説明

無線通信機

【課題】送信データの量に対応させて、利用周波数を節約しながら高速通信を行なう無線通信機を提供する。
【解決手段】送信データを分割して複数の無線チャネル(n)を介して並列に送信する無線通信機であって、当該データ量の送信データの送信時に利用する無線チャネル数ごとに求められる周波数利用効率の相対比に基づいて、該周波数利用効率の相対比が閾値以上となり無線チャネル数が最大の値となるような無線チャネル数を決定する決定部10と、送信データを決定した無線チャネル数で分割してこの無線チャネル数で送信する送信部19,20,21をもつ無線通信機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、送信データを複数に分割して異なる複数の周波数により同時に送信する無線通信機に関し、分割するチャネル数を決定する無線通信機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、多くの形態の無線通信機が開発され製造され使用されているが、このような無線通信機においては、チャネルを複数用意して利用することで、通信効率を向上させる技術が知られている。この通信チャネルは、例えば周波数を異ならせることで異なるチャネルを設定することができ、同時に異なる信号を送信しても混信することなく分離して送信することができる。
【0003】
特許文献1は、ダイナミックアサイン方式によりチャネル数が最適となるように割り当てチャネルを行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2−97137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、送信データを複数に分割して異なる複数の無線チャネルにより同時に送信する場合、無線チャネル毎に、データブロックに付加されるヘッダや自動再送制御のための情報など、送信データ以外の制御情報を付加する必要がある。このような場合、送信データ量が小さくなる程、全体の伝送情報量に対する制御情報量の比率は大きくなり、逆に、送信データ量が大きくなる程、制御情報量の比率は小さくなる傾向にある。そこで、周波数利用効率を向上させるためには、送信データ量に応じて最適な無線チャネル数を決定する必要がある。
しかし、特許文献1は、送信データ量に対応させて利用周波数を節約しながら通信速度を高速化するためのチャネル数の決定方法である、『周波数利用効率の相対比』に基づいてチャネル数を最適化する技術が開示されていない。
本発明は、送信データ量に応じて利用周波数を節約しながら高速化を実現する無線通信機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
課題を解決する一実施形態は、
送信データを分割して複数の無線チャネル(n)を介して並列に送信する無線通信機であって、
前記送信データのデータ量に対応して、当該データ量の送信データの送信時に利用する無線チャネル数ごとに求められる周波数利用効率の相対比に基づいて、該周波数利用効率の相対比が閾値以上となり、前記無線チャネル数が最大の値となるような無線チャネル数を決定する決定部(10)と、
前記決定した前記無線チャネル数へと前記送信データを分割する分割部(15)と、
前記分割された送信データを前記決定された無線チャネル数の各チャネルを利用して並列に送信する送信部(19,20,21)を具備し、
前記周波数利用効率とは、前記無線通信機のデータスループットを利用周波数帯域幅で割った値であり、
前記周波数利用効率の相対比とは、前記送信データを分割して送信した際の周波数利用効率を、前記送信データを分割せずに送信した際の周波数利用効率で割った値であることを特徴とする無線通信機である。
【0007】
また、課題を解決する他の実施形態は、
送信データを分割して複数の無線チャネル(n)を介して並列に送信する無線通信機であって、
前記無線チャネルを所定の範囲(1≦n≦8)で変化させて、前記送信データのデータ量に応じて各無線チャネル数での前記送信データの送信時の伝送時間短縮量の減少度を求め、該伝送時間短縮量の減少度が閾値以下となり、前記無線チャネル数が最大の値となるような無線チャネル数を決定する決定部(10)と、
前記決定した前記無線チャネル数へと前記送信データを分割する分割部(15)と、
前記分割された送信データを前記決定された無線チャネル数の各チャネルを利用して並列に送信する送信部(19,20,21)を具備し、
