説明

無線通信システム、干渉防止方法

【課題】無線通信ネットワーク間で通信干渉を防止する上での処理動作量を軽減させる。
【解決手段】互いに異なる物理層を有する2以上の無線通信ネットワーク10が共存している場合においても、一の無線通信ネットワーク10bにおけるコーディネータ3bから電源投入直後の最初のスーパーフレーム前において、EBRを発信するとともに、CBを所定期間に亘りスキャニングするためのスキャニング期間26を設け、他の無線通信ネットワーク10aにおけるコーディネータ3aは、EBRを受けてCBを発信し、コーディネータ3bは、スキャニング期間26においてCBを取得した場合には、当該他の無線通信ネットワーク3aとの間で通信干渉を防止するための制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
複数のデバイスとコーディネータ間で無線通信を行う無線通信ネットワークの、互いに異なる物理層を有する2以上の無線通信ネットワーク間で通信干渉を防止する上で好適な無線通信システム、干渉防止方法を提供することにある。
【背景技術】
【0002】
無線LAN(Local Area Network)は、有線LANと比較して、ケーブルのためのスペースが削減されることや、ノート型パーソナルコンピュータ(ノートPC)等を始めとした携帯端末が、その携帯性を損なうことなくLANに接続できる等の利点がある。また無線LANそのものも高速化され、また安価になってきたため、無線LANに対する実用化が一段と加速している。このような背景から、無線LANの標準化がIEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineering)で進められている。
【0003】
特に無線LANに代表される無線パケット通信システムにおいて、複数の端末間における無線リソースの競合が問題視されている。この無線リソースの競合を回避するためには、媒体アクセス制御(MAC:Medium Access Control)が必要となる。この無線LANにおけるMACプロトコルとしては、端末がパケットを送信する前に他端末の搬送波を検出する、いわゆるキャリアセンスを実行し、キャリアを捕捉できない場合に自身のパケットを送信するCSMA(Carrier Sense Multiple Access)方式が提案されている。また、このCSMA方式に対して、更にパケットの衝突回避の仕組みを付加したCSMA/CA方式(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)方式も提案されている。
【0004】
このCSMA/CA方式では、通信を開始して、通信相手の無線ノードからACK(Acknowledge)信号の返信を受け取った場合には、通信が成功したものとみなし、ACK信号を受け取らなかった場合には、他の無線ノードとの通信衝突が発生したものとみなして、再びバックオフ時間を設けてパケットデータを再送信するシステムである。
【0005】
特に近年において、このCSMA/CA方式は、IEEE802.15.4規格に準拠する場合が多くなっている。IEEE802.15.4規格は、868MHz、915MHz及び2.45GHz付近の周波数を利用する無線通信であって、特にZigbee(登録商標)等の家電向け近距離通信に利用されている。Zigbee(登録商標)は、IEEE802.15.4規格で規定されたPHY層及びMAC層を用い、その上位のネットワーク層、アプリケーション層を規格化したものである。このZigbee(登録商標)は、IEEE802.15.4規格の特徴を生かし、超低消費電力化、小型化、低コスト化を実現可能としている。
【0006】
このように、IEEE802.15.4規格は、センサネットワークのみならず、ホームネットワーク、オフィスネットワーク、人体に装着した各種医療用機器との通信ネットワークに加え、将来的にはユビキタスネットワーク社会を実現するためのキーテクノロジーとしても注目されている。
【0007】
IEEE802.15.4規格による無線通信では、図9に示すように、ネットワーク7を制御するNC(Network-Coordinator)71と、複数のED(End Device)72と間で無線通信を行うのが一般的である。ちなみに、このネットワーク7の例としては、スター型、ツリー型、メッシュ型といった多彩なネットワーク形態が選択可能である。
【0008】
