説明

無線網において通信カバレージを拡張するためのシステムおよび方法

本発明に係る無線通信システムは、第1の通信カバレージ領域を有し、互い違いのパターンに従って第1の周波数と第2の周波数を使用してHFDD通信モードにおいて動作する第1の基地局を含むことが可能である。本発明に係る無線通信システムは、第1の通信カバレージ領域とは異なる第2の通信カバレージ領域を有し、HFDD通信モードにおいて動作する第2の基地局を更に備えることが可能である。第2の基地局は、前記第1の基地局とは正反対となる互い違いのパターンに従って、第1の周波数と第2の周波数を使用して通信を行うことが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書において開示される発明の主題は、一般には、無線通信システムに関し、より具体的には、半二重のFDD(HFDD: Half-duplex FDD)無線網のような周波数分割二重(FDD: Frequency Division Duplex)無線網に関係する。
【背景技術】
【0002】
第3世代(3G)および第4世代(4G)のモバイル広帯域網のような広帯域無線網の使用が拡大し続けている。これらの無線網のユーザは、一のカバレージ領域(通信セル)内の異なる位置へと移動することができ、通信接続を維持することができる。これらの通信網は、典型的には複数の基地局を有するように構成され、これら基地局は、一のカバレージ領域を定義する一定の無線通信範囲を備えている。複数の基地局は、例えば、光ファイバー、T1回線、DSL、ケーブル・モデム等のような高速ネットワーク接続を使用して、有線網に接続される。これらの無線網内の通信経路は、典型的には、(i)無線リンクを介して移動局ユーザから基地局へと至る経路、および(ii)有線の接続、または高帯域幅の無線(例えば、マイクロウェーブ等)の接続を使用して、基地局から例えば広域網(WAN)のようなネットワークへと至る経路がある。このように、モバイル装置(例えば、携帯電話機または陸上移動無線)は、一つ以上の無線基地局を有する通信網と通信する。
【0003】
例えば4G網などにおいて、これら無線網の通信レートが増加するにつれ、より高い通信容量が供給される結果として、セルの電波到達範囲がより小さくなる。従って、多数のセル(ピコ・セル)が必要とされ、各セルは、バックホールへの接続を必要とする。無線網において、半二重の周波数分割二重(HFDD: Half-duplex Frequency Division Duplex)の通信モードを使用する場合、同一のプロトコルと周波数を使用して、セルの自己バックホール通信を提供することが可能である。更に、HFDD無線網のための無線装置は、設計するのがより簡単である。何故なら、無線装置は送信と受信を同時に行う必要が無いからである。しかしながら、通信網内での通信容量と通信スループットの損失が結果として生じる。何故なら、双方向通信は、一度に片方向のみしか実現することができず、(全二重の通信におけるように)両方向同時には実現することができない。従って、通信容量の半分は失われることになる。
【0004】
一つの例示的なHFDDシステムが米国出願公開公報2009/0207762において記述されている。この先行技術文献は、HFDD(半二重の周波数分割二重)システム内の複数のユーザを上りリンク(UL: Up Link)サブフレームの第1と第2のULグループに割り当て、更に下りリンク(DL: Down Link)サブフレームの第1と第2のDLグループに割り当てる方法を開示している。ULサブフレームは第1の搬送波周波数を割り当てられ、DLサブフレームは、第2の搬送波周波数を割り当てられる。この方法は、複数の移動局ユーザの中の各ユーザに関して、データのタイプを判定すること、受信側の搬送波/干渉+雑音比(CINR: Carrier Interference plus Noise Ratio)を判定すること、およびドップラー周波数パラメータを判定することを含む。複数の移動局ユーザは、第1と第2のULグループの第1のULグループおよび/または第2のULグループに対応する時間区間に割り当てられる。上記した割り当ては、移動局ユーザのデータのタイプ、CINR、ドップラー周波数スプレッド、あるいは第1と第2のULグループを以前に割り当てられている移動局ユーザの人数のうちの少なくとも一つに基づく。
【発明の概要】
【0005】
