説明

無線通信システムおよび無線通信端末

【課題】無線通信端末が無線通信基地局間でハンドオーバを行う際に、通信の品質が劣化するリスクを低減する無線通信システムおよび無線通信端末を提供する。
【解決手段】無線通信システムにおいて、無線通信端末200は、接続中の基地局100Aからの通知に基づいて、周囲に存在する他の基地局(100C−D)について所定の測定を行うとともに、所定の測定の結果を基地局100Aに通知し、基地局100Aは、端末200aがハンドオーバする際、所定の測定の結果に基づいて、他の基地局(100C−D)のうち端末200aがハンドオーバする際のターゲットとなる基地局を決定するが、所定の状況においては、基地局100Aの周囲に存在する他の基地局(100B−F)のうち、所定の測定が行われなかった基地局100Bを、端末200aがハンドオーバする際のターゲットとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システムおよび無線通信端末に関するものであり、特に、無線通信基地局と、当該無線通信基地局間でハンドオーバを行う無線通信端末と、を含む無線通信システム、および当該無線通信端末に関するものである。
【背景技術】
【0002】
次世代の世界標準の無線通信方式として、LTE(Long Term Evolution)システムが3GPP(3rd Generation Partnership Project)で標準化されている。LTEシステムは、無線通信端末UE(User Equipment)と、無線通信基地局eNB(evolved Node B)と、IP(Internet Protocol)ベースのコアネットワークであるEPC(Evolved Packet Core)とによって構成されている。以下、本明細書において、無線通信基地局は、適宜「基地局」と略記し、無線通信端末(移動端末)は、適宜「端末」と略記する。
【0003】
E−UTRAN(Evolved Universal Terrestrial Radio Access Network)すなわちLTEシステムのハンドオーバについても、3GPPで標準化されている(例えば、非特許文献1および非特許文献2参照)。以下、非特許文献1および非特許文献2に規定されているLTEシステムのハンドオーバについて、その概略を説明する。
【0004】
図7は、非特許文献1に記載されているMME(Mobility Management Equipment)/S−GW(Serving-Gateway)内におけるハンドオーバを説明するシーケンス図である。LTEシステムにおいて、端末(UE)は、ハンドオーバを行う前提として、現在の待ち受け先のセルであるServing Cell(図7におけるSource eNB)の周囲に存在する他の基地局について、各種の測定を行う。この各種の測定は、Serving Cellから通知されたMeasurement Configuration(図7における1番のMeasurement Control)に基づいて、端末が、当該Serving Cellの周囲に存在する基地局に対して行うものである。Measurement Configurationは、端末に対して、RRC Connection Reconfigurationというメッセージにより送信される。ここで行われる、基地局に対する各種の測定には、例えば、RSPP(Reference Signal Received Power:信号強度)、RSRQ(Reference Signal Received Quality:信号品質)、基地局ID等の測定が含まれる。
【0005】
このような測定の結果はMeasurement ReportとしてServing Cellに通知され(図7における2番)、Serving Cellは通知された測定の結果に基づいて、端末がハンドオーバを行うターゲットとなる基地局(Target eNB)を決定する。
【0006】
ところで、このように端末が基地局間でハンドオーバを行う際に、Serving Cellの周囲に存在する他の基地局のうち一部については、上述した各種の測定を行わないようにすることもできる。これは、Serving Cellの周囲に存在する基地局のうち特定のものについては、Serving Cellから通知されるMeasurement Configurationにおいて、上述した各種の測定の対象外として登録しておくことにより実現することができる。このように、通常はハンドオーバを行う前に実行される各種の測定の対象外として、特定の基地局を登録することを、以下、基地局を「ブラックリストに登録する」と記す。
【0007】
このブラックリストは、Measurement Configurationの中にあるMeasurement Objectというパラメータに含まれている。具体的には、特定の基地局のキャリア周波数がブラックリストに含まれている場合、その基地局はブラックリストに登録されていることになる。非特許文献2においては、Measurement Objectを含むMeasurement Configurationの中のパラメータが、その他の詳細とともに規定されている。