前記伝送時間短縮量の減少度とは、送信データを分割して複数の無線チャネルで伝送した際の伝送時間(t)を、送信データを分割せずに伝送した場合の伝送時間(t)で除算した第1結果を求め、該第1結果から利用無線チャネル数(n)の逆数を減算した第2結果を計算し、該第2結果を利用無線チャネル数の逆数(n)で除算した値であることを特徴とする無線通信機である。
【0008】
また、課題を解決する他の実施形態は、
送信データを分割して複数の無線チャネル(n)を介して並列に送信する無線通信機であって、
前記無線チャネルを所定の範囲(1≦n≦8)で変化させて、前記送信データのデータ量に応じて各無線チャネル数での前記送信データの送信時のオーバーヘッド時間の増加率を求め、該オーバーヘッド時間の増加率が閾値以下となり、前記無線チャネル数が最大の値となるような無線チャネル数を決定する決定部(10)と、
前記決定した前記無線チャネル数へと前記送信データを分割する分割部(15)と、
前記分割された送信データを前記決定された無線チャネル数の各チャネルを利用して並列に送信する送信部(19,20,21)を具備し、
前記オーバーヘッド時間の増加率とは、送信データを分割せずに1つの無線チャネルで伝送した場合の伝送時間(t)を利用無線チャネル数で除算した第1結果を求め、送信データを分割して複数の無線チャネルで伝送した場合の伝送時間(t)から前記第1結果を減算した第2結果を計算し、該第2結果を前記第1結果で除算した値であることを特徴とする無線通信機である。
【0009】
また、課題を解決する他の実施形態は、
送信データを分割して複数の無線チャネル(n)を介して並列に送信する無線通信機であって、
前記無線チャネルを所定の範囲(1≦n≦8)で変化させて、分割された送信データを送る際に用いられる予めサイズが定められたデータ送信単位である送信データブロックの数が閾値以下となる場合は、該送信データブロックが閾値以下となり、前記無線チャネル数が最小の値となるような無線チャネル数を決定し、
前記所定の範囲で利用無線チャネル数を変化させても、前記送信データブロックの数が前記閾値以下とならない場合には、前記無線チャネル数が最大の値となるような無線チャネル数を決定する決定部(10)と、
前記決定した前記無線チャネル数へと前記送信データを分割する分割部(15)と、
前記分割された送信データを前記決定された無線チャネル数の各チャネルを利用して並列に送信する送信部(19,20,21)を具備する無線通信機である。
【0010】
また、課題を解決する他の実施形態は、
上述した各請求項での前記決定部において前記送信データ量毎に決定されたチャネル数をテーブルとして記憶しておき、与えられた送信データの量に応じて記憶されたテーブルを参照して最適なチャネル数を決定することを特徴とする無線通信機である。
【発明の効果】
【0011】
送信データのデータ量に応じて周波数利用効率の相対比を求め、この周波数利用効率の相対比が示す値に従って決定した最適のチャネル数で無線通信を行なう。これにより、送信データの量に対応させて、利用周波数を節約しながらも高速通信を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る通信システムの一例を示す説明図。
【図2】当該通信システムに含まれる無線通信機の構成の一例を示すブロック図。
【図3】当該通信システムで扱われるフレーム信号のフォーマットを示す説明図。
【図4】当該通信システムにおける動作シーケンスの一例を示す説明図。
【図5】当該無線通信機のチャネル数の決定工程の一例を示すフローチャート。
【図6】当該無線通信機でのチャネル数と周波数利用効率の相対比の関係を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
本発明の一実施形態に係る無線通信機1は、図1に示すように、スペクトル管理サーバ2と通信を行ないつつ、送信モードにおいて送信機1−1として機能し、受信モードにおいて受信機1−2として機能する無線通信機である。
【0014】
はじめに、送信データのデータ量に応じて最適チャネル数を決定する無線通信機1の構成を図2を用いて説明する。ここで、送信機1−1のみがスペクトル管理サーバ2との通信機能を有していてもよいが、送信機1−1も受信機1−2もスペクトル管理サーバ2との通信機能を有しており、無線通信機1の動作モードにより送信機1−1にも受信機1−2にも機能するという構成も可能である。