本発明に係る無線通信システムは、第1の通信カバレージ領域を有し、第1の周波数と第2の周波数との間を互い違いのパターンで切り替えて使用しながらHFDD通信モードで動作する第1の基地局を含むことが可能である。本発明に係るシステムは、第1の通信カバレージ領域とは異なる第2の通信カバレージ領域を有し、これまたHFDD通信モードで動作する第2の基地局をも含むことが可能である。更に、第2の基地局は、第1の基地局とは正反対となる互い違いのパターンに従って第1の周波数と第2の周波数との間を切り替えて使用しながら通信することが可能である。
【0006】
より具体的には、第2の基地局は、第1の無線器と第2の無線器を有するピコ・セル基地局を備えることが可能である。加えて、当該システムは、少なくとも一つの無線通信装置を更に含むことが可能であり、第1の無線器は、上記少なくとも一つの無線通信装置と通信することが可能である。第2の無線器は、第1の基地局と通信することが可能である。加えて、第1の無線器と第2の無線器は、互いに同時並行して送信し、同時並行して受信することができる。加えて、第1と第2の無線器は、ネットワーク・プロトコル層において互いに接続され得る。
【0007】
第1の基地局および一つの第2の基地局は、異なるHFDDフレーム期間中において送信を行うことが可能である。加えて、システムは、第1の基地局または第2の基地局に対して登録された複数の無線通信装置を更に含むことが可能である。従って、無線通信装置の各々は、それが第1の基地局または第2の基地局のいずれに対して登録されているかに基づいて、通信に関し、関連するHFDDフレームに割り当てられることが可能である。
【0008】
具体例を用いて説明すると、第1の基地局および第2の基地局はLTE(Long Term Evolution)ネットワークに接続されることが可能である。更に、第2の基地局は、ピコ・セル基地局を備えることが可能であり、第1の基地局は、当該ピコ・セル基地局と通信するように構成されたマスター基地局を備えることが可能である。加えて、ピコ・セル基地局は第1の無線器と第2の無線器を備えることが可能であり、第2の無線器は、自己バックホール通信の機能を提供するために、マスター基地局に対して自身の登録を行うことが可能である。
【0009】
本発明の関連する無線通信方法は、第1の周波数と第2の周波数を、互い違いのパターンに従って切り替えて使用しながら、第1の通信カバレージ領域を有する第1の基地局を、HFDD(Half-duplex Frequency Division Duplex)通信モードで動作させることを含むことが可能である。本発明に係る方法は更に、第1の通信カバレージ領域とは異なる第2の通信カバレージ領域を有する第2の基地局を、これまたHFDD通信モードにおいて動作させることを含むことが可能である。この際、本発明に係る無線通信方法は、第1の基地局とは正反対となる互い違いのパターンに従って第1の周波数と第2の周波数との間を切り替えて使用しながら通信するように、第2の基地局を動作させる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の様々な実施形態に従って、ピコ・セルを有する無線通信システムであって、通信カバレージ領域の拡張とピコ・セルの自己バックホール通信が実現されるシステムを図示するブロック図
【図2】本発明の様々な実施形態に従って、一連の送信と受信の時系列を示すシーケンス図
【図3】本発明の様々な実施形態に従って、同期がとられた複数の通信を図示するマトリクス図
【図4】本発明の様々な実施形態に従って、同期がとられた複数の通信を制御する方法を図示するフローチャート
【発明の実施するための形態】
【0011】
上述した本発明の概要、および本発明の特定の実施形態に関して以下に記載する詳細な説明は、本願に添付した図面を参照しながら読むことにより、より良く理解されるであろう。本発明の様々な実施形態に関する複数の機能ブロックを含むブロック図を図面が示す限りにおいては、これらの機能ブロックは、システム構成要素とハードウェア回路との間の区別を必ずしも示しているわけではない。従って、例えば、一つ以上の機能ブロック(例えば、プロセッサまたはメモリ)は、独立した一個のハードウェア(例えば、1個の汎用プロセッサ、ランダムアクセス・メモリ、ハードディスクまたはこれと同種のもの)により実装することが可能である。同様に、プログラムは、スタンドアローンのプログラムであっても良く、オペレーティング・システム内にサブルーチンとして組み込まれていても良く、ソフトウェア・パッケージの中の関数またはこれらと同様のものであっても良い。本発明の様々な実施形態は、図面中に示された装置構成や実現手段に限定されないことに留意されたい。
【0012】