また、このIEEE802.15.4規格による無線通信では、ビーコンを使用したいわゆるスーパーフレーム構造を用いる。このスーパーフレーム構造は、ビーコン間隔を全てのED72がアクセス可能なCAP(Contention Access Period)、特定のED72が専有してアクセス可能なCFP(Contention Free Period)、全てのED72がアクセス禁止となるInactive期間に分割される。またCFPは、GTS(Guaranty time Slot)メカニズムにより7等分されて、通信を優先的に行いたいED72へ割り当てることが可能となる。
【0009】
なお、上述したIEEE802.15.4g企画では、ビーコンを用いた無線通信ネットワークに加えて、ビーコンを使用しないで同期等の処理を行う無線通信ネットワークも重要である。このビーコンを用いない無線通信ネットワークにおいては、コーディネータから周期的にビーコンが送られることはない。
【0010】
従来におけるこのIEEE802.15.4規格による無線パケット通信システムとしては、例えば、特許文献1、2等が提案されている。またCSMA/CA方式におけるパケットの衝突を最小限に抑える技術としては、例えば、特許文献3、4の開示技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2005−102218号公報
【特許文献2】特開2008−026310号公報
【特許文献3】特開2004−242204号公報
【特許文献4】特開2006−197177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、例えば図10に示すように、2以上のネットワーク7、7´が共存する場合もある。ネットワーク7は、NC71と、複数のED72からなり、ネットワーク7´は、NC71´とED72´とからなるが、それぞれ異なる物理層を介して無線通信を行うものである。
【0013】
しかしながら、このように2以上のネットワーク7、7´が共存する場合には、互いに通信干渉が生じる場合がある。即ち、ネットワーク7におけるNC71とED72との間における通信が、他のネットワーク7´におけるNC71´とED72´との間で行われている通信により干渉を受ける場合がある。これは、それぞれのネットワーク7、7´における中央制御ユニットとしての役割を担うNC71、NC71´との間で何らやり取りがなされていないことによるものであり、それぞれ互いに存在を無視して独立した物理層を介して無線通信を行うためである。
【0014】
このため、このような互いに異なる物理層を有する2以上のネットワーク7、7´が共存する無線通信システムにおいて、通信干渉を防止することができる干渉防止方法を案出する必要性が特に近年において高まりつつあった。
【0015】
このとき、かかる通信干渉防止方法を行う上で、特にNC71とNC71´における処理動作の負担を軽減させ、消費電力を抑える必要性があった。
【0016】
また、ビーコンを使用しない無線通信ネットワーク間で共存処理を行う際においても有効な方法が従来より求められていた。
【0017】
そこで本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、互いに異なる物理層を有する2以上の無線通信ネットワークが共存し、上記各無線通信ネットワークは複数のデバイスとコーディネータ間で無線通信を行う無線通信システムにおいて、かかる無線通信ネットワーク間で通信干渉を防止する上での処理動作量を軽減させることが可能な無線通信システム及び干渉防止方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明に係る無線通信システムは、上述した課題を解決するために、互いに異なる物理層を有する2以上の無線通信ネットワークが共存し、上記各無線通信ネットワークは、一以上のデバイスとコーディネータ間で無線通信を行う無線通信システムにおいて、第1の無線通信ネットワークにおける第1のコーディネータは、電源投入直後の最初のスーパーフレーム前において、共存通知信号の送信を要求するための共存通知要求を発信するとともに、共存通知信号を所定期間に亘りスキャニングするためのスキャニング期間を設け、第2の無線通信ネットワークにおける第2のコーディネータは、上記共存通知要求を受けて共存通知信号を発信し、上記第1のコーディネータは、上記スキャニング期間において上記共存通知信号を取得した場合には、当該他の無線通信ネットワークとの間で通信干渉を防止するための制御を行うことを特徴とする。
【0019】
