説明

無線通信システムの通信チャネルで情報を再送信する方法

【課題】無線通信システムの通信チャネルで情報を再送信する適応型増分型冗長性のハイブリッドARQ方法を開示する。
【解決手段】復号化するために、所望の冗長性を与えるために再送信の符号の数と変調と符号化を変化させるために、一定長のフレーム内で符号多重化が使用される。符号領域における適応型ハイブリッドARQの動作により、冗長性を効率よく送信するためのきめ細かな粒度が得られる。無線通信システムの通信チャネルで情報を再送信する方法では、前記通信チャネルは複数の一定長のフレームを有し、前記各フレームは等しい長さの複数のタイムスロットに分割され、複数の符号の内の1つの符号あるいは複数の符号を用いて、一定長のフレーム内で以前の送信を符号多重化された再送信で送信するステップを有し、前記再送信用に用いられる符号の数は通信チャネルの状態に応じて変わる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システムに対し、特にエラーの存在の時、及び低品質の通信チャネルの時に通信システムで情報を再送信する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信システムにおいては、エアインターフェイスを用いて移動局(例、携帯電話)と基地局又は他の通信システム機器との間で情報を交換している。エアインターフェイスは通常複数の通信チャネルを含む。
【0003】
従来公知のようにCDMAベースのシステムは、通信チャネルを介して個々に同時に伝送を多重化する独自の符号を用いている。CDMAベースのシステムにおいては伝送持続時間は一定であり、そしてユーザは符号領域で資源を共有する。Universal Mobile Telecommunication System(UMTS)標準のHigh Speed Downlink Packet Access(HSDPA)仕様においては、例えば利用可能な資源は、標準の5個の5メガヘルツチャネルバンド幅内で回路切り替えされた音声ユーザとデータユーザの間で共有される。HSDPAは、例えば0.67ミリ秒の等しい持続時間の3個のタイムスロットを含む2ミリ秒の固定フレームを採用している。音声トラフィックのリアルタイム性により、資源(パワー、符号等)が最初に音声に割り当てられる。リアルタイムのサービスのニーズを満足した後、残りの資源がフレームごとのベースに基づいて時間多重化方法で複数のデータユーザ間で共有される。HSDPAは1人のユーザがフレーム内で資源を完全に利用することが出来ない場合に、フレーム内の資源を完全に利用するためにフレーム内で多重化された符号を用いる。
【0004】
いずれかの通信チャネルの品質は、ユーザのいる場所、ユーザの移動速度、他のセルからの干渉のようなファクタに基づいて変動する。例えば基地局と移動局との間の特定のチャネルは、ある時点では許容可能なスループットを有し、又別の時点では許容できないスループットしか有さないことがある。かくして低品質の通信チャネルを介して送信された情報は、受信情報がエラーを含む程度に悪影響を受ける。無線通信システムにおいては、情報は送信中に起こるエラーを保証するためにチャネル符号化される。しかしチャネル符号化のみではエラーを十分には保証できない。従ってシステムは様々なリンクレイヤ再生プロトコル、例えば再送信方法を用いてこれらのエラーを保証している。
【0005】
現在広く用いられている再送信方法は、自動再送リクエスト(ARQ)である。ARQはエラーを含まずに受信した通信チャネルを介して送信された情報を確認する方法である。受信機は送信器に送信された情報がエラーを含んでないことを確認するメッセージを送る。送信された情報がエラーを含んでいる場合には、受信機は再送信を要求するメッセージを送る。送信器は以前に送信した情報の全てあるいは一部を、同一あるいは別のチャネル符号化を用いて再送信することが出来る。従来公知のように、増分的冗長性(incremental redundancy(IR))送信とソフトコンバイニング(ハイブリッドARQとも称する)を用いて、ARQの効率を改善している。例えば失われたデータフレームが再送信されたときには受信機はフレームの複数の受信したコピーを組み合わせて正しく復号化する可能性をあげている。別法として送信器は、失われたフレームの別のコピーを再送信する代わりに追加的なパリティ情報を送信することもある。
【0006】
