説明

無線通信システムにおける最適通信位置選定方法および無線通信システムにおける最適通信位置選定処理プログラムを記録した記録媒体

【課題】アクセスポイントに対しユーザ端末が無線通信を行おうとする場合、最適な通信を可能とする設置位置(向き)をユーザに知らせる。
【解決手段】ユーザ端末2が設置型の情報処理機器である場合には、アクセスポイント1に対し、ユーザ端末2の位置(向き)を複数段階で設定し、それぞれ設定された状態で試験的通信を行って通信品質測定部24で通信品質を測定し、それぞれの測定結果に基づいて、ユーザ端末2の位置(向き)に対応付けて通信品質評価結果を通信品質評価結果出力部26から出力する。また、ユーザ端末2が、携帯型情報処理機器である場合には、ユーザ端末2を移動させながら、連続して試験的通信を行って、各試験的通信ごとに通信品質を測定し、その測定結果を位置(向き)に対する測定結果曲線で表し、その測定結果曲線から極大値を求めて、各極大値を当該情報処理機器の位置(向き)に対応付けて出力する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は情報処理機器が他の情報処理機器との間で無線通信を行う際、最適な通信品質の得られる設置場所や向きをユーザに知らせることを可能とした無線通信システムにおける最適通信位置選定方法および無線通信システムにおける最適通信位置選定処理プログラムを記録した記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】無線装置にはアンテナダイバシティなどの機能により、自動的に通信品質の向上を図る機能を有したものがある。しかし、無線装置の通信品質は、その無線装置の設置場所や装置の向きによっても大きく影響を受ける。
【0003】最近、無線LANなどの通信システムが普及しつつある。この無線LANはこれまでの有線LANに比べると、ケーブリングの繁雑さがなく、無線通信端末としてのパーソナルコンピュータ(パソコンという)などの設置場所に自由度があるなど多くの利点があることから、急速に普及しつつある。特に、最近ではノート型のパソコンなどの携帯型の情報処理機器が普及してきているため、この無線LANによる通信システムは、今後、さらに普及することが予想される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、このような無線通信を用いた通信システムは、前述したように、無線装置の設置場所や装置の向きによって通信品質が大きく影響されるという問題もある。たとえば、携帯型の情報処理機器を例にとれば、ある机の上において通信を行ったときは非常に良好な通信品質が得られたが、他の場所に移動して通信を行ったときは通信品質が大きく劣化するというようなこともしばしば発生する。また、向きを変えただけでも通信品質が変わることもある。これは、デスクトップ型の情報処理機器でも同じで、設置場所や機器の向きによって通信品質が変化することがある。
【0005】従来、この種の情報処理機器は、通信相手に対して自己の機器がどのような位置や向きに設置されたときに、どのような通信品質が得られるかといった設置位置や向きに対する通信品質をわかりやすくユーザに知らせる手段がなく、ユーザは通信品質を考慮した最適な設置場所や向きを適切に選定するのが難しい。
【0006】そこで本発明は、無線通信システムにおいて、自分の情報処理機器を用いて他の機器との間で無線通信を行う際、最適な通信品質の得られる設置場所や向きを試験的な通信を行うことによって自動的に選定し、それぞれの場所や向きに対する通信品質評価結果を、場所や向きに対応付けて提示するようにし、それによって、高品質な無線通信を可能とすることを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】上述した目的を達成するために、本発明の無線通信システムにおける最適通信位置選定方法は、少なくとも1つの第1の情報処理機器とこの第1の情報処理機器との間で無線通信を可能とする第2の情報処理機器とを有し、第2の情報処理機器が第1の情報処理機器に対して無線通信を行う際、第1の情報処理機器に対する第2の情報処理機器の位置と向きの少なくとも一方の変化による第1の情報処理機器と第2の情報処理機器間の通信品質を評価して、その評価結果を出力する無線通信システムにおける最適通信位置選定方法であって、前記第2の情報処理機器が、机上設置型の情報処理機器である場合、前記第1の情報処理機器に対する第2の情報処理機器の位置と向きの少なくとも一方を複数段階で設定し、それぞれ設定された状態で試験的な通信を行って、それぞれ設定された状態での通信品質を測定して通信品質データを出力し、それぞれの通信品質データを、当該第2の情報処理機器の位置を示す情報と向きを示す情報の少なくとも一方に対応付けして出力するようにしている。