本明細書中で用いられるとおり、文中において単数形で記載され、その前に冠詞「a」または「an」が付されている構成要素または動作ステップは、文中で特に断らない限り、複数の構成要素や動作ステップを除外しないと解釈すべきである。更に、本発明の「一実施形態」との記載は、本明細書中の技術的特徴を更に組み込んだ追加の変形実施例の存在を殊更に除外するとの意味に解釈されることを意図しない。更に、文中で明確に否定しない限り、特徴的な性質を持ち、かつ、一つ以上の構成要素を「備える」または「有する」ような実施形態は、そのような特徴的性質を持たない追加の構成要素を含んでも良い。
【0013】
一般的に言って、HFDD網の使用を通じて無線網の通信カバレージ領域を拡張するアプローチを、本明細書において記述する。このアプローチにおいては、マスター基地局からの送信/受信の周波数を再利用するために、複数のピコ・セル基地局が地理的配置される。ピコ・セル基地局は、マスター基地局とはリンク方向が正反対であるフレーム同期を使用する。その結果、マスター基地局が行う通信とピコ・セル基地局が行う通信との間の干渉を低減する。さらに、このようなフレーム同期を伴うHFDD網の使用はピコ・セルが自身のデータをマスター基地局に対して自己バックホール通信することを可能にする。
【0014】
より具体的には、図1および図2に示すとおり、2つの周波数を使用するHFDD無線システム80が提供され、これら2つの周波数のうち、一方の周波数は、下りリンク(DL: Down Link)通信に使用され、他方の周波数は上りリンク(UL: Up Link)通信に使用される。無線システム80は、FDD周波数スペクトル領域(例えば、700MHzの周波数スペクトル)において動作するLTE網の一部として示めされているけれども、これは単に例示のためであり、上記したように、本発明の全ての実施形態に必ずしも当てはまるものではない。例えば、当業者には良く理解されているように、システム動作は、IEEE802.16やWiMAXのような他のFDD無線プロトコルに従うものであっても良い。無線システム80は、通信サイトとして図示されている第1の(すなわち、マスターの)基地局82を含み、この基地局はすなわち、高プロファイル(HP: High Profile)サイトであり、通信カバレージ領域84を有する。HPサイト82は第1の周波数(第1のチャネル)をDL通信に使用し、第2の周波数(第2のチャネル)をUL通信に使用する。
【0015】
本発明に係る無線システムはHFDD通信モードにおいて動作する。HFDD通信モードは、HPサイト82が、送信をDL上で行い、受信をUL上で行うが、これら送信と受信とは同時には実行されないような通信モードである。従って、HPサイト82からの受信とHPサイト82への送信とが同時に実行される同時通信は提供されない。しかしながら、HFDD通信は、ユーザ装置30(UE: User Equipment 30)(例えば、モバイル装置)の設計を簡略化することを可能にする。何故なら、UEは、送信動作と受信動作を同時に実行する必要が無く、これらの通信動作を逐次的に実行することができるからである。HFDDにおけるHPサイト82との間の通信に関して言えば、無線リンクの稼働時間のうちの50%は沈黙状態であり、以下においてより詳細に述べるようなデータの通信を行っていない。
【0016】
本発明に係る無線システム80は、(2つの無線器を備えた)ピコ・セル基地局として図示され、通信カバレージ領域88を有する第2の基地局86を更に含むことが可能である。通信カバレージ領域88は、HPサイト82の通信カバレージ領域84とは異なる(例えば、より範囲の小さい)領域をカバーする。通信カバレージ領域84と88とは互いに重複する関係にあっても良い。基地局86は、通信カバレージを拡張するための基地局として構成され、HPサイト82とはリンク方向が正反対のフレーム同期に従って、DL上で送信を行い、UL上で受信を行う。従って、DLチャネルとULチャネルを目一杯に利用することが実現される。
【0017】
例えば、図2に示すように、基地局86が沈黙状態にある時(すなわち、何も送信していない時)に、HPサイト82が送信を行い、HPサイト82が沈黙状態にある時に、基地局86が送信を行う。図2に図示されるブロックの各々は、一つのフレームの半分、例えば、1個のHFDD伝送フレームの半分であることに留意されたい。送信時系列90と受信時系列92は、HPサイト82の一連の送信と一連の受信をそれぞれ表している。受信時系列96と送信時系列94は、基地局86の内部通信に関する一連の受信と一連の送信をそれぞれ表す。基地局86の内部通信とは、すなわち、HPサイト82に接続しようとしている何れかのUEの通信である。本実施形態に係る幾つかの実装においては、HP歳と82と通信する際に、基地局86は、一つのUEであると看做されることが可能である。送信時系列98と受信時系列100は、基地局86の外部通信に関する一連の送信と一連の受信をそれぞれ表している。