異なる増分的冗長性送信用に伝送レートが異なるような増分的冗長性を行なう1つの方法は、米国特許出願第09/725、438号に開示されている。上記文献に開示されているように、異なる伝送レートは、情報ブロックサイズを変化させずに送信時間を変化させることにより得られる。上記の特許出願の明細書では、前の増分的冗長性伝送の品質に基づいて、再送信はフレームを正しく復号化するのに必要な冗長性を追加している。例えば1回目の送信が4個のタイムスロットを介して実行された場合には、情報ブロックを正しく復号化するために、前の送信の品質が2個のタイムスロットの送信のみを必要とする場合には2個のタイムスロットを介して再送信が行なわれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来技術において適応型(自動的)増分的冗長性スキームは、様々な長さの伝送を必要とし、このためにシグナリング伝送の実行と制御の観点からシステムがより複雑となる。更にまた多くの実際のシステムにおいて、冗長性の送信を行なうためのタイムスロットの持続時間により提供される粒度(選択)性は粗く、そのために帯域幅の効率的な使用を促進することは出来ない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記従来技術の欠点は、本発明の適応型増分的冗長性(すなわちハイブリッドARQ方法)により解決される。本発明の方法は、所望の冗長性に正確に適合するためにフレームの長さを時間的に一定に維持しながら符号の数を変えることにより、伝送の時間的長さが可変になることを回避する。これは符号分割多重化を介して時間的な並列送信である。符号領域における適応型ハイブリッドARQの操作は、冗長性をより効率的に送信するようなはるかに細かい粒度を提供することが出来る。
【0009】
本発明の一実施例においては複数の一定長さのフレームを有し、各フレームが等しい持続時間の複数のタイムスロットに分割されるような通信チャネルで情報を再送信する方法は、複数の符号の内の1つあるいは複数のものを用いて一定長さのフレームの1つ内に前の送信の再送信を符号多重化するステップを含む。再送信に用いられる符号の数は通信チャネルの状態によって変動する。かくして本発明による適応型ハイブリッドARQスキームは、再送信用には元の送信とは異なる変調系、符号化系、及び符号の数を用いる。従って異なる長さの伝送に関連する複雑性及び他の問題を回避することが出来る。フレームの長さを一定に維持することにより、第3世代の無線システムの将来のバージョンに容易に移行することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施例による通信チャネルフォーマットを単純化したブロック図。
【図2】本発明の他の実施例による通信チャネルフォーマットを単純化したブロック図。
【図3】本発明の一実施例による受領確認と受領未確認を表す通信チャネルフォーマットを単純化したブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1はHSDPA標準の無線データ伝送を例に本発明の一実施例を示したものである。具体的に説明すると、図1は通信チャネルフォーマット100の単純化したブロック図であり、データチャネル110を用いて公知の技術に従って情報を送信する。制御チャネル150を用いてデータチャネル110のデータ伝送に関連する制御情報を送信する。
【0012】
図1の実施例においては、通信チャネルフォーマット100は、3個のデータフレーム101−103を有し、それぞれが2.0ミリ秒の一定の長さ(持続時間)を有する。各データフレーム101−103は、3個のタイムスロット120に分割され、それぞれが0.67ミリ秒の一定長さ(持続時間)を有する。この例は本発明の単なる一実施例で、本発明は他のフレームフォーマットにも適用できる。
【0013】
本発明の一実施例によれば、符号多重化を用いて適応型増分的冗長性(すなわちハイブリッドARQスキーム)で一定長さのデータフレーム101−103内で情報を送信する。一定長さのタイムスロットで情報を送信するハイブリッドの符号と時間多重化スキームに関しては、前掲の米国特許出願に開示されている。
【0014】
図1に示すようにユーザA,B,C,Dからの伝送は、データフレーム101内で符号多重化される。具体的に説明すると、データ通信111−114とそれに関連する制御チャネル151−154は、データフレーム101内で送信される。例として24個の符号が使用するのに割り当てられる。データフレーム101内で各データ通信111−114に6個の符号が割り当てられる。ユーザEからのデータ通信115は、データフレーム102内に全部で24個の符号が割り当てられている。データフレーム102にはデータ通信115用に関連する制御チャネル155が示されている。符号多重化でもって複数の同時の伝送がどのフレーム内でもサポートされる。
【0015】
前述したように、再送信は、エラーを含んで受信したある送信に対し要求される。図1に示す実施例においては、ユーザBからのデータ通信112とユーザDからのデータ通信114がエラーを含んでおり、そして再送信が要求されているものとする。再送信の要求を容易にするために、受領確認及び受領未確認に関する詳細な議論を次に行なう。ユーザB用の再送信116(関連する制御チャネル156に沿って)と、ユーザD用の再送信117(関連する制御チャネル157により)がフレーム103内で起こる。
【0016】
