において、S(k)は、k番目の周波数領域の複素数で表される送信信号の振幅、η(k)は隣接セルからの干渉を含む雑音、R(k)は受信信号の振幅、wは図6で表されるレイヤ数1のプレコーディング行列から選択されたいずれか1つの行列である。また、h(k)は1×2で表される伝搬路行列であり、式(4)で表される。
【数4】

【0056】
ただし、h(k)は第1のアンテナ201−1からアンテナ301へのk番目の周波数の複素数で表される伝搬路特性、h(k)はk番目の周波数の複素数で表される第2のアンテナ201からアンテナ301への伝搬路特性である。したがって、このように表されるk番目の周波数の電力利得は、式(5)のように表される。
【数5】

【0057】
式(5)において、P(k)はk番目の周波数における実数で表される送信信号に対する電力利得を表す。式(5)に基づいて、第1の実施形態と同様の方法を用いてクリッピング周波数や周波数割当を決定する。受信装置(基地局装置)の構成は、図3と同一であるため、説明を省略する。このように、プレコーディングを適用した場合にも本発明は適用可能である。また、ここでは簡単のため、受信アンテナ数を1本として説明したが、受信するアンテナ数が2本以上の場合は、最大比合成(MRC:Maximum Ratio Combining)などの受信ダイバーシチ技術を用いて受信すればよく、受信アンテナ数は限定されない。また、制御情報の送信に関して、アンテナ201が2本以上の場合は、時空間符号化(STC:Space Time Coding、STBC(Space Time Block Code)やSFBC(Space Frequency Block Code)、などの)や循環遅延ダイバーシチ(CDD:Cyclic Delay Diversity)、時間切替送信ダイバーシチ(TSTD:Time Switching Transmit Diversity)、周波数切替送信ダイバーシチ(FSTD:Frequency Switching Diversity)、アンテナ選択ダイバーシチなどの送信ダイバーシチ技術を用いてもよいし、いずれかのアンテナ201から常に送信するような方法を用いてもよい。
【0058】
図7は、本発明の第2の実施形態に係る制御部313の一例を示すブロック図である。基本的な構成は図4と同じだが、プレコーディング行列決定部601が新たに追加されている。プレコーディング行列決定部601は、チャネルサウンディング部311から出力された各アンテナ201からアンテナ301までの空間相関などや伝搬路特性の伝搬路状態に基づいて、最適なプレコーディング行列を選択する。選択されたプレコーディング行列を基に、スケジューリング部401においてスケジューリングが行なわれる。このように、プレコーディングを用いた場合でも、本発明を適用することができる。
【0059】
[第3の実施形態](MIMOの場合)
本実施形態では、MIMOの場合について述べる。ここでは、アンテナ201を2本を用いてランク2で送信する場合で説明する。
【0060】
図8は、本発明の第3の実施形態において、MIMOにおける各アンテナ201の周波数信号の概念の一例を示す図である。図8では、図1と異なり、送信信号701-1と送信信号701-2は異なる信号である。
【0061】
図9は、本発明の第3の実施形態に係る移動局装置の一例を示すブロック図である。ここでは、コードワードと呼ばれる情報ビット系列が1つの場合について説明する。この場合2ストリームを送信するために、S/P(Serial to Parallel)部801において直並列変換する。次に、参照信号多重部803-1、803-2において、各ストリームを復調するための参照信号が多重される。参照信号は、受信装置(基地局装置)において分離できなければならないため、直交符号など、サイクリックシフトや異なる符号がそれぞれに割り当てられる。その後、プレコーディング部501において、通知されたプレコーディング情報に基づいてランク2のプレコーディング行列が乗算される。図6の場合は、υが2の場合の行列(同図では単位行列を1/√2倍したものが選択される。ただし、他の移動通信システムで、他のランク2の行列が定義されている場合には、それを選択することができる。
【0062】
図10は、本発明の第3の実施形態に係る基地局装置の一例を示すブロック図である。ここでは、基地局装置のアンテナ数を2とし、コードワード数1、ランク2の信号を検出する構成を一例として示している。アンテナ901-1、901-2(アンテナ901-1、901-2を合わせてアンテナ901と表す。)で受信された信号は、無線受信部903-1、903-2でベースバンド信号にダウンコンバートされ、CP除去部905-1、905-2により、CPが受信信号から除去され、FFT部907-1、907-2において周波数信号に変換され、サウンディング参照信号分離部909-1、909-2においてサウンディング参照信号が分離される。分離されたサウンディング参照信号は、チャネルサウンディング部911により、伝搬路の状態を推定する。推定された伝搬路行列は、式(6)のように行列で表現することができる。
