説明

無線通信システム、無線通信管理装置及び無線通信管理方法

【課題】多重化された無線通信の経路構築を容易にし、システム運用中に経路の接続状態を取得し、その経路の設定変更や接続切替えを行う。
【解決手段】無線通信管理システム1は、管理装置2と無線端末基地局3及び複数の無線端末4とから構成され、管理装置の画面10には、複数の無線端末4が構成する無線通信ネットワークの状態を表示する。管理装置2は通信部5と処理部6と記憶部7と表示部8と情報入力部9とから構成され、基地局3と通信部5を介してデータ通信を行う。管理装置2の通信経路構築部11は情報入力部9から入力されたデータから、通信部5と基地局3を介して無線端末4の通信経路を設定し、通信経路取得部12は無線端末4の通信状態を取得し表示部8の画面10に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線LAN(Local Area Network)や無線PAN(Personal Area Network)などに使用して好適な無線通信システム、無線通信管理装置及び無線通信管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばプラントにおいては、各種機器の監視や制御を目的として様々なセンサが設置されている。すなわち、生産機械のそばには異常発熱や漏電などを検知するセンサが設置され、排ガス口や排水溝には汚染物質の濃度などを計測するセンサが設置される。さらに、事務所や作業現場には、気温、湿度、明るさなどを検知するセンサが設置されている。これら各種のセンサによって取得されたデータは、ネットワークを介して中央操作室などに集約され、プラント全体の管理に利用される。
【0003】
従来のプラント内のネットワークは一般的に有線通信により構築されていた。しかし、近年、配線コストの低減等を目的として、有線通信を無線通信に置き換える試みが盛んに行われている。無線通信の種類としては、無線LAN、UWB、ZigBee、BlueToothなどが代表的である。ただし、通信の断絶や機器の障害が大事故につながる恐れのあるプラントでは、高い信頼性が要求されるため、汎用の無線通信をそのまま利用することは難しい。
【0004】
そこで、無線通信の信頼性を向上させるため、特許文献1に示すような無線経路の多重化方式などが提案されている。また、目に見えない無線通信を視覚化して管理を容易とするために、特許文献2に示すような無線ネットワークの管理方法も提案されている。
【特許文献1】特開2005−354626号公報
【特許文献2】特開2004−356677号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数の無線端末を配置しマルチホップ通信を行う場合には、無線端末間の親子関係や通信経路の設定が必要である。無線経路多重化のための代表的なネットワークトポロジとして、メッシュネットワークがあげられる。メッシュネットワークでは、一般に、無線端末が自律的に経路を構築するため、細かい経路設定が不要というメリットがあるが、逆に、想定外の経路が構築されてしまうというデメリットもある。プラントではシステム設計者が設定した通りの経路が使用されることが望ましいが、設置する無線端末数が多い場合には経路設定が煩雑化するという問題が生じる。
【0006】
以上の従来技術の問題点に鑑み、本発明は、無線通信ネットワークシステムにおいて、多重系化された通信経路の設定と管理を容易にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明においては、管理装置と直接通信を行う基地局を設け、管理装置に表示手段と情報入力手段とを設けて、ネットワーク上の無線端末の通信経路を定義するための経路定義情報の生成を行い、基地局からネットワーク全体の通信状態を取得して表示手段に表示し、この表示に基づいて生成された経路定義情報を基地局へ送信して複数の無線端末の通信状態を管理することを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、通信経路を多重化した無線通信ネットワークシステムを構築する際に、表示手段と情報入力手段を用いて経路定義情報の生成を行うことで、通信経路の設定時間を短縮することができる。また、無線ネットワークシステムを稼動中に、管理装置から任意に通信経路を設定、変更することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
[実施例1]
以下、本発明の実施例1について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る無線通信管理システム1の構成例を示した図である。
【0010】
この図1に示すように、無線通信管理システム1は、管理装置2と無線端末基地局3(以後、基地局と略す)、及び複数の無線端末4とから構成される。図1では基地局3を頂点として、複数の無線端末がツリー型に接続するネットワークトポロジを例としているが、その他メッシュ型やスター型などのトポロジであっても良い。また、図1では管理装置2と直接接続している基地局3のみを記載し、その他の無線端末4は省略してある。