【0008】
上述したように基地局をブラックリストに登録する契機やその方法について、3GPP Standardにおいては、特に明確に規定されていない。したがって、このようなブラックリストに登録する際の契機や方法などは、キャリアとベンダとの間の取り決めにより決定されるものと想定される。
【0009】
このように、ブラックリストに特定の基地局を登録することにより、特定の基地局を各種の測定の対象外とすることができる。したがって、このブラックリストを採用して、例えばMeasurement Reportのために各種の測定が頻発するのを防ぐことにより、消費電力を削減することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、この特許文献1には、ブラックリストを実装することにより、基地局からのシステム情報を受信することによるオーバヘッドを削減することも提案されている。
【0010】
例えば、あるマクロセル内部の領域が多数のマイクロセルでカバーされている場合、このような領域内を、電車や自動車などにより端末が高速で移動していると、当該マクロセルのみならず当該マイクロセルも含めて、各種の測定が多数頻発することが想定される。このような例においては、端末が高速で移動しているため、マイクロセルにおけるハンドオーバを頻発させることは意義が乏しく望ましくない。そこで、例えばマイクロセルを形成する基地局をブラックリストに登録しておくことにより、マクロセルを形成する基地局のみをハンドオーバのターゲット基地局とすることができる。このようにすれば、端末が各種の測定を頻繁に行うのを防ぐことにより、端末の処理負荷を軽減することができ、消費電力を削減することもできる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】3GPP TS 36.300 第10章“Mobility”
【非特許文献2】3GPP TS 36.331 第5.5節“Measurement”
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2009−516397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上述したようなブラックリストを実装することに起因して、いくつかの不都合な点も想定される。
【0014】
例えば、上述したように、ブラックリストに登録されている基地局に対して、端末は各種の測定を行わない。このため、何らかの理由によりブラックリストに登録されている基地局に対してハンドオーバする場合、Measurement Configurationを端末に対して通知し直して、ブラックリストの登録を解除してから、再び各種の測定をし直さなければならない。
【0015】
仮に、ブラックリストへの登録または登録の解除をオペレータが手動で行うものと想定すると、ブラックリスト登録済の基地局の周囲に存在する基地局が輻輳していると、ブラックリスト登録済の基地局に動的にハンドオーバを試みることは困難となる。また、端末がブラックリスト登録済の基地局に向かって高速で移動しており、かつ、当該ブラックリスト登録済の基地局の周囲に存在する基地局が輻輳している場合、前記ブラックリスト登録済の基地局にハンドオーバせざるを得ない。しかしながら、この場合に、上述したようにブラックリストの登録を解除してから再び各種の測定をし直す操作を行おうとしても、時間的に間に合わないことも想定される。すなわち、ハンドオーバ先の基地局についてブラックリストの登録を解除して再び各種の測定を行おうとしても、その基地局に適切にハンドオーバが完了する前に、ハンドオーバ元の基地局との通信が途切れてしまうことが懸念される。このようにハンドオーバが適切に実行されないと、通信の品質が悪化することになり、通話をする者にとって極めて不都合である。
【0016】
したがって、かかる事情に鑑みてなされた本発明の目的は、無線通信端末が無線通信基地局間でハンドオーバを行う際に、通信の品質が劣化するリスクを低減する無線通信システムおよび無線通信端末を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成する第1の観点に係る無線通信システムの発明は、
無線通信端末と、無線通信基地局と、を含む無線通信システムにおいて、
前記無線通信端末は、接続中の無線通信基地局からの通知に基づいて、当該接続中の無線通信基地局の周囲に存在する他の無線通信基地局について所定の測定を行うとともに、当該所定の測定の結果を当該接続中の無線通信基地局に通知し、