【数6】

【0063】
nm(k)は、移動局装置のm番目のアンテナ201から基地局装置のn番目のアンテナ901の間のk番目の離散周波数における伝搬路行列であり、一般的に、伝搬路行列は、各アンテナ901のインデックスが行列の列方向、各アンテナ201のインデックスが行列の行方向の要素となるよう構成される。この伝搬路行列が制御部913に入力される。
【0064】
図11は、本発明の第3の実施形態に係る制御部913の構成例を示すブロック図である。制御部913に入力された伝搬路特性は、プレコーディング行列決定部1001により、プレコーディング行列が決定され、通信路容量算出部1003に入力される。通信路容量算出部1003では、式(7)のように各周波数(複数の離散周波数でブロック化されたリソースブロック単位でもよい)における通信路容量を算出する。
【数7】

【0065】
ただし、uはリソースブロックのインデックス、Kはリソースブロックに含まれる離散周波数ポイント数、SINRは受信信号対干渉雑音電力比、detは行列式を表す。これは、各リソースブロックの平均通信路容量を表している。もちろん、ここでは厳密な定義に基づく通信路容量を一例として挙げたが、通信路容量と同じような相関関係を有する定量値を用いた場合でも、本発明に含まれる。その後、各リソースブロックの平均通信路容量は、スケジューリング部1005に入力され、クリッピング情報決定部1007に入力される。得られた情報から、周波数割当決定部1009は、周波数割当を決定する。このようにして決定された周波数割当情報とクリッピング情報は、制御情報生成部1011により制御情報が生成され、制御信号生成部915に入力される。
【0066】
図10に戻り、制御部913より出力された制御情報から、制御信号生成部915は、システムに応じた制御信号を生成する。無線送信部917は、制御信号を無線信号に変換する。その後、無線信号は、アンテナ901-1、901-2から送信される。一方、サウンディング参照信号が分離された受信信号は、参照信号分離部919-1、919-2において、各レイヤの参照信号を分離し、伝搬路特性・雑音電力推定部921により、各レイヤの各アンテナ901における伝搬路特性、および各アンテナ901における雑音電力を推定する。得られた伝搬路特性は、ゼロ挿入部923により、クリッピングされた周波数の伝搬路特性にゼロを挿入する。その後、参照信号が分離された受信信号は、信号キャンセル部925により、受信信号レプリカ生成部927から入力される受信信号レプリカを減算する。ただし、1回目の処理では何もキャンセルされない。
【0067】
次に、受信信号は、レイヤ分離・等化部929において、ゼロ挿入部923により計算された等価的な伝搬路特性と雑音電力を用いてレイヤの分離と受信信号から伝搬路による歪みを除去する等化処理が行なわれる。続いて受信信号は、周波数デマッピング部931-1、931-2により、割当周波数に基づいて、各レイヤの信号を元の離散周波数の順に戻される。また、受信信号は、IDFT部933-1、933-2により時間信号に変換され、P/S(Parallel to Serial)部935により、時間領域に変換された受信信号の並直列変換により元に戻される。その後、復調部937は符号ビットのLLRを算出し、復号部939は誤り訂正を行なう。
【0068】
復号部939から得られた符号ビットのLLRは、送信信号レプリカ生成部941により、送信信号の軟推定(ソフトレプリカとも称される)が算出され、S/P部943により再びレイヤ毎の信号に直並列変換される。次に、DFT部945-1、945-2により周波数領域の軟推定値(ソフトレプリカ)が生成され、受信信号レプリカ生成部927において、ゼロ挿入部923から出力された等価的な伝搬路特性を乗算することで受信信号レプリカが生成される。得られた受信信号レプリカは、信号キャンセル部925に再び入力される。以上の処理を任意の回数(所定の回数、誤りがなくなるまで)繰り返し、最後に、復号部939から出力される情報ビットのLLRを硬判定することで復号ビットを得る。
【0069】
このような構成をとることで、クリッピング技術をMIMO技術にも適用できる。なお、本発明の本質は、図11に示した制御部913の処理であり、通信路容量からクリッピング情報を決定することである。なお、第1〜3の実施形態は、ランクアダプテーションなどの適応制御により組み合わせて適応的に選択することも可能であり、これらの組み合わせも本発明に含まれる。
【0070】
[第4の実施形態](各アンテナ201で異なるクリッピングを施す場合)