【0008】この本発明において、前記複数段階での試験的な通信が終了したあと、前記第2の情報処理機器の位置を示す情報と向きを示す情報の少なくとも一方の情報と、前記測定された通信品質データとの関係を通信品質評価結果として出力するようにしている。
【0009】また、本発明の無線通信システムにおける最適通信位置選定方法は、少なくとも1つの第1の情報処理機器とこの第1の情報処理機器との間で無線通信を可能とする第2の情報処理機器とを有し、第2の情報処理機器が第1の情報処理機器に対して無線通信を行う際、第1の情報処理機器に対する第2の情報処理機器の位置と向きの少なくとも一方の変化による第1の情報処理機器と第2の情報処理機器間の通信品質を評価して、その評価結果を出力する無線通信システムにおける最適通信位置選定方法であって、前記第2の情報処理機器が、携帯可能な情報処理機器である場合にも、当該第2の情報処理機器を移動させながら、連続的に複数回、試験的な通信を行って、それぞれの試験的な通信ごとに通信品質を測定して通信品質データを求め、位置や向きに対する通信品質測定結果曲線として表し、その通信品質測定結果曲線から極大値を求めて、極大値となったことを報知するようにしている。
【0010】この発明において、前記極大値が複数箇所で得られた場合、その中での最大値を求めてそれを報知するようにしている。
【0011】さらに、前記連続的な複数回の試験的な通信が終了したあと、前記第2の情報処理機器の移動に対する前記測定された通信品質データとの関係を通信品質評価結果として出力するようにしている。
【0012】また、本発明の無線通信システムにおける最適通信位置選定処理プログラムを記録した記録媒体は、少なくとも1つの第1の情報処理機器とこの第1の情報処理機器との間で無線通信を可能とする第2の情報処理機器とを有し、第2の情報処理機器が第1の情報処理機器に対して無線通信を行う際、第1の情報処理機器に対する第2の情報処理機器の位置と向きの少なくとも一方の変化による第1の情報処理機器と第2の情報処理機器間の通信品質を評価して、その評価結果を出力する無線通信システムにおける最適通信位置選定選定処理プログラムを記録した記録媒体であって、前記第2の情報処理機器が机上設置型の情報処理機器である場合、その第2の情報処理機器が行う最適通信状態選定処理の処理プログラムは、第2の情報処理機器の位置と向きの少なくとも一方が或る位置または向きに複数段階で設定された状態でそれぞれ試験的な通信を行って、それぞれ設定された状態での通信品質を測定して通信品質データを出力する手順と、それぞれの通信品質データを、当該第2の情報処理機器の位置を示す情報と向きを示す情報の少なくとも一方に対応付けして出力する手順とを含む処理プログラムとしている。
【0013】この発明において、前記複数段階での試験的な通信が終了したあと、前記第2の情報処理機器の位置を示す情報と向きを示す情報の少なくとも一方の情報と、前記測定された信品質データとの関係を通信品質評価結果として出力するようにしている。
【0014】また、本発明の無線通信システムにおける最適通信位置選定選定処理プログラムを記録した記録媒体は、少なくとも1つの第1の情報処理機器とこの第1の情報処理機器との間で無線通信を可能とする第2の情報処理機器とを有し、第2の情報処理機器が第1の情報処理機器に対して無線通信を行う際、第1の情報処理機器に対する第2の情報処理機器の位置と向きの少なくとも一方の変化による第1の情報処理機器と第2の情報処理機器間の通信品質を評価して、その評価結果を出力する無線通信システムにおける最適通信位置選定選定処理プログラムを記録した記録媒体であって、前記第2の情報処理機器が携帯型の情報処理機器である場合、その前記第2の情報処理機器が行う最適通信状態選定処理の処理プログラムは、当該第2の情報処理機器を移動させながら、連続的に複数回、試験的な通信を行って、それぞれの試験的な通信ごとに通信品質を測定して通信品質データを出力する手順と、その通信品質データを位置や向きに対する通信品質測定結果曲線として表し、その通信品質測定結果曲線から極大値を求めて、極大値となったことを報知する手順とを含む処理プログラムとしている。
【0015】この発明において、前記極大値が複数箇所で得られた場合、その中での最大値を求めてそれを報知するようにしている。
【0016】さらに、前記連続的な複数回の試験的な通信が終了したあと、前記第2の情報処理機器の移動に対する前記測定された通信品質データとの関係を通信品質評価結果として出力するようにしている。