前記接続中の無線通信基地局は、前記無線通信端末がハンドオーバする際、前記所定の測定の結果に基づいて、前記他の無線通信基地局のうち前記無線通信端末がハンドオーバする際のターゲットとなる無線通信基地局を決定するが、所定の状況においては、前記接続中の無線通信基地局の周囲に存在する他の無線通信基地局のうち、前記所定の測定が行われなかった無線通信基地局を、前記無線通信端末がハンドオーバする際のターゲットとすることを特徴とするものである。
【0018】
第2の観点に係る発明は、第1の観点に係る無線通信システムにおいて、
前記接続中の無線通信基地局は、前記無線通信端末が所定の速度以上の速度で前記所定の測定が行われなかった無線通信基地局に向かって移動している状況であって、かつ、当該所定の測定が行われなかった無線通信基地局の周囲に存在する無線通信基地局であって前記所定の測定が行われた無線通信基地局が輻輳している状況においては、当該所定の測定が行われなかった無線通信基地局を、前記無線通信端末がハンドオーバする際のターゲットとするものである。
【0019】
また、上記目的を達成する第3の観点に係る無線通信端末の発明は、
接続中の無線通信基地局からの通知に基づいて、当該接続中の無線通信基地局の周囲に存在する他の無線通信基地局について所定の測定を行うとともに、当該所定の測定の結果を当該接続中の無線通信基地局に通知することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、無線通信システムおよび無線通信端末において、無線通信端末が無線通信基地局間でハンドオーバを行う際に、通信の品質が劣化するリスクを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係る無線通信システムの概略構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る基地局の概略構成を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る端末の概略構成を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る処理を概念的に説明する図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る基地局の記憶部に記憶される情報の例を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る処理を説明するシーケンス図である。
【図7】LTEシステムにおけるハンドオーバを説明するシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態に係る無線通信システムの概略構成の例を示す図である。本実施形態に係る無線通信システムは、例えばLTEシステムで実現することができる。
【0024】
図1に示すように、本実施形態に係る無線通信システムは、基地局100、端末200、MME(Mobility Management Equipment)310、S−GW(Serving-Gateway)320、P−GW(PDN-Gateway)330、IMS(IP Multimedia Subsystem)400を含んで構成される。図1に示した無線通信システムの例は、基地局を3つ含み、それぞれ、基地局100A、基地局100B、および基地局100Cとして表してある。これらの基地局は、それぞれがセルを形成している。なお、本実施形態に係る無線通信システムにおいては、基地局は2つ以上の任意の数とすることができる。
【0025】
基地局100は、端末200に対して、基地局100の周囲に存在する基地局について所定の測定を行うための設定を通知する。また、基地局100は、端末200から通知される所定の測定の結果に基づいて、ハンドオーバのターゲットとなる基地局を決定する。端末200は、基地局100を介して無線通信を行う。また、端末200は、基地局100から通知された設定に基づいて、基地局100の周囲に存在する基地局について所定の測定を行う。
【0026】
MME310は、端末200の位置登録や着信時の端末呼び出し処理、および基地局100の間のハンドオーバといったモビリティ管理を行う。また、MME310は、MME/S−GW内における(Intra MME/S-GW)ハンドオーバの際、S−GWに対して、ソース基地局からターゲット基地局へのユーザデータのパススイッチングを要求する(図7における12番のPath Switch Request)。S−GW320は、音声やパケットなどのユーザデータを処理する。また、S−GW320は、MME/S−GW内における(Intra MME/S-GW)ハンドオーバの際、ソース基地局からターゲット基地局へのユーザデータのパススイッチングを行う(図7における14番のSwitch DL path)。P−GW330は、IMS400とのインタフェースを有している。IMS400は、SIP(Session Initiation Protocol)を用いたマルチメディアサービスに対応した公衆通信網である。
【0027】