本実施形態では、アンテナ201毎に独立にクリッピングに関する情報と周波数割当に関する情報を決定するため、第1から第3の実施形態のように、複数のアンテナ201で同じクリッピングに関する情報と周波数割当に関する情報を、送信ダイバーシチゲイン(電力利得あるいはビームフォーミングゲイン)や通信路容量から決定する方法に比べ、高い伝送特性を得ることができる。図12A〜図12Cに、本発明における各アンテナ201からの周波数軸の送信信号の一例を示す。まず、図12A〜図12Cにおいては、ここではランク1伝送を仮定しているため、各アンテナ201の周波数信号の、元のスペクトルは全く同じもの(同一の送信信号)であるが、クリッピングされる周波数が異なることが、第1から第3の実施形態とは異なる。
【0071】
図12Aは、本発明の第4の実施形態において、各アンテナ201からの信号が独立に設定されている場合を示す図である。ここでは、送信信号1101-1、1101-2は、それぞれ独立にクリッピングされている。周波数C1、C3、C6は同一の信号が送信されており、周波数C4は両方のアンテナ201でクリッピングされている。また、周波数C2、C5は一方のアンテナ201から送信されている。
【0072】
図12Bは、本発明の第4の実施形態において、どの周波数においても少なくとも一方のアンテナ201からの信号が割り当てられている場合を示す図である。図12Aと異なり、送信信号1103-2に示されるように、C4にも送信信号が配置されている。これにより、アンテナ301で欠落する情報はないため、検出精度を高めることが可能である。
【0073】
図12Cは、本発明の第4の実施形態において、クリッピング率を制限し、かつ少なくとも一方の周波数に信号を割り当てるよう制御した場合を示す図である。送信信号1105-1、1105-2は、ともに1/6=16.666・・・つまり、16.7%というクリッピング率に制限した上で、周波数C2と周波数C4でそれぞれクリッピングしている。このように、本実施形態ではクリッピング率を制限し、かつ少なくとも一方の周波数に信号を割り当てることを実現するようにアンテナ201毎に異なるクリッピングを施す。
【0074】
図13は、本発明の第4の実施形態に係る制御部313の構成の一例を示すブロック図である。ここでは、ランク1伝送を一例とする。なお、アンテナ201毎に異なるクリッピングを前提とするため、ランク1の場合、プレコーディングを適用することは困難だが、ランク数が2以上の場合にはレイヤ毎に独立にクリッピングを施すという形で本実施形態を適用することが可能であるため、プレコーディング技術を適用するか否かは本発明を限定しない。また、基地局装置の構成は図3と同様の構成を用いてよい。ただし、制御部313の構成が異なる。図13において、制御部313は、スケジューリング部1201において、システム帯域内における割当周波数位置を決定し、決定された周波数位置における各アンテナ201からの伝搬路利得をゲイン算出部1203において算出する。ゲイン算出部1203では、式(8)のように、伝搬路のゲインを算出する。
【数8】

【0075】
式(8)において、F(k)、F(k)はそれぞれ、アンテナ201−1からアンテナ301のk番目の周波数におけるゲイン、アンテナ201−2から受信アンテナのk番目の周波数におけるゲインを表す。また、h(k)、h(k)はそれぞれ、アンテナ201−1から受信アンテナのk番目の周波数における伝搬路特性、アンテナ201−2から受信アンテナのk番目の周波数における伝搬路特性を表す。これに基づき、クリッピング情報決定部1205-1、1205-2においてそれぞれクリッピング情報を決定し、周波数割当決定部1207-1、1207-2において割当周波数を決定する。この周波数割当決定部1207-1、1207-2では、クリッピング後の信号を割り当てる周波数を表している。最後に、周波数割当情報とクリッピング情報は制御情報生成部1209に入力され、これにより制御情報生成部1209は制御情報を生成し、制御情報を制御信号生成部315に入力する。本発明は、このように複数の送信アンテナ毎あるいは複数のレイヤ(空間多重)毎に異なるクリッピングを施すことを特徴としている。なお、受信アンテナが複数存在する場合には、式(9)の値をゲインとする。
【数9】

【0076】
ただし、hnm(k)は、アンテナ(レイヤ)201−mからアンテナ301−nにおける伝搬路特性を表している。一般的には、受信アンテナ数が増えれば、ゲインはその絶対値の2乗を受信アンテナ数分だけ加算した総和で表される。移動局装置の構成例は、図5と同一であり、スペクトルクリッピング部217-1、217-2のクリッピングされる周波数位置が互いに異なる。
【0077】
このように、本発明ではクリッピング情報決定部1205-1、1205-2をアンテナ201の数だけ具備し、それぞれ独立にクリッピング情報を決定することで、伝送特性が高まる。勿論、本発明はクリッピング情報をアンテナ201毎に決定することを本質とするため、受信アンテナ数によって発明の範囲が制限されることはない。また、クリッピング情報についてはゲインの低い周波数を設定してもよいし、予め定義された方法のいずれかから1つを選択する方法を用いてもよい。