【0017】本発明は、たとえば、アクセスポイントなどの第1の情報処理機器に対して、パソコンなどのユーザ端末(第2の情報処理機器)を用いて無線通信を行う際、ユーザ端末の設置位置や向きに対応して通信品質を測定し、その評価結果をユーザに通知しようとするものである。
【0018】そして、ユーザ端末が机上設置型いわゆるデスクトップ型のパソコンなどの場合は、そのユーザ端末の位置と向きの少なくとも一方を複数段階で設定して、それぞれの設置場所で試験的な通信を行う。具体的には、ユーザ端末をある場所に設置した状態で試験的な通信を行って通信品質を測定し、次に、他のある場所に設置した状態で試験的な通信を行って通信品質を測定するという操作を何回か繰り返して行い、それぞれの測定結果に基づいて、当該ユーザ端末の位置を示す情報と向きを示す情報の少なくとも一方に対応づけて通信品質データを出力する。
【0019】これによって、ユーザは自分で設定した位置や向きに印を付けておけば、どの位置あるいはどのような向きに設置すると最適な通信が行えるかを容易に知ることができるので、パソコンなどの情報処理機器を机上に設置する際、最適な通信品質が得られる場所を選ぶことができる。
【0020】また、前記ユーザ端末(第2の情報処理機器)が携帯可能な機器である場合は、ユーザがそのユーザ端末を持って移動させながら、連続的に複数回、試験的な通信を行って、それぞれ通信品質を測定する。この携帯可能な情報処理機器の場合は、連続的な通信品質の測定が可能であり、これによって、ユーザの移動に対する測定結果曲線を得ることができ、その測定結果曲線から極大値を求めて、極大値となったときにそれをユーザに報知することで、その位置や向きに印などを付しておけば、ユーザはどの位置あるいはどのような向きとすることにより良好な通信品質が得られるかを知ることができる。
【0021】また、幾つかの極大値から最大値を求めて、それを提示することができ、これによって、ユーザはどの位置あるいはどのような向きのときに最適な通信が行えるかを容易に知ることができる。
【0022】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、この実施の形態で説明する内容は、本発明の無線通信システムにおける最適通信位置選定方法についての説明であるとともに、本発明の無線通信システムにおける最適通信位置選定処理プログラムを記録した記録媒体における最適通信位置選定処理プログラムの具体的な処理内容をも含むものである。
【0023】この実施の形態では、無線LANによる通信システムに本発明を適用した例について説明する。
【0024】図1は本発明の実施の形態を説明する通信システムの概略構成を示すもので、有線通信伝送路3に接続された第1の情報処理機器としてのアクセスポイント1と、このアクセスポイント1に対し無線通信が可能な第2の情報処理機器としてのユーザ端末2から構成されている。
【0025】アクセスポイント2は、図2に示すように、無線信号送受信部11、有線信号送受信部12、信号処理部13、通信品質測定用データ発生部14などを有している。なお、これ以外にもアクセスポイントとしての動作を行うに必要な様々な構成要素が存在するが、ここでは、本発明を説明するに必要な構成要素のみを図示し、その他の構成要素については図示および説明は省略する。
【0026】一方、ユーザ端末2は、ユーザの使用するパソコンなどの情報処理機器であり、無線信号送受信部21、信号処理部22、最適通信位置選定部23などを有している。なお、これ以外にもユーザ端末としての動作を行うに必要な様々な構成要素が存在するが、ここでは、本発明を説明するに必要な構成要素のみを図示し、その他の構成要素については図示および説明は省略する。
【0027】このユーザ端末2に設けられる最適通信位置選定部23は、通信品質測定部24、通信品質測定結果などの各種データを記憶する記憶部25、ユーザに通信品質測定結果を通信品質評価結果として出力する通信品質評価結果出力部26などを有している。
【0028】このような構成において次に具体的な動作について説明する。始めに、ユーザ端末2として、デスクトップ型のパソコン(以下、単にパソコンという)のように設置場所がある程度限定される情報処理機器を用いる場合について説明する。
【0029】この種の情報処理機器は、通常、机やテーブルの上に半固定的に設置されるが、その設置場所を幾つか選ぶことができるものとする。
【0030】この実施の形態では、図3に示すように、3つの机A1,A2,A3があって、それぞれの机に順次設置して行き、どの机に設置したときに最も良好な通信品質が得られるかを調べるものとする。なお、机A1における設置場所をP1、机A2における設置場所をP2、机A3における設置場所をP3とする。また、それぞれの机A1,A2,A3のそれぞれの設置場所P1,P2,P3に設置したとき、設置されたパソコンの向きによっても通信品質は異なってくるが、ここでは、説明をわかりやすくするために、設置場所についてのみを考慮した場合について説明し、向きを考慮した場合については後に触れる。