本発明によれば、符号多重化が一定長さのデータフレーム101−103内での適応型増分的冗長性が可能となる。符号多重化により一定長さのデータフレーム101−103内で自動適応型増分的冗長性が可能となる。特に特定の送信に対しどの程度の冗長性が必要かによって符号の数が変わってくる。例えば再送信において、より冗長性を保証するような通信チャネルの品質(例えば、悪品質)に変化があると、例えばユーザBの場合で元のデータ通信112は6個の符号しか用いていなくても、21個の符号がデータフレーム103内で再送信116用に割り当てられている。逆に再送信において、冗長性を減らすような通信チャネルの品質(良好な品質)に変化があった場合には、例えばユーザDの場合には元のデータ通信114で6個の符号が使用されている代わりに、3個の符号がデータフレーム103で再送信117用に割り当てられている。
【0017】
従って再送信用に符号の数を変えることにより、再送信用に異なる符号化レートが得られる。例えばデータフレーム103で3個の符号上でユーザDの再送信117用の符号化レートは2Rであり、ここでRは6個の符号上でデータフレーム101内のユーザDの最初のデータ通信114用の符号化レートである。ユーザDの元のデータ通信114が6個の符号で直交移送シフトキーング(quadrature phase shift keying QPSK)を用いている場合には、16−QAMを用いた3個の符号による再送信が同一の符号化レートを与える。その理由は16−QAMは、変調シンボル辺り2倍以上のビットを搬送するからである。
【0018】
本発明によれば、データ送信を正しく復号化するために所望の冗長性を与えるために符号の数は再送信時に変えることが出来る。例えばユーザBの再送信116は21個の符号を用い、一方元のデータ通信112は、6個の符号を用いている。ユーザDは6個の符号を用いた元のデータ通信114に対し、再送信117では3個の符号を用いている。
【0019】
図2は、同一ユーザに対する再送信と新規のデータ送信が、同一フレーム内で行なうことが必要な場合の符号領域における適応型ハイブリッドARQ操作の利点を示す。特にこれは同一フレーム内で同一ユーザ用の複数の制御チャネルを用いることにより達成できる。制御チャネルは、同一フレーム内でハイブリッドARQ(HARQ)と異なるHARQ伝送用の他の制御情報を別々に搬送する。
【0020】
説明を簡単にするために、図2の実施例と図1の実施例との差のみを次に説明する。特に200は図1の通信チャネルフォーマット100で説明したような同一の構成要素を有する。ただし差はフレーム203にある。図2に示すようにユーザB用の再送信216は、フレーム203で6個の符号で実行され、同一のユーザに対する新たな送信217は18個の符号で実行される。同図に示すように、制御チャネル256と257は、それぞれ再送信216と新たな送信217に対応する。符号多重化が同一フレーム内で用いられるためにより細かな粒度が得られ、その結果バンド幅がより効率に利用できる。例えば異なる符号があるフレーム内で起こる送信の異なる組み合わせに割り当てることが出来る。図2には一実施例のみ示してあるが、他の実施例も当業者には明らかであろう。例えば同一のユーザあるいは異なるユーザに対するフレーム内で複数の再送信、及び異なるユーザからの複数の新たな送信、及びこれらのユーザからの複数の再送信等が考えられる。従って図2の実施例は単なる本発明の一実施例である。
【0021】
適応型ハイブリッドARQで述べたように、複数の伝送が同一フレーム内で同一のユーザに対し送る必要がある。そのためマルチレベルの受領確認/受領未確認(ACK/NACK)が、フレーム内の伝送の全てに対し別個に送信器に送る必要がある。本発明の一実施例においては、再送信と送信が同一フレーム内で同時に受領した場合には(例えば、フレーム203内のユーザBが受領するように)受信機は通常のACK/NACKメッセージのフォーマットを変更してそれをマルチレベルのACK/NACKに変えることが出来る。本発明の一実施例においてはマルチレベルのACK/NACKは、このACK/NACKビットに対する異なる繰り返し係数を有することにより達成できる。例えば通常のシグナリングにおいて1がACKを表し、0がNACKを表しn回繰り返された場合には、mビットのACK/NACKの場合にはそのビットはn/m回だけ繰り返される。送信器は、あるフレームで実行した送信の数を知っているために、それに応じてACK/NACKと解釈する。例えばある送信が受領確認され(ACK)他の送信が受領未確認(NACK)の場合には、10は、1010101010として繰り返される。本発明の他の実施例によれば、マルチレベルのACK/NACKは別個の符号チャネルを介して複数のACK/NACKビットを送信することにより達成される。更に符号化を用いてACK/NACKの信頼性を与えている。別の方法も本明細書を読むことにより当業者には明らかであろう。
【0022】
図3はあるフレームで発生する複数回の送信を説明するための受領確認(ACK)と受領未確認(NACK)を送信する方法を示す。例えば同一のユーザに複数回の送信が同一フレームで行なわれた場合には、マルチレベルのACK/NACKが前述したように必要とされる。説明を簡単にするために、図2と図3の実施例の差のみをここで説明する。特に図2からのフレーム203を図3に示す。
【0023】