【0018】
動作時において、HPサイト82とピコ・セル基地局86とは、周波数の同一の組を使用して通信することができる。この際、例えば、同一の下りリンク(DL: Down Link)周波数と同一の上りリンク(UL: Up Link)周波数が使用されるが、位相は互いにずれている。すなわち、HPサイト82と基地局86の各々から発した通信に対して異なる位相を割り当てることにより、
一つのフレームの半分だけ位相をずらす。UL周波数とDL周波数は様々な周波数スペクトル領域に位置することが可能であり、例えば、700MHz帯の周波数スペクトル領域に位置することが可能である。
【0019】
このようにして、HPサイト82とピコ・セル基地局86との間での自己干渉が回避される。例えば、図1を再び参照するならば、HPサイト82がUE30(UE1)に向けてDL周波数上で送信を行っている場合、当該DLチャネル上では、他の送信は全く行われていない。同様に、UE30(UE1)がHPサイト82に向けてUL周波数上で送信を行っている場合、当該ULチャネル上では、他の如何なる機器も送信を行っていない。従って、搬送波がピコ・セルの利用のための別個の伝送チャネルを有する必要なしに、複数のピコ・セルの地理的配置の内部の干渉を適正管理することができる。
【0020】
加えて、これまた好都合なことに、本発明に係るシステム80は、ピコ・セル86が、モバイル・クライアント機器、すなわち、UE30(図2中のUE2)からのメッセージを自己バックホール通信することを可能にする。そしてこれは、モバイル・クライアント機器(図2のUE2)をピコ・セル86に対して登録することによって実現される。このようにして、FDD周波数の単一の組(例えばDL/ULの組)を使用して以下の(i)と(ii)の両方を実現することができる。すなわち、(i)ピコ・セル基地局からモバイル端末(例えば、UE1)に向けた通信、および(ii)ピコ・セルから基地局へ向けたバックホール通信(例えば、基地局86からHPサイト82へ向けた通信)、の両者である。ピコ・セル基地局86は、マスター基地局(主たる基地局、すなわちHPサイト82)とはリンク方向が正反対のフレーム同期を有している。そのため、ピコ・セル内の2つの無線器(HPサイト82に登録され、本質的にはDEとして振舞う第1の無線器、および、通信カバレージ領域を拡張するための基地局として振舞う第2の無線器)は互いに自己干渉を起こさない。例えば、図2に示すように、基地局86内の両方の無線器は、それぞれ同時に送信し、同時に受信する。基地局86内の2つの無線器は、例えば、ネットワーク層のようなプロトコルの上位層において互いに接続されることが可能である。そしてそれにより、端末装置(例えば、図5中のUE2)からのパケットは、基地局86を経由してHPサイト82へと、更にネットワークへと中継される。本発明の様々な実施形態によって実現される通信カバレージ領域の拡張は、通信カバレージ領域の多段階的な拡張を実現するために、反復的に実施され得る。
【0021】
図3に示すとおり、同一の周波数を使用し、異なる位相を使用する同期制御が実現される。この例において示されるとおり、HFDD通信は、例えば半フレームのような複数の部分に分割され、これら半フレームは第1の1/2フレーム110、および第2の1/2フレーム112として識別される。加えて、1/2フレーム110および112の各々の中において、2つの周波数を使用する事が可能である。これら周波数は、周波数A 114および周波数B 116としてそれぞれ識別され、これら周波数は、UL周波数とDL周波数に相当し得る。ピコ・セル基地局86は、本質的には、自己バックホール通信が実行される中継器として動作する。同時に、(当該ピコ・セルに登録されている)UE2は、周波数A 114を使用して第1の1/2フレーム110上でピコ・セル基地局86に向けて送信を実行する。そして、ピコ・セル86は、周波数A 114を使用して、第2の1/2フレーム112上でHPサイト82に向けて送信を実行する。すなわち、上記伝送は、互い違いに繰り返すパターンでの伝送である。同様に、HPサイト82は、周波数B 116を使用して、第1の1/2フレーム110上でピコ・セル基地局86に向けて送信を実行する。そして、ピコ・セル基地局86は、周波数B 116を使用して、第2の1/2フレーム112上でUE2に向けて送信を実行する。
【0022】
加えて、他の同期制御による伝送もまた実現されても良い。例えば、HPサイト82は、周波数B 116を使用して第1の1/2フレーム110上でUE1に向けて送信を行っても良い。そして、UE1は、第2の周波数B 116を使用して、第2の1/2フレーム112上でHPサイト82に向けて送信を行っても良い。