図1において、基地局100A、基地局100B、および基地局100Cの間は、それぞれX2と呼ばれるインタフェースで接続される。MME310と、基地局100A、基地局100B、および基地局100Cとの間は、それぞれS1−MMEと呼ばれるインタフェースで接続される。S−GW320と、基地局100A、基地局100B、および基地局100Cとの間は、それぞれS1−Uと呼ばれるインタフェースで接続される。MME310と、S−GW320との間は、S11と呼ばれるインタフェースで接続される。S−GW320と、P−GW330との間は、S5と呼ばれるインタフェースで接続される。また、P−GW330と、IMS400との間は、SGiと呼ばれるインタフェースで接続される。
【0028】
また、IMS400に対しては、図1に示したP−GW330以外のP−GWも接続されることを想定している。さらに、当該P−GW330以外のP−GWは、図1に示した各基地局100、端末200、MME310、S−GW320と同様のノード群で構成される無線通信システムが接続されることを想定している。
【0029】
図2は、図1に示した基地局100の概略構成の例を示す図である。図2に示すように、基地局100は、RFアンテナ101、RF部102、変復調部103、基地局インタフェース部104、OMT(Operation Maintenance Tool)インタフェース部105、BH(Backhaul)インタフェース部106、制御部107、記憶部108、を備えている。
【0030】
RFアンテナ101は、端末200へのRF信号の送信、および端末200からのRF信号の受信を行う。RF部102は、RFアンテナ101で送受信するRF信号を、RF帯域およびデジタル処理可能な帯域に変換する。変復調部103は、RF部102に出力される信号を変調するとともに、RF部102から入力された信号を復調する。基地局インタフェース部104は、他の基地局とのインタフェースとして機能する。OMTインタフェース部105は、オペレータが基地局100を手動で制御する際のインタフェースとして機能する。BHインタフェース部106は、コアネットワークのインタフェースとして機能する。制御部107は、基地局100を構成する各機能部をはじめ、基地局100の全体を制御および管理する。特に、本実施形態において、制御部107は、端末200がハンドオーバする際、端末200から通知された所定の測定の結果に基づいて、接続中の基地局100の周囲に存在する他の基地局のうち端末200がハンドオーバする際のターゲットとなる基地局を決定するように制御する。また、制御部107は、所定の状況においては、接続中の基地局100の周囲に存在する他の基地局のうち、所定の測定が行われなかった基地局を、端末200がハンドオーバする際のターゲットとするように制御する。制御部107による本実施形態特有のハンドオーバに係る制御については、さらに後述する。記憶部108は、各種のデータを記憶することができるメモリである。
【0031】
図3は、図1に示した端末200の概略構成の例を示す図である。図3に示すように、端末200は、RFアンテナ201、RF部202、変復調部203、制御部204、記憶部205、入力部206、デコーダ部207、マイク208、スピーカ209、表示部210、GPSアンテナ211、GPS部212、を備えている。
【0032】
RFアンテナ201は、基地局100へのRF信号の送信、および基地局100からのRF信号の受信を行う。RF部202は、RFアンテナ201で送受信するRF信号を、RF帯域およびデジタル処理可能な帯域に変換する。変復調部203は、RF部202に出力される信号を変調するとともに、RF部202から入力された信号を復調する。制御部204は、端末200を構成する各機能部をはじめ、端末200の全体を制御および管理する。特に、本実施形態において、制御部204は、接続中の基地局100からの通知に基づいて、接続中の基地局100の周囲に存在する他の基地局について所定の測定を行うとともに、所定の測定の結果を接続中の基地局100に通知するように制御する。制御部204による本実施形態特有のハンドオーバに係る制御については、さらに後述する。記憶部205は、各種のデータを記憶することができるメモリである。
【0033】
入力部206は、操作者による各種入力操作を検出する。デコーダ部207は、音声信号および画像信号をデコードする。マイク208は、音声を検出して電気信号に変換する。スピーカ209は、音声を表す電気信号を音声に変換して出力する。表示部210は、各種画像を表示する。GPSアンテナ211は、人工衛星からの信号を受信する。GPS部212は、GPS(Global Positioning System)により位置を検出する。
【0034】
図4は、本発明における基地局100と端末200との位置関係を示している。以下、図4を参照しながら、本実施形態のハンドオーバに係る処理について説明する。
【0035】