【0011】
なおこの例では、図2Aに示すように、適用対象として、例えば多数のタンク等の配置されたプラントを想定しており、そのタンク等のそれぞれに無線端末4が設けられているものである。この他に本発明は、製造ラインの監視管理や、図2Bに示すように、複数の関門を設けた施設における人員や物品の通過の監視管理等にも適用できる。
【0012】
そこで図1において、管理装置2は通信部5と処理部6と記憶部7と表示部8と情報入力部9とから構成され、基地局3とは通信部5を介してデータ通信を行う。また、後述する処理部6の機能により、情報入力部9から入力されたデータから、通信部5と基地局3を介して無線端末4の通信経路を設定する機能と、無線端末4の通信状態を取得し表示部8の画面10に表示する機能とを有する。
【0013】
さらに、基地局3及び無線端末4は無線通信を行う機能を有しており、直接接続できない無線端末4同士はマルチホップ通信によってデータを送受信する。本明細書では、基地局3に近い側の無線端末4を親局、遠い側の無線端末4を子局と呼び、親局から子局への通信方向を下り、子局から親局への通信方向を上りと呼ぶ。管理装置2の通信部5は、管理装置2が基地局3と有線または無線で接続するためのインタフェースを有しており、基地局3とデータ通信を行う。
【0014】
また、処理部6はCPU(Central Processing Unit)などを備え、記憶部7に保存されたプログラムを実行することにより、基本機能と後述する通信経路構築部11や通信経路取得部12の機能を実現する。基本機能とは、通信部5や記憶部7からのデータを処理して表示部8へ出力する機能や、情報入力部9からのデータを処理して、通信部5や記憶部7へ出力する機能などが挙げられるが、本処理は一般的な公知技術に従って実現することができるので、本明細書では詳細な説明を省略する。
【0015】
記憶部7は、処理部6が実行するプログラムの保持や、処理部6のワークエリアとして機能し、後述の経路定義情報13や経路情報16なども保持する。表示部8は、処理部6が処理した無線端末4に関する情報を画面10上に表示するための機能を有し、例えば図1のように、画面10上に無線端末4の接続状態を表示する。情報入力部9は、例えば表示部8の画面10上から情報を入力する機能を有し、いわゆるキーボードやマウスなどを使用したGUI(Graphical User Interface)である。
【0016】
さらに図1において、表示部8に表示された無線端末4同士を結ぶ実線は最も優先度の高い通信経路であることを示し、破線は優先度の高い通信経路が使用できない場合の代替経路であることを示している。代替経路は必ずしも必要ではなく、所定の優先度が設定された複数の代替経路が存在していても良い。
【0017】
また、表示部8は、システムの通信状態に応じて、無線端末4や通信経路を表す線の形状、色彩、視覚効果などを使い分ける機能を有している。ここで、通信状態とは無線端末4の経路構成や、各経路の接続状況、通信負荷状況、通信エラー発生率などである。
【0018】
通信経路構築部11の処理について図3のフローチャートを用いて詳しく説明する。
【0019】
通信経路構築部11は情報入力部9からのデータ入力を検出すると、無線端末4の通信経路の設定を指示する内容であるか、または、通信経路の切替えを指示する内容であるかを判定する(処理S301)。経路設定の場合(Yes)には、無線端末4の通信経路を新規に構築する指示か、または、既に構築されている設定を変更する指示であるかを判定する(処理S302)。
【0020】
ここで、新規経路構築の指示である場合(Yes)には、まず、ネットワークを構成する全ての基地局3と無線端末4のアドレスを取得する(処理S303)。アドレスの取得方法としては、情報入力部9から取得しても良いし、記憶部7に予め保持されている情報を使用しても良い。その他、基地局3を介して無線端末4と直接通信を行ってアドレスを取得しても良い。なお、本明細書では無線端末を識別する情報としてアドレスと記載しているが、個々の無線端末を区別できる情報であればどのような形式を用いても良い。
【0021】
処理S303によって取得したアドレスをもとに表示部8の画面10上に無線端末4を表す絵、図、記号、アイコンなどを表示する(処理S304)。例えば、図4Aのように画面10上にアドレスが付加された無線端末4のアイコンを表示する。次に、情報入力部9からの入力情報をもとに無線端末4の経路設定状況を表示する(処理S305)。例えば、画面10上でマウスを使用して、アイコンのドラッグアンドドロップによって、図4Bに示すように、無線端末4の配置を任意に変更する。
【0022】
ここでは、例えば図2A、Bに示したような実物のプラント等を模擬したCAD(Computer-Aided Design)データを表示部8の画面10上に表示して、ユーザーが画面10上でマウス等によりアイコンのドラッグアンドドロップする際の便宜が図られるようにすることもできる。なおその場合に、CADデータは予めプラントの設計等の際に作成されたものを使用し、またその表示部8の画面10への表示は、周知の技術を用いて行うことができるので、詳細な説明は割愛する。