【0015】
無線通信機1は、送信データのデータ量に基づいてチャネル数を決定する最適チャネル数決定部10と、全体の動作を制御するべく各構成に接続される制御部11と、画像や文字を表示する表示部12と、オペレータの操作のための操作部13と、文字情報や写真情報等をパケット化し、また、パケットを文字情報や写真情報等に変換するパケット処理部14と、送信データをチャネル数に応じて分割し、分割された送信データを組み立てる分割・組立部15と、分割された送信データからチャネルを生成するフレーム処理部16と、フレーム処理部16の誤りを検出する誤り検出部17と、誤り検出に基づいて自動再生処理を行う自動再送制御部18と、送信データを送受信する複数のデータ送受信部19,20,21から構成される。また、データ送受信部19内の構成要素である各処理部は、制御部11からの制御情報に基づき動作するもので、誤り訂正部22と、変復調部23と、無線部24を有している。
【0016】
また、この実施形態の無線通信機1は、以下の説明では半二重通信を前提としている。半二重通信は、双方向通信において、同時に双方からデータを送信したり受信したりすることができず、時間を区切って片方向からの送信しかできない通信方式である。双方向にデータをやり取りするため、データ送受信部19は、制御部11からの指示により、時分割で送信モード/受信モードに処理を切替えて動作することにより、通信の向きを切り替える機能を有している。
【0017】
分割・組立部15は、送信モードでは、電子メール、電子ファイル等のデータをn等分する処理を行い分割されたデータ(d2−1)(d2−2)・・・(d2−n)を出力し、受信モードでは、分割されたデータ(d2−1)(d2−2)・・・(d2−n)を1つのデータに組み立てデータを出力する。ここで、分割数nの最大値はN(一例としてN=8)であり、無線通信機1は、送信データをN分割しN個の無線チャネルを利用して並列に伝送できる機能を有する。
【0018】
上記分割数nは、最適チャネル数決定部10からの出力である最適チャネル数により指示される値である。この実施形態の説明では分割数をnとし、n個の周波数を利用して並列に伝送する構成として説明を行う。最適チャネル数決定部10での最適チャネル数決定方法については後述する。
【0019】
無線チャネルの最大個数Nとそれらの無線チャネルに使用する周波数は、制御部11から指定される。また、前述の通り、無線チャネルの最大個数Nとそれらの無線チャネルに使用する周波数は、スペクトル管理サーバ2から無線通信機1に指示され、その情報は制御部11で記憶され管理される。
【0020】
フレーム処理部16は、送信モードにおいて、分割されたデータ(d2−1)(d2−2)・・・(d2−n)および制御部11の制御に基づいて図3に示すフレームフォーマット構成を有する各チャネルを生成する。ここでは、n分割されたデータ(d2−1)(d2−2)・・・(d2−n)のそれぞれに対し別々に、図4の動作シーケンスに従って、図3(a)〜(f)に示す6種類のチャネルを順次生成し、n系統のチャネル列(e2−1)(e2−2)・・・(e2−n)を並行して同時に出力する。
【0021】
操作部13および制御部11からの制御信号は、上位層に位置する電子メール等のアプリケーションで扱われる情報であり、メッセージ番号(電子メール等の通信単位に付与される番号)、電子メール等の送信データサイズ(送信データ量)、同報通信の宛先数、送信元IPアドレス、1つまたは複数の送信先IPアドレスを含む。本実施形態では同報通信は行わないものとし、宛先数=1とする。
【0022】
また、操作部13および制御部11からの制御信号は、データ送受信部19の仕様(動作)を設定するための情報を含んでおり、送信モード/受信モード切替え制御情報、変復調方式種別情報、データブロックサイズ、パケットサイズ、利用周波数情報(送信データの最大分割数Nに対応する、利用される周波数の数と、これら具体的な周波数)が含まれる。ここで、電子メール、電子ファイル等の分割されたデータ(d2−1)(d2−2)・・・(d2−n)は、パケット単位に区切られ、誤り検出部17は、そのパケットに誤り検出符号を付加してフレーム処理部16に返す。ここで、データ(d2−1)(d2−2)・・・(d2−n)をパケット化する際、端数が出た場合は残り(空き)の部分はダミーデータで充填される。データブロックは、複数のパケットから構成され、データブロック送信毎に自動再送制御(ARQ)が実行される。データブロックサイズ、パケットサイズは、制御部11で記憶し管理されており、操作部13や接続されるパーソナルコンピュータで設定することができる。また、利用周波数情報(送信データの最大分割数Nに対応する、利用される周波数の数と、これら具体的な周波数)は前述の通り、スペクトル管理サーバ2から指示され、制御部11で管理し記憶される。
