説明

無線通信方法とそれに使用する基地局送信機および受信機

【課題】基地局から携帯端末に通知すべきシステム情報のために使用する物理リソースを削減する。
【解決手段】基地局送信機では、セル共通系列番号とシステム情報に応じた位相回転量とがSYMBGENブロック1に与えられたことによって、SYMBGENブロック1がセル共通系列番号およびシステム情報を元にトレーニングシンボルを生成する。携帯端末受信機では、SYMBRMVブロック22がTDMDMUXブロック14で取り出された物理チャネルの受信トレーニングシンボルと既知系列の共役とを複素乗算し、SUBCDMAPブロック23が複数乗算を各サブバンドに分け、IFFTブロック24が各サブバンドの複数乗算を時間領域に変換し、POSSRCHブロック26が時間領域に変換した複素乗算結果から位相回転量を推定してシステム情報を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用する無線リソースを増加することなく、通知可能な情報量を増やすことが可能な無線通信方法とそれに使用する基地局送信機および受信機に関する。
【背景技術】
【0002】
図5は、非特許文献1の3.4.2.1.2章の図3.38から抜粋した共通制御チャネルで用いられるトレーニングシンボルのフォーマットを時間軸で示す。図5において、トレーニングシンボルは、時間方向に同一OFDMシンボルを2回繰り返す構成である。トレーニングシンボルは、携帯端末と基地局との時間同期および周波数同期、また、自動利得制御や伝送路推定に用いられる物理チャンネルである。また、2番目のOFDMデータの3/8がガードインターバル(Guard Interval)として最初のOFDMデータの前にコピーされる。
【0003】
図6は、上記トレーニングシンボルのサブキャリアマッピングを時間軸と周波数軸との2次元表現で示す。図6において、横方向が時間を示し、縦方向が周波数を示す。斜線を付した部分がトレーニング系列で、S1からS19までの19OFDMシンボルから構成されるスロットの先頭に配置される。トレーニングシンボルの系列には、既知である全セル共通の1系列を用い、各サブバンドで同一の系列を用いる。サブバンドは、F1からF24までまたはF25からF48までの24本のサブキャリアから構成される。サブバンド内では11からなる系列長の同一系列が2回繰り返される。無地で示した部分は他のチャネルであり、点を散りばめた部分は使用していないサブキャリアである。
【0004】
図7は、基地局送信機におけるトレーニングシンボルと他のOFDM変調された信号との送信部分のブロック構造を示す。図7において、SYMBGENブロック1がセル共通系列番号(cell common index)に基づき全セル共通のトレーニングシンボルを生成し、SUBCMAPブロック2がトレーニングシンボルを規定されたサブキャリアに配置した後、OFDMMODブロック3がOFDM変調し、SYMPREPブロック4が2OFDMシンボルを繰り返し、GIADDブロック5がガードインターバルを付加する。そして、TDMMUXブロック6がガードインターバルの付加されたトレーニングシンボルと他のOFDM変調された信号(other channels)とを時間多重化したTX信号(TX signal)として送信する。
【0005】
図8は、携帯端末受信機におけるトレーニングシンボルを用いた同期処理部とシステム情報検出部とのブロック構造を示す。図8において、SYNCDETブロック11が、RX信号(RX signal;受信信号)のレーニングシンボルを用い、周波数誤差、OFDM復調におけるFFTウインドウ開始位置を検出する。RX信号は、図8のTX信号が基地局送信機からの無線伝播路を通って受信された信号である。FREQCOMPブロック12が上記検出された周波数誤差を基にRX信号の位相を補正し、OFDMDMODブロック13が上記検出されたFFTウインドウ開始位置からRX信号をFFTの長さ分を切り出してOFDM復調し、TDMDMUXブロック14がOFDM復調された信号から時間多重されたシステム情報の含まれる物理チャネルを取り出し、SYSDETブロック15がシステム情報(System info)を検出する。
【非特許文献1】ARIB STD‐T95 Ver.1.0「OFDMA/TDMA TDD Broadband Wireless Access System (Next Generation PHS)」ARIB(電波産業会)発行2007年12月12日