【0023】
さらに、無線端末4同士を任意の線で結ぶことにより通信経路を設定する。線を描画する際には、図5Aに示すように、経路の優先度を設定し、経路上に優先度を表示しても良いし、優先度に応じて線種を変えても良い。また、図5Bに示すように、無線端末4同士の親子関係を矢印で表現しても良い。図5では矢印が示す先が無線端末4の親局であることを示しており、双方向の矢印は互いに親局にも子局にもなれる関係を示している。
【0024】
次に、設定された経路の経路定義情報13を作成する(処理S306)。経路定義情報13とは無線端末4の構成と接続関係を示す情報である。図5に示すように設定したネットワークの経路定義情報13の例としては、図6に示すようなものが挙げられる。図6では無線端末4のアドレスと、各無線端末4と接続する親局のアドレスと、その親局と接続する経路の優先度とから構成される。
【0025】
ここで、例えばアドレス(11)の無線端末4(以降、無線端末4(11)と略す)は、最も優先度の高い(仮に1とする)親局は、アドレス(00)の基地局3(以降、基地局3(00)と略す)であり、次に優先度の高い親局は無線端末4(21)あることを示している。そして、通信経路構築部11は、通信部5を介して経路定義情報13を基地局3に送信する(処理S307)。
【0026】
また、処理S302において経路変更と判定された場合(No)には、経路の変更箇所や変更方法を情報入力部9より取得する(処理S308)。次に、変更箇所に応じた経路設定に関する情報を画面10に表示する(処理S309)。例えば変更方法として経路の繋ぎ替えを選択し、変更箇所として、無線端末4(22)と無線端末4(21)を接続する経路を対象としたい場合には、図7Aのように対象経路の線をマウスポンタ14によりクリックする。その際、対象経路の変更によって、影響が生じる他の経路や無線端末4を強調表示する。
【0027】
図7Aの例では、無線端末4(22)の経路とその親局が強調表示される。図7Bでは、変更方法として新たに無線端末4(41)を追加する場合の例を示す。この場合も同様に、無線端末4(41)の親局の候補となる無線端末4を強調表示する。なお、本明細書の図では強調表示を単に太線等で示しているが、形や色の違い、点滅などの動的な視覚効果を利用して強調を表現しても良い。
【0028】
さらに、変更方法として無線端末4の削除を選択する場合には、削除対象の無線端末4にマウスポンタ14をあてるか、またはクリックした時点で、同時に削除される経路などを強調表示して、削除後の影響が分かるようにする。例えば図8Aのように、無線端末4(12)を削除対象とした場合には、同時に削除される経路も強調表示する。また、図8Bのように、無線端末4(21)を削除対象とした場合には、同時に削除される経路だけでなく、優先度の最も高い経路が削除されてしまう無線端末4(22)も強調表示する。
【0029】
以上のようにして画面10上で決定された変更情報を、通信経路構築部11は、情報入力部9から取得する(処理S310)。ここで、無線端末4や通信経路の削除によって経路設定に問題が生じた場合には、優先度の再設定や経路の補完などの処理を自動で行っても良い。
【0030】
さらに図9には、無線端末4や通信経路の削除処理を示す。この図9において、まず画面10上の無線端末4が削除された場合には(処理S901)、削除された無線端末4に接続される子端末が存在するか否かを判定する(処理S902)。処理S902において子端末があると判定された場合(Yes)には、その子端末に親と接続可能な複数の経路が残っているかを判定する(処理S903)。
【0031】
ここで、処理S903において残っていないと判定された場合(No)には、削除された無線端末4の親端末と、子端末とを直接結ぶ経路を新たに生成する(処理S904)。なお、処理S902において子端末がないと判定された場合(No)、及び処理S903において残っていると判定された場合(Yes)は何もしない。
【0032】
さらに、無線端末4の親端末が複数存在する場合には、全ての親端末と接続する経路を生成してもよいし、最も優先度の高い親端末との経路のみを生成しても良い。最後に、無線端末4の削除によって不要となった経路、すなわち、削除された無線端末4とその親端末とを接続する経路を削除し(処理S905)、全ての変更を経路定義情報13に反映する(処理S906)。
【0033】
すなわち、例えば図10Aに示すように、無線端末4(31)を削除した場合には、その子端末である無線端末4(32)には、無線端末4(21)と接続する経路しか残っていない。したがって、無線端末4(32)と無線端末4(31)の親端末である基地局3(00)とを直接結ぶ経路を生成する。
【0034】