【0023】
次に、図3を用いて各チャネルのフレームフォーマット構成を説明する。まず、図3(a)〜(f)の各チャネル共通部分について説明する。同期情報d11,d12,d31,d41,d51,d61は、各チャネルの開始点を検出するための同期パターンである。なお、これに対し、受信信号の復調のための同期パターンは変復調部23で挿入される。設定情報d12,d22,d32,d42,d52,d62は、制御チャネル種別情報(利用周波数設定/回線設定/初送データ/再送データ/誤りパケット請求/誤りパケット応答/回線解除の識別情報)、データパケットd34に対する変復調方式種別情報(BPSK/QPSK/16QAM等の識別情報)を含む。データパケットd34以外の制御情報に対しては適用する変復調方式は固定であり、制御情報はデータパケットと比較し重要度が高いために、例えば、最もノイズ耐性の強いBPSKが用いられる。また、データパケットd34以外の制御情報に対しても、誤り検出部17により誤り検出符号が付加された後、各チャネルのフレームに詰められる。
【0024】
初めに、利用周波数設定チャネル(図3(a))は、同期情報d11,設定情報d12,送信データサイズd13,利用チャネル数d14,第1利用周波数d15・・・第n利用周波数d16を含む。ここで、送信データサイズd13は分割前の送信データa2のサイズ(データ量)、利用チャネル数d14は最適チャネル数決定部10で決定される最適チャネル数n2、第1利用周波数d15・・・第n利用周波数d16は後述する各チャネルの無線信号h2−1,h2−2,・・・,h2−nのキャリア周波数である。
【0025】
図4の動作シーケンスでも説明するが、利用周波数設定チャネル(図3(a))は、n個の無線チャネルのうちのどれか1つで送信され、以下に説明する図3(b)〜(f)のチャネルは各々の無線チャネル(利用周波数)毎に生成され、伝送される。
次に、回線設定チャネル(図3(b))は、同期情報d21,設定情報d22,送信データサイズd23,送信元IPアドレスd24,宛先数d25,及び送信先IPアドレスd26から構成される。ここで、送信データサイズd23は分割後の送信データd2−1,d2−2,・・・d2−nのサイズ(データ量)である。また、この実施形態では、送信元IPアドレスd24、送信先IPアドレスd26は、それぞれ図1における送信機1−1,受信機1−2のアドレスに対応する。また、宛先数d25は『1』が設定される。
【0026】
次に、データチャネル、再送データチャネル(図3(c))は、同期情報d31,設定情報d32,データブロック情報d33,データパケットd34から構成される。データブロック情報d33には、データブロックサイズ、最終データブロック識別情報、パケットサイズ、メッセージ番号、データブロック番号、データブロック当りのパケット数が含まれる。データパケットd34には、データブロック当りのパケット数分のパケットが詰められる。
【0027】
次に、誤りパケット請求チャネル(図3(d))は、同期情報d41,設定情報d42,誤りパケット請求情報d43から構成される。誤りパケット請求情報d43には、応答を要求する受信機指定情報、データブロック番号、メッセージ番号が含まれる。
次に、誤りパケット応答チャネル(図3(e))は、同期情報d51,設定情報d52,誤りパケット応答情報d53から構成される。誤りパケット応答情報d53には、データブロック番号、メッセージ番号、及び誤りパケット情報(データブロック番号で指定されるデータブロック内の全パケットの誤り有無情報)が含まれる。
最後に、回線解除チャネル(図3(f))は、同期情報d61,設定情報d62から構成される。
【0028】
次に、図2に示されるフレーム処理部16は、受信モードでは、各周波数毎の受信データ(チャネル列)(e2−1)(e2−2)・・・(e2−n)から分割されたデータ(d2−1)(d2−2)・・・(d2−n)と制御情報を抽出する。