【0031】まず、ユーザ端末2であるパソコンを机A1上のP1の位置に設置し、その状態で、試験的な通信を行う。このとき、ユーザは位置情報としてP1を入力するとともに、試験を開始するための指示を与える。これによって、信号処理部22によって通信品質を測定するための試験的な信号が作成され、その試験的な信号が無線信号送受信部21から発信される。そして、アクセスポイント1がそれを受信すると、アクセスポイント1では、通信品質測定用データ発生部14によって通信品質測定用データが生成され、その通信品質測定用データが無線信号送受信部11から送出される。
【0032】このアクセスポイント1からの通信品質測定用データをユーザ端末2の無線信号送受信部21が受けると、信号処理部22の指示によってその受信データを通信品質測定部23に渡す。
【0033】これによって、通信品質測定部24では受信データに対してエラーレートなどを計算し、それを通信品質測定値として出力する。この通信品質測定値は、そのときの位置情報(この場合はP1)に対応付けられて記憶部25に記憶される。
【0034】次に、ユーザ端末2を机A2上のP2の位置に設置し、その状態で、試験的な通信を行う。このとき、ユーザは位置情報としてP2を入力するとともに、試験を開始するための指示を与える。これによって、信号処理部22によって通信品質を測定するための試験的な信号が作成され、その試験的な信号が無線信号送受信部21から発信される。そして、アクセスポイント1がそれを受信すると、アクセスポイント1では、通信品質測定用データ発生部14によって生成された通信品質測定用データを送信する。
【0035】このアクセスポイント1からの通信品質測定用データをユーザ端末2の無線送受信部21が受けると、信号処理部22の指示によってその受信信号を通信品質測定部23に渡す。
【0036】これによって、通信品質測定部24では受信信号に対してエラーレートなどを計算し、それを通信品質測定値として出力する。この通信品質測定値はそのときの位置情報(この場合はP2)に対応付けられた記憶部25に記憶される。
【0037】次に、ユーザ端末2を机A3上のP3の位置に設置し、同様の処理を行う。
【0038】図4はこのようにして得られた通信品質評価結果を示すもので、横軸にはユーザ端末2であるパソコンの設置位置(机A1,A2,A3上のそれぞれの位置P1,P2,P3)をとり、縦軸に通信品質測定部24によって得られた通信品質測定値y1.y2,y3をとって示すものである。なお、ここでは通信品質測定値は値の大きい方が優れた通信品質であるとする。
【0039】この図4の例では、机A2に設置した場合の通信品質y2が他の通信品質y1,y3に比べて大きい値であり、この3つの机A1,A2,A3のなかでは机A2に設置した場合が最も良好な通信が行えることがわかる。
【0040】なお、このような結果を得るために、ユーザが行う操作としては、まず、設定する場所を選ぶ。たとえば、ユーザ端末2を机A1に設置して、試験的な通信を開始するが、このとき、そのユーザ端末2に位置情報としてP1を入力して試験的な通信を行う。同様に、他の机A2,A3においてもそれぞれの位置情報P2,P3を入力して試験的な通信を行う。
【0041】このような操作をユーザが行うことによって、通信品質評価結果出力部26からは、机A1,A2,A3のそれぞれの位置P1,P2,P3に対する通信品質測定値が出力され、それが通信品質評価結果としてユーザ端末2の表示画面上に表示される。
【0042】この表示の仕方は、それぞれの位置P1,P2,P3に対する通信品質測定値を一覧表の形式で表示したり、図4のようなグラフ形式での表示を行ったり、また、表示画面上での表示だけではなく、音声などによってもユーザに提示することができ、その他にも種々考えられるが、表示の仕方については限定されるものではない。
【0043】また、これまでの説明では、予めそれぞれの場所に設置された幾つかの机の中から設置する机を選択して、順次、ユーザ端末2を設置して、それぞれ試験的な通信を行い、それぞれの机における通信品質評価を得るようにした例を示したが、これに限られるものではなく、ある1つの机の上で、設置位置を何カ所か変えて、それぞれ試験的な通信を行い、それぞれの位置における通信品質評価を得るようにしてもい。たとえば、図5R>5に示すように、机A2を例に取れば、机A2上で設置位置をP21,P22,P23というように選んで、それぞれの位置にユーザ端末2を順次、設置して、前述同様の試験的な通信を行って、それぞれの位置P21,P22,P23における通信品質測定を行って、その結果をユーザに提示するようにしてもよい。