また、図10Bに示すように、無線端末4(21)を削除した場合には、子端末である無線端末4(22)には複数の経路が残っているので新たな経路は生成しない。しかし、無線端末4(12)、無線端末4(32)、無線端末4(11)、及び、無線端末4(31)にはそれぞれ1つの経路しか残っていないため、削除された無線端末4(21)の親端末である基地局3(00)と直接結ぶ経路をそれぞれ生成する。
【0035】
以上のようにして、新たに生成された経路には削除された経路と同等の最優度を設定しても良いし、予め決められた所定の優先度を設定しても良い。ここで、自動で設定または補完された経路が好ましくない場合には、再度、図3の処理S308からの処理を実施することにより、所望の経路を設定し直すことができる。
【0036】
そこで通信経路構築部11は、図3の処理S310に続いて必要な経路変更が全て完了されたか否かを判定し(処理S311)、完了の場合(Yes)には、変更された経路に関する経路定義情報13を更新する(処理S312)。そして、通信経路構築部11は、更新された経路定義情報13を、処理S307により通信部5を介して基地局3に送信する。ここで、経路定義情報13全体ではなく、更新に関わる差分情報のみを基地局3に送信しても良い。
【0037】
さらに、図3の処理S301において経路切替えの処理が必要であると判定された場合(No)には、表示部8の画面10に切替え可能な経路を表示する(処理S313)。ここで、経路切替えとは経路定義情報13によって定められた通信経路の範囲内で、現在使用されている経路を切替えることである。次に、通信経路構築部11は、切替え対象経路の選択結果を情報入力部9から取得し、切替え先無線端末4の候補を経路定義情報13に従って表示する(処理S314)。
【0038】
ここでは、例えば図6に示す経路定義情報13に従って通信経路が設定されており、現在使用されている経路が図11Aの実線で示す通りであるとする。この場合、切替え可能な経路としては、無線端末4(12)と無線端末4(11)とを接続する経路15-1、無線端末4(22)と無線端末4(21)とを接続する経路15-2、無線端末4(32)と無線端末4(31)とを接続する経路15-3の3つであるため、これらを強調表示する。
【0039】
次に、例えば経路15-2を切替え対象として選択するために、マウスポインタ14をあてるか、またはクリックした時点で、図11Bのように、切替え先の親局候補として無線端末4(11)、無線端末4(21)、無線端末4(31)を強調表示する。ただし、現在の親局である無線端末4(21)は強調表示しなくても良い。また、経路15-2が選択された時点で、その他の経路15-1や経路15-3の強調表示を解除しても良いし、そのままでも良い。
【0040】
さらに、選択した経路を他の無線端末4に繋ぎ替えることによって、経路切替えの決定を行う(処理S315)。例えば図12に示すようにマウスポインタ14で経路15-2を選択し、ドラッグアンドドロップにより無線端末4(11)に繋ぎ替える。このような方法で、全ての経路切替えの決定が完了したかを判定(処理S316)し、完了の場合(Yes)は、通信経路構築部11は通信部5を介して経路切替え命令を基地局3に送信する(処理S317)。処理S316で完了でない場合(No)は処理S313から繰り返す。
【0041】
以上のように、通信経路構築部11の処理によって、基地局3に送信された経路定義情報13や経理切替え命令は、基地局3から各無線端末4に送信される。ここで、基地局3と直接接続できない無線端末4へは、マルチホップ通信によってデータを送信する。
【0042】
通信経路取得部12の処理について図13を用いて詳しく説明する。
【0043】
通信経路取得部12は、通信部5を介して基地局3からのデータを受信すると、受信したデータの中から無線端末4のアドレスリストを抽出する(処理S1301)。アドレスリストは無線端末4がマルチホップ通信により基地局3とデータ通信を行った場合に、そのデータを中継した全ての無線端末4のアドレスである。
【0044】
例えば無線端末4(12)が無線端末4(11)と無線端末4(21)とを経由して基地局3までデータを送信する場合には、始めに図14Aに示すデータフレーム15を送信する。ここでフレームヘッダとは、フレーム開始コード、フレーム種別、フレーム長、フレームシーケンス番号などである。フレームフッタとは、CRC(Cyclic Redundancy Check)等の冗長化符号、フレーム終了コードなどである。
【0045】
また、直近の送信先アドレスは、直接接続された無線端末4同士が通信する際の送信先アドレスであり、本例ではアドレス(11)である。直近の送信元アドレスは直接接続された無線端末4同士が通信する際の送信元のアドレスであり、本例ではアドレス(12)である。送信先アドレスはデータの最終送信先となる無線端末4のアドレスであり、本例では基地局3のアドレス(00)である。送信元アドレスはデータの最初の送信元である無線端末4のアドレスであり、本例ではアドレス(12)である。
【0046】
さらに、送信データは無線端末4(12)が送信するデータ本体であり、センシングデータやコマンドなどが挙げられるが、その内容は特に限定しない。アドレスリストにはデータフレーム15を中継した無線端末4のアドレスが追加されていく。ここで、フレーム内に含まれる情報の種類や並び方には特に制約はない。