データ送受信部19,20,21は、それぞれn系統のチャネル列(e2−1)(e2−2)・・・(e2−n)を各々処理し、無線信号として送信または受信する。ここで、無線信号(h2−1)(h2−2)・・・(h2−n)のキャリア周波数をそれぞれF1,F2,・・・,Fnとする。これらの利用周波数は、制御部11からの制御情報の1つとして指示されるN個の周波数のうち、例えば、低いほうからn個を用いる。利用チャネル数nとn個の利用周波数F1,F2,・・・,Fnは通信開始時に利用周波数設定チャネル(図3(a))により、送信機1−1から受信機1−2に周知される。
【0029】
データ送受信部19,20,21はそれぞれ、誤り訂正部22,変復調部23,無線部24を有しており、以下では、データ送受信部19の内部処理に限定して説明するが、データ送受信部20,21でも全く同様の処理が行われる。
誤り訂正部22は、送信モードでは、チャネル列(e2−1)の情報を受けて誤り訂正符号化を行い、誤り訂正符号化後のデータ列を変復調部23に出力する。受信モードでは、変復調部23から復調後の受信データ列を受けて誤り訂正処理を行い、誤り訂正後の受信データ列(受信チャネル列)(e2−1)をフレーム処理部16に出力する。
【0030】
変復調部23は、送信モードでは、制御部11からの制御情報に含まれる変復調方式種別情報(BPSK/QPSK/16QAM等の識別情報)により指定される方式を用いて、誤り訂正符号化後のデータ列の中のデータパケットd34を変調処理し、またデータパケットd34以外の制御情報に対しては、前述の通り、BPSKで変調処理して変調信号を無線部24に出力する。受信モードでは、無線部24からの出力であるベースバンド受信信号を制御部11から指定される復調方式を用いて復調処理して復調信号を誤り検出部17に出力する。
【0031】
無線部24は、その内部構成の図示は省略するが、送信モードでは、変復調部23からの変調信号に対し、制御部11からの制御情報に含まれる利用周波数情報に基づき、送信フィルタ処理、キャリア周波数にアップコンバートする直交変調処理を行い、送受信アンテナ25を介して送信電波h2−1を受信機1−2へ送出する。受信モードでは、制御部11からの利用周波数情報に基づき、送受信アンテナ25等を介して送信機1−1から受信した電波h2−1に対しベースバンド周波数にダウンコンバートする直交復調処理、受信フィルタ処理を施し、ベースバンド受信信号を変復調部23へ出力する。ここで、無線部24内の上記各構成要素は、利用送信/受信周波数F1,F2,・・・,Fnに基づき、周波数を切替えて送信/受信できる構成となっている。
【0032】
自動再送制御部18は、後述する図4の動作シーケンスに従って自動再送制御を行う構成要素であり、フレーム処理部16と連携して動作する。送信モードでは、誤りパケット請求チャネル(図3(d))での誤りパケット請求情報d43に含まれる情報(応答を要求した受信機指定情報、データブロック番号、メッセージ番号)を記憶して管理し、受信機からの誤りパケット応答の結果において誤りが有った場合、再送データチャネルを生成して該当パケットを受信機1−2に再送する。自動再送制御部18は、受信モードでは、送信機1−1からの誤りパケット請求チャネル(図3(d))を受信した場合、誤りパケット請求情報d43に含まれる情報(応答を要求された受信機指定情報、データブロック番号、メッセージ番号)に該当する受信パケットについて、誤り検出部17により誤り検出を行い、誤り検出結果を自動再送制御信号としてフレーム処理部16へ入力する。本実施形態では、データブロック内の全てにパケットの誤り応答を返すことを前提としている。フレーム処理部16では、自動再送制御部18からの自動再送制御信号に基づいて誤りパケット応答チャネル(図3(e))における誤りパケット応答情報d53を作成し、同期情報d51、設定情報d52と共に(e2−1)として、データ送受信部19へ入力する。また、再送に関わるデータブロック番号、メッセージ番号も記憶して管理する。
【0033】
以下、図4に示す動作シーケンスに従って、無線通信機1の動作を順次説明する。図4は、n個の周波数F1,F2,・・・,Fnでの動作シーケンスを示しているが、それぞれ図2に示される無線信号(h2−1)(h2−2)・・・(h2−n)での通信に対応している。これらn個の動作シーケンスは、利用される周波数を除いては全く同じ動作を行うため、以下では、周波数F1での動作シーケンスのみについて説明を行い、他の周波数については説明を割愛する。なお、図4に示す送信機および受信機は、図1に示す無線通信ネットワークの構成での送信機1−1、受信機1−2に対応する。
【0034】