【0044】この場合、通信品質結果が出たあとでその位置が明確にわかるようにするために、それぞれの設置位置に、固有の番号などが付されたシール(これをここでは設置位置指示シールという)などを貼っておくようにするのも1つの方法である。すなわち、まず、P21の位置に「p21」と書かれた設置位置指示シールを貼り、ユーザ端末2を設置して、前述同様の試験的な通信を行う。それが終了すると、今度はP22の位置に「p22」と書かれた設置位置指示シールを貼り、ユーザ端末2を設置して、前述同様の試験的な通信を行うというような操作を繰り返す。
【0045】これによって、たとえば、P22の位置に設置したときが最も良好な通信品質が得られることがわかれば、P21の位置に貼ったシール上にユーザ端末2を設置すればよい。このように、設置位置を示す設置位置指示シールを貼るという操作は、前述した図3の場合にも適用できることはいうまでもなく、この図3の例では、机の数が多く設置場所を何回も変えて試験的な通信を行う場合など、それぞれの机とその通信品質データの関係が、設置位置指示シールによって後からでも明確にわかるので便利である。
【0046】また、図3による説明では、机A2が他の机A1,A3に比べて良好な通信品質が得られるということであったが、その机A2の上で図5による操作を施すことによって、より良好な通信品質の得られる位置を見つけることができる。
【0047】さらに、これまでの説明では、それぞれの設置位置におけるユーザ端末2の向きについては触れなかったが、通信品質測定を行う際に、それぞれの設置位置において、ユーザ端末2の向きを変えてそれぞれの向きごとに通信品質を測定するようにすることもできる。これを図6により説明する。
【0048】図6は図3に示される机A2におけるP2の位置にユーザ端末2を設置した場合であり、ここでは、機器の向きを矢印Q1,Q2,Q3のそれぞれに設定した例を説明する。この場合、通信品質測定結果が出たあとでも、その向きがわかるようにするために、それぞれの向きを示すシール(たとえば、矢印や固有の番号などが描かれているシールであり、これをここでは方向指示シールと呼ぶ)などを貼っておくようにするのも1つの方法である。
【0049】すなわち、まず、P2の位置にQ1の向きを表す方向指示シールを貼り、その向きにユーザ端末2を設置して、前述同様の試験的な通信を行う。それが終了すると、今度はQ2の向きを表す方向指示シールを貼り、ユーザ端末2を設置して、前述同様の試験的な通信を行う。それが終了すると、今度はQ3の向きを表す方向指示シールを貼り、ユーザ端末2を設置して、前述同様の試験的な通信を行う。
【0050】なお、このように、ある位置における機器の向きごとに通信品質を求める場合、ユーザに提示する結果は、それぞれの位置とその位置におけるそれぞれの向きによって得られる通信品質結果を通信品質評価結果として提示する。
【0051】これによって、たとえば、ユーザ端末2をP1の位置に設置し、かつ、その向きをQ1の向きに設置したときが最も良好な通信品質が得られることがわかれば、P1の位置に貼られたQ1の向きを表す方向指示シールにしたがって、その向きにパソコンを設置すればよい。
【0052】以上はユーザ端末2がデスクトップ型のパソコンのように、設置場所がある程度限定される場合であったが、次に、ユーザ端末として、ノート型パソコンなどのように使用場所の自由度の高い情報処理機器を用いた場合について説明する。
【0053】このノートパソコンの場合も、試験的な通信を行って通信品質を求めること自体はデスクトップ型パソコンと同じであるが、このノートパソコンの場合は、持ち運びが自由であるため、通信品質を連続的に求めることが可能となる。以下に説明する。
【0054】図7はノートパソコン(ユーザ端末2)を矢印R方向に移動しながらアクセスポイントに対する通信品質を求める例を説明する図である。この場合、連続的に通信品質を求めるが、この通信品質を求める動作は一定時間間隔ごとに行う。つまり、試験的な通信品質を求めるための一連の処理は、前述したように、ユーザ端末2から試験を行うための信号をアクセスポイント1に送信し、アクセスポイント1からそれに対する応答信号をユーザ端末2が受信して、その受信信号に対しエラーレートなどを計算して通信品質測定結果を出すまでの処理である。
【0055】したがって、この一連の処理を行うに必要な時間ごとに、それぞれの場所における通信品質を出力する。なお、1回の通信品質を求めた後、すこし間をおいて次の通信品質を求めるようにしてもよいが、ここでは、連続的に通信品質を求める場合について説明する。