【0047】
図14Aに示すデータフレーム15を無線端末4(11)が受信した場合に、無線端末4(11)はアドレスリストに自分のアドレスを追加し、図14Bに示すデータフレーム15を無線端末4(21)に送信する。無線端末4(21)は同様に、アドレスリストに自分のアドレスを追加し、図14Cに示すデータフレーム15を基地局3(00)に送信する。以上のようにして、アドレスリストにデータを中継した無線端末4のアドレスが付加されていく。
【0048】
通信経路取得部12は処理S1301を行った後、受信したデータの送信元アドレスが経路情報16に登録されているアドレスか否かを判定する(処理S1302)。ここで、経路情報16とは無線端末4が現在使用している通信経路の状態を示す情報である。例えば図15Aに示すように、データ送信元または送信先の無線端末4のアドレスと、データを中継する無線端末4のアドレスとの関係、及び、各経路の通信状況などを有する。
【0049】
図15Aでは無線端末4(11)は基地局3(00)のみを経由してデータを送受信すること示している。また、無線端末4(11)と基地局3間の経路の通信状況としては、現在使用中(図中では○印で示している)であり、これまでに4回使用したことを示している。経路の通信状況の種類としては本例以外にも、通信の失敗回数、エラー率、データ到達率、電波強度、通信品質などを用いることもできる。
【0050】
同様に、無線端末4(12)は無線端末4(11)と基地局3(00)を経由してデータを送受信することを示しており、無線端末4(12)と無線端末4(11)間、及び、無線端末4(11)と基地局3(00)間の経路は現在使用中で、これまでにそれぞれ5回使用したことを示している。通信経路取得部12は処理S1302において、経路情報16に登録されていない無線端末4を検出した場合(No)には、経路情報16に新たに経路を追加していく(処理S1303)。例えば図15に示す通信情報の場合には、縦方向に情報が追加されていく。
【0051】
処理S1303において、新規に無線端末4が検出されなかった場合には、アドレスリストから導出できる経路が、経路情報16に登録されているものと同一か否かを判定する(処理S1304)。処理S1304において、同一と判定された場合(Yes)は、経路情報16の通信状況のみを更新する(処理S1305)。処理S1304において、同一ではないと判定された場合(No)は、経路情報16を修正し経路の削除や追加などを実施する(処理S1306)。
【0052】
例えば、図15Aに示す経路情報16が登録されている状態で、無線端末4(12)から無線端末4(11)と基地局3(00)とを経由してデータが送信された場合には、経路情報16に登録されている通信経路と完全に一致するので、通信状況のみを更新(使用回数を加算)する。また、無線端末4(22)から無線端末4(11)と基地局3(00)とを経由してデータが送信された場合には、無線端末4(22)の情報は既に登録されているが、通信経路が一致しないため、新たに無線端末4(22)の経路を経路情報16に加える。
【0053】
例えば、経路情報16は図15Bのように更新される。ここで、No.4に登録されている古い経路に関しては、通信状況を不使用中(図中では×印で示している)に変更するだけでも良いし、完全に削除して新たに登録した経路を上書きしても良い。
【0054】
次に、通信経路取得部12は経路情報16に登録されている無線端末4の中で所定時間使用されていない、もしくは、応答のないものがあるか否かを判定する(処理S1307)。所定時間応答のない無線端末4が検出された場合(Yes)には、経路情報16の中から該当する無線端末4の情報を削除、もしくは、通信状況を不使用中に変更する(処理S1308)。例えば、無線端末4(32)からの通信が一定時間途絶えた場合には、図15Bのように、No.6の無線端末4(32)に関する情報を削除または、通信状況を不使用中に変更する。
【0055】
最後に、経路情報16をもとに、無線端末4の通信状態を表示部8の画面10に表示する(処理S1309)。例えば、図15Aに示す経路情報16が登録されている場合には、図16Aのように無線端末4と通信経路の状態を表示する。図16Aでは現在使用中の経路は太線で示し、経路の使用回数を直接数字で示している。例えば無線端末4(11)と基地局3(00)間の通信経路は、合計9回使用されていることを示している。
【0056】
図16Aで示す方法以外に、現在使用中の経路を線の種類や、太さ、色、点滅などの視覚効果を使い分けることで表現しても良い。さらに、前述の経路定義情報13をもとに、通信経路の優先度にしたがって経路を示す線の視覚効果を使い分けても良い。図16Aでは、最も優先度の高い経路を実線で示し、優先度の低い経路を破線で示している。
【0057】