図4に示すように、基地局100については、基地局100A−100Fの6つが、図示のような位置に存在する。すなわち、基地局100Aの周囲には、他の基地局100B−Fが存在する。図4に示す端末200aは、基地局100Aと接続中すなわち通信中であり、進行方向を示す矢印の方向に高速で移動しているものとする。本発明において、高速とは、例えば電車や自動車などに乗って移動する速度を想定しており、例えば時速60kmを超える程度の速度とすることができる。なお、本発明において、高速とは、時速60kmを超える程度の速度に限定されないが、人間が歩くような速度(時速5km程度)よりは速い速度とするのが好適である。
【0036】
図4において、基地局100Bは、端末200aが移動している方向に存在している。なお、基地局100Bは、前述したブラックリストに登録されている基地局であり、Measurement Reportのための各種の測定の対象外となっているものとする。また、基地局100Cおよび100Dは、それぞれ輻輳中の基地局であるものとする。
【0037】
また、基地局100A−100Fは、それぞれの記憶部108に、それぞれ周囲に存在する基地局の各種情報を記憶しているものとする。ここで、各基地局の記憶部108に記憶しておく各種の情報とは、周囲に存在する基地局のキャリア周波数、基地局ID、位置情報(緯度および経度など)を含めるものとする。
【0038】
図5は、図4に示した基地局100Aの記憶部108に記憶する情報の例を示している。図5に示す例においては、基地局100Aの記憶部108には、左から順に、各基地局のキャリア周波数、各基地局のID、各基地局が存在する位置の緯度および経度が記憶されている。
【0039】
次に、本実施形態のハンドオーバに係る処理のシーケンスを説明する。
【0040】
図6は、本実施形態において実施するIntra MME/S-GWハンドオーバのシーケンスを示している。なお、図6においては、図4で説明したような状態になった場合に実施されるIntra MME/S-GW ハンドオーバのシーケンスを示している。すなわち、図6に示す本実施形態のハンドオーバに係る処理のシーケンスにおいては、端末(UE)は、図4に示した端末200aに相当するものとする。また、端末200aが接続中の基地局であるソース基地局(Source eNB)は、図4に示した基地局100Aに相当するものとする。さらに、端末200aがハンドオーバする際のターゲットとなるターゲット基地局(Target eNB)は、基地局100B、100C、および100Dに相当するものとする。なお、端末200aに関するソース基地局100Aのコンテキストは、ローミングに関する制限情報を含んでいるものとする。
【0041】
まず、前述した制限情報に基づいて、ソース基地局100Aは、ハンドオーバの対象となる端末200aに対して、Measurement Control(Measurement Configuration)を通知する(図6における1番の処理)。ここで、Measurement Configuration内には、Measurement Objectすなわちブラックリストに登録された基地局100Bの情報が含まれている。
【0042】
次に、ソース基地局100Aは、前記Measurement Configurationを、端末200aに送信した後で、破棄せずに自局の記憶部107に記憶しておく。それから、ソース基地局100Aはアップリンクの帯域を端末200aに割り当てる(UL allocation)。
【0043】
端末200aは、ソース基地局100Aの周囲に存在する基地局(この場合基地局100B−F)について前述した各種の測定を実施した後で、ソース基地局100AにMeasurement Reportを送信する(図6における2番の処理)。なお、このMeasurement Reportには、端末200aの速度ベクトルの情報を含むものとする。ここで、この速度ベクトルは、例えば、端末200aに搭載されたGPS部212が、GPSアンテナ211を経て人工衛星からの信号を受信して、所定の時刻における端末200aの位置を算出することにより、測定することができる。
【0044】
端末200aがソース基地局100AにMeasurement Reportを送信した後、ソース基地局100Aは、そのMeasurement Reportに基づいて、端末200aがハンドオーバする際の対象(ターゲット)となるターゲット基地局を決定する(図6における3番の処理HO decision)。ここで、ターゲット基地局は必ずしも1つの基地局に限定する必要はなく、複数の基地局から構成される基地局群とすることもできる。図4に示した状況に従って説明するため、ここでは、ターゲット基地局(群)を、電波伝搬状況を踏まえて、基地局100Cおよび100Dとして説明する。なお、ここまでの段階の処理においては、通常のハンドオーバに係る処理と同様に、ブラックリストに登録された基地局(100B)はターゲット基地局とせずに、ブラックリストに登録されていない基地局(100Cおよび100D)をターゲット基地局とする。また、ソース基地局100Aは、Measurement Report内に含まれる端末200aの速度ベクトルの情報を、記憶部107に記憶しておく。