通信開始において、送信機1−1は、送信データのデータ量に基づいて決定された利用周波数設定チャネルを受信機1−2に伝送し、利用するn個の周波数を指示する(ステップS1)。利用周波数設定チャネルは、予め定められた1つの周波数(この例では、周波数F1)を使用して伝送される。これにより、受信機1−2は利用するn個の周波数F1,F2,・・・,Fnを知ることができ、以降のシーケンスでは、n個の各周波数F1,F2,・・・,Fnで並行して同時に以下の通信が行われる。
【0035】
送信機1−1は、受信機1−2に対し、回線設定チャネルを送信する(ステップS2)。回線設定チャネルには前述の通り、送信元IPアドレス、宛先数、送信先IPアドレスが含まれている。無線通信ネットワーク内の全ての受信機は回線設定チャネルを受信し、自分宛の送信先IPアドレスが含まれていれば、送信対象であることを認識してその後の通信を継続し、含まれていなければ、その後の通信は無視する。この例では、受信機1−2が、送信機1−1からの送信対象(宛先)となる。
【0036】
次に、送信機1−1は、データチャネルを各受信機に送信する(ステップS3)。データチャネルには、1データブロック分の複数のデータパケットが含まれる。1データブロック分のデータパケットの送信が終了する毎に、自動再送制御動作シーケンス(ステップS4〜S5)が実行される。
【0037】
次に、送信機1−1は、受信機1−2からの誤りパケット応答がパケット誤り有りを示している場合、再送データチャネルにより該当するデータブロックを再送する(ステップS6)。送信機1−1は、データブロックを再送後、誤りパケット請求チャネルを受信機1−2に対して送信し(ステップS7)、その後の動作シーケンスはステップS4乃至ステップS5と同じである。
【0038】
上記のデータチャネルの送信(ステップS3)または再送データチャネルの送信(ステップS6)と自動再送制御の動作シーケンス(ステップS4およびステップS5)を全てのデータブロックを送信終了まで繰り返し、終了後は送信機1−1が受信機1−2に対し回線解除チャネルを送信し通信を終了する(ステップS8)。
【0039】
第1実施形態は、周波数利用効率の相対比を用いて最適チャネル数を決定する無線通信機を提供する。以下、図5のフローチャートを用いて、周波数利用効率の相対比を用いた最適チャネル数を決定する処理を詳細に説明する。
送信機1−1の制御部11および最適チャネル数決定部10は、操作部13または図示しない外部のパーソナルコンピュータからデータ送信を行えとの操作信号を受けると(ステップS11)、送信データのデータ量に基づき、所定の範囲(例えば、1〜8(=N))の利用無線チャネル数ごとに各チャネル数における周波数利用効率の相対比を以下のように求める(ステップS12)。すなわち、周波数利用効率の相対比とは、(式1)のように表される。
周波数利用効率の相対比[%]
={(送信データ分割並列伝送適用時の周波数利用効率[bps/Hz])
/(送信データ分割並列伝送を適用せず1つの無線チャネルで伝送した場合の周波数利用効率[bps/Hz])}×100 ・・・(式1)
【0040】
ここで、周波数利用効率[bps/Hz]は、送信データのスループット[bps]/利用周波数帯域幅[Hz]として求められる。
(式1)による周波数利用効率は、送信データ量、利用無線チャネル数、図3の各チャネルフレームフォーマット構成でのビット数、誤り訂正部22での仕様(冗長ビット数)、変復調部23での変調方式の伝送速度との物理フレーム構成が既知であれば、計算により求めることができるので、n=1,2,…,8等のように、チャネル数を変更しながら、各周波数利用効率の相対比を求める(ステップS12)。または、実機が存在するならば、スループットは実測により求めても良い。上記の(式1)の計算に必要な仕様またはパラメータは、後述する第2実施形態および第3実施形態でも共通である。
【0041】
送信機1−1の制御部11および最適チャネル数決定部10は、(式1)の周波数利用効率の相対比を所定の閾値と比較して閾値以上になる(または閾値より大きくなる)と同時に、無線チャネル数が最大となるチャネル数を最適のチャネル数として決定する(ステップS13)。図6に示す一例を用いて説明すると、閾値が“70%”であるとき、適正チャンネル数は、閾値“70%”より値が大きいチャネル数のうち最大の大きさをもつチャネル数“5”が適正チャネルとして決定される。