また、本発明に係る干渉防止方法は、上述した課題を解決するために、互いに異なる物理層を有する2以上の無線通信ネットワークが共存し、上記各無線通信ネットワークは、一以上のデバイスとコーディネータ間で無線通信を行う無線通信システムの干渉防止方法において、第1の無線通信ネットワークにおける第1のコーディネータにより、電源投入直後の最初のスーパーフレーム前において、共存通知信号の送信を要求するための共存通知要求を発信するとともに、共存通知信号を所定期間に亘りスキャニングするためのスキャニング期間を設け、第2の無線通信ネットワークにおける第2のコーディネータにより、上記共存通知要求を受けて共存通知信号を発信し、上記第1のコーディネータにより、上記スキャニング期間において上記共存通知信号を取得した場合には、当該他の無線通信ネットワークとの間で通信干渉を防止するための制御を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
上述した構成からなる本発明によれば、共存通知信号をスキャニングしたコーディネータが、自らの近辺において他のコーディネータ、ひいてはその無線通信ネットワークが存在していることを識別することが可能となる。そして、この共存通知信号を取得したコーディネータは、当該他の無線通信ネットワークとの間で通信干渉を防止するための制御を行うことが可能となる。
【0021】
特に本発明は、あくまで共存通知信号の取得を望む第1のコーディネータ側から共存通知要求を発信し、第2のコーディネータは、あくまでその共存通知要求を受信した場合のみ、共存通知信号を発信する。これにより、必要とされている場合のみ共存通知信号を発信すれば足り、それ以外の場合には特に共存通知信号を発信する必要は無くなる。このため、共存通知信号を随時発信する必要がなくなることによる処理動作の負担軽減を図ることができ、消費電力を抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明を適用した無線通信システムの構成例を示す図である。
【図2】本発明を適用した無線通信システムの通信に使用されるスーパーフレーム構造を示す図である。
【図3】コーディネータから発信されるEBRの詳細について説明するための図である。
【図4】本発明を適用した干渉防止方法について説明するための図である。
【図5】本発明を適用した干渉防止方法について説明するための他の図である。
【図6】実際の干渉防止のためのプロセスを示すフローチャートである。
【図7】本発明を適用した干渉防止方法の他の実施形態について説明するための図である。
【図8】本発明を適用した干渉防止方法をビーコンを使用しないシステムに適用する形態について説明するための図である。
【図9】従来のNCと、複数のEDとからなる無線通信システムを示す図である。
【図10】従来技術の問題点について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明をする。
【0024】
図1は、本発明を適用した無線通信システム1の構成例を示している。この無線通信システム1は、2つの無線通信ネットワーク10a、10bから構成されている。無線通信ネットワーク10aは、複数のデバイス2aと、ネットワーク全体を制御するコーディネータ3aとを備えている。また、無線通信ネットワーク10bは、複数のデバイス2bと、ネットワーク全体を制御するコーディネータ3bとを備えている。
【0025】
上述した図1に示す無線通信システム1では、あくまで2つの無線通信ネットワーク10a、10bから構成されている場合を例示しているが、これに限定されるものではなく、3以上の無線通信ネットワーク10からなるものであってもよい。
【0026】
これら無線通信ネットワーク10は、例えばIEEE802.15.4g標準に基づくPAN(Personal Area Network)である。なお、無線通信ネットワーク10は、図1に示すようなスター型に限定されるものではなく、ツリー型やメッシュ型等いかなるネットワーク形態を適用してもよい。
【0027】
デバイス2は、例えば、ノート型のパーソナルコンピュータ(ノートPC)や、携帯電話等を初めとした各種携帯情報端末等で構成される。デバイス2は、少なくともWPANにおいてコーディネータ3との間で無線パケット通信を行うことができ、更にはコーディネータ3を介して他のデバイス2との間で無線パケット通信を行う。
【0028】
コーディネータ3も同様に上述した携帯情報端末と構成を同一とするものであってもよい。このコーディネータ3は、中央制御ユニットとしての役割を担う。そして、このコーディネータ3は、デバイス2から送信されてくるビーコンを取得し、またデバイス2をそれぞれWPANに接続させるために、これらを互いに同期化させる役割を担う。
【0029】