【0045】
ターゲット基地局を決定する処理の後、ソース基地局100Aは、ターゲット基地局100Cおよび100Dに、ハンドオーバを要求する(図6における4番の処理Handover Request)。
【0046】
しかしながら、上述したように、基地局100Cおよび100Dはともに輻輳中である。したがって、これらの基地局100Cおよび100Dはともに、図6における5番の処理Admission Controlにおいて、ソース基地局100Aから要求されたQoSを満たす無線リソースを用意することができず、無線ベアラを確立することに失敗する。このため、これらの基地局100Cおよび100Dはともに、ソース基地局100Aに対して、ハンドオーバの準備が失敗した旨を通知する(図6における21番の処理Handover Preparation Failure)。
【0047】
これまでターゲット基地局としていた基地局100Cおよび100Dから、いずれもハンドオーバの準備が失敗した旨が通知されたら、ソース基地局100Aは、ブラックリストに登録済の基地局(100B)についてハンドオーバ可否の判定を行う(図6における31番の処理)。この判定では、まず、ソース基地局100Aは、記憶部107に記憶してあるMeasurement Configuration内に含まれる、ブラックリスト登録済の基地局100Bの情報、および端末200aの速度ベクトルの情報の内容を確認する。そして、ソース基地局100Aは、図5に例示したような記憶部107に記憶されている情報テーブルに基づいて、現在の端末200aと基地局100B−Dとに係る状況が所定の状況に該当するか否かを判定する。ここで、所定の状況とは、端末200aが所定の速度以上の速度すなわち高速で基地局100Bに向かって移動しており、かつ、ブラックリスト登録済の基地局100Bの周囲に存在するターゲット基地局100Cおよび100Dが輻輳中である状況とするのが好適である。現在の状況が上述した所定の状況に該当すると判定された場合、ソース基地局100Aは、ブラックリスト登録済の基地局100Bへのハンドオーバを決定する。
【0048】
すなわち、本実施形態に係る端末200aは、接続中の基地局100Aからの通知に基づいて、接続中の基地局100Aの周囲に存在する他の基地局(100Cおよび100D)について所定の測定を行うとともに、所定の測定の結果を接続中の基地局100Aに通知する。また、本実施形態に係る接続中の基地局100Aは、端末200aがハンドオーバする際、所定の測定の結果に基づいて、他の基地局(100Cおよび100D)のうち端末200aがハンドオーバする際のターゲットとなる基地局を決定する。しかしながら、接続中の基地局100Aは、所定の状況においては、接続中の基地局100Aの周囲に存在する他の基地局(100B−F)のうち、所定の測定が行われなかった基地局100Bを、端末200aがハンドオーバする際のターゲットとする。ここで、所定の状況とは、端末200aが所定の速度以上の速度で、所定の測定が行われなかった基地局100Bに向かって移動している状況であって、かつ、所定の測定が行われなかった基地局100Bの周囲に存在する基地局であって所定の測定が行われた基地局(100Cおよび100D)が輻輳している状況とするのが好適である。
【0049】
基地局100Bへのハンドオーバが決定されたら、ソース基地局100Aは、ブラックリスト登録済の基地局100Bに対して、ハンドオーバを要求する(図6における32番の処理Handover Request)。そして、基地局100Bは、図6における33番の処理であるAdmission Controlにおいて要求されたQoSが保証できる無線リソースを用意でき、無線ベアラの確立が可能な場合、ハンドオーバ要求承認をソース基地局100Aに送信する(図6における34番Handover Request Ack)。
【0050】
その後、ソース基地局100Aから基地局100Bへ端末200aのハンドオーバを行う処理は、図7に示した非特許文献1に記載のシーケンスと同様に行うことができる。
すなわち、図6に示した34番の処理の後は、図7に示したIntra MME/S-GWのハンドオーバのシーケンスにおいて、6番の後の処理に従って行うことができる。なお、仮にブラックリスト登録済の基地局100Bがハンドオーバの準備が失敗した旨を送信してきた場合も、その後の処理は、図7に示したIntra MME/S-GWのハンドオーバのシーケンスにおいて、6番の後の処理に従って行うことができる。また、仮にソース基地局100Aが、ブラックリスト登録済の基地局100BにHandover Requestを送信しない場合も、その後の処理は、図7に示したIntra MME/S-GWのハンドオーバのシーケンスにおいて、6番の後の処理に従って行うことができる。
【0051】