そして、送信機1−1の制御部11および最適チャネル数決定部10は、決定したチャネル数に基づく制御信号を分割・組立部15およびフレーム処理部16に供給し、分割・組立部15およびフレーム処理部16は、与えられたチャネル数へと送信データを分割して送信する(ステップS14)。なお、ステップS14の具体的な処理は、図4の動作シーケンスによって既に詳述されている。
【0042】
なお、本方式を装置へ実装する際は、実運用で使用される複数通りの送信データ量を想定し、所定の範囲に区切られた送信データ量毎に、上記方法で最適チャネル数を決定し、最適チャネル数決定部10内にテーブルの形で送信データ量と最適チャネル数の関係を予め記憶しておくこともできる。そして、制御情報に含まれる送信データ量を入力し、該テーブルを参照することにより送信データ量に対する最適チャネル数を出力することも可能である。このようなテーブルを参照する処理は、以下に示す第2実施形態乃至第4実施形態についても共通である。
【0043】
第2実施形態は、伝送時間短縮量減少度を用いて最適チャネル数を決定する無線通信機を提供する。送信機1−1の制御部11および最適チャネル数決定部10は、所定の範囲(例えば、1〜8(=n))で利用無線チャネル数を変化させ、(式2)に示す送信データ分割並列伝送による伝送時間短縮量減少度を無線機仕様に基づく計算により求める。
【0044】
【数1】

上式は、第1実施形態と同様の仕様またはパラメータが既知であれば計算可能である。または、実機が存在するならば、送信データ分割並列伝送適用時の伝送時間と、送信データ分割並列伝送を適用せず1つの無線チャネルで伝送した場合の伝送時間間は実測により求めても良い。
【0045】
(式2)の最初の()内の第1項は、送信データ分割並列伝送を適用しない場合の伝送時間に対する、送信データ分割並列伝送適用時の伝送時間の比、すなわち、送信データ分割並列伝送適用時の伝送時間短縮率である。(式2)の最初の()内の第2項(利用無線チャネル数の逆数)は、送信データ分割並列伝送における理想的な伝送時間短縮率を示している(オーバーヘッド時間の増加がなく、伝送時間短縮率は利用無線チャネル数の逆数となる)。よって、(式2)の最初の()内の計算結果は、送信データ分割並列伝送適用時の伝送時間短縮率の減少量となる。(式2)の最初の()内の計算結果を利用無線チャネル数の逆数で除算することにより正規化し、パーセンテージで示したものが伝送時間短縮量減少度である。送信機1−1の制御部11および最適チャネル数決定部10は、伝送時間短縮量減少度を所定の閾値と比較した際に閾値以下となり(または閾値より小さくなる)、この際のチャネル数が最大となる無線チャネル数を最適チャネル数として決定する。
【0046】
第3実施形態は、オーバーヘッド時間増加率を用いて最適チャネル数を決定する無線通信機を提供する。送信機1−1の制御部11および最適チャネル数決定部10は、所定の範囲(例えば、1〜8(=n))で利用無線チャネル数を変化させ、(式3)に示す送信データ分割並列伝送によるオーバーヘッド時間増加率を無線機仕様に基づく計算により求める。
【数2】

上式は、第1実施形態と同様の仕様またはパラメータが既知であれば計算可能である。または、実機が存在するならば、伝送時間は実測により求めても良い。
(式3)と(式2)を比較すると明らかなように、オーバーヘッド時間増加率(式3)は、伝送時間短縮量減少度(式2)に(送信データ分割並列伝送を適用せず1つの無線チャネルで伝送した場合の伝送時間)を乗算したものであり、これらは等価なパラメータである。
【0047】
このように、送信機1−1の制御部11および最適チャネル数決定部10は、オーバーヘッド時間増加率を所定の閾値と比較した際に閾値以下となり(または閾値より小さくなる)、この際のチャネル数が最大となる無線チャネル数を最適チャネル数として決定する。
【0048】
第4実施形態は、分割後送信データ量を用いて最適チャネル数を決定する無線通信機を提供する。ここでは、閾値を『1』として以下に説明する。送信機1−1の制御部11および最適チャネル数決定部10は、所定の範囲(例えば、1〜8(=n))で利用無線チャネル数を変化させ、(式4)〜(式6)により送信データ分割並列伝送を行った場合の利用無線チャネル当りの送信データブロック数(式6)を計算する。
分割後送信データ量[bytes]
=ROUNDUP(送信データ量[bytes]/利用無線チャネル数)
・・・(式4)
送信パケット数[packets]
=ROUNDUP(分割後送信データ量[bytes]/パケットサイズ[bytes]) ・・・(式5)