【0023】
同期制御された通信の制御は、図4に示す方法120によって実現することが可能である。具体的には、ブロック122において、HPサイト82および/またはピコ・セル基地局86の通信範囲内にある一つ以上のUEは、HPサイト82またはピコ・セル基地局86に自身の登録を行う。一旦登録がされると、HPサイト82またはピコ・セル基地局86は、当該登録されたUEへと向かう通信トラフィックおよび当該UEからの通信トラフィックを制御する。その結果、同期制御された通信が実現される。特に、ブロック124においては、ピコ・セル86が沈黙状態(送信を行っていない)場合、音声/データが、第1の周波数を使用して、HPサイト82から当該登録されたUEに向けて送信され、更に、同一の周波数を使用してピコ・セル86に向けて送信される。更に、ブロック126において、HPサイト82が沈黙状態(送信を行っていない)場合、第1の周波数を使用して、音声/データがピコ・セル86から当該登録されたUEに向けて送信され、更に、第2の周波数を使用してHPサイト82に向けて送信される。ブロック124および126における送信は、上記とは異なる順序で実行されても良いことに留意されたい。例えば、ブロック124における送信の前に、ブロック126における送信が発生しても良い。
【0024】
このように、HFDD網においてピコ・セルが使用され、この場合、ピコ・セルはHPサイトとは正反対のフレームに対して同期をとる。本明細書で説明した同期制御を使用して、ピコ・セルからモバイル端末へ向かう通信とHPサイトからモバイル端末へ向かう通信との間の(およびこれらとは逆方向の通信同士の間の)自己干渉が除去される可能性がある。加えて、本発明に係る同期制御を使用することにより、HPサイトに対して登録することができる第2の無線器をピコ・セルが持つことが可能となり、HPサイトへのUL/DLチャネルを使用して、ピコ・セルによる自己バックホール通信のための通信経路が提供される。これらの送信は互いに同期をとって実行されるため、この第2の無線器は、他のUEからの送信に対して干渉を及ぼすことなく、自己バックホール通信を行うことができるだろう。加えて、HFDDによる同期制御を使用することにより、ネットワークがHFDD無線器を使用して動作しながら、同時に、FDDチャネルの通信容量を完全に使い切ることを可能にする。
【0025】
本発明の様々な実施形態は、セルラー通信システムにおける通信範囲を拡張することに限定されるものではない。むしろ、本発明に係る実施形態は、セルラー通信システム以外の他の通信網との関係において実装されても良く、例えばその際、通信カバレージ領域の拡張は所望されるかまたは必要とされる。更に、通信範囲の拡張は、複数の異なる種類のセルラー網との関係において実装されても良い。そのようなセルラー網としては、例えば、Enhanced Data Rates for GSM Evolution(EDGE)ネットワーク、符号分割多重(CDMA)ネットワーク、Universal Mobile Telecommunications System(UMTS)ネットワークまたは広帯域符号分割多重(W−CDMA)ネットワーク等がある。
【0026】
例えば、通信システムやその中のコントローラのような、本発明の様々な実施形態や構成要素が、一つ以上のコンピュータ・システムの一部として実装されることが可能である。このようなコンピュータ・システムは、コンピュータ、入力装置、ディスプレイ装置、およびインターフェースを含むことが可能であり、当該インターフェースは例えば、インターネットをアクセスするためのインターフェース等でありうる。コンピュータはマイクロプロセッサを含むことが可能である。マイクロプロセッサは通信バスに接続されることが可能である。コンピュータは更に、メモリを含むことが可能である。メモリは、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)および読み出し専用メモリ(ROM)を含むことが可能である。コンピュータ・システムは、更に、外部記憶装置を含むことが可能であり、そのような外部記憶装置としては、ハードディスク装置、または取り外し可能外部記憶装置等がある。取り外し可能外部記憶装置の例としては、フロッピー(登録商標)・ディスク装置、光ディスク装置およびこれらと同様の装置等がある。外部記憶装置は、コンピュータ・システム内部にコンピュータ・プログラムや他の命令をロードするための他の同種の装置であっても良い。
【0027】