【0078】
次に、図12Bのように、他のアンテナ201のクリッピング情報を考慮して割り当てる場合について説明する。基本的には、以下の式(10)で表される値を用いてゲインに補正を与える。
【数10】

【0079】
式(10)において、F(k)はT番目のアンテナ201から基地局装置の間のk番目の周波数において推定されたゲインを表す。また、βは任意に設定できる実数を表す。ここで、少なくとも1つのアンテナ201でk番目の周波数でクリッピングされるアンテナ201が他にある場合にはβは1より大きく、どのアンテナ201もクリッピングされないと仮想的に算出された場合には、βは1である。伝搬路の電力利得の低い周波数をクリッピングするというルールに基づいた場合、βの値を大きくすればクリッピングされにくくなり、1に近くすれば独立にクリッピングする方法に近づく。例えば、β=2の場合、P(k)の値は実際の伝搬路の電力利得の2倍となるため、このP(k)を仮想的な伝搬路とみなして再度クリッピングする周波数を決定する。さらに、βを制御することで、同一周波数におけるクリッピング可能な送信アンテナ数に対しても制御することができる。例えば、式(11)のように設定する。なお、βは離散周波数(サブキャリア)毎に設定されてもよいし、全サブキャリアで同一の値としてもよい。
【数11】

【0080】
式(11)において、nは、k番目の周波数でクリッピングが施された送信アンテナ数である。このように設定することも可能である。この様な方法も一例として考えられる。さらに、βが1の場合には仮想的にクリッピングされると判断されなかった周波数と記載したが、同様の概念を実現する方法であれば1である必要はない。
【0081】
図14は、本発明の第4の実施形態に係る制御部313の構成の一例を示すブロック図である。ゲイン算出部1203から出力された各アンテナ201のゲインは、ゲイン補正部1301-1、1301-2において、いずれか一方のアンテナ201でクリッピングが見込まれる場合には、βを乗算し、クリッピングが施されないと判断された場合には、何もしないという処理を行なう。これにより、図12Bのような割当も実現することが可能である。
【0082】
さらに、クリッピング率を制限する図12Cのような方法では、クリッピングにより生じるシンボル間干渉(ISI:Inter-Symbol Interference)の量やEXIT(Extrinsic Information Transfer)解析、相互情報量などに基づいてクリッピング率を制限するなど、さまざまな方法を用いてよい。本発明の本質は、クリッピングする周波数をアンテナ201間あるいは複数の信号を空間多重する場合のレイヤ間で異なるように設定する方法であり、このような方法を実現する手段は全て本発明に含まれる。勿論、送受信アンテナ数も限定されない。また、これらはOFDMなどのマルチキャリア伝送に適用してもよい。また、第1から第4の実施形態は基地局装置の制御部が行なう態様を示したが、勿論、移動局装置でも可能であるため、このような場合も本発明に含まれる。また、クリッピング率については、本実施形態では、クリッピング率が最も適した制御であるが、クリッピングする周波数位置など、周波数割当とクリッピングする周波数が一意に決定できれば如何なる方法で決定しても如何なる通知方法で通知してもよい。
【0083】
本発明に関わる移動局装置および基地局装置で動作するプログラムは、本発明に関わる上記実施形態の機能を実現するように、CPU等を制御するプログラム(コンピュータを機能させるプログラム)である。そして、これら装置で取り扱われる情報は、その処理時に一時的にRAMに蓄積され、その後、各種ROMやHDDに格納され、必要に応じてCPUによって読み出し、修正・書き込みが行なわれる。プログラムを格納する記録媒体としては、半導体媒体(例えば、ROM、不揮発性メモリカード等)、光記録媒体(例えば、DVD、MO、MD、CD、BD等)、磁気記録媒体(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスク等)等のいずれであってもよい。また、ロードしたプログラムを実行することにより、上述した実施形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムの指示に基づき、オペレーティングシステムあるいは他のアプリケーションプログラム等と共同して処理することにより、本発明の機能が実現される場合もある。
【0084】