同様に、図15Bに示す経路情報16が登録されている場合には、図16Bのように無線端末4と通信経路の状態を表示する。ここで、例えば通信経路の使用頻度が増加した無線端末4(11)と基地局3(00)間の経路を強調表示することにより、通信状態を視覚的に分かりやすく表現することも可能である。また、通信が途絶えた無線端末4(32)は表示から完全に消去しても良いし、透過色などの視覚効果を使い、その他の無線端末4と異なる表示にしても良い。
【0058】
以上、本実施形態によれば、複数の無線端末4を使用して無線通信ネットワークシステムを構築する際に、本発明の管理装置2によって、多重系の通信経路を容易に設定することが可能となる。また、本発明の管理装置2によって、システム運用中に無線端末4の通信状況を詳細にモニタリングすると同時に、無線通信の経路を任意に変更することが可能である。
【0059】
[実施例2]
以下、本発明の実施例2について、図面を参照して詳細に説明する。
【0060】
図17は、本発明の実施形態に係る無線通信管理システム20の構成の例を示した図である。図17に示すように、無線通信管理システム20は、管理装置21と複数の基地局3、及び、複数の無線端末4とから構成される。図17では基地局3を頂点として、複数の無線端末4がツリー型に接続するネットワークトポロジを例としているが、その他メッシュ型やスター型などのトポロジであっても良い。また、図17では管理装置21と直接接続している基地局3のみを記載し、その他の無線端末4は省略してある。
【0061】
管理装置21は複数の通信部5と処理部6と記憶部7と表示部8と情報入力部9とから構成され、基地局3と通信部5を介してデータ通信を行う。また、後述する処理部6の機能により、情報入力部9から入力されたデータから、通信部5と基地局3を介して無線端末4の通信経路を設定する機能と、無線端末4の通信状態を取得し表示部8に表示する機能とを有する。
【0062】
基地局3Aと基地局3Bとはそれぞれ独自のネットワークグループA(以後グループAと略す。)及びネットワークグループB(以後グループBと略す。)を構成しており、無線端末4はどちらかのネットワークグループと接続されている。この場合、通信経路構築部11はそれぞれのグループごとに経路定義情報13を作成または更新し、基地局3へ送信する。
【0063】
通信部5、記憶部7、処理部6、表示部8、情報入力部9は実施例1と同等の機能を有しているためここでは説明を省略する。また、通信部5は1つの基地局3に対して必ず1つ必要ではなく、図18に示すように、基地局3の通信方式が同一ならば、通信部5は1つであっても良い。また、図18に示すように複数の基地局3が同一のネットワークグループを構成していても良い。
【0064】
通信経路構築部11の処理について図19を用いて詳しく説明する。
【0065】
通信経路構築部11は情報入力部9からのデータ入力を検出すると、グループA側の処理か、グループB側の処理かを判定する(処理S1901)。グループA側と判定した場合(Yes)には、グループAの通信経路の新規構築、または、経路変更、または、経路切替えを実施する(処理S1902)。本処理S1902については実施例1において図3を用いて説明しているので詳細は省略する。次に、基地局3AにグループAの経路定義情報13、または、経路切替え命令を送信する(処理S1903)。
【0066】
次に、他のネットワークグループに関する処理が必要か否かを判定する(処理S1904)。例えば図17に示すように、グループA及びグループB両方に接続する無線端末4(100)についての処理が必要な場合(No)には、グループAだけでなくグループBに関しても同様の処理S1905及び処理S1906を実行する。また、処理S1901でグループA側でないと判定した場合(No)も処理S1905及び処理S1906を実行する。
【0067】
なおここでは簡単のために二つのネットワークグループを用いた例を示したが、ネットワークグループの数に制限はない。また通信経路取得部12の処理に関しても、通信経路構築部11と同様に、グループA単独または、グループB単独、または、グループA及びグループBの両方、の何れかであるかを判定した後、それぞれのグループについて実施例1の図13で説明した処理を実行する。ここで、表示部8の画面10上では無線端末4と各通信経路をグループごとに、形状や色などの視覚効果を使い分けて表現しても良い。
【0068】
以上、本実施形態によれば、複数の基地局3及び無線端末4を使用して、複数の無線通信ネットワークシステムを構築する際に、本発明の管理装置20によって、多重化された通信経路を容易に設定することが可能となる。また、本発明による1台の管理装置21を使用するだけで、システム運用中に複数のネットワークグループの通信状況を詳細にモニタリングすると同時に、無線通信の経路を任意に変更することが可能である。
【0069】
こうして、本発明の無線通信システム、無線通信管理装置及び無線通信管理方法によれば、表示手段と情報入力手段とを設け、基地局からネットワーク全体の通信状態を取得して表示手段に表示し、この表示に基づいて生成された経路定義情報を基地局へ送信して複数の無線端末の通信状態を管理することにより、無線通信ネットワークシステムを構築する際に、通信経路の設定時間を短縮することができる。また、無線ネットワークシステムを稼動中に、管理装置から任意に通信経路を設定、変更することができるものである。