これら2つの無線通信ネットワーク10a、10bは、それぞれ独自の物理層を介してコーディネータ3とデバイス2間において無線通信を行う。これは、これら2つの無線通信ネットワーク10a、10bは、互いに異なる物理層を介してコーディネータ3とデバイス2間の無線通信を行っていることを意味するものである。
【0030】
本発明を適用した無線通信システム1は、例えば図2に示すように、ビーコン21を使用したいわゆるスーパーフレーム構造を用いる。スーパーフレームは、ビーコン21の後にCAP(Contention Access Period)22と、CFP(Contention Free Period)23とを有している。2つのビーコン21間の時間は、スーパーフレームの周期に関係なく、所定数のスロットに分けられる。ちなみに、このスーパーフレーム構造において、CFP23を構成するスロット数は可変としており、CAP22を構成するスロット数は固定としている。CAP22は、全てのデバイス2がアクセス可能な期間であり、CFP23は、特定のデバイス2が専有してアクセス可能な期間である。
【0031】
更に、本発明では、無線通信ネットワーク10におけるコーディネータ3から共存通知信号(CB)の発信を要求するための共存通知要求(EBR)を送信する。図2に示すように、コーディネータ3は、このEBRを電源投入直後であって、かつ最初のスーパーフレーム前において発信する。このEBRの発信タイミングは、電源投入直後で最初のスーパーフレーム前であればいかなるものであってもよい。即ち、タイミングt1のように電源投入直後であってもよく、またタイミングt2、t3等に示すように電源投入直後からしばらく経過してからEBRを発信するようにしてもよい。
【0032】
また、無線通信ネットワークにおけるコーディネータ3は、電源投入直後の最初のスーパーフレーム前において、共存通知信号(CB)を所定期間に亘りスキャニングするためのスキャニング期間26を設ける。このスキャニング期間26は、スーパーフレームの長さ以上からなる期間としてもよい。
【0033】
図3は、このコーディネータ3から発信されるEBRの詳細を示している。EBRは、ヘッダー31の後にペイロード部32、フッター35が設けられたフレーム構造で構成されている。ペイロード部32には、属性フラグ領域33、属性情報a〜属性情報xまでがそれぞれ記述された記述番地34a〜34xが記述されている。ヘッダー31やフッター35には管理情報等が記述され、ペイロード部32には上述した属性情報を初めとした各種実データが記述される。なお、この属性フラグ領域33は、ヘッダー31内に含まれるものであってもよいし、含まれないものであってもよい。
【0034】
そして、この記述番地34a〜34xに記述される属性情報は、コーディネータ3が他の無線通信ネットワーク10から取得を希望する情報であり、例えば、他の無線通信ネットワーク10において使用されているチャネルや通信時間等がそれぞれの属性として割り当てられる。また、属性フラグ領域33には、実際にこのペイロード部32において実際に属性情報が記述されている場合に、その属性情報が実際に記述されている記述番地34に示すフラグを立てる。例えば、記述番地34aにチャネル情報を希望する旨が、また記述番地34bに通信時間情報を希望する旨が記述されていた場合に、この属性フラグ領域には、かかる記述番地34a、34bを示すフラグを立てる。なお属性番地34を示すフラグを立てる代わりに、属性情報そのものを示すフラグをこの属性フラグ領域33に立てるようにしてもよい。
【0035】
このような構成からなるEBRが、例えば図4に示すように、無線通信ネットワーク10bにおけるコーディネータ3bから発信され、他の無線通信ネットワーク10aにおけるコーディネータ3aによって受信されたものとする。その結果、このコーディネータ3aはかかるEBRを受信することにより、自らが属する無線通信ネットワーク3aにおいて他の無線通信ネットワーク10bが新たに入りこんできて、その電源投入がなされたことを識別することが可能となる。そして、その新たに入り込んできた他の無線通信ネットワーク10bにより、共存通知信号CBの送信要求が行われたことを識別することができる。
【0036】
このため、他の無線通信ネットワーク10aにおけるコーディネータ3aは、かかるEBRを受信した場合に、新たにCB27を発信する。このCB27は、いわゆるビーコンとして構成するようにしてもよいし、複数のフレームからなる通常の信号として構成するようにしてもよい。なお、コーディネータ3aは、EBRを読み取ることにより、その属性フラグ領域33に記述されている属性フラグを識別することが可能となり、更にそのフラグを介して実際に他の無線通信ネットワーク3bから送信要求されている属性情報が記述されている記述番地34が何であるかを識別することが可能となる。更にその記述番地34に記述されている属性情報を読み取ることにより、他の無線通信ネットワーク3bから送信要求されている属性情報が何であるかを読み取ることが可能となる。