また市場に流通させる場合には、可搬型の記録媒体にプログラムを格納して流通させたり、インターネット等のネットワークを介して接続されたサーバコンピュータに転送したりすることができる。この場合、サーバコンピュータの記憶装置も本発明に含まれる。また、上述した実施形態における移動局装置および基地局装置の一部、または全部を典型的には集積回路であるLSIとして実現してもよい。移動局装置および基地局装置の各機能ブロックは個別にチップ化してもよいし、一部、または全部を集積してチップ化してもよい。また、集積回路化の手法はLSIに限らず専用回路、または汎用プロセッサで実現しても良い。また、半導体技術の進歩によりLSIに代替する集積回路化の技術が出現した場合、当該技術による集積回路を用いることも可能である。以上、この発明の実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も特許請求の範囲に含まれる。本発明は、携帯電話装置を移動局装置とする移動体通信システムに用いて好適であるが、これに限定されない。
【符号の説明】
【0085】
1 元のシングルキャリアスペクトル
3 送信信号
5 受信信号
7 推定信号
101-1、101-2 送信信号
201-1、201-2、201 アンテナ
203-1、203-2 無線受信部
205 合成部
207 制御信号検出部
209 データ信号生成部
211 参照信号生成部
213 参照信号多重部
215 レイヤマッピング部
217-1、217-2 スペクトルクリッピング部
219-1、219-2 周波数割当部
221 サウンディング参照信号多重部
223-1、223-2 IFFT部
225-1、225-2 CP挿入部
227-1、227-2 無線送信部
301 アンテナ
303 無線受信部
305 CP除去部
307 FFT部
309 サウンディング参照信号分離部
311 チャネルサウンディング部
313 制御部
315 制御信号生成部
317 無線送信部
319 参照信号分離部
321 伝搬路特性・雑音電力推定部
323 ゼロ挿入部
325 等化部
327 受信信号レプリカ生成部
329 信号キャンセル部
331 周波数デマッピング部
333 IDFT部
335 復調部
337 復号部
339 送信信号レプリカ生成部
341 DFT部
401 スケジューリング部
403 クリッピング情報決定部
405 周波数割当決定部
407 制御情報生成部
501 プレコーディング部
601 プレコーディング行列決定部
701-1、701-2 送信信号
801 S/P部
803-1、803-2 参照信号多重部
901-1、901-2、901 アンテナ
903-1、903-2 無線受信部
905-1、905-2 CP除去部
907-1、907-2 FFT部
909-1、909-2 サウンディング参照信号分離部
911 チャネルサウンディング部
913 制御部
915 制御信号生成部
917 無線送信部
919-1、919-2 参照信号分離部
921 伝搬路特性・雑音電力推定部
923 ゼロ挿入部
925 信号キャンセル部
927 受信信号レプリカ生成部
929 レイヤ分離・等化部
931-1、931-2 周波数デマッピング部
933-1、933-2 IDFT部
935 P/S部
937 復調部
939 復号部
941 送信信号レプリカ生成部
943 S/P部
945-1、945-2 DFT部
1001 プレコーディング行列決定部
1003 通信路容量算出部
1005 スケジューリング部
1007 クリッピング情報決定部
1009 周波数割当決定部
1011 制御情報生成部
1101-1、1101-2、1103-1、1103-2、1105-1、1105-2 送信信号
1201 スケジューリング部
1203 ゲイン算出部
1205-1、1205-2 クリッピング情報決定部
1207-1、1207-2 周波数割当決定部
1209 制御情報生成部
1301-1、1301-2 ゲイン補正部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数領域の一部のスペクトルを送信しないクリッピング処理を行なってデータを送受信する無線通信システムに適用される無線制御装置であって、
通信相手である無線端末装置との間の伝搬路情報に基づいて、前記クリッピング処理を行なう周波数領域を示すクリッピング情報を生成すると共に、前記無線端末装置に対する周波数割り当てを決定して周波数割り当て情報を生成し、前記クリッピング情報および前記周波数割り当て情報を前記無線端末装置に対して通知することを特徴とする無線制御装置。
【請求項2】
前記無線端末装置が複数の送信アンテナを備える場合、前記各送信アンテナにおけるクリッピング情報をそれぞれ独立に決定することを特徴とする請求項1記載の無線制御装置。
【請求項3】
前記クリッピング情報は、クリッピング処理をする周波数領域とクリッピング処理をしない周波数領域との割合を示すクリッピング率を示す情報、またはクリッピング処理を行なう周波数位置を示す情報の少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項2記載の無線制御装置。