【0056】今、ユーザはユーザ端末2としてのノートパソコンを持ち、R1の位置からスタートしてRnの位置まで移動し、その間に連続的に通信品質を求めて行く。
【0057】このように、ユーザが図7の矢印Rに沿って移動しながら連続的に通信品質を測定して得られた通信品質評価結果を図8に示す。この図8は横軸にユーザの移動位置をとり、縦軸に通信品質測定部24で求められる通信品質測定値をとって示すもので、この図9からもわかるように、通信品質測定値の極大値が幾つか存在する。この図8の例では、極大値C1,C2.C3,C4が存在する。通信品質測定部24では極大値が得られると、その時点で通信品質評価結果出力部26によって、ユーザに対し、何らかの手段で極大値が得られたことを報知するとともに、その通信品質測定値の極大値を記憶手段25に記憶する。
【0058】この記憶手段25に極大値を記憶する際、その極大値に何らかの見出しを付けて記憶する。この見出しは、単に番号などでもよく、たとえば、NO.1,NO.2,・・・といった番号を用意し、その番号とそのときの極大値を対応づけて記憶させる。また、極大値が得られたことをユーザに報知する方法としては、たとえば、表示画面上に見出し番号に対応させてその極大値を表示するようにしたり、音声などによって、見出し番号に対応させてその極大値を通知するようにしてもよく、その方法は特に限定されるものではない。
【0059】そして、ユーザは、極大値となったことを知らされると、その場所に見出し番号を表すシール(見出し番号シールと呼ぶ)を貼っておく。たとえば、図8において、極大値C1が得られた位置がR2の位置であるとすると、そのR2の位置にNO.1という見出し番号シールを貼り、 極大値C2が得られた位置がR3の位置であるとすると、そのR3の位置にNO.2という見出し番号シールを貼るというように、それぞれの極大値が得られるごとに、その位置に番号を表すシールを貼っておく。
【0060】そして、ある移動範囲(図7においてはR1からRnまで)における移動が終了すると、それまでに得られた極大の通信品質を示す値をリストアップしてそれをユーザに提示する。この提示の仕方は、図8のようなグラフ形式で示してもよいし、また、見出し番号と極大値を対応付けた一覧表形式で示してもよく、その表示の仕方は特に限定されるものではない。なお、この表示を行う際、最大値の部分を表示は、他の極大点の部分と一目で区別できるような表示(たとえば、色を変えたるなど)を行うようにすることもできる。
【0061】ユーザはその表示によって最も良好な通信品質の得られる位置を確認する。たとえば、この場合、図8からもわかるように、極大値C3がこの区間では最大値となるので、極大値C3に対応する見出し番号(NO.3)の位置が最も良好な通信品質が得られるといえる。したがって、NO.3というシールの貼った位置で通信を行うようにすれば、最もよい通信品質が得られる可能性が高い。
【0062】なお、ユーザ端末2がノートパソコンのような携帯用情報処理機器の場合も、位置だけではなく、それそれの位置において向きを変化させることによって、最も良好な通信品質が得られる向きを特定することもできる。たとえば、 NO.3というシールの貼った位置において、そのノートパソコンの向きを変えながら通信品質測定を行うことによって、幾つかの極大値が得られる可能性もある。そして、幾つかの極大値の中で最大の通信品質測定値となった向きを見つけ、その向きで通信を行えば、より良好な通信品質での通信が可能となる。
【0063】なお、本発明は以上説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能となるものである。たとえば、ユーザの持つ通信機器の通信相手となる通信機器(アクセスポイント)は、これまでの説明では1台である場合について説明してきたが、このアクセスポイントは複数存在していてる場合にも適用することができる。たとえば、図9に示すように、複数のアクセスポイント1a,1b,1c,・・・が存在する場合にも適用できることは勿論である。この場合、それぞれのアクセスポイント1a,1b,1c,・・・ごとに、これまで説明した設置場所や向きに対する通信品質データを得て、それぞれのアクセスポイント1a,1b,1c,・・・ごとに、設置位置や向きに対応した通信品質評価結果をユーザに提示する。
【0064】また、これまでの説明では、アクセスポイントとの間で通信を行う場合を想定した説明であったが、これに限られるものではなく、一般的な情報処理機器間での無線通信を行う場合にも適応できるものである。さらに、前述の実施の形態では、ユーザ端末2の位置や向きを特定するためにシールを貼っておく例で説明したが、これに限られるものではなく他の方法で位置の特定を行うようにしてもよい。