【0037】
CB27は、例えば物理層として、正弦波に対してディジタル信号で変調を行う周波数変換式変調方式としてのFSK(Frequency Shift Keying)、直交周波数分割多重方式としてのOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)、直接拡散方式としてのDSSS(Direct Sequence Spread Spectrum)等の物理層の各仕様に基づくようにしてもよい。なお、これらFSK、OFDM、DSSSは一例であって、他のいかなる物理層の仕様を用いるようにしてもよい。
【0038】
表1は、このCB27の物理層における各パラメータの一例を示す。
【0039】
【表1】

【0040】
このCB27の送信タイミングについては、EBRを受信した後であればいかなるタイミングで発信するようにしてもよい。即ち、CB27は、EBRの受信直後に即座に発信するようにしてもよいし、またしばらくインターバルを置いてから発信するようにしてもよい。このCB27は、CAP22、CFP23の何れに属すものであってもよい。
【0041】
なお、コーディネータ3aは、かかるCB27を生成する過程において、記述番地34から読み取った属性情報に基づく、各種情報を含めるようにしてもよい。例えば、記述番地34から読み取った情報が、チャネル情報であれば、コーディネータ3aは、自らの無線通信ネットワーク3aが使用しているチャネルの情報をCB27に含め、これを発信することになる。
【0042】
上述したように、コーディネータ3bにおいて、電源投入直後の最初のスーパーフレーム前において、スキャニング期間26が既に開始されている。このため、コーディネータ3bにおいてその発信されたCB27をスキャニングし、これを捉えることが可能となる。
【0043】
このCB27をスキャニングしたコーディネータ3bは、自らの近辺において他のコーディネータ3a、ひいてはその無線通信ネットワーク10aが存在していることを識別することが可能となる。コーディネータ3bは、このCB27を取得した場合には、当該他の無線通信ネットワーク10bとの間で通信干渉を防止するための制御を行う。コーディネータ3bは、通信干渉を防止するための制御として、同期化、通信の中段、又は別チャネルの通信の開始を行うようにしてもよい。
【0044】
また、このコーディネータ3bは、かかる通信干渉を行う上で必要な属性情報をEBRにおける記述番地34に記述しておくことにより、これをコーディネータ3aから取得することができる。コーディネータ3bは、例えば属性情報としてチャネル情報をコーディネータ3aから取得した場合、コーディネータ3aが属する無線通信ネットワーク10aが使用しているチャネル以外のチャネルを選択すればよいことになる。
【0045】
またコーディネータ3bも同様に、例として、図5に示すように、他のコーディネータ3cが新たに干渉域において電源投入された場合には、当該他のコーディネータ3cからのEBRを受信した場合に、CB27を生成し、これを発信する。このときも同様に、コーディネータ3bは、受信したEBRにおける属性フラグ領域33に記述されたフラグを介して属性情報を読み取り、その読み取った属性情報に応じた各種情報をCB27に含めるようにしてもよい。
【0046】
更に、このコーディネータ3cも同様に、他のコーディネータ3からのEBRを受信した場合に、CB27を生成し、これを発信する。
【0047】
各コーディネータ3は、以下の図6に示すフローチャートに基づいて動作することになる。
【0048】
先ずステップS11において、コーディネータ3の電源がONされた後、ステップS12においてスキャニング期間26においてスキャニングを開始する。また、ステップS13において、コーディネータ3はEBRを発信する。このステップS12とステップS13は何れが前後するものであってもよい。ステップS14において、他のコーディネータ3からCBを捕捉することができた場合には、ステップS16へ、また捕捉できなかった場合にはステップS15へ移行する。
【0049】