【0070】
なお、上述の実施例1及び実施例2においては、表示部8の画面10の表示例として、一画面の二次元表示のみのものを使用しているが、複数画面や、三次元表示を使用しても良い。また、本発明は、上述の説明した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載を逸脱しない範囲において、種々の変形が可能とされるものである。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明に係る無線通信管理システムの実施例1を示した構成図である。
【図2】本発明に係る無線通信管理システムの適用されたプラント等の具体例を示す構成図である。
【図3】通信経路構築部の処理の例を示したフローチャート図である。
【図4】無線端末の通信経路を初期構築する際に表示される画面の例を示した線図である。
【図5】無線端末の通信経路を初期構築する際に表示される画面の例を示した線図である。
【図6】無線通信管理システムにおける経路定義情報の例を示した線図である。
【図7】無線端末の通信経路の設定を変更する際に表示される画面の例を示した線図である。
【図8】無線端末の通信経路の設定を変更する際に表示される画面の例を示した線図である。
【図9】通信経路構築部の処理の例を示したフローチャート図である。
【図10】無線端末の通信経路の設定変更を決定した後に表示される画面の例を示した線図である。
【図11】無線端末の通信経路を切替える際に表示される画面の例を示した線図である。
【図12】無線端末の通信経路切替えを決定した後に表示される画面の例を示した線図である。
【図13】通信経路取得部の処理の例を示したフローチャート図である。
【図14】無線端末が送受信するデータフレームの構造の例を示した線図である。
【図15】無線通信管理システムにおける経路情報の例を示した線図である。
【図16】無線端末の通信状態を表示した画面の例を示した線図である。
【図17】本発明に係る無線通信管理システムの実施例2を示した構成図である。
【図18】本発明に係る無線通信管理システムの実施例2を示した構成図である。
【図19】通信経路取得部の処理の例を示したフローチャート図である。
【符号の説明】
【0072】
1,20,21…無線通信管理システム、2…管理装置、3…無線端末基地局、4…無線端末、5…通信部、6…処理部、7…記憶部、8…表示部、9…情報入力部、10…画面、11…通信経路構築部、12…通信経路取得部、13…経路定義情報、14…マウスポインタ、15…データフレーム、16…経路情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線信号により互いに通信する複数の無線端末と、前記無線端末が構築するネットワークの管理を行う管理装置とから構成され、前記無線端末の少なくとも1つは前記管理装置と直接通信を行う基地局である無線通信システムであって、
前記管理装置には表示手段と情報入力手段とを設けて、前記ネットワーク上の前記無線端末の通信経路を定義するための経路定義情報の生成を行い、
前記管理装置に、前記基地局から前記ネットワーク全体の通信状態を取得して前記表示手段に表示する通信経路取得手段と、前記基地局へ前記経路定義情報を送信する通信経路構築手段とを備え、
前記管理装置は前記基地局を介して複数の前記無線端末の通信状態を管理する
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
前記管理装置は、前記無線端末を互いに接続する際に、前記ネットワーク上の経路を優先度に応じて選択する優先経路設定手段を有し、前記基地局を介して前記無線端末間の前記通信経路の状態を取得し、前記通信経路の設定及び/または変更の指示を伝達する
ことを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記管理装置は、前記基地局から前記無線端末の通信状態を示す経路情報を取得し、前記経路情報の接続状況及び/または使用状況に応じて、前記無線端末と通信経路を示す画像の形状/線種/色/視覚効果の少なくとも一つを変えて前記表示手段に表示する
ことを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記管理装置は、前記無線端末及び/または前記通信経路を示す画像を前記表示手段に表示し、前記表示手段上の画像を前記情報入力手段により操作することによって、前記無線端末の経路設定及び/または変更に関する情報を入力する
ことを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項5】
前記管理装置は、前記基地局から前記ネットワークを構成する前記無線端末の通信情報を収集し、前記無線端末の通信経路の接続状態を取得する