図3を参照すると、ユーザBからの新たな送信217と同一ユーザからの再送信216がフレーム203で発生する。本発明の一実施例によれば、ACK/NACK350(すなわちこの実施例では2つのレベルのACK/NACK)が受信機から送信器に送られてフレーム203内の複数回の送信を説明される。同図に示すように、ACK/NACK350は、フレーム203内のユーザBの前の再送信(B1)に対する受領確認(ACK)と、フレーム203からのユーザBの新たな送信(B2)の受領未確認(NACK)を有する。そのためマルチレベルのACK/NACKは、同一フレーム内で起こる複数回の送信を処理するのに利点がある。
【0024】
本発明は一定長さのフレームを符号多重化する例を用いて説明したが、他の技術例えば可変数の周波数を用いたFDMAあるいは複数本のアンテナを用いたSDMAにも適応可能である。
【0025】
以上の説明は、本発明の一実施例に関するもので、この技術分野の当業者であれば、本発明の種々の変形例を考え、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。尚、特許請求の範囲に記載した参照番号は発明の容易な理解のためで、その技術的範囲を制限するよう解釈されるべきではない。
【符号の説明】
【0026】
100 通信チャネルフォーマット
110 データチャネル
150 制御チャネル
101−103 データフレーム
120 タイムスロット
111−114 データ通信
151−154 制御チャネル
155 制御チャネル
115 データ通信
116、117 再送信
216 再送信
217 新たな送信
203 フレーム
350 ACK/NACK

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信システムの通信チャネルで情報を再送信する方法であって、前記通信チャネルは複数の一定長フレームを有し、前記一定長フレームの各々は等しい長さの複数のタイムスロットに分割されており、前記方法は、
以前に送信した情報が正しく受信されたとの確認がないときには、以前になされた送信を送信するのに用いた送信機を用いて、複数の符号のうちのいくつかの符号を用いて、一定長フレーム内で前記以前になされた送信の少なくとも一部の符号多重化された再送信を送信するステップを含み、
前記再送信に対し用いられる符号の数は、通信チャネルの状態と前記再送信のデータの正しい復号のための所望の冗長性とに基づいて変わる、方法。
【請求項2】
前記通信チャネルの状態は、通信チャネル内の品質ベースのパラメータと利用可能な資源とからなるグループから選択された少なくとも1つのファクタにより決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記一定長フレームの各々は、新たな送信と前記以前になされた送信の再送信とからなるグループから選択された1つまたはそれ以上の信号送信の組み合わせを送信することが可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記符号の数は、最初の送信と前記最初の送信の対応する後の再送信と同一である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
第1の送信に対し用いられる符号の数は、前記第1の送信の対応する後の再送信に対し用いられる符号の数とは異なる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記一定長フレームは、複数の同時送信の各々についての1またはそれ以上の異なる符号を用いることによって、複数の同時送信を実行することが可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記複数の同時送信は、異なるユーザからの複数の新しい送信を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記複数の同時送信は、異なるユーザからの以前になされた送信の複数の再送信を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記複数の同時送信は、同一のユーザからの以前になされた送信の複数の再送信を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記複数の同時送信は、同一のユーザからの1またはそれ以上の新しい送信と1またはそれ以上の再送信を含む、請求項6に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−254548(P2011−254548A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194473(P2011−194473)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【分割の表示】特願2002−298526(P2002−298526)の分割
【原出願日】平成14年10月11日(2002.10.11)
【出願人】(596092698)アルカテル−ルーセント ユーエスエー インコーポレーテッド (965)
【Fターム(参考)】