ステップS15に移行した場合には、他のコーディネータ3が周囲に存在しないことを意味している。かかる場合には、自らのCB27を所定間隔で或いは任意間隔で発信する。これと同時にスーパーフレームに領域を割り当てた上で、デバイス2との間で通信を行うようにしてもよい。
【0050】
ステップS16に移行した場合には、他のコーディネータ3が周囲に存在することを意味している。かかる場合には、他のチャネルで通信を開始するか否かを決定する。他のチャネルで通信を開始する旨を決定しなかった場合には、ステップS17へ移行し、他のコーディネータとの間で同期を行いつつデバイス2と通信を開始するか、又は通信の中止を行う。これに対して、他のチャネルで通信を開始する旨を決定しなかった場合には、ステップS18へ移行し、空のチャネルで他のデバイス2と通信を開始する。
【0051】
また、ステップS19において、更なる他のコーディネータ3からEBRを受信した場合には、ステップS20へ移行してCBを発信する。これに対して、このステップS19においてEBRを受信することができなかった場合には、ステップS18へ戻り、かかるプロセスを繰り返すこととなる。
【0052】
上述した構成からなる本発明を適用した無線通信システム1では、互いに異なる物理層を有する2以上の無線通信ネットワーク10が共存している場合においても、一の無線通信ネットワーク10bにおけるコーディネータ3bから電源投入直後の最初のスーパーフレーム前において、EBRを発信するとともに、CBを所定期間に亘りスキャニングするためのスキャニング期間を設け、他の無線通信ネットワーク10aにおけるコーディネータ3aは、EBRを受けてCBを発信する。そして、コーディネータ3bは、スキャニング期間においてCBを取得した場合には、当該他の無線通信ネットワーク3aとの間で通信干渉を防止するための制御を行う。
【0053】
これにより、CBをスキャニングしたコーディネータ3bが、自らの近辺において他のコーディネータ3a、ひいてはその無線通信ネットワーク10aが存在していることを識別することが可能となる。そして、この共存通知信号を取得したコーディネータは、当該他の無線通信ネットワークとの間で通信干渉を防止するための制御を行うことが可能となる。
【0054】
特に本発明は、あくまでCBの取得を望むコーディネータ3b側からその要求信号としてのEBRを発信し、他のコーディネータ3aは、あくまでEBRを受信した場合のみ、CBを発信する。これにより、コーディネータ3a側にとっては他のコーディネータ3b側が必要とされている場合のみCBを発信すれば足り、それ以外の場合には特にCBを発信する必要は無くなる。このため、CBを随時発信する必要がなくなることによる処理動作の負担軽減を図ることができ、消費電力を抑えることが可能となる。
【0055】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、以下の図7に示す形態も適用可能である。
【0056】
この図7では、無線通信ネットワーク10aにおけるコーディネータ3aが動作しており、一又は複数のスーパーフレームにつき1回以上CB27を発信する。その後、この無線通信ネットワーク10aとは異なる物理層を持つ他の無線通信ネットワーク10bのコーディネータ3bの電源が投入されたものとする。その結果、コーディネータ3bにおいて、電源投入直後の最初のスーパーフレーム前において、スキャニング期間26が開始されることになる。
【0057】
このコーディネータ3bにおけるスキャニング期間26は、例として、図3に示すように、スーパーフレームの長さ以上からなる。このため、コーディネータ3aから1スーパーフレームにつき1回の割合でCB27を発信することにより、コーディネータ3bにおいてそのCB27をスキャニングし、これを捉えることが可能となる。
【0058】
このCB27をスキャニングしたコーディネータ3bは、自らの近辺において他のコーディネータ3a、ひいてはその無線通信ネットワーク10aが存在していることを識別することが可能となる。コーディネータ3bは、このCB27を取得した場合には、当該他の無線通信ネットワーク10bとの間で通信干渉を防止するための制御を行う。
【0059】
次にコーディネータ3cが同一空間に入る。このコーディネータ3cから上述したEBRを送信する。このEBRを受信したコーディネータ3aは、既に定期的に発信しているCB27以外に、更にこのEBRを受けて、これに対する応答という意味でのCB27´を送信する。その結果、このコーディネータ3cは、係るCB27´を受信して通信干渉を防止するための処理を行うことが可能となる。また、コーディネータ3aは、このCB27´の送信を終了すると、再びCB27のみを定期的に送信し、特に他からEBRを受信する等以外でこのCB27´を送信することは行わない。