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発明が解決しようとする問題点は、携帯端末の受信機構成を容易にする観点から、トレーニングシンボルに既知の1系列を用いている場合、基地局から携帯端末に通知すべきシステム情報はトレーニングシンボル以外の他の物理リソースを用いなければならず、データ通信等に用いられる他チャネルのための物理リソースがその分削減されるという点である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る無線通信方法は、同一系列のトレーニングシンボルを各サブバンドで繰り返し用いる無線通信方法において、通知するシステム情報に応じてサブバンド毎に位相回転量の異なるトレーニングシンボルを送信するか、または、時間領域で繰り返し波形を有する同一系列のトレーニングシンボルを各サブバンドで繰り返し用いる無線通信方法において、通知するシステム情報に応じてサブバンド毎に位相回転量の異なるトレーニングシンボルを送信することを最も主要な特徴とする。本発明に係る無線通信方法は、各サブバンドの位相回転量がそれぞれ個別なシステム情報を通知するか、または、全てもしくは幾つかのサブバンドの位相回転量の組み合わせによりシステム情報を通知してもよい。本発明に係る送信機は、セル共通系列番号およびシステム情報を元にトレーニングシンボルを生成する機能部を備えたことを最も主要な特徴とする。本発明に係る受信機は、各サブバンドの位相回転量がそれぞれ個別なシステム情報が通知される場合、セル共通系列番号およびシステム情報を元にトレーニングシンボルを生成する機能部を備え、全てもしくは幾つかのサブバンドの位相回転量の組み合わせによりシステム情報が通知される場合、全てもしくは幾つかのサブバンドの位相回転量の組み合わせによりシステム情報を検出する機能部を備えることを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る無線通信方法およびそれに使用する送信機および受信機は、トレーニングシンボルによりシステム情報を通知可能であるので、システム情報通知用に割り当てられていた制御チャネルを他の用途に使用可能になり、リソースの利用効率が上がる。また、マイクロセル方式のシステムやフェムトセルでは、基地局のカバーエリア内の携帯端末数がマクロセル方式に比べ少ないので、本トレーニング系列のみでページング情報を伝えることが可能となる。よって、時分割多重されるページング情報通知用のチャネルを受信する必要がなくなることで、携帯端末の待ち受け時の動作時間を削減することが可能になるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1のa図は、基地局送信機におけるトレーニングシンボルとシステム情報との送信部分のブロック構造を示す。図1のa図は、セル共通系列番号および上位レイヤからのシステム情報(System information)を元にトレーニングシンボルを生成する構成である。例えば、システム情報に応じた位相回転量を与える機能が追加される。つまり、セル共通系列番号とシステム情報に応じた位相回転量とがSYMBGENブロック1に与えられたことによって、SYMBGENブロック1がセル共通系列番号およびシステム情報を元にトレーニングシンボルを生成する機能部を構成する。この基地局送信機から送信されるトレーニングシンボルは、図2のa図に示す式(1)で表される。
【0010】
図3は上記基地局送信機から送信されるトレーニングシンボルのサブキャリアマッピングを時間軸と周波数軸との2次元表現した場合を示す。図3において、横方向が時間を示し、縦方向が周波数を示す。スロットの先頭に配置されて2回繰り返されるトレーニングシンボルのうちの斜線を付した部分である一方のサブバンド(sub-band1)内では既知である全セル共通の1系列が用いられ、網がけされた部分である他方のサブバンド(sub-band2)ではシステム情報に応じた位相回転量(rotated training symbol)が用いられる。無地で示した部分は他のチャネルであり、点を散りばめた部分は使用していないサブキャリアである。
【0011】
上記のように、トレーニングシンボルがシステム情報を通知することができるので、システム情報通知用に割り当てられていた制御チャネルを他の用途に使用することができ、物理的リソースの利用効率が上がる。また、マイクロセル方式のシステムやフェムトセルでは、基地局のカバーエリア内の携帯端末数がマクロセル方式よりも少ないので、システム情報としてページング情報を用いれば、トレーニング系列のみでページング情報を伝えることができ、時分割多重されるページング情報通知用のチャネルを受信する必要がなくなり、携帯端末の待ち受け時の動作時間を削減することができる。
【0012】
図1のb図は、携帯端末受信機におけるトレーニングシンボルを用いた同期処理部とシステム情報検出部とのブロック構造を示す。図1のb図は、図9の従来例のSYSDETブロック15をSYSDETブロック21に代替した構造である。SYSDETブロック21が例えば各サブバンドの位相回転量によってそれぞれ個別なシステム情報を検出する。具体的には、SYMBRMVブロック22がTDMDMUXブロック14で取り出された受信トレーニングシンボルと既知系列の共役とを複素乗算する。この複数乗算は、図2のb図に示す式(2)で表される。
【0013】
そして、SUBCDMAPブロック23が複数乗算結果を各サブバンドに分け、IFFTブロック24が各サブバンドの複数乗算結果を時間領域に変換する。この変換結果は、図2のc図に示す式(3)で表される。その後、POSSRCHブロック26が、時間領域に変換した複素乗算結果から位相回転量を推定し、システム情報を検出する。時間領域に変換した複素乗算結果は、位相回転量nに応じてサイクリックシフトした伝送路応答と雑音成分との和であることを用い、POSSRCHブロック26が想定されるマルチパスの最大遅延時間を元に複素乗算結果の電力和を計算することにより位相回転量を推定する。この計算される電力和は、図2のd図に示す式(4)で表される。さらに、POSSRCHブロック26が最大自己相関値を示すサンプル番号lを検出し、位相回転量nを推定することによってシステム情報を検出する。