【0065】また、以上説明した本発明の最適通信位置選定処理を行う処理プログラムは、フロッピィディスク、光ディスク、ハードディスクなどの記録媒体に記録させておくことができ、本発明はその記録媒体をも含むものである。また、ネットワークから処理プログラムを得るようにしてもよい。
【0066】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、たとえば、ユーザが自分のパソコンなどの情報処理機器(第2の情報処理機器)を用いてアクセスポイント(第2の情報処理機器)などとの間で通信を行うような場合、どの場所あるいはどの向きに設置すれば良好な通信品質が得られるかを容易に知ることができる、特に、本発明では、それぞれの設置場所やそれぞれの向きに対応づけて通信品質評価結果をユーザに提示できるので、どの場所(向き)が通信品質が悪くどの場所(向き)が通信品質が良いかが明確にわかり、それぞれ場所や向きに印などを付しておけば、最適な通信品質が可能となる場所(向き)にパソコンなどの情報処理機器を設置することができ、それによって、良好な通信状態での通信が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態を説明するための無線通信システムの概略構成を示す図である。
【図2】図1で示されたアクセスポイント(第1の情報処理機器)とユーザ端末(第2の情報処理機器)の構成を示す図である。
【図3】ユーザ端末(第2の情報処理機器)を場所の異なる机の上に次々に設置してそれぞれの通信品質を測定する例を説明する図である。
【図4】図3で示す操作を行って得られた通信品質評価結果の一例を示す図である。
【図5】ユーザ端末(第2の情報処理機器)をある1つの机の上で設置場所を幾つか変えて、それぞれの通信品質を測定する例を説明する図である。
【図6】図3の例においてある机の上でユーザ端末の向きを変えてそれぞれの通信品質を測定する例を説明する図である。
【図7】携帯可能なユーザ端末(第2の情報処理機器)をユーザが持って移動しながら連続的に通信品質を測定する例を説明する図である。
【図8】図7で示す操作を行って得られた通信品質評価結果の一例を示す図である。
【図9】通信相手としてのアクセスポイントが複数存在する通信システムの概略的な構成を示す図である。
【符号の説明】
1 アクセスポイント
2 ユーザ端末
3 有線通信伝送路
11 無線信号送受信部
12 有線信号送受信部
13 信号処理部
14 通信品質測定用データ発生部
21 無線信号送受信部
22 信号処理部
23 最適通信位置選定部
24 通信品質測定部
25 記憶部
26 通信品質評価結果出力部
C1,C2,C3,C4 極大値
A1,A2,A3 机
P1,P2,P3 机A1,A2,A3の位置
P21.P22,P23 机A2上における位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】 少なくとも1つの第1の情報処理機器とこの第1の情報処理機器との間で無線通信を可能とする第2の情報処理機器とを有し、第2の情報処理機器が第1の情報処理機器に対して無線通信を行う際、第1の情報処理機器に対する第2の情報処理機器の位置と向きの少なくとも一方の変化による第1の情報処理機器と第2の情報処理機器間の通信品質を評価して、その評価結果を出力する無線通信システムにおける最適通信位置選定方法であって、前記第2の情報処理機器が、机上設置型の情報処理機器である場合、前記第1の情報処理機器に対する第2の情報処理機器の位置と向きの少なくとも一方を複数段階で設定し、それぞれ設定された状態で試験的な通信を行って、それぞれ設定された状態での通信品質を測定して通信品質データを出力し、それぞれの通信品質データを、当該第2の情報処理機器の位置を示す情報と向きを示す情報の少なくとも一方に対応付けして出力することを特徴とする無線通信システムにおける最適通信位置選定方法。
【請求項2】 前記複数段階での試験的な通信が終了したあと、前記第2の情報処理機器の位置を示す情報と向きを示す情報の少なくとも一方の情報と、前記測定された通信品質データとの関係を通信品質評価結果として出力することを特徴とする請求項1記載の無線通信システムにおける最適通信位置選定方法。