【0060】
この図7の形態は、CBを定期的に送信する場合とEBRを受信した場合のみ送信する場合の混合型であるが、かかる場合においても上述した効果を奏し得ることは勿論である。
【0061】
なお、本発明では、図8に示すようにビーコンを使用しない無線通信ネットワーク間10間で共存処理を行う際においても有効である。この図8の例では、それぞれのデータストリームにおいてビーコンを使用することなく互いに同期を取ったり、通信を行う場合の例である。コーディネータ3bからはEBRをコーディネータ3aへ送信する。そして、このEBRを受信したコーディネータ3aは、これを受けてCB27をコーディネータ3bへ送信する。このCB27を送信するタイミングは、図2に示すようにビーコン21のタイミングに関係なく、いつでも送信することが可能となる。
【符号の説明】
【0062】
1 無線通信システム
2 デバイス
3 コーディネータ
10 無線通信ネットワーク
21 ビーコン
22 CAP
23 CFP
26 スキャニング期間
27 CB
31 ヘッダー
32 ペイロード部
33 属性フラグ領域
34 記述番地
35 フッター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なる物理層を有する2以上の無線通信ネットワークが共存し、上記各無線通信ネットワークは、一以上のデバイスとコーディネータ間で無線通信を行う無線通信システムにおいて、
第1の無線通信ネットワークにおける第1のコーディネータは、電源投入直後の最初のスーパーフレーム前において、共存通知信号の送信を要求するための共存通知要求を発信するとともに、共存通知信号を所定期間に亘りスキャニングするためのスキャニング期間を設け、
第2の無線通信ネットワークにおける第2のコーディネータは、上記共存通知要求を受けて共存通知信号を発信し、
上記第1のコーディネータは、上記スキャニング期間において上記共存通知信号を取得した場合には、当該他の無線通信ネットワークとの間で通信干渉を防止するための制御を行うこと
を特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
上記第1のコーディネータは、取得希望の属性情報と、その属性情報の記述番地を示すフラグとをペイロード部に記述した上記共存通知要求を発信し、
第2のコーディネータは、受信した上記共存通知要求における上記フラグを介して属性情報を読み取り、その読み取った属性情報に応じた各種情報を上記共存通知信号に含めること
を特徴とする請求項1記載の無線通信システム。
【請求項3】
上記第1のコーディネータは、他のコーディネータから共存通知要求を受信した場合には、自らの共存通知信号を発信すること
を特徴とする請求項1記載の無線通信システム。
【請求項4】
上記コーディネータは、上記スーパーフレームの長さ以上からなる上記スキャニング期間を設けること
を特徴とする請求項1記載の無線通信システム。
【請求項5】
互いに異なる物理層を有する2以上の無線通信ネットワークが共存し、上記各無線通信ネットワークは、一以上のデバイスとコーディネータ間で無線通信を行う無線通信システムの干渉防止方法において、
第1の無線通信ネットワークにおける第1のコーディネータにより、電源投入直後の最初のスーパーフレーム前において、共存通知信号の送信を要求するための共存通知要求を発信するとともに、共存通知信号を所定期間に亘りスキャニングするためのスキャニング期間を設け、
第2の無線通信ネットワークにおける第2のコーディネータにより、上記共存通知要求を受けて共存通知信号を発信し、
上記第1のコーディネータにより、上記スキャニング期間において上記共存通知信号を取得した場合には、当該他の無線通信ネットワークとの間で通信干渉を防止するための制御を行うこと
を特徴とする干渉防止方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−175386(P2012−175386A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−35185(P2011−35185)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)総務省委託「周波数ひっ迫対策のための技術試験事務」の一環、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(301022471)独立行政法人情報通信研究機構 (1,071)
【Fターム(参考)】