【請求項4】
前記各送信アンテナにおけるクリッピング情報は、前記各アンテナに対応する伝搬路のゲインに基づいて決定されることを特徴とする請求項2記載の無線制御装置。
【請求項5】
前記各送信アンテナにおける伝搬路のゲインは、他の送信アンテナで送信される周波数領域の信号について、前記クリッピング処理が行なわれるか否かの判断結果に基づいて補正されることを特徴とする請求項4記載の無線制御装置。
【請求項6】
前記無線端末装置が複数の送信アンテナを備える場合、前記各送信アンテナにおける共通のクリッピング情報を決定することを特徴とする請求項1記載の無線制御装置。
【請求項7】
前記クリッピング情報は、クリッピング処理をする周波数領域とクリッピング処理をしない周波数領域との割合を示すクリッピング率を示す情報、またはクリッピング処理を行なう周波数位置を示す情報の少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項6記載の無線制御装置。
【請求項8】
前記クリッピング情報は、前記無線端末装置の通信路容量に基づいて決定されることを特徴とする請求項1記載の無線制御装置。
【請求項9】
周波数領域の一部のスペクトルを送信しないクリッピング処理を行なってデータを送受信する無線通信システムに適用される無線端末装置であって、
通信相手である無線制御装置から、クリッピング処理を行なう周波数領域を示すクリッピング情報および周波数割り当てを示す周波数割り当て情報を受信し、前記受信したクリッピング情報および周波数割り当て情報に基づいて、周波数領域に対してクリッピング処理を行ない、前記クリッピング処理を行なった周波数信号を時間領域の信号に変換して、前記無線制御装置に対して送信することを特徴とする無線端末装置。
【請求項10】
請求項1から請求項8のいずれかに記載の無線制御装置と、請求項9記載の無線端末装置と、から構成されることを特徴とする無線通信システム。
【請求項11】
周波数領域の一部のスペクトルを送信しないクリッピング処理を行なってデータを送受信する無線通信システムに適用される無線制御装置の制御プログラムであって、
通信相手である無線端末装置との間の伝搬路情報に基づいて、前記クリッピング処理を行なう周波数領域を示すクリッピング情報を生成する処理と、
前記無線端末装置に対する周波数割り当てを決定して周波数割り当て情報を生成する処理と、
前記クリッピング情報および前記周波数割り当て情報を前記無線端末装置に対して通知する処理と、の一連の処理を、コンピュータに読み取り可能および実行可能にコマンド化したことを特徴とする無線制御装置の制御プログラム。
【請求項12】
周波数領域の一部のスペクトルを送信しないクリッピング処理を行なってデータを送受信する無線通信システムに適用される無線端末装置の制御プログラムであって、
通信相手である無線制御装置から、クリッピング処理を行なう周波数領域を示すクリッピング情報および周波数割り当てを示す周波数割り当て情報を受信する処理と、
前記受信したクリッピング情報および周波数割り当て情報に基づいて、周波数領域に対してクリッピング処理を行なう処理と、
前記クリッピング処理を行なった周波数信号を時間領域の信号に変換して、前記無線制御装置に対して送信する処理と、の一連の処理を、コンピュータに読み取り可能および実行可能にコマンド化したことを特徴とする無線端末装置の制御プログラム。
【請求項13】
無線制御装置に実装されることにより、前記無線制御装置に複数の機能を発揮させる集積回路であって、
通信相手である無線端末装置との間の伝搬路情報に基づいて、前記クリッピング処理を行なう周波数領域を示すクリッピング情報を生成する機能と、
前記無線端末装置に対する周波数割り当てを決定して周波数割り当て情報を生成する機能と、
前記クリッピング情報および前記周波数割り当て情報を前記無線端末装置に対して通知する機能と、の一連の機能を、前記無線制御装置に発揮させることを特徴とする集積回路。
【請求項14】
無線端末装置に実装されることにより、前記無線端末装置に複数の機能を発揮させる集積回路であって、
通信相手である無線制御装置から、クリッピング処理を行なう周波数領域を示すクリッピング情報および周波数割り当てを示す周波数割り当て情報を受信する機能と、
前記受信したクリッピング情報および周波数割り当て情報に基づいて、周波数領域に対してクリッピング処理を行なう機能と、
前記クリッピング処理を行なった周波数信号を時間領域の信号に変換して、前記無線制御装置に対して送信する機能と、の一連の機能を、前記無線端末装置に発揮させることを特徴とする集積回路。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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