本明細書中で用いられてきたとおり、用語「コンピュータ」は、プロセッサまたはマイクロプロセッサに基づくシステムを含むことが可能である。そのようなシステムは、マイクロコントローラ、簡易命令セット回路(RISC)、特定用途向け集積回路(ASIC)、論理回路、または本明細書中で説明された機能を実行可能な他の回路やプロセッサを使用するシステムである。上記の例は、単に例示的なものでしかなく、従って、用語「コンピュータ」の定義の仕方や意味解釈を限定することを意図したものではない。
【0028】
入力データを処理するために、コンピュータ・システムは、一つ以上のストレージ要素に記憶された命令の集合を実行する。所望されるならば、もしくは必要ならば、ストレージ要素はデータや他の情報を記憶することもまた可能である。ストレージ要素は、処理機械内部の情報源または物理的メモリ要素の形式で存在することが可能である。
【0029】
命令の集合は、処理機械としてのコンピュータに対して、本発明の様々な実施形態に係る方法や動作プロセスのような特定の動作を実行するように指令する様々なコマンドを含むことが可能である。命令の集合はソフトウェアの形態をとることが可能である。ソフトウェアは、システム・ソフトウェアやアプリケーション・ソフトウェア等の様々な形態をとることが可能である。更に、ソフトウェアは、複数の別々のプログラムから成る集合、より大規模なプログラムの中の一つのプログラム・モジュールまたはプログラム・モジュールの一部としての形態を取ることも可能である。更に、ソフトウェアは、オブジェクト指向プログラミングの形態をとるモジュール型プログラミングを含むことも可能である。処理機械による入力データの処理は、ユーザ・コマンドに応じたもの、先に実行された処理の結果に応じたもの、または他の処理機械から要求された要求内容に応じたものとすることが可能である。
【0030】
本明細書中で用いられてきたとおり、用語「ソフトウェア」および「ファームウェア」は、互換的な概念であり、コンピュータによる実行のためにメモリ中に記憶されるあらゆるコンピュータ・プログラムを含む。そして、当該メモリには、RAMメモリ、ROMメモリ、EPROMメモリ、EEPROMメモリ、および不揮発性RAM(NVRAM)メモリ等が含まれる。上記したメモリのタイプは単に例示的なものでしかなく、従って、コンピュータ・プログラムの格納のために使用可能なメモリのタイプに関して限定的に解釈されるべきではない。
【0031】
本明細書中の上記した説明は、限定的ではなく、例示的なものとして意図されている。例えば、本発明の上記した複数の実施形態(および/またはそれらの複数の態様)は、互いに組み合わされて使用されることが可能である。加えて、本開示の技術的範囲から逸脱することなく、特殊な状況や材料に適合させるための様々な修正が本発明による教示に対して成されてもよい。例えば、本発明に係る方法において記載された複数の動作ステップの順序は、明示的に断らない限り、あるいは、暗に必要とされない限り、特定の順序に従って実行される必要は無い。上記暗に必要とされる場合の例としては、ある動作ステップにとって、先行する動作ステップの結果や生成物を利用可能であることを要するような場合である。本明細書中に記載された事物のディメンジョンや種類は、本発明のパラメータを定義するように意図され、本発明の範囲を限定するものでは決してなく、例示的な実施態様である。本明細書中の上記した説明を熟読し、理解することにより、本発明に係る他の様々な実施形態が当業者にとって明らかとなるであろう。従って、本発明の技術的範囲は、本願に添付された請求項に加え、これら請求項に対して権利付与される均等発明の全範囲を参照することによって決定されるべきである。本願に添付された請求項においては、用語「including」および「in which」は、日常英語におけるそれぞれの同義語である「comprising」および「wherein」と同じ意味の用語として使用される。加えて、以下に記載する請求項においては、用語「第1の」、「第2の」、「第3の」等は単にラベルとして使用されるだけであり、これら用語が修飾する対象物に対して数字上の要件を課すものではない。更に、以下に記載する請求項に含まれる限定事項は、means−plus−function形式では書かれておらず、米国特許法第112条第6段落に基づいて解釈されることを意図していない。ただし、請求項中において、そのような限定事項が「〜するための手段」との明示的な文言に続けて、具体的構成ではなく機能を規定する記述を使用して書かれている場合はその限りではない。
【0032】