このように、本実施形態によれば、ブラックリスト登録済の基地局にハンドオーバせざるを得ない場合でも、Measurement Configurationの設定をし直す前にブラックリストに登録済の隣接基地局に対してハンドオーバを試みる。このため、端末と基地局との通信が途切れる可能性を低減することができる。また、本実施形態によれば、仮にブラックリストの登録または登録解除をオペレータが手動で行うとした場合でも、ブラックリスト登録済の基地局の周囲に存在する基地局が輻輳している場合に、動的にブラックリスト登録済の基地局にハンドオーバを試みることが容易になる。さらに、本実施形態によれば、Measurement Configurationの後のMeasurement Reportを送信する際のように、端末において周囲に存在する基地局に対する各種の測定の回数を減らすことができる。このため、端末の消費電力を削減することもできる。
【0052】
本発明を諸図面や実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形や修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形や修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各部材、各手段、各ステップなどに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の手段やステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【0053】
また、上述の実施例では、移動体通信システムとしてLTEを想定して説明した。しかしながら、本発明はこれに限られるものではなく、図7に示したような処理に類似する処理の流れに従って端末(移動端末)が基地局の間でハンドオーバを行う無線通信システムであれば、本発明を同様に適用することができる。
【0054】
また、上述の実施例では、端末200が移動する際の位置情報を取得するためにGPSを採用した。しかしながら、端末200が移動する際の位置情報を取得できるものであれば、本発明はGPSを採用したものに限定されない。例えば、端末200が通信を行う基地局100が存在する位置の情報または通信の電波強度などから、端末200の大まかな位置を推定する等の態様も考えられる。
【符号の説明】
【0055】
100 無線通信基地局
101 RFアンテナ
102 RF部
103 変復調部
104 基地局インタフェース部
105 OMTインタフェース部
106 BHインタフェース部
107 制御部
108 記憶部
200 無線通信端末
201 RFアンテナ
202 RF部
203 変復調部
204 制御部
205 記憶部
206 入力部
207 デコーダ部
208 マイク
209 スピーカ
210 表示部
211 GPSアンテナ
212 GPS部
310 MME
320 S−GW
330 P−GW
400 IMS


【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信端末と、無線通信基地局と、を含む無線通信システムにおいて、
前記無線通信端末は、接続中の無線通信基地局からの通知に基づいて、当該接続中の無線通信基地局の周囲に存在する他の無線通信基地局について所定の測定を行うとともに、当該所定の測定の結果を当該接続中の無線通信基地局に通知し、
前記接続中の無線通信基地局は、前記無線通信端末がハンドオーバする際、前記所定の測定の結果に基づいて、前記他の無線通信基地局のうち前記無線通信端末がハンドオーバする際のターゲットとなる無線通信基地局を決定するが、所定の状況においては、前記接続中の無線通信基地局の周囲に存在する他の無線通信基地局のうち、前記所定の測定が行われなかった無線通信基地局を、前記無線通信端末がハンドオーバする際のターゲットとすることを特徴とする、無線通信システム。
【請求項2】
前記接続中の無線通信基地局は、前記無線通信端末が所定の速度以上の速度で前記所定の測定が行われなかった無線通信基地局に向かって移動している状況であって、かつ、当該所定の測定が行われなかった無線通信基地局の周囲に存在する無線通信基地局であって前記所定の測定が行われた無線通信基地局が輻輳している状況においては、当該所定の測定が行われなかった無線通信基地局を、前記無線通信端末がハンドオーバする際のターゲットとする、請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
接続中の無線通信基地局からの通知に基づいて、当該接続中の無線通信基地局の周囲に存在する他の無線通信基地局について所定の測定を行うとともに、当該所定の測定の結果を当該接続中の無線通信基地局に通知することを特徴とする、無線通信端末。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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