ことを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項6】
複数の前記基地局を有し、前記基地局は前記無線端末と各々異なる複数の無線通信ネットワークを構築し、
前記管理装置は前記複数の無線通信ネットワークを個別に管理する
ことを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項7】
無線信号により互いに通信する複数の無線端末の少なくとも1つと直接通信することによりネットワークの管理を行う無線通信管理装置であって、
表示手段と情報入力手段により前記無線端末の通信経路を定義するための経路定義情報を生成し、
前記無線端末へ送信する通信経路構築手段と前記無線端末からネットワーク全体の通信状態を取得し表示手段に前記通信状態を表示する通信経路取得手段とを備える
ことを特徴とする無線通信管理装置。
【請求項8】
前記無線端末を互いに接続する際に、前記ネットワーク上の経路を優先度に応じて選択する優先経路設定手段を有し、
前記基地局を介して前記無線端末間の前記通信経路の状態を取得し、前記通信経路の設定及び/または変更の指示を伝達する
ことを特徴とする請求項7に記載の無線通信管理装置。
【請求項9】
前記基地局から前記無線端末の通信状態を示す経路情報を取得し、前記経路情報の接続状況及び/または使用状況に応じて、前記無線端末と通信経路を示す画像の形状/線種/色/視覚効果の少なくとも一つを変えて前記表示手段に表示する
ことを特徴とする請求項7に記載の無線通信管理装置。
【請求項10】
前記無線端末及び/または前記通信経路を示す画像を前記表示手段に表示し、前記表示手段上の画像を前記情報入力手段により操作することによって、前記無線端末の経路設定及び/または変更に関する情報を入力する
ことを特徴とする請求項7に記載の無線通信管理装置。
【請求項11】
前記基地局から前記ネットワークを構成する前記無線端末の通信情報を収集し、前記無線端末の通信経路の接続状態を取得する
ことを特徴とする請求項7に記載の無線通信管理装置。
【請求項12】
複数の前記基地局を有し、前記基地局は前記無線端末と各々異なる複数の無線通信ネットワークを構築し、
前記複数の無線通信ネットワークを個別に管理する
ことを特徴とする請求項7に記載の無線通信管理装置。
【請求項13】
無線信号により互いに通信する複数の無線端末と、前記無線端末が構築するネットワークの管理を行う管理装置とから構成され、前記無線端末の少なくとも1つは前記管理装置と直接通信を行う基地局である無線通信ネットワークの無線通信管理方法であって、
前記管理装置に表示手段と情報入力手段とを設けて、前記ネットワーク上の前記無線端末の通信経路を定義するための経路定義情報の生成を行い、
前記基地局から前記ネットワーク全体の通信状態を取得して前記管理装置の前記表示手段に表示し、前記生成された前記経路定義情報を前記基地局へ送信し、
前記基地局を介して複数の前記無線端末の通信状態を管理する
ことを特徴とする無線通信管理方法。
【請求項14】
前記無線端末を互いに接続する際に、前記ネットワーク上の経路を優先度に応じて選択する優先経路設定を行い、
前記基地局を介して前記無線端末間の前記通信経路の状態を取得し、前記通信経路の設定及び/または変更の指示を伝達する
ことを特徴とする請求項13に記載の無線通信管理方法。
【請求項15】
前記基地局から前記無線端末の通信状態を示す経路情報を取得し、前記経路情報の接続状況及び/または使用状況に応じて、前記無線端末と通信経路を示す画像の形状/線種/色/視覚効果の少なくとも一つを変えて表示する
ことを特徴とする請求項13に記載の無線通信管理方法。
【請求項16】
前記無線端末及び/または前記通信経路を示す画像を前記表示手段に表示し、前記表示手段上の画像を前記情報入力手段により操作することによって、前記無線端末の経路設定及び/または変更に関する情報を入力する
ことを特徴とする請求項13に記載の無線通信管理方法。
【請求項17】
前記基地局から前記ネットワークを構成する前記無線端末の通信情報を収集し、前記無線端末の通信経路の接続状態を取得する
ことを特徴とする請求項13に記載の無線通信管理方法。
【請求項18】
複数の前記基地局を有し、前記基地局は前記無線端末と各々異なる複数の無線通信ネットワークを構築し、
前記複数の無線通信ネットワークを個別に管理する
ことを特徴とする請求項13に記載の無線通信管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2008−294944(P2008−294944A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−140649(P2007−140649)
【出願日】平成19年5月28日(2007.5.28)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ZIGBEE
2.Bluetooth
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】