以上の発明の詳細な記述は、本発明を開示するために、最良の実施形態も含めて具体例を使用している。そしてこれは、任意の当業者が本発明を実施することを可能とするためでもあり、そのような実施行為は、本発明に係る装置やシステムを作成し、使用し、およびこれらと関連する方法を実行することを含む。本発明の特許可能な技術的範囲は、本願の請求項によって定義され、当業者が請求項から自明なものとして想到可能な他の実施例を含んでも良い。そのような他の実施例は、請求項中の記載文言と文字通り一致する構成要件を備えていようと、請求項中の記載文言と実体的な相違が認められない均等範囲内の構成要件を含んでいようと、本願請求項の技術的範囲内に含まれることが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信システムであって、
第1の通信カバレージ領域を有し、互い違いのパターンに従って第1の周波数および第2の周波数を使用してHFDD通信モードにおいて動作する第1の基地局と、
前記第1の通信カバレージ領域とは異なる第2の通信カバレージ領域を有し、HFDD通信モードにおいて動作する第2の基地局とを備え、
前記第2の基地局は、前記第1の基地局とは反対となる互い違いのパターンに従って、前記第1の周波数および前記第2の周波数を使用して通信を行う、無線通信システム。
【請求項2】
前記第2の基地局は、第1の無線器と第2の無線器を有するピコ・セル基地局を備える、請求項1記載の無線通信システム。
【請求項3】
少なくとも一つの無線通信装置を更に備え、前記第1の無線器は、前記少なくとも一つの無線通信装置と通信し、前記第2の無線器は、前記第1の基地局と通信する、請求項2記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記第1の基地局と第2の基地局とは、互いに異なるHFDDフレームの期間中に送信を行う、請求項1記載の無線通信システム。
【請求項5】
前記第1の基地局または前記第2の基地局に登録された複数の無線通信装置を更に備え、
前記複数の無線通信装置の各々は、それが前記第1の基地局に登録されているか前記第2の基地局に登録されているかに基づいて、通信のための関連するHFDDフレームを割り当てられる、
請求項1記載の無線通信システム。
【請求項6】
無線通信方法であって、
第1の通信カバレージ領域を有する第1の基地局を、互い違いのパターンに従って第1の周波数および第2の周波数を使用してHFDD通信モードにおいて動作させるステップと、
前記第1の通信カバレージ領域とは異なる第2の通信カバレージ領域を有する第2の基地局を、前記第1の基地局とは反対となる互い違いのパターンに従って、前記第1の周波数および前記第2の周波数を使用して通信を行うように、HFDD通信モードにおいて動作させるステップと、
を備える無線通信方法。
【請求項7】
前記第2の基地局は、第1の無線器と第2の無線器を有するピコ・セル基地局を備え、
前記第1の無線器を使用して、少なくとも一つの無線通信装置と通信し、前記第2の無線器を使用して、前記第1の基地局と通信するステップを更に備える、
請求項6記載の無線通信方法。
【請求項8】
前記第1と第2の無線器を使用することは、前記第1と第2の無線器が同時に送信を行い、同時に受信を行うように前記第1と第2の無線器を使用することを備える、請求項7記載の無線通信方法。
【請求項9】
前記第1の基地局または前記第2の基地局に対して、複数の無線通信装置を登録するステップと、
前記複数の無線通信装置の各々に対して、それが前記第1の基地局に登録されているか前記第2の基地局に登録されているかに基づいて、通信のための関連するHFDDフレームを割り当てるステップと、
を更に備える請求項6記載の無線通信方法。
【請求項10】
前記第1の基地局は、マスター基地局を備え、前記第2の基地局は、第1の無線器と第2の無線器を有するピコ・セル基地局を備え、
自己バックホール通信を提供するために、前記第2の無線器の各々を前記マスター基地局に対して登録するステップを更に備える、
請求項9記載の無線通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−520080(P2013−520080A)
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−552898(P2012−552898)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【国際出願番号】PCT/US2011/022963
【国際公開番号】WO2011/100130
【国際公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
2.WCDMA
【出願人】(509239484)パイン ヴァレー インヴェストメンツ,インコーポレイテッド (6)
【Fターム(参考)】