【産業上の利用可能性】
【0014】
図4は、全てもしくは幾つかのサブバンドの位相回転量の組み合わせによりシステム情報を通知する場合のSYSDETブロック21を示す。SYSDETブロック21は、全てもしくは幾つかのサブバンドの位相回転量の組み合わせによりシステム情報を検出する機能部を構成する。この場合、SUMSUBBブロック27が全サブバンドの複素乗算結果の電力を加算する。この電力加算は、図4のb図に示す式(5)で表される。その後、COMBSRCHブロック28が閾値を用いて複数の位相回転量を検出し、その組み合わせからシステム情報を検出する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】a図は基地局送信機におけるトレーニングシンボルとシステム情報との送信部分のブロック図、b図は携帯端末受信機におけるトレーニングシンボルを用いた同期処理部とシステム情報検出部とのブロック図(最良の形態)。
【図2】a図は基地局送信機から送信されるトレーニングシンボルを表す式(1)を示す図表、b図は携帯端末受信機における受信トレーニングシンボルと既知系列の共役とを複素乗算を表す式(2)を示す図表、c図は携帯端末受信機における複数乗算結果を時間領域に変換する式(3)を示す図表、d図は携帯端末受信機における電力和を表す式(4)を示す図表(最良の形態)。
【図3】基地局送信機から送信されるトレーニングシンボルのサブキャリアマッピングを時間軸と周波数軸との2次元表現した図表(最良の形態)。
【図4】携帯端末受信機のSYSDETブロックを示すブロック図(異なる第1の形態)。
【図5】共通制御チャネルで用いられるトレーニングシンボルのフォーマットを時間軸で示す図(従来例)。
【図6】基地局送信機から送信されるトレーニングシンボルのサブキャリアマッピングを時間軸と周波数軸との2次元表現した図表(従来例)。
【図7】基地局送信機におけるトレーニングシンボルとシステム情報との送信部分のブロック図(従来例)。(最良の形態)。
【図8】携帯端末受信機におけるトレーニングシンボルを用いた同期処理部とシステム情報検出部とのブロック図(従来例)。
【符号の説明】
【0016】
1はSYMBGENブロック、2は、SUBCMAPブロック、3はOFDMMODブロック、4はSYMPREPブロック、5はGIADDブロック、6はTDMMUXブロック、7乃至10は欠番、11はSYNCDETブロック、12はFREQCOMPブロック、13はOFDMDMODブロック、14はTDMDMUXブロック、15はSYSDETブロック、16乃至20は欠番、21はSYSDETブロック、22はSYMBRMVブロック、23はSUBCDMAPブロック、24はIFFTブロック、25は2乗ブロック、26はPOSSRCHブロック26。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一系列のトレーニングシンボルを各サブバンドで繰り返し用いる無線通信方法において、通知するシステム情報に応じてサブバンド毎に位相回転量の異なるトレーニングシンボルを送信する無線通信方法。
【請求項2】
時間領域で繰り返し波形を有する同一系列のトレーニングシンボルを各サブバンドで繰り返し用いる無線通信方法において、通知するシステム情報に応じてサブバンド毎に位相回転量の異なるトレーニングシンボルを送信する無線通信方法。
【請求項3】
各サブバンドの位相回転量がそれぞれ個別なシステム情報を通知する請求項1または請求項2に記載の無線通信方法。
【請求項4】
全てもしくは幾つかのサブバンドの位相回転量の組み合わせによりシステム情報を通知する請求項1または請求項2に記載の無線通信方法。
【請求項5】
セル共通系列番号およびシステム情報を元にトレーニングシンボルを生成する機能部を備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に使用される送信機。
【請求項6】
各サブバンドの位相回転量によってそれぞれ個別なシステム情報を検出する機能部を備えたことを特徴とする請求項3に使用される受信機。
【請求項7】
全てもしくは幾つかのサブバンドの位相回転量の組み合わせによりシステム情報を検出する機能部を備えたことを特徴とする請求項4に使用される受信機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−147957(P2010−147957A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−324954(P2008−324954)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【出願人】(304058826)株式会社ウィルコム (56)
【Fターム(参考)】