送信ブロック数[blocks]
=ROUNDUP(送信パケット数[packets]
/データブロック当りのパケット数[packets]) ・・・(式6)
ここで、関数ROUNDUP()は小数点以下切り上げを意味する。(式4)は、利用無線チャネル当りの送信データ量であり、図2での分割されたデータ(d2−1)(d2−2)・・・(d2−n)のデータ量に対応する。(式5)は、利用無線チャネル当りの送信パケット数、(式6)は、利用無線チャネル当りの送信データの伝送に必要となる送信ブロック数を示す。上式の計算に必要なパケットサイズ、及びデータブロック当りのパケット数は前述した図3(c)のデータブロック情報d33に含まれる情報である。
【0049】
送信データブロックは、前述の通り、予めサイズが定められたデータ送信単位であり、送信データブロック毎に自動再送制御(ARQ)が実行される。送信データ分割並列伝送において利用無線チャネル数を増やすに従い、すなわち送信データの分割数を増やすに従い、各利用無線チャネル当りの送信データ量は小さくなるため、送信データブロック数は小さくなる。送信ブロック数が所定の閾値(=1)以下になると、一般的に伝送時間のオーバーヘッドが大きいARQ(図3(d)(e)の通信)の実行回数は1回に固定され、さらに利用無線チャネル数を増やし送信するデータ量を小さくしても、図3(a)〜(f)に示す制御情報(データパケットd34以外の部分)の伝送時間が支配的になるため、伝送時間の短縮効果は小さくなり、無駄に周波数資源を使用してしまうことになる。
【0050】
したがって、送信ブロック数と閾値と比較し、閾値(=1)以下であって最小の値をもつ利用無線チャネル数を最適チャネル数として決定(但し、最大チャネル数(=8)でも送信ブロック数が閾値(=1)以下にならない場合は、最大チャネル数を最適チャネル数として決定)することで、無駄な利用無線チャネル数の使用を避けることが可能となる。
【0051】
以上、説明したように、本発明の一実施形態に係る無線送信機においては、送信データの量に応じて最適な(利用周波数を節約しつつ伝送時間が短縮可能な)利用無線チャネル数での伝送が可能となり、無駄な周波数資源の使用、及び無線機での無駄な電力消費を低減することが可能となる。
【0052】
以上記載した様々な実施形態は複数同時に実施することが可能であり、これらの記載により、当業者は本発明を実現することができるが、更にこれらの実施形態の様々な変形例を思いつくことが当業者によって容易であり、発明的な能力をもたなくとも様々な実施形態へと適用することが可能である。従って、本発明は、開示された原理と新規な特徴に矛盾しない広範な範囲に及ぶものであり、上述した実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0053】
1…無線通信機、1−1…送信機、1−2…受信機、10…最適チャネル数決定部、11…制御部、12…表示部、13…操作部、14…パケット処理部、15…分割・組立部、16…フレーム処理部、17…誤り検出部、18…自動再送制御部、19,20,21…データ送受信部、22…誤り訂正部、23…変復調部,24…無線部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信データを分割して複数の無線チャネルを介して並列に送信する無線通信機であって、
前記送信データのデータ量に対応して、当該データ量の送信データの送信時に利用する無線チャネル数ごとに求められる周波数利用効率の相対比に基づいて、該周波数利用効率の相対比が閾値以上となり、前記無線チャネル数が最大の値となるような無線チャネル数を決定する決定部と、
前記決定した前記無線チャネル数へと前記送信データを分割する分割部と、
前記分割された送信データを前記決定された無線チャネル数の各チャネルを利用して並列に送信する送信部を具備し、
前記周波数利用効率とは、前記無線通信機のデータスループットを利用周波数帯域幅で割った値であり、
前記周波数利用効率の相対比とは、前記送信データを分割して送信した際の周波数利用効率を、前記送信データを分割せずに送信した際の周波数利用効率で割った値であることを特徴とする無線通信機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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