【請求項3】 少なくとも1つの第1の情報処理機器とこの第1の情報処理機器との間で無線通信を可能とする第2の情報処理機器とを有し、第2の情報処理機器が第1の情報処理機器に対して無線通信を行う際、第1の情報処理機器に対する第2の情報処理機器の位置と向きの少なくとも一方の変化による第1の情報処理機器と第2の情報処理機器間の通信品質を評価して、その評価結果を出力する無線通信システムにおける最適通信位置選定方法であって、前記第2の情報処理機器が、携帯可能な情報処理機器である場合、当該第2の情報処理機器を移動させながら、連続的に複数回、試験的な通信を行って、それぞれの試験的な通信ごとに通信品質を測定して通信品質データを出力し、位置や向きに対する通信品質測定結果曲線として表し、その通信品質測定結果曲線から極大値を求めて、極大値となったことを報知することを特徴とする無線通信システムにおける最適通信位置選定方法。
【請求項4】 前記極大値が複数箇所で得られた場合、その中での最大値を求めてそれを報知することを特徴とする請求項3記載の無線通信システムにおける最適通信位置選定方法。
【請求項5】 前記連続的な複数回の試験的な通信が終了したあと、前記第2の情報処理機器の移動に対する前記測定された通信品質データとの関係を通信品質評価結果として出力することを特徴とする請求項3または4記載の無線通信システムにおける最適通信位置選定方法。
【請求項6】 少なくとも1つの第1の情報処理機器とこの第1の情報処理機器との間で無線通信を可能とする第2の情報処理機器とを有し、第2の情報処理機器が第1の情報処理機器に対して無線通信を行う際、第1の情報処理機器に対する第2の情報処理機器の位置と向きの少なくとも一方の変化による第1の情報処理機器と第2の情報処理機器間の通信品質を評価して、その評価結果を出力する無線通信システムにおける最適通信位置選定処理プログラムを記録した記録媒体であって、前記第2の情報処理機器が机上設置型の情報処理機器である場合、その第2の情報処理機器が行う最適通信状態選定処理の処理プログラムは、第2の情報処理機器の位置と向きの少なくとも一方が或る位置または向きに複数段階で設定された状態でそれぞれ試験的な通信を行って、それぞれ設定された状態での通信品質を測定して通信品質データを出力する手順と、それぞれの通信品質データを、当該第2の情報処理機器の位置を示す情報と向きを示す情報の少なくとも一方に対応付けして出力する手順と、を含むことを特徴とする無線通信システムにおける最適通信位置選定処理プログラムを記録した記録媒体。
【請求項7】 前記複数段階での試験的な通信が終了したあと、前記第2の情報処理機器の位置を示す情報と向きを示す情報の少なくとも一方の情報と、前記測定された通信品質データとの関係を通信品質評価結果として出力することを特徴とする請求項6記載の無線通信システムにおける最適通信位置選定処理プログラムを記録した記録媒体。
【請求項8】 少なくとも1つの第1の情報処理機器とこの第1の情報処理機器との間で無線通信を可能とする第2の情報処理機器とを有し、第2の情報処理機器が第1の情報処理機器に対して無線通信を行う際、第1の情報処理機器に対する第2の情報処理機器の位置と向きの少なくとも一方の変化による第1の情報処理機器と第2の情報処理機器間の通信品質を評価して、その評価結果を出力する無線通信システムにおける最適通信位置選定処理プログラムを記録した記録媒体であって、前記第2の情報処理機器が携帯型の情報処理機器である場合、その前記第2の情報処理機器が行う最適通信状態選定処理の処理プログラムは、当該第2の情報処理機器を移動させながら、連続的に複数回、試験的な通信を行って、それぞれの試験的な通信ごとに通信品質を測定して通信品質データを出力する手順と、その通信品質データを位置や向きに対する通信品質測定結果曲線として表し、その通信品質測定結果曲線から極大値を求めて、極大値となったことを報知する手順と、を含むことを特徴とする無線通信システムにおける最適通信位置選定処理プログラムを記録した記録媒体。
【請求項9】 前記極大値が複数箇所で得られた場合、その中での最大値を求めてそれを報知することを特徴とする請求項8記載の無線通信システムにおける最適通信位置選定処理プログラムを記録した記録媒体。
【請求項10】 前記連続的な複数回の試験的な通信が終了したあと、前記第2の情報処理機器の移動に対する前記測定された通信品質データとの関係を通信品質評価結果として出力することを特徴とする請求項8または9記載の無線通信システムにおける最適通信位置選定処理プログラムを記録した記録媒体。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図2】
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【図8】
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【図9】
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